◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 締め請求は締め日までの取引を1通にまとめる方式で、月末締めでは集計と発行、前月分の消込が月初に重なります。
- 適格請求書の記載事項は6項目で、消費税額等の端数処理は1通につき税率ごとに1回に限られます。
- 支払期日は給付の受領日から起算して60日以内に定め、2026年に施行された法では手形による支払が禁じられました。
- 締め日は取引先の属性として保持し、受発注データを請求の源泉に置くと月初の作業を分散させる余地があります。
目次

締め請求とは何か
締め請求とは、あらかじめ定めた締め日までの取引をまとめ、1通の請求書で代金を請求する方式です。取引が発生するたびに1通を交付する都度請求と対になる考え方で、締め日を毎月末に置く運用が月末締めと呼ばれます。請求書の記載事項は税率ごとの区分を含む6項目が求められ、適用する税率は標準の10%と軽減の8%の2区分に分かれます1。まとめる単位が大きいほど1件あたりの事務は軽くなる一方、締め日の前後に作業が偏るという負荷が新たに生まれます。
締め請求の運用は、締め日・請求日・支払期日という3つの日付で組み立てます。締め日は請求の対象となる取引を区切る日、請求日は請求書を交付する日、支払期日は代金を受け取る日を指します。3つが1か月の中でどう並ぶかで、経理の作業日と資金が入る時期が決まってきます。受注する側の立場では、給付を受領した日から起算して60日以内に支払期日を定める求めがあり、日付の設計はこの枠の中で考えることになります3。
都度請求と締め請求のどちらを選ぶかは、取引の頻度と1件あたりの金額から判断します。単発で金額の大きい取引は都度請求が向き、同じ相手と月に何度も納品する取引は締め請求のほうが照合の回数を抑えられます。仮に1か月あたり20件の納品がある取引先なら、都度請求では20通、締め請求では1通の交付で足ります。交付した請求書の写しには保存の求めがあるため、通数が減れば保存と検索にかかる手数も軽くなります2。
月末締めが選ばれてきたのは、会計の締めと請求の締めをそろえられるからです。月次決算は暦月で区切るため、締め日を月末に置くと売上を計上する期間と請求の対象期間が一致します。取引先の支払サイクルも月末を起点に組まれている場合があり、独自の締め日を設けると照合の手数が双方に生じます。ただし月末締めは、月初の数日に集計と発行が集中する運用でもあります。
請求の方式は取引先ごとに違っていても差し支えありません。1社ごとに締め日と請求の方式を項目として持たせ、請求書の作成時に自動で振り分ける運用にすれば、担当者の記憶に頼らずに済みます。方式が混在するときに効いてくるのは、締め日の異なる取引先が同じ月に並ぶことです。締め日が5日・10日・20日・月末の4通りに分かれていれば、経理の繁忙は1か月に4回訪れます。
締め請求では、1通の請求書に複数の納品分をまとめて記載します。この形でも記載事項を満たせば適格請求書として扱われ、税率ごとに区分した対価の額と消費税額等を記載します1。消費税額等の端数処理は、1通の適格請求書につき税率ごとに1回に限られます1。納品ごとに端数処理をして積み上げる計算は採れないため、集計の手順そのものを制度に合わせて組み直す必要があります。
| 日付 | 指す内容 | 設計での扱い |
|---|---|---|
| 締め日 | 請求の対象となる取引を区切る日です | 月末に置くと会計の締めと請求の締めがそろいます |
| 請求日 | 請求書を交付する日です | 記載事項の6項目を満たして交付します |
| 支払期日 | 代金を受け取る日です | 受領した日から起算して60日以内に定めます |
締め処理の見直しで先に確かめる5点(順位の根拠:後の工程が前の工程の結果に依存する実施の順序)
- 取引先ごとの締め日と支払期日を一覧にし、支払期日が受領日から起算して60日以内に収まっているかを確かめます3。
- 締め日から入金の消込までの作業を5段階に分け、1回あたりの所要時間と担当の人数を記録します。
- 適格請求書の記載事項の6項目と、端数処理を税率ごとに1回とする扱いを、どの工程で満たすかを決めます1。
- 交付した写しの保存の方法をそろえ、課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間の保存に耐える経路を用意します2。
