◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 卸価格の公開範囲は、全部を見せるか全部を隠すかではなく、ログイン前とログイン後で分ける二段の置き方。
- 5階層までの組織の段に沿って得意先ごとの卸価格を切り替えられる仕様があり、本部と店舗で別の値を持たせられます2。
- 514.4兆円がBtoB-ECの市場規模で、この額の中には得意先ごとに卸価格が変わる取引も含まれます1。
- 3,800品種を扱う規模では、公開する範囲を品番ごとではなく商品群の単位で決めます4。
- 取引先の件数が試用の枠に収まるうちは画面で掛率を登録し、本運用の規模では基幹システムの台帳から取り込みます3。
目次

3,000社の卸先を持つ現場の公開範囲設計
卸価格の公開範囲とは、ログインの前後で卸価格の見せ方を切り替える設計のことです。
卸価格は、ログイン前に品番と仕様までを見せ、ログイン後に得意先ごとの「掛率」を出す二段で扱います。会員限定にする範囲を商品群と組織の段に合わせて決めれば、新規の引き合いと既存の値引き交渉のどちらも残せます。
その設計を日々担っているのが、全国の販売加盟店を通じて製品を届ける日東電工CSシステム株式会社です。朝いちばんの営業所では、受話器を肩に挟んだ担当者が紙の価格表をめくる音が続きます。「あの加盟店の掛率はいくつでしたか」という確認が、受注を通す前にもう一往復入ります。
規模を数字で押さえます。3,000社が、2020年時点の全国の販売加盟店数で、一人の担当者が掛率まで覚えていられる件数を大きく超えています4。取り扱う製品は2018年時点で3,800品種あり、「この加盟店へこの品種をいくらで出すか」という判断が日々積み上がります4。自社の卸先の数と品種の数を掛けて、いま人の記憶が支えている判断の回数を数えてみてください。
その判断のたびに生じる確認の一往復は、担当者の手間で済む話ではなく、受注が動き出すまでの待ち時間として毎日の人件費に乗ります。
卸価格を公開しない理由と会員限定表示の仕組み
卸価格をサイトへそのまま出さない判断には、商習慣の側の事情があります。卸価格は得意先ごとに違う値で、店頭の売価のように一つへ決まりません。同じ品番が、長い付き合いの得意先には低い掛率で、新規には標準の掛率で出ていきます。これを画面へ並べると、「隣の店はいくらで買っているのか」という問いが商談の最初に来ますね。
会員限定表示は、見る人によって同じ品番の値を差し替える仕組みです。会員登録の受付で得意先を特定し、与信と掛率の登録で値を紐づけ、ログイン後の価格表示でその得意先の卸価格を出し、そのまま発注の受付へつなぎます。ログイン前の画面に残すのは品番と仕様と在庫の区分までで、「価格はログイン後に表示します」の一行を添えておきます。
全公開・一部公開・完全非公開の使い分け
見せ方の幅は広めに取れます。全公開は標準の卸価格を誰にでも出す形で、新規の引き合いは拾いやすくなる一方、既存の得意先との掛率の差が見えやすくなります。一部公開は、定番品だけ価格を出し、特注品や大口向けは「お問い合わせ」へ回す形です。完全非公開は、ログインした得意先にだけ価格を出し、それ以外には品番と仕様までを見せます。
どれを選ぶかは、新規開拓と既存の交渉力のどちらを重く見るかで変わります。価格を絞り込みすぎると、検索から来た買い手は品番だけを見て去ります。しかし公開しすぎれば、既存の得意先が他社の掛率を推し量る材料を手にします。全部を隠せば問い合わせの電話は静かになりますが、静けさは成果ではありません。「新規の入口は広く、値の詰めは会員の中で」という置き方なら、どちらも少しずつ残せますね。
10.6%という2024年の前年比の伸びは市場の側の数字で、いまの形を一年続けることは、その伸びの中で自社の受注だけを電話と紙に置き続けることを意味します1。
BtoB-EC化率43.1%に見る価格差別化の広がり
取引の電子化がどこまで進んだかを、先に数字で確かめます。43.1%が、BtoB取引の全体に占めるECの割合で、半分にはまだ届かない水準です1。ただしこの割合は取引が電子化された度合いを示すもので、卸価格をどこまで公開しているかを示す数値ではありません。「EC化率が高いのだから価格も公開されている」とは読めません。
市場の大きさも押さえておきます。514.4兆円が2024年のBtoB-EC市場規模で、先に挙げた前年比の伸びがそのまま上乗せされた額です1。この額の中には、得意先ごとに卸価格が変わる取引も含まれます。「価格は画面に載せない」まま受注だけを電子化している場合もあるため、自社の受注のうち価格の確認を電話で受けている割合を、直近の一年で振り返ってみましょう。
得意先の組織階層で切り替える卸価格の範囲
