◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 受注側の月額費用は置き換える業務の範囲でほぼ決まり、帳票発行に特化したクラウドの月2,480円〜から、カスタマイズ前提のASP型の月170,000円〜まで二桁の幅がある
- 費用負担に一般的な決まりはなく、誰がツールの契約者になるかで決まる。発注元から指定された場合でも、受注側名義の契約なら自社負担になる
- 見積の前に決めるのは予算ではなく、置き換える業務範囲、発注元からの指定の有無、利用人数と月あたりの件数の三つ
- 初期費用と支払い条件は月額と合わせて見る。公開されている低額プランは年払いを前提とした金額であり、比較するときは条件を揃える
- 複数の発注元がそれぞれ別のツールを指定すると、受注側だけで契約と運用が積み上がるため、費用より先に注文を一か所にまとめる運用を検討する
目次

受注側担当者が取引DXツールの費用を調べる経緯とこの記事でわかること
発注元から取引DXツールへの切り替えを打診された、あるいは自社のFAX・電話中心の受注をどうにかしたい。
どちらの入り口から調べ始めても、最初に引っかかるのは月額でいくらかかるのか、その費用は自社と発注元のどちらが持つのかという点だと思います。
この記事では、請求書・帳票の発行に特化したクラウドから受発注一体型のシステムまで、各社が公開している料金をもとに、受注側が見ておくべき費用の幅と負担の決まり方を整理します。
先に答えを書くと、月額は置き換える業務の範囲でほぼ決まり、帳票まわりだけなら月数千円台から、見積や受発注まで含めると月8万円台から数十万円規模まで開きます。
費用負担のほうに一般的な決まりはなく、誰がツールの契約者になるかで決まります。
「発注元からの要請」と「自社起点の効率化」では費用の見方が違う
受注側が取引DXツールの費用を調べ始める場面には、大きく二つの入り口があります。
一つは発注元から利用や切り替えを求められた場合、もう一つは自社の受注業務の手間を減らしたいと考えた場合です。
どちらの経路が多いかを示す資料は確認できていませんが、同じ「月額いくらか」という問いでも、この二つでは見るべき順番がかなり違います。
発注元からの要請が起点のとき、検討は「使うかどうか」ではなく「使うとしたら自社にいくら請求されるのか」から始まります。
自社の業務が楽になるかどうかは後回しになりがちで、取引を続けるための条件として費用を見ることになります。
この入り口で最初に確かめたいのは、金額そのものよりも誰が契約者になるのかという点です。
ここが変わると、そもそも自社に請求が立つかどうかが変わります。
自社起点のときは逆で、置き換えたい業務が先に決まっています。
請求書の郵送をやめたい、FAX注文書の転記をなくしたい、といった具合に対象がはっきりしていれば、そこから費用帯はかなり絞れます。
予算の上限も自社で決められるぶん、判断は「いくらまでなら出せるか」よりも「その金額で何が置き換わるか」に集中できます。
この記事で扱う料金の範囲と、数字の読み方
ここから示す金額は、各社が料金ページやサービス紹介ページで公開している内容です。
いずれも2026年時点の公開情報で、表記は税抜です。
個別見積やカスタマイズで変わる部分、将来の改定分は含まれていません。
もう一点、業界全体の相場を示す統計はこの記事では扱いません。
確認できたのは各社が自社製品について公開している料金であり、一社の金額を「受注側の相場」として読むと判断を誤ります。
ここでは複数社の公開料金を並べたうえで、金額の幅がどこから生まれているのかを見ていきます。
公開料金には「月額◯円〜」という表記が多い点も先に断っておきます。
この「〜」は下限であって、利用量やオプションによって上がります。
下限だけを見て予算を組むと、取引先が増えた段階で前提が崩れます。
取引DXツールの費用体系:月額固定・従量課金・初期費用の違い
月額固定型
月額固定型は、利用人数や事業規模のプラン区分ごとに金額が決まる方式です。
