◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 発注システムの費用は、初期費用、月額利用料、保守運用費、社内側の負担の4つに分けて見積もります。
- 2024年のBtoB-EC市場規模は514.4兆円、EC化率は43.1%で、取引先が電子発注に応じる前提が整ってきました。
- 企業のクラウドサービス利用率は2024年時点で80.6%と示され、クラウド型が選択の出発点になっています。
- 投資回収は、削減時間に賃率を掛けて年間の削減額を出し、3年から5年の総保有コストと突き合わせて判断します。

発注システムの費用を考える前に押さえたい前提
発注システムの費用は、機能の多さではなく、対象業務の範囲と取引先の数で決まります。発注システムとは、電話やFAX、メールで受けていた注文を、決められた画面やデータ形式で受け渡す仕組みです。費用の話に入る前に、この範囲を決める作業が要ります。
取引の電子化はすでに広い範囲へ及び、電子商取引に関する市場調査では2024年のEC化率が43.1%に達しています1。加えて、受託取引の法令改正と電子取引データの保存義務が、電子化を前提とした運用を求めています24。
発注システムとは何か
発注システムは、注文を受け取る入口と、受け取った内容を確認して社内の処理へ渡す仕組みをまとめたものです。入口には、取引先が自分で入力する画面、既存の取引データを取り込む経路、担当者が代行して入力する画面の三つがあります。どの入口をいくつ備えるかで、初期の設定量と月々の利用料の段階が動きます。
入口の後ろには、単価の判定、与信の確認、在庫の引き当て、伝票の作成、出荷指示への引き渡しといった処理が続きます。ここを既存の販売管理や会計と結ぶか、切り離して運用するかが、初期費用の分かれ目になります。注文を受ける画面の見え方だけで費用を比べますと、後ろの処理の作り込みが見積もりから抜け落ちます。
BtoB-EC化率43.1%が示す取引電子化の広がり
電子商取引に関する市場調査では、企業間の電子商取引を指すBtoB-ECの市場規模が2024年に514.4兆円と示されています1。すべての商取引に占める割合であるEC化率は43.1%で、取引金額の4割強が電子的な受発注へ移った計算です。取引先が電子発注に慣れている前提で費用を考えられる段階に入りました。
この値は市場全体のものであり、自社の取引先の何割が電子発注へ移るかは別に確かめる必要があります。電子発注に応じない取引先が残る場合、紙と電子の併用期間が続き、削減できる作業時間は目減りします。取引先の移行率の見込みは、費用対効果を測る前提として先に置いてください。
取適法と電子帳簿保存法が変えた費用の前提
受託取引に関する法令は2026年に名称と内容が改まり、下請法は中小受託取引適正化法、略して取適法へ移りました2。手形による支払いが禁じられ、発注や支払いの条件を記録として残す運用が求められます3。条件の記録は、発注システムに備える機能として費用へ織り込む対象です。
電子取引でやり取りした取引情報は、電子データのまま保存する取り扱いが定められています4。保存の要件を満たす仕組みを後から足すと、改修費と検証の工数が別に発生します。導入時の要件定義へ保存要件を含めるほうが、3年から5年で見た総額を抑えられます。
費用対効果の見積もりで先に固める5点(順位根拠:後の項目が前の項目の値に依存する実施順序)
- 対象業務の特定です。電話、FAX、メールのどの受付経路を電子化するかを決めないと、削減時間の母数が出ません。
- 削減時間の把握です。注文1件あたりの入力、確認、転記の時間を分単位で数え、月間の注文件数を掛けます。
- 金額への換算です。削減した時間に自社の賃率を掛け、12か月分へ伸ばして年間の削減額とします。
- 投資回収期間の算定です。初期費用を、年間の削減額から月額利用料と保守運用費の年額を引いた差額で割ります。
- 取引先の移行率の見込みです。2024年のEC化率は43.1%であり1、自社の取引先が同じ割合で移るとは限りません。
発注システムの費用の内訳
発注システムの費用は、初期費用、月額利用料、保守運用費、社内側の負担の4つに分けると比べやすくなります。提供元の見積書に並ぶのは前の3つで、4つ目は自社の人件費として社内に残ります。
金額の水準は提供元の料金表で確かめる前提とし、ここでは費用に含まれる項目を整理します。見積書の合計だけを比べると、社内側の負担の差が見えず、投資回収の計算が甘くなります。4つの区分を先に決めておくと、提供元ごとの見積書を同じ形で並べられます。