会員限定にした先で、誰にどの値を見せるかが次の問題になります。段の数には上限があります。5階層までが、得意先の組織に沿って卸価格を切り替えられる範囲で、本部、支社、営業所、店舗、担当者まで並べられる深さです2。「請求は本部、納品は店舗」という形の得意先でも、値を分けて持たせられますね。
上限の読み方には注意が要ります。2026年時点のEC-Riderの仕様がこの段の数で、他社の製品や将来の版では違う数になることもあります2。自社の得意先台帳を開いて、掛率が分かれている段がどこまで下りているかを数えてください。「本部までで足りる」のか「担当者まで下りる」のかで、会員登録の受付の作り方が変わります。
取引先数の規模が公開範囲の設計を左右する
公開範囲の決め方は、取引先の件数で現実的な選択肢が変わります。少ないうちは手で足ります。50件までが、EC-Rider Primo の無料トライアルで登録できる取引先数で、一部の得意先だけ会員限定にして様子を見る規模に収まります3。「まず主要な卸先だけ載せる」という始め方なら、この枠の中で試せます。
件数が増えると、手で登録する形は続きません。10,000件が、EC-Rider Primo の有料プランで扱える取引先数の上限で、先に挙げた全国規模の卸先でも枠の内側に収まります3。この規模になると、掛率を画面で一件ずつ登録するか、基幹システムから取り込むかという分かれ道が出てきます。「誰にどの値を見せるか」を人の記憶で保つのか、台帳の側で保つのかを先に決めておきます。
選ぶところは絞れます。取引先の件数がいまの枠に収まるかどうかと、掛率が分かれる段がどこまで下りているか。「一部の得意先で試す」のか「最初から全得意先を載せる」のかは、この二つを見れば決まります。
ここから先は、取引先の件数と掛率の段に合わせて、公開範囲の決め方を順に見ていきます。

卸価格の公開範囲は、得意先ごとの掛率と組織の段が絡むため、自社の台帳を前にした確認なしには枠が決まりません。
実際の得意先の件数と段の深さを持ち込めば、会員限定にできる範囲がどこまで作れるかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
公開範囲を決める前に確かめる項目
- ログイン前は品番と仕様まで、ログイン後に掛率を出す二段の置き方
- 掛率が分かれている得意先の段の深さ
- 取引先の件数と、試用の枠との差
- 会員限定へ置く商品群の範囲
- 掛率を保つ場所と、値が変わったときの直し手
この並びに優劣の順序はありません。
ここからは、一部の得意先で試す段階と、全得意先を載せる段階とに分けて、決め方を並べます。
取引先の件数で分かれる二つの進め方
| 進め方 | 想定する取引先の件数 | 会員限定にする範囲 | 掛率の登録 |
|---|---|---|---|
| 試用段階の小規模型 | 無料トライアルの枠に収まる規模 | 定番品は公開、特注品はお問い合わせ | 画面で一件ずつ |
| 本運用の大規模型 | 有料プランの枠を使い切る規模 | ログイン前は品番と仕様まで | 基幹システムの台帳から取り込む |
試用段階の小規模型
まだ全得意先を載せない段階では、決める順番が変わります。ここで先に見るのは取引先の件数よりも、社内で説明できる画面ができているかどうかです。会員限定にした画面を営業部へ見せて、「これなら得意先へ案内できる」と言ってもらえるところまでを最初の区切りにします。掛率の体系がそろっていなくても、代表的な得意先の分だけで進められます。
手順は絞ります。掛率の型が少ない得意先を選び、定番品だけ価格を出し、「特注品はお問い合わせへ」の形で残します。登録できる件数は試用の枠に収まるため、基幹システムからの取り込みは後回しにして構いません。難易度は低く、工数は担当者一人の登録作業で収まる範囲です。
| 決めること | 試用の段階での扱い |
|---|---|
| 価格を出す商品 | 定番品のみ |
| 特注品の表示 | お問い合わせへ回す |
| 掛率の登録 | 画面で一件ずつ |
| 台帳との連携 | 後回し |
| 会員登録の審査 | 営業担当が手で確認 |

一部の得意先から試す段階では、どの商品群を公開に残せば新規の引き合いが途切れないかの見当が先に要ります。
試用の枠に収まる件数のまま、定番品だけを公開した画面が得意先にどう映るかが分かります。無料相談で自社の条件を持ち込む
本運用の大規模型
全得意先を載せる段階になると、判断の置き場所が移ります。掛率を画面で一件ずつ登録するのではなく、基幹システムの台帳へ持たせ、画面はその値を映すだけにします。ここで問われるのは「どの値を見せるか」より、「値が変わったときに誰が直すか」です。営業が値引きを決めた翌日に画面の掛率が古いままなら、得意先は結局、電話をかけ直します。
