◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 費用の目安は小規模カスタマイズが初期400〜800万円・月額7〜10万円、中規模カスタマイズが初期800〜1,500万円・月額10〜15万円
- 小規模と中規模を分ける取引先数や商品数の閾値は公開されておらず、要件を文書化した個別見積もりが前提になる
- 月額費用は費用項目の名前も含まれる範囲も製品ごとに異なるため、含まれる項目を揃えた表に直してから比較する
- 効果額は他社の削減率を借りず、自社の受注件数・処理時間・手戻り件数の実測から積み上げてレンジで示す
- 稟議では明確な費用対効果が最も重視されており、前提と仮定を明示したROI試算と現状維持を含む代替案の比較を添える
目次

卸売業のBtoB-EC受発注システム、費用相場はいくらか
卸売業のBtoB-EC受発注システムの費用は、カスタマイズの規模で帯が分かれます。
公開されているモデルケースでは、小規模カスタマイズが初期400〜800万円・月額7〜10万円、中規模カスタマイズが初期800〜1,500万円・月額10〜15万円です2。
区分の線引きは公開されておらず、要件を文書化した個別見積もりが出発点になります。
小規模カスタマイズの費用目安
BtoB-EC受発注システム(取引先がWeb画面から発注し、卸売側が受注データとして受け取る仕組み)の費用は、標準機能をそのまま使うか、自社の取引条件に合わせて作り込むかで大きく変わります。
アラジンECの料金ページでは、小規模カスタマイズのモデルケースとして初期400〜800万円、月額7〜10万円という金額が示されています2。
初期費用は要件定義から構築・設定・公開までに一度だけ発生する費用、月額費用は稼働後に継続して発生する利用料で、稟議では前者を投資、後者を運用経費として分けて説明する形になります。
この金額帯を見るときは、どの範囲までが含まれた金額なのかを見積書で確かめる必要があります。
初期費用に既存データの移行や社内向けの操作研修が含まれているか、公開後の軽微な修正が保守の範囲に入るかは製品や契約によって異なり、料金ページの数字だけでは判断できません。
稟議書に「初期400万円」と一行で書くのではなく、何が含まれた金額で、含まれない作業には別途費用が生じうるところまで書いておくと、差し戻しの材料を減らせます。
あわせて押さえたいのが、小規模という区分が取引先数や商品数の線引きで説明されているわけではない点です。
料金ページ本体には小規模と中規模を分ける具体的な基準の記載がなく、実際の金額は要件を提示したうえでの個別見積もりになります2。
社内で先に「うちは小規模で収まる」と決めて予算を確保すると、見積もり段階で金額が動いたときに稟議をやり直すことになります。
中規模カスタマイズの費用目安
中規模カスタマイズのモデルケースは、初期800〜1,500万円、月額10〜15万円と示されています2。
小規模の上限である800万円が中規模の下限と接しているため、二つの区分は断絶した別商品ではなく、要件が増えるほど連続的に金額が上がる構造として読み取れます。
どちらの区分に当てはまるかを当てにいくよりも、金額を押し上げる要件が自社にいくつあるかを先に洗い出すほうが、見積もりの予測には近づきます。
金額帯が上がると、社内での扱いも変わります。
決裁権限を金額で区切っている会社では、同じ導入案でも一定額を超えるかどうかで決裁者や必要な資料が変わり、上位の決裁者に上がるほど投資回収の年数や代替案との比較を求められます。
中規模の帯で見積もりが出てきた場合は、金額の妥当性だけでなく「なぜ小規模の範囲では要件を満たせないのか」を説明できるよう、削れなかった要件とその理由を記録しておくと役立ちます。
比較の単位を初期費用だけにしないことも大切です。
月額費用は契約が続くかぎり発生するため、初期費用に月額費用の想定契約年数分を足した総額で見ると、区分による差の見え方が変わります。
年数の置き方はシステムの想定利用年数や社内の償却基準に合わせ、稟議書には何年で計算したかを明記しておきます。
運用にかかる月額費用の内訳(ベースエンジン利用料・ASP利用料)
月額費用は、製品によって費用項目の名前も範囲も異なります。
