◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 商流電子化の費用対効果は、現状の受発注業務時間、公的実証が示す削減率、補助金を差し引いた実質の自己負担という三つを並べれば、見積書が届いた段階でも概算できる。
- 公的な実証事業では受発注業務時間が平均51.4%・53.3%削減されており、自社では半減を上限の目安として、それより控えめな幅で試算する。
- デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠は電子取引類型が2/3以内、インボイス対応類型は補助額50万円以下の部分が3/4以内で、いずれも上限であり対象要件は公募要領で確認する。
- 期待以上の成果があがった企業は2.0%にとどまるため、効果を強気に置かず、期待どおりに収まる前提で回収の見通しを組む。
- 注文件数の多い取引先から段階的に切り替え、導入前と同じ長さの期間で1件あたり処理時間や訂正件数を比べて効果を検証する。
目次

商流電子化の費用が「割に合うか」不安になる理由
商流電子化(見積・注文・納品・請求といった取引の流れを、紙や電話・FAXからデータのやり取りに置き換えること)の費用対効果は、現状の受発注業務にかかっている時間、公的な実証事業が示す業務時間削減率の目安、補助金を差し引いた実質の自己負担額という三つを並べれば、ベンダーの見積書が届いた段階でも概算できます。
国の実証事業では参加した中小企業の受発注業務時間が平均51.4%削減され3、2022年の報告書でも受発注デジタル化モデル事業で平均53.3%の削減が示されています2。
費用を軽くする制度としてはデジタル化・AI導入補助金のインボイス枠があり、電子取引類型における中小企業・小規模事業者等の補助率上限は2026年度で2/3以内4、インボイス対応類型では補助額50万円以下の部分が中小企業について3/4以内と定められています5。
この記事が当てはまるのは、受発注が電話・FAX・紙で回っていて、担当者が注文内容の転記入力や確認の電話に時間を割いている中小企業です。
なお初期費用・月額費用の相場は今回一次資料で確認できていないため具体的な金額は示さず、自社に届いた見積書の数字を使って試算する手順を説明します。
費用負担を課題と感じる中小企業の割合
東京商工会議所の調査では、電子化・デジタル化に取り組む中小企業のうち、課題として「費用の負担」を挙げた企業の割合は31.9%でした1(2024年時点)。
三割を超える企業が同じところで足を止めているということであり、見積書を見て社長から「これで元が取れるのか」と問われる状況は、特定の会社だけに起きている話ではありません。
この数字が示しているのは、金額そのものが高すぎるかどうか以前に、費用に見合う戻りがあるかを社内で示せていない状態が広く共有されている、ということです。
なぜ判断しにくいのかというと、費用と効果で情報の形が揃っていないためです。
費用は見積書に確定した金額として並び、初期費用も月額費用も桁まではっきりしています。
一方で効果は「事務が楽になる」「転記ミスが減る」といった言葉で語られ、社内の誰も金額に直していません。
比較の土俵が揃っていないので、確定している費用の側だけが重く見え、判断が止まります。
そこで最初にやることは、効果の側を時間という数えられる単位に置き換えることです。
受発注が電話・FAX・紙で回っている会社なら、注文書の受信と内容確認、基幹システムへの転記入力、納期回答、取引先への確認電話、納品伝票と請求書の照合といった作業が対象になります。
これらに誰が何時間かけているかを、直近のひと月分でよいので実際に記録します。
受発注事務と経理を兼務している場合は、どこまでが受発注に伴う作業かの線引きを先に決めておくと、後から社長に説明するときに数字が揺れません。
電子受発注の普及率と国の目標
中小企業庁の報告書では、中小企業における電子受発注の普及率を2023年までに50%とすることが目標として掲げられていました2。
国が数値目標を置いていたという事実は、企業間取引の電子化が個々の会社の好みで選ぶ話ではなく、政策として後押しされてきた流れであることを示しています。
取引先から「今後は専用システムでの受発注に切り替えたい」と通知が来るのも、この流れの延長線上にあります。
同じ報告書は、業界EDIを有する業界でも中小企業の利用率は大企業に比べ25%程度低い水準にとどまると指摘しています2(2021年度)。
EDIとは、企業間で受発注などのデータを決まった形式でやり取りする仕組みのことです。
ここで起きているのは非対称な状態で、取引先である大企業側は先に電子化が進み、自社が紙やFAXで受け続けると、どこかで誰かが人手による入力を担い続けることになります。
その負担が自社側に寄せられているのか、取引先側に残っているのかは、今回の切り替え要請がどちらから来たかで判断できます。
この節の結論は、見送るという選択にも費用がかかるということです。
取引先の運用が電子に切り替われば、自社だけ紙の処理が残り、取引先の画面を見ながら自社の紙に書き写すといった二重運用が発生します。
二重運用は導入費用のように見積書に載らないぶん見落とされますが、担当者の時間としては確実に出ていきます。
では効果の側はどれだけ見込めるのか、次は公的な実証事業が実際に示した削減率を見ます。
公的な実証事業でみる業務時間削減の目安
中小企業共通EDI実証事業の削減率
中小企業共通EDIの実証事業では、参加した中小企業の受発注業務時間が平均51.4%削減されたと報告されています3(2018年)。
中小企業共通EDIとは、業種や企業規模を越えて受発注データをやり取りできるよう、共通の仕様を定めた仕組みを指します。
受発注業務の時間がおよそ半分になったという水準で、見積書の金額を評価するときの出発点になります。
ただし、この数字の前提は確かめておく必要があります。
この取組は平成28年度補正事業として全国12件の実証プロジェクトとして実施されたもので3(2016年度)、限られた件数の平均値です。
全業種・全規模の平均ではありませんし、実証事業である以上、参加企業は支援を受けながら進めています。
自社の数字をつくるときは、この平均をそのまま当てはめるのではなく、上限に近い目安として扱うのが安全です。
それでもこの数字を参照する意味は大きく、社内説明の場面で効きます。
ベンダーの提案資料に載った効果の数字は、社長から「それは売る側が言っていることだろう」と返されがちですが、公的機関の実証事業の結果であれば出所を示して説明できます。
費用対効果の議論を、売り手と買い手の綱引きから、公開された資料に基づく検討に移すことができます。
受発注デジタル化モデル事業の削減率
より新しい資料として、2022年の報告書では、受発注デジタル化モデル事業に参加した中小企業の受発注業務にかかる時間が平均53.3%削減されたことが示されています2。
先の実証事業とは時期も枠組みも異なりますが、二つの事業でいずれも半分前後という近い水準が出ている点は、目安として置くときの後押しになります。
自社の削減見込みを置くときは、半減を上限の目安とし、実際の試算はそれより控えめな幅で組み立てます。
控えめに置く理由は、実証事業の参加企業と自社とで、取引先の数、品目の種類、例外処理の多さが違うためです。
削減幅を大きく見積もって回収できなかった場合、次に別の投資を提案するときに社内の信用が残りません。
逆に控えめな前提でも回収できる見通しが立つなら、その提案は社長に対しても強く出せます。
もう一つ大切なのは、どの作業が減り、どの作業が残るかを分けて考えることです。
減りやすいのは、受信した注文内容の転記入力、内容を確かめるための電話やFAXのやり取り、納品伝票と請求内容の照合といった、決まった形の情報を人が写し替えている作業です。
残りやすいのは、仕様変更や特注品の個別調整、電子化していない取引先の対応、イレギュラーな納期変更への対応です。
そのため、自社の受発注業務のうち何割が今回電子化する取引先に由来するのかを先に出しておくと、削減率をそのまま全体に掛けてしまう誤りを避けられます。
削減の見込みが置けたら、次は費用の側を軽くする補助金の種類と補助率を確認します。

使える補助金の種類と補助率
インボイス枠(電子取引類型)の補助率
デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠(電子取引類型)では、中小企業・小規模事業者等の補助率上限は2/3以内と定められています4(2026年度)。
受発注に関わるやり取りをデジタルで行う仕組みを対象にする類型で、商流電子化を検討している会社が最初に確認する枠です。
補助率が2/3以内ということは、対象となる経費のうち自社が負担する分は少なくとも三分の一が残るという意味になります。
ここで見落としやすいのが「以内」という書き方です。
補助率は上限であって、申請すれば必ず満額が補助されると決まっているわけではありません。
また、補助の対象となる経費の範囲や上限額、申請できる時期は公募要領に定められているため、見積書に並んでいる費用のどれが対象経費として整理できるのかを、公募要領と照らして確認する必要があります。
申請の時期と発注のタイミングの関係についても、公募要領の定めを事前に確かめてから社内の日程を組んでください。
実務としては、ベンダーに見積書の内訳を費目ごとに分けてもらうところから始めます。
初期の設定費用、ライセンスや利用料、取引先ごとの設定作業、社内研修といった費目が混ざったままでは、補助の対象かどうかを判断できません。
内訳が分かれていれば、補助を見込める部分とそうでない部分を分けて自己負担額を出せます。
インボイス枠(インボイス対応類型)の補助率
同じ補助金のインボイス枠(インボイス対応類型)では、補助額50万円以下の部分の補助率が中小企業について3/4以内と定められています5(2026年)。
金額の帯によって補助率が変わる作りになっており、50万円以下の部分に限れば自己負担は四分の一以上という計算になります。
小さめの投資から始める場合に、補助率の高い帯に収まるかどうかは自己負担額に効いてきます。
二つの類型のどちらに当たるかは、導入するものが受発注のやり取りそのものを電子化するものなのか、請求や会計まわりの対応を含むものなのかによって変わります。
自社の取引の実態と導入するものの機能を突き合わせ、公募要領の対象要件で判断することになります。
判断に迷う場合は、公募要領を手元に置いたうえで支援機関やベンダーに確認し、どの類型で申請する想定かを社内資料にも書き残しておくと、社長への説明が一貫します。
なお、本稿で扱ったもの以外にも中小企業向けの補助制度は存在しますが、それらの対象要件は今回確認していないため、自社が対象になるかどうかはここでは判断できません。
公募には時期の区切りがあるため、取引先から切り替えの期限を示されている場合は、その期限と申請の時期が噛み合うかを早い段階で確かめてください。
補助率が分かったら、費用と効果を実際に突き合わせる手順に移ります。
費用対効果はどう見積もればよいか
補助金を差し引いた自己負担の考え方
試算は次の順で進めると、途中で行き詰まりません。
費用の側は、初期費用と月額費用を必ず分けて置きます。
初期費用は一度きりで、補助の対象になり得る部分がある一方、月額費用は運用が続く限り毎月発生し続けます。
電子取引類型の補助率は2/3以内4、インボイス対応類型では補助額50万円以下の部分が3/4以内5ですから、対象となる経費にこれらを当てた残りが自社の持ち出しになります。
いずれも上限であるため、試算では補助が満額出ない場合の自己負担も並べて用意しておくと、採択の結果に左右されずに判断できます。
効果の側は、削減が見込める時間に自社の人件費単価を掛けて月あたりの金額に直します。
そのうえで、補助を差し引いた実質の自己負担を月あたりの削減額で割れば、何か月分の削減で初期費用に見合うかという目安が出ます。
月額費用がある場合は、削減額から月額費用を引いた残りで割るのが実態に近い計算です。
ここで正直に押さえておきたいのは、人員を減らさない限り、削減した時間がそのまま現金として浮くわけではないという点です。
そのため社長への説明では、空いた時間を何に振り向けるのか、残業時間の削減として表れるのか、納期回答を早めて受注機会の取りこぼしを減らすのかを、金額と併せて示す必要があります。
期待した成果が出た企業の割合
日本政策金融公庫の調査では、デジタルツールを導入した中小企業の業績全体への効果について、「期待どおりの成果があがっている」が43.7%6、「期待以上の成果があがっている」は2.0%にとどまりました6(2025年)。
期待どおりに収まった企業が一定数ある一方で、期待を超える成果が出た企業はごくわずかだということです。
この二つの数字は、試算の置き方に直接効きます。
期待以上の成果が2.0%しかないのであれば、自社の試算で効果を強気に置く根拠はありません。
削減率は公的実証の半分前後という水準を上限の目安とし、回収の見通しは期待どおりに収まる前提で組むのが現実的です。
逆に言えば、控えめな前提でも回収できるなら、その判断は社内で崩れにくくなります。
同じ調査では、デジタル化に「積極的に取り組んでいる」とする企業が43.6%でした6。
取り組む企業自体は少なくないけれども、成果が期待を超えるのは例外である、という二つの事実を並べて社内に示すと、過度な期待も過度な慎重論も避けた議論ができます。
