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発注システムの費用対効果を検証|食品卸売業の費用相場と投資回収の見極め方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 公表されている料金は初期費用100,000円+月額88,000円(税抜)から月額260,000円まで幅があり、差の原因は対象にする業務範囲と課金の基準にある
  • 見積は初期費用と月額を分け、期間中の定例外費用も足したうえで3年と5年の総額にそろえて比べる
  • 効果は実測した作業時間と誤発注件数から金額に直し、月あたりの削減額が月額費用を上回るかを先に確かめる
  • 食品ロスの削減は副次的な効果と位置づけ、誤発注・訂正に起因する廃棄と返品に限って見積もる
  • 契約条件は、利用料の対象期間・保守サポートの範囲・最低契約期間・解約時のデータ返却形式の四点を確認する

Vintage classroom with wooden desks, blackboard, and bookshe
▽ 写真の出典元

発注システムの費用相場はいくらか

発注システムの費用は、公表されている料金で見ると、初期費用100,000円に月額88,000円(税抜)というSaaS型のプラン5から、月額260,000円のASP利用料金4まで幅があります(いずれも2026年時点の公表値)。見積の桁が違うのは相場が定まっていないからではなく、対象にしている業務範囲と課金の基準が製品ごとに違うためです。
費用対効果は、月額の安さで決めるものではありません。「今FAXや電話での受発注にかけている時間×時間あたり人件費+誤発注や返品で失っている金額」と、「初期費用+月額×想定利用月数」を同じ期間でそろえて並べ、月あたりの削減額が月額費用を上回るかどうかを先に確かめます。ここが逆転していなければ、初期費用を何か月で回収できるかという議論に進めます。
この記事が当てはまるのは、取引先から電子受発注への切替を求められていて、自社の発注件数と担当者の作業時間を集計できる卸売事業者です。逆に、取引先が数社にとどまり発注内容も定型化している場合は、投資回収の計算より先に、取引先が指定する接続方式で足りるかを確認したほうが早く結論が出ます。

クラウド型パッケージの初期費用・月額費用の実例

まず、実際に公表されている料金を押さえます。BtoB向けの受発注システムでは、SaaS型(ソフトを自社に設置せず、提供者のサーバー上の機能を月額で使う形)のプランとして、初期費用100,000円に月額88,000円(税抜)という料金が公表されています5。同じ提供元でも、より広い機能を持つ製品ではASP利用料金が月額260,000円4、構成によってはベースエンジンの利用料がモデルケースで月額170,000円からと示されています4。いずれも2026年時点で公開されている金額です。
この幅を見て「どれが相場か分からない」と感じるのは自然ですが、比べるべきは金額そのものではなく、その金額に何が含まれているかです。同じ「受発注システム」という名前でも、注文を受ける画面だけを提供するものから、在庫参照や請求、複数拠点の管理まで含むものまで、守備範囲が違います。

見積を並べるときは、最低でも初期費用と月額費用を分けて記録します。初期費用には、初期設定、商品マスタや取引先マスタの登録、既存データの移行、画面やメール文面の調整、操作説明といった一度きりの作業が入ります。月額費用は利用料と保守が中心ですが、どこまでが利用料でどこからが別料金かは提供元によって違います。
同じ「月額◯万円」でも、一方は保守と問い合わせ対応を含み、他方は保守を別契約にしていることがあります。金額の比較に入る前に、この含まれる範囲をそろえることが先です。範囲がずれたままの比較は、社内で説明するときに必ず突かれます。

基幹連携やカスタマイズが必要な場合の費用の考え方

既存の販売管理システムや基幹システムと連携させる場合、費用は公表されている定価の外に出ます。連携は、どのデータを、どの形式で、どの頻度で受け渡すかによって作業量が変わるため、要件が固まっていない段階では見積が出せない、あるいは大きめの概算が出るのが普通です。
ここで起きやすいのが、A社は連携費用を初期費用に含めて提示し、B社は「別途お見積り」として除外している、という状態です。総額が違って見えても、実際は同じ範囲を見ていないだけということがあります。
対処は単純で、連携したい項目を自社側で先に列挙し、その一覧を各社に同じ文面で渡すことです。受注データだけを取り込むのか、在庫数の参照まで含めるのか、単価マスタを日次で同期するのか。この粒度まで書いて渡すと、見積の差が「機能の差」なのか「見積範囲の差」なのかを判別できるようになります。

