◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 実際原価は前月末棚卸額+当月仕入額−当月末棚卸額で計算し、月末の棚卸を経なければ確定しないため、当月の発注の見直しには間に合わない
- 当日の納品伝票・レシートの合計を売上高で割れば当日の仕入原価率が出せ、商品ごとにレシピ原価を設定してあれば理論原価も日次で計算できる
- 仕入価格を歩留まり率で割った歩留まり単価を使うと、実際に使える量あたりの原価でレシピ原価と発注量を組み立てられる
- 仕入原価を仕入先別に記録し、目標との差を金額に直すと、発注量を絞るのか取引条件を見直すのかまで判断できる
- 方式の選択はレシピ原価表の有無と集計の手間で決まり、集計が翌日の発注に間に合わなくなったときがデータ連携を考える節目になる
目次

月末の実際原価では発注のやり直しに間に合わない理由
月末に数字を締めてみたら原価率が想定より高かった、けれどその月の発注はすでに全部終わっている。
食材発注を担当していると、この順番のずれに何度もぶつかります。
実際原価は月末の棚卸を経て初めて確定する計算だからです4。
ここで変えられるのは、原価を確定させるための計算と、発注の判断に使う計算を分けることです。
毎日受け取る納品伝票を合計する仕入原価か、レシピ原価に販売数を掛ける理論原価なら、その日のうちに原価率を出せます。
さらに仕入先別に記録しておけば、原価率が崩れたときに発注量を絞るのか、取引条件を見直すのかまで、月末を待たずに判断できます。
実際原価は棚卸をしないと確定しない
実際原価は、前月末の棚卸額に当月の仕入額を足し、当月末の棚卸額を引いて求めます4。
仕入れた金額をそのまま原価と見なさないのは、仕入れた日と使った日が一致しないからです。
月末に冷蔵庫や乾物棚へ残っている分は、まだ売上に変わっていない在庫であり、その月の原価からは外す必要があります。
つまり実際原価は、在庫がいくら残っているかを数えて初めて確定します。
毎月末に棚卸をしている店舗であれば、その作業を終えた時点で、その月に本当に消えた食材の金額が出ます4。
逆に言えば、棚卸をする前の段階では、どれだけ丁寧に伝票を眺めても実際原価は出てきません。
この計算は精度の面では最も信頼できます。
廃棄も歩留まりのロスも過剰な盛り付けも、すべて「在庫として残っていない」という形で結果に含まれるからです。
月次の締めで原価率を確定させる指標としては、これに代わるものはありません。
問題は精度ではなく、確定する時期が、発注の判断が必要な時期とずれていることです。
月末まで原価が分からないことの実務上の影響
たとえば月の前半に、いつもより単価の高いロットを何度か受け入れていたとします。
その影響が数字として見えるのは、棚卸を終えた月末以降です。
そのときには月の後半の発注もすでに済んでいて、納品も受け取り、食材は仕込みに回っています。
原価率が悪化していたと分かっても、打てる手はその月の中には残っていません。
できるのは翌月の発注で取り返すことだけで、しかもその結果が分かるのはさらに一か月後になります。
一回の判断に一か月かかる進み方では、単価や使用量の変化に追いつけません。
もう一つ、月次の数字は一か月分がまとまっているために、原因を切り分けにくいという面もあります。
原価率が数ポイント動いたとして、それが特定の食材の値上がりなのか、仕込みのロスなのか、売れ筋の構成が変わったせいなのかは、合計値からは読み取れません。
月末の数字は結果を教えてくれますが、どこを直すかまでは教えてくれないわけです。
そこで、実際原価とは別に、日々のデータだけで計算できる指標を用意します。
実際原価の解説でも、日次の管理には仕入原価率や理論原価率を使うことが挙げられています4。
どちらも月末を待たずに出せる数字で、発注担当者が毎日受け取っている書類がそのまま材料になります。
発注データから日次で原価を出す2つの方法:仕入原価と理論原価
仕入原価:納品伝票を毎日合計する方法
仕入原価は、その日に仕入れた食材の納品伝票やレシートの合計金額です2。
これを当日の売上高で割って100を掛けると、当日の仕入原価率になります2。
通常は一か月分をまとめて計算しますが、式は同じなので当日分にもそのまま当てはめられます2。
必要なのは、納品時に受け取る伝票を、その日のうちに集めることだけです。
