◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 支払い遅延に気づいた時点でまず確定させるのは相手の評判ではなく、売掛金・出荷済未請求・受注残・手形の期日前残高を合わせた自社の与信残高である
- 得意先リスクは期間・割合・損失の3要素で捉えると、「危なそう」という印象が手当ての優先順位を決められる金額の比較に変わる
- 決算情報が乏しい相手には、財務項目を絞ったスコアリングなど開示量に合わせた手法へ切り替え、情報が少ないこと自体を危険信号と読み替えない
- 与信限度額は相手の規模だけを基準にすると過大になりうるため、自社が吸収できる損失額と、枠に当てる残高の範囲をあわせて決める
- 受領日から60日という支払期日の上限は下請取引に適用される規律であり、対象外の取引には及ばない。残る貸倒れは取引信用保険が選択肢になる
目次

得意先の支払い遅延・与信判断に迷ったら最初に何を確認すべきか
先月まで期日どおりに入金していた得意先の振込が、今月は動いていない。
あるいは、これまでの取引先より一桁大きい発注をくれる新規の会社と、どこまで掛けで取引してよいか決めきれない。
どちらの場面でも自分の側で動かせるのは、相手の資金繰りではなく、自社が信用をどう渡すかという条件のほうです。
得意先リスクは「どれくらいの期間の中で」「どのくらいの割合で起こって」「どれくらいの損失を出すのか」という信用リスクの物差しに置き換えると、印象の話が金額の話になります1。
そのうえで、決算情報が乏しい相手には開示量に合わせた審査手法を使い、限度額は自社が吸収できる損失から逆算し、支払条件は法令の枠が効く取引かどうかを見分けて残りを保険で補い、取引開始後は重要な相手ほど短い間隔で見直していく——この順で判断していきます。
「遅れた」という一件を、遅れ方に分解する
得意先からの入金が期日に立たないと分かると、経理から営業へ連絡が飛び、営業が先方に電話を入れる、という流れになることが多いはずです。
そこで「今月は締めの処理が立て込んでいて、来週には振り込みます」と言われたとき、その言葉をそのまま受け取ってよいかどうかは、電話の内容だけでは決まりません。
判断を分けるのは、その一件が過去の入金の並びの中でどこに位置しているか、という情報のほうです。
同じ一週間の遅れでも、この一年で初めてなのか、三か月続けて起きているのかで意味は変わります。
金額の小さい請求は期日どおりに入っていて、大口の請求だけが遅れているのであれば、事務処理の問題では説明しにくくなります。
全額未入金ではなく一部だけが入っている、支払日の変更を先方から申し入れてきた、手形での支払いに切り替えたいと言われた——こうした動きが同じ時期に重なっているかどうかも、入金消込の履歴と取引条件の変更記録を並べれば見えてきます。
ここまでは、外部に何も問い合わせずに自社のデータだけでできます。
先に信用調査を依頼したくなる場面ですが、報告書を受け取ったときに自社の債権がどうなっているかを把握していなければ、評点を見ても次の行動は決まりません。
与信とは、相手に何を渡している状態か
帝国データバンクは、与信を「商品の代金を回収するまで取引先に信用を与えること」、信用リスクを「取引先が倒産して売上債権の全額が回収できなくなり損失を出すこと」と説明しています1。
これは掛け売り、つまり代金後払いの法人間取引を前提にした定義です。
前金でしか売らない商売であればそもそも信用を渡していないので、この話は成り立ちません。
この定義を当てはめると、支払いの遅れそのものは損失ではない、ということが見えてきます。
遅れているあいだも、自社は商品を渡し終えていて代金は相手の手元にある——渡した信用が回収されないまま積み上がっている状態です。
問題は遅延という事象ではなく、その信用が最終的に戻ってこない可能性がどれだけ高まったか、そしてその時点でいくら渡していることになるか、という二点に移ります。
相手を調べる前に、自社の残高を確定させる
そこで最初に確定させるべきなのは、その得意先に対していま何円の債権が立っているか、という数字です。
売掛金残高だけでなく、出荷は済んでいるが請求を起こしていない分、受注済みでこれから出荷する分、受け取っている手形のうち期日前の分まで足すと、金額は請求書の合計よりかなり大きくなることがあります。
この合計が、いま自社が相手に渡している信用の総額です。
遅延の連絡を受けた日にこの数字が即座に出てこない場合、対応の遅れはそのまま残高の増加につながります。
