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卸価格業務の属人化|仕組み化の分かれ目

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 43.1%というBtoB-EC化率のもとでは、口頭で決めてきた卸価格は画面に出せない価格になります1
  • 5階層まで段を持たせれば、本部と支社と店舗で違う卸価格も一つの仕組みで出せます4
  • 58.3%の企業が業務の標準化を経営課題に挙げており、属人化は卸価格だけの問題ではありません3
  • 3,000社の販売加盟店と3,800品種を扱う規模では、卸価格は担当者の記憶ではなく、加盟店の区分と品目の分類で決まります65
  • 49.7%というコスト全体の価格転嫁率のもとでは、値上げの交渉ほど決め方の記録が要ります2

50代前半の日本人女性が名刺交換をしている場面
▽ 写真の出典元

BtoB取引拡大と卸価格個別設定の広がり

卸価格の属人化とは、卸価格を決めた根拠や経緯が記録として残らず、担当者の記憶や口頭の判断だけに頼っている状態です。卸価格の属人化は値付けの巧拙ではなく、「決め方が記録に残っていない」という業務標準化の遅れに根があります。得意先の組織階層に沿って卸価格を段で持たせ、例外の承認まで書き出せば、担当者が替わっても同じ価格を出せます。

始業直後の営業部。保留音が途切れないまま、ベテラン営業が綴じ込みの頁をめくります。手書きで書き足された掛率の脇に、「前回はここまで」と小さな印が並びます。付箋の色が三色に増えた頃から、その綴じ込みは本人以外に読めなくなりました。

取引の場は、もう紙だけではありません。43.1%が、2024年のBtoB-EC化率です1。二件に一件近くが電子の手続きを通る計算になります。514.4069兆円が、同じ年のBtoB-EC市場規模です1。画面に出るのは「誰かが登録した値」だけで、口頭の裁量が入り込む隙は狭くなります。

その電子の手続きの中でも、見積の出し直しと承認待ちで一日が終わる状態は、「忙しさ」ではなく、受注が一件ずつ後ろへずれる分の売上と人件費として帳簿に残ります。

卸価格交渉に残る属人化の実態

卸価格が担当者ごとに違うのは、値引きの度胸の差ではなく、決め方が記録に残っているかどうかの差です。得意先ごとの掛率や数量の刻み、季節の特売、前回の交渉で決めた端数は、一枚の表へ集まりません。手帳と伝票の控えに散ったまま、「前回いくらで出しましたか」の一言から確認が始まります。

外の数字も見ておきます。49.7%が、2024年の調査で示されたコスト全体の価格転嫁率です2。これは原材料費や労務費まで含めた転嫁の度合いであり、卸価格そのものの改定率ではありません。転嫁が半分ほどにとどまる場では、一件ごとの交渉が担当者の裁量へ寄りかかりやすくなります。「今回は据え置きで」と決めた経緯こそ、後から必要になります。

一件の見積依頼が価格として確定するまでに、いくつの手が動くでしょうか。過去の伝票を繰り、上長の承認を取り、受注入力へ回し、請求の段で同じ価格かを照合します。どこか一つで転記が食い違えば、請求書の作り直しから戻ります。「誰に聞けば早いか」が最短の道になっている間は、その人が休んだ日に受注の列が止まります。

価格改定のたびに交渉が一件ずつ立ち上がる

原材料費が動けば、卸価格も動きます。ところが改定の連絡は、担当者ごとの電話とメールで一件ずつ流れていきます。得意先が数十社なら回りますが、数百社になると、連絡した相手としていない相手の区別が台帳に残りません。適用開始を過ぎてから旧価格の注文が届き、差額の処理が経理へ回ります。「属人化」と呼ばれている状態の中身は、この一連の手戻りにありますね。

58.3%という、業務改革の分野で最も多く挙がった「業務の標準化」の課題を横目に、いまの決め方を続ければ、担当者が替わるたびに同じ説明と同じ手戻りの費用を払い直すことになります3

見積依頼から請求の照合までの五つの手順のうち、過去の伝票の確認と上長の承認が担当者に寄りかかっている流れを示す図。
一件の見積依頼が卸価格として確定し、請求へ届くまでの手順を示した図です。

卸価格を階層で仕組み化する視点

仕組み化の入口は、いまの卸価格を一覧へ書き出すところにあります。得意先の名、品目、掛率、適用開始の順に並べ、例外の特価には「なぜその価格か」を一行添えます。ここで書けない行が残るなら、その行こそ担当者の頭の中にだけある価格です。全部を一度に直そうとせず、取引額の大きい得意先から順に埋めていきます。

次に段の数を決めます。5階層までなら、得意先の組織階層に応じて卸価格を切り替えられる仕組みが、BtoB向けECの機能として2026年時点で提供されています4。本部と支社と店舗の三つで足りる会社もあれば、卸と二次卸まで挟む会社もあります。「どこまでを段で表し、どこからを例外として登録するか」の決めかたが、後の手間を左右します。

