◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 73.5%の企業が稟議の承認までに1日以上を要しており、起案の前に帳合の維持条件を文章にしておくことが先決です2
- 41.0%が稟議の課題として「関わる人が多すぎる」を挙げています。誰が何を決めるかを一枚の表へ割り当ててください2
- 5階層が、EC-Riderで得意先の組織階層に応じて卸価格を切り替えられる対応上限です。自社の階層と突き合わせて追加開発の要否を判断してください3
- 91.6%が業務効率化の効果を実感する一方、売上・利益の向上を実感したのは3.9%です。効果欄は工数削減の数字で組み立ててください1
- 20万円のStandard・Proプランか、400万円からの小規模カスタマイズか。EC-Riderの初期費用は投資の規模で分かれます4
目次

稟議が長引く理由
帳合とは、得意先ごとに異なる卸価格や取引条件を指す商慣行の呼び名です。稟議が長引く原因は金額の大きさではなく、得意先ごとの卸条件である「帳合」をシステムでどう維持するかが書かれていない点にあります。帳合の維持条件と部門の分担を先に文章化し、費用の幅はその条件から逆算してください。添えるべきは、運用ルールを書いた別紙一枚です。
その一枚が用意されないまま迎える火曜の朝、営業部の島で複合機の排紙音が続き、部長が三枚目の稟議書を差し替えています。差し替えの理由は金額ではなく、「得意先ごとの卸価格をどう持つのか」という情報システム部門からの一行の指摘です。帳合は営業の現場では当たり前の約束事ですが、書類の上では説明されないまま残ります。
所要日数から確かめます。73.5%は、稟議の承認までに1日以上を要した企業の割合です2。2024年の調査値であり、自社の起案から決裁までの日数を直近の数件で並べてみてください。「どこで止まったか」を差し戻しの理由ごとに数えると、遅れの輪郭が見えてきます。
一度の差し戻しで動く人数と時間を時給へ換算すると、「書き直しの手間」は導入の初期費用と同じ通貨で並べられます。
情報システム部門と営業部門の分担
誰が何を決めるかを先に紙へ落とします。41.0%が稟議の課題として「関わる人が多すぎる」を挙げ、35.9%が「根回しに時間がかかる」を挙げています2。自社の直近の起案で、承認者と合議者が何人並んだかを数えてから読み進めてください。人数を減らせないなら、決める事柄を部門ごとに割り当てて、同じ論点を二度回さない形にしてください。
情報システム部門が担う仕様範囲
情報システム部門が引き受けるのは、卸価格をどの単位で持ち、基幹システムのどの項目と照合するかという仕様の範囲です。得意先マスタの登録番号とEC側の取引先コードが食い違えば、受注の取り込みはそこで止まります。「どの項目を正とするか」を一行で決めておけば、稼働後の問い合わせは仕様書の上で答えられます。
切り替えの深さも仕様の話です。5階層は、EC-Riderが得意先の組織階層に応じて卸価格を切り替えられる対応上限です3。2026年時点の値であり、「本社・支店・店舗」のように自社の階層が何段あるかを数えて突き合わせてください。階層が上限に収まるかどうかで、追加開発の要否が分かれますね。
営業部門が担う運用ルール
営業部門が決めるのは、例外の扱いです。得意先ごとの特別価格、期間限定の建値、担当者の裁量で出してきた端数の調整もあります。これらを「例外として残す」のか「標準の条件へ寄せる」のかは、情報システム部門の側では決められません。稼働日までに棚卸しを終えた例外の件数が、そのまま初期の設定作業の量になります。
棚卸しの単位は得意先です。1年を区切りにして、取引先ごとの価格変更が何回あったかを数えてください。変更の多い得意先ほど、稼働後に「聞いていない」という連絡が入りやすい相手になります。どこまでを営業の裁量に残すかを先に決めておくと、稟議書の運用ルール欄は一行で埋まります。
20万円というEC-RiderのStandard・Proプランの初期費用4を、いまの帳合を手作業で守り続けた場合の差し戻しの時間と並べてみてください。
帳合を崩さない設計条件
設計条件は四つに絞れます。卸価格をどの単位で持つか、階層のどこまでを切り替えの対象にするか、例外をいつ誰が更新するか、得意先へ見せる価格と社内の原価をどう分けるか。この四つを稟議書の別紙へ書いておけば、情報システム部門と営業部門からの質問はこの紙の上で片づきます。差し戻されても「別紙に書いてあります」と一言で返せる形を作ってください。
