◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- BtoB通販サイトで授受する見積書・注文書・請求書は電子取引データにあたり、受け取る側だけでなく発行した控えも対象になる。
- 求められているのは真実性の確保と可視性の確保の二本で、片方だけを整えても要件を満たしたことにはならない。
- 検索の要件は、取引年月日・取引金額・取引先の指定、日付や金額の範囲指定、二つ以上の項目の組み合わせという三つの観点で確かめる。
- 点検は帳票の洗い出しから始め、保存場所、真実性の手当て、検索の可否と進んで、不足箇所を機能と規程に切り分けるところで終える。
- システムの入れ替えを検討するのは切り分けを終えた後であり、不足が真実性だけなら事務処理規程を定めて運用で補える。
目次

電子取引データ保存とは何を指すか
メールで届いた注文書や請求書のPDFをフォルダに置いているだけでは、電子取引データ保存の要件を満たしていると言い切れません。判断の分かれ目は二つです。一つは、取引年月日・取引金額・取引先といった条件でそのデータを探し出せる状態になっているか。もう一つは、受け取った後に書き換えられていないと説明できる手当てがあるかです。この二つをBtoB通販サイトや会計システムの機能で担えるなら設定と運用の見直しで片が付き、担えないなら社内規程と保存先の決めごとで補うことになります。システムを入れ直すかどうかは、この切り分けを済ませてから初めて検討する順序であって、最初に決める話ではありません。
真実性の確保と可視性の確保という二本の柱
電子取引データ保存は、取引情報を電子データでやり取りした場合に、そのデータを電子のまま残しておくことを求める決まりです。求められている中身は大きく二本の柱に分かれます。一本目が真実性の確保で、受け取ったデータが途中で差し替えられたり書き換えられたりしていないと示せる状態を指します。二本目が可視性の確保で、必要なときに画面や書面で内容を確認でき、かつ目的のデータを探し出せる状態を指します。
この二本は別々の手当てが要ります。真実性のほうはタイムスタンプの付与や訂正削除の記録が残るシステムでの保存、あるいは訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用することで満たします。可視性のほうは、ディスプレイとプリンタを備えて速やかに出力できることと、検索機能を確保することで満たします。片方だけ整えても要件を満たしたことにはなりません。
紙に出力して保存する方法では代えられない
以前は電子で受け取ったデータを紙に印刷して保存する扱いが認められていましたが、電子取引にあたるものはデータのまま残すことが原則になりました。印刷して紙のファイルに綴じること自体は社内の確認用として差し支えありませんが、それをもって保存の義務を果たしたことにはなりません。
経理の現場でつまずきやすいのはこの点です。届いた請求書を印刷して回覧し、原本のPDFはメールボックスに残したまま、という運用が残っていると、探し出せる状態が作られないまま時間が過ぎます。まず自社がどの帳票を電子で授受しているのかを洗い出すところが出発点になります。
BtoB通販サイトの受発注データは対象になるか
サイト経由でやり取りする見積書・注文書・請求書の扱い
結論から言えば、BtoB通販サイトを通じて授受する見積書・注文書・請求書は電子取引データにあたります。電子取引は、取引情報の授受を電子的な方法で行うことを指しており、受け渡しの経路がメールであってもサイト上のダウンロードであっても、取引情報がデータで行き来している以上は同じ扱いです。
得意先がサイトに入って注文を確定し、その控えがPDFで発行される。あるいは自社が発行した請求書を得意先がサイトからダウンロードする。いずれの向きでも、授受した側と発行した側の双方にデータを残す必要が生じます。自社が発行した請求書の控えも対象に含まれる点は見落とされがちです。
受け渡しの経路が違っても要件は変わらない
メール添付で届くもの、サイトの管理画面からダウンロードするもの、CSVで基幹システムに取り込むもの。経路が複数あると、それぞれ別の決まりが当てはまるように感じますが、求められる要件そのものは共通です。違うのは、どこに保存され、誰がその保存先を管理しているかという運用の側だけです。
