◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 電子化には、紙を画像として残す作業と、税法上のスキャナ保存として認めさせる手続の2段があります。
- スキャナ保存の読み取りは解像度200dpi以上、赤・緑・青それぞれ256階調以上で、検索は3項目が軸です。
- 原本を廃棄するには入力期間の定めがあり、速やかな入力ではおおむね7営業日以内が目安になります。
- 委託取引の適正化を図る法律が2026年に施行され、注文書面は事前の承諾なしに電磁的方法で提供できます。
- 方法は3種類、費用は初期と運用の2つに分け、効果は時間と差し戻しの件数で測ります。
目次

手書き注文書の電子化とは何か
手書き注文書の電子化とは、紙で届いた注文書を画像として読み取り、記載内容を受注データとして扱えるようにする取り組みです。画像を保管するだけの作業と、税法上の要件を満たすスキャナ保存は同じではありません。進め方は大きく2種類に分かれ、紙を受け取ったうえで電子的に扱う道と、紙の発生そのものを減らす道があります。どちらを選ぶかで、満たすべき要件も費用の掛かり方も変わります。最初に整理したいのは、目的が保管の効率化なのか、入力工数の削減なのかという点です。
電子化という言葉は、二つの作業をまとめて指すことがあります。一つは紙を画像として取り込む作業、もう一つはその画像を法令上の保存として認めさせる手続です。前者だけなら複合機でも進められますが、後者には解像度や検索の要件が付いてきます1。紙の原本を廃棄したい場合に必要なのは、後者のほうです。画像を残すだけの運用では、原本の保管が続きます。
電子帳簿保存法の保存の区分は3種類です。自社で作成する帳簿書類の電子保存、紙で受け取った書類のスキャナ保存、電子でやり取りした取引情報の保存に分かれます2。手書きの注文書が当たるのは、2番目のスキャナ保存です。一問一答では、資金や物の流れに直結・連動しない書類を一般書類として区分し、注文書をその例に挙げています1。ただし自社の書類が該当するかは運用によって判断が分かれますので、所轄の税務署や税理士への確認をお勧めします。
電子化の対象は、書類の種類ごとに分けて決めます。注文書のほかに、注文請書、見積書、納品書、請求書が同じ流れで届く職場もあるでしょう。この5種類のうち、資金や物の流れに直結する書類は重要書類として扱われ、入力期間の定めが厳しくなります1。区分を取り違えると、後から運用をやり直すことになります。対象を広げる前に、まず注文書1種類で運用を確かめる進め方が現実的です。
電子化した後の受注業務は、4つの段階に整理できます。注文書の受領、読み取りと確認、受注データの登録、画像と原本の保存の順に進みます。手入力の運用と違うのは、読み取りと確認が独立した段階として残る点です。文字認識が手書き文字を完全に読み切るとは限りませんので、人が照合する工程を前提に設計します。この段階を省いた設計にすると、誤った数量がそのまま出荷指示へ流れてしまいます。
電子化で変わるのは、入力の速さだけではありません。画像と受注データが同じ番号で結び付きますので、問い合わせのたびに紙を探す作業が減ります。担当者の記憶に頼っていた取引先ごとの書き方の癖も、確認画面に残る形で共有できます。紙の保管場所を減らせる点は、副次的な効果と考えたほうが投資の判断を誤りません。主に狙うのは、転記と確認に掛かる時間の削減です。
電子化の方法を決める前に確かめる5項目(順位の根拠は着手の順序)
- 1か月あたりの注文書の枚数と取引先の数を数えます。入力と確認の時間もあわせて記録し、後で効果を測るときの基準にします。
- 書類の区分を確かめます。一問一答では資金や物の流れに直結・連動しない書類を一般書類として区分しており、区分によって入力期間と階調の要件が変わります1。
- 読み取りの要件を満たせるかを確かめます。解像度200dpi以上、赤・緑・青それぞれ256階調以上で、4ポイントの大きさの文字を認識できる設定にします1。
- 検索と訂正削除の要件を確かめます。取引年月日、取引金額、取引先の3項目で探せること、訂正や削除の事実と内容を確認できることが求められます1。
- 取引先ごとの割り当てを決めます。注文の頻度が高い先から電子での受け渡しを案内し、紙が残る先はスキャンで受ける形にします。
