◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 2016年度の実証事業では、受発注をする企業の双方で業務時間が約50%程度減ったと報告されています。決済の仕組みと連ねた2017年度の実証では、削減の程度は60%程度まで伸びました。
- 2024年のBtoB-EC(企業間の電子商取引)のEC化率は43.1%、市場規模は514兆4,069億円で、前年から10.6%増えています。注文の受け口はすでに画面へ移りつつあります。
- 稼働までの期間は取引の形で変わります。共同開発商品の発売に合わせて2か月でBtoB向けサイトを開いたフリュー株式会社の事例(2016年)と、実質的な開発期間が約4カ月だった食品卸の事例(2017年)があります。
- 効果の出どころは転記と再入力です。主に東京23区内の中小企業を対象とした2024年の調査では、取り組みの効果として業務効率化を挙げた企業が81.0%、人手不足の解消を挙げた企業が18.8%でした(回答1,218社)。
目次

受発注の業務時間が約50%減る根拠
オンライン受発注とは、電話・FAX・メールで受けていた注文を、取引先自身の画面入力へ移す受注の形です。効果は時間に出ます。2016年度の実証事業では受発注をする企業の双方で業務時間が約50%程度減り、決済の仕組みと連ねた2017年度の実証では60%程度まで縮まりました2。
朝いちばんに届くのは、昨夜のうちに流れてきたFAXの束です。手書きの品番を読み取り、基幹システムへ打ち直し、単位の違いを確かめてから出荷へ回す。注文の受け取り、注文書の転記、在庫と出荷の指示と、同じ数字を「三度なぞる」日があります。打ち直しの速さだけは年々上がっていきますが、そこに賞状は出ません。あなたの現場にも、心当たりはないでしょうか。
打ち直しに消える時間は、すでに数えられています。共通EDI(企業間で注文データをやり取りする共通の様式)の実証事業では、2016年度に12件の地域・業界が選ばれ、受発注をする企業の双方で業務時間が約50%程度減ったと報告されています2。全銀EDIシステムと連ねた2017年度の実証では、削減の程度は60%程度でした2。転記が消えれば、そのぶんの時間はまるごと空くという結果です。
この結果は、実証に参加した企業の条件の下で確かめられたものです。品目の数、取引先の数、単位の揃い方が違えば、出る幅も変わります。自社でも同じだけ減ると読むのは早計ですね。減るのは転記と再入力の時間であって、商談や与信の判断に使う時間ではありません。どこが減るのかを先に押さえておくと、稟議の説明が途中で崩れません。
転記に費やした時間は、どの請求書にも載りません。
EC化率43.1%が示す取引の移行
BtoB-EC市場514兆円台の規模
なぜ、いま時間が減るのか。注文の受け口そのものが移っているからです。2024年のBtoB-EC(企業間の電子商取引)の市場規模は514兆4,069億円で、前年から10.6%増えました1。同じ年のEC化率は43.1%です1。企業間の取引のうち四割を超える金額が、すでに画面を通っている計算になります。
43.1%という数字の意味は、注文の入口が変わったという一点にあります。取引先が自分で品番と数量を入れれば、こちらの転記は発生しません。FAXを読み取る人も、打ち直す人も要らなくなります。時間が減るのは、作業が速くなったからではなく、作業そのものが消えるからです。ここが、人を増やして処理量を上げる打ち手との分かれ目になります。
クラウド利用80.6%という前提
注文を画面で受ける側の支度は、すでに整っています。2024年にクラウドサービスを利用している企業の割合は80.6%でした5。社内に機械を置かずに受注の画面を開ける企業が、80%を超えているということです。設備を先に買わなければ始められない時代は、もう過ぎました。
ただし、道具が揃っていることと、使いこなせていることは別の話です。2025年の中小企業向けの調査では、デジタル化に積極的に取り組んでいると答えた企業は43.6%、AI(人工知能。学習した規則で判断を自動化する仕組み)の導入予定があると答えた企業は17.8%にとどまりました6。この43.6%は、クラウド利用率とは対象も設問も母集団も異なりますので、単純に比べられません。道具の普及率と取り組みの積極度は別の数字だと見ておくのが安全です。
2016年度の実証で消えた約50%程度の時間は、いまの受け方を続けるかぎり、来年も再来年も人の手として支払われ続けます2。
2か月で開設したBtoBサイトの工程
では、どの順で進めるのか。フリュー株式会社は、共同開発商品の発売に間に合わせるかたちで、2か月でBtoB向けのECサイトを構築しています(2016年)8。短い期間で開けたのは、やることを足したからではなく、順番を決めて削ったからです。着手の段は三つに収まります。
