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LINE発注の複数店舗負担、標準機能でどこまで減らせるか|外部システムとの使い分け

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • LINE公式アカウントの標準機能で減らせるのは注文を探して読み分ける時間までで、転記と品目別の集計は人手のまま残る
  • タグは無料の範囲では1個、チャットProオプションでは最大30個まで使えるため、分類の軸は使える数から逆算して決める
  • 外部システムを比べるときは製品名ではなく、受付・確定・照合・集計・在庫連動のどの作業を引き受けるかで見る
  • 費用は月額だけでなく初期費用や改修費用、店舗追加時の費用を含めて、削減できる作業時間と突き合わせて回収期間で判断する
  • まずは注文量の多い一部店舗と定番品に絞って一か月試し、前後の作業時間と訂正件数を記録してから広げるかを決める

40代前半の日本人女性が町工場の事務での発注をしている場面
▽ 写真の出典元

店舗が増えるとLINE発注の何が大変になるのか

複数店舗からのLINE発注は、LINE公式アカウントの標準機能だけでも「どの店舗からの連絡か見分ける」「未対応を残さない」ところまでは整理できます。
一方で、届いた注文を注文書や受注画面へ書き写す転記と、品目ごとの数量を足し合わせる集計を自動で行う仕組みは標準機能に含まれないため、店舗数と品目数が増えるほど担当者の作業時間は減りません。
目安として、受注担当が1〜2名、取引店舗が十数店まで、注文の書き方を定型に揃えられる見込みがあるなら、タグの設計と注文フォーマットの統一で当面はしのげます。
閉店後の転記が毎晩の固定作業になっている、担当者が休むと処理が止まる、訂正のやり取りを後から追えないという状態なら、受付そのものを外部の受発注システムへ移す検討に入る段階です。
以下では、負担が増える仕組み、標準機能でできる範囲とできない範囲、外部システムが引き受ける作業、選ぶ基準、最初に試す範囲の順に説明します。

複数店舗の注文が一つの受け口に集まる

LINE発注の負担は、店舗数そのものよりも「注文が届く経路の数」と「届いた後に人が触る回数」で増えます。
個別トークで受けている場合、注文は取引店舗の数だけ別々のトークに分かれて届きます。
グループトークにまとめている場合は経路こそ一本ですが、雑談や連絡事項と注文が同じ列に混ざり、どれが確定した注文で、どれが在庫の問い合わせなのかを読み分ける作業が新たに発生します。
どちらの形でも、担当者は「全店舗ぶんを漏れなく見た」と自分で確認するために、一日の終わりにトークをさかのぼって追い直すことになります。

もう一つの理由は、注文の書き方が店舗ごとに揃わないことです。
「いつものを10ケース」「昨日と同じで」といった前提を共有した書き方、棚を撮った写真や手書きメモの画像、運転中に送られた音声メッセージなど、そのままでは数量と品番に置き換えられない形の注文が混ざります。
これらは過去のやり取りや担当者の記憶を参照しないと確定できないため、人を増やしても単純には分担できません。
属人化はこの段階で始まり、担当者が休んだ日に受注が止まる、あるいは代わりの人が確認のために店舗へ電話をかけ直す、という形で表面化します。

転記と集計を人手で行うと何が起きるか

注文を受けてから出荷に至るまで、人が内容に触る場面は思っているより多くあります。
トークを読んで注文かどうかを判断する、数量と品番を確定させる、注文書または受注画面へ入力する、品目ごとに全店舗ぶんを足し合わせる、在庫と突き合わせる、ピッキングと配車の指示に落とす、最後に請求へ回す、という具合です。
このうち機械が代わりに行っている工程が一つもない状態だと、触る回数がそのまま誤りの機会になります。
しかも作業は締め時刻の直前と閉店後に集中するため、最も疲れている時間帯に最も細かい入力をすることになります。