たとえばマネーフォワード クラウド請求書では、ひとり法人プランが月2,480円、スモールビジネスプランが月4,480円、ビジネスプランが月6,480円と公開されています。
いずれも年払いを選んだ場合の税抜金額です2。
受注側にとっての利点は、月々の支払いが読めることです。
受注の繁閑差が大きい業種でも請求額は動かないので、年間予算に載せやすくなります。
裏を返せば、受注が少ない月も同じ金額がかかります。
プランの区切りが人数や規模に紐づいている場合、担当者が増えた時点で一段上の金額に移る可能性があることも、見積もりの段階で織り込んでおきたいところです。
処理件数に応じた従量型
発行した帳票の通数や処理件数に応じて金額が動く方式です。
この方式では、公開ページに下限だけが示されることが少なくありません。
楽楽明細は月額25,000円〜(税抜)1、EC-Rider B2B IIは月額170,000円〜3と公開されています。
読み方としては、「〜」の上側が自社の利用量やオプションで決まるため、公開情報だけでは自社の月額が確定しないと考えるのが正確です。
見積を依頼する前に、月あたりの請求書発行件数、取引先数、受注件数を数えておくと、各社に同じ前提で聞けます。
この件数は情報システム部門よりも受注担当のほうが正確に出せる数字です。
注意したいのは、いまの実績だけで見積もってしまうことです。
取引先が増えたときや、繁忙期に件数が跳ねたときにいくらになるのかを、見積の段階で条件付きで確認しておくと、後から予算を組み直す手間が減ります。
初期費用の有無
初期費用は、導入時の設定やデータ移行にかかる一時費用です。
楽楽明細は初期費用100,000円(税抜)1、EC-Rider Primoのクイックビジネスプランは月88,000円に加えて初期費用100,000円(税抜)4と公開されています。
比較するときは、初期費用を契約予定期間で割って月額に足したうえで並べると実態に近づきます。
1年で見直す前提と数年使う前提では、同じ初期費用でも重みがまったく違うからです。
初期費用が明示されていないサービスでは、データ移行や帳票レイアウトの調整、取引先への案内といった作業がどこに計上されるのかを確認します。
無料に見えて別見積になっている、という食い違いはこの部分で起きます。
受注側の月額費用はどのくらいの幅に収まるのか
公開料金の下端と上端は二桁違う
この記事で確認した公開料金を端から端まで並べると、下端は年払いのひとり法人向けプランで月2,480円(税抜)2、上端側は特定のサーバー構成を前提としたモデルケースとして月260,000円3です。
同じ「取引DXツール」という言葉で呼ばれていても、二桁の開きがあります。
この幅は、値引きの有無や品質の差から生まれているわけではありません。
請求書を作って相手に届けるところだけを引き受けるサービスと、見積から受注の受付、在庫や基幹システムとの連携まで引き受けるサービスが、同じ呼び方をされているためです。
つまり金額の差は、そのまま代替する業務範囲の差です。
そのため「取引DXツールの相場はいくらか」という問いには、一つの数字では答えられません。
答えを出すには、自社が何を置き換えるのかを先に決める必要があります。
ここを決めずに複数社の金額だけを並べると、比較しているつもりで別々のものを見ていることになります。
受注側が自社の費用帯を絞る順番
絞り込みは、業務範囲、取引先の要件、自社の規模、という順に見ていくと迷いが減ります。
最初に決めるのは、いま手作業で困っているのが受注の受付なのか、帳票の発行なのか、その両方なのかという点です。
ここが決まった時点で、検討すべき費用帯はおおよそ定まります。
次に効いてくるのが、発注元から指定された様式や仕組みがあるかどうかです。
指定がある場合、選べる範囲そのものが狭まるため、安い選択肢が自社にとって現実的とは限らなくなります。
最後に、使う人数と月あたりの件数が、プラン区分や変動部分の金額に効いてきます。
この順番を逆にして予算から入ると、金額で選んだサービスが発注元の要件に合わず、結局入れ直すという形になりやすくなります。
