◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 61%——レガシーシステムを保有するユーザー企業の割合で、BtoB ECの乗り換えは機能の比較ではなく、旧システムを止める条件の整理から始まります5。
- 並行運用の終わりは月数ではなく、新しい画面だけで発注を完了できた取引先の件数で決めます。
- 4か月——BtoB ECサイトの実質的な開発期間として事例に記録された長さで、構築の期間と並行運用の期間は別々に数えます1。
- 30日——EC-Rider Primo の無料トライアルの期間で、契約の前に繁忙期の受注をそのまま通し、並行運用で最後まで残る項目を先に洗い出せます3。
目次

BtoB EC乗り換えの背景
BtoB EC乗り換えとは、電話やファクスによる受発注から、BtoB向けのECサイトへ切り替える取り組みです。
BtoB ECの乗り換えでは、新旧を同時に動かす期間をあらかじめ固定せず、取引先ごとの受注件数と基幹連携の切り替え可否で終わりを判定します。構築の期間と並行運用の期間は別に数え、無料で試せる環境に自社の受注データを通してから日程を引きます。
フーヅフリッジ株式会社のBtoB ECサイト構築は、導入事例として公開されています1。その前段にある受注デスクの景色は、どの会社でもよく似ています。朝九時の事務所、島の上に重なるファクスの用紙。担当者は一枚を取り上げて品番を読み上げ、基幹システムの入力画面へ転記していきます。紙の端がこすれる音が、締め切りの時刻まで途切れません。「至急」と赤で書かれた一枚が、列の先頭へ差し込まれることもあります。
これは「うちだけ」の景色ではありません。
74%——大企業でレガシーシステムを保有する企業の割合です5。2025年に公表された値で、四社に三社が、動いてはいるものの手を入れにくい仕組みを抱えている計算になります。受発注の仕組みも例外ではなく、「まだ動いているから」という理由づけが通る期間は年々短くなっています。
一枚ずつの転記と電話での確認は、月末には残業代と、出荷が一日ずれたときの振替輸送費という名前で帳簿に載ります。
並行運用という選択
並行運用とは、旧システムと新システムを一定の期間だけ同時に動かし、同じ受注を両方で受ける進め方です4。「一気に切り替える」方式に比べると、現場の手間は素直に二倍へ近づきます。それでも選ぶ会社があるのは、切り替えた翌朝に受注が一件も入らない、という事態を避けたい場合です。乗り換えの検討では、機能の比較表よりも先に、この二倍の手間を何週間背負えるかを見積もっておきます。
二重に持つ対象は、注文を受ける画面だけではありません。取引先ごとの掛率や単価といった帳合の条件、在庫の引当、基幹システムへの連携、受注の控えの保存と検索まで、すべてが二重になります。なかでも帳合の条件は、旧システムの側で例外の設定が長年積み上がっていることが多く、そのまま写すと「なぜこの単価なのか」を誰も説明できない状態が新しい側へ引き継がれます。移す前に、取引先ごとの例外の件数を数えてください。ここを飛ばすと、新しい画面の上で古い謎がそのまま生き延びますね。
二重に持つ対象を片付けた先にある終わりの判定は、カレンダーではなく件数で持ちます。取引先を受注件数の多い順に並べ、上位から何社が新しい画面だけで発注を完了できたかを、週ごとに数えてください。全体の件数のうち新しい側で完結した割合が伸びきり、旧システムへの受注が二週続けて発生しなくなった時点が、旧システムを読み取り専用へ落とす目安です。「もう誰も使っていないはずだ」ではなく「先週も先々週も使われていない」で判断します。
新しい側の準備そのものは、思うより短く済みます。3日——BtoB EC の EC-Rider Primo で、申込から利用開始までにかかる最短の日数です3。2026年時点の条件で、社内で稟議書が一往復する日数より短い水準にあたります。日程を伸ばしているのは新システムを用意する作業ではなく、旧システムに溜まった例外を整理する作業のほうです。「ベンダーの都合で遅れている」と言う前に、自社の例外の件数を数えてみてください。
いまの形を続けるほど、大企業の74%が抱えるのと同じ保守と例外対応の手間が、翌年度の予算へそのまま繰り越されます5。
移行期間の目安と検証の進め方
構築期間の事例に見る目安
構築にかかる期間と、並行運用にかかる期間は、別々に数えます。前者はベンダー側の作業が中心で、後者は自社の取引先の動きが中心です。見積書や提案書に書かれた期間が「構築の完了まで」なのか「旧システムの停止まで」なのかで、社内へ伝えるべき日程は大きく変わります。受け取ったその場で、どちらを指しているかを確かめてください。
公開されている事例で確かめます。4か月——フーヅフリッジ株式会社のBtoB ECサイトで、実質的な開発に要した期間です1。2017年の事例で、社内の四半期計画のひと区切りとほぼ重なる長さにあたります。2か月——フリュー株式会社のBtoB向けECサイトの構築期間です2。2016年の事例で、前者のちょうど半分です。同じ「BtoB ECの構築」という言葉でも、倍の開きが記録されています。
