◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 国内の企業間電子商取引の市場規模は2024年で514.4兆円、企業間のEC化率は43.1%です。受発注の電子化は、費用を論じる前の前提になりました。
- 公開されている料金表では、クラウド型の初期費用は8万円から20万円、最小構成のプランの月額費用は8万8,000円です。カスタマイズを伴うと初期費用は400万円から1,500万円の桁へ移ります。
- 効果は金額より先に業務時間で測ります。2016年度の中小企業共通EDIの実証事業では、中小企業の受発注業務時間が51.4%削減されました。
- インボイス枠(電子取引類型)の補助額の上限は350万円、その他の事業者等の補助率の上限は50%です。初期費用の実負担は、この枠を当てはめた後の額で比べます。
- 費用の負担を課題に挙げた企業は31.9%です。稟議で通すには、費用の絶対額ではなく、削減できる業務時間との対比で示す必要があります。
目次

企業間電子商取引(BtoB-EC)とは
企業間電子商取引(BtoB-EC)とは、企業どうしの受発注や請求をインターネット経由でやり取りする取引形態を指します。費用は初期費用と月額費用に分かれ、公開料金では初期8万円から20万円、最小構成の月額8万8,000円という水準が確認できます。
この費用の裏側で、朝いちばんに届くのは紙の束です。取引先ごとに様式の違う注文書を受け取り、担当者が基幹システムへ打ち直します。「またこの型番か」という独り言が、毎朝どこかの受注窓口で繰り返されています。品番の読み違いが1件見つかるたびに、電話での確認と出荷指示のやり直しが増えます。企業間電子商取引は、この打ち直しをなくす仕組みです。
待ちと手戻りは、見積書のどこにも出てきません。電話がつながるまでの待ち、承認が回るまでの待ち、差し戻しの打ち直し。国内の企業間電子商取引の市場規模は2024年で514.4兆円、企業間の全商取引金額のうち43.1%が電子で処理されています1。紙とFAXを続ける側に、説明の負担が移ってきました。あなたの会社の受注窓口にも、心当たりはないでしょうか。
この打ち直しと問い合わせの時間は、どの請求書にも載りませんが、毎月の給与という形ですでに支払われている費用です。
企業間電子商取引にかかる費用の内訳
クラウド型の初期費用と月額費用
費用は初期費用と月額費用の二つに分かれます。公開されている料金表では、初期費用は全プラン共通の8万円(エンタープライズプランを除く)、上位2プランでは20万円という水準が確認できます5。最小構成のプランは初期費用10万円、月額費用8万8,000円です5。いずれも税抜の公開料金で、2026年時点の値です。
月額費用は、止められない費用です。稼働している限り毎月出ていきますから、稟議では初期費用より月額費用の側を丁寧に見ます。初期費用のほうは、後述する補助の対象になり得ます。補助を当てはめられるかどうかで、標準プランの実負担は変わります。
カスタマイズ規模が相場を分ける
三つ目がカスタマイズ費用です。同じ料金表のモデルケースでは、小規模カスタマイズで初期費用400万円から、月額費用7万円からとされています5。大規模カスタマイズでは、初期費用は1,500万円からです5。標準プランとの差は、率ではなく桁で開きます。
差を生むのは、基幹システム連携の範囲です。取引先ごとの掛け率、与信の限度、出荷単位の丸め。この三つを画面と処理へ持ち込むほど、設計と検証の手間が増えます。「うちの商習慣は特殊で」という一言が、そのまま初期費用の桁に効いてくるのです。
2016年度の実証事業で51.4%削減できた受発注業務時間は、いまの形を続ける限り、毎月払い続ける費用になります3。
費用対効果を高める効果指標
効果は、金額より先に業務時間で測ります。第一は業務時間の把握です。受注1件あたりの入力・確認・差し戻しにかかる時間を、担当者の実測で押さえます。ここを飛ばすと、後で当てはめる削減率が掛ける先を失います。
第二は削減率の当てはめです。2016年度の中小企業共通EDI標準の実証事業では、中小企業の受発注業務時間が51.4%削減されました3。自社の実測値にこの削減率を掛け、削減できる時間を出します。前提の異なる実証の数値ですから、上限側の目安として扱うのが無難です。
第三は稟議での説明です。クラウドサービスの利用で効果があったと回答した企業は88.2%、デジタルシフトの効果として業務効率化を挙げた企業は81.0%、人手不足解消を挙げた企業は18.8%でした(2024年)2。効果の出方は業務効率化に寄り、人手不足の解消へは直結していません。市場調査と通信利用動向調査は対象も調査方法も母集団も異なりますので、二つの数値を並べて単純に比較はできません。
電子帳簿保存法対応の費用と猶予措置
制度への対応は、費用を選ぶ軸の一つになります。第一の軸は保存要件の確認です。電子取引でやり取りしたデータは、保存の要件を満たした形で残す必要があります。取引先から受けるデータの種類と量を洗い出し、いまの保存のやり方で要件に届くかを確かめてください。売上高の水準によって検索の要件が緩む定めや猶予の定めもありますので、適用の可否は所管官庁の最新の取扱いで確かめます。
第二の軸は補助対象の確認です。インボイス枠(電子取引類型。受発注や請求のデータをやり取りする仕組みの導入を支える枠)では、補助額の上限が350万円、その他の事業者等の補助率の上限が50%と定められています4。初期費用が8万円から20万円に収まる標準プランなら、補助の有無より申請と報告の手間のほうが大きく効いてきます。
第三の軸は実負担の見積もりです。初期費用の総額ではなく、補助を当てはめた後の実負担で比べます。カスタマイズを伴う導入では初期費用の桁が上がる分、上限350万円の効き方も変わります。稟議へ出すのは、この実負担と、先に出した削減時間の二つで足ります。
ここまでで標準的な導入の費用と効果の見積もり方は一通りそろいますので、以降は自社の条件が標準から外れる方に向けた、さらに詳しい内容です。
ここまでの手順を自社の条件で確かめたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。
BtoB-EC導入で費用負担を課題に挙げる企業の割合
- 費用の負担を課題に挙げた企業は31.9%です(2024年)1。稟議で最初に出る反対理由は、ここに集まります。
- 企業間のEC化率は43.1%で、前年から3.1ポイント上がりました(2024年)1。取引先が電子で受ける割合が増えるほど、紙のまま残る側の説明の手間が増えます。
- 市場規模は514.4兆円、前年比10.6%増です(2024年)1。前年の水準からの伸びが、取引先側からの電子化の求めとして返ってきます。
- クラウドサービスの利用で効果があったと回答した企業は88.2%です(2024年)2。対象も調査方法も異なる調査ですので、上の市場調査の数値とは単純に比較できません。
上の並びに順位は付けておりません。順位の出典が取れていないためでございます。
自社の条件がこの並びに当てはまらない方は、次の型の表から、費用の前提が変わる条件を探せます。
自社に合う費用対効果の判断基準
| 型 | 当てはまる条件 |
|---|---|
| 小規模カスタマイズ型 | 標準プランの画面と項目では取引先の商習慣に足りないが、基幹システムとつなぐ範囲は一部に限られる |
| 大規模カスタマイズ型 | 受注から出荷までを基幹システムと通しでつなぎ、取引先ごとの価格と与信を個別に持つ |

小規模カスタマイズ型の費用と選ぶ基準
取引先ごとに掛け率が違い、注文の単位が箱とケースで混ざり、締め日も相手ごとに分かれている。前半で示した「標準プランのまま使う」という対処は、この条件では最初の受注で止まります。画面に入らない項目は、結局メールと電話へ戻るからです。月額8万8,000円で始めたはずが、紙の窓口を残したまま二重に回る形になります。
選ぶ軸は、削減できる時間ではありません。「例外の数」と「例外が変わる頻度」の二つです。取引先ごとの例外が数えられる範囲に収まり、年に何度も入れ替わらないなら、小規模カスタマイズ型の射程に入ります。例外が毎月増える会社では、改修のたびに費用が積み上がります。
頼まずに済ませる道も一つあります。例外を運用の取り決め側へ寄せ、受注の入口は標準プランのまま通す方法です。掛け率や締め日を取引先と合わせ直せるなら、初期費用400万円からの改修を先送りできます5。合わせ直せない例外だけを残し、その数で見積もりを取ります。
この型の着手は、例外の棚卸しと取引先との調整が負担の中心になり、情報システムと受注の両方の担当者が並行して当たる手間がかかります。
| 費用の欄 | 小規模カスタマイズ型の目安 |
|---|---|
| 初期費用 | 400万円から。2026年時点で公開されているモデルケースの下限です5 |
| 月額費用 | 7万円から。2026年時点で公開されているモデルケースの下限です5 |
| 補助の上限 | 350万円。その他の事業者等の補助率の上限は50%です4 |
大規模カスタマイズ型の費用と選ぶ基準
受注から出荷までを通しでつなぐ場合、費用は桁ごと変わります。公開されているモデルケースでは、大規模カスタマイズの初期費用は1,500万円からです5。在庫の引き当て、与信の判定、出荷指示までを基幹システムと同期させるなら、標準プランの延長では収まりません。補助の上限350万円を当てはめても、実負担の大半は残ります4。
この型の軸は、止まったときに何が止まるかです。受注が止まれば出荷が止まり、出荷が止まれば請求が止まる。こうしたつながりを持つ会社では、費用の比較より先に、止まったときの代替手段を決める順序になります。復旧までの手順を紙で持たない導入は、月額費用の安さで選んでも割に合いません。
全部を一度につながない道があります。受注の入口だけを電子化し、在庫と与信は当面いまのやり方で回す進め方です。段階を分ければ、初期費用1,500万円からの投資を一度に決めずに済みます5。取引金額の大きい取引先から順に移すと、削減できた業務時間の測り方もそろいます。
大規模カスタマイズ型は、基幹システム側の仕様確認とデータ移行の設計が負担の中心になり、社内で要件を決める人と外部の設計者が同じ表を見ながら詰める手間がかかります。
| 比べる欄 | 大規模カスタマイズ型の目安 |
|---|---|
| 初期費用 | 1,500万円から。2026年時点で公開されているモデルケースの下限です5 |
| つなぐ範囲 | 受注・在庫の引き当て・与信の判定・出荷指示までを基幹システムと同期させます |
| 補助の上限 | 350万円。補助率の上限は50%ですが、初期費用に占める割合は小さくなります4 |

この型に当てはまる場合は、判断の抜けによる手戻りを防ぐために、無料相談で自社の条件を持ち込むのが確実です。
要点の整理
| 判断軸 | 基準 |
|---|---|
| 費用の型 | 標準プランで収まるか、カスタマイズが要るか。標準プランの初期費用は8万円から20万円です |
| 効果の測り方 | 受発注業務時間を実測し、削減率51.4%を上限側の目安として掛けます |
| 制度への対応 | 電子取引の保存要件を満たせるか。補助は上限350万円・補助率50%までです |
| 例外の数と頻度 | 例外が数えられ、年に何度も入れ替わらないなら小規模カスタマイズ型の射程です |
| 停止時の影響 | 受注の停止が出荷と請求へ及ぶなら、大規模カスタマイズ型で代替手段まで決めます |
よくある質問
クラウド型とカスタマイズ型で、初期費用はどれくらい違いますか
桁で違います。公開されている料金表では、初期費用は全プラン共通で8万円、上位2プランで20万円です5。一方、小規模カスタマイズのモデルケースは初期費用400万円から、大規模カスタマイズは1,500万円からとされています5。標準プランで収まるかどうかが、最初の分かれ目になります。
補助金はいくらまで受けられますか
インボイス枠(電子取引類型)では、補助額の上限が350万円、その他の事業者等の補助率の上限が50%と定められています4。対象になる経費の範囲と申請の要件は公募の回ごとに変わりますので、申請前に最新の公募要領で確かめてください。初期費用8万円から20万円の標準プランでは、補助額より申請と報告の手間が効いてきます。
稟議に出す効果は、どう見積もればよいですか
受発注にかけている業務時間を実測し、そこへ削減率を掛けます。2016年度の中小企業共通EDIの実証事業では、中小企業の受発注業務時間が51.4%削減されました3。期待値としては、クラウド利用で効果があったと回答した企業が88.2%、業務効率化を挙げた企業が81.0%という数値も添えられます(2024年)2。調査が異なるため、二つの数値を並べて比較はできません。
費用が高いという社内の反対には、どう答えればよいですか
同じ課題を抱える会社の割合を示すのが早道です。費用の負担を課題に挙げた企業は31.9%で、決して珍しい反対ではありません(2024年)1。同じ調査では企業間のEC化率が43.1%、前年から3.1ポイントの上昇です1。導入しない場合に紙のまま残る業務時間を、実測値で並べて示してください。
小さく始めて、後から広げることはできますか
できます。受注の入口だけを標準プランで電子化し、在庫や与信は後から順につなぐ進め方です。ただし、広げるたびに改修の費用が乗ります。小規模カスタマイズのモデルケースでは初期費用400万円から、月額費用7万円からとされていますので、広げる範囲を決めてから見積もりを取ると、後の追加が読みやすくなります5。
見積もりを取る前に、何を決めておくと金額がぶれませんか
三つあります。取引先ごとの例外の数、基幹システムとつなぐ範囲、電子取引のデータの保存要件です。この三つが決まっていないと、同じ要望でも事業者ごとに前提が変わり、金額の比較ができません。標準プランで収まるかどうかの判断も、例外の数を数えたところで初めて付きます。
- 1 出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
- 2 出典:総務省「令和6年通信利用動向調査(企業編)」(2025年) 経路
- 3 出典:中小企業庁「中小企業共通EDI(次世代企業間データ連携調査事業)」(2018年) 経路
- 4 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「インボイス枠(電子取引類型)補助内容」(2026年) 経路
- 5 出典:EC-Rider「料金プラン・費用ページ」(2026年) 経路
画像の出典元
- オフィスで段ボール箱の中身とタブレットを見比べる日本人の会社員/画像:生成AI(自社)
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- オフィスの自席で納品書とノートパソコンを見比べる日本人の会社員/画像:生成AI(自社)