◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 受注件数が伸びても出荷総量が横ばいなら、増えているのは注文1件につき1回発生する作業であり、自社の段取りだけの問題ではない
- 貨物1件あたりの貨物量は2010年調査の0.95トン/件から2021年調査の0.83トン/件へ下がり、0.1トン未満の貨物が件数に占める割合は75.1%から82.2%へ広がっている
- 自社の判断材料は、同じ定義でそろえた受注1件あたりの数量・金額の推移と、取引先別の1件あたり数量であり、小口化を判定する業界共通の閾値はない
- 対応は受注条件の見直し・出荷体制の効率化・受発注のシステム化の3方向で、取引先の合意が要るかどうかによって着手のしやすさが変わる
- 優先順位は効果の大きさではなく、払える費用と進める担い手という社内の制約、そして小口注文が特定先に集中しているかどうかで決まる
目次

受注は増えているのに負担ばかり重くなる—まず何が起きているかを掴む
受注伝票の枚数は去年より確実に増えているのに、残業と送料ばかり膨らみ、手元に残る利益はむしろ薄くなっている。
そんな数字を見ているなら、まず疑うべきは自社の段取りの悪さではなく、注文の入り方そのものの変化です。
1回あたりの数量が小さく、回数の多い注文へ移っていくと、注文1件につき1回発生する作業だけが件数分だけ積み上がります。
この動きは国内の物流全体で進んでおり、自社だけに起きた異常ではありません。
やるべきことは、自社の受注データで小口化がどこまで進んだかを測ったうえで、受注条件の見直し・出荷体制の効率化・受発注のシステム化のうち、費用と取引先への影響が小さいものから順に検討していくことです。
負担の正体をつかむ最初の手がかりは、受注件数と出荷した総量を並べて見ることです。
この二つが同じ方向に同じだけ伸びているなら、単純に仕事が増えたという話になります。
ところが実際には、件数だけが伸びて総量はほとんど動いていない、という並びになっていることがあります。
その場合、増えたのは「運ぶ物の量」ではなく「処理する回数」です。
たとえば、ある取引先から以前は月に2回、1回あたり50ケースの注文が入っていたとします。
それが同じ月間100ケースのまま、1回5ケースの注文が月20回に変わったとしたら、扱う物量は1ケースも増えていないのに、受注処理は2件から20件になります。
売上も粗利も横ばいで、伝票の枚数と出荷の回数だけが10倍になる——これが「件数は増えたのに利益が薄い」と感じるときに起きていることの骨格です。
ここで挙げた数字は仕組みを説明するための仮の設定ですが、どこで負担が生まれているかの見当はこれで付きます。
同じ向きの変化は、個社の感覚だけでなく全国規模の調査でも確認できます。
国土交通省の全国貨物純流動調査では、貨物1件あたりの貨物量(流動ロット)が2010年調査の0.95トン/件から、2021年調査では0.83トン/件へ下がっています1。
この調査は鉱業・製造業・卸売業および倉庫業から出荷される貨物を対象に、主として法人から法人へ出荷される大口貨物の流動を捉えたもので、令和3年10月に実施されました1。
つまり、法人間で動く貨物の土台の部分で、1回に動く量が小さくなる方向の変化が進んでいるということです。
この数字が教えてくれるのは、注文の小口化が自社の取引先だけの気まぐれではないという点です。
発注側にも在庫を抱えたくない、売れた分だけ補充したいという事情があり、その結果として発注が細かく分かれていきます。
ただし、この統計はあくまで全国の貨物の平均的な姿であって、自社の受注がどこまで小口化したかを示すものではありません。
方向は共通でも、進み方と痛み方は各社で違います。
なぜ多頻度小口化で処理工数・出荷コストが増えるのか
業界全体で進む小口・多頻度化のすう勢
1件あたりの平均量が下がったと聞くと、ごく一部の極端に小さい注文が平均を引き下げただけではないか、と考えたくなります。