- 手形による支払や、支払期日までに満額を資金化できない支払手段が残っていないかを点検します4。
月末締めの請求処理の流れ
月末締めの請求処理は、取引データの確定、集計と突合、請求書の発行、送付と控えの保存、入金の消込という5段階で進みます。前の段階が終わらないまま次へ進むと、差し戻しが後工程で連鎖します。とくに取引データの確定を終える前に集計へ入った場合、金額の修正が請求書の再交付まで波及します。5段階のどこに時間がかかっているかを分けて測ると、手を入れる箇所が絞れてきます。
取引データの確定は、締め日までの受注・出荷・検収の実績を締め切る作業です。受注時の単価と実際の出荷数量が一致しているか、値引きや返品が反映されているかを確かめます。ここで確定した数量と単価が、そのまま請求金額の根拠になります。締め日の当日に伝票が出そろわない場合は、いつまでの入力分を対象にするかを社内で先に決めておきます。
集計と突合では、確定した取引データを取引先ごとに合算し、注文書や検収の記録と突き合わせます。突合の観点は、次の4点です。
<ul><li>数量が出荷の実績と一致しているかを確かめます</li><li>単価が受注時の取り決めと一致しているかを確かめます</li><li>適用税率が10%と8%のどちらに当たるかを確かめます</li><li>値引きと返品が請求の対象へ反映されているかを確かめます</li></ul>
税率が10%と8%に分かれる取引先では、税率ごとに区分して合計する必要があります1。金額の不一致が見つかった場合は、請求書を出す前に取引先へ確認を取り、やり取りの記録を残しておきます。
請求書の発行では、記載事項の6項目を満たしているかを確かめます1。対象となるのは、次の6項目です1。
<ul><li>発行する側の名称と登録番号を記載します</li><li>取引を行った年月日を記載します</li><li>取引の内容を記載します</li><li>税率ごとに区分した対価の額と適用税率を記載します</li><li>税率ごとに区分した消費税額等を記載します</li><li>交付を受ける相手の名称を記載します</li></ul>
小売や飲食のように相手を特定しない取引では、記載事項を5項目とする簡易な様式も認められています1。項目ごとの書き方は、<a href="/column/tekikaku-seikyusho-kisai-jiko/">適格請求書の記載事項の書き方</a>で個別に確かめられます。締め請求では1通に複数の取引の日付が入るため、明細と合計の対応が読み取れる並びにします。
送付と控えの保存は、交付の方法と保存の方法をそろえる工程です。交付した適格請求書の写しは、課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間の保存が求められます2。電子データで交付した場合は、その電子データのまま保存する道も認められています2。紙と電子が混在すると後から探す経路が二重になるため、取引先ごとに交付の手段を1つへ寄せておくと確認が早く済みます。
入金の消込は、請求と入金を1件ずつ照合する作業です。支払期日が取引先ごとに違うと、消込の作業日も月内に分散します。差額が出る原因は、次の3つに大別できます。
<ul><li>振込手数料を受注した側が負担しています</li><li>値引きが請求書へ反映されていません</li><li>複数の請求が1回の入金へ合算されています</li></ul>
差額の扱いを先に決めておけば、月初の問い合わせを減らす余地があります。
自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。
月末締めで起こりやすいつまずき
月末締めの請求処理でつまずく箇所は、締め後の伝票の追加と訂正、取引先ごとに異なる締め日、月初への業務集中の3つに集まります。いずれも担当者の注意で埋める運用になりやすく、繁忙の時期には確認漏れがそのまま外へ出ます。金額の誤りは請求書の再交付で収まる場合もありますが、支払期日の設定を誤れば法の求めに反する事態にもつながります3。原因を工程ごとに切り分けておくと、手当ての順序が決まります。
締め後に伝票が追加されると、集計のやり直しが請求書の再交付まで波及します。1通の請求書に20件の明細が入っていれば、1件の訂正でも合計額と消費税額等の再計算が必要になります。端数処理は1通につき税率ごとに1回のため、明細を差し替えると税額そのものが変わる場合もあります1。締め後の追加分を翌月に回すのか当月に含めて再交付するのかは、社内の既定として先に決めておきます。