この開きがどこから生まれたのかは、公開された情報だけでは追い切れません。追えるのは自社の条件のほうです。連携する基幹システムの数、取引先ごとに異なる掛率と単価の例外の件数、移行が必要な過去の受注データの年数。「だいたいで」と口にする前に、この三つを数えてから期間の相談を始めてください。数えずに引いた日程は、途中でもう一度引き直す場面が出てきますね。
30日間トライアルでの検証
機能の一覧表を横に並べても、自社の受注のくせは見えてきません。確かめられるのは、実際のデータを流せる環境だけです。無料で試せる期間が用意されているサービスなら、契約を決める前に、直近の繁忙期の受注をそのまま入力して、転記と照合の手順を最後まで通せます。「画面はきれいでした」で終わらせず、出荷指示と請求の手前まで届くかを見てください。
期間を具体に見ます。30日——BtoB EC の EC-Rider Primo に用意されている無料トライアルの長さです3。2026年時点の条件で、月初の発注の山と月末の締めをひと巡り分だけ含められる長さにあたります。この期間を「操作の練習」に使ってしまうと、判断の材料は集まりません。受注件数の多い取引先を三社選び、その三社の発注を新旧の両方で処理し、結果が一致するかを照合してください。
トライアルで一致しなかった項目が、並行運用の最後まで残る項目になります。単価の丸め、送料の判定、納期の表示、登録番号の食い違い。照合で差の出た欄に印を付け、切り替えの判定表へそのまま移してください。印の付いた欄が残っているうちは、旧システムの受注窓口を閉じない。この一線を先に決めておくと、「そろそろ切り替えませんか」という話し合いは短く済みます。
ここまでが期間を決める前に押さえる判断の全体で、以降では取引先の数と基幹連携の有無という条件ごとに、並行運用の終わらせ方と確かめる順序をより細かく見ていきます。
取引先ごとの掛率や例外の積み上がり方は会社ごとに違い、並行運用に必要な期間も帳合の作り方で変わりますので、実際の受注データを前にして相談したほうが日程は早く形になります。
自社の取引先数と基幹連携の有無を伝えれば、どの順序で切り替えれば旧システムを閉じられるかを、日程の案として確かめられます。無料相談で要件を整理する
並行運用で二重に持つことになるもの
- 取引先ごとの掛率と単価の例外の設定
- 基幹システムとの受発注の連携
- 在庫の引当と欠品のときの扱い
- 受注の控えの保存と検索
- 取引先への案内と問い合わせの窓口
この並びに優劣の順序はありません。
二重に持つ対象のうちどれが重くのしかかるかは、取引先の数と基幹連携の有無で入れ替わります。
条件ごとの並行運用の進め方
| 取引先と基幹連携の状況 | 並行運用の終え方 | 先に数えるもの |
|---|---|---|
| 取引先が少数で基幹連携のない事業者 | 上位の取引先の受注が新しい画面へ移り切った週で終える | 取引先ごとの掛率と単価の例外の件数 |
| 基幹システムとの受発注連携を抱える事業者 | 月次の締めを新旧で通し、差額が出なくなるまで続ける | 連携している基幹システムの数と締めの日程 |

取引先が少数で基幹連携のない場合
取引先が数十社にとどまり、受注が電話とファクスと一部のメールで完結している場合、基幹システムとの連携の設計を待つ必要がありません。関門は連携ではなく、取引先へ「今日からこちらの画面でお願いします」と伝える段取りのほうへ移ります。相手の発注の習慣を変えてもらう話ですから、システムの設定より人への案内に時間がかかります。
期間の置き方も変わります。2か月——フリュー株式会社のBtoB向けECサイトの構築期間として記録された長さで、2016年の事例です2。連携の設計が薄い構成では、構築より先に取引先への案内が終わらないことすらあります。全社一斉の切り替え日を決めるのではなく、受注件数の多い社から順に切り替え日を個別に伝え、伝え終えた社から旧システムの窓口を社ごとに閉じてください。
難易度は高くなく、社内の工数は受注担当の兼務で収まる範囲です。山場は案内の文面づくりと、切り替え直後の問い合わせ対応に集まります。
| 取引先への案内の段階 | 旧システムの扱い | 確かめること |
|---|---|---|
| 上位の取引先へ切り替え日を通知 | 受注窓口はそのまま開けておく | 掛率と単価の例外が写せているか |
| 通知した社の発注が新しい画面で完了 | その社の受注だけ旧側で締める | 出荷指示と請求まで通ったか |
| 残る社の発注も新しい画面へ移る | 読み取り専用へ落とす | 過去の受注の控えを検索できるか |

連携の設計がない分だけ判断は早く進みますが、取引先への案内の順序を誤ると同じ注文が新旧の両方へ入りますので、切り替え日の並べ方だけは経験のある相手と詰めておくと落ち着きます。
取引先の一覧と受注件数を持ち込めば、どの社から切り替え日を伝えるべきかの順序を一緒に検討できます。無料相談で自社の条件を持ち込む
基幹システムと受発注を連携している場合
基幹システムと受発注を連携している場合、切り替えの単位は取引先ではなく、月次の締めになります。日々の受注件数と金額が一致していても、締めの処理で在庫の引当や請求の金額がずれると、経理の側で手作業の突合が発生します。「画面は問題なく使えています」という現場の報告だけでは、窓口を閉じる判断まで届きません。
