◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 電話受注の属人化は引き継ぎ不足ではなく、判断が書かれていない状態と窓口が一人に寄った状態から続く
- 担当者が受けられない日には取引そのものが止まり、通常日には手入力と確認連絡が積み上がるという、別々の課題が同時に存在する
- マニュアル化は判断の未文書化、交代対応は窓口の集中、システム化は転記と確認の量に効き、単独では埋まらない部分が残る
- 着手順は、直近一週間の実際の注文をたどり、不在時に止まる箇所と時間が取られる箇所を分けて見極めることで決まる
- 担当者が少ない場合は全件を対象にせず、止まると困る得意先から代われる状態を作るのが現実的な進め方になる
目次

「電話は特定の人しか取れない」を放置するとどうなるか
「いつものを、明日の朝で」——電話口の一言だけで商品と数量と納品先を埋められる人が社内に一人いて、その人が休む週になると受注が心配になる。
そんな状態なら、起きているのは引き継ぎ不足ではなく属人化という業務の状態です。
食品の小売・卸売業で受注に携わる人への調査では、FAX・Eメール・電話で受注する90名のうち38.9%が「オペレーションの属人化が発生している」と答えています1。
属人化は、手順や判断が書かれていないこと、窓口が一人に寄せられていることから続きます。
変えられるのは、まず自社の受注のどこが記憶に依存しているかを見分けることで、マニュアル化・複数人での交代・受注管理システムのどれから手を付けるかは、その見分けで決まります。
「いつものを、明日の朝で」——電話の向こうの得意先がそう言っただけで、商品コードと入り数、納品先の店舗、締め時間まで頭の中で埋められる人が、社内に一人はいるのではないでしょうか。
その人が受ければ三十秒で終わる通話が、別の人が取ると「どちらの商品でしょうか」「いくつでしょうか」と確認が増え、相手を待たせます。
差が出ているのは能力ではなく、同じ得意先の注文を何度も受けてきた経験が、その人の中だけに残っているからです。
この状態が属人化です。
特定の担当者がいなければ業務が成立しない状態を指す言葉で、電話受注の場合は、聞き取った言葉を注文に翻訳する知識がどこにも書かれていないところに現れます。
困るのは「引き継ぎ資料を作っていない」ことよりも、業務が回る条件そのものが一人の記憶に置かれていることです。
資料は後から作れますが、記憶は本人がいる間にしか取り出せません。
電話や口頭でのやり取りが業務の中心に残っている会社は、特別な例ではありません。
東京商工会議所が東京23区を中心とする中小企業に行った調査では、デジタル化の段階を尋ねた設問で「口頭連絡、電話、帳簿での業務が多い」と答えた企業が17.7%ありました3。
回答は1,218社で、東京の中小企業という範囲の数字ではありますが、電話を主な受注経路として使い続けている会社が今も一定数あることは読み取れます。
つまり、電話で受けていること自体が問題なのではなく、電話で受けた内容が一人の頭にしか残らない状態が問題になります。
放置したときに起きるのは、単発の混乱ではなく、依存が強まる循環です。
その人しか受けられないから休みの希望を出しにくくなり、休まないから他の人が受ける機会もないまま、経験の差はさらに開きます。
そして退職や異動が決まったときには、後任が同じ得意先の注文を何度も受けて覚える時間は、もう残っていません。
属人化が表面化するのは、たいてい時間の余裕が無くなった場面です。
電話受注が属人化する要因は何か
「なぜ一人に集まってしまったのか」を考えるとき、手がかりになる調査があります。
業務可視化ツールを使った経験があると答えた142名に、業務の属人化についてどのような影響があるかを尋ねたもので、「業務の引継ぎが困難である」52.8%に続き、「手順やプロセスが文書化されていない」47.9%、「キーパーソンの不在が業務に深刻な影響を及ぼす」44.4%が選ばれています2。
ただし、この設問が聞いているのは属人化の影響であって、原因を直接調べたものではありません。
回答者の業種や職種も限定されていないため、電話受注の現場にそのまま当てはまる割合として扱うことはできません。
