◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 既存取引先向けBtoB通販サイトの集客は、新規流入を集めることではなく、電話・FAXで出されていた注文をサイトへ置き換える作業から始まる
- 市場規模514.4兆円・前年比10.6%増・EC化率43.1%(2024年)は取引金額ベースの割合であり、自社の取引先の利用率目標に読み替えない
- 発注の反復性、品目と型番の数、価格の決まり方、業界の受発注基盤の普及度という四つの観点で、移行しやすい取引先から着手する
- 単価・締め日・支払サイト・与信限度額を現行のまま引き継ぎ、限度額超過時の扱いを事前に決めておく
- 効果はID発行数ではなく、ログインした先・発注に至った先・継続している先を分けて数えて確認する
目次

既存取引先向けBtoB通販市場は今どれだけ伸びているか
既存取引先向けBtoB通販サイトの集客は、広告や検索で新しい訪問者を集める作業ではなく、すでに取引のある発注担当者が電話・FAXで出していた注文を、サイト上の発注へ置き換えてもらう作業から始まります。国内のBtoB-EC市場は2024年に514.4兆円、前年比10.6%増となり、EC化率は43.1%まで上がりました1。取引の電子化そのものは市場全体として進んでいますが、この数字は取引金額の合計から見た割合であり、自社の取引先一社ごとが明日から発注手段を変えるかどうかとは別の話です。
そのため最初に着手すべきなのは、サイトへの導線づくりより前に、現在の受注がどの手段で何件入っているかを数え、移行の負担が小さい取引先から順に並べることです。本記事の順序が当てはまるのは、受注の大半が既存取引先からの反復発注であること、品目数が多く電話・FAXでの品番伝達に手間がかかっていること、与信や掛売の条件が取引先ごとに異なることの三つが自社に当てはまる場合です。新規開拓を主目的とする場合や、受注が都度見積の個別案件中心である場合は、別の検討順序が必要になります。
既存取引先向けの利用促進を検討するとき、市場統計は「やるべきかどうか」を決める材料にはなりますが、「いつまでに何人の取引先が使うか」を決める材料にはなりません。統計が示すのは業界全体の取引額がどれだけ電子化されたかであり、自社の取引先が持っている発注習慣や社内の承認手順までは映していないためです。
それでも市場の規模と伸びを最初に確認する意味はあります。取引先側でも他の仕入先から電子発注を求められる機会が増えているなら、自社サイトへの移行依頼が「その会社だけの特殊な要求」ではなくなり、案内の通りやすさが変わるからです。まずは確認できた数値を、そのままの対象と時点で押さえます。
市場規模とEC化率の推移
国内のBtoB-EC市場規模は2024年時点で514.4兆円で、前年からの増加率は10.6%でした1。同じ2024年時点のEC化率は43.1%です1。ここでいうEC化率とは、企業間のすべての商取引金額のうち、電子商取引で行われた金額が占める割合を指します。
読み方で注意したいのは、これが金額ベースの割合であって、企業数や受注件数の割合ではない点です。金額の大きい継続取引ほど早くから専用回線やEDI(企業間で受発注データを直接やり取りする仕組み)に載せられてきた経緯を踏まえると、金額で見た電子化率は、受注件数や取引先数で見た電子化率より高く出る可能性があります。これは統計の内訳まで確認したうえでの断定ではなく、金額ベースという算出方法から導ける読み方にとどまります。
この三つの数値から社内向けに言えるのは、「企業間取引の電子化は一部の先進事例ではなく、金額で見れば四割を超える水準まで来ている」という位置づけです。逆に言えないのは、「だから自社の取引先の四割がサイトを使うはずだ」という推定です。市場全体の比率を自社の利用率目標にそのまま置き換えると、達成できない目標を立てたまま施策の良し悪しを判断することになります。
目標を置くなら、自社の受注データから作るほうが検証できます。直近一年の受注件数を電話・FAX・メール・EDI・その他に分け、件数と金額の両方で構成比を出せば、移行の余地がどこにどれだけあるかが具体的な件数で見えます。市場統計は、その社内数値を説明するときの背景として添える位置づけが妥当です。