予算は、業務範囲と要件が固まった最後の段階で効かせるほうが結果的に安く済みます。

費用負担は発注元と受注側のどちらが担うのか
発注元指定のシステムを使う場合
発注元から特定のツールを指定された場合でも、費用負担に共通のルールがあるわけではありません。
どちらが負担するのが一般的かを示す統計も、この記事の調査では確認できませんでした。
実務上は、誰がそのツールの契約者になっているかで決まると考えるのが素直です。
発注元が自社の受発注基盤を契約し、受注側には利用アカウントを配る形であれば、受注側に月額が請求されないこともあります。
一方、受注側が自分名義でアカウントを契約する形であれば、指定されたツールであっても費用は自社負担です。
同じ「発注元から指定された」という状況でも、結果は逆になります。
ですから最初に確かめるのは金額ではなく、契約者は誰か、受注側に課金が発生するか、取引先ごとに別契約が必要か、という三点です。
特に三点目は、複数の発注元とそれぞれ別のツールで取引している受注側に重くのしかかります。
1社あたりの月額が小さくても、指定されたぶんだけ契約と運用が積み上がるためです。
ログインする画面が増え、操作を覚える対象が増え、締め日ごとの確認先が増えます。
自社の判断で導入する場合
自社の判断で導入するなら、費用は当然すべて自社負担です。
判断は費用と効果の比較になりますが、効果のほうを先に金額で置くのは簡単ではありません。
まずは置き換えたい作業の件数と頻度を出すところから始めると、比較の土台ができます。
たとえば請求書の発行が月に数十通あり、印刷と封入と投函に月末の数日を使っているという状態なら、比べる相手は帳票発行に特化したクラウドの月額です。
受注そのものが電話とFAXで、聞き取りと転記に毎日時間を取られているという状態なら、比べる相手は受発注まで含む一体型の月額になります。
同じ「費用対効果」という言葉でも、見ている数字がまったく違います。
導入によって何時間減るかは、製品の機能だけでなく自社の運用の作り方でも変わります。
この記事で削減時間を断定することはできません。
自社で試算するなら、削減できそうな時間から逆算するよりも、対象となる件数と、その件数に今かけている工程の数から組み立てるほうが、後から検証できる数字になります。
無料・低コストで対応できる条件はあるか
低額で収まるのはどんな条件か
この記事で確認した公開料金の中に、受発注の全体を無料で賄えるプランはありませんでした。
ただし低額の帯は存在します。
年払いを選んだ場合の月2,480円、4,480円、6,480円というプラン区分2は、事業規模に応じて分かれたものです。
低額で収まる条件は、おおむね次のような場合です。
使う人数が少ないこと、業務の中心が帳票の発行であること、発注元から様式や仕組みの指定がないこと、基幹システムとの連携が不要であること。
裏返すと、このうちどれかが外れた時点で、費用は一段上の帯へ動きます。
支払い条件の見落としにも注意が必要です。
公開されている低額の金額は年払いを選んだ場合のものなので、複数のサービスを月額で比べるときは支払い方法の条件を揃えないと、比較になりません。
低コスト路線が続かなくなる場面
よくあるのは、取引が広がったときです。
取引先ごとに価格表が違う、受注のたびに納期を回答する必要がある、発注元がデータでの連携を求めてくる。
こうした要件が加わると、帳票中心のサービスでは受けきれず、受発注そのものを含む仕組みへ移る判断が出てきます。
もう一つは発注元の指定です。
受注側が費用を抑えたくても、発注元が使う仕組みに合わせる必要がある場面では、選択肢の幅そのものが狭まります。
この状況で効いてくるのは価格の交渉よりも、どこまでを発注元の仕組みに乗せ、どこからを自社側で持つのかという線引きです。
線引きが曖昧だと、発注元の画面で受けた注文を自社で手入力し直すという二重作業が残ります。
低コストから始めること自体は、何も悪い選択ではありません。
問題になるのは、後で乗り換える可能性を想定しないまま始めて、データの持ち出しや取引先への再案内で余計な手間が出る場合です。