それでも、属人化を感じている人たちの職場で「手順が書かれていない」「特定の人の不在が響く」という状態が同時に報告されていること自体は、自社を点検する視点として使えます。
この二つを、電話受注の場面に置き換えて見ていきます。
手順やプロセスが文書化されていない状態
電話受注のマニュアルがまったく無い会社は、実はそれほど多くありません。
あるのはたいてい「受注票の書き方」や「システムへの入力手順」で、書けるものはすでに書かれています。
抜けているのは、その手前にある判断のほうです。
たとえば、得意先が「いつもの箱で三つ」と言ったとき、それがケース単位なのかバラなのかは、過去の注文履歴と相手の口ぶりから判断されています。
在庫が足りないときに代替品を勧めてよい得意先か、必ず折り返して確認が要る得意先かも、担当者が経験で使い分けています。
締め時間を数分過ぎた注文を当日出荷に入れるかどうかも同じで、相手との関係や便の余裕を見て決まります。
こうした分岐は手順書に書く欄が用意されていないことが多く、結果として書かれないまま残ります。
文書化されていない部分が判断の分岐だけに偏ると、マニュアルは「読めば分かる」体裁を保ったまま、実際には一人にしか使えない道具になります。
属人化が見えにくいのはこのためで、書類の有無を点検しても状況はつかめません。
確かめるべきは、書かれている手順をたどって、経験の浅い人が最後まで注文を確定できるかどうかです。
特定の担当者(キーパーソン)への依存
もう一つは、依存が社内の都合だけでなく、取引相手の側からも固定されていく点です。
得意先は用件が早く済む相手を覚えるので、次からは名指しで電話をかけてきます。
社内でも「この件はあの人へ」と回すほうが確実なので、取り次ぎの運用がそのまま定着します。
誰かが決めたわけではなく、毎日の合理的な選択が積み重なった結果です。
依存は、たいてい良い評価とともに強まります。
速い、間違えない、得意先の事情をよく知っている——そのとおりなので、誰も止める理由を持ちません。
体制の問題として扱われるのは、その人が一週間不在になると分かった時点で、そこから打てる手は限られます。
ここまでで、属人化を続かせている状態を二つに分けました。
書かれていないこと(手順と判断)と、寄せられていること(窓口と関係)です。
この二つは性質が違うため、同じ手当てでは崩せません。
| 選ばれた項目 | 回答割合 |
|---|---|
| 業務の引継ぎが困難である | 52.8% |
| 手順やプロセスが文書化されていない | 47.9% |
| キーパーソンの不在が業務に深刻な影響を及ぼす | 44.4% |
担当者が対応できないとき、具体的にどんな支障が生じるか
原因が分かっても、どこから手を付けるかはまだ決まりません。
担当者が受けられない日に実際に何が起きるのかを、取引そのものへの影響と、日々の作業負担に分けて見ると、優先度の判断材料になります。
取引そのものへの支障
食品の小売・卸売業で受注業務に携わる人への調査では、FAX・電話で受注している80名に対し、その受注方法を止めた場合に取引へ支障が出ると想定するかを尋ねた設問で、58.8%が「はい」と答えています1。
これは担当者の不在による影響を測った数字ではなく、電話・FAXという経路を絶った場合の想定です。
それでも、電話が取引をつないでいる得意先が相応にあり、受けられない日を作る余地が小さいことは読み取れます。
対象は食品の小売・卸売業に限られるため、他業種の比率としてそのまま使うことはできません。
受けられない日に起きることは、注文が一件遅れるだけでは終わりません。
朝の注文を昼まで受けられなければ当日の積み込みに間に合わず、納品は翌日にずれます。
欠品の連絡が遅れれば、得意先は棚を埋めるために別の仕入先へ回します。
一度そちらで足りてしまうと、次の注文が戻ってくる保証はありません。
先の属人化の調査で最も多く選ばれたのは「業務の引継ぎが困難である」52.8%でした2。
退職や異動は事前に分かることが多いのに、それでも引き継ぎが難しいと感じられるのは、渡すものが手順ではなく判断だからです。
数日の同席で渡せるのは、すでに書いてある部分までにとどまります。
日常業務での手間の増加
不在の日だけでなく、通常どおり回っている日にも負担は積み上がっています。