実際に起きやすいのは、ケースとバラの単位の取り違え、同じ商品名で規格違いの品番を選んでしまう誤り、いったん送られた注文に後から届いた「やっぱり5個追加で」という訂正の見落とし、同じ注文を二重に入力してしまう重複です。
やっかいなのは、クレームになったときに時間を取られるのが謝罪そのものではなく、記録の照合であるという点です。
トークをさかのぼって「いつ、誰が、何と送ったか」を探し、こちらの入力内容と突き合わせる作業に、受注一件あたり数十分かかることもあります。
店舗数が増えるほど、この照合の対象範囲も広がります。

それでもLINEが発注の連絡手段に選ばれる理由

負担が大きいと分かっていてもLINEが使われ続けるのは、店舗側にとって導入の手間がないからです。
全年代におけるLINEの利用率は91.1%とされており4、店舗の担当者が個人としてすでに使い慣れている可能性が高い手段です。
新しいアプリを入れてもらう説得も、IDとパスワードの配布も要らず、送信した側は既読の表示で「届いたらしい」と分かります。
忙しい店舗の現場からすれば、これ以上に始めやすい発注手段は多くありません。

一方で、企業間の受発注をデータでやり取りする流れは広がっています。
卸売業のBtoB-EC市場規模は2024年度で128.9兆円とされ5、取引先の側から様式を合わせるよう求められる場面も出てきます。
そのため、問いは「LINEをやめるかどうか」ではなく、「LINEを店舗との入口として残したまま、どの作業を人の手から外すか」という形になります。
この観点に立つと、次に確かめるべきなのは、いま使っているLINE公式アカウントの標準機能がどこまで肩代わりしてくれるのかという点です。

店舗のLINE注文が担当者の読み分け、転記、集計を経て出荷指示と請求へ進む流れ図
LINE発注を人手で処理する場合の作業の流れ

LINE公式アカウントの標準機能だけで負担は減らせるか

タグでできる分類と、無料範囲とチャットProの違い

LINE公式アカウントのチャットでは、友だちとして登録された相手、つまり各店舗の担当者にタグを付けて分類できます。
ただし使える数には上限があり、タグは無料の範囲では1個まで、チャットProオプションを利用する場合は最大30個まで追加できるとされています(2026年時点)1
この差は運用の設計をそのまま左右するため、先に確認しておく価値があります。
上限の内容は提供元のマニュアルで改めて確かめてください。

無料の範囲で1個しか使えないなら、複数の軸を持たせようとせず、日々の作業で最も頻繁に絞り込む軸を一つだけ選ぶのが現実的です。
配送便ごとに出荷を組んでいるなら便名、地区ごとにルートが分かれているなら地区名、というように、注文を処理する順序と一致する軸を選ぶと効果が出ます。
チャットProオプションを使える場合は、地区・配送便・締め時刻・請求区分といった複数の軸を組み合わせられますが、軸を増やすほど付け忘れが起きやすくなります。
タグは自動では付かないため、新規の店舗を登録した時点で必ず付ける、という運用の決めごとがないと、分類そのものが信用できなくなります。

絞り込みでできること、できないこと

タグを付けたうえで、チャットの一覧を条件で絞り込めば、「この便の店舗だけを順に見る」「まだ返信していない相手だけを表示する」といった見方ができます1
取りこぼしを防ぐという一点では、これはかなり効きます。
全トークを上から順に追い直していた作業が、対象を限定した確認に変わるためです。
担当者が複数いる場合は、誰がどの範囲を見るのかを分ける土台にもなります。

ただし、この絞り込みが対象にしているのは「相手」であって「注文の中身」ではありません。
タグは店舗の担当者に付くものであり、メッセージ本文に書かれた品番や数量を読み取って集計するための機能ではありません。
そのため、「今日届いた全店舗ぶんの注文から、特定の商品の合計数を出す」といった処理は、標準機能の絞り込みでは行えません。
この性質を理解しておくと、標準機能に何を期待し、何を期待しないかの線が引けます。