ところが件数の構成を見ると、そうではないことが分かります。
同じ調査で、0.1トン未満の貨物が件数に占める割合は、2010年調査の75.1%から2021年調査では82.2%へ広がっています1。
もともと件数の4分の3を占めていた小さい貨物が、さらに8割超まで比率を高めたということです。
平均値が少し下がったという話ではなく、件数の分布そのものが小口側へ寄っている、と読むほうが実態に近くなります。
件数で数えたときの「ふつうの1件」が小さくなっている以上、件数を前提に組まれている作業や費用は、そのまま増える方向に働きます。
ただし、この割合は荷主側4産業からの出荷を捉えた数字であり、個人向けの配送や小規模な事業者間取引をそのまま表したものではありません1。
自社の1件あたりが何トンかをこの数字と比べても意味はありません。
ここから受け取るべきなのは水準ではなく、件数が増える側に構造が動いているという向きです。
一件あたりの作業が積み重なる構造
では、注文が1件入ると社内で何が起きるかを分解してみます。
メールやFAXで届いた注文内容を読んで確認し、基幹システムへ入力し、在庫を引き当て、ピッキングの指示を出し、現品を集めて梱包し、納品書と送り状を作り、配送を手配する。
出荷後には着荷の問い合わせに答え、月末には請求と入金を突き合わせます。
この流れを眺めると、ほとんどの工程が「注文1件につき1回」発生していることに気づきます。
注文の数量が半分になっても、確認は0回にはなりませんし、送り状も1枚は必要です。
一方で、トラックへ積み込む量や保管に使う面積は、運ぶ総量に比例します。
作業には件数に比例するものと物量に比例するものがあり、小口化が進むと前者だけが件数分だけ増えていく、というのが負担増の正体です。
費用の面でも同じことが起きます。
1件ごとに送り状を起こして発送する形をとっている限り、発送の手配とそれに伴う費用は件数に対して発生します。
同じ100ケースでも、2回に分けて送るのと20回に分けて送るのとでは、手配そのものの回数が10倍になります。
もっとも、どれだけ負担が増えるかを一律の倍率で示すことはできません。
受注をどこまで手入力しているか、ピッキングをどう組んでいるか、同じ取引先の注文をまとめられる仕組みがあるかによって、件数が2倍になったときの作業時間は大きく変わります。
だからこそ、業界の傾向を知った次にやることは、自社の受注データで実際の進み方を測ることになります。
自社の受注データで確認すべき指標
確認すべき受注データの項目
測る目的をはっきりさせておくと、見る数字が絞れます。
ここでやりたいのは「最近やけに忙しい」という感覚を、「件数はこれだけ増え、1件あたりはこれだけ小さくなった」という言い方に置き換えることです。
この置き換えができると、取引先に条件の相談をするときも、社内で投資の判断をするときも、話す材料が手元に残ります。
最初に見るのは、受注件数の増加率と出荷総量の増加率の差です。
件数が前年比で3割増えているのに出荷総量は数%しか増えていないなら、増えた仕事のほとんどは件数側で発生していることになります。
逆に両方が同じように伸びているなら、話は小口化ではなく単純な取扱量の増加で、必要な打ち手も変わります。
次に効くのが取引先別の1件あたり数量です。
全体平均が下がっていても、その内訳が「全取引先でじわじわ下がっている」のか「特定の数社だけが極端に細かく発注するようになった」のかで、取れる手が変わります。
前者なら社内の作業を組み直す話になりますが、後者なら相談する相手が特定できるからです。
この見分けは後半の優先順位の話にそのままつながります。
小さい注文の件数割合を出すときは、どこで線を引くかを自社で決める必要があります。
1件を処理するのにかかる梱包資材・発送費用・作業時間の合計と、その1件で得られる粗利を並べて、採算が合わなくなる水準を目安に置く考え方が取りやすいところです。
ここで注意したいのは、「1件あたり何ケース未満なら小口」という業界共通の基準値が定まっているわけではないという点です。