単位の決め方から見ていきます。先に挙げた階層の上限に、自社の得意先の組織を当てはめてください。本社一括で仕切る得意先と、店舗ごとに単価が違う得意先を同じ表へ並べると、どの段で価格が変わるかが見えます。「どこで切り替わるか」を得意先ごとに書き出した紙が、そのまま設定の元になりますね。
例外の更新権限は運用ルールの中心です。価格の改定を営業担当が直接入力するのか、営業事務が受け付けて一括で登録するのか。前者なら承認の記録をシステム側に残す必要があり、後者なら受付から反映までの日数を得意先へ示す必要があります。どちらを選ぶかを稟議書の本文へ書いておくと、稼働後に「誰が直すのか」を探し直さずに済みます。
最後に、見せる価格と社内の原価を分けます。得意先の画面に出るのは卸価格だけで、仕入れ値や粗利は出しません。当たり前のようでいて、ここを詰めずに画面を作ると、後から項目を隠すだけの改修が発生します。「この値は誰に見えるのか」を項目ごとに書き出した稟議書は、差し戻されても同じ紙で答えられますね。
DXの効果に差が出る境目
稟議の効果欄に何を書くかで、読み手の納得は変わります。91.6%がDXで業務効率化の効果を実感した一方、売上・利益の向上を実感したのは3.9%です1。効果欄に売上の増加を並べるのか、受注処理の工数削減を並べるのか。「効果」の語が指す中身は、審査する側の期待によって変わります。
成果の出方も見ておきます。60.8%は、DXの成果が出ていると回答した企業の割合です1。2026年時点の値で、残りの企業は成果が出ているとは答えていません。「成果が出た」と自社では何をもって言うのかを、稟議の段階で決めておいてください。
効果が出るかどうかは、稼働の前後で分けて確かめます。稼働前に帳合の維持条件を決めた場合と、稼働後に得意先からの異議を受けて決め直す場合では、同じ機能でも運用の手間が変わります。前者は設定作業で済み、後者は業務の見直しからやり直す形になります。「後で決めましょう」という一行を稟議書に残さないでください。
選ぶ基準は二つに絞れます。得意先の組織階層が対応上限に収まるか、そして例外の更新を誰が担うか。この二つに答えが出ていれば、稟議書は別紙一枚で説明できます。答えが出ていないなら、機能の比較表を増やす前に「例外は何件か」を営業部門と数え直してください。
ここから先は、稟議書へ先に書いておく事柄と、投資の規模ごとの進め方を順に見ていきます。
帳合の維持条件と例外の更新権限は、自社の得意先の組織を見ながらでないと決めきれませんから、実際に設定へ当たっている担当と一度突き合わせておく段階です。
自社の得意先の階層が対応上限に収まるか、収まらない場合に例外として持てるかを、件数を挙げて確かめられます。無料相談で要件を整理する
稟議書へ先に書いておく事柄
- 得意先ごとの卸価格をどの単位で持つかと、切り替えの階層の上限
- 例外の価格をいつ誰が更新するかという運用ルール
- 情報システム部門と営業部門のどちらが何を決裁するかの分担
- 得意先の画面に出す価格と、社内で持つ原価の分け
- 効果欄に書く指標を受注処理の工数削減へ揃えること
この並びに優劣の順序はありません。
同じ条件を書くにしても投資の規模で稟議書の厚みは変わりますから、次の表で自社に近い進め方を選んでください。

投資規模で分かれる導入パターン
| 進め方 | 費用の区分 | 帳合の決め方 | 決裁に関わる部門 |
|---|---|---|---|
| 標準プラン内で帳合を収める会社 | EC-RiderのStandard・Proプランの範囲 | 対応上限の階層に収まる範囲へ寄せる | 営業部門と情報システム部門 |
| 小規模な追加開発で基幹側へ合わせる会社 | EC-Riderの小規模カスタマイズ | 基幹システムの組織階層に合わせる | 情報システム部門と経理 |
| 全社の受注を移す会社 | EC-Riderの大規模カスタマイズ | 移行前に得意先ごとの卸条件を棚卸し | 全社の関係部門 |
標準プランの範囲で卸価格を切り替える進め方
得意先の組織が単純で、価格の切り替えが本社と支店の二段で足りる会社が当てはまります。この場合に重くなるのは階層の深さよりも、例外として残っている特別価格の件数の方です。「特別価格の得意先が何社あるか」を営業部門に数えてもらい、標準の条件へ寄せられる分を先に減らしてください。