同じ受注業務の調査では、FAX・Eメール・電話で受注している90名のうち60%が「注文書の手入力に手間がかかる」、41.1%が「注文確認の連絡に手間がかかる」を課題に挙げました1。
この二つは、担当者の熟練によって速くはなっても、無くなりはしない作業です。
電話で聞いた内容をメモに書き、基幹システムへ入力し直し、数量や納期に不安があれば得意先へ折り返す。
手が速い人ほど短い時間で片づけるため、周囲からは負荷そのものが見えなくなります。
交代で入った人が同じ作業に倍の時間をかけて、ようやく量が見えるという順番になりがちです。
ここに、交代制だけでは届かない理由があります。
受ける人を増やしても、一件あたりの入力と確認の量は変わりません。
不在時に業務が止まることと、通常日に手が取られ続けることは、別の手当てが必要な課題です。

書かれていないこと、一人に寄せられていること、毎日手が取られていること。
この三つのどれが自社で最も重いかによって、先に置く手段は変わります。
出典:株式会社ハンモック「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年3月/食品の小売・卸売業の受注担当者)
要因と支障の切り分けはここまでで付けられますが、自社の受注のどこまでを書き起こせばよいか、どこから仕組みに載せるべきかの線引きは、実際の注文の出方を見ないと決まりません。
受注一件が入ってから出荷指示になるまでの流れを一緒にたどり、担当者の記憶に頼っている箇所と、転記や確認として置き換えられる箇所を切り分けたうえで、先に着手する範囲を確かめられます。無料相談で要件を整理する
自社の電話受注がどこで止まるかを見分ける観点
担当者が受けられない日に業務のどこで止まるかという観点で、確認する場所をまとめています。
- 得意先から電話が入ったとき、その得意先の注文内容を担当者以外が再現できるか
- 「いつもの」「箱で」といった言い回しを商品と数量に置き換える基準が、どこかに書かれているか
- 在庫が足りないときの代替提案や折り返しの要否を、担当者以外が判断できるか
- 電話で受けた内容を基幹システムへ入力し直す作業に、一件あたりどれだけ時間がかかっているか
- 注文内容の確認で折り返している件数が、どの得意先に偏っているか
- 担当者が一週間不在になったとき、どの得意先の注文が最初に止まるか
取引が止まると困る得意先がすでに特定できている場合は、件数の多さより、その得意先の注文をどこまで書き起こせるかを先に確かめます。
属人化を解消する主な方法とそれぞれの向き不向き
| 手段 | 直接効く課題 | 前提になること |
|---|---|---|
| 手順のマニュアル化 | 手順と判断の基準が書かれていない状態 | 何を書くかを決めるために、現に対応している担当者の時間が要る |
| 複数人での交代対応 | 窓口が特定の担当者に寄っている状態 | 交代できる人数の確保と、対応をそろえるための基準 |
| 受注管理システムの導入 | 手入力や確認連絡といった定型作業の手間 | どこまでを置き換えるかの整理。電話で受けること自体は残る |
手順のマニュアル化:書かれていない判断を先に取り出す
何を書けば他の人が受けられるようになるか
マニュアル化というと、受注の流れを最初から最後まで書き下ろす作業を思い浮かべがちですが、電話受注で不足しているのはたいてい流れのほうではありません。
不足しているのは、前半で見たとおり、聞き取った言葉を注文に変換する基準と、例外が出たときの分岐です。
したがって、白紙から書き起こすより、すでにある入力手順の横に「この場面ではこう決める」を足していくほうが早く進みます。
具体的には、得意先ごとに三点を書き出すところから始められます。
一つは、その得意先が使う言い回しと、対応する商品・単位の対照。
二つは、在庫が足りない場合に代替を勧めてよいか、必ず確認を取るか。
三つは、締め時間を過ぎた注文の扱いです。
いずれも担当者に尋ねれば数分で答えが返るのに、これまで聞かれなかったために書かれていない類の情報です。
書き出す順番は、得意先の五十音順でも売上順でもなく、受けられない日が生じたときに困る順にします。
属人化の解消は全件を平らにならす作業ではなく、止まると痛いところから記憶の外に出す作業です。