初期費用に含まれる項目
初期費用は、要件定義、画面と帳票の設定、取引先マスタと商品マスタの移行、既存システムとの接続で構成されます。このうち金額が動きやすいのは、既存システムとの接続の部分です。販売管理や会計との連携の本数が増えるほど、設計と検証の工数が積み上がります。
取引条件の記録と電子取引データの保存要件を満たす設定も、初期費用の側で押さえる対象です4。稼働後に保存要件を満たす改修は、動いているデータを移す作業を伴い、初回の設定より手間がかかります。締め切りのある法対応を後回しにすると、費用が二重になります。
月額利用料と保守運用にかかる費用
月額利用料は、利用者数、取引先の社数、月間のデータ量、使う機能の範囲で段階が変わります。契約前に、3年後の取引先数と注文件数を置いた見積もりを取ると、増加分を織り込めます。単価だけを並べた比較では、総額の順位を読み違えます。
保守運用費には、障害対応、問い合わせ窓口、機能の更新、法令改正への追随が含まれます。含まれる範囲は提供元ごとに違うため、金額の目安は提供元の料金表で確かめてください。比較記事に並ぶ相場の値を、そのまま前提へ置かないでください。
見落としやすい社内側の負担
社内側の負担は、取引先への案内、マスタの整備、担当者の教育、紙と電子の併用期間の二重処理に分かれます。人手不足のもとで労働投入量の最適化が論点になっている状況では10、この負担の見積もりが投資判断を左右します。併用期間の長さを決める計画を、導入前に作ってください。
自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。
提供形態ごとに変わる費用構造
提供形態は、クラウド型、パッケージ型、個別開発の3つに分かれ、費用の出方が変わります。クラウド型は初期費用が小さく月額の費用が続き、個別開発は初期費用が大きく月々の額が小さくなります。企業のクラウドサービス利用は広がっており、選択の出発点はクラウド型に寄っています5。
どれが安く済むかは、比べる期間の取り方で入れ替わります。3年から5年の総保有コストで並べると、月額の差が積み上がって順位が変わります。3つにはそれぞれ向く場面があるため、期間と場面の2つを先に決めてください。
クラウド型・パッケージ型・個別開発の費用の出方
クラウド型は、初期設定と取引先データの移行が初期費用の中心で、月額利用料が使い続ける間かかり続けます。自社の商習慣を標準の機能へ寄せられる場合に、総額を抑えやすい形です。寄せられない項目が多いと、追加開発の費用が積み上がります。
パッケージ型は導入時に一括で発生し、保守契約が毎年かかります。自社の帳票や運用の手順を残したい場合に選ばれる形です。個別開発は要件定義から作り込むため初期費用が大きく、稼働後は運用保守と改修費が中心です。
クラウド利用が8割を超えた背景
情報通信白書では、企業のクラウドサービス利用率が2024年時点で80.6%と示されています5。通信利用動向調査の結果では83.5%です6。調査の時点と対象が異なるため単純な比較はできませんが、利用が広がっている点は共通しています。
利用が広がると、社内に置くサーバの購入費と更新費を前提にしない見積もりが取りやすくなります。ただし、既存の販売管理が社内にある場合は、接続の設計費が別に必要です。移行する範囲によって、初期費用の見え方は変わります。
3〜5年の総保有コストで比べる視点
総保有コストは、初期費用に、月額利用料と保守運用費の年額を年数分足して求めます。3年で並べるとクラウド型が有利に見え、5年で並べると個別開発が近づきます。例外処理が多く標準機能で収まらない場合は、年数を延ばした試算も併せて用意してください。

費用対効果の測り方
費用対効果は、削減できる作業時間を金額へ換算し、初期費用と年間の費用に突き合わせて測ります。対象業務の特定、削減時間の把握、金額への換算、投資回収期間の算定の順に進めると、前提の抜けが見えます。4つの段のどれかを飛ばすと、金額の根拠が説明できなくなります。
試算は自社の前提を当てはめた見通しであり、取引先の移行率や賃率が変われば結果も動きます。数字は幅で示し、置いた前提を併記してください。効果を保証する書き方は、後の検証で崩れます。
削減できる作業時間を金額に換算する手順
はじめに、対象業務の特定として、電話、FAX、メールのどの受付経路を電子化するかを決めます。次に削減時間の把握として、注文1件あたりの入力、確認、転記の時間を分単位で数えます。経路ごとに件数が違うため、経路別に数えてください。