費用の入口を確かめます。80,000円は、EC-Riderの全プラン共通の初期費用で、初回のみ発生します4。2026年時点の料金であり、月々の利用料とは別に見込んでおいてください。経理が見るのは月々の額より年額の方ですから、「年額でいくらか」の形へ直して書いておきます。
難易度は低く、工数の大半は機能の設定ではなく、営業部門による例外の棚卸しに向かいます。
| 決める事柄 | 標準プランでの扱い |
|---|---|
| 価格の切り替え段数 | 本社と支店の二段まで |
| 特別価格の得意先 | 標準の条件へ寄せて件数を減らす |
| 例外の更新 | 営業事務が受け付けて一括で登録 |
| 画面に出す価格 | 卸価格のみを表示 |
例外の件数が多いほど初期の設定作業は増えますから、棚卸しを始める前に、どこまでを標準の条件へ寄せられるかを聞いておく価値があります。
自社の特別価格の得意先を標準の条件へ寄せた場合に、残る例外が何件になるかを見積もれます。無料相談で自社の条件を持ち込む
基幹システムの項目に合わせて追加開発する進め方
得意先コードや単価の項目が基幹システム側で固まっていて、EC側を合わせる必要のある会社が当てはまります。判断の入口は例外の件数ではなく、照合する項目の数と連携の頻度の方です。「一日一回の取り込みで足りるのか」を、受注のピーク時間から逆算して決めてください。
費用の下限を押さえます。400万円は、EC-Riderの小規模カスタマイズの初期費用の下限です4。2026年時点の値で、標準プランの初期費用とは桁が一つ変わります。連携する項目を一つ増やすごとに見積もりは動きますから、「どの項目を連携するか」の一覧を確定させてから見積もりを取ってください。
難易度は中程度で、工数は情報システム部門の項目定義と、基幹システムの担当ベンダーとの日程調整に偏ります。
| 決める事柄 | 追加開発での扱い |
|---|---|
| 照合する項目 | 得意先コードと単価の項目を一覧で確定 |
| 連携の頻度 | 受注のピーク時間から逆算して決める |
| 価格の切り替え段数 | 基幹システム側の組織階層に合わせる |
| 例外の更新 | 基幹システム側を正として反映 |

基幹システム側の項目が固まっている場合、標準のまま連携できる範囲と追加開発になる範囲の区切りは、項目の一覧を見せた上でないと判断できません。
自社の得意先コードと単価の項目のうち、どれが標準のまま連携できるかを一覧で示してもらえます。無料相談で自社の条件を持ち込む
全社の受注を一つの仕組みへ移す進め方
取扱品目が多く、電話とファクスと営業担当の口頭での受注が並んで残っている会社が当てはまります。ここでは帳合の維持条件に加えて、受注の入り口をいくつ残すかまでを稟議書に書く必要があります。「当面はファクスも残す」と決めるなら、二重入力の防ぎ方も同じ紙へ書いてください。
規模の目安を置きます。1,500万円は、EC-Riderの大規模カスタマイズの初期費用の下限です4。2026年時点の下限であり、ここから積み上がる前提で年度の予算枠を取ってください。金額が大きくなるほど関与する部門は増えますから、「誰の次に誰へ回すか」を起案の前に固めておいてください。
難易度は高く、工数は機能の開発よりも営業部門と得意先への説明および移行期間の運用に厚く積もりますから、ここまでの三つの進め方を次の表で見比べてください。
| 決める事柄 | 全社展開での扱い |
|---|---|
| 受注の入り口 | ECとファクスと電話のうち残す経路を明記 |
| 二重入力の防ぎ方 | 受付の窓口を一本化して転記の発生点を消す |
| 帳合の維持 | 得意先ごとの卸条件を移行前に棚卸し |
| 決裁の順番 | 起案の前に関与部門と順序を確定 |
受注の入り口をいくつ残すかは、得意先への説明の負担と移行期間の長さに直結しますから、進め方の相談を予算枠の確定前に済ませておきます。
ファクスや電話を併走させる期間の組み立て方と二重入力の防ぎ方を、自社の受注件数に即して整理できます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 稟議書へ書く項目 | 確かめる中身 |
|---|---|
| 卸価格の単位 | どの項目で持ち、基幹システムのどれと照合するか |
| 切り替えの階層 | 得意先の組織が対応上限に収まるか |