EC-Riderの料金ページでは、ベースエンジン利用料がモデルケースで月額170,000円〜、ASP利用料金の例として月額260,000円が示されています1。
同じ「月額」という言葉でも、サーバーやインフラの利用分、保守サポート、バージョンアップの提供のどこまでが含まれるかによって、金額の意味は変わります。
そのため、複数社の見積もりを月額の数字だけで並べると判断を誤ります。
小規模カスタマイズの月額7〜10万円2と、ベースエンジン利用料の月額170,000円〜1は、それぞれ別の製品が別の前提で示したモデルケースであり、金額の大小がそのまま割高・割安を意味するわけではありません。
見積もりを受け取ったら、月額に含まれる項目を同じ粒度の表に書き直し、含まれていない費用(インフラ、監視、追加アカウント、取引量に応じた課金、連携オプション、障害時の対応範囲)を別行に並べてから比較します。
図に挙げたのは同じ料金ページに並ぶ二つの費用項目ですが、これは製品構成によって課金の起点が変わることを示しています1。
自社の稟議でも月額を一つの数字にまとめず、費用項目ごとに金額と含まれる範囲を書いた表を添えると、取引先の追加や取引量の増加で運用費がどう動くのかを説明しやすくなります。
費用が変わる要因そのものは、次に見る見積もりの前提づくりで整理できます。
小規模カスタマイズと中規模カスタマイズ、費用が変わる要因は何か
料金ページに明記された分岐基準の有無
費用が変わる要因を考えるうえで最初に確認しておきたいのは、公開情報の限界です。
アラジンECの料金ページには小規模・中規模という二つの区分とそれぞれの金額が示されていますが、どの要件でどちらになるかという線引きは記載されていません2。
EC-Riderの料金ページで示されているのもモデルケースとしての月額費用であり、個別の要件に応じた金額は問い合わせを前提としています1。
この状態のまま相見積もりを取ると、各社が想定した前提が違うまま金額だけが並ぶことになります。
有効なのは、自社の要件を先に文書化し、同じ資料を各社に渡して見積もりを依頼することです。
前提が揃っていれば、金額差がどの要件から生じているのかを追えるようになり、稟議でも「金額の低い案を選ばなかった理由」を具体的に説明できます。
見積もり時に確認すべきポイント
要件の文書化では、次の項目を数値と条件で書き出すと見積もりの精度が上がります。
・取引先数と、そのうちWeb発注への移行が見込める先の数
・登録する商品数と、商品情報の更新頻度・更新担当
・得意先別の単価や掛率、数量別価格、期間限定価格の有無
・基幹システムとの連携方式(ファイル連携かAPIか)と連携の頻度
・受注後の与信確認、掛売や締め請求などの支払条件の扱い
・既存の注文書・納品書・請求書の帳票を再現する必要があるか
・社内の承認フローや、取引先側での承認の要否
・公開後の保守範囲と、問い合わせ対応の窓口
これらを確認するときは、データがあることと機能が用意されていることを混同しないようにします。
たとえば基幹システムに得意先別の単価データが存在していても、ログインした取引先ごとに違う価格をEC画面へ表示するには、その表示機能と連携の設計が別に必要です。
受注の窓口を一本化することと、請求の単位を一つにまとめられることも別の話であり、掛売のような広く見られる商慣行であっても、取引先ごとに例外的な条件が残ることがあります。
確認の順番としては、標準機能で対応できる要件、設定で対応できる要件、開発が必要な要件の三つに仕分けてもらうと、金額の内訳が読めるようになります。
開発が必要と回答された要件については、それを外した場合の運用(当面は手作業で続ける、対象取引先を限定する)も併せて見積もってもらうと、費用を落とす選択肢を稟議に載せられます。
要件と金額の対応が見えたら、次はその費用に見合う効果をどう見積もるかです。
導入費用に見合う効果をどう見積もるか
電話・FAX受発注で起こりやすい課題
費用対効果を考える出発点は、いま受発注にかかっている手間を金額に置き換えることです。
電話やFAXで注文を受けている場合、受け取った内容を基幹システムへ転記する作業、品番や数量の読み取り、在庫や納期を確認しての折り返し連絡、営業時間外に届いた注文を翌営業日にまとめて処理する時間などが積み重なります。
一件あたりでは数分の作業でも、件数と担当者数を掛け合わせると年間では相応の金額になります。
