◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- BtoB通販サイトでの受発注は、注文書や請求書をデータでやり取りしている時点で電子取引に当たり、データのまま保存する必要がある
- 印刷した紙は保存の代わりにならない一方、郵送やFAXで受け取った紙の書類はこれまで通り紙で保存できる
- 真実性の確保は訂正削除の履歴が残る仕組みか事務処理規程で、可視性の確保は画面・書面への出力と検索機能で満たす
- 検索は取引年月日・取引金額・取引先で探せ、2項目以上の組み合わせでも探せることが条件で、基準期間の売上高が5,000万円以下なら検索機能の確保が不要となる取扱いがある
- 不足はシステム機能型・保存先集約型・規程運用型の三つの型のいずれかで補え、システムの入れ替えを伴わずに整えられる場合もある
目次

BtoB受発注のどこからが電子取引?
BtoB通販サイトで注文書や請求書、領収書をデータのままやり取りしているなら、そのやり取りは電子取引に当たり、電子帳簿保存法のデータ保存の対象になります。印刷した紙を保存する方法は認められず、受け取ったデータ・送ったデータをそのまま残したうえで、改ざんを防ぐ真実性の確保と、必要なときに取り出せる可視性の確保を満たす必要があります。最初に確かめるのは、自社のどの書類がデータでやり取りされているかと、そのデータが今どこに残っているかの二点です。ECシステムの標準機能で満たせる部分と、保存先や社内規程で補う部分を切り分ければ、システムの入れ替えを伴わずに整えられることも少なくありません。
線引きは「データでやり取りしたか」
電子取引は、注文書・請求書・領収書・見積書といった取引情報を、紙を介さずデータでやり取りすることを指します。BtoB通販サイトでの受発注はまさにこれに当たり、サイト上で発行した注文請書や、管理画面からダウンロードする請求データも含まれます。メールに添付したPDFや、EDI、クラウドサービス上での受け渡しも同じ扱いです。
判断の軸は取引の相手や金額ではなく、やり取りの手段です。相手が同じ取引先でも、郵送で届いた請求書は紙の書類、メールで届いた請求書は電子取引と、経路ごとに分かれます。
自社の対象書類を洗い出す
まずは経路ごとに書類を並べます。BtoB ECサイト経由の注文と請求、取引先とのメール、EDIやCSVでの連携、販売管理と会計のあいだの受け渡しといった具合に、送っているもの・受け取っているものを両方向で書き出すと、対象の全体が見えます。
洗い出しが済むと、次に気になるのは「これまで通り印刷して保存してはいけないのか」という点です。
紙に印刷して保存するのはもうダメ?
印刷した紙は保存の代わりにならない
電子取引でやり取りしたデータは、データのまま保存することが求められます。印刷して紙のファイルに綴じること自体は社内の確認用として差し支えありませんが、それをもって保存義務を果たしたことにはなりません。元のデータを消してしまうと、保存すべきものが残っていない状態になります。
注意が要るのは、ECサイトの管理画面で「いつでも見られる」状態を保存と考えてしまう場合です。サイトの解約やデータの保持期間の満了で見られなくなるなら、保存期間を通じて残せているとは言えません。
紙で受け取った書類の扱いは変わらない
郵送やFAXで受け取った紙の書類は、これまで通り紙のまま保存できます。スキャナ保存の要件を満たしてデータ化する道もありますが、こちらは任意の選択です。義務として切り替えが必要なのは、データでやり取りした分だけだと整理できます。
この切り分けができたら、データ側に求められる要件の中身を確かめます。
データ保存に必要な要件は何?