三つ目は、例外を誰がどこまで決めてよいかです。営業担当は基準価格から一定の幅まで、それを超えるなら営業所長、さらに下げるなら本部の承認と決めておきます。口頭で通してきた値引きを、承認の記録として残す形へ移すわけです。「特別に」と口にした瞬間から、その取引は例外として登録される流れにします。

最後に、改定の反映と履歴の保存を決めます。適用開始を持たせ、改定前の価格も消さずに残せば、「なぜこの価格か」を後から追えます。旧価格での注文が届いたときも、差額の根拠が記録から出てきます。ここまで決まれば、担当者が替わっても同じ価格を出せる状態へ近づきますね。

卸価格を一覧へ書き出し、段の数と承認の幅を決め、改定と履歴を残すまでの四段の手順を示す図。
卸価格を仕組みへ移すときに決める四つの事柄を、上から順に並べた図です。

属人化の根にある業務標準化という課題

どこから手を付けるかは、得意先の数と品目の数のどちらが先に増えるかで決まります。得意先が増える会社は、掛率の段と承認の幅を先に決めたほうが、受注が止まりません。品目が増える会社は、品目の分類ごとの基準価格を固めるほうが、改定の確認が軽くなります。「うちはどちらか」を一度数えてみてください。

先に挙げた業務の標準化を課題に掲げる企業の多さは、この順番の決めかたが各社で割れている状況を映しています3。自社の直近1年で、価格に関する問い合わせが何件、誰のところへ集まったかを数えてください。一人に半分以上が集まるなら、卸価格の表を作り替える前に、決め方を書き出す順番から始まります。

ここから先は、得意先の数と品目の数で分かれる決め方と、現場で出やすい問いへの答えを順に見ていきます。

卸価格の決め方を記録へ移す作業は、自社の得意先の数と例外の多さを並べたところから始まるため、同じ移行を何度も見ている相手と話すと手順が早く定まります。

いまの掛率の一覧をそのまま持ち込めば、どこまでを段で表せて、どこからを例外として登録するのかを切り分けられます。無料相談で要件を整理する

卸価格の属人化をほどく打ち手

  • 得意先の組織階層に合わせて卸価格の段を決める
  • 掛率と適用開始を一覧へ書き出す
  • 値引きの承認の幅と担当を決める
  • 例外の特価を品目と得意先の組で登録する
  • 改定の反映と改定前の価格の保存を決める

この並びに優劣の順序はありません。

同じ打ち手でも、得意先の数が多い会社と品目の数が多い会社では、先に手を付ける順番が入れ替わります。

Close-up of golden cogs and gears arranged on a black backgr
▽ 写真の出典元

規模で分かれる卸価格の決め方

取引の広がりかた 卸価格の決めかた 先に整える記録 値引きの承認
得意先が数千社に広がる販売網 加盟店の区分ごとの掛率 加盟店の区分と受注の窓口 営業所長までで登録
品目が数千点に及ぶ商品構成 品目の分類ごとの基準価格 分類と品目の対応表 品目と得意先の組で登録

得意先が数千社に広がる販売網での卸価格

日東電工CSシステム株式会社は、全国の販売加盟店を通じて製品を届ける会社です6。加盟店がこれだけ広がると、卸価格は一社ごとの交渉ではなく、加盟店の区分に結び付いた掛率で決まります。「担当がいないと価格が出せない」状態は、ここでは受注そのものが止まります。

規模を数字で見ます。3,000社が、2020年時点の同社の全国の販売加盟店数です6。一社ずつ電話で価格を伝える形なら、一人の担当が一日に回れるのは多くて数十社です。ここでは段を細かく刻むより、加盟店の区分と受注の窓口をそろえるほうが先に効きます。「うちの区分はどれか」を加盟店の側が自分で確かめられる状態を目指します。

決める事柄は多くありません。加盟店の区分、例外の値引きの承認、改定の連絡、そして残す記録です。「区分さえ決まれば価格は出る」形にできれば、担当者の記憶に頼る場面は減ります。作業の難しさは中くらいで、工数の多くは加盟店の区分をそろえ直す最初の棚卸しに集まります。

決める事柄 加盟店の区分での扱い
卸価格の基準 加盟店の区分ごとの掛率
例外の値引き 営業所長までの承認で登録
改定の連絡 受注画面の表示価格で一斉に反映
残す記録 適用開始と改定前の価格
Close-up view of a complex industrial gear mechanism in blac
▽ 写真の出典元

加盟店や販売店の区分が増えるほど、価格の連絡と受注の窓口を一度に整える必要が出るため、同じ規模の販売網を扱った経験を持つ相手のほうが話が具体になります。

自社の加盟店の区分を卸価格へどう結び直すか、受注の画面に出す価格の形まで含めて見通せます。無料相談で自社の条件を持ち込む

品目が数千点に及ぶ商品構成での卸価格

品目が数千点に及ぶと、卸価格は得意先ごとではなく、品目の分類ごとに決まります。同じ得意先でも、定番品と季節品で掛率が違う取引は珍しくありません。「全部同じ掛率にできませんか」という問いに現場が首を振る場面は、この分類の違いから生まれます。