ただし、どの程度削減できるかを他社の公開情報から借りてくるのは避けたほうが安全です。
受発注の作業量は取扱商品や取引先の発注の仕方、既存システムの作り込みによって差が大きく、一律の削減率を当てはめると稟議の場で前提を突かれます。
公開資料から示せるのは費用の相場までで、効果額は自社の実測から組み立てるという役割分担にしておくと、説明が崩れにくくなります。
自社データで費用対効果を試算する手順
試算は、次の流れで進めると稟議書に載せる数字までつながります。
最初の記録は一か月分から始めて構いませんが、月末や期末に受注が偏る事業では繁忙期と通常月の両方を取ります。
記録する項目は、受注件数、一件あたりの処理時間、受注手段の内訳、誤りや確認の折り返しが発生した件数の四つに絞ると、現場の負担を抑えつつ計算に使えます。
ここで得た時間に社内の人件費単価を掛け、月次の金額から年間の金額へ換算します。
次に、その年間コストのうちどこまでがWeb発注に置き換わるかを見積もります。
卸売業のBtoB-EC化率は2024年時点で40.3%と示されており3、取引の4割程度がEC化されている段階です。
これは業界全体の水準であって自社の取引先が同じ比率で移行することを示すものではありませんが、全取引先がすぐ切り替わる前提は置かず、移行が見込める取引先の比率を保守的に置いた場合と想定どおり進んだ場合の二通りで、効果額のレンジを作ります。
最後に、効果を何で確認するかを決めておきます。
Web経由の受注比率、電話・FAX受注の件数、受注処理にかかる時間、入力誤りによる手戻り件数のように、導入前に測った指標をそのまま導入後も測る形にしておくと、次年度の予算審議で実績を示せます。
測定の担当と確認時期を稟議書に書いておくことは、効果が想定に届かなかった場合の見直し条件を先に示すことにもなります。
稟議で費用対効果を説明するには何を示せばよいか
稟議承認で重視されるポイント
社内稟議で何が見られているのかについては、調査結果があります。
直近1年以内にBtoB商材導入の社内稟議へ関与した国内BtoB企業の勤務者を対象とした2026年の調査では、稟議が承認される際のポイントとして「明確な費用対効果」が1位で43.7%でした4。
製品の機能や知名度より先に、投じる費用に対して何がどれだけ返るのかが問われている、という読み方ができます。
費用そのものへの警戒感も残っています。
電子商取引の導入にあたっての課題として「費用の負担」を挙げた企業は31.9%でした3。
この二つを重ねると、稟議で必要なのは金額を小さく見せることではなく、金額と効果の対応関係を前提つきで示すことだと整理できます。
説明の順序は、現状の課題と現状かかっている金額、導入後に置き換わる範囲と効果額のレンジ、初期費用と月額費用の総額、投資回収の考え方、代替案との比較、想定されるリスクと対応、と並べると決裁者が確認したい順に読めます。
代替案には、現状のまま続ける案を必ず入れます。
現状維持にもコストが発生していることを同じ計算方法で示すと、比較の土俵が揃います。
ROI試算を使うときの注意点
根拠資料としてのROI試算(投じる費用に対して得られる効果の比率を見積もったもの)には、一定の効果が確認されています。
同じ調査では、実際にROI試算を根拠として使った人のうち33.7%が「非常に影響した」と回答し、根拠・データ15項目のなかで最も高い数字でした4。
ただしこれは試算を使った人に限った割合であり、試算を出せば承認されるという意味ではありません。
試算を作るときは、前提を数字と並べて書きます。
受注件数、処理時間、人件費単価、移行が見込める取引先の比率、契約年数のそれぞれについて、どの実測値とどの仮定を使ったかを明示し、仮定には幅を持たせます。
効果が小さく出る下限のケースでも総額を上回るのか、上回らないならどの条件が必要になるのかまで書いておくと、質疑で崩れにくくなります。
金額に換算しにくい効果は、無理に数値化せず別枠に書くほうが説明が通ります。
取引先が営業時間外に発注できる、注文履歴から再発注できるといった取引先側の利便は、換算の根拠が弱いまま効果額へ計上すると試算全体の信頼を下げます。
金額に換算した効果と定性的な効果を分けて並べ、どちらで判断してほしいのかを明確にします。