手書きの注文書が受注業務に残す負担
手書きの注文書は、受注の現場に3種類の負担を残します。基幹システムへの転記と確認、読み取り違いによる差し戻し、紙の保管と過去分の探索です。1件あたりの時間は短くても、繁忙期には件数の分だけ積み上がります。負担が特定の担当者へ寄る点も見落とせません。誰が対応しても同じ結果になる状態をつくれるかどうかが、電子化の判断材料になります。
転記の工数は、注文書1枚あたりの入力項目の数で決まります。品番、数量、納期、出荷先、備考と並べれば、1枚で5項目以上を打ち込むことになるでしょう。取引先ごとに帳票の並びが違えば、目で追う位置も毎回変わります。入力そのものより、どこに何が書いてあるかを探す時間のほうが長いのです。同じ内容を受注台帳と出荷指示の2か所へ打ち直している職場も見られます。
入力の後には、確認の工数が続きます。金額と数量を二人で読み合わせる運用は実務上よく見られ、1枚につき2名分の時間が掛かります。確認を省けば誤りが下流へ流れ、確認を厚くすれば人手が足りなくなるという綱引きです。文字認識を挟んでも確認は残りますが、確認の対象を全項目から差異のある項目へ絞れます。絞り込みができるかどうかが、工数の削減幅を決めます。
読み取り違いは、差し戻しと問い合わせという形で戻ってきます。数量の桁を1つ読み違えれば、出荷数が10倍になります。納期を読み違えれば、取引先の生産や工事の予定に響くでしょう。誤りが見つかるのが出荷の後であれば、返品と再出荷の運賃も発生します。1件の読み違いが、受注、出荷、経理の3部門に作業を生むのです。
紙の保管は、場所と探す時間の両方を使います。帳簿書類の保存は原則として7年間で、欠損金が生じた事業年度は10年間に延びます2。7年分の注文書を紙で持てば、保管の棚と移送の手間が毎年積み上がるでしょう。税務調査や監査で過去分を求められたとき、綴りから探し出す時間は見積もりに入っていません。取引先からの問い合わせでも、同じ探索が起きます。
負担の大きさは、枚数だけでは決まりません。同じ100枚でも、明細が1行の注文書と20行の注文書では入力の時間が変わります。取引先ごとの特記事項が備考欄に手書きで入る場合、判断が担当者に委ねられます。枚数と明細の行数、備考欄の記入の有無という3点に分けて数えると、実態に近い見立てになるでしょう。この数え方は、後で電子化の対象を選ぶときにも使えます。
これらの負担は、業務量ではなく人に貼り付く点が扱いにくいところです。帳票の癖を知っている担当者が休むと、その日の受注処理が滞ります。採用と教育で補う道もありますが、習熟には時間が掛かります。負担の内訳を工数の実数で押さえておけば、後の投資判断がぶれません。まずは1か月分の注文書の枚数と、入力と確認の時間を数えるところから始めます。
自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。
スキャン保存で満たすべき法令の要件
スキャナ保存で押さえる要件は、読み取りの品質、入力期間、検索と訂正削除の記録の3系統です。読み取りは解像度200dpi以上、赤、緑、青それぞれ256階調以上が基本になります1。入力期間は書類の区分で変わり、検索は取引年月日、取引金額、取引先の3項目が軸です1。原本を廃棄できるかどうかは、この3系統を満たせるかで決まります。要件は改正のたびに動きますので、導入時に最新版の一問一答で文言を確かめてください。
読み取りの品質には、数値で示された基準があります。解像度は200dpi以上、色は赤、緑、青それぞれ256階調以上、いわゆる24ビットカラーです1。あわせて、日本産業規格に定める4ポイントの大きさの文字を認識できることが求められます1。備考欄の小さな手書き文字が潰れる設定では、この基準を満たせません。複合機の初期設定のまま進めず、実際に届いた注文書で読み取り結果を確かめてください。
一般書類に区分される場合、扱いは緩やかになります。赤、緑、青の階調に代えて、白と黒の256階調、いわゆるグレースケールでの読み取りが認められます1。入力期間の定めも適用されず、適時に入力する方式を採れるのです1。ただし、この方式には事務の手続を定めた書類を備え付ける条件が付きます1。自社の注文書がこの区分に当たるかは書類の性質と運用の実態で分かれますので、所轄の税務署や税理士へ確かめてください。
