◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 514.4兆円という国内のBtoB-EC市場規模が示すとおり、紙が主役だった頃と違い、電子での受発注は例外ではなく取引の前提になっています1
- 80%の控除率の次に70%を挟む段階的な引き下げが大綱に示され、免税事業者との取引は発注の入口で登録番号の有無を分ける備えが要ります2
- 67.6%、つまり三人に二人にあたる中小企業の担当者が業務負荷の増加を挙げており、保存義務への対応は人手の追加ではなく受発注の仕組みの側で吸収するのが現実的です3
- 3000社の販売加盟店を抱える会社と、経理が一人か二人の会社とでは、先に手を付ける処がそもそも違います4
目次

商流電子化が変える受発注と会計処理
商流電子化は、受発注を速める取り組みであると同時に、会計処理と消費税申告の前提を組み替える取り組みです。控除率の見直しにも電子取引データの保存義務にも受発注の入口で対応できているかが、月末に『後から直す』作業をどれだけ残すかを分けます。
紙の受発注から電子データへ
紙の束とファクスの受信音。朝八時の受注センターでは、前夜に届いた注文用紙をめくる手が止まりません。ここで数を見ておきます。3000社という全国の販売加盟店は、担当者一人が得意先の顔ぶれを覚えきれる数をとうに超えた規模です4。『この注文はどの単価で、どの税区分か』を一件ずつ確かめる作業が、受注の入口に居座り続けます。
市場の大きさも確かめておきます。514.4兆円という国内BtoB-EC市場規模は2024年の値で、受注センターが日々さばく紙の束は、この規模の下で動く取引のごく一部にすぎません1。取引の総量が増える局面で確認作業を人手のまま据え置けば、増えた分がそのまま担当者の残業として積み上がると見られます。『量が増えても人は増やせない』前提に立つほど、入口の電子化を先送りする余地は小さくなりますね。
会計システムとの連携
電子化の効き目は、送受信の速さではなく後工程へ渡るデータの形に出ます。登録の量を見てみます。20000点という精査前の商品登録数は、株式会社ポディウムの事例で、紙の一覧なら厚い冊子が何冊も要る量です5。単価と税区分を商品ごとに持たせておけば、受注から仕訳までの転記は照合の作業へ寄りますね。
商品登録の数を仕訳の側から見ておきます。20000点という商品登録数がそのまま単価や税区分の食い違いを抱えていれば、仕訳のたびに一件ずつ仕入先や得意先へ確認を返す往復が生じます5。受発注のデータを整える狙いは、転記を速めることよりも、こうした往復そのものを減らす点にあると考えられます。
『後で直せばよい』として積み残した受注票の確認は、月末の残業代と請求書の再発行費として、毎月の人件費へそのまま乗ります。
インボイス経過措置の見直しと消費税対応
当初予定からの控除率変更
免税事業者からの仕入れでは、支払った消費税のうち一定割合だけを差し引ける経過措置が置かれています。当初は、割合を一段下げたあとに期限を迎え、経過措置が終了する道筋でした。令和8年度税制改正大綱では、その途中に段階を挟み、引き下げの幅を小さく刻む見直しが示されています。『いつ、どれだけ差し引けるのか』が動くため、当初予定のままの社内ルールは作り直しが要ります。
時期ごとに『いつからいくら』を確かめます。80%という控除率は2026年9月までの扱いで、全額を差し引ける相手との取引に比べ、二割を自社で負担する計算になります2。70%へ引き下げる期間は2026年10月から2028年9月までとされ、負担は三割へ広がります2。なお大綱は国会での審議を経ていない段階の案であり、今後内容が変わる可能性があります。
控除率の見直しが及ぶ範囲も広いと見ておきます。514.4兆円という国内BtoB-EC市場規模のうち、免税事業者との取引がどれだけを占めるかは会社ごとに異なりますが、率が段階で動く以上、負担の見積もりを一度きりで終える運用は成り立ちにくくなります1。時期ごとの率を仕訳の側で持ち直す手間を、あらかじめ発注の入口へ寄せておく理由がここにあります。
免税事業者との取引への影響
影響が出るのは、税額そのものよりも取引条件の決め方です。控除できない分を値引きで吸収するのか、自社の負担として飲むのか、仕入先ごとに決めておく必要があります。ここで効くのが、発注の入口で登録番号の有無を分けられているかどうかです。『請求書が届いてから調べる』運用のままでは、月末に仕入先の数だけ確認が積み上がると見ます。
BtoB ECで受発注を行うと、登録の有無を取引先データに持たせ、注文の時点で税区分を確定できます。控除できる分とできない分が発注のたびに分かれていれば、申告の直前にまとめて仕分ける作業は薄くなります。控除率が段階で動く前提では、率を持たせる処が一か所か複数かで、改定のたびの手直しの量が変わると考えられます。『どこを直せば全部が直るか』を先に決めておくと、改定のたびの作業が軽くなりますね。
率が変わる時期をまたぐ取引ほど、契約や覚書の見直しが必要になります。80%から70%への切り替えは2026年10月に来るため、この時期をまたぐ長期の発注については、切り替え前後でどちらの率を適用するかを先に取り決めておく必要があります2。取り決めが遅れるほど、請求のやり直しが増えると見られます。
2024年の調査では中小企業の経理・財務・総務の担当者の67.6%が業務負荷の増加を挙げており、紙の運用を据え置くなら、同規模の会社が先に通った同じ増分を自社の人件費として毎月払い続ける形になります3。
電子帳簿保存法における電子取引データの保存義務
完全義務化の対象範囲
対象になるのは、電子でやり取りした取引情報です。メールに添付された請求書も、画面上で受け取った注文データも、受け取った形のまま保存する扱いになります。宥恕の期間はすでに終わり、印刷して紙で保管する代替は認められません。『紙に出しておけば安心』という以前の習慣は、ここで切り替えが要ります。
対象の広さを数で見ます。43.1%というBtoB-EC化率は2024年の値で、企業間取引の四割超がすでに電子でやり取りされている計算になります1。保存義務の対象は一部の先進的な会社の話ではなく、受発注の主流の側に来ています。まず『どの取引が電子に当たるか』の棚卸しから始めるのが順序です。
中小企業の対応負荷
重いのは保存そのものより、取引年月日・金額・取引先で探せる状態を保つ検索の要件です。フォルダへ入れるだけなら手間は小さく、あとから探せる形に整える段で人手が要ります。先に挙げた業務負荷の増加の回答も、この探せる状態を人手で作っている現場の実感と重なると見ます。『誰が、いつ、どの規則で名前を付けるか』を決めないまま始めると、担当者ごとに保存の形が割れます。
業務負荷の増加を挙げた67.6%という数字を人数に置き換えれば、担当者一人二人の会社ほど、増えた負荷を吸収する余力が薄いことを意味します3。検索の要件を人手だけで満たそうとするほど、繁忙期にしわ寄せが集中しやすくなります。
引き受け方は二つです。人手で規則を守り続けるのか、受発注の仕組みの側に保存と検索を任せるのか。『あとで探せること』を人が担うか道具が担うかの違いになります。注文と請求のデータを持っていれば、取引先も日付も金額も項目として最初から入っており、繁忙期に紙の山を数えて越冬する慣わしからは離れられます。
事業規模で異なる商流電子化の進め方
ここから先は、確かめておきたい項目と、取引先の数と経理の人数ごとの進め方を順に見ていきます。
控除率の見直しと電子取引データの保存義務は、どちらも受発注の入口の作り方で手間の量が決まるため、会計処理と消費税の扱いまで見据えてBtoB ECを組める相手に当たる価値があります。
自社の受発注と会計の間でどこが詰まっているかを、一度まとめて棚卸ししてもらうのが近道です。無料相談で要件を整理する
商流電子化で先に手を付けたい取り組み
- 受発注データに取引先の登録番号と税区分を持たせ、注文の時点で控除の可否を分ける
- 電子取引に当たる書類を棚卸しし、保存の対象と置き場を一覧にする
- 取引先・日付・金額で探せる名前の付け方を決め、担当者ごとの割れをなくす
- 商品データの単価と単位を整理し、受注から仕訳までの転記をなくす
- 控除率が段階で動く前提に立ち、率を持たせる処を一か所へまとめる
この並びに優劣の順序はありません。
ここからは、取引先の数と経理の人数によって、この順番のままでよいのかを見ていきます。

規模と仕入先の顔ぶれで変わる進め方
| 会社の条件 | 先に効いてくる制度 | 最初に手を付ける処 |
|---|---|---|
| 取引先数百社規模の卸売・製造業 | 電子取引データの保存義務 | 注文の受け口の一本化 |
| 免税事業者の仕入先が多い事業者 | 仕入税額控除の経過措置 | 仕入先の登録番号の整理 |
| 経理担当が一人か二人の事業者 | 検索の要件 | 保存の規則づくり |
取引先が数百社を超える卸売・製造業の場合
注文の受け口を一本にそろえる
取引先が数百社を超えると、電話・ファクス・メールと受け口が分かれ、同じ注文でも入り方が違う状態になります。先に挙げた取り組みでは保存の規則づくりが上に来ますが、この規模では受け口をそろえるほうが先です。入り方が割れたままだと、保存も税区分も入口の数だけ規則を作る羽目になります。『どこから来た注文か』で処理が変わる状態を、まず減らします。
取引先の慣れも見ておきます。43.1%というBtoB-EC化率は2024年の値で、紙だけでやり取りしていた頃と比べれば、電子での発注に戸惑う取引先は減っていると考えられます1。『いつもの紙で』と言う先には、当面の並行運用の受け皿を用意しておくと進めやすくなります。難しさは中くらいで、受け口の整理と取引先への案内に数か月単位の工数を見ておくと安全です。