カスタマイズについても同じ考え方をします。標準機能に合わせて運用を変えれば済むのか、業務のほうを動かせない事情があるのかを先に決めておくと、不要な追加開発を見積から外せます。
特に食品卸売業では、賞味期限や納品期限の管理、ケースとバラの単位換算、取引先ごとの単価、定番品と特売品の区別といった要件が費用を動かしやすい部分です。これらが標準機能で扱えるのか、設定で対応できるのか、開発が必要なのかを一つずつ確認してください。開発が必要と言われた項目については、その機能がなければ本当に運用が回らないのかを社内で再検討すると、初期費用を圧縮できることがあります。

取引先数・SKU数による費用の違い

月額費用の課金の基準も、金額差の大きな原因です。基準になりやすいのは、登録できる商品アイテム数(SKU。同じ商品でも容量や規格が違えば別に数える単位)、発注側として登録する取引先の会員数、自社で操作する管理画面の利用人数、月間の受注件数やデータ量です。
自社の数字がそれぞれの基準でどのくらいかを先に出しておくと、提示されたプランが上限に対して余裕があるのか、すぐ次の段階の料金に上がるのかが分かります。逆に自社の数字を出さないまま見積を依頼すると、各社が異なる前提で試算するため、比較できない見積が集まります。

食品卸売業では、取扱アイテムが季節や産地で入れ替わるため、SKU数が年間で変動します。年間の最大値と平均値の両方を出し、上限を超えたときにどうなるか、つまり自動で上位プランへ移行するのか、超過分が従量課金になるのか、それ以上は登録できなくなるのかを確認しておくと、稼働後の想定外の増額を避けられます。
取引先の会員数についても同様です。今の取引先数だけでなく、切替を求めている大手小売チェーン以外にも展開する可能性があるなら、その後の会員数で見た月額も併せて出してもらってください。
費用の内訳と課金の基準が見えたところで、次はその費用に見合う効果が本当にあるのかを、調査データで確かめます。

三つのプランの初期費用と月額費用を並べた表
公表されている料金の例と、初期費用・月額費用の分け方

費用に見合う効果は本当にあるのか

中小企業がデジタル化で実感している効果の実態

効果があるかどうかを自社の想像だけで語ると、稟議では通りにくくなります。東京商工会議所が中小企業を対象に実施した調査では、デジタルシフトの効果として「業務効率化(コスト削減、時間短縮、ミス防止等)」を挙げた企業が81.0%で最も多くなっています3(2024年)。
注意したいのは、この数値が「効果を実感した企業の割合」であって、「何時間減ったか」を示すものではないことです。稟議で使うなら、効果の方向性が中小企業全体で共通していることの裏づけとして引用し、削減時間そのものは自社の実測値で示す、という役割分担にします。外部の統計を自社の効果予測として流用すると、根拠を問われたときに答えられなくなります。

自社での実測は難しくありません。受発注に関わる作業を、FAX受信の仕分け、注文内容の読み取り、基幹システムへの入力、内容の確認電話、訂正処理といった単位に分け、一日分でよいので担当者に実時間を記録してもらいます。繁忙日と通常日の二日を取れば、月間の概算に引き延ばせます。
この記録には、作業時間だけでなく「誰が」やっているかも書き添えてください。同じ1時間でも、管理職が確認電話に費やしている時間と、パート社員が入力している時間では、金額に直したときの重みが違います。ここで作った記録が、後の投資回収の計算の土台になります。