経路が分かれているほど、後から探すときの手間が増えます。注文書はサイト、請求書はメール、控えは会計システムというように保存先が散らばっていると、取引先ごとにデータをまとめて提示する場面で行き詰まります。次に見るべきは、いま自社の手元にあるデータがその求めに応えられる形で残っているかどうかです。
今の保存方法で足りているか
点検は洗い出しから始めて不足箇所の切り分けで終える
点検の順序は決まっています。まず自社が電子で授受している帳票を種類ごとに洗い出し、次にそれぞれの保存場所を書き出します。そのうえで、保存されたデータが書き換えられていないと示せるか、取引年月日・取引金額・取引先で目的のデータにたどり着けるかを確かめます。最後に、満たせていない箇所がシステムの機能で埋まるものか、社内の決めごとで埋まるものかを切り分けます。
メールボックスにデータが残っているだけの状態は、多くの場合ここで引っかかります。件名や本文の文言で検索できても、取引金額での絞り込みや、日付の範囲と取引先を組み合わせた絞り込みには届かないためです。何が足りないのかを具体的な条件のかたちで言えるようになれば、対応の方向は自ずと定まります。
ここまでで、電子取引データ保存が求める中身と、BtoB通販サイトの受発注データがその対象に含まれること、そして自社の保存状態を点検する順序が揃いました。残るのは、検索という要件が具体的に何を求めているのかを確かめる作業です。
点検の順序までは自社で進められても、いま使っているサイトや会計システムがどの要件をどこまで担えているかは、機能の作りを知る側に確かめたほうが早く片が付きます。
授受している帳票の種類と現在の保存先を挙げたうえで、検索条件の設定や訂正削除の履歴がシステム側で担えるのか、規程で補う範囲はどこまでかを一緒に切り分けられます。無料相談で要件を整理する
保存に必要な要件は何か
電子取引データの検索要件を、単一の項目を指定する形から範囲の指定、複数項目の組み合わせへと、条件の作り方が広がる順に並べた。

- 取引年月日・取引金額・取引先を検索条件として設定できること1。帳票の中に記載されていても、システム上で条件として指定できなければ要件を満たしません。ファイル名にこれらの項目を規則的に入れて管理する方法も、運用として続けられる限りは選択肢になります。
- 日付や金額の範囲を指定して検索できること1。一件の日付をぴたりと指定する検索だけでは足りず、ある期間、ある金額帯という幅を持った指定に応えられる必要があります。フォルダを月ごとに切っているだけでは、金額の範囲指定に応えられません。
- 二つ以上の記録項目を組み合わせて検索できること1。特定の取引先の、特定の期間の取引だけを取り出す、といった絞り込みができる状態を指します。三つの観点のうちここが最も抜けやすく、表計算ソフトの一覧表で管理している場合も、この組み合わせに耐えるかを確かめておく必要があります。
この三つの観点を自社の保存方法に当てて足りない箇所が見えたら、それをどちらの手段で埋めるかを決める段に進みます。
足りない場合どう対応すればよいか
| 対応の型 | 要件を担う場所 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| システムの機能で補う | BtoB通販サイトや会計システム | 帳票の量が多く、保存先を一本化できる |
| 社内規程で補う | 経理の運用と社内文書 | 帳票の量が限られ、担当者の間で手順を守れる |
サイトや会計システムの機能で検索と改ざん防止を担う
確かめるのは保存先の一本化と検索条件の設定可否
システム側で補う型は、授受したデータをそのまま保存先に取り込み、検索条件の設定と訂正削除の記録をシステムに任せる考え方です。BtoB通販サイトが受注データを保持し、そこから会計システムへ連携できる作りになっていれば、経理担当者が手作業でファイル名を整える手間は要らなくなります。
確かめる点は絞られます。取引年月日・取引金額・取引先を条件として指定できるか、範囲の指定ができるか、二つ以上の項目を組み合わせられるか。この三点に加えて、保存したデータの訂正や削除の履歴が残るかを見ます。いずれかが欠ける場合は、その欠けた部分だけを規程で補う組み合わせも取れます。
取り込みの経路を決めておくと後から探しやすい
