◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 買掛業務の属人化は、引継ぎが困難、手順が文書化されていない、特定の人が抜けると止まる、という3つの兆候で見分けられる
- 中小企業の経理担当者362名の調査では、働き方や実務の悩みの最多が業務の属人化で50.0%だった
- 原因を資源・標準化・能力に分けると、分掌の見直し、マニュアル化、判断の共有のどれから着手するかが決まる
- 人員に余裕がない場合は標準化から入り、止まると社外に影響する支払期日・振込・承認の工程を先に書き出す
- システム化は棚卸しの後に、どの転記が減りどの確認が残るかを分けて検討する
目次

買掛業務の『属人化』とは、具体的にどんな状態を指すのか
支払期日の前日に担当者が急に休み、どの請求書がどこまで処理済みなのかが誰にも分からない。
買掛業務では、こうした止まり方が実際に起こります。
中小企業の経理担当者362名への調査でも、働き方や実務の悩みとして最も多く挙がったのは「業務の属人化」で50.0%でした2。
属人化しているかどうかは、引継ぎが難しい、手順が文書化されていない、その人がいないと止まる、という兆候で見分けられます1。
そのうえで原因を、人手の問題なのか、手順が決まっていない問題なのか、判断が一部の人に偏っている問題なのかに分けると、マニュアル化・分担の見直し・システム化のどれから手をつけるかが決まってきます。
「属人化」という言葉は幅が広く、自分にしかできない仕事がある、という程度の意味でも使われます。
買掛業務で問題になるのはもう少し限定的で、その人がいない間に、請求書の突合から支払データの作成、振込の実行までのどこかが前へ進まなくなる状態です。
ここを曖昧にしたまま対策に入ると、とりあえずマニュアルを作る、で止まってしまいます。
判断の物差しは、外部の調査から借りることができます。
業務可視化ツールを使った経験がある全国142名への調査では、属人化の影響として挙げられた項目の上位が「業務の引継ぎが困難である」52.8%1、「手順やプロセスが文書化されていない」47.9%1、「キーパーソンの不在が業務に深刻な影響を及ぼす」44.4%1でした。
この調査は2024年1月に実施されたもので、対象は業務可視化ツールの使用経験者であり、経理や買掛の担当者に限った調査ではありません。
ですから買掛業務に固有の症状を示すものではなく、属人化という状態に共通して現れる症状の目安として読むのが妥当です。
逆に言えば、この3つは業務の種類を問わず現れるものなので、自社の買掛業務に当てはめて言い換えれば、そのままチェック項目になります。
引継ぎが難しくなっていないか
引継ぎの難しさは、引継ぎの場面が来るまで表面化しません。
普段は担当者が迷わず処理しているので、周囲の誰も難しさを感じないからです。
買掛業務で引継ぎを止めるのは、たいてい取引先ごとの個別事情です。
締め日と支払サイトが取引先ごとに違う、振込手数料をどちらが負担するかが契約ごとに異なる、相殺や値引きの扱いが過去のやり取りで決まっている、請求書が届かない先には毎月こちらから催促している。
こうした情報は、伝票にも会計システムの摘要にも残らないことがあります。
確かめ方は単純です。
担当者が1週間続けて休んだと仮定して、どの処理が誰の手元で止まるかを書き出してみる。
止まる場所に名前が一つしか書けないなら、その処理は引継ぎが難しい状態にあります。
手順が文書化されているか
文書化の有無は、3つの兆候のなかでもっとも白黒をつけやすい項目です。
ただし、マニュアルはあります、という答えで安心できるとは限りません。
買掛のマニュアルは、通常の請求書を受け取って支払うまでの流れは書かれていても、例外の扱いが抜けていることが少なくありません。
発注の一部だけが入荷したときの計上、締めの後に決まった値引きの反映、返品と翌月請求の相殺、前払金の充当、外貨建ての取引。
処理が止まるのは、いつもこうした場面です。
ですから文書化されているかを見るときは、手順書が存在するかではなく、直近半年で迷った処理が書き残されているかで判断すると、実態に近い答えが出ます。