効果と裏腹に費用負担を課題に挙げる企業の割合

同じ調査では、電子化・デジタル化の課題として「コスト負担」を挙げた企業が31.9%で最多となっています3(2024年)。効果を認めている企業が多い一方で、費用が導入の壁になっている構図です。
この二つの数字は、稟議の場で起きていることをそのまま表しています。効果そのものは否定されないが、支出の決裁は別の話として扱われる。だからこそ、説明の中心を「効果があるか」ではなく「いつ、いくらで回収できるか」に置いたほうが通りやすくなります。

費用負担が課題として挙がりやすいのは、支出が確定した金額で目に見えるのに対し、効果が推計でしか示せないという非対称性があるためです。この非対称を埋める方法は二つあります。一つは、効果側をできるだけ確定した数字に近づけること、つまり実測した作業時間と、過去の返品伝票から拾った件数を使うことです。もう一つは、費用側を確定させること、つまり期間中に発生しうる費用を漏れなく見積に含めさせることです。
どちらも手間はかかりますが、この二つを押さえておけば、決裁の場で「本当にその金額で収まるのか」という問いに答えられます。

効果とコストをどう見比べるか

見比べ方の基本は、効果を金額に直すことです。時間削減は「削減できる月間時間×時間あたり人件費」、誤発注の削減は「月間の誤発注件数×一件あたりの損失額」で金額になります。一件あたりの損失額には、返品の運賃、再納品の手間、値引き処理、廃棄した商品の原価が含まれます。
すべてを正確に出す必要はありません。過去半年の返品伝票や訂正記録を数えて、件数と代表的な金額を押さえれば、桁の合った概算になります。
ここで出した金額は、あくまで自社の実績に基づく試算であり、公表された統計値ではありません。稟議資料では、出典のある数値(中小企業全体の傾向)と、自社で測った数値(削減額の試算)を明確に分けて書くと、後から根拠を問われたときに答えられます。

また、効果は導入直後に満額では出ません。マスタの整備、取引先への案内と操作説明、自社担当者の習熟に時間がかかるため、最初の数か月は従来のFAX運用と並行することになります。並行期間中はむしろ作業が増えることもあります。
回収期間を計算するときは、効果が立ち上がるまでの期間を見込んでおくほうが、後の説明が崩れません。たとえば「稼働から3か月は効果ゼロ、4か月目以降に想定の7割」といった置き方をしておけば、実際の立ち上がりが遅れても説明が破綻しません。
効果の測り方が決まったところで、食品卸売業に固有の事情、つまり食品ロスへの影響をどう扱うかを確認します。

20代前半の日本人男性が発注画面の操作をしている場面
▽ 写真の出典元

食品業界での導入効果の目安は

事業系食品ロスの業種別内訳と食品卸売業の位置づけ

農林水産省の推計によると、2024年度の事業系食品ロス量は、食品製造業110万トン、食品卸売業9万トン、食品小売業48万トン、外食産業70万トンとなっています1。国民一人当たりに直すと、家庭系も含めた食品ロスは年間約37キログラムという水準です2(2024年度)。

この内訳から読み取れるのは、食品卸売業自身が抱えるロスは、事業系全体の中では小さいということです。稟議で「食品ロス削減」を導入理由の柱に据えると、自社での削減余地の小ささを指摘されて説明が止まります。
食品ロスは、導入理由の柱ではなく、副次的な効果として位置づけるのが実態に合っています。柱に置くのは、あくまで作業時間の削減と誤発注に伴う損失の減少です。

発注ミス・余剰在庫が食品ロスにつながる仕組み

それでも、発注の精度が食品ロスに関わるのは事実です。FAXや電話での受発注では、数量の読み違い、単位の取り違え(ケースとバラ)、納品日の聞き間違いが起きます。誤って多く入った商品は、日配品や賞味期限の短い商品ほど売り切れずに残り、期限切れで廃棄されます。
また、訂正の連絡が間に合わなければ、取引先側でも余分な在庫を抱えることになります。つまり、発注データの正確さは自社のロスだけでなく、川下の小売業のロスにも波及します。取引先が電子受発注への切替を求めてくる背景には、こうした事情があることも少なくありません。