真実性の確保:改ざんを防ぐ手立て
真実性の確保は、タイムスタンプを用いる方法、訂正や削除の履歴が残る(または訂正削除ができない)システムで授受と保存を行う方法、訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付けて運用する方法のいずれかで満たします。システム側で満たせない場合でも、規程を整えて運用する道が残されています。
可視性の確保:見られる・探せる状態にする
可視性の確保は、保存場所にディスプレイとプリンタ、操作説明書を備え、画面と書面にすぐ出力できるようにすることが土台です。あわせて検索機能が求められ、取引年月日・取引金額・取引先で探せること、日付や金額は範囲を指定して探せること、2項目以上の組み合わせで探せることが条件になります1。
検索機能の確保が不要になる場合
前々年、法人であれば前々事業年度の売上高が5,000万円以下である場合には、検索機能の確保が不要となる取扱いがあります1。自社が当てはまるかどうか、また当てはまる場合に何を備えておけばよいかは状況で変わるため、顧問税理士や所轄の税務署に確認してください。
要件が分かったら、今のECシステムと受発注の流れがどこまで満たしているかを突き合わせます。
今のECシステムで要件を満たせているか
データがどこに残っているかを確かめる
突き合わせの出発点は、経路ごとの保存先です。ECシステムの中にだけある、担当者のメールボックスにある、共有フォルダにファイルとして置かれている、基幹システムに取り込まれている——この四つの状態が混在している会社は珍しくありません。
保存先が分かれていても、それぞれで要件を満たしていれば問題はありません。困るのは、どこにあるか誰も把握していないデータが残る場合です。
CSVで書き出して使うときの注意
受注データをCSVで書き出し、基幹や会計に取り込む運用では、書き出したファイルが編集できる状態のまま共有フォルダに置かれがちです1。この場合、保存の対象として扱うのは元の受発注データなのか書き出したファイルなのかを決め、扱う側で訂正削除の記録が残るようにしておく必要があります。
満たせていない点が特定できたら、その部分をどう補うかを型ごとに見ていきます。
対象の洗い出し、要件との突き合わせ、不足の特定まで進めば、残る判断は不足分をどの型で補うかだけです。

電子取引に当たるかどうかの線引きと、今のシステムが要件のどこまでを満たしているかは、受発注の経路とデータの保存先を並べて見ないと判断が付きません。自社だけで突き合わせると、メールやCSVで動いている経路が抜け落ちがちです。
現在の受発注の経路と保存先を一覧にして持ち込めば、どの経路が対象になり、どの要件がシステムの機能で満たせ、どこを規程で補うことになるのかを、相談の場で切り分けられます。無料相談で要件を整理する
電子取引データの保存で確かめる項目
自社の保存状況を点検するとき、対象の洗い出しから保存の中身、取り出しやすさへと確認が進む順で並べた。
- 注文書・請求書などをデータでやり取りしている経路をすべて挙げているか
- そのデータが元の形のまま残っていて、印刷だけで済ませていないか
- 訂正削除の履歴が残る仕組みか事務処理規程のどちらで真実性を確保しているか
- 取引年月日・取引金額・取引先で探せ、2項目以上の組み合わせでも探せるか
- 画面と書面にすぐ出力できる機器と操作説明書が保存場所にそろっているか
基準期間の売上高が5,000万円以下で検索機能の確保が不要となる場合は、四つ目の項目を索引や一覧の整備に読み替えます。
足りない要件を補う三つの型
| 型 | 向いている場面 | 確かめること |
|---|---|---|
| システム機能型 | BtoB ECシステムで受発注から請求まで完結している | 訂正削除の履歴と検索の条件が標準機能にあるか |
| 保存先集約型 | ECサイト・メール・EDIと経路が分かれている | 経路ごとのデータを一か所に集めて探せるか |
| 規程運用型 | システムの改修や追加の導入がすぐには難しい | 規程を作り、その通りに運用し続けられるか |
ECシステムの標準機能で満たす
標準機能と要件を一つずつ突き合わせる
受発注から請求までをBtoB ECシステムの中で完結させているなら、要件の多くはシステム側の機能で満たせます。提案書に「電子帳簿保存法対応」とある場合も、何をもって対応としているかは製品ごとに違うため、要件ごとに確かめるのが確実です。
確かめる観点は次の通りです。ここで満たせない項目が残ったら、他の型で補います。