重要書類として扱う場合、入力期間は2種類から選びます。受領後に速やかに入力する方式ではおおむね7営業日以内、業務の処理サイクルの後に入力する方式では最長2か月とおおむね7営業日以内が目安です1。後者を採るには、事務の処理に関する規程を定めて備え付ける必要があります1。締め日から起算すると、月末に届いた注文書ほど余裕は短くなります。運用の設計では、繁忙期に7営業日を守れるかどうかを先に確かめてください。
検索の要件は3項目です。取引年月日、取引金額、取引先で探せる状態にします1。訂正削除の記録についても定めがあり、訂正や削除の事実と内容を確認できるシステムを使うか、訂正や削除ができないシステムを使うことが求められます1。入力した内容を後から書き換えられる運用では、この要件を満たせません。台帳の管理を表計算で代替しようとすると、この点で行き詰まるでしょう。
要件の文言は、改正のたびに動きます。スキャナ保存の一問一答は令和7年6月に改訂版が公表されており、引用するときは版の年月まで控えておくとよいでしょう1。法的要件を満たすと確認されたソフトの一覧が業界団体から公開されていますので、製品選定の入口として使えます67。ただし認証は製品の機能に対するもので、自社の運用が要件を満たすことまで保証するものではありません。規程の整備と確認の担当を決める作業は、製品の選定とは別に残ります。
| 要件の区分 | 求められる内容 | 確かめる場面 |
|---|---|---|
| 読み取りの品質 | 解像度200dpi以上、赤・緑・青それぞれ256階調以上 | 複合機や読み取り機の設定 |
| 入力期間 | 速やかな入力はおおむね7営業日以内 | 締め日と繁忙期の運用 |
| 検索の要件 | 取引年月日、取引金額、取引先の3項目 | 保存する台帳の項目設計 |
| 訂正削除の記録 | 訂正や削除の事実と内容を確認できること | 利用するシステムの機能 |

注文書面のやり取りをめぐる制度の変化
注文書面のやり取りには、税法とは別の定めが関わります。委託取引の適正化を図る法律では、発注の内容を記した書面の交付が委託する側に義務付けられているのです3。この書面は、電磁的方法で提供することもできます4。名称と適用対象を見直した改正法が2026年に施行され、従業員数による基準が加わりました3。電子化を進める前に、自社が対象に当たるかどうかを確かめてください。
書面の交付は、発注の内容を明らかにするための義務です。給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などを記した書面を、発注のときに直ちに交付します4。支払期日は、給付を受領した日から60日以内に定めることが求められます4。口頭の発注だけで済ませると、後から数量や納期の認識が食い違うでしょう。手書きの注文書はこの交付を紙で満たしてきた手段の一つであり、紙をやめても交付の義務そのものは残ります。
電磁的方法による提供は、以前から認められてきた手段です。改正では、提供にあたって相手方の事前の承諾を要しない形へ改められました4。ただし、相手方から書面の交付を求められた場合には、書面で交付しなければなりません4。取引先の体制はそれぞれ違いますので、電子での提供に切り替える前に受け取り方の希望を聞いておきます。一方的に切り替えると、受注側の事務が滞ります。
対象になるかどうかは、取引の種類と事業者の規模で決まります。製造委託や修理委託などでは、委託する側の資本金が3億円を超え、受託する側が3億円以下である場合が典型です4。改正では資本金に加えて従業員数の基準が設けられ、製造委託等では従業員300人を超えるかどうかが判断に加わりました4。情報成果物の作成委託や役務提供委託では、資本金5千万円、従業員100人という別の線が引かれます4。自社がどちらの側に立つかで、備えるべき事務は変わります。
発注の記録は、社内でも定められた期間だけ残します。委託取引の適正化を図る法律では、給付の内容や代金の額などを記載した書類を作成し、2年間保存することが求められます4。税法上の保存期間とは年数も対象も違いますので、どちらの定めにも耐える保存方針を1本で決めておくと管理が楽です。紙と電子が混在したままでは、求められた資料をどちらから出すかで迷うでしょう。保存の場所と期間を、書類の種類ごとに一覧にしておきます。
