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買掛金業務の手戻りはなぜ起きる?発生工程の見分け方と原因別の対策

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 差し戻しは、受領・照合/承認・支払照合/支払実行のどこで止まったかを記録して仕分けると、原因の当たりが付く
  • 受領形式の混在は請求書処理が煩雑と感じる要因の最多に挙がり、支払い漏れの原因も受け取った後の申請の遅れや失念に偏っている
  • 検収者と支払照合担当者が同一だと照合の効果は期待できず、誤りが見つかる時点が遅れて計上月をまたいだ修正になりやすい
  • 対策は、手作業中心なら3点照合の明文化、担当が一人に偏るなら職務分掌の見直し、連携が進んでいるならデータ標準化の順で検討する
  • 流通BMSのような標準化は卸売・小売間のEDIを対象としており、効果は取引先側の対応状況に左右される

20代後半の日本人男性が休憩スペースでの確認をしている場面

差し戻しが続くときは、まずどの工程で止まっているかを切り分ける

月末が近いのに、承認へ回した請求書が「単価が発注と違う」「検収がまだ確認できない」と戻ってきて、同じ伝票を何度も触っている。
こうした差し戻しを減らす出発点は、一件ずつ丁寧に直すことではなく、手戻りがどの工程で止まっているかを切り分けることです。
買掛金の手戻りは、証憑の形式や記載内容が揃わない「受領・照合」と、検収と支払照合の役割が分かれていない「承認・支払照合」に集中しやすく、原因が違えば効く対策も変わります。
工程ごとに原因を見分けられれば、3点照合を必ず通る手順にするのか、職務分掌を見直すのか、取引先とのデータ連携を標準化するのか、自社の体制に合った着手順を判断できます。

「単価が違う」「検収がまだ」「この費目ではない」。
差し戻しのコメントは一件ずつ違って見えますが、伝票が止まる場所はそれほど多くありません。
買掛金の処理は、発注し、届いたものを検収し、届いた請求書を発注・検収の記録と照合し、支払データを作って実行する、という流れで進みます。
三優監査法人が示している仕入・買掛金の内部統制の解説では、この流れのなかで検収者と支払照合担当者が同じ人であれば、照合による統制効果は期待できないとされています3。
同じ「照合」という作業でも、誰がどの工程を担っているかで効き方が変わるということです。
原因を担当者の不注意としてまとめる前に、工程で区切って眺めることが、対策を選ぶ土台になります。

切り分けは、特別な分析をしなくても始められます。
直近1か月分の差し戻された伝票を並べ、戻された理由を「請求書の中身が発注や納品の記録と合わない」「検収や承認の判断が確認できない、あるいは人によって違う」「支払データを作った後に組み替えが発生した」の3つに仕分けます。
1つ目が多ければ受領・照合工程、2つ目が多ければ承認・支払照合工程、3つ目が多ければ支払実行の段取りに原因が寄っています。
仕分けの粒度はこの程度で十分で、件数の多い工程から手を付ければ、同じ工数をかけても減らせる手戻りの数が変わります。

会計システムの上では、手戻りは「仕訳の修正」という形で記録されます。
ただ、修正の理由が仕訳の入力そのものにあることは、実際にはそれほど多くありません。
単価や数量が発注と違っていた、検収が済んでいなかった、計上月の認識が取引先とずれていた。
前の工程で決着していない事柄が、最後に数字を入れる場所で表面化します。
仕訳を直した件数だけを数えていると、原因が入力の精度に見えてしまいます。
修正した伝票について、どの証憑が揃っていなかったかまで一緒に残しておくと、工程ごとの偏りが見えてきます。

工程を切り分けずに対策を選ぶと、効かない場所に手が入ります。
たとえば承認フローを電子化しても、差し戻しの大半が発注書との単価相違で起きているなら、回覧が速くなるだけで往復の回数は変わりません。
逆に、証憑の突き合わせを仕組み化しても、判断基準が承認者ごとに違うままなら、書類が揃ったうえで別の理由で戻ってきます。
どちらの対策も間違いではなく、着手の順番が合っていないだけ、ということが起こります。

差し戻された伝票がどの工程で止まったかを分けると、確認すべき相手と打つべき対策が変わる
発注、検収照合、請求書との照合、支払実行の順に並んだ買掛金処理の工程図

出典:三優監査法人「三優ジャーナル(仕入・買掛金の内部統制事例解説)」2021年/特定の内部統制事例に基づく工程区分の解説

受領・照合工程で手戻りが起きる主な原因

受領形式のばらつきと支払い漏れの実態

受領・照合工程でまず効いてくるのは、請求書がどんな形で手元に届くかです。
請求書の受領・処理に携わる従業員1,100人を対象とした2024年8月の調査1では、請求書処理が煩雑だと感じる要因の最多が「紙やメールなど様々な形式で請求書が届くため煩雑」で、44.4%が挙げています1。
郵送された紙、PDFが添付されたメール、取引先のポータルからダウンロードするもの。
届き方が違えば、受け取った日も、誰の手元に最初に渡るかも変わります。

形式ごとに落ちやすい場所も違います。
郵送の紙は届いた先の部署で留まりやすく、メールのPDFは受信した個人の受信箱で止まります。
ポータルからのダウンロードは、こちらから取りに行かない限り、届いたことにすら気づけません。
経路が複数あること自体が問題なのではなく、経路ごとに誰がいつ受け取ったかが一覧にならないことが、滞留を見えなくします。

届き方のばらつきは、そのまま処理の滞留に姿を変えます。
同じ調査では、45.2%が過去に請求書の支払い漏れを経験していると回答しました1。
原因として挙がったのは「請求書を受け取っていたが申請が遅れた」が36.1%1、「紙の請求書が他の請求書に紛れるなどして処理を失念した」が33.0%1です。
受け取れていないのではなく、受け取った後、承認に回るまでの間で止まっている姿がここから読み取れます。

この調査は請求書の受領・処理に携わる従業員全般が対象で、買掛金の担当者だけを取り出した集計ではありません。
それでも、届き方が揃っていないほど手元での滞留が起きやすいという傾向は、買掛金の照合にも当てはめて考えられます。
届いた請求書が一覧になっていなければ、承認に回る順番は到着順ではなく、気づいた順になります。
締め日の直前に未処理分がまとめて出てきて、そこで初めて発注内容との食い違いが見つかれば、差し戻しの往復はそのまま締めの遅れになります。

3点照合による証憑チェックの考え方

受け取った請求書を何と突き合わせるか。
三優監査法人の解説では、発注内容・納品内容・納品書(検収書)の3つを照合する体制が、仕入計上の正確性を確保する仕組みとして機能するとされています3。
実務では、請求書の明細を発注書の条件と、納品・検収の記録と並べて見る形になります。

3点を並べる意味は、誤りを見つけることだけではありません。
どの2つが合わないかによって、確認すべき相手が変わります。
請求書と発注書で単価が違えば、確認先は発注条件を決めた部署か取引先です。
請求書と検収記録で数量が違えば、現物を受け取った現場に確認することになります。
どちらも合っているのに計上月がずれているなら、締めの区切り方の認識を取引先と揃える話になります。
差し戻しのコメントに「金額相違」とだけ書かれていると、受け取った側は3つのどこを直せばよいか分からず、確認のためのもう一往復が生まれます。
戻すときに、どの証憑とどの証憑が合わなかったかを書けるかどうかで、往復の回数は変わります。

差額が小さいから端数処理だろう、大きいから数量違いだろう、という当たりの付け方は、確認の順番を決める手掛かりにはなっても、原因の判定にはなりません。
値引きの計上時期、送料の扱い、返品の相殺。
金額だけを見れば同じに見える差でも、明細と契約条件を並べて初めてどれなのかが分かります。
なお、この3点照合の考え方は特定の内部統制事例の解説として示されたもので、導入によって手戻りが何割減るといった効果量が示されているわけではありません3。
仕組みとして整えることで期待できるのは、承認者が毎回発注書を探して現場に電話する手順が省け、差し戻しの理由を具体的に書けるようになることです。

受け取れていないのではなく、受け取った後に手元で止まっていることが読み取れる
受領形式の混在、申請の遅れ、紙の紛れ、支払い漏れの経験それぞれの回答割合を縦に並べた図

出典:株式会社TOKIUM「請求書の受領・処理に携わる従業員を対象とした実態調査」2024年8月/有効回答1,100人

どの2つが合わないかで、差し戻す相手と直すべき内容が変わる
発注書・検収記録・請求書の突き合わせと、不一致の種類ごとの確認先を示した図

出典:三優監査法人「三優ジャーナル(仕入・買掛金の内部統制事例解説)」2021年/3点照合の考え方は特定事例の解説で、数値的な効果量は示されていない

承認・支払照合工程で手戻りが起きる主な原因(属人化と職務分掌)

属人化の実態と背景

証憑が揃っているのに差し戻しが起きるなら、次に見る場所は判断のほうです。
中小企業の経理担当者362名を対象とした2024年6月の調査2では、実務の困りごとの最多回答が「業務の属人化」で、50.0%に上りました2。
この調査では背景として、人手不足・採用難によって職務分掌が難しいこと、マニュアルが整備されておらず判断基準にばらつきが出ること、難易度の高い判断業務が特定の担当者に集中していることが整理されています2。

属人化が手戻りに変わるのは、判断の基準が人に貼り付いているときです。
検収書が添付されていない請求書を、ある承認者は「毎月同じ取引だから」と通し、別の承認者は「検収の確認が取れない」と差し戻す。
申請する側から見れば、同じ書類を出しているのに結果が変わるので、次はどう出せばよいかが分かりません。
通るまで出し直す、という往復が定着します。
この手の差し戻しは、書類の不備ではなく基準の不在から起きているため、証憑を丁寧に揃えても減りません。

難しい判断が一人に寄っていることも、別の形で手戻りを増やします。
判断を仰ぐ相手の手が空くまで案件が待ち、まとめて処理される時点では前提が変わっていることがあります。
月初の発注条件で処理するつもりだった請求書が、月末に見返した時点では計上月をまたいでしまう、といった具合です。
担当者の能力の問題ではなく、判断が集まる場所が一か所しかないことによる待ち時間の問題です。

検収者・支払照合担当者の分離

判断の基準に加えて、誰が確認するかという配置も手戻りの量を左右します。
三優監査法人の解説では、発注者と検収者が同一の場合は検収照合による統制効果が期待できず、検収者と支払照合担当者が同一の場合も照合の効果は期待できないとされています3。
自分が発注したものを自分で検収し、自分が検収したものを自分で支払照合すると、突き合わせているように見えて、同じ理解の中で確認していることになります。

ここで実務上の負担になるのは、誤りが見つからないことよりも、見つかる時点が遅れることです。
一人の中で処理が完結すると、食い違いは後工程で誰かが気づくまで残ります。
上長の決裁、監査、顧問税理士のチェック、あるいは取引先からの請求や入金に関する問い合わせ。
どれも、発生から時間が経ってから届きます。
計上月をまたいで見つかった誤りは、伝票を直すだけでは済まず、締めた月の数字に手を入れるか、当月で調整するかの判断が必要になります。
これが、手戻り一件あたりの重さを押し上げます。

とはいえ、経理が一人か二人という体制で、工程ごとに人を割り当てるのは簡単ではありません。
全部を分けられなくても、発注と検収、検収と支払照合のうち、どちらか一方だけでも別の人が見る形にすれば、突き合わせに他人の目が入ります。
現場で受け取った人が検収の記録を残し、経理が請求書と突き合わせる分け方であれば、経理の人数を増やさずに担当を分けられます。
あわせて、差し戻す基準を文書にしておくと、承認者が交代しても同じ結論になりやすくなります。
検収記録がない場合はどう扱うか、単価差が契約と異なる場合は誰に確認するか。
この2点を決めておくだけでも、判断のばらつきから生まれる往復は整理できます。

人数を増やせない場合も、発注と検収、検収と支払照合のどちらか一方を分ける選択肢がある
検収と支払照合を同一担当が行う場合と分離した場合を縦に並べて比べた図

出典:三優監査法人「三優ジャーナル(仕入・買掛金の内部統制事例解説)」2021年/職務分掌に関する特定事例の解説

手戻りを放置すると締めと支払いにどう影響するか

ここまで見てきた原因は、どれも一件ずつ直せば処理が進むものに見えます。
実際、差し戻された請求書はその場で修正すれば通ります。
それでも構造のほうに手を入れる優先度を上げる理由は、手戻りが積み上がる先が、月次の締めと支払期日という動かせない期限だからです。

締めの側から見ると、手戻り中の請求書は金額が確定していない取引として残ります。
計上するか翌月に回すかが決まらないまま締め日を迎えれば、暫定の数字で締めて後から直すか、締めそのものを遅らせるかの二択になります。
差し戻しが特定の取引先や特定の費目に偏っていると、月次の数字が毎月同じ場所で動くことになり、前月比の増減を見ても実態の変化なのか処理の遅れなのか判断しにくくなります。
締めの遅れは、遅れた分だけ次の月の処理時間を削るので、翌月も同じ場所で滞りやすくなります。

支払いの側には、もっと余地がありません。
振込期日は取引先との取り決めで決まっているため、差し戻し中の請求書は期日直前の例外処理として割り込みます。
支払い漏れの原因として、受け取っていたのに申請が遅れたという回答が最も多く挙がっていた1のは、この割り込みが間に合わなかった結果と読めます。
期日に間に合わなければ、取引先からの問い合わせに答え、支払予定を組み直すという別の作業が発生します。

加えて、経理の工数は手戻りの対応だけに使えるわけではありません。
年商50億円以下の中堅中小企業102社を対象とした2024年5〜7月の調査5では、電子帳簿保存法に対応できていると回答した企業が86%に上る一方5、対応済みの企業でも紙書類のスキャンや電子化保存が並行しており、ペーパーレス化は一部にとどまると整理されています5。
同じ調査では、法対応による負担増加を背景に、経理業務の効率化の必要性を感じる企業が93%となっています5。
この調査は電帳法への対応状況を尋ねたもので、手戻りの発生状況を測ったものではありません。
それでも、保存の要件に合わせて紙と電子の両方を扱う運用が残る限り、受領形式のばらつきは制度対応だけでは解消しない、という関係は読み取れます。

手戻り一件あたりの金額的な影響がどれだけになるかは、取引の内容によって幅があり、一般化して示せるものではありません。
ただ、締めが遅れること、支払いが期日直前の例外処理になること、その両方が毎月繰り返されることは、件数を数えれば自社で確認できます。
件数と、どの工程で止まったかを並べて記録するところまでやれば、次に打つ対策の順番も決めやすくなります。

手戻りの影響は、動かせない締め日と振込期日のところで表面化する
差し戻しの発生から締め直前の集中、支払期日直前の例外処理へと進む3段階の図

出典:株式会社TOKIUM「請求書の受領・処理に携わる従業員を対象とした実態調査」2024年8月/有効回答1,100人(支払い漏れの原因に関する回答)

原因別に見る対策と導入条件

3点照合と職務分掌の明確化

工程ごとに原因が見えたら、対策は原因に合わせて選びます。
受領・照合工程で証憑が合わないことが多いなら、3点照合を気づいた人がやる確認から、必ず通る手順に変えることが先です。
具体的には、請求書を受け付けた時点で発注番号と紐づける、検収の記録がない取引は受付の段階でいったん止める、差し戻す際は3点のどこが合わなかったかを書く、といった運用の明文化になります。
紐づけの方法は、システム上の項目でも、受付簿への記入でも構いません。
大事なのは、請求書が単独で承認に流れない状態を作ることです。

この運用で減るのは、承認者が請求書を見てから発注書を探し、現場に電話して検収の有無を確かめるという、都度の確認です。
差し戻しの理由が具体的になれば、申請側は一度の修正で戻せます。
逆に、これで誤りがなくなるわけではありません。
発注の条件そのものが取引先と食い違っていれば、3点とも自社の認識では揃っている、という事態は起こり得ます。
3点照合が担うのは、社内の記録と請求内容のずれを早い段階で見つけることで、取引条件の合意そのものを保証するものではありません。

承認・支払照合工程が原因なら、手順よりも配置と基準が先です。
検収した人と支払照合をする人を分ける、分けられない場合は判断基準を文書化して、承認者が代わっても同じ結論になるようにする。
どちらも統制の考え方としては特定事例の解説に基づくもので3、導入すれば手戻りが何件減ると約束できる類のものではありません。
効果を見るなら、工程別の差し戻し件数を数え続けて、偏りが動くかどうかで確かめることになります。
数か月分を並べれば、手を入れた工程の件数が減ったのか、別の工程に移っただけなのかが分かります。

データ連携の標準化(流通BMSの例)

原因が自社の手順ではなく、取引先とのデータ形式のばらつきにある場合もあります。
取引先ごとに請求データの項目も締めの区切りも違えば、社内でいくら手順を整えても、突き合わせの前に変換や読み替えの作業が挟まります。
この領域の標準化の例が、卸売・小売間のBtoB取引で使われている流通BMSです。
発注、出荷、受領、返品、請求、支払の6業務を対象に、やり取りするデータの仕様を標準化しています4。

標準化されたデータでやり取りすると、売掛・買掛の日次照合が可能になり、計上日や相殺内容の認識違いによって月次決済時に生じる違算が減るとされています4。
月末にまとめて突き合わせて差異の原因を遡るのではなく、日々の単位で合わせておくという考え方です。
取引先を追加するときに、そのつどシステム仕様をすり合わせる負担が軽くなる点も挙げられています4。
取引先の数が増えるほど、この差は積み上がります。

ただし、これは卸売・小売間の企業間取引を対象とした標準であり、社内の承認フローやあらゆる請求書処理にそのまま当てはまるものではありません。
効果は相手方もEDIに対応していることが前提で、対応していない取引先との間では、従来どおりの受領と照合が残ります。
自社の取引先構成のうち、標準化されたデータでやり取りできる相手がどの程度あるかによって、着手する価値は変わります。
取引件数の多い相手が対応していれば効きますが、少額多数の取引先が中心であれば、先に社内の受領と照合の手順を整えるほうが現実的です。

自社の業務体制に応じて、どの対策から着手すべきか

ここまでの原因は、どの会社にも同じ比率で存在するわけではありません。
着手の順番は、いまの業務体制のどこに重心があるかで変わります。

請求書が紙とメールとポータルに分かれて届き、照合は担当者の記憶と手元のファイルで進めている体制であれば、最初に手を付ける価値があるのは受領と照合の運用です。
受け取った請求書を一か所に集めて未処理の一覧が見える状態にし、3点照合の手順を文書にする。
人を増やさずに始められ、差し戻しの理由が具体的になる分、往復の回数も見えるようになります。

受領の方法はある程度揃っているのに、検収も支払照合も承認も同じ人の手元を通っている体制なら、手順を足す前に配置を見直すほうが先になります。
手順書だけ増やしても、確認する目が一つのままでは、食い違いが見つかる時点は変わりません。
現場に検収の記録を残してもらう、あるいは支払照合だけ別の担当に移す、といった分け方から始めます。

基幹システムと会計システムが連携していて、社内の手順も分担も一通り整っている。
それでも取引先ごとの請求データの作り方の違いで突き合わせに手間がかかる、という段階であれば、取引先との連携の標準化を検討する余地があります。
相手方の対応状況に左右されるため、まず取引量の多い取引先から、どの形式でやり取りしているかを棚卸しすることになります。

実際には、重心が一つに定まらないこともあります。
受領形式もばらばらで、担当も一人に寄っている場合は、先に受領と照合の手順を文書にしておくほうが進めやすくなります。
担当を分ける段になったときに、引き継ぐべき手順がすでに言葉になっているからです。

この順序は、前の節までに確認した原因、つまり証憑の不一致、職務分掌の不足、データ連携の不足を突き合わせて整理したもので、自社の体制を診断したり導入後の効果を測定したりするものではありません。
実際にどこから着手するかは、直近の差し戻しがどの工程に偏っているかを数えたうえで決めるのが確実です。
数え方は難しくなく、差し戻された伝票に「受領・照合」「承認・支払照合」「支払実行」のどれで止まったかを記録しておくだけで、翌月には偏りが見えます。

同じ対策でも、いまの体制のどこに重心があるかで着手の順番が変わる
手作業中心、担当の集中、連携が進んだ体制の3区分ごとに最初の一手を示した図

工程の切り分けまでは自社の伝票を数えれば進められますが、受領の一元化や担当の分け方を自社の取引先構成と人員に当てはめると、どこまで効くのかは判断が分かれます。

いまの受領方法と差し戻しの偏りを伺えば、手順の明文化から始めるべきか、担当の配置を先に見直すべきかを整理できます。無料相談で要件を整理する

工程別に見た手戻りの原因と対策の対応

買掛金処理が進む順(受領・照合→承認・支払照合→支払実行)に沿って、工程ごとの原因と対策を対応させています。

  • 受領・照合:請求書の形式や記載内容が発注・納品の記録と揃わない / 発注書・納品書(検収書)・請求書の3点照合を、必ず通る手順として明文化する
  • 承認・支払照合:検収者と支払照合担当者が同一で、承認の判断基準も担当者ごとに違う / どちらか一方でも担当を分け、差し戻す基準を文書にして判断を揃える
  • 支払実行:差し戻し中の請求書が期日直前に割り込み、申請の遅れが支払い漏れにつながる / 未処理の請求書を一覧で見える状態にし、振込期日から逆算した社内の締切を決める
  • 取引先とのデータ形式:項目や締めの区切りが取引先ごとに異なり、突き合わせの前に変換が要る / 標準化されたデータ連携を、相手方の対応状況を確認したうえで取引量の多い先から検討する

差し戻しが特定の取引先に偏っている場合は、工程ではなく取引先単位でデータの受け取り方と締めの取り決めを見る軸に切り替えます。

要点の整理

切り分けの起点 差し戻された伝票を、受領・照合/承認・支払照合/支払実行のどこで止まったかで仕分ける
受領・照合の原因 受領形式の混在と、発注・検収の記録との突き合わせが手順として固定されていないこと
承認・支払照合の原因 検収者と支払照合担当者が同一であること、承認の判断基準が担当者ごとに違うこと
放置したときの現れ方 締めの数字が後から動くこと、支払いが期日直前の例外処理になること
着手の順番 手作業中心なら3点照合の明文化、担当が一人に偏るなら職務分掌、連携が進んでいるならデータ標準化
標準化の前提 流通BMSは卸売・小売間のEDI標準で、効果は取引先側の対応状況に左右される

着手の順番は、取引先ごとのデータのやり取りの実情と、社内システムのつながり方によって変わります。 受発注・請求データの持ち方と社内システムの構成を確認しながら、標準化できる範囲と手作業として残る範囲を切り分けられます。

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よくある質問

検収書がない取引先の請求書は、どうやって照合すればよいか

3点照合は発注内容・納品内容・納品書(検収書)を突き合わせる考え方ですが3、検収書そのものが発行されない取引もあります。
その場合は、検収書という書類ではなく、受け取った事実の記録を代わりに置けるかで考えます。
納品時に現場で受領のサインや受入日を残す、システム上で受入登録をする、役務の提供であれば作業報告や利用実績の控えを保管する、といった形です。
記録の形式を取引先ごとに決めておけば、請求書が届いたときに何と突き合わせるかが固定され、承認者による判断のばらつきも抑えられます。
記録が一切残らない取引が残る場合は、その取引先については発注時点の条件(単価・数量・対象期間)を保存し、請求書と2点で突き合わせる運用にしたうえで、例外として扱っていることを明示しておくと、差し戻しの理由も説明しやすくなります。

承認者が少人数で職務分掌が難しい場合、何から着手すればよいか

全工程を分けられなくても、発注と検収、検収と支払照合のうちどちらか一方を別の人が担う形にすれば、突き合わせに他人の目が入ります3。
経理の人数を増やせない場合は、現物を受け取る現場に検収の記録だけ残してもらい、経理が請求書と突き合わせる分け方が取り組みやすいところです。
あわせて、差し戻す基準を文書にしておくと、承認者が一人でも判断が日によって変わることを防げます。
属人化の背景には、人手不足で職務分掌が難しいことに加えて、マニュアル未整備による判断基準のばらつきや、難易度の高い判断業務の集中があると整理されています2。
人を分けられない時期であっても、基準の文書化は先に進められます。

電子帳簿保存法への対応を進めれば、手戻りも自然に減るのか

保存の要件に対応することと、照合の手戻りが減ることは別の話です。
年商50億円以下の中堅中小企業102社を対象とした調査では、電子帳簿保存法に対応できていると回答した企業が86%に上る一方5、対応済みでも紙書類のスキャンや電子化保存が並行しており、ペーパーレス化は一部にとどまると整理されています5。
電子で受け取るものと紙をスキャンするものが混在していれば、受領形式のばらつきは残り、突き合わせの手順自体は変わりません。
電子化を進めるなら、保存要件を満たすことと並行して、受け取った請求書を一覧で管理し、発注・検収の記録と紐づけるところまで設計しておくと、手戻りの削減につながりやすくなります。

流通BMSに対応していない取引先とは、データ連携の標準化ができないのか

流通BMSは卸売・小売間のBtoB取引で使われる標準で、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務を対象にデータ仕様を揃えるものです4。
日次での売掛・買掛の照合ができることによる違算の減少といった効果は4、相手方もEDIに対応していることが前提になります。
対応していない取引先とは同じ枠組みは使えないため、自社側で受け取り方を揃える方向になります。
請求データの受け取り方法を取引先ごとに決めて記録しておく、明細に発注番号を記載してもらうよう依頼する、といった取り決めです。
取引量の多い相手から順に、どの形式で受け取っているかを棚卸しすると、標準化できる範囲と手作業で残る範囲が分かれます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:株式会社TOKIUM「請求書の受領・処理に携わる従業員を対象とした実態調査」(2024年)
  2. 2 出典:株式会社ミロク情報サービス MJS税経システム研究所「中小企業の経理担当者の働き方&実務の困りごと実態調査」(2024年)
  3. 3 出典:三優監査法人(BDOメンバーファーム)「三優ジャーナル 特集記事(仕入・買掛金の内部統制事例解説)」(2021年)
  4. 4 出典:供給チェーン標準化推進協議会(旧:一般財団法人流通システム開発センター 流通BMS協議会)「流通BMS標準仕様」(2007年)
  5. 5 出典:リコージャパン株式会社「電帳法対応に関する実態調査」(2024年)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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