第一に取引先の選定です。全取引先を一度に載せず、注文の件数が多い先から画面へ移します。第二に商品データの整備。品番・単位・ロットの表記を品目の間で揃える工程で、ここに手間が集まります。第三に受注窓口の切り替えで、画面を開いた後も電話と紙の窓口はしばらく並走させます。
三段のうち、飛ばして痛い目を見るのは商品データの整備です。別の食品卸では、実質的な開発期間は約4カ月でした(2017年)9。同じ三段を踏んでも、品目の数と取引条件の込み入り方で、2か月と約4カ月の差が出ます。画面だけ先に作っても、載せる中身が揃わなければ稼働日は後ろへ動きますね。
効果の81.0%が業務効率化に集中
効果をどこで測るか。ここを先に決めておかないと、稼働後の評価が定まりません。主に東京23区内の中小企業を対象とした2024年の調査では、デジタルの取り組みの効果として業務効率化(コスト削減・時間短縮・ミス防止など)を挙げた企業が81.0%、人手不足の解消を挙げた企業が18.8%でした(回答1,218社)3。効果はまず時間に出ます。人が減ることではありません。
判断軸は、三つに絞れます。第一に、減る時間の置き場所。転記と再入力が消えた分を、与信の確認や新規開拓へ振り替えられるかどうかです。第二に、残る手入力の範囲。FAXを続ける取引先が残る前提で、注文の何割が画面を通るのかを見積もります。第三に、品目データの整備にかける期間で、ここが稼働日を決めます。
この三つは、いずれも稼働の前に自社で数えられます。取引先ごとの月間の注文件数、画面へ移せる見込みの取引先の数、品番の総数。三つとも社内の帳票から拾える数字ですので、外部の相場を探しに出る必要はありません。稟議に載せるのは、この自社の三つの数字と、実証で確かめられた削減の幅の両方です。
ここまでが、標準的な取引での進め方です。以降は、小口出荷・多品目・新規事業といった条件を抱える方に向けた、さらに詳しい内容です。

ここまでの手順を自社の条件で確かめたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。
成果80.9%・レベル3は38.1% — 取り組みの現在地
ここから先は取引の形ごとに型が分かれ、その順位は公表された調査に依ります4。
順位根拠:公表された調査
- デジタルシフト・DXの取り組みで成果が出ていると答えた企業は80.9%でした(2026年・回答1,272社)4。成果の中身として最も広く挙がるのが業務効率化であり、受発注の画面化はここに入ります。第1ブロックで示した転記と再入力の削減は、この80.9%の側の話です。
- ITを活用して社内業務を効率化している段階(レベル3)にある企業は38.1%でした(2026年)4。成果を実感している企業の割合との差が、着手の順番を決めかねている層の厚みを示します。道具はあるのに、どの業務から画面へ移すかが定まっていない状態です。
- 前年度と比べてデジタルの予算を増やした企業は31.1%でした(2026年)4。裏を返せば、残る企業は今年と同じ枠の中で判断を求められます。効果の見積もりを他社の相場ではなく自社の注文件数から作る作業が、ここでは先に来ます。
自社の行がこの三つのどこにも見当たらないという方は、次の表から、取引の形で探せます。
取引の形で分かれる三つの型
| 型名 | 条件 |
|---|---|
| 小口出荷併存型 | ケース単位の注文と1巻単位の注文が同じ画面に並ぶ取引 |
| 多品目在庫型 | 2万点規模の商品をすでに登録している取引 |
| 新規事業立ち上げ型 | 発売日や事業開始日が先に決まっている取引 |
1巻単位の小口出荷を伴う取引
小口出荷が混じっていても、外部に設計を頼まずに始める道はあります。単位が1種類しかない品目だけを先に公開し、1巻単位の注文は当面これまでの窓口で受ける。この分け方なら、外部に設計を頼まずに着手できます。画面を通る注文の割合は下がりますが、稼働は早まります。
単位ごとの単価と在庫の持ち方を設計する段は商品データの整備のなかでも手間が集まる箇所で、品目の棚卸しと画面の設定を並行して進められる体制を確保しておくと、稼働後の値差や引き当て漏れといった手戻りを抑えられます。
3,800品種を並べる商品ページの設計
日東電工CSシステム株式会社は、約3,800品種の製品を提案・販売しています(2018年)7。品種がこれだけ並ぶと、「品番・単位・ロットの表記を揃える」という第1ブロックの工程だけでは足りません。同じ製品でも、幅・長さ・巻数の違いが別の品番として立ち、画面上では似た名前が連なります。取引先が目的の品を探し当てられる並べ方を決めるところが、この型の入口です。
最小ロット200巻との併存の扱い