| 例外の更新権限 | 誰がいつ更新し、記録をどこへ残すか |
| 部門の分担 | 情報システム部門と営業部門のどちらが決裁するか |
| 効果欄の指標 | 受注処理の工数削減で書けているか |
| 投資の規模 | 標準プランか、追加開発か、全社展開か |
稟議書の別紙に何を書くかは、部門の分担と投資の規模が決まってからでないと形になりませんから、下書きの段階で外の目を入れておきます。 自社の起案内容に対して、情報システム部門と営業部門のどちらから質問が出やすいかを事前に洗い出せます。
よくある質問
稟議書に帳合の維持条件を書くと、かえって分量が増えて承認が遠のきませんか。
別紙一枚へ寄せてください。31.6%が稟議の課題として「対象範囲が広すぎる」を挙げています2。本文で決めるのは金額と目的に絞り、卸価格の単位や例外の更新権限は別紙へ移すと、読み手は自分の担当分だけを見て判断できます。分量そのものより、読む場所が分かれているかどうかを整えてください。
情報システム部門と営業部門で意見が割れたとき、どちらを優先すればよいですか。
決める事柄ごとに分けてください。卸価格をどの項目で持つかは情報システム部門、例外を誰がいつ更新するかは営業部門が決めます。両方にまたがるのは切り替えの階層で、ここだけは得意先の組織を一覧にして二つの部門で突き合わせます。「どちらが正しいか」を争う前に、担当の割り当てで解ける論点を先に外してください。
稟議の効果欄には、売上の増加と業務効率化のどちらを書くべきですか。
効率化から書いてください。先に挙げた業務効率化の実感と売上・利益の実感の開きが、そのまま審査する側の期待値の差になります。受注の転記や電話での価格照会が何件減るかを示し、売上への効果は稼働後の観察として書き分けてください。「何件の転記が減るか」を営業事務に数えてもらうと、効果欄は具体的になります。
得意先の組織階層が対応上限を超える場合はどうしますか。
超える分を運用で吸収できるかを先に確かめます。上限に収まらない得意先が何社あるかを数え、その数社だけを個別の卸条件として登録できるかを検討してください。全社に合わせて作り込む前に、「手で持てる件数か」を営業部門と確かめる順番です。件数によって費用の規模が変わります。
承認に時間がかかるのは金額が大きいからですか。
金額の大小だけではありません。35.9%が稟議の課題として「根回しに時間がかかる」を挙げています2。承認の順番が決まっていないと、起案者は関係者を一人ずつ説明して回ることになります。関与者を減らせないなら、誰が何を決めるかを起案の時点で割り当てて、説明を一巡で終える形にしてください。
稼働後に得意先から卸価格の異議が出たら、どう対応しますか。
異議を「設定の誤り」と「条件の解釈違い」に分けてください。設定の誤りなら、登録番号と単価の照合で片づきます。解釈違いなら、営業部門が約束していた条件が棚卸しから漏れていたことになりますから、例外の一覧へ追加して更新権限の所在を記録します。同じ得意先で二度繰り返さないための記録です。
- 1 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」(2026年) 経路
- 2 出典:弁護士ドットコム株式会社(プロフェッショナルテック総研)「社内稟議の実態調査」(2024年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Riderお役立ちコラム「BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える」」(2026年) 経路
- 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider(BtoB EC受発注システム)料金プラン・費用ページ」(2026年) 経路
画像の出典元
- 30代後半の日本人女性が名刺交換をしている場面/画像:生成AI(自社)
- A clean, minimalistic empty corridor with natural light stre/Photo by Denys Gromov on Pexels
- Business meeting with diverse professionals discussing plans/Photo by Pavel Danilyuk on Pexels