特定の人が抜けると止まる業務がないか
3つ目の兆候は、担当者の不在が業務に深刻な影響を及ぼす状態です1。
買掛業務の場合、この「止まる」が支払遅延という形で社外に出てしまうところが厄介です。
止まり方は、処理手順だけの問題ではありません。
ネットバンキングの電子証明書が担当者の端末にしか入っていない、承認の権限が一人にしか付与されていない、仕入先と口頭で決めた支払期日の変更が本人の頭にしかない。
こうした形でも業務は止まります。
3つの兆候は独立しているようで連動します。
手順が書かれていないから引継ぎが難しく、引継ぎが難しいからその人以外が処理できず、結果として不在時に止まる、という順で深まっていきます。
どれか一つでも当てはまるなら、残りの2つもすでに進みかけていると見たほうが安全です。
| 属人化の影響として挙げられた項目 | 選んだ人の割合(n=142) | 買掛業務での現れ方 |
|---|---|---|
| 業務の引継ぎが困難である | 52.8% | 取引先ごとの締め日や支払サイト、手数料負担の取り決めが担当者の記憶にしかない |
| 手順やプロセスが文書化されていない | 47.9% | 一部入荷や締め後の値引き、相殺といった例外の扱いが書き残されていない |
| キーパーソンの不在が業務に深刻な影響を及ぼす | 44.4% | 担当者が休むと支払データの作成や振込の実行が止まり、遅延として社外に出る |
放置するとなぜ経理担当者自身の悩みになるのか
兆候が当てはまっても、今月の支払が滞りなく終わっている限り、優先順位は上がりにくいものです。
ただ、属人化は、いずれ困ることではなく、すでに現場の悩みの最上位に来ています。
中小企業の経理担当者362名を対象にした2024年6月の調査では、働き方や実務の悩みとして挙げられた項目のうち最も多かったのが「業務の属人化」で、50.0%でした2。
回答したのは中小企業の経理担当者が中心で、経理が複数チームに分かれた大企業の実態を示す調査ではありません。
それでも、経理を数名、あるいは一人で回している会社にとっては、自社の話として読める数字だと思います。
この結果で目を引くのは、属人化が経営側の心配事としてではなく、担当者本人が挙げた悩みの最多として出ている点です。
体制のリスクという抽象的な話に見えても、日々の負担として先に効いてくるのは本人のほうだということです。
本人の悩みになる道筋は、いくつかに分けられます。
まず、休みが取りにくくなります。
買掛業務には支払期日という動かせない締切があり、代われる人がいなければ、体調不良も家庭の事情も期日の前には言い出しにくくなります。
次に、確認の役が自分しかいなくなります。
金額や振込先を間違えても、気づくのは自分自身か、入金がないと連絡してきた取引先です。
ミスの発見が社外からになるほど、対応の手間も心理的な負担も大きくなります。
管理者の側から見ると、同じ状態は欠員時のリスクとして映ります。
退職の申し出から実際に抜けるまでの期間は限られていて、その間に文書化されていない判断を全部引き出すのは現実的ではありません。
引継ぎが困難だという回答が最多だったのは1、この難しさが業務を問わず共有されているからだと考えられます。
もう少し長い目で見れば、自分にしかできない業務を抱え続けることは、担当者自身の異動や配置転換の選択肢を狭めることにもつながります。
属人化の解消を、業務を取り上げられることではなく、任せられる形に整えることだと捉え直すと、着手する理由が自分の側にも見つかります。
属人化はなぜ起きるのか、原因別に解消の方向性を分ける
兆候が見えたら、次は原因です。
ここを飛ばして打ち手から入ると、マニュアルを作ったのに属人化が解消しない、という結果になりがちです。
先ほどの経理担当者調査では、属人化の要因が3つに整理されています2。
人手不足や採用難で職務分掌ができないという資源の課題、マニュアルが作られていない・指導にばらつきがあるという標準化の課題、判断力を要する業務は一部の人しかできないという能力の課題です。
以下では、この3類型が買掛業務でどう現れるかと、どの打ち手に向かうかを見ていきます。