担当者が少ない会社ほど、この絞り込みが現実的な進め方になります。
マニュアル化だけでは残るもの
書けば誰でも同じ速さで受けられる、とはなりません。
電話は、相手が話す速度で聞き取り、その場で判断を返すやり取りです。
手元の資料を探しながらでは間が空き、相手は「詳しい人に代わってほしい」と言います。
書かれた基準は、読み返すためというより、対応する人が事前に目を通して覚えるための土台として働きます。
もう一つ残るのは、更新の問題です。
得意先の担当者が替わる、取扱商品が増える、締め時間が変わる——変更は日常的に起きますが、マニュアルの更新は誰の担当でもないまま放置されがちです。
更新されない資料は、しばらくすると「あれは古いので担当者に聞いてください」と言われるようになり、依存が元に戻ります。
書く作業と同じくらい、誰がいつ直すかを決めることが効きます。
それでも、マニュアル化を先に置く理由ははっきりしています。
交代で受ける体制を作るにも、受注の内容をシステムに載せるにも、「何をどう判断しているか」が言葉になっていることが前提になるからです。
順番として飛ばしにくい工程だと考えてください。

複数人での交代対応:窓口を分散させるときの前提
全件を分けるのではなく、範囲を決めて始める
窓口が一人に寄っている状態に直接効くのは、受ける人を増やすことです。
ただし、明日から全件を当番制にすると、得意先は「いつもの人が出ない」ことに戸惑い、社内では確認の折り返しが増えて、かえって処理が遅くなります。
分散は、対象を区切って進めるほうが無理がありません。
区切り方は二通りあります。
一つは得意先で区切る方法で、注文内容が定型的な先から交代対応に移し、例外の多い先は当面そのままにします。
もう一つは時間帯で区切る方法で、朝の締め前だけは複数人で受け、それ以外は従来どおりにします。
どちらを選ぶかは、注文が特定の時間に集中しているかどうかで決まります。
朝に山があるなら時間帯、得意先ごとの難易度の差が大きいなら得意先で区切るのが扱いやすくなります。
人数の確保が難しい会社では、交代要員を専任で置くのではなく、別業務の担当者が受けられる範囲を決める形になります。
その場合、受けた注文をその人が最後まで処理する必要はありません。
電話で聞き取って記録を残すところまでを担い、入力と確認は元の担当者が戻ってから行う、という分け方でも、受注が止まる事態は避けられます。
品質のばらつきをどう抑えるか
交代で受けると、聞き取る項目の抜けや、得意先への言い方の違いが出ます。
これを個人の注意力で埋めようとすると続きません。
受注時に必ず埋める欄を決めた記録の形を一つにし、その欄が埋まっていれば誰が受けても後工程が動く状態にしておくほうが確実です。
マニュアル化と交代対応を組み合わせる必要があるのは、この点です。
もう一つ、交代制を始めると必ず出てくるのが、受けた人と処理する人が違う場合の引き渡しです。
口頭で伝えた内容は消えるため、誰が受けたか、どの時点で確認済みかが記録に残る形にしておかないと、二重に折り返したり、逆に誰も折り返さなかったりします。
属人化を解こうとして、今度は受け渡しの抜けが増えるのはよくある道筋なので、記録の置き場所は最初に決めておきます。
交代対応で得られるのは、不在時に受注が止まらないことと、一人の負担が下がることです。
前半で見たとおり、一件あたりの入力や確認の量そのものは変わりません。
日々の手間が課題の中心にある場合は、この手段だけでは届かないと考えてください。
受注管理システムの導入:置き換えられる作業と残る作業
手入力と確認連絡のどこが減るのか
受注業務の調査で課題として上位に挙がっていたのは、注文書の手入力(60%)と注文確認の連絡(41.1%)でした1。
この二つは判断というより転記と往復の作業で、担当者の経験がそのまま速さに出る一方、どれだけ慣れても作業自体は残ります。
定型的な転記や連絡は、仕組みの側に載せると個人の手さばきに左右されにくくなります。
電話受注の場合、減らせる可能性があるのは主に通話の後です。
聞き取った内容をメモに書き、基幹システムへ入力し直す工程で、同じ情報が二度手で書かれています。
受注の記録と後工程が同じ場所でつながっていれば、この書き直しは減ります。