始める段階で終わり方の条件まで見ておくと、この手戻りはかなり防げます。
導入前に確認しておきたい契約条件
契約期間・解約条件
年払いは月額換算の負担が下がる代わりに、期間の縛りが生まれます。
公開されている低額プランの金額が年払いを前提としている2ように、価格の前提に支払い条件が組み込まれていることは珍しくありません。
金額だけを抜き出して比べると、この前提が抜け落ちます。
確認したいのは、最低利用期間、途中解約時の精算、自動更新の時期と更新を止める場合の通知期限です。
とくに通知期限は、気づいたときには次の期間が始まっていた、という形で効いてきます。
導入時に社内の誰が更新時期を管理するのかまで決めておくと、担当者が替わったときに抜けません。
発注元の指定で使うシステムの場合、契約期間を自社の都合だけで決められないこともあります。
取引が続く限り使い続ける前提なら長期契約が不利とは限りませんが、取引の終了時期とツールの契約満了がずれる可能性は見ておいたほうが安全です。
初期費用とカスタマイズ費用の切り分け
初期費用として公開されている100,000円14のような金額は、標準的な導入作業に対するものです。
自社固有の要件を作り込む費用は別建てになるのが一般的で、そちらは要件が固まるまで金額が出ません。
この二つを一緒に考えていると、見積の総額が想定と食い違います。
見積を受け取ったら、初期費用に含まれる作業を一覧で出してもらうのが確実です。
帳票レイアウトの調整、既存データの移行、取引先への案内、操作説明。
どれが初期費用の中に入っていて、どれが別見積なのか。
ここが曖昧なまま進むと、稼働の直前に追加費用が出てきます。
カスタマイズを前提とするシステムでは、月額そのものも構成によって動きます。
月額基本料金が170,000円〜とされている一方で、特定のサーバー構成を前提としたモデルケースでは月260,000円という例が示されています3。
この差は構成の違いから生まれているので、複数社を比べるときは同じ要件をもとに見積を取らないと、金額の比較として成立しません。
受注側の月額費用は、置き換える業務の範囲でほぼ決まります。
そして費用の負担は、慣行ではなく誰が契約者になるかで決まります。
この二つを押さえたうえで、ここからは機能範囲ごとに公開料金を並べ、自社がどの帯に入るのかを見ていきます。

公開されている料金は下限や標準構成の金額であり、取引先数・受注件数・発注元から指定された条件を当てはめない限り、自社の月額は確定しません。ここは社内の資料だけでは埋まらない部分です。
いまの受注方法のどこまでを置き換えるのかを前提に、月額に含まれる範囲と初期費用の切り分け、件数が増えたときに動く部分を整理したうえで確かめられます。無料相談で要件を整理する
アナログ受注運用に残る不安
受注側がFAX・電話・紙を中心とした運用を続けた場合に残る不安を、受ける・確かめる・残すという受注業務の流れと、取引先との関係の面から整理しています。
- FAXや電話での受注をやめると取引に支障が出るのではないかという懸念。食品業の受注業務担当者を対象とした調査(n=80)では、FAX・電話受注を廃止すると取引に支障が出ると想定した回答が58.8%を占めています5
- 受注内容の聞き違いや転記の誤りが、出荷やその後の請求の段階になって表面化すること
- 受注の連絡が特定の時間帯に集中し、その時間は担当者が電話やFAXの前から離れられないこと
- 発注元ごとに注文書の様式が違い、受注側で読み替えてから社内の形式に入力し直していること
- 紙やFAXの控えを保管し、問い合わせのたびに過去分を探しに行く時間がかかること
発注元からツールを指定されている場合は、これらの不安は解消するかどうかという問いではなく、どこまでが発注元側の仕組みで解消され、どこからが自社の負担として残るのかという問いに変わります。
機能範囲別に見る受注側の月額費用の目安
| 型 | 置き換える業務の範囲 | 公開されている月額(税抜) | 初期費用 | 受注側が先に決めること |
|---|---|---|---|---|