翌日の出荷を止めるかどうかという判断も、止めれば何円の増加を防げるのかが分からなければ下せません。
得意先リスクはどう構成されるか―信用リスクの3要素と実務上の分類
信用リスクを構成する3つの要素
帝国データバンクは、信用リスクを「どれくらいの期間の中で」「どのくらいの割合で起こって」「どれくらいの損失を出すのか」という3つの要素で捉えられると整理しています1。
この3つに優劣はなく、どれか一つを見てもリスクの大きさは決まりません。
自社の取引に当てはめると、期間とは相手に信用を渡している時間の長さです。
締め日から入金日までの支払サイトだけを指すのではなく、出荷が続く限り残高は立ち続けるので、実質的には取引を継続している期間そのものが対象になります。
月末締め翌月末払いであれば、最も長いときで二か月分の売上が回収されないまま残る計算になります。
割合は、その期間のうちに相手が支払えなくなる見込みの高さです。
個社について正確な確率を出すことはできませんが、信用調査会社の評点やスコアリングの結果は、この割合をどう見積もるかという情報にあたります。
そして損失は、実際に支払われなくなったときに自社に残る金額です。
ここで効くのが前の節で確認した残高で、前受金をもらっている、保証金を預かっている、担保を取っている場合は、その分だけ損失は小さくなります。
3つを掛け合わせると、「危なそうな会社」という印象が金額の比較に変わります。
仮に、評点は低いが常時の残高が小さく支払サイトも短い相手と、評点は平均的だが季節ごとにまとまった残高が立つ相手を並べた場合、一回の回収不能が自社に与える打撃は後者のほうが大きくなります。
どちらを先に手当てするかは、評点の順番ではなくこの掛け合わせで決まります。
「集中」と「契約」という実務上の見方
実務では、特定の得意先に売上や与信枠が偏っている状態を与信集中と呼んだり、契約書の条項の不備を契約リスクと呼んだりします。
ただし、これらを統一的に定義した公的な分類が示されているわけではなく、呼び名や区切り方は会社によって違います。
先ほどの3要素との関係で捉え直すと、位置づけがはっきりします。
集中は、損失の大きさに効く論点です。
一社で売上の相当部分を占めている相手は、回収不能になったときの損失が大きいだけでなく、取引を止めるという判断そのものが難しくなります。
条件を厳しくすれば失注する、という理由で手当てが後回しになりやすいのは、まさに集中している相手のほうです。
契約条件は、損失が確定する場面で効きます。
所有権留保を定めているか、支払いが遅れた場合に残りの代金を一括で請求できる条項があるか、相手に対する買掛金と相殺できる関係にあるか——こうした点は平常時には意識されませんが、回収に動く段階で打てる手の幅を決めます。
個々の条項がどこまで機能するかは契約内容と事案によるため、実際に行使する場面では法務や専門家の確認が必要になります。

新規得意先の与信調査はどう進めるか―財務情報が乏しい相手への対応を含む
相手の情報の出方で、打てる手が変わる
新規の得意先を調べるとき、最初にぶつかるのは「調べようがない相手がいる」という現実です。
上場企業であれば有価証券報告書と適時開示で複数期の数字が追えますし、規模の大きい非上場企業でも決算公告や信用調査会社の報告書で財務内容の概要は分かります。
一方、設立から日が浅い会社や、地方で堅実に続いている小規模な会社では、決算公告を出していない、信用調査会社の取材にも応じていない、という状況が珍しくありません。
ここで「情報が取れないから危ない」と短絡すると、健全な相手を取りこぼします。
情報が少ないことは、支払えなくなる割合が高いことと同じではありません。
必要なのは、情報の出方に応じて評価の手段を切り替えることです。
決算書が十分に手に入らない相手をどう評価するか
一般社団法人CRD協会は、売上・営業利益・純資産などの財務9項目と業種区分を指定するだけでスコアリングを行う手法を提供しており、決算書の開示が乏しい小規模・地方企業の与信審査にも対応できるとしています6。
入力に必要な項目が絞られているため、相手から簡易な決算数値だけでも受け取れれば評価の形にできる、という考え方です。
これは、情報が潤沢な相手にまでこの手法を使うべきだという意味ではありません。
開示が揃っている相手であれば、通常の信用調査と財務分析のほうが得られる情報は多くなります。
手段を使い分ける前提として、まず相手がどの層にいるのかを見極めることになります。
