◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- NTT東日本のINSネット関連サービスは2024年8月末で新規申込受付を終了し、2028年12月末に提供終了が予定されている
- ダイヤルアップ接続を前提とした旧来の通信手順を使っている場合、回線側の予定が自社の期限になる。ただし取引先が先に切替日を決めれば、そちらが実質的な期限になる
- 導入費用は受注側が標準対応の既製サービスを使う場合について「大きな費用はかからない」とされる一方、金額での直接比較を示す公的資料はなく、自社の契約内容で見積もる
- 中小企業共通EDIの実証では受発注業務時間の削減率が51.4%/53.3%と報告されているが、2016年度・中小企業を対象とした値であり、自社の効果を保証するものではない
- 移行は方針検討から予備期までの6段階で進め、完全移行までは旧新の並行運用が必要。テストは疎通・システム・業務連携の3段階を取引先ごとに行う
目次

取引先とのEDI接続、従来方式のままでよいか
取引先から「今のEDI接続はいつまで続けますか」と尋ねられた、あるいは回線終了の案内を目にして自社の対応が必要なのか気になった。
そんな段階で読まれていることを想定しています。
NTT東日本のINSネット関連サービスは2024年8月末で新規申込受付を終了し、2028年12月末に提供終了が予定されています2。
ISDN回線を前提としたJCA手順や全銀手順で受発注データをやり取りしているなら、この期限までにインターネット回線を使うWeb-EDIへ移す計画が必要です。
ただし、切替の時期も方式も自社だけでは決まりません。
取引先の業界方針や準備状況に左右されるため、事前に協議し、旧方式と新方式を並行して動かす期間を置きながら段階的に進めるのが現実的な進め方になります3。
「動いているから触らない」で止まりやすい仕組み
受発注のEDIは、いったんつながってしまえば毎日決まった時刻にデータが流れるだけの仕組みです。
障害も起きず、伝票の枚数も合っている。
担当者が代わるときに引き継がれるのは日々の操作手順で、どの回線を使い、どの通信手順でつながっているかまでは引き継がれないことがあります。
切替の検討が遅れる原因は、判断を先送りしたからというより、判断に必要な情報が社内のどこにあるか分からなくなっていることのほうが多いはずです。
取引先から届いた案内に通信手順の名前が並んでいても、それが自社に当てはまるのかどうかを社内で答えられない。
この状態のままでは、切り替えるべきかどうかという問いに入れません。
ですから、最初に決めるのは「切り替えるかどうか」ではありません。
自社のEDIがいま何の上に乗っているのかを、取引先との取り決め書、回線の契約や請求の明細、EDI装置やソフトの設定から特定するところが出発点になります。
検討に入る入口は二つある
一つは取引先からの打診です。
相手が接続方式の変更やテストの日程を提示してきた場合、その日程がそのまま自社にとっての実質的な期限になります。
相手の切替計画に間に合わなければ、受発注そのものが止まりかねないためです。
もう一つは回線側の事情です。
打診が来ていなくても、使っている回線の提供終了が決まっていれば、時期は自社の意思とは別のところで決まります。
打診がまだ来ていないことは、切替が不要であることを意味しません。
この二つの入口は、確かめるべきものが違います。
前者は相手ごとの指定内容と日程、後者は自社の回線契約です。
まずは自社の接続が技術的にどちら側の方式なのかを見分けられるようにしておくと、どちらの入口から話が来ても対応できます。
従来型EDI(専用線・VAN)とWeb-EDI(インターネットEDI)は何が違うのか
専用線・VAN型を使う従来型EDIの通信手順(JCA手順・全銀手順等)
従来型EDIの中心にあるのは通信手順です。
流通業で長く使われてきたJCA手順は、ダイヤルアップ接続を前提とした1980年代の仕様だと説明されています6。
電話をかけるように相手とつなぎ、決まった時間だけデータを流して切る。
この形が前提なので、取引先が増えれば接続の設定も回線の使い方もその分だけ増えていきます。
VAN(付加価値通信網)は、こうした企業間のデータ交換を仲介する事業者のネットワークを指す呼び方です。
自社が取引先の一軒一軒と直接つなぐ代わりに、仲介する事業者を経由してデータを受け渡します。
いずれにしても、交換網と通信手順の組み合わせで成り立っている点は共通です。
実際の現場では、手順が一つに統一されているとは限りません。
医薬品・健康食品の製造販売を手掛けるピップグループの持株会社であるフジモトホールディングスでは、旧来の通信手順としてJCA手順・全銀手順・全銀TCP/IP手順を使用しており、こうした手順を使う企業はISDN回線を利用することが多いと説明されています4。
複数の手順が併存している状態は珍しいものではない、と考えて棚卸に入ったほうが取りこぼしが減ります。
インターネット回線を使うWeb-EDI・流通BMSの通信方式
これに対して流通BMSは、インターネットVPN上のHTTPS通信やAS2プロトコルを採用することで、高速で低コストなデータ交換を実現したとされています6。
交換網を介して相手と個別につなぐのではなく、汎用のインターネット回線の上で暗号化した通信を行う形です。
回線が専用のものから汎用のものへ変わる、というのが従来型との一番大きな分かれ目になります。
この対比は方式の大枠を示すもので、実際にどのプロトコルのどのバージョンで接続するかは、取引先が指定する規格書の側で決まります。
「インターネット回線を使う方式に変わる」という理解は共通の土台として持ちつつ、細かい仕様は相手の指定に沿って確認する、という二段構えになります。
もう一つ、呼び方の幅にも注意が要ります。
Web-EDIやインターネットEDIという言葉は、画面に人がログインして発注データを見たり取り込んだりする形にも、システム同士がファイルを自動的にやり取りする形にも使われます。
取引先から「Web-EDIに切り替えたい」と案内されたとき、どちらを指しているのかで自社に残る作業量はまったく変わります。
画面運用が前提なら人の手が毎日入りますし、ファイル連携なら社内システム側の受け口を作る話になります。
自社が使っている通信手順を確認する視点
自社がどちら側なのかを見分ける材料は、たいてい三か所に散らばっています。
取引先ごとの接続に関する取り決め書、EDI装置やソフトの設定内容、そして回線の契約書です。
手順名が書かれているのは取り決め書や設定画面で、回線の種別が分かるのは契約や請求の側です。
確認する単位は「自社全体」ではなく「取引先ごと」にします。
先に触れたように、同じ会社の中で複数の通信手順が並んで動いていることがあるためです4。
取引先の名前を縦に並べ、それぞれの通信手順と回線、データの受け渡し時刻を横に書き出す。
この一覧が、このあとの期限の当てはめ、協議の順番決め、テスト計画の土台になります。
従来型EDI回線が使えなくなる具体的な時期はいつか
INSネットの新規受付終了(2024年8月)とサービス終了(2028年12月)
NTT東日本は、INSネット64・INSネット64ライト・INSネット1500の新規申込受付を2024年に終了し、関連サービス全体を2028年をもって提供終了するとしています2。
EDIの回線としてINSネットを使っている場合も、この予定の対象に含まれます。
二つの日付は意味が違います。
新規申込受付の終了は、拠点を増やしたり移転したりするときに同じ回線を新たに引くことができない、という段階です。
提供終了は、その回線でのやり取り自体が続けられなくなる日です。
いま動いている接続に直接効いてくるのは後者ですが、事業所の増設や移転を予定している企業にとっては、前者のほうが先に影響します。
対象範囲も押さえておきます。
ここで示した予定はNTT東日本が公表した内容です。
他のエリアや他の事業者と契約している場合は、自社の契約先の案内で期限を確かめる必要があります。
また、すでにIP網に対応したEDIへ移行済みの接続については、この期限の話は当てはまりません。
取引先や業界の移行方針が自社より先行する場合
回線の提供終了日は上限であって、自社にとっての期限とは限りません。
取引先が先に切替日を決めれば、その日程が自社の期限になります。
逆に、自社が切り替える準備を整えても相手が旧方式のままなら、その取引先との接続は旧方式で残さざるを得ません。
そのため、期限は一本ではなく取引先ごとに存在すると考えたほうが実態に合います。
先ほど作った取引先ごとの一覧に、相手から提示された切替日や、相手の業界の動きを書き添えていくと、いつまでに何本の接続を移すのかが見えてきます。
進め方の目安としては、インターネットEDI普及推進協議会の移行の手引きが、移行期間の後ろに遅れへの備えとなる予備の期間を置く組み立てを示しています3。
期限の間際に全取引先のテストが重なりやすいことを踏まえた設計です。
最終期限に自社の完了予定を合わせるのではなく、その手前に完了を置いて余白を残す、という考え方になります。
Web-EDIに切り替えるとコスト・運用負荷はどう変わるか
受注側企業の導入コストが大きくかからないケース
中小企業庁の解説では、中小企業共通EDI標準に対応したプロバイダーや業務アプリケーションを利用する受注側企業の場合、導入に大きな費用はかからないとされています1。
注文を受ける側が、標準に対応した既製のサービスをそのまま使う場面についての説明です。
この条件は読み替えに注意が要ります。
自社が発注側として、取引先の数だけ送信の仕組みを用意する立場であれば、同じようには当てはまりません。
また、既存の基幹システムからデータを出し入れする改修が必要な場合も、話は既製サービスの利用だけでは済みません。
「受注側か発注側か」「既製のサービスに合わせられるか、社内システムに合わせるか」で負担のかかり方が変わる、という見方で自社を当てはめてください。
業務時間削減の実証データ(51.4%〜53.3%)
効果の側についても、公表されている数値があります。
中小企業庁は2016年度に12のプロジェクトを選定して実証事業を行い、中小企業の受発注業務時間の削減率は平均51.4%だったとしています1。
同じ時期の実証事業について、受発注のデジタル化に関する報告書では、全プロジェクトの中小企業平均で53.3%という記載もあります5。
| 出典 | 集計の範囲 | 削減率 |
|---|---|---|
| 中小企業庁(ミラサポplus) | 実証12プロジェクトにおける中小企業の平均(2016年度) | 51.4% |
| 中小企業庁「受発注のデジタル化に関する推進方策 報告書」 | 全プロジェクトの中小企業平均(2016年度) | 53.3% |
二つの数値が一致しないのは、集計の取り方が違うためとみられます。
どちらか一方を「EDI導入の効果」として断定する読み方はできません。
押さえておきたいのは、中小企業共通EDI標準を導入した実証において、受発注にかけていた時間がおおむね半分程度まで下がったと報告されている、という水準感のほうです。
そして、この数値は2016年度に実施された実証事業で、中小企業を対象に測られたものです15。
自社で同じ削減率になることを示すものではありません。
どれだけ効果が出るかは、いま何件の注文をどの作業で処理しているかによって変わります。
受注データを画面で見ながら自社システムへ打ち直している時間が長いほど削減の余地は大きく、すでに自動で取り込めている部分が多ければ、時間の面での変化は小さくなります。
金額の相場ではなく、自社の条件で見積もる
一方で、従来型EDIの回線・装置の維持費と、インターネット回線を使う場合の費用とを金額で直接比べた公的な資料はありません。
ここは相場として示せる数字がない部分で、自社の契約内容から組み立てるしかありません。
見積もりに入れておく要素は、回線の費用、EDI装置やソフトの保守、切替に伴うテストの工数、そして並行運用の期間です。
完全移行までは旧システムと新システムを並行して動かす必要があるとされているため3、その間は両方の維持費が並びます。
「切り替えた月から旧方式の費用が消える」という前提で計画を立てると、資金繰りの面でずれます。
逆に言えば、並行運用の期間を短くできるかどうかが金額面では効いてきます。
そしてその期間の長さは、自社の作業速度よりも、取引先が何社あって、それぞれがいつ動けるかで決まります。
取引先ごとに接続方式や切替時期の要求が異なる場合どう対応すべきか
業界によって共通EDI保有率・移行率に差がある実態
取引先側の事情は、業界によってかなり違います。
2021年度に8つの業界団体を対象として行われた調査では、業界標準EDIを保有していたのは4団体でした5。
さらに、業界標準EDIを保有している業界においても、その業界における中小企業のEDI利用率は25%未満とされています5。
調査対象は特定の業界団体であり、全業界の平均としてそのまま自社の業界に当てはめられる数字ではありません。
それでもこの調査から読み取れることがあります。
「業界に標準がある」ことと「取引先がその標準を使っている」ことは別だ、という点です。
標準が用意されていても相手が使っていなければ、結局は個別の取り決めで接続することになります。
取引先から示された方式が業界標準の名前で呼ばれていても、実際のデータ項目や運用は相手ごとに違いうる、という前提で確認したほうが齟齬が出にくくなります。
相手が動いていない状態をどう扱うか
接続先が多い企業ほど、この差は重くのしかかります。
フジモトホールディングスの例では、取引先の小売店約500弱のうち、IP網に対応した流通BMSやWeb-EDIなどへ移行済みだったのは10%強でした4。
これは2016年時点の一社の状況で、業界全体の水準でも現在の水準でもありませんが、接続先の数が多ければ相手の足並みがそろわない状態が長く続きうることは分かります。
そこで手引きは、移行方式として取引先ごとの順次移行、グループ単位の段階移行、一括移行のいずれかを検討すべきだとしています3。
接続先の数、自社の要員、相手の準備状況によって、現実的に選べるものが変わります。
どれを選ぶにしても、手引きは自社の都合だけで一方的に進めず、取引先の業界方針や都合も踏まえて協議する必要があるとしています3。
協議で決めるのは切替日だけではありません。
いつからテストを始めるのか、旧方式をいつまで残すのか、切替の当日に問題が起きたときどちらの方式へ戻すのか。
この三点が決まっていないと、切替日だけ合意しても当日に判断できる人がいない状態になります。
Web-EDIへの移行はどのような手順・順序で進めればよいか
6段階の移行プロセスと並行運用の必要性
移行の全体像として、手引きは対応方針の検討、自社EDI環境の棚卸、接続先との調整、システム準備、並行運用を伴う移行期間、移行予備期という6段階のプロセスを示しています3。
そして、完全移行までは旧システムと新システムの並行運用が必要だとしています3。
並行運用という言葉は、旧方式と新方式を同時に動かす手間として理解されがちですが、実務ではもう少し具体的な負荷になります。
取引先ごとに切替日が違えば、ある日を境に全部が切り替わるわけではありません。
どの取引先が新方式で、どれがまだ旧方式なのかを日々把握したうえで、受け取ったデータを同じ業務の流れに合流させる状態が続きます。
移行期間中にいちばん間違いが起きやすいのはこの合流の部分なので、社内のどの担当がどちらを見るのかを先に決めておくと混乱が減ります。
接続先との調整をシステム準備より前に置く
段階の並びで目を引くのは、システム準備より先に接続先との調整が置かれている点です3。
相手の指定する方式やテストの日程が定まらないうちに自社側を作り込むと、決まった後に手戻りが生じます。
調整を先に置くのは、作るものを決めるための情報が相手側にあるからです。
この調整に持ち込む材料が、前半で作った取引先ごとの一覧です。
現在の通信手順、回線、やり取りしているデータの項目、送受信の時刻。
いま動いている条件を相手に示せると、相手側も「何をどう変える話なのか」を自社の言葉で確認できます。
逆に、自社の現行条件が曖昧なまま協議に入ると、相手の案内をそのまま受けるほかなくなり、社内で必要な改修の大きさを後から知ることになります。
移行前テスト(疎通・システム・業務連携)の進め方
本番移行の前のテストは、疎通テスト・システムテスト・業務連携テストの3段階で構成されるとされています3。
つながることの確認から、データが受け渡せることの確認、そして業務として回ることの確認へと、見る範囲が段階的に広がる組み立てです。
このテストは取引先ごとに行うことになります。
接続先が多いほど、作業の中身よりも日程の調整が主要な仕事になります。
相手の要員が確保できる時期に左右されるため、1社あたりどれくらいの準備期間が必要かを一般的な目安として示せる確認済みの数値はありません。
だからこそ、棚卸の段階で取引先ごとの想定テスト時期を並べておくと、後ろに寄せられない接続先と、まだ余裕のある接続先の区別がつきます。
もう一つ、テストの結果として業務の手順が変わる場合があることも見込んでおきます。
受け取るデータの項目や届く時刻が変われば、社内で確認していた内容や、確認する時間帯も変わります。
業務連携テストは、この変化を本番前に業務側の担当者が確かめる場という位置づけになります。
システム部門だけで完結させると、切替後に現場で初めて気づく、という順番になりかねません。
切替の要否、期限の考え方、進め方の骨格はここまでで整理できます。
残るのは、自社の取引先一覧に日付を入れて、どこから協議を始めるかを決める作業です。
回線の期限は外から決まりますが、どの取引先から動かすかは自社の受発注の流れを見ないと決められません。
現在の接続先ごとの通信手順と、切替後に社内へ残る転記や確認の作業がどこかを一緒に洗い出せます。無料相談で要件を整理する
従来型EDIとWeb-EDIの主な違い早見表
接続の土台である回線と通信手順から、その先の継続可否と進め方へという順で並べています。
- 通信の前提:JCA手順はダイヤルアップ接続を前提とした1980年代の仕様とされ、流通BMSはインターネットVPN上のHTTPS通信やAS2プロトコルを採用している6
- 回線:JCA手順や全銀手順などを使う企業はISDN回線を利用することが多く、Web-EDIは汎用のインターネット回線の上で動く46
- 継続可否:NTT東日本のINSネット関連サービスは2024年8月末に新規申込受付を終了し、2028年12月末に提供終了が予定されている2
- 取引先の足並み:業界標準EDIを保有していたのは調査対象8業界団体のうち4団体(2021年度)で、指定される方式や時期は取引先ごとに異なりうる5
- 移行のしかた:完全移行までは旧システムと新システムの並行運用が必要とされ、順次・段階・一括のいずれで進めるかを協議して決める3
自社がどちら側かは、EDI装置がつながっている回線の種別と、取引先から指定されている通信手順の名前で見分けられます。
要点の整理
| 判断の軸 | 見極めの基準 |
|---|---|
| 切替の要否 | EDI装置がISDNなどの回線につながっているか、取引先から方式変更の打診が来ているか |
| 期限 | NTT東日本のINSネット関連サービスは2028年12月末に提供終了予定。取引先の指定日が早ければそちらが実質的な期限 |
| コスト | 金額の相場を示す資料はない。回線・保守・テスト工数に加え、並行運用期間は旧新の費用が並ぶ前提で見積もる |
| 効果の見方 | 中小企業共通EDIの実証では業務時間の削減率が51.4%/53.3%と報告。2016年度・中小企業対象の値として扱う |
| 取引先対応 | 自社都合で決めず、順次・段階・一括のどれで進めるかを協議して決める |
| 移行作業 | 方針検討から予備期までの6段階。テストは疎通・システム・業務連携の3段階を取引先ごとに実施 |
移行の日程は取引先の都合に左右されるため、社内だけで工数を見積もると余白の取り方を誤ります。 棚卸した接続先の一覧をもとに、協議を始める順番とテストの並べ方を具体化できます。
よくある質問
取引先ごとにWeb-EDIの規格が違う場合、複数対応のシステムをどう選べばよいか
まず、取引先ごとに指定されている方式を一覧に並べ、同じ規格でまとめられる相手と、個別対応が残る相手を分けます。
業界標準EDIを保有していたのは調査対象8業界団体のうち4団体という状況もあり5、全取引先が一つの規格に収まる前提は置けません。
選ぶときに見る観点は二つです。
一つは、いま指定されている方式を満たせるかどうか。
もう一つは、完全移行までは旧システムと新システムの並行運用が必要になるため3、移行期間中に旧方式の接続も並べて運用できる体制になるかどうかです。
ISDN回線終了までに移行が間に合わない場合はどうなるか
NTT東日本のINSネット関連サービスは2028年12月31日をもって提供終了が予定されています2。
その後は同サービスを使った通信を続けることはできません。
ただし、自社にとっての実質的な期限はこれより早くなることがあります。
取引先が先に切替日を決めた場合、その日程に間に合わせる必要があるためです。
手引きが移行期間の後ろに予備の期間を置く組み立てを示しているのも3、遅れが出ることを前提に余白を残す考え方によるものです。
全接続を同時に間に合わせるのが難しい場合は、どの取引先から先に移すかを協議して決めることになります。
流通BMSとWeb-EDIは同じ意味か
同じ意味ではありません。
流通BMSは流通業界向けの標準で、インターネットVPN上のHTTPS通信やAS2プロトコルを採用しているとされています6。
一方、Web-EDIやインターネットEDIは、インターネット回線を使う方式をまとめて指す呼び方として使われます。
関係としては、インターネット回線を使う方式の中に流通BMSという標準がある、という形です。
取引先が「Web-EDI」と案内してきたときに、流通BMSを指しているのか、その会社独自の画面やファイル連携を指しているのかは、案内された時点で確かめておく必要があります。
移行時の接続テストは取引先ごとにどの程度の準備期間が必要か
本番移行前のテストは、疎通テスト・システムテスト・業務連携テストの3段階で構成されるとされています3。
ただし、1社あたりに必要な期間の目安を示せる確認済みの資料はありません。
期間を左右するのは、相手側の要員がいつ確保できるか、既存のデータ項目をどれだけ変えるか、業務側の確認にどの担当が入るかといった条件です。
接続先が多い場合は、テストの中身よりも日程の重なりが制約になります。
棚卸の段階で取引先ごとの想定時期を並べ、期限の直前に集中しそうな相手から先に打診しておく進め方が現実的です。
- 1 出典:中小企業庁「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!(ミラサポplus)」(2018年)
- 2 出典:東日本電信電話株式会社(NTT東日本)「INSネットの新規申込受付・提供終了について」(2024年)
- 3 出典:インターネットEDI普及推進協議会(JiEDIA)「インターネットEDI移行の手引き V2.0.0」(2019年)
- 4 出典:日経クロステック「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 5 出典:経済産業省 中小企業庁「受発注のデジタル化に関する推進方策 報告書」(2022年)
- 6 出典:IT用語辞典 e-Words「流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)とは」(年不明)
画像の出典元
- インターネット接続に使うLANケーブルのコネクター/doctor-a on Pixabay