制度が変わっても、取引先の運用がすぐ変わるわけではありません。電子での受け渡しに切り替える案内では、いつから、どの書類を、どの手段で、という3点を先に示します。受け取る側の担当者が使う端末や回線の条件も、あわせて確かめておきます。紙での受け渡しを続けたい取引先が残る前提で、併用の期間を決めておくとよいでしょう。合意の取り付けは、営業担当が個別に説明する形が現実的です。

手書き注文書を電子化する方法の選び方
方法は3種類に整理できます。紙をスキャンして文字認識で読み取る方法、Web受発注やEDIで紙そのものを減らす方法、両者を併用する方法です。読み取りの精度は書き手の筆跡に左右されますので、確認と修正を組み込む前提で選びます。取引先の数が多いほど、全社一律の切り替えは進みません。3種類のどれかを選ぶのではなく、取引先を分けて割り当てる考え方が現実的です。
スキャンと文字認識は、取引先に変更を求めずに始められる方法です。届いた注文書を読み取り機に通し、品番や数量を文字として抽出します。手書き文字の認識は活字より難しく、数字の1と7、0と6のように形の近い文字で迷いが出ます。認識できなかった箇所を人が直す画面を用意し、確認の対象を差異のある項目へ絞る設計にしてください。読み取りの結果は帳票の様式にも左右されますので、罫線と記入欄のある帳票へ寄せられるかを検討します。
Web受発注やEDIは、紙の発生そのものを減らす方法です。EDIとは、企業間で受発注などの取引データを、あらかじめ決めた形式でやり取りする仕組みを指します。取引先に画面へ入力してもらう形にすれば転記も読み取りも要りませんが、手間が先方へ移りますので、導入の可否は取引先の事情で決まります。企業のデジタル化を調べる国の調査は従業員100人以上の企業を対象としており5、これより小さい取引先の実態はそこからは読み取れないのです。注文の頻度が高い上位の取引先から順に案内すると、枚数の削減幅が大きくなります。
紙と電子の併用は、移行の途中で必ず通る状態です。切り分けの軸は取引先の規模ではなく、注文の頻度と1回あたりの明細の数に置きます。頻度が高い取引先は電子へ、年に数回の取引先は紙のまま読み取る、という割り当てが扱いやすい形です。併用の期間は、電子と紙で受注番号の採番が二重にならないよう決めておきます。運用の窓口を1か所にまとめないと、問い合わせの行き先が分かれてしまいます。
読み取りの精度は、1つの数値で語れるものではありません。活字と手書き、数字と漢字、記入欄の有無で結果は変わります。製品の説明にある認識の割合は、検証に使った帳票の条件とあわせて読んでください。自社の注文書で試したときの結果が、公表された数値と食い違うこともあります。契約の前に、実際の帳票で試す期間を設けてもらうのが確実です。
選ぶときの観点は、価格よりも運用の続けやすさに置きます。読み取り結果を直す担当者は誰か、直した記録は残るか、月末に処理が詰まったときに誰が代われるかを確かめます。法的要件を満たすと確認されたソフトの一覧は、候補を絞る手掛かりになるでしょう7。導入の前に、自社の注文書を実際に読み取らせて結果を見せてもらってください。読み取りの精度は、公表された数値ではなく自社の帳票で確かめるものです。
電子化を進める手順とつまずきやすい点
進め方は3段階です。現行の帳票と業務フローの棚卸し、読み取り精度の検証と確認体制の設計、社内規程の整備と担当者への定着の順に進みます。つまずきが起きやすいのは、2段階目を飛ばして製品を先に決めた場合です。自社の注文書で読み取り結果を確かめないまま契約すると、想定した工数の削減幅には届きません。段階ごとに、何をもって次へ進むかを決めておいてください。
最初の段階は、現行の帳票と業務フローの棚卸しです。取引先ごとの帳票の様式を数え、1か月あたりの枚数と、入力と確認の時間を記録します。ここで数えた枚数と時間が、後で効果を測るときの基準になります。帳票の様式が複数に分かれている場合は、枚数の順に並べ、上位から対象を決めてください。棚卸しの結果は、費用の見積もりにもそのまま使えます。