締め日が取引先ごとに違うと、経理の作業は月内に何度も立ち上がります。5日・10日・20日・月末の4通りが並ぶ場合、集計と突合の段取りを月4回組み直すことになります。締め日ごとに対象の期間が違うため、同じ納品が二重に請求される、あるいは請求から漏れるという誤りも起こりえます。取引先ごとの締め日を一覧で管理し、請求の対象期間を機械的に切り出せる形にしておけば、確認の手数を抑えられます。
月初への集中は、締め日と請求日と支払期日が同じ数日に重なることで生じます。月末締めでは、前節で挙げた5段階のうち集計以降の工程が、前月分の入金の消込と同じ週に並びます。作業が重なる時期に確認の目が減ると、単価の誤りや税率区分の取り違えが見過ごされます。作業日を分散させるには、締め日そのものの見直しか、工程の一部を締め日の前へ前倒しする手当てが要ります。
請求の誤りは、取引先の仕入税額控除(支払った消費税額を納付する税額から差し引く仕組み)にも影響します。適格請求書の記載事項を欠くと、相手方は控除の要件を満たせず、再交付の依頼が返ってきます2。支払う側では、支払期日を受領日から起算して60日を超える日に定める扱いは認められず、手形による支払も禁じられました34。請求書の様式だけでなく、支払の条件まで含めて点検する必要があります。
締め処理が1名の担当に集まると、その担当が不在の月に処理が止まります。締め日ごとの対象期間、取引先ごとの特例、値引きの扱いといった判断が手元の記憶に残っている状態では、引き継ぎに時間がかかります。作業の手順と判断の基準を書き出し、誰が見ても同じ結果になる形へ寄せておくのが備えになります。書き出した内容は、後の見直しでそのまま検討の材料として使えます。
制度改正が月末の請求処理に与える影響
制度の改正は、請求書の記載、電子データの取り扱い、支払手段と支払期日の3方向から月末の処理に影響します。本節では制度が求める要件を、次節では自社の締め日と支払期日の決め方を扱い、役割を分けて整理します。2026年に施行された中小受託取引適正化法では、下請という用語の見直しとともに、手形による支払が禁じられました4。紙の手形と小切手は、2026年度末をもって交換所での取り扱いを終える方針が示されています6。
請求書の側で押さえる要件は、記載事項の6項目と端数処理の扱いです1。税率ごとに区分して合計した対価の額、適用税率、税率ごとに区分した消費税額等が求められ、10%と8%が混在する請求では区分の抜けが起こりやすい箇所になります1。消費税額等の端数処理は1通につき税率ごとに1回で、切上げ・切捨て・四捨五入のいずれを採るかは事業者の選択に委ねられています1。明細ごとに端数処理をした金額を積み上げる計算は採れません1。
交付した請求書の控えは、紙でも電子でも保存の求めを満たす形にします。交付した適格請求書の写しは、課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間の保存が求められます2。電子データで交付した場合は、その電子データのまま保存する道も認められており、紙に出力して保存する運用と選べます2。電子で受け渡した請求書を保存する際の要件は、<a href="/column/denshi-invoice-hozon/">電子データによる請求書保存の要件</a>で個別に整理しています。締め請求では1通に多数の明細が入るため、後から特定の取引を探せる並びで保存しておくと、照会への回答が早く済みます。
支払手段の見直しは、受注する側の資金の入り方に直結します。手形による支払は禁じられました4。電子記録債権(電子的に記録して譲渡できる金銭債権)も対象になります。ファクタリング(売掛債権を譲渡して資金化する取引)も同じ枠に入ります。支払期日までに満額を資金化できない手段は、手形と同じ扱いになります4。支払期日は、給付を受領した日から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間内に定める求めがあります3。締め日と支払日の組み合わせがこの枠に収まっているかは、契約書の文言と実際の入金日の両方で確かめます。