| 請求書・帳票発行に特化したクラウド | 請求書・納品書の作成と送付、控えの保存 | 月2,480円〜(事業規模別プラン)/月25,000円〜 | 公開例では100,000円 | 月あたりの発行件数と、発注元の受け取り方 |
| 受発注一体型のBtoB-ECシステム(SaaS版) | 見積・受注の受付から帳票、基幹との連携まで | 月88,000円 | 100,000円 | 取引先の利用方法と連携させる範囲 |
| カスタマイズ前提のASP型システム | 上記に加えて自社要件に合わせた作り込み | 月170,000円〜(特定構成の例で260,000円) | 個別見積 | 要件の粒度と想定するサーバー構成 |
帳票の発行だけを切り出すと月額はどこまで下がるか
この型で消える作業と、残る作業
この型が引き受けるのは、請求書や納品書を作って相手に届け、控えを保存するところまでです。
印刷、封入、切手貼り、投函、そして届いていないという問い合わせへの再発行対応が減ります。
月末に数日かけていた発送作業が、発行と送信の操作に置き換わる形です。
一方で残るのは、受注そのものです。
電話で聞いた内容をメモして社内システムに入力する、FAXで届いた注文書を読み取る、在庫を確認して納期を折り返す。
この部分は帳票に特化したサービスでは変わりません。
月額が低いのは、引き受ける範囲が狭いからです。
安いサービスを入れたのに現場の手間が減らないという不満は、多くの場合この範囲の取り違えから生まれます。
そのため最初の判断は価格ではなく、自社が困っているのが出す側なのか受ける側なのか、という切り分けです。
ここが受ける側なら、この型の金額をいくら比べても解決しません。
同じ帳票領域でも、想定する規模で金額が分かれる
帳票まわりだけを見ても、公開料金は二つの帯に分かれます。
一つは事業規模のプラン区分で月2,480円から6,480円という帯(いずれも年払い・税抜)2、もう一つは月25,000円〜に初期費用100,000円が加わる帯(税抜)1です。
この差は、想定している発行量と、業務をどこまで仕組みとして作り込むかの違いと読むのが妥当です。
少人数の事業者が自分たちの道具として持つのか、発行業務そのものを社内の仕組みとして置き換えるのか。
後者は取引先への切り替え案内や受け取り方法の設計が伴うため、導入時の作業が発生し、初期費用として立ちます。
受注側として金額を見積もるなら、月あたりの発行件数と、発注元がどう受け取るかの二点を先に出しておきます。
発注元が紙での受領を求めている限り、印刷と郵送はどこかに残ります。
電子で受け取ってもらえる取引先がどれくらいあるのかを数えておくと、導入後にどれだけの作業が実際に消えるのかを現実的に見積もれます。
見積・受発注まで一体にしたときの費用帯
月88,000円+初期100,000円という公開例をどう読むか
受発注を一体で扱うSaaSの公開例として、クイックビジネスプランの月88,000円(税抜)と初期費用100,000円(税抜)があります4。
帳票に特化した低額帯と並べると一桁違いますが、そもそも比べている対象が違います。
一体型では、受注の受付そのものを取引先が画面から行う形に変えます。
電話とFAXで受けていた注文が、最初からデータとして入ってくる状態です。
置き換わるのは帳票ではなく、受注担当の一日の使い方そのものになります。
ですから、この金額が妥当かどうかを測る相手は、帳票クラウドの月額ではありません。
いま受注の受付にかけている工数と、聞き違いや転記の誤りをやり直している頻度です。
金額の大小だけで並べると、範囲の狭いほうが常に得に見えてしまいます。
受注側が見落としやすい前提
一体型でいちばん効いてくるのは、取引先が実際にその画面を使ってくれるかどうかです。
受注側がシステムを入れても、発注元が従来どおりFAXを送ってくれば、両方の運用が並行して残ります。
導入前に、どの取引先から切り替えるのか、切り替えない取引先の注文をどう処理するのかまで決めておく必要があります。
もう一点は、価格表の持ち方です。