2段階目は、読み取り精度の検証と確認体制の設計です。検証には、きれいな帳票ではなく、実際に届いた書き込みのある注文書を使います。項目ごとに正しく読めた割合を数え、品番、数量、納期の3項目に分けて記録するとよいでしょう。全体の割合だけを見ていると、誤りが集中している項目を見落としてしまいます。確認体制は、この検証で弱いと分かった項目に人手を寄せる形で設計します。
3段階目は、社内規程の整備と担当者への定着です。業務の処理サイクルの後に入力する方式を採る場合、事務の処理に関する規程の備え付けが要件になります1。規程には、誰がいつ読み取り、誰が確認し、誤りが見つかったときにどう直すかを書きます。運用が始まった後の見直しの周期も、あらかじめ決めておくとよいでしょう。定着は説明会1回では進みませんので、最初の1か月は問い合わせの窓口を決めて受けます。
つまずきやすい点は3つあります。1つ目は、確認の工程を人手の余りで賄おうとして、繁忙期に滞る例です。2つ目に、紙の原本をいつ廃棄するかを決めないまま始めると、紙と画像の両方が増えていきます。3つ目は、取引先都合で紙が残る分を例外扱いにし、担当者の記憶へ戻ってしまうことです。例外の処理こそ、手順に書き込んでおいてください。
取引先都合で紙が残る分は、最初から運用の一部として設計します。紙で届いた分をいつスキャンし、誰が確認するかを曜日単位で決めておきます。電子と紙で担当を分けると、繁忙期にどちらかが滞るでしょう。同じ担当が両方を扱い、入り口だけを分ける形が回しやすい設計です。紙をなくすことではなく、紙が残っても回る運用をつくることが目標になります。
効果が出るまでの期間は、対象の枚数と取引先の数で変わります。1つの帳票から始め、確認の工数が下がったことを数字で示してから対象を広げてください。最初から全社へ広げると検証の手が回らず、誤りが見つかったときの戻し先も分かりません。段階を分けるのは慎重さのためではなく、やり直しの範囲を小さく保つためです。1段階目で数えた枚数と時間は、この判断の材料になります。
費用と効果の見立て方
費用は、初期費用と運用費用の2つに分けて見積もります。初期費用には読み取り機、ソフトの導入、帳票の設計、基幹システムとの連携、社内規程の整備が入ります。運用費用に含まれるのは、利用料、保守、確認作業の人件費、そして紙を残す場合の保管の場所代です。効果は削減できた時間だけでなく、差し戻しの件数と過去分を探す時間でも測ります。価格の比較よりも、この2軸をそろえた比較のほうが判断を誤りません。
初期費用で見落とされやすいのは、機器やソフト以外の項目です。帳票の設計、既存の受注データとの項目の突き合わせ、担当者への説明、規程の作成という4項目は、社内の工数として発生します。外部へ委託する場合でも、要件を決める打ち合わせには自社の担当者が出ます。見積書に載らない工数を、あらかじめ人日で置いておいてください。導入の後に追加費用として現れるのは、この部分です。
運用費用は、枚数に比例する部分と固定の部分に分かれます。読み取りの件数で課金される形であれば、繁忙期の枚数で上限を見ておきます。確認作業の人件費は、読み取りの結果が安定するほど下がりますが、ゼロにはなりません。紙の原本を残す運用を続けるなら、保管の場所代も運用費用に含めます。帳簿書類の保存は原則7年間ですので、年ごとの費用として並べておくとよいでしょう2。
効果を測る指標は、導入の前に決めて計測を始めます。1枚あたりの入力と確認の時間、差し戻しの件数、過去分の書類を探すのに掛かった時間の3点が基本です。導入の前の1か月と、導入の後の3か月を同じ方法で数えます。繁忙期と閑散期では枚数が違いますので、同じ月同士で比べる形にしてください。数値が動かない場合は、確認の工程に人手が寄ったままである可能性を疑います。
対象を絞った段階的な導入は、費用の面でも理にかなっています。枚数の順に並べた上位の帳票だけを対象にすれば、初期費用を抑えたまま効果を測れます。効果が確かめられてから対象を広げると、次の投資の判断を数字で説明できるでしょう。全社一括の導入には、失敗したときの戻し先がありません。段階を分ける場合でも、保存の要件は最初の対象から満たしておきます。