業種によってBtoB-EC化率にどれくらいの差があるか
先に前提を明記します。業種別のBtoB-EC化率については、今回の調査で原典の該当箇所を確認できなかったため、本記事では業種ごとの具体的な数値を示しません。全体値である43.1%(2024年)は確認できていますが1、業種別の内訳はそれぞれ算出対象が異なるため、確認できていない数値を推定で書くことはしません。自社の業種の水準を根拠として使いたい場合は、経済産業省の電子商取引に関する市場調査の報告書で、該当業種の表を直接確認することをおすすめします。
そのうえで、業種差が生じる理由は自社の見通しを立てるときに役立ちます。差の背景を理解しておけば、公表値を見たときに「自社は業種平均より高く出るか低く出るか」を自分で補正して読めるようになるためです。
電子化が進みやすいかどうかを分けるのは、業種名そのものよりも、その業種で標準的な発注の形です。第一に、発注が反復的かどうかです。同じ品目を一定の周期で発注する取引ほど、画面上で前回注文を複製する操作が電話より速くなり、切り替えの利得が発注側に直接返ります。
第二に、品目と型番の数です。型番が長く似た品番が並ぶ商材では、電話口での読み上げやFAXの手書きが誤発注の原因になりやすく、画面で選ぶ方式に変える動機が生まれます。第三に、価格の決まり方です。取引先ごとに個別単価や数量別価格が設定されている商材では、その条件をサイト上で再現できなければ発注側は結局電話で単価を確認することになり、電子化が止まります。
第四に、業界内での受発注基盤の普及度です。すでに取引先の多くがEDIや業界共通の受発注システムを使っている領域では、自社サイトへの移行はゼロからの習慣変更ではなく、既存の電子発注の延長として案内できます。反対に、紙の注文書と押印が業務手順として定着している領域では、取引先の社内規程そのものを変えてもらう必要が生じ、担当者の意思だけでは動きません。
この四つの観点で自社を点検すると、業種平均の数値がなくても、自社が平均より進みやすい側にいるのか、慣行の壁が厚い側にいるのかの見当はつきます。そして重要なのは、同じ自社の中でも取引先によってこの四つの条件が違うことです。全取引先を一律に扱わず、条件の揃った先から着手する判断が、ここから導けます。

電話・FAX注文からの切り替えではどんな障壁が生じるか
ここで、性格の異なる二つの調査を並べて読んでおきます。一方は2024年時点で取引金額のうち43.1%が電子商取引だという市場全体の数字1、もう一方は2020年の受注業務に関するアンケートで、BtoB-ECの導入率が14%、前向きに検討中が約28%で、合わせて4割以上という個社レベルの回答です2。
この二つは、調査主体も対象の母集団も算出方法も時点も異なるため、差を引いて増減を語ったり、一方が他方の原因だと述べたりすることはできません。言えるのは、「取引金額で見た電子化の進み方」と「一社ごとに自社サイトを持っているかどうか」は別々に動く指標であり、前者が高いことは後者の高さを保証しない、という点です。市場全体では電子化が進んでいるのに、自社の周囲では電話・FAXの注文が残り続けるという状況は、この二つの指標の性質の違いから十分に起こり得ます。
発注担当者の慣れとシステム対応
切り替えで最初に直面するのは、発注する側の担当者にとって、現行の電話・FAXが「すでに十分速い」という事実です。長年同じ品目を発注してきた担当者にとって、受話器を取って品番と数量を伝える作業は数十秒で終わります。これに対し新しいサイトは、初回はIDの受け取り、ログイン、商品の検索、カート投入、発注内容の確認という手順を踏むため、最初の一回は確実に現行より遅くなります。
つまり移行は、便利さを説明すれば進むものではなく、初回の負担を誰がどう肩代わりするかの問題になります。初回の発注だけ担当営業が画面を一緒に操作する、よく使う品目をあらかじめお気に入りや発注履歴として登録した状態で引き渡す、といった初回限定の支援が、説明資料を増やすことより効きやすい理由がここにあります。