朝の納品と夕方の追加分、現金で買い足した分のレシートまでを一つの束にして合計すれば、その日の仕入額が出ます。
レシピも原価表も要らないので、今日から始められるのがこの方法の利点です。
ただし、この数字は「その日に出ていった食材費」であって、「その日に使った食材費」ではありません。
週に一度まとめて発注する食材があれば、納品日の仕入原価率は跳ね上がり、翌日以降は下がります。
単日の数字だけで一喜一憂すると、実態と違う読み方をしてしまいます。
この振れをならすには、日々の数字を積み上げて月初からの累計でも見ておくと分かりやすくなります。
累計の仕入原価率は、日が進むほど月全体の傾向に近い動きを見せます。
当日の数字は納品の山谷を、累計の数字は月の傾向を示すものとして役割を分けて眺めると、扱いやすくなります。
理論原価:レシピ原価×販売数で算出する方法
理論原価は、個々の商品の原価に販売数を掛けて合計した「あるべき原価」です1。
これを売上高で割ると理論原価率になります1。
売れた数はレジの記録から分かるので、商品ごとの原価さえ決めてあれば、その日の営業が終わった時点で計算できます。
前提になるのは、商品ごとにレシピ原価が設定されていることです1。
一皿に使う食材の種類と量を書き出し、それぞれの単価を掛けて足す作業を、メニューの数だけ先に済ませておく必要があります。
ここが整っていない店舗では、理論原価は当日どころか月末でも出せません。
それでも手間をかける価値があるのは、理論原価が「この売上なら原価はいくらのはずか」という基準になるからです。
実際に消えた食材の金額と比べれば、その差がロスの大きさに当たります。
仕入原価だけを見ていると原価率が高い理由までは分かりませんが、あるべき原価という物差しがあると、高いのか想定どおりなのかを区別できます。
どちらも日次で計算できる点は同じで、違うのは準備の重さです。
伝票を集めるだけで始まる仕入原価に対し、理論原価はレシピ原価表という土台を先に作る必要があります。
そして、その土台の精度を左右するのが、次に触れる歩留まりの扱いです。
歩留まりを踏まえて仕入単価から使える原価を出す
歩留まり率の出し方
食材は、仕入れた重量のすべてが商品になるわけではありません。
外食産業から出る事業系の食品ロスは、2024年度の推計で70万トンとされています6。
これは国全体の廃棄量を示した統計で、個々の店舗の歩留まりの目安になる数字ではありませんが、仕入れた重量と使える重量が一致しないことは、どの店舗でも計算に織り込む必要があります。
歩留まり率は、仕入重量に対する下処理後の使用可能重量の割合です5。
1kgで250円の食材が、下処理を終えて800gになったとすれば、歩留まり率は80%になります5。
このとき実際に使える量あたりの原価は、仕入価格を歩留まり率で割って求め、250円÷0.8で312.5円、1gあたり0.39円という数字になります5。
ここで出た312.5円が歩留まり単価で、仕入単価との差が、捨てている部分の分だけ上乗せされた実質の原価です。
仕入単価のまま原価を計算していると、この上乗せ分がまるごと計算から抜け落ちます。
歩留まりの悪い食材ほど、伝票に書かれた単価と実際の原価の開きは大きくなります。
歩留まり率を出すには、下処理の前後で重量を量る手間が要ります5。
同じ食材でも、規格や産地、下処理の仕方、担当する人によって使える量は変わるので、数値は自店で測ったものを使います。
すべての食材を一度に測る必要はなく、使用量の多いものや単価の高いものから順に押さえていくと、原価への影響が大きい順に精度が上がります。
歩留まり単価を発注の判断に使う
歩留まり単価が出ると、レシピ原価の作り方が変わります。
一皿に使う量に掛けるのは仕入単価ではなく歩留まり単価で、こうして作った商品原価を積み上げたものが理論原価になります1。
レシピ原価表が実態から離れていれば理論原価も実態から離れるので、歩留まりの反映は、そのまま理論原価の精度に直結します。
もう一つの使い道が、発注量の決め方です。
仕込みで必要になるのは下処理後の使用可能重量なので、発注する重量は、必要量を歩留まり率で割った値になります。
歩留まり率を知らないまま必要量だけで発注していると、仕込みの途中で足りなくなるか、感覚で多めに頼んで在庫を増やすかのどちらかになりがちです。
仕入先や規格を比べるときにも、歩留まり単価は判断を変えます。