企業間の受発注では取引先ごとに単価が違うことが多く、その管理をどこで行うかによって必要な機能が変わります。
基幹システム側に持つのか、受発注の仕組み側に持たせるのか。
ここが決まらないと、同じ一体型でも必要な構成が変わり、月額の前提も変わります。
SaaSのプランは、標準機能の範囲で使うことを前提にした価格です。
自社の運用を標準の形に寄せられるかどうかが、この費用帯に収まるか、もう一段上の作り込みが必要になるかの分かれ目になります。
寄せられない事情が本当に取引上必要なものなのか、社内の慣習にすぎないのかを、この段階で一度点検しておくと判断が軽くなります。
自社要件に合わせて作り込む場合の費用と変動要因
月170,000円〜と、構成例260,000円の差
カスタマイズを前提としたASP型の公開例では、月額基本料金が170,000円〜とされています3。
同じ料金ページには、特定のサーバー構成を前提としたモデルケースとして、ASP利用料金が月260,000円という例も示されています3。
ここで大事なのは、170,000円が最小で260,000円が最大という読み方をしないことです。
前者は下限として示された金額、後者は一つの構成を前提にした例です。
自社の構成がこの二つの間に必ず収まるという保証はありません。
この帯を検討することになるのは、取引先数や処理件数が多く、標準機能のままでは運用が回らない場合です。
逆に言えば、標準の形で回るのであれば一つ下の帯で足ります。
作り込みが必要かどうかは、機能の好みではなく、取引の実態が標準から外れているかどうかで判断します。
見積の前に決める項目が、そのまま費用を決める
カスタマイズ型は、いくらですかと聞いてもすぐに答えが返ってきません。
決まっていないのは価格ではなく、要件のほうだからです。
この構造を理解しておくと、返答が遅いのではなく、こちらが渡すべき情報がまだ足りていないのだと分かります。
受注側から出せる前提は意外に多くあります。
取引先の数、月間の受注件数、取引先ごとに分かれている価格表の数、基幹システムと連携させたい項目、繁忙期の同時利用の見込み。
これらが揃った時点で見積は具体化し、複数社の比較もようやく成立します。
前提を揃えずに相見積もりを取ると、安い見積は単に対象範囲が狭いだけ、ということが起こります。
比べるのは金額そのものではなく、その金額で自社のどの業務が動くようになるのかです。
同じ要件書を渡して返ってきた差であれば、その差は比較する意味のある差になります。

要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 帳票の発行だけを置き換える場合 | 公開例は年払いで月2,480円〜6,480円(税抜)2、または月25,000円〜+初期費用100,000円(税抜)1 |
| 見積・受注の受付まで一体化する場合 | 公開例は月88,000円(税抜)+初期費用100,000円(税抜)4 |
| 自社要件に合わせて作り込む場合 | 公開例は月170,000円〜、特定のサーバー構成のモデルケースで月260,000円3 |
| 費用負担の決まり方 | 慣行ではなく契約者が誰かで決まる。発注元の指定でも受注側名義なら自社負担 |
| 見積の前に決めること | 置き換える業務範囲、発注元からの指定の有無、利用人数と月あたりの件数 |
| 契約時に確認すること | 最低利用期間と更新の通知期限、初期費用に含まれる作業の範囲、解約時のデータの扱い |
帳票だけで足りるのか、受注の受付まで含める必要があるのかは、取引先ごとの様式や価格表の持ち方といった自社の事情で変わり、費用帯の選択もそこで分かれます。 自社の取引実態を前提に、どの費用帯で標準機能のまま運用できるのか、作り込みが必要になるとしたらどの要件が理由になるのかを、見積の前提を揃えた形で確認できます。
よくある質問
無料プランだけで受発注のDXは完結できますか
この記事で確認した公開料金の中には、受発注の全体を無料で賄えるプランはありませんでした。