受け口を一本化する効果は、取引先の数が多い会社ほど大きく出ます。3000社という加盟店規模の事例のように、担当者一人が抱えきれない件数になると、入り方の違いがそのまま確認漏れの温床になりかねません4。窓口を一つに決めておけば、件数が増えても確認の手順は増えずに済みますね。
卸売・製造業がこの規模で受発注を担うと想定すると、514.4兆円という市場全体からみても、個々の会社が抱える取引先数百社は決して例外的な規模ではありません1。むしろ同程度の会社が数多く存在すると考えるほうが実情に近く、受け口の一本化は特定の会社だけの対応ではなく、業界の広い範囲で必要とされる対応と見られます。
| 確かめること | 紙のままの場合 | 受け口を一本にした場合 |
|---|---|---|
| 注文の入り方 | 電話・ファクス・メールに分散 | 一つの画面に集約 |
| 税区分の決まる時点 | 請求書の到着後 | 注文の登録時 |
| 保存の準備 | 担当者ごとの手作業 | データとしてそのまま残る |
受け口が電話とファクスとメールへ分かれた状態の整理は、取引先への案内と並行して進める必要があり、同じ規模の移行を通した相手の段取りが効いてきます。
取引先への案内の出し方まで含めて、移行の道筋を一緒に描いてもらうのが近道です。無料相談で自社の条件を持ち込む
免税事業者との取引が多い場合
仕入先の登録番号から整える
小規模の加工先や個人事業主が仕入先に多いと、登録番号のある先とない先が混ざります。控除できる分とできない分が仕入れのたびに分かれるため、受け口の整理より仕入先の名簿を整えることが先に来ます。控除率の引き下げが段階で進めば、同じ仕入先でも時期によって差し引ける額が変わります。『どの仕入先が、どの扱いか』を一覧で持てているかが、申告前の手間を分けます。
控除率の下がり方も仕入先ごとの判断材料になります。80%という現行の控除率は2026年9月まで、70%への引き下げは2026年10月から2028年9月までとされており2、名簿を整えておけば、この時期の境目で仕入先ごとの負担がどう変わるかを事前に試算できます。試算がないまま切り替えの時期を迎えると、請求の途中で条件を直す羽目になりかねません。
名簿を整えたら、発注の画面で仕入先の区分が見える状態にします。値引きで調整するか自社の負担として受けるかを仕入先ごとに決め、経緯を記録に残しておくと、あとからの確認が短く済みます。なお令和8年度税制改正大綱は審議前の案であり、確定した内容ではない点は念のため申し添えます2。難しさは低めで、名簿の整理は数週間、取引条件の見直しは相手のある話なので別に期間を見ます。
| 仕入先の区分 | 控除の扱い | 発注のときにすること |
|---|---|---|
| 登録番号のある仕入先 | 支払った消費税を全額差し引ける | 通常どおり登録する |
| 登録番号のない仕入先 | 経過措置の割合だけ差し引ける | 区分を付けて発注する |
| 区分が未確認の仕入先 | 確認するまで判断できない | 確認の依頼を先に出す |
登録番号の有無で税区分が分かれる運用は、会計側の設定と発注画面の作りが噛み合って初めて回るため、両方を見渡せる相手と決めたほうが手戻りが出ません。
仕入先の名簿と発注の画面をどうつなぐか、いまの仕組みを見てもらいながら決めるのが近道です。無料相談で自社の条件を持ち込む
経理の担当者が一人か二人の場合
保存の規則を先に決める
担当者が少ない会社では、道具を入れる前に日々の運用が詰まります。受け口の一本化より、保存と検索の規則を先に決めるほうが効きます。規則が一枚の紙にまとまっていれば、担当者が休んだ日でも同じ形で残せます。『誰がやっても同じ』を先に作るか、あとで作り直すかで、かかる時間は大きく変わりますね。
商品や取引先のデータも、多ければよいわけではありません。登録数を確かめます。20000点という精査前の商品登録数は2025年の事例の値で、扱う人数に対して明らかに多い量でした5。『今も出ている商品か』を確かめ、動いている分だけに絞ってから移すほうが少人数では続きます。難しさは低めで、規則づくりに数日、データの絞り込みに数週間の工数を見ておけば、ここまでの進め方を次の一覧に整理できます。
| 決めること | 決め方の目安 |
|---|---|
| 保存の置き場 | 一か所に限り、部署ごとに分けない |
| 名前の付け方 | 日付・取引先・金額の順でそろえる |
| 確認の担当 | 月に一度、別の人が抜き取りで見る |

少人数の経理では保存の規則づくりと商品データの絞り込みを同時に抱える余力が乏しく、最小限の範囲を切り出せる相手がいると始めやすくなります。