注文内容の控えを得意先へ返す連絡も、都度の電話ではなく記録から出す形にできれば、折り返しの回数を抑えられます。
一方で、導入によってどれだけ時間が減るか、費用がいくらかかるかは、受注件数や既存の仕組みとの関係で大きく変わります。
この記事の裏づけとして確認できた資料には、削減率や料金の相場にあたる数値はありません。
比較検討の段階では、他社の削減幅の話より、自社の一件あたりの転記が何か所あるかを数えるほうが判断に使えます。
電話応対そのものは無くならない
注意したいのは、システムを入れても、電話で注文を受ける行為自体が消えるわけではないことです。
得意先が電話をかけてくる理由は、こちらの仕組みではなく、相手の業務のやり方にあります。
先の調査でも、FAX・電話での受注を止めると取引に支障が出ると想定した人が58.8%を占めていました1。
受注経路を切り替えるかどうかは、取引先との関係の話であり、システムの機能だけで決められる領域ではありません。
そして、電話が残る以上、聞き取りの正確さと例外への対応は人の側に残ります。
「いつもの」を商品に置き換える判断、欠品時の代替提案、締め時間の扱い——これらはシステム化しても、判断する人が変わるだけです。
つまり、システム導入は属人化の三つの側面のうち、定型作業の負担に効く手段であって、判断の属人化を直接解くものではありません。
導入を検討する段階で確かめておきたいのは、現在の受注一件が、どの画面とどの紙を経由して出荷指示になっているかです。
その経路が言葉にできていれば、どの転記が減り、どの確認が残るのかを、機能一覧ではなく自社の作業として比較できます。

自社の受注業務の状況からどの手段に着手すべきか
どの課題が最も重いかを見分ける
ここまでの三つの手段は、それぞれ違う課題に効きます。
手順と判断が書かれていないならマニュアル化、窓口が一人に寄っているなら交代対応、転記と確認の量が多いならシステム化です。
迷うのは、たいてい三つとも当てはまるからで、当てはまること自体は珍しくありません。
決め手になるのは、どれが最も深刻かではなく、担当者が明日いなくなったときに何から止まるかです。
書き出す対象は、標準的な受注ではなく、直近一週間に実際に受けた注文にします。
標準を書くと例外が落ちますが、属人化しているのは例外のほうです。
一週間分をたどれば、どの得意先で確認の折り返しが発生し、どこで担当者にしか分からない判断が挟まったかが具体的に並びます。
この進め方は、資料で効果が裏づけられた手順ではなく、前半で確認した三つの課題の切り分けに沿った編集部の提案です。
自社の注文の出方によって、先に手を付けるべき場所は変わります。
判断の材料になるのは、他社の事例よりも、自社の一週間の注文記録です。
一つで終わらせず、組み合わせで考える
どれか一つで属人化が解けることは、あまりありません。
交代で受ける体制は基準が書かれていなければ品質がばらつき、システムを入れても聞き取りの判断は人に残り、マニュアルは更新の担当を決めなければ古くなります。
順番として無理が少ないのは、判断を言葉にする作業を先に置き、それを土台に交代の範囲を決め、転記の量が課題として残るなら仕組みの側へ移す流れです。
担当者が少ない会社では、三つを同時に進める余力はまずありません。
その場合でも、取引が止まると困る得意先を数件選び、その注文だけを書き起こして、誰か一人が代われる状態を作るところまでは進められます。
全件を対象にしないことは妥協ではなく、限られた時間をどこに使うかの判断です。
最後に、進んだかどうかの確かめ方を決めておくと迷いが減ります。
資料が何ページになったかではなく、担当者が休んだ日に、どの得意先の注文を他の人が最後まで処理できたか。
その件数が増えていれば、属人化は実際に薄まっています。
要点の整理
| 手順や判断が書かれていない | 判断の分岐から書き出し、更新の担当も決める |
|---|---|
| 窓口が一人に寄っている | 得意先か時間帯で範囲を区切り、基準をそろえて分散させる |
| 転記と確認連絡に時間が取られる | 一件あたりの転記箇所を数え、置き換えられる範囲を見る |
| どれが重いか判断できない | 直近一週間の注文をたどり、止まる箇所と量の多い箇所を分ける |
| 人手が足りない | 止まると困る得意先を数件選び、そこから代われる状態を作る |