複数アカウントに分ける運用と、その副作用

受け口そのものを分ける方法もあります。
LINE公式アカウントはビジネスID1つあたり最大100個まで作成できるとされており2、部門別や地区別、あるいは受注用と案内用といった用途別に分ける設計が取れます。
受注専用のアカウントを立てれば、販促の配信や問い合わせと注文が同じ画面に混ざらなくなり、閉店後に読み直す対象を減らせます。
権限を分けて、担当外のアカウントを触らせない運用も組めます。

一方で、分けるということは受け口が増えるということでもあります。
担当を分けられる人数がいない状態でアカウントだけ増やすと、確認しなければならない画面が増えるだけで、かえって見落としの種になります。
分けるなら「アカウントごとに責任者が決まっている」「店舗側にどのアカウントへ送るかを案内し、旧い宛先を閉じる」という二つの条件を満たしてから進めるのが安全です。
店舗側の連絡先を変えてもらう作業は一度きりではなく、店舗の担当者が交代するたびに必要になる点も見込んでおきます。

標準機能では減らない作業

ここまでを整理すると、標準機能が減らしてくれるのは「探す時間」と「見落としの確認に使う時間」です。
減らないのは「打ち直す時間」と「数える時間」で、具体的には注文内容の転記、品目別の集計、在庫の引き当て、締め処理、そして過去の注文内容の検索です。
これらは注文の中身をデータとして持っていて初めて自動化できる作業であり、トークの本文として文章で届いている限りは人が読み取るしかありません。
毎晩の負担の大半がこちら側に寄っているなら、標準機能の見直しだけでは解決しません。

判断の材料として、一週間だけでも作業時間を分けて記録してみることを勧めます。
「注文を探して読み分けるのに何分」「入力と集計に何分」を分けて数えると、どちらを減らすべきかがはっきりします。
前者が大きいなら、タグの設計と受け口の整理で相当に軽くなります。
後者が大きいなら、次に見るのは外部の受発注システムが何を引き受けるのかという点です。

タグや絞り込みで探す作業は減る一方、転記と集計と在庫連動は減らないことを示す表
標準機能で減る作業と減らない作業

外部の受発注システムはLINE発注のどこを引き受けるか

置き換える単位は「ツール」ではなく「作業」

外部システムを検討するとき、「LINE発注をシステムに置き換える」という言い方をすると判断が粗くなります。
実際に置き換えられるのは作業の単位であり、受付、確定、照合、集計、在庫連動、履歴の保管といった工程のどこを引き受けるかで、減る時間はまったく違います。
たとえば、店舗が品番と数量を選ぶ形で入力するところまで移せれば、転記の工程そのものが消えます。
一方、注文はこれまで通りLINEで受け、こちらが入力する形のままなら、減るのは集計と突き合わせの部分だけです。

そのため、比較すべきは製品名ではなく「自社のどの工程が誰の手から離れるか」です。
いま行っている工程を紙に書き出し、それぞれについて「人が行う/システムが行う/店舗が行う」のどれになるかを候補ごとに埋めていくと、見積もりの金額を並べる前に差が見えます。
この整理をしておくと、後の商談でも「その機能は当社のどの工程を引き受けますか」と具体的に聞けます。
逆にこの整理がないまま機能一覧を見比べると、使わない機能の多さで選んでしまいがちです。

「LINE連携」の対応範囲はベンダーごとに確認が要る

注意したいのは、「LINE連携」という言葉が指す範囲が提供元によって異なることです。
受注や出荷の通知をLINEで送る機能を指す場合、LINEのメッセージから注文フォームへ誘導する導線を指す場合、トークの中で注文の確定まで行える場合があり、負担の減り方はそれぞれ違います。
公開されている資料に対応範囲が明記されていないことも珍しくなく、その場合は問い合わせで確認するほかありません。
本記事の執筆にあたっても、特定製品のLINE連携の対応範囲を一次資料で確認できなかったため、機能の有無については断定していません。

確認するときは、次の点を具体的に聞くと食い違いが起きにくくなります。
注文を入力するのは店舗か自社か、商品マスタと店舗別の単価をどこで管理するか、どの操作をもって注文確定とするか、変更と取消はどう記録されるか、締め時刻を過ぎた注文はどう扱われるか、という内容です。
あわせて、既存の在庫管理や販売管理とのデータの受け渡し方法と頻度も確認しておきます。
これらが決まらないと、導入後も結局は人が突き合わせる工程が残ります。

連携しても残る仕事がある

システムを入れても消えない仕事があることは、先に見込んでおいたほうがよいです。
代表的なのは、商品マスタの整備と更新、店舗の担当者への使い方の案内、そして移行期の二重運用です。
特に商品マスタは、これまで「いつもの」で通じていた曖昧さを品番と単位に落とし込む作業であり、ここを避けて通ることはできません。
裏を返せば、この整理は標準機能のままでも効果があるため、システム導入を決める前から着手できる部分でもあります。

また、店舗側の慣れ方には差が出ます。
入力に移行しやすい店舗と、これまで通り文章で送ってくる店舗が混在する期間が必ず生じるため、当面はどちらも受けられる体制が要ります。
この期間をどれだけ短くできるかが、実際の負担軽減の度合いを左右します。
それでは、標準機能の見直しで足りるのか、外部システムに移すのか、どこで線を引けばよいのかを次に整理します。

ここまでで、LINE発注の負担は「注文を探して読み分ける時間」と「打ち直して数える時間」の二つに分かれること、標準機能が効くのは前者であること、後者を減らすには受付の形そのものを変える必要があることが確認できました。
自社の負担がどちらに寄っているかが分かれば、次は自社の規模と作業量に照らして、どの進め方を選ぶかという判断になります。

50代後半の日本人男性が発注画面の操作をしている場面
▽ 写真の出典元

標準機能で減らせるのは注文を探して読み分ける時間までで、転記と集計を人の手から外すには受付の形そのものを変える必要があります。どこまで移せるかは、注文の書き方や商品マスタの状態、既存の在庫・販売管理の作りによって変わるため、一般論では線を引けません。企業間の受発注の仕組みを実際に構築している事業者であれば、いまのLINE運用のどの工程を外へ出せるのかを、機能の一覧ではなく業務の単位で見立てられます。

現在の注文の受け方、取引店舗数、扱う品目数、閉店後の作業時間を持ち込めば、標準機能の見直しで足りる範囲と、システム側に任せたほうが早い範囲の線引きを確かめられます。あわせて、月額のほかに初期や改修でどの費用が発生しうるか、既存システムとのつなぎ方に無理がないかも、同じ場で確認できます。無料相談で要件を整理する

導入するなら何を基準に選ぶか

自社だけで先に答えを決められる項目から、取引先や提供元に確認しないと決まらない項目へ向かう順で並べています。

  • 誰が注文を入力するのか。店舗側が品番と数量を選ぶ形か、これまで通り受け取った内容を自社で入力する形か
  • 商品マスタと単価をどこで持つか。店舗別の単価や掛率、荷姿の違いをシステム側で管理できるか
  • LINEをどこまで使い続けるか。通知だけに使うのか、注文の入口までか、注文の確定まで行うのか
  • 既存の在庫・販売管理・会計とどうつなぐか。データの受け渡し方法と更新の頻度、手作業が残る箇所はどこか
  • 取引店舗を増やしたときに費用がどう変わるか。取引先数やアカウント数による課金の有無と、追加時の作業
  • 注文の変更・取消と締め後の扱い。誰がいつ何を送ったかの記録が、後から照合できる形で残るか

既存の基幹システムに改修の余地がほとんどない場合は、4番目のつなぎ方を最初に確認し、そこで成り立たない候補を早い段階で外します。

標準機能の強化と外部システム、どちらを選ぶか

当てはまる状況 先に行うこと 費用の考え方
標準機能を整える型 取引店舗が十数店まで、品目が定型、担当1〜2名で回っている タグの軸の決定と注文フォーマット・締め時刻の統一 追加費用は小さい。運用ルールを保つ手間が主な負担
一部だけ外部に出す型 一部の店舗に注文量が偏る、品目数が多く集計に時間がかかる 対象の店舗と対象の作業を絞って試す 小さく始め、測った効果で広げるかを決める
受発注システムへ移す型 閉店後の転記が常態化、在庫や基幹との突き合わせが必要 対応範囲と費用構成を作業単位で確認する 月額に初期・改修・追加費用を足し、回収期間で見る