なお、相手から決算数値を受け取る場面では、なぜ必要かを説明できるかどうかで応じてもらえる確率が変わります。
与信限度額を決めるために社内規程で求めている、という説明ができれば、相手を疑っているという話ではなく、取引を始めるための手続の一部として扱えます。
数字で埋まらない部分に何を足すか
財務数値は過去の一時点の姿です。
決算期末から手元に届くまでの時間差を考えると、直近の変化は別の手掛かりで補う必要があります。
商業登記で代表者や本店所在地の変更が続いていないか、支払い方法についてどんな希望が出ているか、納品先の現場が動いているか——これらは調査を依頼しなくても、取引を進める過程で自然に入ってくる情報です。
注意したいのは、断片を一つずつ「危険信号」と読み替えないことです。
代表者の交代は事業承継でも起きますし、支払方法の変更依頼は資金繰り以外の理由でも出てきます。
現場の手掛かりは、財務数値や取引履歴と突き合わせて初めて意味を持ちます。
与信限度額はどのような考え方で決めればよいか
取引先の規模から決める方法と、その限界
与信限度額の決め方として知られているものに、取引先の正味財産(純資産)を基準にする正味財産分割法があります。
ただしこの方法には、大規模企業では正味財産そのものが大きいため、算出される限度額が過大になるおそれがあるという限界が指摘されています5。
これは計算式の欠陥というより、基準の置き方の問題です。
相手の規模だけを基準にすると、限度額は「相手がどれだけ払えるか」の話になり、「自社がどれだけ失っても持ちこたえられるか」が抜け落ちます。
前の節の3要素でいえば、割合の見立てだけで限度を決めていることになり、損失の側が評価に入っていません。
自社が吸収できる損失から逆算する
もう一つの入り口は、自社側から考える方法です。
その得意先の債権が全額回収できなくなった場合に、自社の利益と資金繰りがどうなるかを先に置きます。
粗利率が一割の商売であれば、貸倒れた金額の十倍の売上を新たに立てないと埋め合わせられない、という関係になります。
この見方をすると、妥当な限度額は相手の評点だけでなく、自社の財務体力と一社あたりの依存度に左右されることが分かります。
同じ相手を評価しても、自社の規模や利益率が違えば結論は変わります。
一方で、純資産の何パーセントといった一律の目安については、確認できた一次資料の範囲では具体的な割合が示されていません。
業種によって標準的な支払サイトも在庫の回転も違うため、他社の数字を持ち込むより、自社で「この金額までなら一年の利益で吸収できる」という線を先に決めておくほうが、社内でも取引先にも説明しやすい基準になります。
限度額は、何の合計に効かせるのか
限度額の運用で社内が食い違いやすいのが、何を合計して枠に当てるのか、という定義です。
売掛金残高だけを対象にすると、受注は受けたが未出荷の分や、受け取った手形の期日前残高が枠の外に出ます。
倒産した場合に損失となるのは、出荷済みで未回収の分と、納品に向けて資材や外注を手当てしてしまった分です。
運用としては、売掛金・出荷済未請求・受注残・手形の期日前残高をどこまで含めるかを決め、その数字がどの頻度で更新されるのかを確認することになります。
枠を超えたかどうかの判定が月次の締めでしかできないと、超過に気づくのは出荷した後です。
ここを日次で見られるようにすると、受注を受けた時点で条件を組み替える余地が残ります。
出典:リスクモンスター株式会社「与信限度額の計算方法と決め方」(与信限度額算定手法の一例であり、業種・企業規模によって有効性は異なる)
取引条件でリスクを抑える方法―支払いサイトの法的上限と取引信用保険
支払期日の上限が効く取引と、効かない取引
支払サイトを短くしたいと考えたとき、交渉の土台になりうるのが法令の定めです。
下請代金支払遅延等防止法では、下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して60日の期間内において、かつできる限り短い期間内に定めなければならないとされています2。
支払期日を定めなかった場合や、この規定に違反して定めた場合には、受領日から60日を経過した日の前日が支払期日とみなされます2。
押さえておきたいのは、この規律が適用される取引が限られている点です。
資本金区分などの要件を満たす製造委託等の下請取引が対象であり、すべての法人間取引に60日の上限がかかるわけではありません。
自社が売り手として得意先から製造委託等を受けている中小受託事業者の側にあたるなら、この上限は自社の債権を守る方向に働きます。