費用の相場は公開情報から押さえられますが、自社がどの帯に入るのか、その費用に見合うのかは、要件の文書化と現状コストの実測がなければ決まりません。
まずは受発注の実測と要件の整理に着手し、同じ前提で複数社から見積もりを取るところから進めます。

費用帯の目安は公開されていても、取引先数や得意先別の価格体系、基幹システムとの連携をどう扱うかで見積もりは動きます。要件をある程度まで整理した段階で受発注システムの提供元に相談すると、稟議に載せられる前提つきの金額が早く固まります。
現在の受発注の流れと連携したい基幹システムを伝え、標準機能で対応できる範囲、設定で対応できる範囲、開発が必要になる範囲の仕分けと、初期費用・月額費用の内訳を確認できます。無料相談で要件を整理する
稟議に載せる材料を揃える順序
順位は公表された調査に依ります4。
公表された調査に依る順序
- 受発注の件数・処理時間・手戻りの発生状況を実測して記録する
- 要件を文書化し、同じ条件で各社から初期費用と月額費用の見積もりを取る
- 初期費用に月額費用の想定契約年数分を足した総額を算出する
- Web発注に置き換わる範囲を保守的に見積もり、効果額のレンジを作る
- 効果の測定指標と確認時期、担当を決めて稟議書に併記する
すでにベンダー選定が進み見積もりが手元にある場合は二番目から着手し、実測は効果額の裏づけとして後から補います。
カスタマイズ規模別に、見積もりと稟議で確かめること
| 区分 | 初期費用の目安 | 月額費用の目安 | 公開ページでの位置づけ |
|---|---|---|---|
| 小規模カスタマイズ | 400〜800万円 | 7〜10万円 | モデルケースとして提示。該当要件の線引きは記載なし |
| 中規模カスタマイズ | 800〜1,500万円 | 10〜15万円 | モデルケースとして提示。実際の金額は個別見積もり |
小規模カスタマイズで見積もるとき、何を確かめるか
この帯に近づけるための要件の絞り方
初期400〜800万円・月額7〜10万円という帯に収まるかどうかは、公開情報からは判定できません2。
できるのは、金額を押し上げやすい要件を自分で仕分けておくことです。
実務的には、既存業務の完全な再現を初回から目指さず、標準機能で回せる部分と例外的な運用を分け、例外は発生頻度の低いものから外していく進め方が取りやすくなります。
ここで削ってはいけないのは、取引そのものが成り立たなくなる条件です。
得意先別の単価や掛率、掛売と締め請求の扱いのように、日々の取引の前提になっている条件を外すと、EC化した取引先の受注だけ別処理が必要になり、かえって工数が増えます。
削る候補は、特定の取引先だけに使っている帳票の書式や、年に数回しか発生しない例外処理のように、当面は手作業で吸収できる範囲に限ります。
拡張余地を契約前に確認する
小さく始める判断をした場合ほど、後から機能を足すときの費用の出方を先に確認しておく必要があります。
追加開発の見積もり方法、機能追加によって月額費用が変わる条件、契約期間と中途解約の扱い、登録した商品情報や取引先情報の持ち出し可否は、料金ページには書かれていないため見積書と契約書で確かめます。
バージョンアップの際にカスタマイズ部分の作り直しが必要になるかどうかも、運用費に影響する項目です。
段階的に広げる計画を稟議に書く場合は、第一段階の効果額だけで判断してもらうのか、第二段階まで含めた総額と効果で判断してもらうのかを決めておきます。
二段階目を前提にした効果額を初回の稟議で計上すると、実行時期や追加費用が確定していない分だけ前提が弱くなります。
初回は確定している範囲で回収を示し、拡張は別稟議とする形にすると、説明の筋が通しやすくなります。

中規模カスタマイズを選ぶ判断と、稟議での説明
初期費用が上がりやすい要件の典型
初期800〜1,500万円・月額10〜15万円という帯が提示される場合2、要件の数か複雑さのどちらかが増えていると考えられます。
金額が動きやすいのは、基幹システムとの連携の頻度や方式、複数拠点・複数の販売単位を一つの画面で扱う構成、得意先ごとに異なる価格や在庫の見せ方、既存帳票の再現、過去データの移行、社内と取引先の双方にまたがる承認フローといった要件です。
いずれも「データが存在すること」と「画面や連携で自動的に実現されること」が別である点は共通しています。