準備の速さと、旧システムを止められる速さは別に考えます。3日——EC-Rider Primo で申込から利用開始までにかかる最短の日数です3。2026年時点の条件で、環境の用意そのものは週の半ばで終わる水準にあたります。それでも停止の判断は、月次の締めを新旧の両方で通し、差額の出た項目を一つずつ潰してからにしてください。一度も締めを通さずに窓口を閉じると、翌月の請求で戻ってきます。
難易度は上がり、情報システム部門と経理部門の双方から担当を出す必要があります。工数の山は締め処理の突合と、差額が出た項目の原因の切り分けに集まります。
| 月次の締めの回 | 新旧で突き合わせる項目 | 窓口を閉じてよい条件 |
|---|---|---|
| 初回の締め | 受注の件数と受注の金額 | 件数が一致している |
| 二回目の締め | 在庫の引当と欠品のときの扱い | 引当の差を説明できる |
| 三回目の締め | 請求金額と締め日の区分 | 差額が出ない |
月次の締めを新旧の両方で通す設計は、帳合の条件と基幹側の仕様の両方を知らなければ組めませんので、乗り換えの検討の初期から連携の実務に明るい相手を交えておくと手戻りが減ります。
連携している基幹システムの種類と締めの日程を伝えれば、何回の締めを並行運用で通す必要があるかを見積もれます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 判断する場面 | 数えるもの | 切り替えてよい基準 |
|---|---|---|
| 並行運用を始める | 旧システムに残る掛率と単価の例外の件数 | 例外を新しい側へ写し終えている |
| 並行運用を終える | 新しい画面だけで完結した受注の割合 | 旧システムへの受注が二週続けて発生しない |
| 基幹連携を切り替える | 月次の締めの突合の結果 | 請求金額に差額が出ない |
| 旧システムを停止する | 過去の受注の控えの検索 | 控えを新しい側か別の場所で引ける |
| 検証の場を用意する | 無料で試せる期間の有無 | 繁忙期の受注をそのまま通せる |
乗り換えの可否は機能の一覧では決まらず、自社の受注をそのまま流してみるまで分からない部分が残りますので、試せる環境を先に押さえておくのが現実的です。 無料で試せる期間のうちに繁忙期の受注を通しておけば、並行運用に必要な期間の見当が付きます。
よくある質問
並行運用は何か月続ければよいですか。
月数を先に決めない進め方をおすすめします。取引先を受注件数の多い順に並べ、新しい画面だけで発注が完了した社を週ごとに数え、旧システムへの受注が二週続けて発生しなくなった時点を目安にしてください。基幹連携がある場合は、月次の締めを何回通せたかも合わせて見ます。
旧システムはいつ解約できますか。
受注の窓口を閉じた日と、契約を解約する日は分けて考えます。過去の受注の控えを検索できる状態が必要な期間は業務ごとに異なりますので、読み取り専用のまま残す期間を先に決め、控えの出力先を確保してから解約の日を置いてください。
乗り換えを社内で通すとき、何を根拠に説明すればよいですか。
61%のユーザー企業がレガシーシステムを保有しているという公的な調査の値は、自社だけの事情ではないことを示す材料になります5。そのうえで、転記にかかっている人数と、受注の締め切りに間に合わなかった件数を自社で数え、費用の言葉へ置き換えて並べてください。
取引先が新しい画面を使ってくれない場合はどうしますか。
全社を一度に移す前提を外してください。発注の方法を変えにくい取引先には、従来のファクスや電話を受け皿として残し、社内の担当者が新しい画面へ代理で登録する形に切り替えます。受注のデータが新しい側へ一本化されていれば、並行運用そのものは終えられます。
並行運用の最中に新旧で内容が食い違ったら、どちらを正としますか。
開始する前に、どちらを正とするかを文書で決めておきます。出荷と請求の根拠を旧システムに置くのか、新システムに置くのか。片方へ寄せておかないと、差が出たその日に現場の判断が止まります。決めた内容は受注担当と出荷担当の双方へ配ってください。
トライアルの期間では、どこまで確かめれば十分ですか。
受注の入力だけでなく、掛率の反映、在庫の引当、出荷指示の出力、受注の控えの保存と検索まで通してください。繁忙期に近い件数を一度流し、画面の反応が落ちないかも見ておきます。ここで差の出た項目が、並行運用で最後まで残る項目になります。
- 1 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(フーヅフリッジ株式会社様)」(2017年) 経路
- 2 出典:株式会社イーシー・ライダー「EC-Rider B2B 導入事例(フリュー株式会社様)」(2016年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider Primo サービス紹介ページ・料金プラン条件」(2026年) 経路
- 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Riderお役立ちコラム『BtoB EC並行稼働と切り替え設計|期間と判断基準』」(2026年) 経路
- 5 出典:経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」(2025年) 経路
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