kg単価が安い未処理の状態と、単価は高いがすでに下処理された状態とでは、伝票の数字をそのまま比べても優劣は決まりません。
使える量あたりの原価に直して初めて、どちらが安いかを同じ物差しで比べられます。
実際の判断には下処理にかかる人手も関わりますが、少なくとも食材費の側は歩留まり単価で揃えられます。
原価率のブレが見えたら発注量と仕入先のどちらを見直すか
仕入先別に仕入原価を管理する
日次で原価率を追えるようになると、次に出てくるのは「上がっているのは分かったが、どこを直すのか」という問いです。
合計額だけを見ていると、原価率が上がった日に打てる手は「全体的に発注を減らす」という曖昧なものになりがちです。
ここで効いてくるのが、仕入原価を仕入先別に記録しておくことです3。
精肉、鮮魚、青果といった専門の業者ごとに伝票を分けて集計しておくと、目標に比べてどの業者の仕入額が多いかが一目で分かります3。
伝票はもともと業者ごとに届くので、集計の段階で分けておくだけで済みます。
合計を出すついでに内訳も残しておく、という程度の手間です。
内訳があると、原価率の動きを食材群の単位で読めます。
鮮魚だけが目標を超えていれば、その週の相場か、仕入量か、その業者との単価のどれかに当たりを付けられます。
全体が均等に上がっているなら、発注量ではなく売上の側、つまり客数や売れ筋の構成が動いた可能性を先に見ることになります。
原価率が目標を超えたときの見直し手順
原価率が目標を超えたとき、率のままでは次の発注で何をすればよいかが決まりません。
率を金額に直すと、調整する量が具体的になります3。
目標原価率と当日の仕入原価率の差に、その日の売上高を掛ければ、超過している金額が出ます。
超過額が出たら、仕入先別の内訳と突き合わせて、どの業者の発注をどれだけ絞ればその金額に届くかを考えます。
ここで初めて、発注量を減らすという判断が、具体的な数量に変わります。
ただし、絞ればよいとは限りません。
仕入量が普段と変わっていないのに金額が増えているなら、原因は量ではなく単価です。
その場合に発注量を減らすと、品切れを起こしたり、まとめ買いの条件を外して単価がさらに上がったりします。
量が増えたのか単価が上がったのかを、伝票の数量欄と単価欄で分けて確かめてから決めます。
単価が原因だと分かったときの打ち手は、その仕入先との取引条件の見直しです。
発注の頻度をまとめる、規格を変える、同じ食材を扱う別の業者の単価を聞く、といった選択肢があります。
日次の記録があると、いつからどの程度上がったのかを示しながら話ができるので、感覚のやり取りになりません。
値上げを受け入れる場合でも、どこまでなら許容できるのかを超過額として先に持っておけます。
月末の実際原価は結果を確定させるための数字で、日々の発注を動かすには別の指標が要ります。
納品伝票を合計する仕入原価、レシピ原価に販売数を掛ける理論原価、そして歩留まり単価による補正。
この三つを組み合わせると、原価率が崩れた日に、どの仕入先の発注をどれだけ調整するかまで決められます。
日次で原価率を出せるかどうかは、計算式より前に、納品伝票や発注のやり取りがどんな形で手元に残っているかで決まります。仕入先ごとに様式が違ったり、電話とメールが混ざっていたりすると、集計の前段で時間を取られます。
いま使っている発注の手段と仕入先の数を挙げていただければ、どのデータをそのまま日次集計に回せるのか、手作業のままだとどこで詰まるのかを整理したうえでお話しできます。無料相談で要件を整理する
実際原価・仕入原価・理論原価の違い
原価が確定するまでにかかる時間と、計算に必要なデータの種類で並べています。
- 実際原価:前月末棚卸額+当月仕入額−当月末棚卸額で計算し、月末の棚卸を終えて初めて確定します。実際に消えた食材の金額なので月次の締めには欠かせませんが、月中の発注判断には間に合いません4。
- 仕入原価:その日に仕入れた食材の納品伝票・レシートの合計です。仕入原価÷売上高×100で仕入原価率になり、当日分も同じ式で算出できます2。
- 理論原価:個々の商品原価に販売数を掛けて合計した「あるべき原価」で、売上高で割ると理論原価率になります。商品ごとにレシピ原価が設定してあることが前提です1。
- 三者の関係として、実際原価と理論原価の差はロスの大きさを、仕入原価と実際原価の差は在庫の増減を映します。日次で追うのは後ろの二つ、月末に答え合わせをするのが実際原価、という組み合わせになります。