試算の形が決まったら、他社がどこまで進んでいるのかを見て、自社の位置を確かめます。
中小企業のデジタルシフト・DXはどこまで進んでいるか

デジタルシフト・DXの進捗段階
東京商工会議所が中小企業1,272社から回答を得た調査では7(2026年)、「ITを活用して社内業務を効率化している段階」にある企業は38.1%でした7。
また、計画をもとにデジタルシフト・DXを検討または着手していると回答した企業は63.5%にのぼります7。
検討や着手まで含めれば六割を超える一方、社内業務の効率化の段階に達しているのは四割弱という開きがあります。
同じ調査では、取組の成果について「成果が出ている」と回答した企業が80.9%でした7。
ただし、この数字からは成果の中身や程度までは分かりません。
前の節で見た公庫調査の「期待どおりの成果があがっている」が43.7%6という結果と合わせて読むと、成果は出るが期待を超えることは少ない、という見方に落ち着きます。
社内説明でこの数字を使うときも、成果が出ているという割合だけを取り出さず、程度まで含めて示したほうが後の説明が楽になります。
時点をさかのぼると、同じ調査系列で2024年度のIT活用レベル3・4に該当する企業の割合は52.7%でした8。
半数程度が一定のIT活用段階に至っていたことになり、自社が「特別に遅れている」のか「多数派の中にいる」のかを測る物差しになります。
取引先から切り替えを求められた側としては、自社だけが例外的に対応を迫られているわけではないという整理ができます。
業界EDI利用率との比較
ここで注意したいのは、これらの数字の多くが主に社内業務のIT活用を指しているという点です。
社内の効率化と、取引先との間でデータをやり取りする商流電子化は別の話で、後者はより遅れが残っています。
中小企業庁の報告書は、業界EDIを有する業界でも中小企業の利用率は大企業に比べ25%程度低い水準にとどまると指摘しています2(2021年度)。
同じ報告書では、中小企業における電子受発注の普及率を2023年までに50%とする目標が掲げられていました2。
目標が置かれていたという事実は、企業間の受発注の電子化が政策的に推し進められてきた領域であることを示しています。
社内の効率化では他社と足並みが揃っていても、取引先とのやり取りでは差がつきやすいのがこの領域だ、という整理になります。
社長への説明では、この対比が使えます。
社内の効率化はある程度進んでいる会社が多い一方で、企業間の受発注は大企業との差が残っているため、いま取引先から要請が来ているのは自社の怠慢ではなく、領域として遅れが残っていたところに順番が回ってきたという説明ができます。
自社の位置が分かったら、最後に何から始めるかを決めます。

何から始めればよいか
取引量の多い取引先から始める
削減できる時間は、受発注の件数と転記作業の量に比例します。
したがって、最初に切り替える相手は、月あたりの注文件数が多く、やり取りの形が定型化している取引先です。
自社の受発注記録を取引先ごとに集計すると、件数が特定の相手に偏っていることが多く、その偏りがそのまま着手する順番になります。
今回切り替えを求めてきた取引先が件数の多い相手であれば、判断はそこで揃います。
全社の取引を一斉に切り替えない理由は三つあります。
一つ目は、取引先ごとに注文書の様式、締めの日、品目コードの付け方が異なり、まとめて設計しようとすると決めごとが膨らむことです。
二つ目は、受発注事務と経理を兼務している体制では、通常業務を回しながら並行して進められる範囲に限りがあることです。
三つ目は、切り替え期間中は紙とデータの二重運用が発生するため、対象が広いほどその負担が重くなることです。
対象を絞れば、補助の対象経費も小さくまとまり、補助率の高い帯に収まる可能性が出てきます5。
効果検証の目安を決める
効果を検証するには、導入前の状態を測っておくことが欠かせません。
切り替えてから「楽になった気がする」では社長への報告になりませんし、次の取引先へ広げる判断もできません。
測る項目は、注文1件あたりの処理時間、月間の転記件数、内容の食い違いによる訂正や問い合わせの件数、締め日前後の残業時間といった、あとから記録で確かめられるものにします。
これらは商流電子化で直接減ることが見込まれる作業に対応しているため、削減率の見込みが妥当だったかを検証できます。
比べ方は、導入前と同じ長さの期間で同じ項目を測る、という一点に尽きます。