金額への換算では、削減した時間に自社の賃率を掛け、12か月分へ伸ばして年間の削減額とします。賃率は自社の給与と法定福利費から出す値で、外部の相場を当てはめないでください。ここで前提を書き残すと、稟議での質問に答えられます。
投資回収期間の計算の組み立て
投資回収期間の算定は、初期費用を、年間の削減額から月額利用料と保守運用費の年額を引いた差額で割って求めます。差額が小さいと回収年数は伸び、移行率が下がると削減額そのものが縮みます。移行率を3通り置いた試算を用意してください。
回収年数は、3年から5年の総保有コストと同じ期間で並べると読みやすくなります。年数がその期間を超える場合は、対象業務を絞って初期費用を下げる方向を先に検討します。効果の出る範囲から始める判断が、回収年数を短くします。
効果が業務効率化に偏りやすい構造への備え
国内企業のDXの取組と成果は年次で調べられ、成果は区分ごとに分けて把握されています7。作業時間の削減は測りやすい一方、売上への波及は測りにくく、稟議では効率化の側に寄った説明になりがちです。売上側の指標を1つだけ添えると、説明の偏りが薄まります。
費用対効果を高める導入の進め方
進め方は、対象業務の絞り込み、取引先の移行率、実質負担の圧縮の3段で組み立てます。同じ費用でも、この3段の作り方で削減できる作業時間は変わります。範囲を広げすぎた導入は、初期費用が膨らんだうえに移行が進まず、回収年数が伸びます。
絞り込みでは受注経路の統一と例外処理の切り出しを決め、移行では移行率の目標設定と併用期間の設計を先に置きます。圧縮の段では、補助金の要件確認と効果の記録を並行して進めます。
対象業務を絞った段階的な導入
対象業務の絞り込みは、受注経路の統一から始めます。電話とFAXで受けていた注文を1つの入口へ寄せると、入力の重複と転記の待ちが減ります。全経路を同時に移すより、件数の多い経路から順に移すほうが、効果を早く測れます。
例外処理の切り出しも同時に決め、特殊な単価や納期、締め切りの条件は当面は人手へ残します。標準の注文から電子化する形にすると、初期費用を抑えたまま効果を測れます。例外の件数を数えておくと、次の段階で作り込む範囲を判断できます。
取引先の移行率を効果の前提に置く
取引先の移行率の目標設定は、削減できる作業時間の見込みを直接左右します。2024年のEC化率は43.1%ですが1、自社の取引先が同じ割合で移るとは限りません。取引先を件数の多い順に並べ、上位から移行の可否を確かめてください。
併用期間の設計では、紙と電子が並ぶ期間の終わりを決めます。終わりを決めない併用は、二重処理の人件費が積み上がり、削減額を打ち消します。案内の順番と切り替えの締め切りを、導入前に取引先へ伝えてください。
補助金を使って実質負担を下げる
実質負担の圧縮では、補助金の要件確認を早い段階に置きます。制度は年度と回次で補助率、上限額、締め切りが変わるため、公式の案内で最新の条件を確かめてください9。効果の記録は申請と報告の両方で使うため、導入前の作業時間を残しておきます。
社内稟議で費用対効果を示す組み立て
稟議で通るのは、金額の細かさではなく、前提と幅が示された試算です。初期費用、年間の費用、年間の削減額、回収年数の4つに絞り、前提を1枚に添えてください。数字を増やすほど質問も増え、判断が先へ延びます。
加えて、他方式との比較と、導入後の測り方を同じ資料へ入れます。比較は選ばなかった案の理由を示す材料になり、測り方は効果の検証を約束する材料になります。この2つが欠けると、金額の根拠を問われた時点で差し戻されます。
経営層に示す数字の絞り込み
示す数字は、初期費用、年間の費用、年間の削減額、回収年数の4つで足ります。削減額には賃率と対象件数の前提を添え、移行率を3通り置いた幅で示してください。幅で示すほうが、単一の値を出すより後の検証で崩れにくくなります。
売上側の指標を1つ添えると、効率化に寄った説明が薄まります。受注の締め切り時刻を延ばせる、受注の誤りが減るといった、取引先側の利点を1行で書く形です。取引の電子化が43.1%まで進んだ状況では1、取引先への提供価値も判断の材料になります。
他方式との比較表の作り方
比較表は、クラウド型、パッケージ型、個別開発を行に置き、初期費用、年間の費用、3年から5年の総保有コスト、想定される制約を列に置きます。金額を書けない欄は、費用の出方の説明で埋めてください。空欄を残すと、比較していない印象になります。
年次のIT動向調査で公表される全体の傾向を併せて示すと、自社の投資の位置づけが伝わります8。ただし、他社の傾向は自社の回収年数の根拠にはなりません。回収年数の根拠は、自社の注文件数と賃率に置いてください。