逆に、自社が発注側の親事業者にあたる取引では、守るべき義務の側になります。
対象外の取引では、支払サイトは当事者の合意で決まります。
だからこそ、新規取引の条件を詰める段階が実質的な交渉の機会になります。
取引が始まってからサイト短縮を切り出すのは、相手の資金繰りを疑っていると受け取られかねず、難度が上がります。
2025年に成立した改正で変わること
制度の側も動いています。
2025年5月に成立した改正により、下請代金支払遅延等防止法は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に名称が変わり、令和8年1月1日を基本の施行日として、対象となる取引での手形払い等の支払手段が禁止される方向が示されています3。
手形での支払いは、支払期日そのものは守られていても、現金化までに時間がかかります。
受け取る側から見れば、信用を渡している期間がその分だけ延びるということです。
期間が延びれば、同じ相手でも3要素のうち期間と、その時点で残っている損失の見込みが大きくなります。
この改正が直接及ぶのは対象となる下請取引ですが、対象外の取引でも、手形や電子記録債権を受け取るかどうかは支払サイトと同じ重さで検討する価値があります。
サイトが30日でも、受け取るのが期日まで数か月ある手形であれば、実際に資金化されるまでの時間は長くなります。
それでも残る貸倒れをどう補うか
支払サイトを詰め、限度額を守っても、相手が倒産すれば未回収の債権は残ります。
この残りを金銭的に埋める選択肢が取引信用保険です。
東京海上日動火災保険の国内取引信用保険は、国内に所在する取引先が商品の販売やサービス提供にかかる代金支払債務を履行しないことによって被る損害を補償する商品として案内されています4。
ここで区別しておきたいのは、法令が保険加入を求めているわけではない、という点です。
支払期日の規律は取引条件の適正化を目的とした制度で、保険は自社の損失を埋めるための任意の手当てです。
所管も対象も別の話であり、片方を満たせばもう片方が不要になる関係にはありません。

保険料率や補償の割合は公開されておらず、引受の条件とあわせて個別の見積りによります4。
したがって、割に合うかどうかは相場を調べて判断するのではなく、自社の与信残高と想定される損失を示して見積りを取るところから始まります。
前の節で枠に当てる残高の範囲を定義しておくと、その数字がそのまま見積り依頼の材料になります。
| 区分 | 支払期日の決まり方 | 定めがない場合 |
|---|---|---|
| 下請法の対象となる下請取引 | 受領日から起算して60日の期間内で、かつできる限り短い期間内に定める | 受領日から60日を経過した日の前日が支払期日とみなされる |
| 対象外の一般的なBtoB取引 | 当事者の合意で決まる | 基本契約や個別の合意の内容による |
取引開始後のモニタリング体制をどう構築・運用するか
重要な得意先ほど、見直しの間隔を短くする
取引開始時の審査をどれだけ丁寧にやっても、相手の状況は変わります。
決算書を年に一度入手する運用だけだと、決算期末から入手までの時間差に加えて、次の決算まで情報が更新されない期間が生まれます。
そこで、すべての得意先を同じ頻度で見直すのではなく、重要度で分けます。
目安になるのは、与信残高の大きさ、自社の売上に占める割合、そして取引先としての代替のしにくさです。
残高が大きい相手は損失が大きく、依存度が高い相手は取引を絞る判断が遅れやすいため、どちらも間隔を短くする理由になります。
逆に、残高が小さく単発に近い取引は、頻度を落としても被害は限定されます。
管理に使える時間は有限なので、どこに使うかを先に決めておかないと、結局すべての得意先が年に一度も見直されない状態に落ち着きます。
社内に先に届く情報を、どこで拾うか
相手の変調は、外部の調査より先に自社の現場に現れることがあります。
営業が訪問したら人が減っていた、検収の連絡が遅くなった、値引きの要求が急に強くなった、支払方法の変更を打診された——こうした情報は、それぞれ別の部署に別々に届きます。
仕組みとして必要なのは、これらを与信の台帳に集めることです。
営業日報の中に埋もれていると、経理が入金の遅れに気づいたときに突き合わせられません。
得意先ごとに、遅延の履歴、条件変更の申し出、現場で気づいた点が一か所に並んでいれば、遅延の連絡を受けた時点で「先月も条件変更の話が出ていた」と分かります。