| 確かめる点 | 満たしている状態 |
|---|---|
| 訂正削除の履歴 | データの修正や取消しが記録として残る |
| 検索の条件 | 取引年月日・取引金額・取引先で探せる |
| 組み合わせ検索 | 2項目以上を組み合わせて探せる |
| 出力 | 画面と書面にすぐ出せる |
保存先を一か所に集めて探せるようにする
経路が分かれているときの整え方
ECサイト、メール、EDIと経路が分かれている場合、それぞれで要件を満たすより、保存先を一か所に集めたほうが点検も引き継ぎも楽になります。集める先は文書管理のサービスでも、規則を決めた共有フォルダでもかまいません。
フォルダで運用する場合は、ファイル名に取引年月日・取引金額・取引先を入れる、または索引の一覧を別に作る方法で検索の条件を満たします。経路ごとに何を集めるかを決めておきます。
| 経路 | 集めるデータ |
|---|---|
| BtoB ECサイト | 注文データ・注文請書・請求データ |
| メール | 添付された見積書・注文書・請求書 |
| EDI・CSV連携 | 送受信したファイルそのもの |

事務処理規程を整えて運用で満たす
規程で真実性を確保する
訂正削除の履歴が残る仕組みをすぐに用意できない場合は、訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付けて運用する方法があります。改修や追加の導入を待たずに始められるのが利点です。
ただし規程は作って終わりではなく、その通りに運用されていることが前提になります。整備の段取りと、規程に書く事柄を押さえておきます。
整備から定着までの段取り
規程に書く事柄は多くありません。対象の範囲、訂正削除の扱い、責任者と記録の残し方を決めておけば、運用の拠り所になります。
| 規程に書く事柄 | 中身の例 |
|---|---|
| 対象 | 電子取引でやり取りした書類の範囲 |
| 訂正削除の扱い | 原則禁止と、やむを得ない場合の手順 |
| 責任者と記録 | 承認する人と、記録の残し方 |
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 対象 | 注文書・請求書などをデータでやり取りしていれば電子取引に当たる |
| 保存の形 | 印刷した紙ではなくデータのまま残す |
| 真実性 | 訂正削除の履歴が残る仕組み、または事務処理規程で満たす |
| 可視性 | 画面と書面への出力に加え、2項目以上の組み合わせ検索ができること |
| 緩和 | 基準期間の売上高が5,000万円以下なら検索機能の確保は不要となる取扱いがある |
| 補い方 | システム機能型・保存先集約型・規程運用型のいずれかで不足を埋める |
不足を補う型が決まっても、ECシステムの設定で対応するのか、保存先を集約するのか、規程で運用するのかによって、手を入れる範囲と社内で決めることが変わります。 三つの型のどれを選ぶと自社の受発注の流れに無理がないか、CSV連携で書き出したデータの扱いをどう定めるかまで含めて、進め方を具体化できます。
よくある質問
メールに添付されて届いた請求書のPDFも対象ですか。
対象です。取引情報をデータで受け取っている以上、ECサイト経由かメール経由かで扱いは変わりません。印刷して綴じるだけでなく、PDFそのものを保存し、探せる状態にしておく必要があります。
ECサイトの管理画面でいつでも見られれば、保存したことになりますか。
保存期間を通じて見られ、画面と書面に出力でき、検索の条件も満たせるなら、サイト上での保持で要件を満たせます。逆に、サービスの解約やデータの保持期間の満了で見られなくなる可能性があるなら、別の保存先に残す必要があります。
検索の要件を満たすには専用のシステムが必要ですか。
必ずしも必要ありません。ファイル名に取引年月日・取引金額・取引先を入れる、または索引の一覧を別に作る方法でも満たせます。2項目以上を組み合わせて探せることが条件になる点に注意してください1。
対応はいつまでに終えればよいですか。
電子取引データのデータ保存はすでに求められており、猶予の取扱いも相当の理由があることが前提です。自社が猶予の対象になるかどうかは状況で判断が分かれるため、所轄の税務署や顧問税理士に確認したうえで、不足分の整備を進めてください。
- 1 出典:株式会社イーシー・ライダー「通販受注データのCSV連携方法と電帳法対応」(2026) 経路
画像の出典元
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