レシピ原価表が手元にないうちは仕入原価で日々の動きを追い、レシピ原価を整えられた商品から理論原価に切り替えていくと、集めるデータを変えずに精度だけを上げられます。
日次原価の算出方法を2つの型で比べる
| 比べる点 | 仕入原価方式 | 理論原価方式 |
|---|---|---|
| 使うデータ | 当日の納品伝票・レシートの合計と売上高 | 商品ごとのレシピ原価と販売数 |
| 事前に必要な準備 | 伝票を毎日集め、仕入先別に分ける運用 | 歩留まりを踏まえたレシピ原価表の整備 |
| 分かること | その日に出ていった食材費と、売上高に対する比率 | その売上ならいくらのはずか、というあるべき原価 |
| 苦手なこと | 仕入日と使用日のずれを含み、ロスや廃棄を個別には示さない | レシピどおりに作られていない分は数字に表れない |
| 向いている場面 | レシピ原価表がまだない、まず日々の動きを掴みたい | レシピ原価を設定済みで、ロスの大きさまで把握したい |
伝票をその日に合計する:仕入原価方式が向く場面
レシピ原価表がなくても今日から始められる
仕入原価方式の一番の特徴は、始めるのに必要なものが、すでに手元にある書類だけだという点です。
その日に届いた納品伝票、買い足したレシート、レジの売上高。
この三つを揃えて割り算をすれば、当日の仕入原価率が出ます2。
運用として決めておきたいのは、誰がいつ合計するかです。
納品のたびに伝票を一か所へ入れておき、営業後にまとめて集計する形にすると、翌日の発注を出す前に前日の数字が手元にあります。
翌日の発注に間に合うかどうかが、この方式を続けられるかどうかの分かれ目になります。
集計するときは、合計だけでなく仕入先ごとの金額も残しておきます3。
後から内訳を作り直すのは骨が折れますが、最初から業者ごとの欄に記入していけば、追加の作業はほとんど発生しません。
粗さを承知で使うための見方
この方式の弱点は、仕入れた日と使った日がずれることと、ロスや廃棄が個別には表れないことです。
まとめ買いをした日の数字は跳ね、在庫を使い切っていく日の数字は下がります。
廃棄が出ても、それは仕入れた金額の中に紛れたままで、どこで失われたのかは示されません。
そのため、この方式で追うのは当日の値そのものよりも、数日から一か月の累計と、目標との差の動きです。
累計が目標を超えたままなら、どこかで構造的にずれています。
単日だけ跳ねているのであれば、納品のタイミングの問題として扱えます。
月末の棚卸を終えたら、確定した実際原価率と、その月の仕入原価率の累計を並べて比べます4。
在庫の水準が前月末と同じくらいなら二つは近い値になり、離れていれば在庫が増えたか減ったかを示しています。
この突き合わせを毎月続けると、日次の数字をどのくらい信用してよいかの感覚がつかめます。
あるべき原価と比べる:理論原価方式が向く場面
レシピ原価表の整備が条件になる
理論原価方式は、商品ごとの原価が決まっていることが出発点です1。
一品ずつ、使う食材と分量を書き出し、歩留まり単価を掛けて合計する作業が先に要ります5。
メニュー数が多い店舗では、ここで止まってしまうことが少なくありません。
全部を一度に作る必要はありません。
出数の多い商品から順に原価を決めていけば、売上の大半は早い段階でカバーできます。
残りを概算で置いたままでも、主力商品の原価が正しければ、理論原価は判断に使える水準になります。
ただし概算の部分がどれだけ残っているかは把握しておかないと、後で差を読むときに解釈を誤ります。
もう一つの負担が更新です。
仕入単価が動けばレシピ原価も変わり、季節で食材を入れ替えればその都度、原価を計算し直すことになります。
単価の変動が大きい食材を含む商品ほど原価表は古くなりやすいので、どの商品を優先して見直すかを決めておくと運用が続きます。
実際原価との差をロスとして読む
理論原価の価値は、あるべき原価という基準を持てることにあります1。
月末に実際原価が確定したら4、同じ期間の理論原価と並べます。
実際原価のほうが大きければ、その差が、売上に変わらないまま消えた食材の金額です。
差が出る理由はいくつかに分かれます。
仕込みで捨てている量が想定より多い、作り置きが売れずに廃棄になっている、盛り付けの量が一定でない、そもそもレシピ原価の設定が実態と合っていない。