見積もりを読むときは、各要件が標準機能・設定・開発のどこに割り当てられているかを確認します。
開発に割り当てられた要件については、その工数の根拠と、要件を一段簡素にした場合の差額を聞いておくと、金額を動かす余地が見えます。
差額が分かっていれば、稟議で金額を問われたときに「この要件を外せばいくら下がるが、その場合は誰の作業が残る」という形で答えられます。
金額が上がるほど求められる説明
総額が上がると決裁層も上がり、投資回収の考え方と代替案の比較が必ず論点になります。
現状維持、要件を絞った案、提示された案の三つを同じ様式で並べ、初期費用、月額費用、想定年数での総額、見込む効果額のレンジ、残る手作業を一覧にしておくと、比較の議論が短く済みます。
費用対効果が承認ポイントの1位に挙がっている調査結果4を踏まえると、資料の冒頭に置くべきはこの比較表と前提条件です。
リスクの書き方も重要です。
取引先がWeb発注へ移行しない、既存システム側の改修が必要になる、移行作業が繁忙期と重なるといった事態は起こりうるため、それぞれに対して誰が何をするかを短く書いておきます。
リスクを書かない資料より、リスクと対応策が書かれた資料のほうが、金額の大きい案件では説明が通りやすくなります。
卸売業のBtoB-EC化の状況を、投資判断にどう織り込むか
卸売業のBtoB-EC市場規模とEC化率
投資判断の前提として、市場の動きも押さえておきます。
2024年の卸売業のBtoB-EC市場規模は128.8684兆円で、前年比6.3%増と示されています3。
同じ調査で卸売業のBtoB-EC化率は40.3%とされており3、取引の4割程度がEC化されている段階です。
この数字は、二通りの使い方ができます。
一つは、取引のデジタル化が進む方向にあることを稟議の背景として示す使い方で、もう一つは、まだ4割の段階である以上、全取引先の移行を前提にした効果試算は置かないという抑制の根拠としての使い方です。
背景として示す場合も、業界全体の統計であって自社の取引先が同じ比率で移行することを示すものではない点を、資料の脚注に添えておきます。
費用負担という課題にどう向き合うか
電子商取引の導入では費用の負担が課題として挙げられており、この点は前半でも触れたとおりです3。
費用を抑えて始める選択肢としては、対象取引先を絞って開始する、標準機能で回せる範囲から公開する、既存の電話・FAX受注と並行して運用する、といった進め方があります。
ただし並行運用の期間は受注経路が増え、在庫や納期の確認が二系統になるため、その期間の負担も試算に入れておく必要があります。
費用を抑える判断と、効果を出す判断は別々に評価します。
対象を絞れば初期費用は下がりますが、置き換わる受発注の件数も減るため、効果額も同じ方向に動きます。
どの範囲から始めれば費用と効果の差が最も説明しやすいかを、実測した件数の分布(どの取引先で受注件数が多いか)から決めると、稟議での根拠になります。

要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 初期費用の目安 | 小規模カスタマイズ400〜800万円、中規模カスタマイズ800〜1,500万円(2026年時点のモデルケース) |
| 月額費用の目安 | 小規模7〜10万円、中規模10〜15万円。別製品ではベースエンジン利用料月額170,000円〜、ASP利用料金月額260,000円のモデルケースもある |
| 区分の分かれ目 | 取引先数や商品数の閾値は公開されていない。要件を文書化した個別見積もりで確認する |
| 効果額の出し方 | 公開資料の削減率は使わず、自社の受注件数・処理時間・手戻り件数の実測から積み上げる |
| 稟議で示すもの | 前提と仮定を明示した費用対効果、初期と月額を合算した総額、現状維持を含む代替案の比較 |
稟議で問われるのは金額そのものより、前提が書かれた費用対効果と代替案の比較です。実測した受発注のデータを持ち込んで相談すると、要件を絞った案と提示案の差額まで含めて資料の材料を揃えられます。 月額費用に含まれる項目と別途費用になる作業、拡張したときの費用の出方、並行運用の期間に残る作業を確認し、総額と効果額のレンジを比較できる形に整理できます。
よくある質問
BtoB-EC受発注システムの運用保守費用はどれくらいかかりますか