ここで減るのは、関係者に聞いて回る時間と、聞き漏らしによる判断の遅れです。
集約すること自体が相手の倒産を防ぐわけではありませんが、出荷を止めるかどうかを決める材料が、電話をかけるより手前で揃うようになります。
信用調査会社の継続モニタリングという選択肢
自社で情報を集める体制に加えて、外部のモニタリングサービスを使う方法があります。
帝国データバンクの「SAFETY」は、指定した取引先の動向を1年間モニタリングするもので、年2回の調査報告書の提供に加え、経営環境の変化や信用情報を入手次第通知するとされています7。
この年2回という頻度は同サービスの仕様であり、業界共通の基準ではありません7。
他社のサービスでは報告の回数も通知の対象も異なるため、比較するときは定期報告の頻度と随時通知の条件を分けて確認することになります。
定期報告は相手の全体像を更新するもの、随時通知は変化に反応するもので、役割が違います。
自社の得意先数と重要度の分け方に対して、どちらをどこまで外部に任せるかという設計になります。
そして、外部サービスを使うかどうかにかかわらず決めておく必要があるのは、通知が届いた後に何が起きるかです。
誰が受け取り、どの基準で与信限度を引き下げ、出荷を止める判断は誰が下すのか。
ここが決まっていないと、通知は受信箱に溜まるだけで、実際に気づくタイミングは以前と変わりません。
ここまでの考え方を社内のルールに落とす段になると、自社の受注と出荷の流れのどこで枠を判定できるか、という個別の事情が残ります。
得意先ごとのリスクを金額に置き換えるところまでは自社のデータでできますが、受注残や出荷済未請求まで含めた与信残高を締めを待たずに取り出せるかどうかは、受注から請求までのデータの持ち方に左右されます。
いまの受注・出荷・請求のデータから与信残高をどの粒度で取り出せるのか、限度額の判定を日次で回すには何が足りないのかを、現在の業務の流れに沿って確認できます。無料相談で要件を整理する
信用リスクの期間・割合・損失は優劣ではなく併せて見る3要素
一社の得意先に渡している信用を、時間・確からしさ・金額のどの面から測るかで区切った。
- 期間:締め日から入金までのサイトに加え、出荷が続く限り残高が立ち続ける時間の長さ
- 割合:その期間のうちに相手が支払えなくなる見込み。信用調査会社の評点やスコアはここに対応する
- 損失:支払われなかった時点で自社に残る債権額。前受金や保証金、担保があればその分小さくなる
支払サイトが長い相手や手形を受け取る相手は期間から、売上の依存度が高い相手は損失から先に手を入れると効き方が大きい。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初に確定させる数字 | 売掛金・出荷済未請求・受注残・手形の期日前残高を合計した与信残高 |
| リスクの測り方 | 期間・割合・損失の3要素を掛け合わせ、印象ではなく金額で比べる |
| 情報が乏しい相手 | 開示量に合わせて審査手法を切り替える。情報が少ないこと自体を危険信号にしない |
| 限度額の基準 | 相手の規模だけでなく、自社が吸収できる損失額から逆算する |
| 支払条件 | 下請取引に当たるかで法定の上限が効くかが変わる。残る貸倒れは保険が選択肢 |
| モニタリング | 重要度で頻度を分け、通知が届いた後に誰が何を止めるかを先に決める |

モニタリングの頻度や通知後の手順を決めても、出荷を止める判断を現場で実行できるかは、受注処理のどの工程に枠の確認が入るかで変わります。 与信限度の判定や出荷保留の指示を、いまの受注処理のどの工程に組み込めるのか、既存の運用を変えずに残せる範囲はどこかを、具体的な作業の並びで整理できます。
よくある質問
与信限度額を超えそうな注文が来た場合、断る以外にどんな対応があるか
断る以外の選択肢は、残高を膨らませない形に取引条件を組み替えることです。
注文全体を一度に出荷せず分納して入金を確認しながら次を出す、前受金や一部前払いを設定して実質的に渡す信用を下げる、その案件だけ支払サイトを短くする、といった方法があります。
保証金や担保を取る、回収できない部分を取引信用保険で手当てするという考え方もあります4。
いずれも限度額そのものを動かすのではなく、信用を渡す期間と金額を縮める方向の対応です。
限度額を引き上げる判断をする場合は、何を根拠に引き上げたのかを記録し、次の見直し時期を同時に決めておくと、例外が常態化しにくくなります。