電子受発注の導入状況から自社の位置を測る

導入率から読めること

判断の前に、周囲の状況を押さえておきます。
電子受発注システムの導入率は、発注側企業で40.9%、受注側企業で48.5%とされています(2021年度)6
受注側で半数近くが導入している一方、まだ導入していない企業も同程度あるという読み方になります。
つまり、いまLINEと手作業で回していること自体は特殊ではなく、あわてて全面的に切り替える必要はありません。

ただし、取引先の側が電子化を進めていけば、様式を合わせてほしいという要望は増えていきます。
自社の都合だけでなく、主要な取引先が今後どうするつもりかを、営業担当を通じて聞いておくと判断の材料になります。
取引先から指定された様式に合わせる必要が出てきた場合、選択肢はその時点で狭まります。
余裕があるうちに、自社の作業量を基準に検討しておくほうが選べる幅は広くなります。

自社の作業量で測る

外から見た普及率よりも、自社の数字のほうが役に立ちます。
測るのは、注文の受付から出荷指示までにかかっている一日あたりの作業時間、月間の営業日数、取引店舗数、注文で扱う品目数、そして訂正と問い合わせの件数です。
これを一か月ぶん集めると、削減できる可能性のある時間の上限が見えます。
時間に自社の人件費単価を掛ければ、後で費用と比べるための共通の物差しになります。

目安としては、閉店後の転記と集計だけで毎日1時間を超え、それが月の大半の日に発生しているなら、標準機能の見直しだけで解消するのは難しい水準です。
逆に、負担の中心が「どのトークに注文が来たか探すこと」にあるなら、受け口の整理で大きく変わります。
どちらか判然としない場合は、次の型を上から順に試すと切り分けられます。

Close-up of HTML code lines highlighting web development con
▽ 写真の出典元

追加費用をかけずに受け口を整理する

当てはまる状況

取引店舗が十数店までで、扱う品目が定番中心に定型化しており、担当が1〜2名で回っている場合はこの型から始めます。
注文の内容そのものは複雑でないのに、どこに届いたかを探す手間と、返信漏れの不安で時間を使っているケースです。
この状態では、システムを入れても減る時間が小さく、費用に見合わないことがあります。
まずは手元の機能で効果を出し、それでも残る負担を次の判断材料にします。

具体的に行うこと

行うのは、分類の軸を一つに決めてタグの付け方を統一すること、注文フォーマットの見本を作って店舗に配ること、締め時刻を文章で明示すること、受付時に返す確認の文面を定型にすること、対応済みの印の付け方を担当者間で揃えることです。
注文フォーマットは凝る必要がなく、「品番または商品名・数量・単位・希望納品日」を一行ずつ書いてもらう形で十分です。
単位の書き落としが誤りの大きな原因になるため、ケースかバラかは必ず書いてもらいます。
受付時に同じ文面で内容を復唱して返せば、聞き漏れと解釈違いはその場で潰せます。

店舗側に協力してもらう場面が出るので、伝え方も決めておきます。
「今日から書き方を変えてください」と一斉に頼むより、次回の訪問時や電話のついでに見本を渡し、守ってもらえた注文には返信を早く返す、という形で慣れてもらうほうが定着します。
新しく取引が始まる店舗には最初から見本を渡し、古い書き方が増えないようにします。

限界が来るサイン

この型で回らなくなる兆候ははっきりしています。
整理を行ったのに閉店後の転記時間が減らない、担当者が休むと処理が滞る、訂正のやり取りを後から追えず照合に時間がかかる、店舗数の増加に合わせて残業が比例して伸びている、といった状態です。
これらが出ているなら、減らすべきは探す時間ではなく打ち直す時間であり、次の型へ進む段階です。
ここで無理に人手の工夫を重ねると、担当者の負担だけが積み上がります。

範囲を絞って試し、効果を測ってから広げる

当てはまる状況

一部の店舗に注文量が偏っている、あるいは扱う品目数が多くて集計に時間がかかっている場合は、全体を一度に変えずに範囲を絞る進め方が向きます。
全店舗を同時に移そうとすると、店舗側の慣れの差がそのまま混乱になり、移行期の負担が現状より重くなることがあります。
注文量の多い数店舗、または売れ筋の定番品だけを対象にすれば、効果は測りやすく、うまくいかなかったときに元へ戻すのも容易です。
小規模な体制ほど、この戻せる状態を保っておくことが安全につながります。

試す範囲の決め方

対象の選び方には条件があります。
店舗側に協力してもらえる関係があること、注文の頻度が高く短い期間でも差が出ること、扱う品目が定番で商品マスタを整えやすいこと、この三つを満たす相手を選びます。
逆に、注文が不定期で特注品が多い取引先は、試行の対象としては差が見えにくく向きません。
期間は一か月程度を区切りとし、その間は従来のLINEでの受付も並行して残しておきます。

効果の測り方

測る指標は、試行前に記録しておいた作業時間、訂正の件数、店舗からの確認の問い合わせ件数と同じものにします。
参考として、中小企業共通EDIの実証事業では受発注業務時間の削減率が51.4%と報告されています(2018年)8
ただしこれはLINEでの注文に限った数値ではなく、業種や取引形態の異なる実証の結果であるため、自社で同じ削減が得られると考えるのは適切ではありません。
あくまで「業務時間が相応に減る余地はある」という程度に受け止め、判断は自社で測った前後の数字で行います。

測るときは、減った時間だけでなく増えた仕事も記録します。
商品マスタの更新、店舗への説明、二重運用の確認作業などは、移行期に確実に発生します。
差し引きで時間が減っているなら広げる根拠になり、減っていないなら原因がマスタの不備なのか運用の不徹底なのかを切り分けます。

受付の形を変え、LINEは連絡用に残す

当てはまる状況

閉店後の転記が毎晩の固定作業になっている、在庫や基幹システムとの突き合わせが欠かせない、取引店舗が今後も増える見込みがある、という条件が重なるならこの型です。
この場合、注文の入力を店舗側に行ってもらう形へ移し、LINEは納期の相談や欠品の連絡といった会話のための手段として残します。
入口を完全に閉じないことで、店舗側の心理的な負担を下げられます。
ただし、二重に受け付ける期間をいつまでにするかは、最初に決めて店舗に伝えておきます。

費用構成の見方

費用は月額だけを見ると判断を誤ります。
公開されている料金の一例では、BtoB向け受発注システムのベースエンジン利用料が月額170,000円から、ASPとして利用する場合の料金が月額260,000円と示されています(2026年時点)3
実際にはこれに加えて、初期の構築費用、既存システムとつなぐための改修費用、自社の業務に合わせるカスタマイズ費用、取引先や店舗を追加する際の費用が発生しうるため、提示された見積もりの内訳を項目ごとに確認します。
そのうえで、先に測った削減時間と人件費単価から、何か月で見合うかを計算します。

費用への懸念は広く共有されているものです。
中小企業のデジタルシフトに関する調査では、課題として「コスト負担」を挙げた企業の割合が31.9%とされています(2024年)7
だからこそ、感覚ではなく回収期間で語れる状態にしておくと、社内の合意が取りやすくなります。
回収期間が長すぎる場合は、全面導入ではなく前の型に戻し、範囲を絞って再検討する判断も成り立ちます。

対応範囲と拡張性を確認する

長く使う前提なら、いま必要な機能だけでなく、後から起きる変化に耐えられるかを見ます。
確認するのは、店舗別の単価や掛率を管理できるか、取引店舗を増やしたときの設定作業と費用、商品の追加や価格改定を自社で行えるか、既存の在庫・販売管理とのデータ連携の方法、そして注文の履歴を後から検索できるかです。
特に価格改定を提供元に依頼しないと行えない仕組みだと、運用のたびに費用と時間がかかります。
誰がどこまで自社で操作できるのかを、契約前に具体的な作業名で確認しておきます。