品目の数を見ます。3,800品種が、2018年時点で同社の法人向け販売サイトが扱う製品の品種数です5。掛率を一つ動かすと、確認すべき対象は分類のまるごとへ広がります。段を増やすより、まず品目の分類ごとの基準価格を固めるほうが、改定のたびの確認は軽くなります。

行動としては、まず分類と品目の対応表を作り、分類ごとの基準価格を置きます。その上に得意先ごとの段を重ね、どうしても合わない取引だけを例外の特価として登録します。改定は分類の単位で反映し、適用開始と改定前の価格を保存します。「この品目だけ特別」を数え上げられる状態が、仕組みへ移せたかどうかの目安です。作業の難しさはやや高く、工数の多くは品目の分類を決め直す初回の整理と、例外の特価の洗い出しに集まります。

決める事柄 品目の分類での扱い
卸価格の基準 分類ごとの基準価格
得意先ごとの差 本部と支社で段を分ける
例外の特価 品目と得意先の組でのみ登録
改定の反映 分類の単位で一括し適用開始を保存
品目の分類を起点に分類ごとの基準価格と得意先ごとの段を重ね、例外の特価を登録して改定の反映へ進む順序を示す図。
品目が数千点に及ぶ取引で、卸価格を組み立てる順序を示した図です。

品目の分類と掛率の組み合わせが増えると、机の上の検討だけでは改定時に確認すべき範囲が読み切れず、数千点を実際に運んだ運用を知る相手の助けが効きます。

分類ごとの基準価格と例外の特価をどこで分けるか、改定の反映にかかる手間まで見積もれます。無料相談で自社の条件を持ち込む

要点の整理

見分ける手がかり 先に決めること
得意先が数千社に広がる 加盟店の区分ごとの掛率と承認の担当
品目が数千点に及ぶ 分類ごとの基準価格と例外の特価の置き場所
改定が月に何度も走る 適用開始と改定前の価格の保存
担当者しか価格を出せない 決め方の記録と引き継ぎの手順

属人化のほどき方は、価格の表を作り替える前に、誰がどこまで決めてよいかを言葉にする作業から始まるため、外の目を一度入れると抜けが見つかります。 自社の卸価格の決め方が仕組みへ移せる状態にあるか、最初の一歩をどこへ置くかを持ち帰れます。

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よくある質問

Excelの価格表のままでも卸価格の属人化は解けますか

一覧として保存され、掛率と適用開始と承認者が全行に入っているなら、出発点としては十分です。つまずくのは、同じファイルが担当者ごとに複製され、「最新はどれか」が分からなくなる段階です。更新する人を一人に決め、受注の画面が参照する場所を一か所にそろえるところから進めてください。

得意先ごとの卸価格が他社へ見えないようにできますか

ログインした得意先にだけ、その得意先の価格を表示する形が基本になります。紙のカタログでは同じ定価を配り、値引きは見積書で伝えるやり方でしたが、画面では最初から相手ごとの価格を出せます。「別の得意先の掛率が見えてしまった」という事故は、表示の決め方で防げます。

段はいくつ用意すればよいですか

本部と支社と店舗だけで足りる会社もあれば、卸と二次卸を挟む会社もあります。先に挙げた上限まで使い切る必要はなく、いま実際に価格が分かれている単位を数えるところから決めてください。「将来のために」と段を増やすと、空の段だけが立派に並びます。

価格改定の連絡はどう残せばよいですか

連絡した相手と連絡していない相手を台帳で分けるより、改定後の価格を画面へ反映し、適用開始を持たせるほうが確実です。改定前の価格も消さずに残せば、旧価格での注文が届いたときに、差額の根拠をその場で示せます。「言った言わない」の確認に時間を使わずに済みます。

ベテランの経験は不要になりますか

不要にはなりません。仕組みへ移せるのは、掛率の刻みや例外の条件といった、書き出せる部分です。書き出した後に残るのは、得意先の事情を読みながら次の一手を決める仕事で、そちらが本来の交渉です。「勘を捨てる」のではなく、「勘を使う場所を選ぶ」作業として進めてください。

価格転嫁が進まない中で卸価格の交渉はどう進めますか

値上げの根拠を、原材料費や物流費の推移として示せる形にしておくことが先です。担当者ごとに違う説明をすると、得意先の購買部門で突き合わされたときに話がそろいません。「なぜこの時期に、この幅か」を社内で一つに決め、記録として残してから交渉の席に着いてください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. 1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
  2. 2 出典:中小企業庁「価格交渉促進月間(2024年9月)フォローアップ調査」(2024年) 経路
  3. 3 出典:株式会社帝国データバンク「企業の経営課題に関するアンケート(2026年)」(2026年) 経路
  4. 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Riderお役立ちコラム「BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える」」(2026年) 経路
  5. 5 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(2018年) 経路
  6. 6 出典:株式会社フライトソリューションズ「導入事例 日東電工CSシステム株式会社様」(2020年) 経路

画像の出典元

  1. 50代前半の日本人女性が名刺交換をしている場面/画像:生成AI(自社)
  2. Close-up of golden cogs and gears arranged on a black backgr/Photo by Miguel Á. Padriñán on Pexels
  3. Close-up view of a complex industrial gear mechanism in blac/Photo by Pixabay on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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