データの取り込み経路が定まっていないと、同じ帳票が複数の場所に残り、どれが保存対象なのか分からなくなります。サイトから会計システムへデータを渡す経路を一本に決め、そこを通ったものを保存の原本とする、という取り決めを先にしておくと、点検も引き継ぎも楽になります。
| 確かめる項目 | 満たしている状態 |
|---|---|
| 検索条件の設定 | 取引年月日・取引金額・取引先を指定できる |
| 範囲の指定 | 日付と金額を幅で指定できる |
| 項目の組み合わせ | 二つ以上の項目で絞り込める |
| 訂正削除の記録 | 誰がいつ変更したか履歴が残る |
事務処理規程を定めて運用で担う
訂正削除の防止に関する規程を定めて備え付ける
タイムスタンプの付与や訂正削除の履歴が残る仕組みがない場合、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて、それに沿って運用する方法で真実性の確保を満たせます。規程には、データを訂正または削除する場合の手続き、承認する者、記録の残し方を書き込みます。定めただけで運用が伴っていないと意味を持たないため、誰が何をするかまで落とし込んでおきます。
可視性のほうは、保存先のフォルダ構成とファイル名の付け方を規程に書き込む形で担います。ファイル名に取引年月日・取引金額・取引先を規則的に入れておけば検索条件として使えますが、件数が増えるほど付け間違いの影響が大きくなります。量が増えてきた時点でシステム側へ移す判断ができるよう、切り替えの目安も決めておくと動きやすくなります。
| 規程に書く事柄 | 内容 |
|---|---|
| 適用の範囲 | 対象となる帳票と授受の経路 |
| 訂正削除の手続き | 申請から承認までの流れと記録の残し方 |
| 保存の方法 | 保存先とファイル名の付け方 |
| 担当と責任 | 運用する者と管理する者 |

要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 対象の範囲 | サイト経由で授受する見積書・注文書・請求書は受発の両方向とも対象 |
| 真実性の確保 | 訂正削除の履歴が残る保存、または事務処理規程による運用 |
| 可視性の確保 | 画面と書面での速やかな出力と、検索機能の確保 |
| 検索の要件 | 取引年月日・取引金額・取引先の指定、範囲の指定、項目の組み合わせ |
| 対応の切り分け | 不足箇所をシステムの機能で埋めるか、社内規程で埋めるか |
対応の型が決まった後も、保存先の一本化やデータの取り込み経路をどう組むかで、日々の手間と後から探すときの負担が変わってきます。 現在の受発注の流れを示せば、保存の原本をどこに置き、どの経路を通すのが自社の件数に見合うのかを、機能の可否と合わせて確かめられます。
よくある質問
メールで届いた請求書のPDFを印刷して紙で綴じています。これで保存したことになりますか。
なりません。電子で授受したものはデータのまま残すことが原則です。印刷したものを社内の確認用に使うことは差し支えありませんが、それとは別に元のPDFを検索できる状態で保存しておく必要があります。
自社が発行した請求書の控えも対象になりますか。
対象になります。電子取引は受け取る側だけの話ではなく、発行した側も授受した取引情報を残す必要があります。BtoB通販サイトから得意先へ発行した請求書は、発行の控えを検索できる状態で保存しておきます。
ファイル名に取引年月日と取引先を入れて管理していますが足りますか。
取引金額が入っていない場合、金額を条件とした検索と金額の範囲指定に応えられません。三つの項目を揃えたうえで、範囲の指定と項目の組み合わせにも耐えるかを確かめてください。
システムを入れ替えないと対応できませんか。
必ずしもそうではありません。不足しているのが真実性の手当てだけであれば事務処理規程で補えますし、検索の面も保存先とファイル名の決めごとで満たせる場合があります。帳票の量と担当者の人数を見て、運用で続けられるかどうかで判断してください。
- 1 出典:株式会社イーシー・ライダー「通販受注データのCSV連携方法と電帳法対応」(2026年) 経路
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