どれに当たるかは数字だけでは決まりませんが、差の大きさが分かれば、どこまで時間をかけて追う価値があるかは判断できます。
日次で理論原価を出す場合、実際に消えた食材の金額は毎日は出ないので、比べる相手は仕入原価の累計になります。
両者が離れていく日が続いたら、在庫が増えているか、ロスが増えているかのどちらかです。
在庫の見た目に変化がなければ、ロスの側を先に疑うことになります。

複数店舗で日次原価を管理するときの考え方
店舗ごとに同じ方法を適用する
ここまでの計算は、いずれも一つの店舗で完結する構造をしています。
納品伝票の合計を売上高で割る計算も2、レシピ原価に販売数を掛ける計算も1、その店舗の伝票と売上データだけで成立します。
複数の店舗を見ている場合も、まずは店舗ごとに同じ式を当てはめ、店舗単位の日次原価率を作るところから始まります。
前提になるのは、納品伝票と売上データが店舗ごとに分かれて取れることです。
共同で仕入れて後から按分している食材や、別の拠点で下処理してから配る食材があるなら、どの店舗の原価に入れるかを先に決めておかないと、日次の数字が店舗間で比較できなくなります。
なお、これは単店舗で成り立つ計算方法を、店舗ごとに当てはめた考え方です。
本部がどこまで集計に関わるか、どの単位で数字を受け取るかは、店舗数や仕入れの仕組みによって変わります。
本部が店舗間の差を比較する際の留意点
店舗別の原価率を並べたとき、数字の高い店舗が管理の甘い店舗だとは限りません。
メニュー構成が違えば原価率の水準は違い、同じ食材を別の業者から仕入れていれば単価も違います。
比べるなら原価率そのものではなく、各店舗の目標との差を見るほうが、判断を誤りにくくなります。
理論原価を使う場合は、レシピ原価表を共通化しているかどうかで比較の意味が変わります。
共通の原価表であれば、店舗間の差はロスや提供量の差として読めます。
店舗ごとに原価表を作っていると、原価表の作り方の違いまで差に混ざってしまいます。
歩留まりも店舗ごとに変わります5。
同じ食材でも下処理をする人が違えば使える量は変わるので、共通の歩留まり率を当てた原価表は、店舗によって実態から離れます。
差が気になる店舗が出たら、下処理後の重量をその現場で測り直すところから確認するのが早道です。
手作業の集計と発注・在庫データの自動集計、どちらで回すか
手作業集計が向くケース
仕入原価方式は、人が伝票を合計するだけで成り立ちます2。
仕入先が数社、納品が1日に一度か二度、伝票の枚数も片手で数えられる範囲なら、営業後の数分で当日の数字が出ます。
この規模では、仕組みを入れる手間のほうが集計の手間を上回ります。
手作業には、数字に触れる回数が増えるという副産物もあります。
伝票を一枚ずつ見ていると、単価が変わった食材や、いつもより多い数量に気づきます。
合計値だけを受け取る運用よりも、発注の判断に結び付きやすい面があります。
データ連携に移る判断の目安
負担が増えるのは、伝票の枚数そのものより、分けて集計したい軸が増えたときです。
仕入先別まではなんとかなっても、食材別、店舗別、日別と軸が増えると、転記の量は一気に膨らみます。
集計が翌日の発注に間に合わなくなった時点で、日次で見る意味は薄れます。
発注や在庫のデータを電子で持っていれば、集計の部分は機械に任せられます。
ただし、データが残っていることと、そのデータから原価率を出す仕組みがあることは別です。
発注履歴が画面に残っていても、売上高と突き合わせて原価率を計算する機能が備わっているとは限らないので、何がどこまで自動で出るのかは、実際の画面で確かめてから決める必要があります。
判断の目安を整理すると、次のようになります。
どちらを選ぶ場合でも、計算の中身は変わりません。
納品伝票の合計を売上高で割る、レシピ原価に販売数を掛ける、という式は同じで、違うのは誰が集計するかだけです。
手作業で一度は自分で計算してみると、自動化した後に出てくる数字が何を表しているのかを読み違えずに済みます。
| 判断の目安 | 手作業で続けやすい | データ連携を検討したくなる |
|---|---|---|
| 仕入先の数 | 業者ごとに数通の伝票で、束ねれば合計できる | 業者が増え、伝票の様式もばらばらになっている |
| 発注の頻度 | 発注と納品が1日1回程度に収まる | 1日に複数回あり、担当者も複数にまたがる |