この更新の仕組みを支える件数の枠も、確かめておきます。10,000件までが有料プランで扱える取引先数で、卸先が全国へ広がる規模でも枠の内側に収まります3。段取りは、取引先の登録、掛率の割り当て、公開範囲の点検の順に進めます。組織の段が深い得意先では、「値は本部に持たせる」と先に決めてから、店舗ごとの例外を足します。難易度は高く、工数は基幹システムとの取り込みを含むため、試用の段階とは別に見積もっておきます。
| 決めること | 本運用での扱い |
|---|---|
| 掛率の持ち場 | 基幹システムの台帳 |
| 組織の段 | 本部から担当者まで |
| 価格の表示 | ログイン後のみ |
| 更新の担当 | 営業と管理で役割を分ける |
| 新規の得意先 | 台帳への登録に合わせて反映 |
全得意先を載せる段階では、基幹システムの台帳と画面のどちらへ掛率を持たせるかで、後の直し方が変わります。
組織の段が深い得意先を例に、本部と店舗のどちらへ値を置くかの判断材料を持ち帰れます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 決める場面 | 見るところ |
|---|---|
| ログイン前に出す範囲 | 品番と仕様までにとどめるか、定価まで出すか |
| 会員限定にする商品 | 定番品は公開し、特注品はお問い合わせへ |
| 組織の段の深さ | 掛率が分かれている段を得意先台帳で数える |
| 取引先の件数 | 試用の枠に収まるか、有料プランの枠が要るか |
| 掛率の持ち場 | 画面で登録するか、基幹システムから取り込むか |
| 値が変わったとき | 直す担当と、画面へ反映する手順 |
公開範囲は一度決めて終わりではなく、卸先が増えるたびに枠の見直しが要る取り決めです。 いまの取引先数と数年先の見込みを並べて、どの時点で枠を広げる必要が出るかを見通せます。
よくある質問
ログイン前に定価だけを出すのは有効ですか
定価や参考上代をログイン前に出しておけば、検索から来た買い手は「だいたいの水準」を掴めます。品番と仕様しかない画面より、問い合わせの手前で判断が進みます。ただし定価を出す以上、ログイン後に見える掛率との差が、そのまま値引き幅として伝わります。定価を置くなら、掛率の刻みをどこまで細かくするかを同時に決めておきます。
会員登録の審査はどこまで厳しくしますか
卸価格を見せる相手を絞る以上、登録の受付は審査と一体になります。法人番号や既存の取引の有無を確認し、与信と掛率の登録まで済ませてから価格を開くのが基本の流れです。「登録は自動、価格の開放は手動」と分けておくと、新規の引き合いを取りこぼさずに済みます。審査の待ち時間は、新規の離脱に直に響く箇所です。
既存の得意先が画面を使わず電話を続ける場合はどうしますか
画面と電話が並走する期間は、掛率がどちらで管理されているかが曖昧になりがちです。電話で決めた値引きを台帳へ戻す担当を決めておき、「画面の値が正、電話は確認のみ」と社内で言い切れる状態にします。得意先ごとに、画面から入った注文の割合を直近の期で数えて、切り替えの進み具合を確かめてください。
組織の段が上限を超える得意先がある場合はどうしますか
段の上限に収まらない得意先は、実際には請求と納品の系統が別々になっている場合があります。「請求先」と「納品先」を分けて持たせると、段を一つ減らせることがあります。それでも収まらないときは、値を持たせる段を上へ寄せ、下の段は納品先の管理にとどめます。台帳の段をそのまま画面へ写す必要はありません。
公開範囲はどのくらいの頻度で見直しますか
卸先が増えたときと、掛率の体系を変えたときが見直しの入口です。取引先の件数が試用の枠を超える前に、掛率をどこで保つかを決め直しておきます。期末ごとに卸先の件数と段の深さを数え直す場をつくっておくと、「気づいたら上限」という事態を避けられます。見直す単位は、商品群と得意先の段の組み合わせ。
- 1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
- 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える(EC-Riderお役立ちコラム)」(2026年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider Primo サービス紹介ページ・料金プラン条件」(2026年) 経路
- 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社)」(2026年) 経路
画像の出典元
- Top view of a shopping cart and bag on a blue background, id/Photo by Nataliya Vaitkevich on Pexels
- 30代前半の日本人男性が新人の受け入れをしている場面/画像:生成AI(自社)
- 20代後半の日本人女性が研修室での座学をしている場面/画像:生成AI(自社)