請求のデータそのものを電子で受け渡す仕組みも整ってきました。国内向けのデジタルインボイス(標準化された電子の請求データ)の標準仕様は公表され、その後も更新が続いています5。この仕組みは、送り手と受け手がそれぞれのアクセスポイント(データを中継する事業者のサービス)を介してやり取りします7。4者の並び(送り手・受け手とそれぞれの中継事業者の4者を介する経路)を前提とする仕組みです7。相手ごとに請求の形式を作り込む手数は減ります。仕様に沿ってデータを渡せれば、受け取った側は再入力なしに自社の会計へ取り込める余地があります。
制度への対応は、請求書の様式を差し替えるだけでは終わりません。記載事項の6項目、端数処理を税率ごとに1回とする扱い、支払期日の60日の枠、電子データの保存という4つの要件は、いずれも締め処理の工程の中に埋め込まれています13。個別の税務の判断は所轄の窓口や専門家に確かめつつ、要件を工程のどこで満たすかは自社で決めておく必要があります。次節では、その決め方を締め日と支払期日の設計として整理します。

締め日と支払期日の設計の考え方
締め日と支払期日の設計では、支払期日を特定できる形で定めること、自社の締め日を統一するか相手に合わせるか、契約と実運用のずれを埋めることの3点を決めます。支払期日に課される期間の枠は、前節で整理した制度の要件をそのまま用います。枠の内容と根拠は、<a href="/column/shiharai-kijitsu-60nichi/">支払期日の期間制限の解説</a>で個別に確かめられます。月末締めで翌月末払いとすると、月の初日に納品した分の支払期日は受領から60日に達する月もあり、枠の上限に並びます。日付の並べ方は、資金の入り方と法の求めの両面から検討します。
支払期日は、後から誰が見ても1つの日に定まる書き方にします。毎月末日締めの翌月末日払い、毎月20日締めの翌月20日払いのように、締め日と支払日を対で書けば日付は自動的に決まります。月末が休日にあたる場合の扱い、翌月に同じ日が存在しない月の扱いも、あらかじめ文言へ含めておきます。期限が定まらない書き方では、受領日から起算した期間の求めを満たすかどうかの判定すらできません3。
自社の締め日を統一するか取引先の締め日に合わせるかは、取引先の数と1社あたりの取引額から判断します。締め日を月末に統一すれば集計は月1回で済み、月内に4回立ち上がっていた段取りを1回へ寄せられます。相手の支払サイクルが自社の締め日と合わない場合は、締め日を動かした結果として入金が1か月遅れることもあります。統一による手数の削減と資金の入り方を並べて比べ、取引先を2つに区分して決めます。取引額が小さく件数の多い相手は月末へ統一し、取引額の大きい相手は相手の締め日に合わせます。
取引基本契約と実運用のずれは、締め日の変更を重ねてきた取引先で生じます。契約書には毎月20日締めと書かれているのに、実務では月末締めで処理しているという状態は、支払期日の判定を曖昧にします。契約の文言、請求書の記載、実際の入金日の3点を突き合わせ、違いがある取引先を先に洗い出します。ずれが見つかったら、契約の変更か運用の是正のどちらかへ寄せ、経緯を記録として残しておきます。
締め日の設計は、経理の工数と資金の回り方を同時に動かします。締め日を月末へ寄せると集計の回数は減りますが、月初の作業量は増えます。締め日を月中に分散させれば1回あたりの負荷は軽くなり、代わりに段取りの回数が増えます。どちらを採るかは、担当者の人数と1か月あたりの請求件数から決めます。担当者が2名以下なら月末への統一を採り、3名以上いるなら締め日を月中へ分散させます。
支払う側として設計する場合は、相手の資金への影響も検討の対象に入ります。手形と資金化の遅れる手段が使えない点は、前節で整理した制度の要件のとおりです。紙の手形と小切手が2026年度末で交換所の扱いを終えるため、振込を前提とした支払へ切り替えます6。振込へ寄せる場合は、支払日の前営業日までに承認を終える段取りを社内で決めます。支払手段を変えると、支払日の締め切りの時刻や承認の期限も動くため、社内の締め日の設計へ反映させます。
請求処理の負荷を平準化する仕組み
請求処理の負荷を平準化する道筋は、受発注データの整備、標準仕様の適用、承認と例外対応の3段階に分けられます。締め日に作業が集中するのは、締め日を迎えてから請求のためのデータを作り直しているからです。受注の時点で請求に使える形のデータが残っていれば、締め後の作業は集計と確認に絞れます。3段階のどこから着手するかは、現状の工程で手戻りの多い箇所から決めます。締め後の訂正が月に5件を超えるなら、受発注データの整備から入ります。