導入後に効果を測り続ける仕組み
効果の記録は、導入前の作業時間を基準として残すところから始まります。稼働後は、月ごとに移行した取引先の社数と電子で受けた注文の件数を並べ、試算との差を見ます。差が出た理由を移行率と例外処理に分けて書くと、次の投資の説明が短くなります。
人手不足のもとで労働投入量の最適化が問われる状況では10、削減した時間の使い道も併せて示します。空いた時間を受注確認や与信の精査へ回した実績があると、効率化にとどまらない説明ができます。記録の場所と担当を、導入時に決めておいてください。

よくある質問
発注システムの費用はどの時点で発生しますか
初期費用、月額利用料、保守運用費の3つで時点が分かれます。初期費用は要件定義から稼働までの間に発生し、月額利用料は稼働後に毎月かかります。保守運用費は、月額へ含まれる契約と、年額で別に請求される契約があります。契約前に3年分の支払い予定を並べて確かめてください。
見積もりを取るときに何を伝えると金額が固まりますか
対象の受注経路、月間の注文件数、取引先の社数、既存システムとの接続本数の4つを伝えてください。この4つが決まると、初期の設定量と月額の段階が定まります。接続の本数が未定のままだと見積もりに幅が残り、稟議での説明が難しくなります。
補助金は発注システムの導入に使えますか
デジタル化とAI導入を支援する公的な制度が用意されており、対象や補助率は公募の回次ごとに定められています9。補助率、上限額、締め切りは年度と回次で変わるため、申請前に公式の案内で条件を確かめてください。旧称のままの情報も残っているため、出典の年を合わせて見てください。
取引先が電子発注に応じない場合はどうなりますか
紙と電子の併用が続き、削減できる作業時間が目減りします。2024年のEC化率は43.1%であり1、取引先の全社が移る前提は置けません。注文件数の多い取引先から順に移行を進め、併用期間の終わりを決めた計画を作ってください。移行率を3通り置いた試算があると、判断が早まります。
契約の形によって費用の見え方は変わりますか
変わります。利用料に保守が含まれる契約では月額が大きく見え、保守を別契約にすると初期の見積もりが小さく見えます。比べるときは、3年から5年の総保有コストへそろえてください。あわせて、電子取引データの保存要件を満たす機能が含まれるかも確かめてください4。
- 1 出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025) 経路
- 2 出典:公正取引委員会「2026年1月から「下請法」は「取適法」へ(リーフレット)」(2025) 経路
- 3 出典:中小企業庁「ミラサポplus 受注者を守る法!手形払い禁止など「取適法」がもたらす変化」(2025) 経路
- 4 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)」(2025) 経路
- 5 出典:総務省「令和7年版 情報通信白書(クラウドサービス)」(2025) 経路
- 6 出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」(2026) 経路
- 7 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026」(2026) 経路
- 8 出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2026 プレスリリース第1弾」(2026) 経路
- 9 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト」(2026) 経路
- 10 出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章第2節 労働投入量の最適化」(2026) 経路
画像の出典元
- A group of professionals reviewing financial charts in an of/Photo by Yan Krukau on Pexels
- Vector illustration of modern tablet with check marks placed/Photo by Monstera Production on Pexels
- Detailed view of network cables plugged into a server rack i/Photo by Brett Sayles on Pexels