もう一つは、取引先側の社内事情です。発注担当者が使いたいと考えても、注文書をFAXで送る手順が社内の購買規程に組み込まれていたり、上長の押印を経る運用になっていたりすると、手段の変更は担当者一人では決められません。発注履歴を注文控えとして出力できるか、社内の承認に回せる形式で保存できるかといった点は、機能一覧上の項目ではなく、相手の業務手順に合うかどうかで評価されます。
また、取引先の担当者が交代する場面も見落とせません。前任者がサイト利用に慣れていても、後任が引き継ぎで電話発注に戻すことは起こり得ます。ID管理を個人単位にしているか組織単位にしているか、担当交代時に誰が再案内するかを決めておかないと、いったん上がった利用率が静かに下がります。
与信・掛売条件の扱い
既存取引先向けのサイトが一般消費者向けの通販と決定的に違うのは、支払いが前払いやカード決済ではなく、既存の掛売と締め日・支払サイトの上に乗る点です。ここで条件が変わると、発注担当者ではなく取引先の経理や購買責任者が止め役になります。サイト経由の注文だけ支払条件が違う、請求書が別に届く、といった状態は、社内の照合作業を増やすため敬遠される要因になります。
したがって設計上の第一の論点は、既存の取引条件をサイト上でどこまでそのまま再現できるかです。取引先別の単価、数量別の価格、締め日と支払サイト、与信限度額の管理を、現行の基幹システムで持っている値のまま参照できるのか、サイト側に二重に登録する必要があるのかで、運用の手間も移行の説得しやすさも変わります。
第二の論点は、与信限度額を超える注文が入ったときの扱いです。電話受注であれば担当者が気づいて保留にできますが、サイト上では注文がそのまま通ってしまう可能性があります。限度額に達した場合に注文を保留にして人が確認する運用にするのか、画面上で警告を出すのかは、事前に決めておかないと、移行後に与信管理が緩む形になりかねません。
第三の論点は、請求と入金消込です。注文の入口が二つになると、請求データの作成元も二系統になります。サイト側の注文データを基幹システムへ取り込む方式にするのか、基幹側を正として扱うのかを決めないまま運用を始めると、締め処理のたびに突合作業が発生します。これらは発注側から見えない部分ですが、決着させておかないと、利用促進が進むほど社内の負担が増える構造になります。
既存取引先にBtoB通販サイトを使ってもらうための移行支援策とは
以下に挙げる項目は、外部の一次資料で効果を検証した施策ではなく、前節で整理した障壁に一つずつ対応させた検討項目です。効果の大きさは取引先の構成や商材によって変わるため、実施すれば利用率が上がると約束できる性質のものではありません。自社で試すときは、対象と期間を決めて、実施した取引先と実施していない取引先で受注手段の構成比がどう動いたかを後から見比べられる形にしておくことをおすすめします。
個別ID発行
既存取引先向けのサイトでは、誰でも登録できる入口を作る必要がありません。取引のある企業と、その企業の中で発注を行う担当者に対して個別にIDを発行する方式であれば、ログインした時点で相手が特定されるため、取引先別の単価や掛売条件を画面に反映できます。会員登録フォームを作り込むより、既存の取引先マスタからIDを起こすほうが、実態に合いやすい設計です。
IDの単位をどう取るかは事前に決める必要があります。企業単位で一つのIDを共有する方式は配布が簡単ですが、誰が発注したかが追えず、担当者交代時に引き継ぎの記録も残りません。担当者単位で発行する方式は管理対象が増える代わりに、利用している人とそうでない人を区別して案内できるため、利用促進の打ち手を個別に設計できます。
発行の進め方も利用率に影響します。全取引先へ一斉にIDを郵送する方法は工数が一度で済みますが、届いた側は使う理由がないまま放置しやすくなります。前節の観点で選んだ取引先から順に、担当営業が訪問や連絡の機会に合わせて渡すほうが、初回利用まで一続きにつながります。
IDを渡した先については、発行した数ではなく、実際にログインした数と発注に至った数を分けて把握してください。発行済みなのにログインがない先、ログインはしたが発注に至らない先、発注まで進んだ先では、次に打つ手が異なります。
既存取引条件の据え置き