内製で進める場合に必要な知識は、4領域に跨ります。帳票と業務の設計、文字認識の調整、基幹システムとの連携、保存要件の解釈です。この4領域を1名で担う体制にすると、その担当者の異動や休職で運用が止まります。外部の支援を受ける判断は、作業を肩代わりしてもらうためというより、要件の取り違えによる作り直しを避けるためのものです。保存の要件を誤ったまま運用を始めれば、保存のやり直しと原本の再確認が必要になります。
よくある質問
手書き文字の読み取りは、どの程度まで任せられますか
完全に任せる前提では設計しないでください。手書きは筆跡や記入欄の有無で結果が変わり、数字の1と7、0と6のように形の近い文字で迷いが出ます。認識できなかった箇所を人が直す画面を用意し、確認の対象を差異のある項目へ絞る形が現実的です。契約の前に、自社の注文書で試す期間を設けてもらってください。
紙の原本はいつ廃棄できますか
スキャナ保存の要件を満たして保存した後に廃棄できますが、要件を満たさない保存では原本を残すことになります。読み取りの品質、入力期間、検索と訂正削除の記録の3系統を満たしているかを確かめてください1。廃棄の可否は書類の区分と運用で判断が分かれますので、所轄の税務署や税理士への確認をお勧めします。
取引先が紙のままを希望する場合はどうすればよいですか
紙が残る前提で運用を組みます。委託取引の適正化を図る法律では、相手方から書面の交付を求められた場合には書面で交付する必要があります4。紙で受け取る分はスキャンして読み取り、電子で受け取る分と受注番号の採番が二重にならないようにします。併用の期間と窓口を決めておけば、担当者の判断に委ねずに済みます。
小規模な事業者でも制度の対象になりますか
取引の種類と規模で決まります。製造委託等では委託する側の資本金3億円、情報成果物の作成委託や役務提供委託では5千万円が線引きの一つで、改正では従業員300人と100人という基準が加わりました4。自社が委託する側か受託する側かで備える事務が変わりますので、条文を原典で確かめてください。
製品を選ぶときに確認できる公的な目安はありますか
法的要件を満たすと確認されたソフトの一覧が業界団体から公開されており、候補を絞る手掛かりになります67。ただし認証は製品の機能に対するもので、自社の運用が要件を満たすことまで保証するものではありません。規程の整備と確認の担当を決める作業は、製品の選定とは別に必要になります。
- 1 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】(令和7年6月)」(2025) 経路
- 2 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)〜令和4年1月1日以後に保存等を開始する方〜」(2025) 経路
- 3 出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」(2025) 経路
- 4 出典:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト(令和7年11月)」(2025) 経路
- 5 出典:総務省「令和6年通信利用動向調査の結果」(2025) 経路
- 6 出典:公益社団法人日本文書情報マネジメント協会「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証制度」(2026) 経路
- 7 出典:公益社団法人日本文書情報マネジメント協会「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証製品一覧」(2026) 経路
画像の出典元
- Moody shelves with neatly stacked papers in a shadowy room,/Photo by Carlos Mazorra on Pexels
- Warm still life featuring ink bottle and flowers with elegan/Photo by seymasungr on Pexels
- A luminous blue tunnel with digital numbers creating a futur/Photo by Oktay Köseoğlu on Pexels