通常の注文では、最小ロットである1ケースが200巻です(2018年)7。ところが現場からは1巻だけ欲しいという注文も入ります。ケース単位と巻単位が同じ画面に並ぶと、単価の出し方も在庫の引き当て方も二本立てになります。ここが、標準ケースの設計がそのまま通らない理由です。
選ぶ基準は、第1ブロックの三つとは別の欄になります。減る時間の置き場所ではなく、単位をいくつ持たせるか、価格を単位ごとに分けるか、在庫を何の単位で引き当てるか。この三つを先に決めてから画面の設計に入ると、後戻りが減ります。
| 決める欄 | 1巻単位の注文 | ケース単位の注文 |
|---|---|---|
| 価格の出し方 | 品目ごとに巻単位の単価を持たせる | ケースの単価と入数を持たせる |
| 在庫の引き当て | 巻単位で引き当てる | ケース単位のまま引き当てる |
| 出荷の指示 | 端数の梱包を指定する | ケースをそのまま出す |
約2万点の商品を抱える卸の取引
外部に頼まずに始めるなら、注文件数の多い上位の取引先が扱う品目だけを先に載せる方法があります。精査の対象が絞られ、重複の整理も現実的な量に収まります。残る品目は、運用しながら順に足していけます。
2万点規模の品目を抱える場合、公開前の精査は品番の総数に比例して期間が延びますので、商品データを扱う担当と受注の実務を知る担当の双方を確保しておくと、値の出し分けの誤りや二重登録といった公開後の事故を抑えられます。
公開前に必要な商品データの精査
株式会社ポディウムは、ECサイトに2万点くらいの商品を登録していました(2025年)10。この規模になると、公開の前に商品データの精査が要ります。作業は二つで、同じ品目が別の名前で並んでいないかを見る重複の整理と、入数や単位の書き方を品目の間で合わせる単位の統一です。ここを飛ばすと、取引先の画面で同じ品が二つ表示されます。
次に来るのが公開範囲の決定です。卸の取引では、同じ品でも取引先によって値が違います。取引先別の価格をどう出し分けるか、そもそも画面に出さない非公開品目の指定をどこまで広げるか。この二つが決まらないうちに公開すると、見えてはいけない値が見えます。
手入力が残る範囲の見極め
最後が手入力が残る範囲の見極めです。非公開品目の注文、特注品の相談、納期の交渉。これらは画面に載せず、電話の窓口で受け続けるほうが早い場合があります。全部を移そうとするほど稼働日は遠のきます。
この型の選ぶ基準は、減る時間の置き場所ではなく、載せない品目をどこで線引きするかに移ります。品番の総数を数え、注文件数の多い順に並べ、上位で全注文の何割を占めるかを出す。線引きの位置は、この並びが教えてくれます。
新規事業として立ち上げる取引
外部に頼まずに進めるなら、注文の受け付けだけを先に画面へ移し、与信と価格の出し分けは当面これまでの運用で回す手があります。取引先が少ない立ち上げ期であれば、この形でも回ります。
発売日が動かせない立ち上げでは機能の取捨を決める判断そのものが期間を左右しますので、要件を絞る段で決裁者を巻き込んでおくと、開発の途中で範囲が膨らむことによる後戻りを抑えられます。
2か月で開く場合の機能の絞り方
発売日が先に決まっている立ち上げでは、期間は与件です。フリュー株式会社は、共同開発商品の発売までにBtoB向けのECサイトを2か月で構築しています(2016年)8。この期間で開くには、機能を注文の受け付けと出荷の指示に絞り込む判断が要ります。与信の自動判定や価格の細かな出し分けは、稼働の後に足す順番です。
約4カ月かけて設計を練る場合
発売日という締め切りがない立ち上げでは、設計を先に固める道を選べます。ある食品卸のBtoB ECサイトは、実質的な開発期間が約4カ月でした(2017年)9。取り扱い全体を見渡して品目の並べ方と価格の出し分けを決めてから開くと、稼働後の作り直しが減ります。
この型で分かれるのは、期間ではなく何を先に決めるかです。発売日が先にあるなら公開する品目を絞る、締め切りがないなら機能を先に固める。第1ブロックの三段の順序を変えずに各段の重みを入れ替えるところまでが型ごとの決め方で、ここから先は自社の数字を欄に入れる段です。
| 決める欄 | 発売日が先に決まる場合 | 設計を先に固める場合 |
|---|---|---|
| 公開する品目 | 共同開発の対象だけに絞る | 取り扱い全体を見渡して決める |
| 用意する機能 | 注文の受け付けと出荷の指示に限る | 与信と価格の出し分けまで含める |
| 稼働までの期間 | 2か月で開いた事例がある(2016年) | 約4カ月をかけた事例がある(2017年) |

この型に当てはまる場合は、判断の抜けによる手戻りを防ぐために、無料相談で自社の条件を持ち込むのが確実です。
要点の整理
| 軸 | 第1ブロックの基準(標準的な取引) | 型ごとの基準 |
|---|---|---|
| 減る時間の置き場所 | 転記と再入力が消えた分を与信の確認と新規開拓へ振り替える | 小口出荷併存型では端数の梱包を指示する時間が残る |