確認する費用の項目 確認する内容
月額利用料 どの機能範囲まで含まれるか、上限を超えた場合の扱い
初期・構築費用 データ移行と初期設定のどこまでが含まれるか
改修・カスタマイズ費用 既存システムとの連携や自社様式への対応に要する費用
追加時の費用 取引店舗や利用者を増やしたときに発生する費用
50代後半の日本人女性が発注画面の操作をしている場面
▽ 写真の出典元

まず何から試せばいいか

一か月で試す範囲を決める

最初にやることは、システムの比較ではなく現状の記録です。
次の順で進めます。現状を記録する、標準機能を整える、一部の店舗と品目に絞って試す、測った結果で判断して広げる、という四つの段階です。
記録がないまま導入すると、後になって効果を説明できず、次の投資の判断もできません。
逆に、二週間ぶんでも作業時間の記録があれば、それだけで社内の議論は具体的になります。

判断の材料を残す

記録は細かくする必要はなく、日付、作業の区分、開始と終了の時刻、気づいたことを一行、という程度で足ります。
区分は「探す・読み分ける」「入力する」「集計する」「問い合わせに答える」の四つに分けておくと、どこに時間が寄っているかが分かります。
これを担当者が二人以上いる場合は各自で取り、後で合算します。
紙でもよく、専用の道具は要りません。

試行の後は、同じ区分で同じ期間の記録を取り、前後を並べます。
減った時間、増えた作業、店舗からの反応の三点を一枚にまとめれば、社内で説明する資料になります。
ここまで用意できていれば、提供元との商談でも「この工程をどう引き受けるか」という具体的な話ができます。

店舗への伝え方

進め方で見落とされがちなのが、店舗側への説明です。
発注の方法を変える話は、店舗にとっては自分たちの作業が増えるかもしれないという話に聞こえます。
そのため、伝える内容は「新しい仕組みを入れます」ではなく、「欠品や数量違いを減らしたい」「納品前に注文内容を確認できるようにしたい」といった、相手にとっての利点から始めます。
あわせて、当面はこれまで通りLINEでも受け付けること、困ったときの連絡先が変わらないことを明示しておくと、抵抗は小さくなります。

そして、切り替えの期限を最初から伝えておきます。
期限のない併用は、受け口が増えただけの状態を長引かせ、負担を増やします。
店舗ごとに事情は違うので、一律の期日ではなく「この日までに一度ご相談させてください」という形で区切るのが現実的です。

現状の記録、標準機能の整理、一部店舗での試行、判断と拡大の四段階を示す図
標準機能の見直しから外部システムの判断までの段取り

要点の整理

基準
受け口の形 取りこぼし防止は個別トーク、周知はグループ。アカウントを分けるなら担当も分ける
分類 タグは無料の範囲で1個、チャットProで最大30個。最も頻繁に絞り込む軸から決める
標準機能の効果 探して読み分ける時間は減るが、打ち直す時間と数える時間は減らない
外部システムの見方 製品名ではなく、受付・確定・照合・集計・在庫連動のどの作業を引き受けるかで比べる
費用 月額に初期・改修・追加時の費用を足し、削減できる作業時間と人件費単価から回収期間を出す
進め方 現状を記録し、標準機能を整え、一部店舗と定番品で試し、前後の数字で判断する

試す範囲を決める段階では、どの店舗とどの品目から着手すれば短い期間で差が見えるかという判断が要ります。ここを誤ると、効果が出ないまま移行期の負担だけが残り、次の判断材料も得られません。受発注の仕組みを提供している事業者であれば、商品マスタの整え方や店舗別単価の扱いなど、試行の前に決めておくべき項目を具体的に示せます。 記録した作業時間と現在の注文様式を示せば、最初に試す範囲の設計と、移行期に併用をどのくらいの期間で終えるかの見通しを確かめられます。取引店舗が増えたときに費用と設定作業がどう変わるかも、あわせて確認しておくと後の判断が早くなります。