ただし帳票の発行が中心で、使う人数が少なく、発注元から様式の指定もない場合は、年払いで月2,480円といった低額のプラン区分2で足りることがあります。
逆に、発注元ごとの様式対応、取引先別の価格表、基幹システムとの連携が絡むと、この帯では受けきれなくなります。
発注元から指定されたツールの費用を減額交渉できますか
交渉できるかどうかの前に、誰が契約者なのかを確認するのが先です。
発注元が契約者で受注側にアカウントが配られている形であれば、そもそも自社に月額が発生していない場合があります。
受注側が直接契約している場合、交渉の相手は二方向に分かれます。
ツールの提供元に対してはプラン区分や利用範囲の見直し、発注元に対してはどこまでをその仕組みで行うかという運用範囲の話です。
どちらが負担するのが一般的かを示す統計は確認できていないため、慣行を根拠に交渉するより、自社の利用実態と契約内容をもとに話すほうが具体的に進みます。
契約の途中でプランを変更(増員・機能追加)する場合、費用はどうなりますか
人数や事業規模でプランが分かれているサービスでは、上位プランへの移行は月額の差額として現れます。
公開されている区分でいえば、月2,480円、4,480円、6,480円といった段差2がそれにあたります。
ただし年払いの期間中に変更する場合、残期間をどう精算するかは契約条件によって異なります。
カスタマイズ前提のシステムでは、機能追加は月額の変更ではなく追加開発の費用として立つことが多いため、初回の見積の段階で変更時の扱いを確認しておくと後の判断が早くなります。
解約するとき、取引データを引き継ぐにはどうすればよいですか
確認するのは、データを取り出せる形式、取り出せる範囲、解約後に閲覧できる期間の三点です。
請求書のように保存が必要な帳票は、解約後も参照できる状態を自社側に残しておく必要があります。
注意したいのは、発注元が契約しているシステムを使っている場合です。
この場合、受注の記録が自社のものとして手元に残るとは限らないため、必要な情報を自社側でも保持する運用にしておくかどうかを、利用を始める段階で決めておくのが安全です。
複数の発注元からそれぞれ別のツールを指定されたら、費用はどうなりますか
受注側がそれぞれ契約者になる形であれば、契約は社数分だけ積み上がります。
1社あたりの月額が小さくても、合計すると無視できない金額になりますし、費用以上に負担になるのは運用のほうです。
ログインする画面が増え、締め日ごとに確認する先が増え、担当者が替わるたびに覚える対象が増えます。
この状況が続く見込みなら、指定された仕組みで受けた注文を自社側の一か所にまとめる運用を設計できるかどうかが、費用より先に検討すべき論点になります。
- 1 出典:株式会社ラクス「楽楽明細 料金プラン」(2026年) 経路
- 2 出典:株式会社マネーフォワード「マネーフォワード クラウド請求書 料金プラン」(2026年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B Ⅱ 料金プラン・費用ページ」(2026年) 経路
- 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider Primo サービス紹介ページ」(2026年) 経路
- 5 出典:株式会社ハンモック「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年) 経路
画像の出典元
- Spacious open office workspace with desks, chairs, and natur/Photo by Startup Stock Photos on Pexels
- Aerial shot of a mining site featuring conveyor belts and sa/Photo by Volker Braun on Pexels
- 40代前半の日本人男性が店舗カウンターでの受注をしている場面/画像:生成AI(自社)
- 30代前半の日本人女性が店舗カウンターでの受注をしている場面/画像:生成AI(自社)