受発注の件数は月によって変動するため、1件あたりの処理時間のように件数で割った指標を必ず入れておくと、繁閑の影響を除いて比較できます。
振り返りの区切りは試行を始める時点で決めておき、その時点で対象を広げるのか、設定や運用を見直すのかを判断します。
検証の結果は、次の申請や次の取引先への展開を社内で通すための材料になります。
公的な実証事業の平均が半分前後の削減であったこと32に対し、自社の実績がどの程度だったのかを並べれば、二社目以降の見込みは推測ではなく自社の実績に基づいて置けます。
期待以上の成果が出た企業が2.0%にとどまる6ことを踏まえれば、自社の実績が公的実証の水準にやや届かなかったとしても、それは失敗ではなく次の前提として使える数字です。
商流電子化の費用対効果は、見積書の金額だけを見ていても判断できません。
現状の受発注業務時間を自社で数え、公的実証が示す半分前後という削減率32を上限の目安として控えめな削減見込みを置き、補助率2/3以内4や補助額50万円以下の部分の3/4以内5を当てて実質の自己負担を出す、という順に進めれば、社長に示せる形の試算になります。
初期費用と月額費用の相場については本稿では一次資料を確認できていないため、複数のベンダーから内訳を分けた見積りを取り、同じ条件で比べてください。
そのうえで、取引量の多い取引先から段階的に始め、導入前と同じ物差しで効果を確かめる形にしておけば、投資の判断を一度で決め切らずに済みます。
費用対効果の試算は、自社の受発注件数と取引先ごとの様式の違いを踏まえないと数字が動きません。見積書の金額だけでは判断がつかないため、受発注の実務と補助制度の対象要件の両方を見てきた相手に、自社の条件で確かめるのが近道です。
現在の受発注の流れを見せたうえで、どの作業が電子化で減り、どの作業が残るのか、最初にどの取引先から切り替えるのが現実的かを確かめられます。無料相談で要件を整理する
費用対効果の試算で順に確かめる項目
社内の記録だけで確かめられるものから、ベンダーへの確認や公募要領の読み込みが必要なものへと進む順で並べている。
- 現状の受発注業務時間を、担当者ごと・作業ごとに直近のひと月分記録する
- 公的実証の削減率(51.4%・53.3%)を上限の目安として、自社の削減見込みを控えめに置く
- ベンダーの見積書を初期費用と月額費用、費目ごとの内訳に分けてもらう
- 補助金の対象要件・対象経費・補助率・公募時期を公募要領で確認し、実質の自己負担を出す
- 実質の自己負担を月あたりの削減額で割り、回収の見通しと最初に切り替える取引先を決める
取引先から切り替えの期限を示されている場合は、四番目の補助金の公募時期の確認を先に行い、その期限に間に合う枠があるかどうかで順序を入れ替えます。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 削減時間の見込み | 公的実証の平均51.4%・53.3%を上限の目安とし、自社の試算はそれより控えめに置く |
| 対象範囲 | 全社一斉ではなく、注文件数の多い取引先に由来する業務量に限って削減を見込む |
| 補助率 | 電子取引類型は2/3以内、インボイス対応類型は補助額50万円以下の部分が3/4以内(いずれも上限) |
| 実質の自己負担 | 初期費用から補助見込みを引き、運用が続く限り発生する月額費用を別に加える |
| 回収の判断 | 実質の自己負担を月あたりの削減額で割り、控えめな前提でも見通しが立つかで決める |
| 効果検証 | 導入前と同じ長さの期間で、1件あたり処理時間と訂正・問い合わせ件数を比べる |
補助金は類型ごとに補助率も対象要件も異なり、公募の時期にも区切りがあります。取引先から切り替えの期限を示されている場合は、自社の日程と制度の時期が噛み合うかを早めに突き合わせる必要があります。 自社の取引条件で対象になり得る類型はどれか、見積書のどの費用を対象経費として整理できるか、段階導入の第一歩をどの取引先に置くかを相談の場で確かめられます。
よくある質問
取引先ごとに指定されるシステムが違う場合、費用対効果はどう見積もればよいですか。
取引先ごとに注文件数と処理時間を分けて数え、件数の多い取引先の分だけを対象に試算します。
様式や品目コードの違いが残る前提になるため、削減の見込みは全体に一律で掛けず、対象とする取引先に由来する業務量に限って置いてください。