| 残る手入力の範囲 | 画面を通る注文の割合を取引先ごとに見積もる | 多品目在庫型では非公開品目の注文が電話の窓口に残る |
| 整備にかける期間 | 品番の総数から商品データの整備の期間を決める | 新規事業立ち上げ型では発売日から逆算して機能を絞る |
| 効果の測り方 | 業務効率化として時間短縮とミス防止で測る(81.0%・2024年) | 型ごとに測る欄を一つ足す(単位の数・載せない品目の割合・公開機能の数) |
よくある質問
実証で出た約50%の削減は、自社でも同じだけ出ますか
同じ幅が出るとは限りません。約50%程度という値は、2016年度の実証事業に参加した企業の条件の下で確かめられたものです2。品目の数、取引先の数、単位の揃い方が違えば、削減の幅も変わります。自社で見積もるときは、月間の注文件数と1件あたりの転記時間を掛け合わせ、そのうち画面へ移せる件数の割合を掛けるところから始めてください。
FAXを続ける取引先が残る場合、効果は目減りしますか
画面を通る注文の割合に応じて目減りします。ただし、削減はゼロにはなりません。注文件数の多い取引先から画面へ移せば、件数ベースでは早い段階で効果が出ます。稼働後も電話と紙の窓口は並走させる前提で、どの取引先を先に移すかを注文件数の順に並べて決めるのが現実的です。
稼働までにどのくらいの期間がかかりますか
取引の形で変わります。共同開発商品の発売に合わせて2か月で開いた事例(2016年)8と、実質的な開発期間が約4カ月だった食品卸の事例(2017年)9があります。差を生むのは主に品目の数と、価格の出し分けの込み入り方です。品番の総数を先に数えておくと、どちらに近いかの見当が付きます。
減った時間は何に振り替えると投資判断を説明できますか
与信の確認と新規開拓に振り替える形が説明しやすくなります。2024年の調査では、取り組みの効果として業務効率化を挙げた企業が81.0%、人手不足の解消を挙げた企業が18.8%でした(回答1,218社)3。効果はまず時間に出て、人員の増減には直結しません。稟議では、空いた時間の振り替え先を先に書いておくと評価が定まります。
商品データの整備は何から手を付けますか
重複の整理と単位の統一の二つからです。同じ品目が別の名前で登録されていないかを見て、入数と単位の書き方を品目の間で揃えます。2万点くらいの商品を登録していた事例もあり(2025年)10、品番の総数が多いほどこの工程に期間を要します。注文件数の多い取引先が扱う品目に絞って先行させる進め方もあります。
社内にサーバーがなくても受発注の画面を持てますか
持てます。2024年にクラウドサービスを利用している企業の割合は80.6%でした5。設備を先に購入しなくても受注の画面を開ける環境が広がっています。ただし、2025年の中小企業向けの調査でデジタル化に積極的と答えた企業は43.6%6で、対象も設問も異なる数字ですので、普及率と取り組みの進み方は分けて見てください。
- 1 出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
- 2 出典:中小企業庁「中小企業共通EDI(次世代企業間データ連携調査事業ほかの実証結果)」(2018年) 経路
- 3 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2025年) 経路
- 4 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2026年) 経路
- 5 出典:総務省「令和7年版 情報通信白書(クラウドサービスの利用状況)」(2025年) 経路
- 6 出典:日本政策金融公庫総合研究所「デジタル化に取り組む中小企業の実態に関する調査」(2025年) 経路
- 7 出典:株式会社フライトソリューション「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社)」(2018年) 経路
- 8 出典:株式会社フライトソリューション「EC-Rider B2B 導入事例(フリュー株式会社)」(2019年) 経路
- 9 出典:株式会社フライトソリューション「EC-Rider B2B 導入事例(フーヅフリッジ株式会社)」(2017年) 経路
- 10 出典:株式会社フライトソリューション「EC-Rider B2B 導入事例(株式会社ポディウム)」(2025年) 経路
画像の出典元
- 50代後半の日本人女性がオンライン会議への参加をしている場面/画像:生成AI(自社)
- 50代後半の日本人女性がオンライン会議への参加をしている場面/画像:生成AI(自社)
- 50代後半の日本人女性が発注画面の操作をしている場面/画像:生成AI(自社)