公開されている料金では、月額費用の目安として小規模カスタマイズ7〜10万円、中規模カスタマイズ10〜15万円が示され2、別の製品ではベースエンジン利用料が月額170,000円〜、ASP利用料金が月額260,000円というモデルケースが示されています1。いずれもモデルケースであり、保守の範囲は契約ごとに異なります。障害時の対応、バージョンアップの提供、問い合わせ窓口、軽微な修正のどこまでが月額に含まれるかと、別途費用になる作業を見積書で確認してください。
稟議が一度否決された場合、再提出までにどのような準備をすればよいですか
まず否決の理由が、金額の大きさなのか、効果の根拠の弱さなのか、他施策との優先順位なのかを切り分けます。効果の根拠が理由であれば、受発注件数や処理時間の実測を取り直し、前提を明示した効果額のレンジと下限のケースを追加します。金額が理由であれば、要件を絞った案の再見積もりと、外した要件がどの作業として残るかを併記します。優先順位が理由であれば、他の投資案件と同じ様式で総額と効果を並べ、再提出時は前回からの変更点を冒頭にまとめます。
小規模カスタマイズから始めて、後から機能を拡張することはできますか
可能かどうかと、その際の費用の出方は製品や契約によって異なるため、公開されている料金ページからは判断できません。契約前に、追加開発の見積もり方法、機能追加によって月額費用が変わる条件、契約期間と中途解約の扱い、登録データの持ち出し可否、バージョンアップ時にカスタマイズ部分の作り直しが必要になるかを確認してください。段階的に広げる場合は、既存の受注手段と並行運用する期間の負担も試算に含めます。
ROI試算はどのようなデータを使って作成すればよいですか
自社で実測できるデータを土台にします。受注件数、一件あたりの処理時間、受注手段の内訳、手戻りの発生件数、人件費単価、Web発注へ移行が見込める取引先の比率、そして初期費用・月額費用と想定契約年数です。公開資料にある他社の削減率を流用すると前提を問われやすくなります。ROI試算は根拠として影響が大きいという調査結果がありますが4、前提となる数値と仮定が資料に書かれていることが条件です。
取引先数が少ない卸売業でも、BtoB-EC導入の費用対効果は見込めますか
取引先数が少なければ置き換わる作業量も小さくなるため、自動的に見合うとは言えません。判断は、実測した年間の受発注コストと、初期費用に月額費用の想定年数分を足した総額との比較で行います。取引先数が少なくても、多品目の注文や都度の納期確認で一件あたりの処理が重い場合は効果が出ることがあります。逆に定型の注文が少数であれば、要件を絞った案や現状維持の案と並べて比較したうえで判断してください。
- 1 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider(BtoB EC受発注システム)料金プラン・費用ページ」(2026年) 経路
- 2 出典:株式会社アイル「Web受発注システム・BtoB EC『アラジンEC』料金」(2026年) 経路
- 3 出典:経済産業省 商務情報政策局情報経済課「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
- 4 出典:株式会社ネオマーケティング「BtoB企業の社内稟議・承認プロセス実態調査2026」(2026年) 経路
画像の出典元
- Overhead view of a worker walking through a warehouse aisle/Photo by Tiger Lily on Pexels
- Business meeting with colleagues discussing data on a laptop/Photo by fauxels on Pexels
- A clean white desk setup with office supplies and stationery/Photo by https://kaboompics.com/ on Pexels
- Architect working on floor plans with ruler and pencil in an/Photo by Pilan Filmes on Pexels