まず残す商品と止める商品の切り分けから、短い期間で相談してみるのが近道です。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 確かめる項目 | 進め方の目安 |
|---|---|
| 取引先の数 | 数百社規模なら、注文の受け口をそろえることを先に置く |
| 仕入先の登録番号 | ある先とない先を名簿で分け、発注の時点で区分を付ける |
| 経理の人数 | 一人か二人なら、保存と検索の規則づくりを先に置く |
| 商品データの量 | 動いている商品に絞ってから移し、精査前の点数のまま運ばない |
| 制度の見直し | 控除率は段階で動く前提に立ち、率を持たせる処を一か所にまとめる |
消費税も保存の要件もこの先さらに動くため、そのつど場当たりで直すより、受発注の作りの側へ寄せておくほうが次の改正で慌てずに済みます。 次の見直しが届く前に、いまの受発注と保存のやり方を点検してもらうのが近道です。
よくある質問
インボイスの経過措置は、当初の予定と何が変わるのですか
当初は、控除できる割合を一段下げたあとに期限を迎え、経過措置が終了する道筋でした。令和8年度税制改正大綱では、その途中に段階を挟み、引き下げの幅を小さく刻む見直しが示されています。ただし大綱は国会での審議を経ていない案であり、今後内容が変わる可能性があります2。『確定した制度』として社内規程へ書き込むのは、成立を待ってからが安全です。
電子で受け取った請求書を、紙に印刷して保存する扱いは認められますか
電子でやり取りした取引情報は、電子のまま保存する扱いになります。印刷した紙を正式な保存に代える運用は、宥恕の期間が終わった時点で使えなくなりました。一方、取引先から紙で受け取った請求書は、これまでどおり紙で保管しても差し支えありません。『どちらの経路で届いたか』で扱いが分かれる点に注意が要ります。
会計システムを入れ替えないと、商流の電子化は進められませんか
入れ替えが前提になるとは限りません。受発注の側でデータを整え、会計側が読み込める形式に合わせて渡す組み立てでも成立します。詰まっているのは会計の機能よりも、受注の入口で単価や税区分が決まっていない点にあると見ます。まず『どの項目が足りないか』を並べてから、入れ替えの要否を判断する順序が現実的です。
免税事業者の仕入先に、登録を求めても問題はありませんか
一方的に登録を求めたり、応じない相手の取引条件を不利に変えたりする進め方は、独占禁止法や下請法の上で問題となるおそれがあると指摘されています。協議の場を持ち、話し合いの経緯を記録として残す進め方が無難です。『登録の有無で扱いを変えるのか』は、社内で基準を決めてから伝えるほうが行き違いが減ります。
BtoB ECを入れると、消費税の申告そのものが軽くなりますか
申告という手続きの中身が変わるわけではありません。変わるのは、控除できる仕入れとできない仕入れの仕分けが済む時点です。発注のたびに区分が決まっていれば、申告前にまとめて突き合わせる作業は薄くなると考えられます。『締めてから探す』時間が減る効果が中心だと押さえておくと、期待のずれが起きません。
取引先が電子でのやり取りに応じてくれない場合はどうしますか
全先を一度に切り替える必要はありません。応じてくれる先から順に移し、残りは紙で受けて社内で電子に起こす形をしばらく併走させます。並行運用のあいだも、保存と検索の規則だけは同じにしておくと、あとの統合が短く済みます。『いつまでに何割を移すか』の目安を置くと、併走が惰性になりにくくなります。
- 1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
- 2 出典:Ur Media「令和8年度税制改正解説:インボイス経過措置はどう変わる?」(2026年) 経路
- 3 出典:株式会社ハンモック「電子帳簿保存法に関する実態調査」(2024年) 経路
- 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(2020年) 経路
- 5 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(株式会社ポディウム様)」(2025年) 経路
画像の出典元
- A patient undergoing a dental panoramic X-ray scan in a clin/Photo by Pavel Danilyuk on Pexels
- A student deeply focused on studying at a desk surrounded by/Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels
- 20代前半の日本人女性がPOSレジでの会計をしている場面/画像:生成AI(自社)