移行の説得で最も摩擦が少ないのは、取引先から見て条件が何も変わらない状態です。単価、数量別の価格、締め日、支払サイト、送料や最低発注数量の扱いを現行のまま引き継げば、発注担当者は「手段だけが変わる」と理解でき、社内で説明する内容も少なくて済みます。逆に、サイト経由だけ単価が違う、締め日が別扱いになるといった差があると、価格や条件の確認のために結局電話が必要になります。
ここで慎重に扱いたいのが、サイト利用を促すための価格差の設定です。サイト経由の注文に割引を付ける方法は移行の動機になり得ますが、既存の価格体系との整合や、割引を付けなかった取引先との関係にも影響します。実施するなら、期間と対象を限定し、終了後に元の条件へ戻す前提を最初に伝えておくほうが、後の交渉が複雑になりません。
据え置きを実現するには、条件の持ち方を確認する作業が先に必要です。取引先別の単価が基幹システムの中で一元管理されているのか、営業担当の手元の資料や過去の伝票にしか残っていないのかで、移行に必要な整備量が大きく変わります。サイトを開設してから条件の不整合が見つかると、発注を受けた後で単価を訂正する事態になり、信頼を損ねます。
そのため、対象を絞った小さな範囲から始める判断が現実的です。条件が単純で件数の多い取引先から載せ、条件が複雑な取引先は当面これまでの受注手段を残す、という分け方であれば、整備の負担を段階的に処理できます。
営業担当からの案内
既存取引先向けの利用促進では、案内の経路がすでに存在します。定期的に連絡を取っている営業担当が、サイトの存在と使い方を伝える最も自然な窓口です。案内文を一斉送信するだけでは、受け取った側にとって優先度の高い情報になりにくく、開封されないまま終わることも起こります。
営業担当に案内を託す場合に必要なのは、担当者ごとの説明のばらつきを減らすことです。どの取引先に何をいつ案内したかを記録する場所を決め、説明に使う資料を一種類に揃えておけば、後から利用率を比べたときに、案内の有無による違いなのか、取引先の性質による違いなのかを切り分けられます。
案内の内容も、機能の紹介より、相手の作業がどう変わるかに寄せるほうが伝わります。前回と同じ内容を履歴から複製して発注できる、品番の読み違いがなくなる、受付時間を気にせず発注できる、といった点は、発注担当者が自分の作業として理解できる変化です。一方で、社内の購買規程の変更が必要な相手には、担当者向けの説明とは別に、注文控えの出力や承認の扱いを示す資料が要ります。
営業側の懸念にも触れておく必要があります。サイトでの発注が増えると接点が減ると受け止められると、案内が進みません。電話でのやり取りが定型発注の処理から提案や在庫調整に移る位置づけを、社内で先に合意しておくほうが、現場の協力を得やすくなります。
既存取引先向けEC導入で利用促進に成功した事例はあるか
公開されている事例として、日東電工CSシステム株式会社の例があります。同社は各種工業用粘着テープやテープ貼り機器を中心に約3,800品種の製品の提案・販売を手掛けており、BtoB通販サイトの開設にあたっては、当初からNittoグループの商品が2万5,000品そろっていたことが紹介されています3。この情報はサイトを提供したベンダーが公開している導入事例であり、第三者による調査結果ではない点は割り引いて読む必要があります。
この一例から確実に言えるのは、既存取引先向けのサイトであっても、自社が日常的に扱う品種数を大きく上回る品揃えを最初から載せる設計があり得る、ということです。利用率が何%上がったといった効果の数値は本記事の材料にないため、成果の大きさについては述べません。
この事例を自社の判断に引き寄せるなら、着目点は品揃えの幅と発注の動機の関係です。取引先が普段電話で注文する品目だけを載せたサイトは、発注手段を置き換えるだけの存在になりますが、グループ会社や関連ブランドの品目まで含めて検索できる状態にすると、取引先が「何が買えるか」を自分で調べる場所になります。これは一例から導いた設計上の仮説であり、どの商材でも同じ効果が出ると保証するものではありません。
掲載品目を広げる判断には、在庫と納期の情報をどこまで正確に出せるかという制約が伴います。載せたが納期が読めない品目が並ぶと、発注担当者は結局電話で確認することになり、切り替えの効果が薄まります。品目を増やす場合は、在庫や納期の表示をどの範囲まで責任を持って出せるかを先に決めるほうが安全です。