電子受発注にすると、注文内容が発注元の入力どおりに自社の受注データへ入るため、読み取りと転記の段階で生じるずれがなくなります。単位の指定や発注可能な入数をシステム側で固定しておけば、ケースとバラの取り違えも起きにくくなります。締切時刻を画面上で明示できれば、締切後の注文をめぐるやりとりも減ります。
ただし、需要予測の誤りによる過剰在庫は、受発注の電子化だけでは解消しません。ここは分けて考える必要があります。

発注の精度向上で減らせるロスの範囲と限界

減らせるのは、入力・転記・伝達の誤りに由来するロスです。減らせないのは、需要が読めなかったことによる売れ残り、天候や催事による需要変動、取引先の販売計画の変更に伴う返品です。
この線引きをせずに「システムを入れればロスが減る」と書くと、導入後に期待との差が表面化します。稟議資料では、削減対象を「誤発注・訂正に起因する廃棄と返品」と明記し、その件数と金額を過去の記録から拾って示すのが、もっとも崩れにくい書き方です。

なお、現時点で参照できる公的資料には、受発注の電子化によって食品卸売業の食品ロスが何%減ったかを示す統計はありません。業界の平均的な削減率という目安を外部資料から借りることはできないため、削減効果は自社の実績から積み上げるしかない、という前提で計算に進みます。
逆に言えば、自社の記録さえあれば、外部の統計に頼らずに説明できます。返品伝票、訂正の記録、廃棄処理の記録という手元の資料を、月単位で件数と金額に集計するところから始めてください。ここまでで効果の見積もり方が決まったので、次は費用と並べて回収期間を出します。

食品製造業110万トン、食品卸売業9万トン、食品小売業48万トン、外食産業70万トンを並べた表
事業系食品ロス量の業種別内訳(2024年度)
50代後半の日本人男性が動作の検証をしている場面
▽ 写真の出典元

投資回収をどう見積もればよいか

月額費用ではなく数年単位の総額で比較する考え方

見積を比べるときは、月額だけを横に並べないでください。初期費用が高く月額が安いプランと、初期費用が低く月額が高いプランでは、どこかの時点で総額の大小が入れ替わります。どちらが安いかは、比較する期間を決めてはじめて確定します。
手順は、想定する利用期間を決める、初期費用に「月額×利用月数」を足して総額を出す、同じ利用期間で各社を並べる、の順です。利用期間は、社内の償却の考え方や取引先との契約期間に合わせて決めます。特段の事情がなければ、3年と5年の二通りで出しておくと、どちらの見方でも説明できます。

総額に入れ忘れやすいのが、初年度以外にかかる費用です。バージョンアップ費用、取引先を追加するたびの設定費用、問い合わせ対応が有償になる範囲、回線やサーバーの利用料が別立てになっている場合の費用が該当します。見積書に書かれていない項目こそ、期間分を足したときに差が出ます。
各社へ「利用開始から3年間に発生しうる費用を、定例のものも都度のものもすべて挙げてください」と同じ文面で問い合わせると、抜けを埋められます。回答が口頭だけで終わらないよう、書面かメールで受け取っておくと、稟議資料にそのまま添付できます。

削減できる人件費・ロス削減額の概算の立て方

削減額は二つに分けて積み上げます。一つは人件費で、「月間の削減時間×時間あたり人件費」です。時間あたり人件費は、担当者の給与だけでなく社会保険料などの事業主負担を含めた金額を使います。ここを給与額だけで計算すると、効果を実際より小さく見積もることになります。
もう一つは損失の減少で、「月間の誤発注・訂正件数×一件あたりの損失額」です。損失額には、返品と再配送の運賃、廃棄した商品の原価、値引き販売による差額を入れます。