受発注データの整備は、単価と数量の一元化と締め日の属性化から始めます。単価と数量の一元化は、受注の時点で確定した単価と数量を、そのまま請求の根拠として持ち回す考え方です。締め日の属性化は、取引先ごとの締め日を担当者の記憶ではなく取引先の項目として保持することを指します。この2つが済んでいれば、締め日を迎えた時点で請求の対象となる取引を機械的に切り出せます。
標準仕様の適用は、電子データの交換と記載事項の自動転記の2つで効いてきます。電子データの交換では、公表されている標準仕様に沿って請求データを送受信し、相手ごとの形式に合わせる手数を減らします5。送り手と受け手がそれぞれのアクセスポイントを介する4者の並びを前提とするため、取引先が増えても接続の作り込みは増えにくい仕組みです7。記載事項の自動転記では、6項目のうち登録番号や税率ごとの区分を取引データから埋め、手入力の箇所を絞ります1。
承認と例外対応は、承認経路の固定と締め後訂正の受け皿の2つで組みます。承認経路の固定では、金額の区分ごとに承認する役割を定め、締め日の直後に承認が滞らないようにします。締め後訂正の受け皿では、締め後に出てきた伝票を翌月分へ回すのか当月に含めるのかを既定として決め、判断を都度持ち込まない形にします。例外の扱いを先に決めておけば、繁忙の時期に確認の往復が増える事態を避けられます。
仕組みに載せる範囲を広げるほど、初期の整備には手数がかかります。受注データの項目の追加、取引先ごとの締め日の登録、承認の役割の定義は、いずれも既存の運用の棚卸しを前提とします。整備の手数を惜しんで一部だけを電子化すると、紙と電子が並走して確認の経路が二重になります。着手の順序は、紙と電子が並走する期間を短く保てる範囲から選びます。同じ締め日の取引先をまとめて移せば、並走の期間を1か月以内に収められます。
平準化の効き方は、月初の作業日数と差し戻しの件数で測れます。締め日から請求書の発行までに要した日数、締め後の訂正の件数、入金の消込で差額が出た件数を月ごとに記録すれば、手当ての結果が見えてきます。数字が動かない場合は、工程の順序ではなくデータの持ち方に原因がある可能性を検討します。測る項目を3つに絞れば、記録そのものが負荷になりません。担当者が月末に1度まとめて記入する運用にすれば、日々の手間も増えません。

見直しに着手するときの確認事項
見直しは、次の4段階の順に進めます。
<ul><li>現状の棚卸しで作業と所要時間を記録します</li><li>設計の見直しで締め日と支払期日を決めます</li><li>取引先への周知で変更の内容と時期を伝えます</li><li>段階的な移行で対象を分けて切り替えます</li></ul>
順序を入れ替えると、周知の後に設計が変わる、移行の途中で対象の取引が漏れるといった手戻りが起こります。棚卸しでは、締め処理の作業を工程ごとに書き出し、1回あたりの所要時間と担当の人数を記録します。記録がないまま設計へ入ると、変更の効き方を後から比べられません。
現状の棚卸しでは、締め日から入金の消込までの作業を1つずつ数え上げます。月末締めの請求処理の流れで挙げた5段階に分け、それぞれの所要時間と担当を記録します。工程ごとに時間を分けて測ると、どの段階が月初の作業量を押し上げているかが見えます。取引先ごとの締め日、請求の方式、支払期日の一覧も同時に作ります。この一覧が、設計の見直しでそのまま検討の材料になります。
設計の見直しでは、棚卸しで作った一覧を判断の材料へ変えます。工程ごとの所要時間を並べ、上位2つの工程に手を入れる対象を絞ります。取引先ごとの締め日の一覧では、件数の少ない締め日から統一の候補に挙げます。手形による支払が残っている相手は、振込へ切り替える対象として先に並べます。制度の要件をどの工程で満たすかは、前節で整理した対応の考え方に沿って割り当てます。判断の結果は、締め日と支払期日の組み合わせとして1社ごとに書き出します。
取引先への周知は、変更の内容と適用の時期を対で伝えます。締め日を変える場合、変更後の最初の請求は対象の期間が長くなる、あるいは短くなるため、金額の増減が事前に分かる説明を添えます。契約書の文言の変更が必要かどうかも、この段階で確かめます。周知のやり取りを記録として残しておけば、後から支払期日の根拠を問われたときの説明の裏づけになります。
段階的な移行では、対象の取引先を区分して順に切り替えます。取引の件数が少ない取引先から始め、集計と突合の手順が回ることを確かめてから範囲を広げます。この工程を自社だけで進めるには、消費税の記載要件の理解、受発注と会計のデータ項目の設計、業務の手順書の整備という3領域の知見が要ります。担当者1名では兼務のまま月末を迎えることになりやすく、経理と情報システムの双方から人を出す体制が前提になります。