絶対的な合否ではなく、自社で決めた同じ線を毎月使い続けて、割合がどちらへ動いているかを見るための線と考えてください。
公開統計と自社データの違い
ここで、前半に出てきた0.83トン/件という数字と自社の平均を直接比べたくなるかもしれませんが、それは避けたほうが無難です。
あの調査は鉱業・製造業・卸売業・倉庫業からの出荷を対象に、主に法人間の大口貨物の流動を捉えたもので、捕捉している範囲が各社の受注実績とは違います1。
公開統計は「世の中がどちらへ動いているか」を確認するために使い、「自社がどの水準でどこが痛いか」は自社データで見る、と役割を分けるのが実務的です。
自社データを時系列で並べるときは、定義をそろえることが結果を左右します。
途中で取引先が増減していれば1件あたりの平均は動きますし、扱う商品構成が変われば同じ1件でも重さと金額が変わります。
ケース単位で数えていた期間とバラ単位で数えている期間が混ざれば、実態とは関係なく数字だけが跳ねます。
並べる前に、数える単位と対象の範囲を決めて、その定義で過去にさかのぼって集計し直すところまでが準備です。

こうして並べた数字は、小口化が進んでいるかどうかの判定だけでなく、次に何をどこまでやるかを決める土台になります。
件数がどれだけ増え、どの取引先で何が起きているかが見えて初めて、打ち手を比べる意味が出てきます。
受注件数増加・小口化への対応の選択肢とその違い
受注条件の見直し
注文の入り方そのものに手を入れる方法です。
具体的には、最小受注ロットや最低受注金額を決める、受注の締め時間を設けて一定時刻までの注文を同じ日の出荷にまとめる、一定額を下回る注文には別の配送条件を適用する、といった形になります。
件数の発生源に近いところを触るので、うまく通れば件数に比例する作業そのものが減ります。
一方で、この方法は自社だけでは決められません。
自社の営業担当が取引先の購買・発注担当に対して、発注の出し方を変えてほしいと伝える話になります。
相手が細かく発注しているのには、在庫を置く場所がない、売れた分だけ補充したい、必要になった時点で頼むほうが確実だといった相手側の理由があります。
その理由に触れずにロットだけを引き上げれば、相手は別の仕入先を探す方向へ動くこともあり得ます。
そこで実務上は、条件の変更と相手にとっての代替案を組で出すことになります。
締め時間を設けて「この時刻までにまとめて出してもらえれば翌日出荷」と伝える、まとめて発注する場合の条件を用意する、といった具合です。
このとき手元にあると強いのが、3節で出した取引先別の1件あたり数量と小口注文の件数割合です。
感覚ではなく、その取引先の注文が自社のどの作業をどれだけ発生させているかを示せると、話の前提を共有しやすくなります。
なお、こうした条件見直しがどれくらいの負担軽減につながるか、どの程度の取引先が応じるかを示す確かな統計は手元にありません。
効果の大きさは、自社の作業時間と費用を積み上げて試算し、相手との合意が取れるかを確かめながら判断する領域だと考えてください。
出荷体制の効率化
注文の入り方は変えずに、受けた後の処理を組み直す方法です。
同じ取引先から同じ日に入った複数の注文を1件にまとめて出荷する、出荷日を週の特定曜日へ寄せる、梱包資材のサイズを絞って迷いと手戻りをなくす、よく出る商品をピッキング動線の手前に置く、出荷拠点を集約する——このあたりが典型的な打ち手です。
この方法の要点は、取引先の合意が要るものと社内だけで完結するものが混ざっている点にあります。
出荷日を特定曜日へ寄せるのは相手の納期に関わるので相談が必要ですが、梱包資材の標準化や保管場所の並べ替えは自社の判断で始められます。
社内で完結する側は、着手の障壁が低く、やってみた結果を作業時間で測りやすいという利点があります。
ここでも、どの打ち手がどれだけ効くかを一般的な数値で示すことはできません。
倉庫の広さ、扱う商品の形、出荷の波の出方によって、同じ工夫でも結果は変わります。