類型の分け方は調査の整理に基づくものですが、打ち手との対応づけは編集部としての考え方であり、どの方法がどれだけ効いたかを測った数値ではありません。
資源の課題(人手不足・職務分掌ができない)
資源の課題は、人が足りないために一人が複数の役割を持たざるを得ない状態です。
買掛業務では、支払依頼の受付、請求書と発注・検収の突合、支払データの作成、振込の実行、記帳までを同じ人が担っているケースがこれに当たります。
この課題の厄介なところは、原因がはっきりしているのに、いちばん解決に時間がかかることです。
採用にも育成にも期間が必要ですし、経理の増員は売上に直結しないため、稟議も通りにくい。
すぐに人を増やせない場合でも、分掌の線を引き直す余地は残っています。
たとえば振込の実行だけを上長が行う、新規取引先の口座登録だけを別の人が確認する、というように、工程を丸ごと分けるのではなく、リスクの高い一点だけを別の人に移す形です。
追加の工数は限定的で、担当者が一人で完結させる範囲を確実に減らせます。
標準化の課題(マニュアル未整備・指導のばらつき)
標準化の課題は、やり方が決まっていない、あるいは決まっていても人によって教え方が違う状態を指します。
先に見た、手順やプロセスが文書化されていないという兆候と、そのまま重なります1。
3つの類型のなかで、これは最も自分たちだけで着手しやすい課題です。
人を増やす必要も、システムを買う必要もなく、今の担当者が今の業務を書き出すところから始められます。
ただし、作業手順だけを書いたマニュアルは、属人化の核心を外すことがあります。
買掛業務で引継ぎを難しくしているのは、画面のどのボタンを押すかではなく、この請求書を今月計上してよいのか、この差額は値引きなのか請求ミスなのか、という判断のほうだからです。
手順書に、なぜそう処理したのかを書く欄を設けるだけでも、残る情報の質は変わります。
能力の課題(判断業務が一部の人に集中)
能力の課題は、判断を伴う業務を一部の人しかできない状態です。
マニュアルを整えても、そこに書かれていない状況に出くわしたときに判断できるかどうかは、経験に左右されます。
買掛業務でいえば、請求額と発注額に差が出たときの扱いがこれに当たります。
差額があるという事実だけでは、単価の取り違えなのか、送料の別途加算なのか、数量違いなのか、値引きの反映漏れなのかは決まりません。
差額が一定以上なら保留、といった一律のルールを作っても、確かめる相手と資料が分からなければ判断はできないままです。
ですから、何と何を照合して確かめるのかを共有する形にする必要があります。
能力の課題には、文書化だけでは届きません。
月次のうち何件かを二人で見る、判断に迷った案件だけを持ち寄る、といった形で、判断する場そのものを一人から外すほうが現実的です。
| 要因の類型 | 買掛業務での現れ方 | まず向かう方向(編集部の整理) |
|---|---|---|
| 資源の課題(人手不足・採用難で職務分掌ができない) | 突合から支払データ作成、振込、記帳までを同じ人が担っている | リスクの高い一点だけを別の人に移し、分掌の線を引き直す |
| 標準化の課題(マニュアル未整備・指導のばらつき) | 例外処理の扱いが書き残されず、聞かないと分からない | 判断の理由を含めた文書化から着手する |
| 能力の課題(判断業務が一部の人しかできない) | 請求額と発注額の差額の扱いが特定の人にしか判断できない | 判断の場を二人にする、確認の体制やシステムで補助する |
自社の規模や取引先の状況に応じて、どこから優先すべきか
3つの類型は、どれか一つだけが当てはまることは少なく、たいていは混ざっています。
そのうえで順番を決めるなら、着手までの距離が判断材料になります。
資源の課題は最も根本的ですが、採用や配置の変更が必要なので、着手から効果が出るまでがいちばん遠い。
能力の課題は、判断を共有する相手がいて初めて動かせるので、そもそも人がいない会社ではすぐに取りかかれません。
標準化の課題だけは、今の担当者が今の業務を書き出すところから始められます。
参照している経理担当者調査の回答者は、中小企業の経理担当者が中心です2。
この規模で人員に余裕がない状況を前提にするなら、標準化から入り、能力の課題は複数人での確認やシステムでの補助と組み合わせていく進め方が現実的だと考えます。
これは調査対象の顔ぶれを踏まえた目安であり、実際の取引先数、承認フローの複雑さ、すでに使っているシステムの有無によって、適した順番は変わります。
取引先の状況を見るときは、件数よりも例外の多さで判断するほうが実態に合います。
取引先が20社でも、支払条件が1社ずつ違い、毎月どこかで相殺や値引きが発生するなら、文書化の価値は高い。
逆に取引先が100社あっても、支払条件が数パターンに収まり例外がほとんど出ないなら、書き残す量は思ったより少なく済み、重心は定型処理の効率化に移ります。
人員に余裕がない場合、どこから書き出すか
一人、あるいは二人で買掛を回している場合、業務全体を網羅した文書を作る時間は取れません。
優先するのは、止まったときに社外へ影響が出る処理です。
具体的には、支払期日の管理、振込データの作成と実行、承認の経路、そして口座情報の登録と変更です。
これらは遅延や誤送金という形で外に出るうえに、代わりの人が推測で進めることができません。
一方、月次の残高照合や資料の保管方法は、数日遅れても社外には影響しにくいので、後回しにできます。
全部を整えようとすると、たいてい途中で止まります。
止まると社外に出るかどうかで線を引けば、限られた時間でも守る範囲が決まります。
複数名で回している場合、線をどこに引くか
経理が数名いる場合は、標準化と並行して分掌の線を引き直せます。
買掛業務で優先度が高いのは、支払依頼を受けて支払データを作る人と、振込を実行・承認する人を分けることです。
作成と実行が同じ人に揃っていると、書き間違いも取り決めの記憶違いも、途中で止まる場所がありません。
そのうえで、能力の課題には担当の入れ替えが効きます。
取引先ごとに担当を固定せず、期を区切って入れ替える、あるいは月次のうち一定の件数を別の人が処理する。
手間は一時的に増えますが、書かれていない判断がどこに残っているかは、実際に他の人が処理してみないと分かりません。
| 自社の状況 | 先に着手すると効きやすいこと | 当面は後回しにできること |
|---|---|---|
| 担当が1〜2名で増員の見込みがない | 支払期日の管理と振込・承認の経路を書き出す | 月次の残高照合や資料保管の手順化 |
| 経理が数名いて分担の余地がある | 支払データの作成者と振込の承認者を分ける | 取引先ごとの担当固定の全面的な見直し |
| 取引先は少ないが支払条件の例外が多い | 例外処理の判断基準を理由つきで文書化する | 定型処理の効率化 |
| 取引先は多いが支払条件が数パターンに収まる | 定型処理の手順統一と入力作業の見直し | 例外ごとの細かな手順書づくり |
解消に向けて何から着手し、どう進めればよいか
方向が決まったら、進め方は、現状の棚卸し、マニュアル化、複数人での確認、必要に応じたシステム化の検討、という順になります。
この順番は、ここまでの原因の分類と規模の目安を踏まえた提案であり、効果を測った結果ではありません。
すでに一部が整っている会社なら、途中から入っても構いません。
現状の棚卸しで何を書き出すか
最初にやることは、マニュアルを書くことではなく、何が属人化しているかを特定することです。
いきなり手順書に取りかかると、書きやすいところから埋まっていき、肝心の判断が抜けます。
買掛業務の1か月の流れに沿って、工程ごとに、誰が、何を見て、何を決めているかを並べます。
請求書の受領、発注書や検収データとの突合、差額が出たときの扱い、計上のタイミング、支払データの作成、承認、振込の実行、記帳、残高の照合。
この並びのどこに、本人にしか答えられない判断があるかを見ていきます。
何を決めているかの欄が空のままの工程は、ほとんどが定型作業です。
ここは文書化すれば他の人でもできる可能性が高い。
逆に、その欄が埋まる工程が属人化の本体で、後からマニュアルを書くときの出発点になります。
マニュアル化から複数人での確認へ
棚卸しで判断が集中している工程が見えたら、そこから書きます。
順序を逆にしないほうがよい理由は単純で、定型作業の手順書は後からでも誰かが書けるのに対し、判断の理由は本人が在籍しているあいだにしか引き出せないからです。
書き方は、状況と、確かめたことと、決めたことの3点で足ります。
請求額が発注額より多い場合、納品書と検収データの数量を照合して送料の別途加算かどうかを確認する、加算が契約上認められていれば計上し、認められていなければ取引先に問い合わせる、といった具合です。
文章として整っていなくても、判断の分かれ目が残っていれば、他の人が同じ順で確かめられます。
書き終えたら、次は別の人が実際に読んで処理してみる番です。
全件を二人で見る必要はありません。
一定金額を超える支払、新規の取引先、支払条件が変わった取引先。
確認の対象をここに絞るだけでも、書き漏れがどこにあるかは見えてきます。
このとき、担当者本人は横で見ているだけにするのが要点です。
口を出せば処理は早く終わりますが、マニュアルの不足は見つからないまま残ります。
システム化を検討する段階の見方
システム化を最後に置いているのは、順番として後回しという意味ではなく、判断材料が揃ってからのほうが選びやすい、という意味です。
棚卸しが終わっていれば、どの工程で何回転記しているか、確認のときに何と何を照合しているかが分かっているので、何を減らしたいのかを言葉にできます。
検討するときに見るのは、機能の多さではなく、自社のどの転記が減り、どの確認が残るかです。
たとえば請求書のデータを取り込めるようになれば、金額や日付を会計システムへ打ち直す作業は減ります。
一方で、その請求が発注どおりかを確かめる作業や、差額の理由を判断する作業は、形を変えて残ります。
データを取り込めることと、そのデータが妥当かどうかを判断できることは別なので、ここを混同すると、導入後に思ったほど楽にならなかった、という感想になります。
もう一つ、システムを入れても、設定や運用の仕方が一人の頭にしかなければ、属人化の置き場所が変わるだけです。
誰がマスタを更新し、誰が権限を管理するかを、導入と同じタイミングで決めておく必要があります。
着手してからどこまで進んだかは、作った文書の量では測れません。
最初に挙げた3つの兆候に戻り、引継ぎ資料だけで別の人が処理できるか、例外の扱いが書かれているか、一人が抜けても止まらないかを、期を区切って見直すほうが実態に合います。
自社がこの進め方の目安に近い規模かどうかは、参照した調査に答えた人たちの顔ぶれと見比べると判断しやすくなります。
| 買掛業務の工程 | 書き出すこと | 判断が残りやすいか |
|---|---|---|
| 請求書の受領 | 郵送・メール・取引先のWeb画面など受け取り経路と担当 | 残りにくい |
| 発注書・検収データとの突合 | 何と何を照合しているか、どの資料を見ているか | 差額が出たときに残る |
| 計上のタイミング | どの月に計上するかの決め方と例外の扱い | 残りやすい |
| 支払データの作成と承認 | 作成者と承認者、権限が誰にあるか | 残りにくい |
| 振込の実行 | 実行の経路と電子証明書・権限の管理 | 残りにくい |
| 残高の照合 | 照合する資料と、差異が出たときの扱い | 差異の原因を見極める場面で残る |
自社の買掛業務のどこに判断が集中しているかは、毎日その処理をしている担当者ほど切り分けにくく、社内だけで棚卸しを始めると、定型作業の手順書づくりに寄ってしまいがちです。
請求書の受け取り方から突合、支払データの作成、承認、記帳までの流れを一緒に洗い出すと、文書化すれば他の人でもできる工程と、判断が残るために分担や仕組みで支える必要がある工程の線引きを確かめられます。無料相談で要件を整理する
この記事が参照した経理担当者調査は、どんな規模の会社の人が答えたか
回答者の勤務先規模(年商と従業員数)という一つの軸で、どんな会社の経理担当者が答えた調査かを見ています。
- 回答したのは中小企業の経理担当者362名で、調査は2024年6月に実施されている
- 年商は20億円未満の企業に勤める回答者が半数を超える
- 従業員数は100名未満の企業がおよそ半数を占める