事例を社内の説得材料に使うときは、扱いを明確にしてください。他社の事例は、同じ課題に対して取り得る設計の実例であって、自社で同じ成果が出る根拠ではありません。社内で判断するなら、前節までに挙げた自社の受注構成、取引条件の整備状況、営業側の体制を突き合わせ、最初に移行させる取引先を具体名で決めるところまで進めるほうが、検討を前に動かせます。
ここまでを一続きにすると、既存取引先向けBtoB通販サイトの集客は、市場の伸びを確認したうえで、自社の受注手段の内訳を数え、条件の揃った取引先から個別IDと既存条件の据え置きで移行させ、営業担当の案内で初回利用まで伴走し、利用状況を見て見直す流れになります。取引額ベースのEC化率が43.1%まで来ていること1と、自社の取引先が明日サイトを使うことは別の話であり、埋めるのは統計ではなく自社の段取りです。
検討が止まりやすいのは、与信・掛売の引き継ぎや基幹システムとの連携など、発注側から見えない部分の決めごとが残る局面です。ここは自社の業務実態と、採用する仕組みの制約の両方を照らし合わせる必要があるため、社内だけで結論を出すより、移行の設計を扱う相手と現行条件を持ち寄って整理するほうが早く片付きます。

市場全体で取引の電子化が進んでいることと、自社の取引先が実際にサイトを使うかどうかは別の問題であり、判断には自社の受注構成と取引条件を突き合わせた整理が必要になるためです。
現在の受注手段の内訳、扱う品目数、取引先ごとの単価や支払条件を持ち寄れば、どの取引先から移行に着手すると負担が小さいか、既存の取引条件をサイト上でどこまで再現できるかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
BtoB-EC導入状況の内訳(導入済み・前向きに検討中等)
2020年の受注業務に関するアンケートで、回答企業がBtoB-ECの導入についてどの段階にあるかという回答区分ごとに分けた内訳です。
- 導入済み:14%(2020年、BtoB-ECの導入率)
- 前向きに検討中:約28%(2020年)
- 導入済みと前向きに検討中の合計:4割以上(2020年)
導入の段階ごとの内訳を押さえたうえで、次は自社の取引先が電話・FAXから動けない理由を見ていきます。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初に着手すること | 広告や新規流入の設計より先に、直近一年の受注を電話・FAX・メール・EDI・その他に分け、件数と金額の構成比を出す |
| 移行の対象選び | 発注が反復的で、品目や型番が多く、価格条件が単純な取引先から着手する |
| 市場統計の使い方 | 2024年時点で市場規模514.4兆円・前年比10.6%増・EC化率43.1%は背景として示し、自社の利用率目標に読み替えない |
| 取引条件の扱い | 単価・締め日・支払サイト・与信限度額は現行のまま引き継ぎ、限度額超過時の運用を事前に決める |
| 案内の経路 | 既存の営業担当を窓口とし、案内の実施先と実施日を記録して後から比較できる形にする |
| 効果の確認 | ID発行数ではなく、ログインした先・発注に至った先・継続している先を分けて数える |
| 他社事例の扱い | ベンダー公開の導入事例は設計の実例として参照し、自社で同じ成果が出る根拠として使わない |

与信限度額を超えた注文の扱いや、注文データを基幹システムへどう戻すかといった発注側から見えない決めごとは、自社の業務手順と仕組みの制約の両方を照らさないと結論が出ないためです。 想定する取引先の件数と発注の頻度、締め処理の手順を示したうえで相談すれば、併用期間をどこまで置くか、利用状況をどの単位で集計すれば見直しにつながるかを具体的に確かめられます。
よくある質問
既存取引先が新しいサイトに慣れずFAX注文へ戻ってしまう場合はどう対処すべきか