自社だけで進める場合と外部の支援を受ける場合で差が出るのは、要件の解釈と移行の段取りです。制度の要件を工程へ落とす作業は、記載事項の6項目や支払期日の60日の枠を、自社のデータ項目に1つずつ対応づける作業でもあります13。対応づけを誤ると、請求書の再交付や支払条件の是正が後から必要になり、月末の作業はさらに増えます。手戻りの範囲を小さく保つために、設計の段階で外部の知見を入れる選択も検討に値するでしょう。
よくある質問
締め日を月末に統一すると入金の時期はどう変わりますか
入金の時期は、締め日を動かした分だけ前後します。月末締めへ統一すると、締め日が月中だった取引先の請求は対象の期間が変わり、変更後の最初の1回だけ請求額が増減します。支払期日は受領日から起算して60日以内で、できる限り短い期間内に定める求めがあるため、締め日の変更に合わせて支払日も見直します3。
締め後に届いた伝票はどのように扱えばよいですか
締め後の伝票は、翌月分へ回すか当月に含めて再交付するかを既定として先に決めておきます。1通に複数の明細が入る締め請求では、明細の差し替えで合計額と消費税額等の再計算が生じます。端数処理は1通につき税率ごとに1回のため、差し替えの結果として税額が変わる場合もあります1。
手形での支払を続けている取引先にはどう伝えればよいですか
手形による支払は、2026年に施行された中小受託取引適正化法で禁じられました4。電子記録債権やファクタリングでも、支払期日までに満額を資金化できない手段は同じ扱いです4。紙の手形と小切手は2026年度末をもって交換所での取り扱いを終える方針が示されており、振込を前提とした条件への切り替えの相談を早めに始めるのが現実的でしょう6。
請求書を電子データで送った場合も紙の控えは必要ですか
電子データで交付した適格請求書の写しは、その電子データのまま保存する道が認められています2。写しの保存は、課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間が求められます2。紙と電子が混在すると探す経路が二重になるため、取引先ごとに交付の手段を1つへ寄せておくと照会への回答が早く済みます。
締め日を変更するときに契約書の見直しも必要ですか
契約書に締め日や支払期日が書かれている場合は、文言の見直しが必要になります。契約の記載、請求書の記載、実際の入金日の3点が食い違っていると、支払期日の根拠を示せません。変更の内容と適用の時期は書面で残し、個別の税務や法務の判断は所轄の窓口や専門家へ確かめてください。
- 1 出典:国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」(2025) 経路
- 2 出典:国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」(2025) 経路
- 3 出典:公正取引委員会「取適法の概要」(2026) 経路
- 4 出典:経済産業省 中小企業庁「ミラサポplus 受注者を守る法!手形払い禁止など「取適法」がもたらす変化」(2025) 経路
- 5 出典:デジタル庁「JP PINT(日本におけるデジタルインボイスの標準仕様)」(2026) 経路
- 6 出典:一般社団法人 全国銀行協会「紙の手形・小切手利用廃止へ」(2026) 経路
- 7 出典:デジタルインボイス推進協議会(EIPA)「デジタルインボイスとは」(2026) 経路
画像の出典元
- Office building exterior with lit windows at night, showing/Photo by Carsten Ruthemann on Pexels
- Top view of a cluttered office desk with crumpled papers, la/Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels
- Bright modern office interior in Sahibzada Ajit Singh Nagar with desks, chairs, and green plants./Photo by Capture Crew on Pexels