どちらも、少なめの前提で計算しておくことをおすすめします。削減時間は測定値の七割程度に置く、誤発注の減少は全件ではなく入力・転記に起因する分だけを数える、といった置き方です。
稟議では、楽観的な数字を出して後から下振れするより、控えめな前提でも回収できることを示したほうが通ります。前提は資料に明記し、どの数字がどれだけ変わると結論が変わるのかも書き添えてください。たとえば「削減時間が想定の半分でも回収できるが、三分の一だと回収できない」と示せれば、判断の材料として十分です。
なお、人員を減らす計画がない場合、削減した時間はそのまま現金の節約にはなりません。その場合は「削減した時間を何に振り向けるか」を併記します。残業時間の削減なのか、新規取引先の開拓に充てるのかで、説明の性質が変わります。

自社の発注件数に当てはめた回収期間の試算手順

最後に、回収期間を出します。手順は次の五つです。
一つ目、直近1か月の受注件数と、そのうちFAX・電話・メールで受けた件数を数えます。二つ目、一件あたりの処理時間を実測し、月間の作業時間を出します。三つ目、電子化後に残る作業時間を見積もり、その差を削減時間とします。四つ目、削減時間と誤発注の減少を金額に直し、月あたりの削減額を出します。五つ目、初期費用を月あたりの削減額で割り、何か月で初期費用を回収できるかを見ます。

ここで先に確かめておくことがあります。月額費用は毎月かかり続けるため、月額費用が月あたりの削減額を上回っている場合は、いつまで経っても回収できません。まずこの大小関係を見て、上回っていた場合は、対象業務の範囲を広げて削減額を増やすか、課金の基準が自社の規模に合ったプランへ変えるかを検討します。
試算の結果は、一つの数字で出すより幅で出すほうが実務的です。削減時間を控えめに見た場合と、想定どおり出た場合の二通りで回収月数を出し、「最も悪い前提でも◯か月」という形にすると、決裁者が判断しやすくなります。
ここまでの計算ができれば、あとは各社の見積を同じ土俵に載せるだけです。

受注件数の集計から回収月数の算出までの五段階の流れ図
回収期間の試算手順

見積もりの何を比べればよいか

初期費用の内訳を確認する

見積書の初期費用が一行で「初期導入費用」とだけ書かれている場合は、内訳を出してもらいます。確認する項目は、初期設定、商品マスタ・取引先マスタの登録作業、既存データの移行、画面やメール文面の調整、操作説明や立ち上げ支援、テスト環境の用意です。

内訳が出ると、自社でやれば減らせる作業が見えます。たとえばマスタの整備は、社内で対応すれば費用を抑えられる一方、精度が低いまま移行すると稼働後に誤りが残り、結局は手戻りになります。どちらを取るかは、担当者の空き時間と稼働予定日から判断します。
あわせて、初期費用の支払時期も確認してください。契約時の一括なのか、稼働時なのか、検収後なのかで、その期の予算の組み方が変わります。

月額の課金軸(商品数・会員数・利用人数)を確認する

月額費用は、何を基準に増えるのかを確かめます。商品アイテム数か、取引先の会員数か、管理画面の利用人数か、受注件数か。公表されている料金例でも、SaaS型のプランで月額88,000円(税抜)5、機能範囲の広い製品でASP利用料金が月額260,000円4というように水準が異なりますが、比較の際に見るべきは金額そのものより、自社の数値がそのプランの上限に対してどこに位置するかです。
上限に対して余裕が一割しかないプランと、倍の余裕があるプランでは、同じ月額でも意味が違います。

あわせて、上限を超えたときの扱いを確認します。超過分が従量課金なのか、上位プランへの変更が必要なのか、変更時に再度初期費用がかかるのか。取引先を増やす計画があるなら、増えた後の月額も見積に入れてもらってください。
また、月額に何人分の問い合わせ窓口が含まれるか、追加の管理者アカウントが有償かどうかも、後から効いてくる項目です。運用が始まると、受注担当だけでなく物流担当や経理担当も画面を見たくなります。関わる部署を先に洗い出し、必要なアカウント数で見積を取り直してください。

クラウド利用料の対象期間・保守サポート範囲・解約条件を確認する

契約条件で確認するのは、次の四点です。利用料が何か月分を対象にしているか(年額一括か月額か、途中解約時に返金があるか)。保守サポートがどこまで無償か(障害対応のみか、操作の問い合わせや設定変更まで含むか、受付時間と回答までの目安時間はどうか)。最低契約期間と、解約を申し出る時期はいつまでか。解約時に、受注履歴や取引先マスタをどの形式で返してもらえるか。
特に最後のデータ返却は、将来ほかの仕組みへ移る可能性を考えると重要です。CSVなど自社で扱える形式で出せるかを、契約前に確認しておきます。

これらをそろえて各社に同じ質問を投げると、見積書の金額差が何に由来するかを自分の言葉で説明できるようになります。稟議資料には、3年と5年の総額、削減額の試算とその前提、回収月数、契約条件の比較表を載せれば、費用対効果の説明として必要な要素は揃います。
そのうえで、決裁者から「なぜこの1社なのか」と問われたときに備えて、落選した社の見積も残しておいてください。同じ条件で比べた記録があること自体が、選定の妥当性の裏づけになります。

発注システムの費用は、公表されている料金で初期費用100,000円+月額88,000円(税抜)5から月額260,000円4まで幅がありますが、判断の材料になるのは金額の大小ではありません。同じ期間・同じ範囲で総額をそろえ、自社で測った作業時間と誤発注の記録から出した削減額と並べた結果が答えになります。
デジタル化の効果として業務効率化を挙げた企業が81.0%3という調査結果は方向性の裏づけにはなりますが、自社で回収できるかどうかは、発注件数と作業時間という手元の数字が決めます。まず一日分の作業時間を実測するところから始めてください。

初期費用・月額費用・契約条件の三段階と、各段階で確認する項目
見積書で確認する段階と項目

見積書の金額差が機能の差なのか見積範囲の差なのかは、同じ要件を同じ文面で各社に渡さなければ判別できません。要件をどの粒度まで書き出せばよいか、料金プランがどの基準で組まれているかは、BtoB向けの受発注システムを実際に提供している側へ直接確かめるのが早い部分です。

取引先数・商品アイテム数・月間の受注件数を伝えたうえで、自社がどのプランの範囲に収まるか、上限を超えたときに費用がどう変わるか、基幹システムとの連携に何が必要で初期費用に含まれるのかを確認できます。無料相談で要件を整理する

見積書を受け取ったら先に確かめる項目

確認を飛ばしたときに、数年分の総額が動きやすい度合いで並べています。

  • 初期費用の内訳(初期設定・マスタ登録・データ移行・立ち上げ支援が含まれるか、別か)
  • 基幹システムとの連携が初期費用に含まれるか、別途見積か
  • 月額費用が何を基準に増えるか(商品アイテム数・取引先の会員数・利用人数・受注件数)と、その上限
  • 上限を超えたときの扱い(従量課金・上位プランへの変更・変更時の追加費用)
  • 保守サポートの範囲と受付時間、問い合わせが有償になる条件
  • 最低契約期間・解約の申し出時期・解約時のデータ返却形式
  • 利用開始から3年間に発生しうる、定例外の費用の一覧

取引先からの切替期限が先に決まっている場合は、総額の比較より先に、指定された接続方式に対応できるか、稼働予定日までにマスタ整備とテストが終わるかを確かめてください。

要点の整理

基準
比較する期間 3年と5年の総額でそろえて並べる
総額の出し方 初期費用+月額×利用月数に、期間中の定例外費用を足す
月額の見方 金額より、課金の基準と上限に対する自社の位置を見る
削減額の前提 実測した作業時間を控えめに置き、前提を資料に明記する
食品ロスの扱い 誤発注・訂正に起因する廃棄と返品に限って数え、主たる導入理由にはしない
回収の可否 初期費用の回収月数より先に、月あたりの削減額が月額費用を上回るかを確かめる
契約条件 利用料の対象期間・保守の範囲・最低契約期間・解約時のデータ返却形式
40代前半の日本人男性が小売店のバックヤードでの発注をしている場面
▽ 写真の出典元