- 経理が部門内で分業されている大企業を中心に据えた調査ではない
- 自社の規模がこの範囲に近いほど、悩みの出方や着手順の目安として読みやすい
経理が複数名で分業され、担当者どうしが入れ替われる体制であれば、課題の中心は属人化そのものより分担の設計や承認経路の整理に移ります。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 属人化しているかの判断 | 引継ぎの難しさ、手順の文書化、不在時に止まるかの3点を自社の工程に当てはめる |
| 兆候の見方 | 手順書の有無ではなく、直近半年で迷った処理が書き残されているかで見る |
| 原因の切り分け | 人手(資源)・手順(標準化)・判断(能力)のどれに当たるかで打ち手が変わる |
| 着手の優先 | 人員に余裕がなければ標準化から。止まると社外に影響する処理を先に書き出す |
| 取引先の見方 | 件数ではなく、支払条件の例外がどれだけあるかで文書化の必要度を測る |
| システム化の判断 | 棚卸しの後に、減る転記と残る確認を分けて検討する |
棚卸しと文書化まで進めたあとは、どの転記なら仕組みで減らせて、どの確認は人が残すべきかの見極めが難しくなり、機能の比較だけでは自社に必要な範囲が決まりません。 自社の取引先数と支払条件の例外の出方、承認の経路を前提に、いま手を入れると効く工程と、当面は運用で回したほうがよい工程を整理できます。
よくある質問
経理担当者が退職・休職する前にできる属人化対策には何がありますか
残された期間で業務全体を文書化するのは、現実には難しいと思います。
優先するのは、止まったときに社外へ影響が出る処理です。
支払期日の一覧、承認と振込の経路、ネットバンキングの権限や電子証明書の所在、そして取引先ごとの例外の取り決め。
このあたりを、口頭ではなく本人に画面を操作してもらいながら書き取ると、手順だけでなく判断の材料も残ります。
権限やIDの移管は、後から本人に聞けなくなる典型なので、退職日から逆算して早めに動かしておくと安全です。
マニュアル化とシステム導入は、どちらを先に着手すべきですか
多くの場合はマニュアル化が先です。
現在の手順と判断が整理されていないと、システムに何を載せるのか、どこを自動化したいのかが決められないためです。
ただし、すでに手順が定型で、同じ情報を複数の画面へ打ち直している自覚があるなら、棚卸しと並行してシステム化の検討を始めても構いません。
どちらを先にするとどれだけ効果が出るかを比較した資料は確認できていないので、順番は、自社で転記がどれだけ発生しているかと、判断がどれだけ属人化しているかを見て決めるのが現実的です。
一人経理の会社でも属人化は解消できますか
完全な職務分掌は難しいのが実情です。
ただ、属人化の兆候として挙げた3つのうち、手順が文書化されていないことと、その人が抜けると止まることについては、一人でも手を打てます。
文書化は本人の作業ですし、確認の役は経理の外に置くこともできます。
振込の承認を代表者や上長が行う、口座情報の登録・変更だけは別の人が突き合わせる、といった形です。
取引先数や社内の体制によって置ける場所は変わるので、まずは止まると社外に影響する工程から、経理の外で確認できる相手を探すことになります。
属人化解消の進捗は、どうやって確認すればよいですか
作った文書の量ではなく、別の人が動けるかどうかで見ます。
手軽なのは、担当者が1週間不在だと仮定して、どの処理が誰の手元で止まるかを書き出す方法です。
最初に同じことをやっていれば、名前が一つしか書けなかった場所が減っているかを比べられます。
もう一歩進めるなら、月次の一部を実際に別の人が処理してみて、担当者は質問に答えず横で見ているだけにする。
止まった箇所がそのまま、マニュアルに足りない部分です。
- 1 出典:株式会社NEXER/オクトパス(株式会社テクノデジタル)「業務可視化ツールを使用して業務を行った経験に関するアンケート」(2024年)
- 2 出典:株式会社ミロク情報サービス MJS税経システム研究所「中小企業の経理担当者の働き方&実務の困りごと実態調査」(2024年)