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よくある質問

注文はグループトークと個別トークのどちらで受けるのがよいですか。

取りこぼしを防ぐことを優先するなら、店舗ごとの個別トークで受けるほうが確実です。グループトークは連絡事項の周知には向きますが、注文と雑談が同じ列に並ぶため、後から注文だけを追い直す作業が増えます。ただし、個別トークは受け口の数が店舗数と同じだけ増えるので、タグで分類し、対応状況で絞り込める状態を先に作っておくことが条件になります。すでにグループトークで運用している場合は、注文の受付だけを個別トークへ移し、グループは案内用として残す形が移行しやすい方法です。

店舗に注文フォーマットを守ってもらうには、どう伝えればよいですか。

書き方の見本を一枚用意し、次に訪問や電話をする機会に手渡しで説明するのが定着しやすい方法です。項目は品番または商品名、数量、単位、希望納品日の四つに絞り、それ以上は求めないようにします。守ってもらえた注文には確認の返信を早く返すと、店舗側にも利点が伝わります。新しく取引が始まる店舗には最初から見本を渡し、古い書き方が増えないようにしておくと、時間をかけて全体が揃っていきます。

店舗ごとにLINE公式アカウントを分けると、管理は楽になりますか。

分けたアカウントごとに責任者を決められる場合に限り、楽になります。受注専用と案内用のように用途で分ける形は、閉店後に確認する画面を減らせるため効果があります。一方で、担当者が一人のまま受け口だけを増やすと、確認する画面が増えて見落としの原因になります。分けるかどうかは、アカウントの数を管理できる人員がいるかどうかで判断してください。

外部のシステムを入れたら、店舗にはLINEでの発注をやめてもらう必要がありますか。

すぐにやめてもらう必要はありませんが、併用の期限は決めておくことをお勧めします。移行期には入力に慣れる店舗とこれまで通り文章で送る店舗が混在するため、当面は両方を受けられる体制が要ります。ただし期限のない併用は受け口が二つに増えた状態が続くだけで、負担はむしろ増えます。店舗ごとに事情が異なるので、一律の期日ではなく、相談のうえで個別に切り替え時期を決める進め方が現実的です。

担当者が一人しかいない場合でも、試すことはできますか。

できます。その場合は対象を思い切って絞り、注文量の多い一店舗と定番品だけで一か月試す形にしてください。記録も日付と作業区分と所要時間だけの簡単なもので構いません。一人で運用する体制では、うまくいかなかったときに元へ戻せることが最も重要なので、従来の受付を残したまま試し、切り替えは効果を確認してから決めます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. 1 出典:LINEヤフー株式会社「LINE公式アカウント マニュアル(チャット)」(2026年) 経路
  2. 2 出典:LINEヤフー株式会社「LINE公式アカウント複数作成&運用ガイド(LINEヤフー for Business コラム)」(2026年) 経路
  3. 3 出典:株式会社イーシー・ライダー「EC-Rider B2B II 料金プラン・費用」(2026年) 経路
  4. 4 出典:総務省情報通信政策研究所「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(2025年) 経路
  5. 5 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
  6. 6 出典:中小企業庁「令和3年度取引条件改善状況調査 結果概要」(2022年) 経路
  7. 7 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2025年) 経路
  8. 8 出典:中小企業庁「中小企業共通EDI(次世代企業間データ連携調査事業ほかの実証結果)」(2018年) 経路

画像の出典元

  1. 40代前半の日本人女性が町工場の事務での発注をしている場面/画像:生成AI(自社)
  2. 50代後半の日本人男性が発注画面の操作をしている場面/画像:生成AI(自社)
  3. Close-up of HTML code lines highlighting web development con/Photo by Pixabay on Pexels
  4. 50代後半の日本人女性が発注画面の操作をしている場面/画像:生成AI(自社)

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独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
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