実証事業で示された削減率は参加した中小企業の受発注業務時間の平均であり3、一部の取引先だけを切り替えた場合の値として示されたものではない点に注意が必要です。
補助金は申請すれば必ず受けられますか。
補助率はいずれも「以内」と定められており45、申請すれば満額が補助されると決まっているわけではありません。
対象要件や対象経費の範囲、申請できる時期は公募要領に定められているため、見積書のどの費用が対象として整理できるかを含めて事前に確認してください。
社内の試算では、補助が見込みどおりに出なかった場合の自己負担額も併せて用意しておくと、結果に左右されずに判断できます。
従業員20〜30人程度の規模でも効果は出ますか。
効果の大きさは従業員数よりも、受発注の件数と人手による転記作業の量で決まります。
注文件数が少なく、やり取りの形もその都度変わる取引が中心であれば、削減できる時間は限られます。
日本政策金融公庫の調査では、デジタルツール導入で業績全体に「期待どおりの成果があがっている」が43.7%、「期待以上の成果があがっている」は2.0%でしたので6、規模にかかわらず見込みは控えめに置くことをおすすめします。
人員を減らさなければ費用対効果は出ないのでしょうか。
人員削減を前提にしなくても、残業時間の減少、納期回答の早まり、転記の食い違いによる訂正の減少という形で効果は表れます。
ただし、人が減らない限り削減した時間がそのまま現金として浮くわけではないため、社内説明では空いた時間を何に振り向けるのかを金額と併せて示す必要があります。
この区別を曖昧にしたまま回収期間だけを示すと、導入後に「思ったほど楽になっていない」という評価になりやすくなります。
導入した効果はどのように測ればよいですか。
切り替える前に、注文1件あたりの処理時間、月間の転記件数、訂正や問い合わせの件数、締め日前後の残業時間といった項目を記録しておきます。
導入後は同じ項目を、導入前と同じ長さの期間で測って比べます。
受発注件数は月ごとに変動するため、件数で割った指標を必ず入れておくと、繁閑の影響を除いて削減幅を確かめられます。
社内で費用の負担が大きいと反対された場合、どう説明すればよいですか。
費用の負担を課題に挙げる中小企業は31.9%1ですので、反対が出ること自体は珍しくありません。
説明では、対象を件数の多い取引先に絞って初期の費用を小さくまとめたうえで、公的実証が示す削減率と補助率を当てた実質の自己負担を並べます。
加えて、切り替えを見送った場合に紙とデータの二重運用が残るという負担も示すと、導入と見送りを同じ土俵で比べられます。
- 1 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果(2025年1月10日公表)」(2025年) 経路
- 2 出典:中小企業庁経営支援部技術・経営革新課(委託:EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社)「受発注のデジタル化に関する推進方策 報告書」(2022年) 経路
- 3 出典:中小企業庁「中小企業共通EDI(次世代企業間データ連携調査事業・ミラサポplus解説)」(2018年) 経路
- 4 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構(デジタル化・AI導入補助金事務局)「デジタル化・AI導入補助金 インボイス枠(電子取引類型)公募要領」(2026年度) 経路
- 5 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(インボイス対応類型)」(2026年) 経路
- 6 出典:株式会社日本政策金融公庫「デジタル化に取り組む中小企業の実態に関する調査(2025年1-3月期特別調査)」(2025年) 経路
- 7 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果」(2026年) 経路
- 8 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果」(2025年) 経路
画像の出典元
- パソコンと手元の書類を照合する様子/画像:生成AI(自社)
- 60代前半の日本人男性が見積書の照合をしている場面/画像:生成AI(自社)
- 30代後半の日本人男性が見積書の照合をしている場面/画像:生成AI(自社)
- オフィスの自席で納品書とノートパソコンを見比べる日本人の会社員/画像:生成AI(自社)