投資回収の計算は、削減できる作業時間の見込みが現実的かどうかで結論が変わります。どの作業が電子化でなくなり、どの作業が形を変えて残るのかは、稼働後の運用まで踏まえた確認が必要です。 現在のFAX・電話での受発注の流れを示して、電子化後に残る作業と、初期費用に含まれる作業・別見積になる作業の線引きを確かめられます。そのうえで、3年と5年の総額を同じ条件で出してもらい、自社の削減額の試算と並べられます。

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よくある質問

見積は何社から取ればよいですか。

社数そのものより、同じ条件書で依頼できているかが重要です。連携したいデータの一覧、商品アイテム数、取引先の会員数、月間の受注件数、稼働希望時期を一枚にまとめ、同じ文面で渡してください。条件がそろっていれば2〜3社でも差の理由を説明できますが、条件がばらばらなら5社取っても比較になりません。

税抜と税込のどちらで比べるべきですか。

どちらでもかまいませんが、全社で統一してください。公表されている料金には税抜表示のものがあり5、表示がそろっていないと総額で数%の差が出ます。稟議資料では、税抜と税込のどちらで記載しているかを表の見出しに明記しておくと、後から確認されたときに手戻りがありません。

導入すればFAXや電話での受発注を完全にやめられますか。

すぐには難しいと考えてください。取引先ごとに切替の時期が異なるため、一定期間はFAXと電子受発注が併存します。並行期間中はむしろ担当者の手間が増えることもあるため、回収期間の試算では、効果が立ち上がるまでの期間を見込んでおくと説明が崩れません。切替の順序は、受注件数の多い取引先から進めると効果が早く出ます。

小さく始めて、後から対象を広げることはできますか。

できる場合が多いのですが、広げるときの費用を先に確認しておく必要があります。取引先を追加するたびに設定費用がかかるのか、上位プランへ変更する際に初期費用が再度発生するのか、この二点を契約前に書面で確かめてください。広げた後の月額も含めて3年・5年の総額を出し直すと、最初から広い範囲で契約したほうが安いという結論になることもあります。

稟議で食品ロス削減を導入理由にしてもよいですか。

副次的な効果として書く分には問題ありませんが、柱に据えるのは避けたほうが無難です。2024年度の食品卸売業の食品ロス量は9万トンで、食品製造業の110万トンや外食産業の70万トンに比べると小さく1、自社での削減余地の小ささを指摘されると説明が止まります。柱に置くのは作業時間の削減と、誤発注・訂正に起因する損失の減少です。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. 1 出典:農林水産省「事業系食品ロス量(2024年度推計値)を公表」(2026) 経路
  2. 2 出典:農林水産省「食品ロスとは(食品ロス量の推計値)」(2026) 経路
  3. 3 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果」(2025) 経路
  4. 4 出典:EC-Rider(ec-rider.net)「料金プラン・費用|BtoB EC受発注システム EC-Rider B2B II」(2026) 経路
  5. 5 出典:EC-Rider(ec-rider.net)「EC-Rider Primo|BtoB通販システム(受発注DX)のSaaS(ASP)」(2026) 経路

画像の出典元

  1. Vintage classroom with wooden desks, blackboard, and bookshe/Photo by Hasan şen on Pexels
  2. 20代前半の日本人男性が発注画面の操作をしている場面/画像:生成AI(自社)
  3. 50代後半の日本人男性が動作の検証をしている場面/画像:生成AI(自社)
  4. 40代前半の日本人男性が小売店のバックヤードでの発注をしている場面/画像:生成AI(自社)

Photos provided by Pexels

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

監修確認日:

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