| 集計にかかる時間 | 営業後に短時間で終わり、翌日の発注前に間に合う | 集計が翌日以降にずれ、判断のタイミングを逃す |
| 見たい内訳 | 合計と仕入先別の内訳まで | 食材別や店舗別まで分けて見たい |
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 日次に使う指標 | 納品伝票を合計する仕入原価率か、レシピ原価×販売数で出す理論原価率 |
| 月次で確定させる指標 | 棚卸を経た実際原価率。日次の数字の答え合わせに使う |
| 仕入単価の扱い | 仕入価格を歩留まり率で割った歩留まり単価で、使える量あたりの原価に直す |
| 原価率が目標を超えたとき | 率を金額に直し、仕入先別の内訳から発注量か取引条件かを決める |
| 算出方式の選び方 | レシピ原価表の有無と、翌日の発注前に集計が終わるかどうか |
仕入先別の内訳や食材別の集計まで手を伸ばそうとすると、伝票を転記する作業そのものが翌日の発注に間に合わなくなります。ここから先は、原価計算の話というより、発注業務をどう残すかの話になります。 発注の件数と締めの時間、見たい内訳の細かさをうかがえば、いまの運用のどこを変えれば翌日の発注前に数字が揃うのか、具体的な段取りに落として検討できます。
よくある質問
仕入原価率だけを見ていれば実際原価率の管理は不要になるか
別の役割を持つ数字なので、置き換えにはなりません。
仕入原価はその日に仕入れた金額の合計で2、在庫が増えたか減ったかは含まれていません。
一方の実際原価は、前月末棚卸額+当月仕入額−当月末棚卸額という形で在庫の増減を織り込み、棚卸を経て確定します4。
日々の発注を動かすのは仕入原価率、月次の結果を確定させるのは実際原価率、という使い分けになります。
両方を並べて比べること自体にも意味があり、離れ具合から在庫が積み上がっているかどうかを読み取れます。
歩留まり率は食材が変わるたびに測り直す必要があるか
歩留まり率は仕入重量に対する使用可能重量の割合なので5、使用可能重量が変わる要因が生じたときに測り直すことになります。
具体的には、仕入先や規格を変えたとき、産地や季節で状態が変わったとき、下処理の手順や担当者が変わったときです。
逆に、同じ規格を同じ手順で扱っている間は、毎回測り直す必要はありません。
ただし仕入先の切り替えを検討する場面では、単価だけでは比較にならないので、候補それぞれの歩留まりを測ってから歩留まり単価で比べます。
仕入原価と理論原価の差が大きいときは何を疑うべきか
まず期間のずれを疑います。
仕入原価は仕入れた日に計上され、理論原価は売れた日に計上されるため、まとめ買いをした直後は差が開いて当然です。
数日から一か月の累計に直しても差が残るなら、次に見るのは在庫の増減で、棚卸の結果と突き合わせます。
在庫が増えていないのに仕入原価のほうが大きいなら、ロスや廃棄、盛り付け量のばらつきが候補です。
加えて、レシピ原価に歩留まりを反映していないと理論原価が低めに出るので5、原価表の作り方も確認の対象になります。
日次の仕入原価率はどのくらいの頻度で確認すればよいか
計算式の上では当日分も同じように算出できるため2、確認の間隔は発注と納品のサイクルに合わせて決めるのが現実的です。
毎日発注しているなら毎日、週に何回か発注日が決まっているなら、少なくとも発注日の前には前日までの数字を見ておく形になります。
ただし単日の値は納品のタイミングで大きく振れるので、当日の数字と月初からの累計を両方並べて見ると、判断を誤りにくくなります。
累計が目標から離れ始めたときが、内訳を確認する合図です。
- 1 出典:Asuka Food Consulting(戦う飲食店)「飲食店 原価の基礎知識 理論原価」
- 2 出典:Asuka Food Consulting(戦う飲食店)「飲食店 原価の基礎知識 仕入原価」
- 3 出典:Asuka Food Consulting(戦う飲食店)「飲食店 原価の基礎知識 仕入原価は業者別に管理する」
- 4 出典:Asuka Food Consulting(戦う飲食店)「飲食店 原価の基礎知識 実際原価」
- 5 出典:Asuka Food Consulting(戦う飲食店)「飲食店 歩留まりと個別商品原価」
- 6 出典:農林水産省「事業系食品ロス量(2024年度推計値)の公表」(2024年度)