変更の前後で同じ条件の日を選んで作業時間を記録し、自社の数字で比べる以外に確かめようがない、というのが正直なところです。
受発注・在庫のシステム化
3つ目は、注文の受け取り方をデータに変える方向です。
いま起きているのが、メール・FAX・電話で届いた注文を担当者が読み取り、基幹システムへ手で入力し、入力内容を伝票と読み合わせて確認する、という流れなら、そこが件数に比例して膨らんでいる部分です。
取引先からの注文をデータとして受け取れるようになると、この転記と読み合わせの一部が減ります。
ただし、全部が消えるわけではありません。
取引先が使っている品番と自社の品番の対応付けは誰かが決める必要がありますし、在庫が足りないときの数量調整や納期の相談、イレギュラーな依頼の判断は人が続けます。
「入力が減る」と「確認がなくなる」は別の話なので、どの作業が対象で何が残るかを分けて見積もるところが検討の中身になります。
効果の目安として参照できるものはあります。
中小企業庁の企業間データ連携実証事業(平成28年度補正)では12の実証プロジェクトが実施され、EDI(企業間で受発注などのデータをやり取りする仕組み)を導入した企業に業務効率化の効果が見られ、中小企業の平均削減率は51.4%でした3。
この数字は、実証に参加した企業の業務時間全般についての平均であり、多頻度小口受注の処理に絞って測ったものではありません3。
同じ率が自社で出るという意味ではなく、転記の多い業務をデータ連携に置き換えたときに、まとまった時間が動き得るという感触を得るための数字として扱うのが適切です。
費用の側も、公開されている例で形を確かめられます。
ある受発注サービスでは、受注側(売り手)の料金が2024年8月利用分から4段階の従量制(上限は月15万円)に変わり、月間受領金額が1,000万円の場合は月額使用料57,500円(税別)とされています4。
改定前は定額制30,000円、あるいは取引金額の1.2%という体系でした4。
これは特定の製品の受注側条件についての一例であり、受発注システム全般の相場を表すものではありません。
前の段落の削減率とこの料金は、別の事業と別の製品の数字です。
「この料金を払えばこの削減率が得られる」という関係ではないので、費用対効果としてつなげて計算しないでください。
それでも、この料金例から自社に持ち帰れる見方があります。
料金が取引金額に連動する体系であれば、件数が増えても取引金額が増えなければ費用は動かず、逆に金額が伸びれば費用も上がります。
自社でいま伸びているのが件数なのか金額なのかは3節で出しているはずなので、その伸び方と料金体系の形が噛み合うかどうかは、製品を絞る前の段階で確かめられます。
どの条件で優先順位が変わるか
デジタル化の課題として多い順(コスト・人材)
3つの方向が並んだとき、多くの会社が「どれが一番効くか」で選ぼうとします。
ところが実際に進み方を決めているのは、効果の大きさよりも社内の制約であることが少なくありません。
東京商工会議所が東京23区内の中小企業1,218社を対象に2024年10月から11月にかけて行った調査では、デジタルシフト・DXの課題として「コスト負担」を挙げた企業が31.9%で最も多く、次いで「旗振り役が務まるような人材がいない」が31.0%でした2。
この二つがほぼ並んでいることには意味があります。
費用の見通しが立っても、設定を決めて取引先と調整し、社内の入力ルールを変えていく担い手がいなければ、検討は途中で止まります。
逆に言えば、優先順位を決めるときに見るべきは「効果が大きい順」ではなく、「いま自社が払える費用と、動かせる人に収まる順」だということです。
取引先の合意が要らず社内で完結する出荷側の見直しが先に来ることが多いのは、この制約に素直に従った結果でもあります。
この調査はデジタルシフト・DX全般についての課題認識を複数回答で尋ねたもので、受発注のシステム化や多頻度小口受注への対応に限定したものではありません2。
自社に当てはめるときは、この順序をそのまま持ち込むのではなく、費用と担い手という二つの制約が同じくらいの重さで効く、という構図として受け取るのが妥当です。
受注構成別の優先順位の考え方
制約の次に効くのが、自社の受注構成です。
小口注文が数社に集中しているなら、条件見直しの相談は現実的な選択肢になります。
話す相手が特定でき、その取引先の注文が自社の作業をどれだけ発生させているかも数字で示せるからです。
一方、小口化が取引先全体に広く分散しているなら、同じ相談を取引先の数だけ繰り返すことになり、交渉そのものが新しい負担になります。
この場合は社内で完結する出荷体制の見直しと、注文の受け取り方を変える方向が先に来ます。
件数と金額の伸び方でも順序は変わります。
件数が伸びているのに金額が伸びていないなら、1件あたりの採算が崩れている状態です。
ここで月額費用を追加すると、採算の悪化に費用を重ねることになりかねないので、条件の見直しか、1件あたりの作業そのものを減らす工夫を先に試すことになります。
件数も金額も伸びているなら、費用をかけても回収の見通しを立てやすく、システム化の検討が現実味を帯びます。
ただし、金額が伸びている場合でも担い手の問題は残ります。
導入を決めた後に設定を詰め、取引先ごとの品番を対応付け、切り替え期間中は旧来の受け方と併走させる期間が生じます。
この期間を回せる人がいるかどうかは、費用の試算とは別に確かめておく必要があります。
まとめると、決める順序は三段構えになります。
まず3節の数字で小口化が誰の注文でどれだけ進んでいるかを確定させ、次に払える費用と動かせる人という社内の制約を確認し、最後に取引先へどこまで相談できるかを見る。
この順で見ていけば、同じ「負担が重い」という状態でも、自社が先に手を付けるべき場所は自然に絞り込まれます。
ここまでの見立てを踏まえると、残るのは自社の数字をどう集め、どこまでを社内で吸収するかという具体の判断です。

小口化の進み方は、受注データを同じ定義で並べ直さないと見えてきません。どこまでを社内の段取りで吸収し、どこから注文の受け取り方そのものを変えるかの線引きは、現場の受注の流れを知らないまま決めると、負担の出どころとずれた場所に手を付けることになります。
注文がどの経路で届き、出荷指示までに誰が何回入力しているかを共有いただければ、件数に比例して増えている作業がどこかを切り分け、条件の相談と社内の改善のどちらから着手する余地があるかを一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
デジタルシフト・DXの課題として挙げられた割合の多い順(東京23区内の中小企業1,218社・複数回答)
順位は公表された調査に依ります2。
公表された調査に依る順序
- コスト負担 31.9%
- 旗振り役が務まるような人材がいない 31.0%
- 従業員がITを使いこなせない 26.4%
- 業務内容に合ったデジタルツール・サービスが見つからない 22.4%
- 導入の効果が分からない、評価できない 22.1%
受発注のシステム化に絞った調査ではないため、自社で見るときは料金の可否だけでなく、設定や取引先との調整を担当できる人がいるか、導入後に何が減ったと言えるかを合わせて確認すると、検討を止める要因の順番が変わります。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 小口化の進み方 | 受注1件あたりの数量・金額を同じ定義で月次に並べ、受注件数の増加率と出荷総量の増加率の差を見る |
| 発生している場所 | 取引先別の1件あたり数量で、小口化が特定の数社に集中しているか全体に広がっているかを分ける |
| 条件見直しの現実性 | 相談する相手が特定でき、その取引先の注文が発生させている作業を数字で示せるか |
| 着手しやすさ | 取引先の合意が要らず社内で完結する見直しか、相手の納期に関わる変更かで順番を分ける |
| システム化の費用の見方 | 料金が取引金額連動か定額かと、自社で伸びているのが件数か金額かを突き合わせる |
| 社内の制約 | 払える費用の上限と、設定・調整・併走期間を担当できる人がいるかを同時に確認する |

システム化の検討まで進むと、減らせるのは転記のどの部分までで、取引先ごとの品番の対応付けや欠品時の調整がどれだけ人の手に残るのかが、費用に見合うかどうかの分かれ目になります。 現在の受注経路と取引先ごとの注文の出し方を持ち寄っていただければ、データで受け取れる部分と人が判断し続ける部分を切り分けて、費用をかける範囲をどこまでに絞るかを見極める材料になります。
よくある質問
多頻度小口受注が急に増えたとき、最初に見直すべき業務工程は何ですか
どの工程が「注文1件につき1回」発生しているかを洗い出すところから始めます。
注文内容の読み取りと入力、在庫の引き当て、ピッキング指示、梱包、納品書と送り状の作成、配送手配は、数量が小さくても1件ごとに発生します。
このうち、担当者が同じ内容を紙や画面から別の画面へ書き写している部分が、件数増加の影響を最も受けます。
まず1週間分の注文について、受け取りから出荷指示までに誰が何回入力し、何回読み合わせているかを数えると、どこに手を付ければ効くかが見えます。
受注条件を見直す(最小ロット設定など)と取引先との関係は悪化しませんか
一律にどうなるかを示せる調査は手元になく、相手の事情によって反応は変わります。
細かく発注している取引先には、在庫を置く場所がない、売れた分だけ補充したいといった理由があるため、その理由に触れずにロットだけを引き上げると取引の見直しにつながることもあります。
実務的には、締め時間を設けて一定時刻までの注文を同じ便にまとめてもらう、まとめて発注する場合の条件を用意するなど、相手にとっての代替案と組で提示する形を取ります。
その際、取引先別の1件あたり数量や小口注文の件数割合を手元に用意しておくと、感覚ではなく事実として相談の前提を共有できます。
受発注システム化の費用はどれくらいかかりますか
製品と料金体系によって幅があり、共通の相場として示せる数字はありません。
公開されている一例では、ある受発注サービスの受注側(売り手)料金が2024年8月利用分から4段階の従量制となり、月間受領金額1,000万円の場合で月額57,500円(税別)とされています4。
これは特定製品の受注側条件に限った例なので、自社の見積もりの代わりにはなりません。
見るべきは金額そのものより体系の形で、取引金額に連動するのか定額なのかによって、件数が伸びたときと金額が伸びたときの負担のされ方が変わります。
加えて、料金表に現れない準備——取引先ごとの品番の対応付けや、切り替え期間に旧来の受け方と併走させる手間——にも人の時間がかかる点は見込んでおいてください。
小口化の指標に使う受注データは何年分そろえればよいですか
何年分という共通の基準は定まっていません。
判断の目安としては、まず季節変動をまたぐ長さが要ります。
繁忙期と閑散期では1件あたりの数量が動くため、数か月分だけを比べると季節の影響を小口化と読み違えます。
月次で1年以上をそろえ、可能なら前年の同じ月と並べて見るところが実務的な出発点です。
より長い変化を見たい場合は、全国の統計が2010年と2021年という離れた時点の比較で傾向を示していることからも分かるとおり、数年単位で並べないと動きが見えにくくなります1。
ただし、期間を延ばすほど取引先や商品構成の入れ替わりが混ざるので、同じ定義で集計し直せる範囲にとどめるのが現実的です。
- 1 出典:国土交通省「全国貨物純流動調査(物流センサス)第11回」(2023年)
- 2 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2025年)
- 3 出典:中小企業庁「企業間データ連携実証事業(次世代企業間データ連携調査事業/平成28年度補正)」(2016年度)
- 4 出典:株式会社インフォマート「『BtoBプラットフォーム 受発注』料金改定のお知らせ」(2024年)