取引信用保険は中小企業でも加入できるか、保険料はどのように決まるか
東京海上日動火災保険の国内取引信用保険は、国内の取引先が代金支払債務を履行しないことで生じる損害を補償する商品として案内されています4。
加入できる企業規模の要件や保険料率、補償の割合は商品ページでは公開されておらず、引受条件とあわせて個別の見積りによります4。
そのため、中小企業なら加入できる・できないを一般論で答えることはできません。
見積りを依頼するときは、対象にしたい得意先の範囲、各社の与信残高、過去の貸倒れの有無を整理しておくと話が進みやすくなります。
他社にも同種の商品はありますが、条件は各社の資料で個別に確認する必要があります。
下請法の対象にならない一般的なBtoB取引でも支払いサイトに何らかの法的な制約はあるか
受領日から起算して60日以内という上限は、下請代金支払遅延等防止法が定める下請取引の規律です2。
資本金区分などの要件を満たす製造委託等が対象で、要件を満たさない一般的なBtoB取引にこの60日が自動的に及ぶわけではありません。
対象外の取引での支払サイトは、基本契約や個別の合意で決まります。
注意したいのは、自社の取引が対象かどうかは業種の印象ではなく、委託の内容と両社の資本金の区分で決まる点です。
同じ得意先でも取引の種類によって扱いが変わることがあるため、契約ごとに確認することになります。
既存の得意先の信用情報が急に悪化した場合、契約中でも取引条件を見直せるか
何ができるかは契約の書き方によります。
与信限度額は自社の社内基準なので引き下げること自体は自社の判断で行えますが、すでに受注している分の出荷を止められるか、支払条件を変更できるかは、基本契約の条項と個別の合意の内容によります。
現実的な進め方としては、既存の受注分と新規の受注分を分け、新規分から条件を変える方法があります。
前受金の設定や分納への切り替えは相手の同意が要る代わりに、取引を続けたまま残高を抑えられます。
相手の状況が深刻な場合は、契約解除や債権保全の可否を含めた法的な評価が必要になるため、遅延の履歴や契約書を整理したうえで専門家に確認するのが安全です。
- 1 出典:株式会社帝国データバンク「ビジネスナレッジ 第1回:信用リスクとは?与信とは?」(2026年確認時点)
- 2 出典:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法(法令ページ)」(2026年確認時点)
- 3 出典:公正取引委員会「『下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律』の成立について」(2025年)
- 4 出典:東京海上日動火災保険株式会社「国内取引信用保険(商品ページ)」(2026年確認時点)
- 5 出典:リスクモンスター株式会社「与信限度額の計算方法と決め方」(2026年確認時点)
- 6 出典:一般社団法人CRD協会「信用調査会社に情報がない取引先の与信審査をどうするか」(2026年確認時点)
- 7 出典:株式会社帝国データバンク「取引先や顧客の与信管理をしたい(SAFETY等サービス紹介ページ)」(2026年確認時点)
画像の出典元
- Flat lay of a minimalist office desk with clipboard, credit cards, pen, and leather wallet./Photo by Nataliya Vaitkevich on Pexels
- African American female worker speaking with unrecognizable diverse clients at desk with paper sheet and laptop in modern workspace/Photo by Kindel Media on Pexels
- Close-up of professionals reviewing financial graphs at a business meeting./Photo by RDNE Stock project on Pexels
- A group of business professionals engaging in a cheerful meeting in a modern office setting./Photo by Amartuvshin John Sharavdorj on Pexels