まず、戻った取引先を一括りにせず、一度も発注まで進まなかった先と、数回使った後に戻った先を分けて把握してください。前者は初回の操作負担やIDの配布方法に原因があることが多く、担当営業が同席して一度発注を通すところまで支援する対応が現実的です。後者は、探していた品目が載っていない、在庫や納期が画面で分からない、単価が現行と違って見えるなど、使ってみて分かった不足が理由になっている可能性があります。<br>いずれの場合も、推測で画面を改修する前に、戻った取引先の担当者に直接理由を聞く手順を挟んでください。また、発注担当者が交代したタイミングで戻る場合もあるため、取引先側の担当者が変わったときに誰が再案内するかを決めておくと、同じ原因の再発を防げます。
電話・FAX注文は完全に廃止すべきか、当面併用すべきか
移行の初期段階では併用を前提に設計することをおすすめします。廃止を先に決めると、取引先側の社内規程や承認手順の都合でサイトを使えない先の注文を受けられなくなり、受注そのものを失う可能性があるためです。<br>ただし併用を無期限に続けると、発注側にサイトへ移る理由が生まれにくく、社内も二系統の受注処理を抱え続けることになります。現実的には、対象の取引先ごとに移行の時期を区切り、サイトでの発注が定着した先から順に電話・FAXでの受付を例外扱いに切り替える進め方が取りやすい形です。廃止を判断する場合も、緊急時や在庫確認を伴う相談の窓口は残しておくほうが、取引先の不安を減らせます。
既存の掛売・与信条件はECサイト上でどう引き継ぐべきか
原則として、取引先から見て条件が変わらない状態を目指してください。取引先別の単価、数量別の価格、締め日と支払サイト、与信限度額は、現行の基幹システムで管理している値を参照する形にできれば、二重管理と食い違いを避けられます。<br>着手前に確認したいのは、それらの条件がシステム上に揃っているか、営業担当の手元資料や過去の伝票にしか残っていないかという点です。後者が多い場合は、条件の整備そのものが移行作業の中心になります。あわせて、与信限度額を超える注文が入ったときに自動で通すのか、保留にして人が確認するのかを事前に決めておいてください。ここを決めないまま運用を始めると、利用が増えるほど与信管理が緩む形になります。
導入後に取引先の利用率が伸びない場合、何を見直すべきか
見直しは、発行したIDの数ではなく、段階ごとの数を分けて数えるところから始めてください。ID発行済みだがログインがない先、ログインはしたが発注に至らない先、発注まで進んだ先では、原因も打ち手も異なります。<br>ログインがない先は案内の経路と初回支援の問題である可能性が高く、営業担当からの個別案内が届いているかを確認します。ログイン後に止まる先は、品目が見つからない、価格や在庫が分からない、発注後の控えが社内の承認に使えないといった、画面や機能の不足が考えられます。発注まで進んだ後に頻度が落ちる先は、前回注文の複製など反復発注を短縮する導線が足りているかを確認してください。いずれも、取引先ごとの事情を聞き取ったうえで、原因の多い順から手を付けるほうが効率的です。
- 1 出典:株式会社OMOKAJI「令和6年度経済産業省「電子商取引に関する市場調査」をわかりやすく解説。中小企業EC事業者のためのEC成長戦略」(2025年) 経路
- 2 出典:株式会社アイル「受注業務の実態に関するアンケート調査(アラジンEC)」(2020年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(2020年) 経路
画像の出典元
- Close-up of an interracial handshake over a chessboard symbo/Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels
- Business office with diverse employees in gray suits working/Photo by cottonbro studio on Pexels
- Close-up of a professional handshake between businesswomen i/Photo by Kampus Production on Pexels
- Two businessmen shaking hands outside a modern office buildi/Photo by Vitaly Gariev on Pexels