手段を決めた後も、得意先ごとの例外をどこまで仕組みの側に載せるかは、注文の量や受け方によって変わります。 現在の受注件数と得意先ごとの受け方を照らしながら、書き出しで足りる部分と、注文の受け取り方そのものを変えたほうが早い部分を整理し、次の一手の見当をつけられます。
よくある質問
マニュアル化だけで属人化は解消できるか
書かれていない判断を言葉にする効果は大きいものの、それだけでは足りない部分が残ります。
電話は相手の話す速度で判断を返すやり取りなので、資料を探しながらでは対応が続かず、実際に受ける経験が要ります。
また、得意先の担当者交代や商品の追加で内容は古くなるため、誰がいつ更新するかを決めていない資料は、やがて「担当者に聞いてください」に戻ります。
マニュアル化は、交代対応や仕組みの整備を進めるための土台と考えるのが実際的です。
複数人でローテーション対応する場合、対応品質のばらつきをどう防ぐか
個人の注意力で埋めようとすると続きません。
受注時に必ず埋める項目を決めた記録の形を一つにし、その欄が埋まっていれば後工程が動く状態にしておくと、聞き取りの抜けは減ります。
あわせて、受けた人と処理する人が分かれる場合の引き渡し方法(誰が受けたか、確認済みかを記録に残す)を先に決めておくと、二重の折り返しや対応漏れを防げます。
基準を書く作業と交代制は、組み合わせて初めて機能します。
受注管理システムを導入すれば電話対応自体をなくせるか
なくせません。
得意先が電話をかけてくる理由は相手の業務のやり方にあり、こちらの仕組みでは決まらないためです。
食品の小売・卸売業の受注担当者への調査でも、FAX・電話での受注を止めると取引に支障が出ると想定した人が58.8%を占めていました1。
システム化で減らせるのは主に通話の後の転記や確認連絡の部分で、聞き取りの正確さや例外の判断は人の側に残ります。
属人化解消に取り組む際、最初に何を確認すればよいか
直近一週間に実際に受けた注文を、電話が入ってから出荷指示になるまでの流れでたどってみてください。
標準的な受注手順ではなく実際の記録を見るのは、属人化しているのが例外のほうだからです。
そのうえで、担当者が不在なら止まる箇所と、時間が取られている箇所を分けて印を付けます。
前者が多ければ書き出しと交代の範囲決め、後者が中心なら転記の削減が先の候補になります。
小規模で担当者が少ない事業者でも取り組める対策はあるか
全件を対象にしないことが前提になります。
取引が止まると困る得意先を数件選び、その先の言い回しと商品の対照、欠品時の扱い、締め時間の扱いを書き出すだけでも、代われる範囲は作れます。
交代要員を専任で置けない場合は、電話で聞き取って記録を残すところまでを別の人が担い、入力と確認は元の担当者が行う分け方でも、受注が止まる事態は避けられます。
- 1 出典:株式会社ハンモック「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年)
- 2 出典:株式会社NEXER/オクトパス「業務可視化ツールを使用して業務を行った経験に関するアンケート」(2024年)
- 3 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2024年)
画像の出典元
- A close-up of office desk featuring a laptop, headset, and stationery, ideal for business settings./Photo by Jep Gambardella on Pexels
- Close-up of hands typing on a laptop in a bright, modern office, symbolizing productivity and digital work./Photo by Sommart Sopon on Pexels
- Three professionals engaged in a collaborative office meeting with laptops and notes./Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels