◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 対面型の営業で作れる接点は担当者の時間と移動範囲で上限が決まり、自社のBtoB ECサイトはその外側に受注と問い合わせの入り口を足す位置づけになる
- 自社構築型の立ち上げには、新規事業として三名・二か月で稼働開始した例と、開発着手の決定から運営開始まで約半年・実質的な開発期間は約四か月という例があり、いずれも同一提供元の同一製品での実績として読む
- 商品点数が多い商材では、約二万点の登録内容を精査した事例のように、移行前の商品情報の整備が期間を左右するため、全点確認する項目と抜き取りにする項目を先に分ける
- モール型との費用や条件の比較、新規開拓の効果は公開情報だけでは横並びにできず、費用の内訳・取引条件の表現・データの持ち出し・集客の役割分担を同じ言葉で聞いてそろえる
- 既存の営業や代理店との関係は、価格の出し方・引き合いの割り振り・実績の計上の三点を、最初に公開する範囲に絞って決めておく
目次

対面営業だけでは新規開拓が伸び悩む場面と、BtoB ECで変えられること
展示会に出て名刺を集め、確度の高い相手から順に電話をかけ、反応のあった数社を訪問する。
この流れを何期か繰り返しているのに、新しい取引先の数が前の年とほとんど変わらない、という手応えのなさはよく聞きます。
伸びが止まる理由は営業の詰め方よりも手前にあり、対面型で作れる接点は担当者が動ける時間と回れる範囲で上限が決まってしまう点にあります。
自社でBtoB ECのサイトを持つことは、その営業を置き換える話ではなく、営業が動いていない時間帯や訪問しない地域にも受注と問い合わせの入り口を足す話です。
立ち上げにどれだけの体制と期間が要るかは、目的も規模も違う導入事例から数か月単位・少人数でも動き出せている条件が読み取れます。
一方で、新規の取引先が実際にどれだけ増えるか、モール型への出店と比べてどちらが自社に合うかは事例からは決まらず、自社の取引条件に照らして確かめるしかありません。
展示会に三日立って名刺を二百枚持ち帰り、帰社後に反応の良かった相手から順に電話をかける。
訪問までこぎつけるのが数十社、見積もりに進むのが数社、そこから継続取引になるのはさらに絞られる。
この形を何期か回すと、活動量は落ちていないのに新規の取引先数だけが横ばいになる時期が来ます。
訪問件数を増やす、トークを見直す、リストを買い足すという打ち手はどれも間違いではありませんが、それでも戻らないときは、詰め方ではなく接点の作り方そのものに上限が来ていると考えたほうが説明がつきます。
対面型の営業で作れる接点の数は、担当者が動ける時間と移動できる範囲で決まります。
一人が一日に訪問できるのは数件、電話で込み入った話までできる相手も限られ、展示会は出展している期間しか人が来ません。
人員を増やせば件数は増えますが、増やした分だけ人件費と移動費が積み上がり、担当者が離職すればその人が持っていた接点も一緒に抜けます。
伸ばそうとすると要員と費用に比例してしか伸びず、手を止めると接点そのものが消えてしまう。
これが、対面型だけに寄せた体制の構造的なきつさです。
もう一つ見ておきたいのが、買い手側の探し方です。
自社が新しい仕入れ先を探すときの動きを思い出すと分かりやすいはずです。
取扱品目があるか、最低ロットはどのくらいか、納期はおおむねどの程度か。
この段階である程度まで絞り込んでから、残った数社に問い合わせるという順序を踏むことは珍しくありません。
そして、この絞り込みの段階は売り手からは見えません。
訪問営業が会えるのは面談の時間を取ってくれた相手だけで、条件が分からないまま候補から外された相手のことは、外されたという事実ごと手元に届かないのです。
自社のBtoB ECサイト、つまり法人間の取引をウェブ上で受け付ける自社の受注サイトを持つと、この見えない段階に置いておける材料が増えます。
取扱品目の一覧、発注単位、納期の考え方、取引開始までの手順を常時掲示しておけば、営業が動いていない時間帯や訪問していない地域からでも、条件を確認した相手が会員登録の申請や問い合わせという形で姿を現します。
さらに、既存の取引先が毎月ほぼ同じ品目を電話やFAXで注文している分をサイトへ移せれば、その受け止めに使っていた時間を新規の相手に向けられます。
接点を増やすことと、既存対応の時間を空けること。
BtoB ECが新規開拓に効くとすれば、この二つの経路を通ってです。
ただし、サイトを公開すれば引き合いが自動的に積み上がる、という話ではありません。
サイトは受注の入り口であって、そこへ相手を運ぶ手立ては別に用意が要りますし、条件を見て離れる相手も当然出ます。
ここではっきりしているのは、対面営業をやめる話ではなく、営業の手が届かない時間と範囲に入り口をもう一つ置くという位置づけだ、という点です。
そのうえで、社内で次に必ず出てくるのが「うちの人数と期間で本当に作れるのか」という問いでしょう。
| 接点のつくり方 | 増やすときに必要になるもの | 相手が条件を確かめる場面 |
|---|---|---|
| 訪問・電話・展示会 | 担当者の時間と移動、出展している期間 | 面談の時間を取ってくれた相手だけ |
| 自社のBtoB ECサイト | 掲載する情報の整備と更新 | 営業が動いていない時間帯や訪問しない地域からでも |
自社構築型BtoB ECサイトは、どのくらいの体制・期間で立ち上げられるのか
立ち上げ期間を調べると「三か月」「半年」といった数字は出てきますが、その数字が何から何までを含んでいるのかは書かれていないことがあります。
決裁が下りた日から数えているのか、要件が固まって開発に入った日から数えているのかで、同じ案件でも二か月は変わります。
ここでは自社構築型のパッケージであるEC-Rider B2Bの導入事例を二件、目的も体制も違う例として並べます。
二件とも同じ提供元の同じ製品での実績ですから、自社構築型EC一般の期間の目安として読むことはできません。
読み取る価値があるのは数字そのものより、どういう条件がそろったときに数か月で動き出せているか、という条件のほうです。
少人数の新規事業として立ち上げた例(フリュー株式会社)
フリュー株式会社の事例では、新規事業の立ち上げメンバー三名という少人数の体制で着手し、二か月というカットオーバー(稼働開始)目標を予定どおり達成しています2。
人数と期間だけを取り出すと「三人で二か月」と読めますが、この二つの数字をそのまま自社の見積もりに移すのは避けたほうが確実です。
この事例で注目したいのは、新規事業としての立ち上げだったという点です。
既に走っている受注業務を止めずに合わせ込む必要がなく、扱う商材も取引条件も新しく決められる状態であれば、決めることの範囲がその事業の中で閉じます。
逆に、長く続いてきた取引の受注方法を変える場合は、得意先ごとの慣習、既存の基幹システムとの突き合わせ、社内の別部門の了解といった作業が要件を決める段階に乗ってきます。
三名という体制で足りたのは人数の問題というより、決める人と作る人の距離が近く、決める範囲が限られていたからだと読むほうが、自社に当てはめるときに役立ちます。
なお、三名それぞれの役割や、社内の他部門がどこまで関わったかは事例のページからは確認できないため、「三名あれば足りる」という基準として扱うことはできません。
自社で同じ短さを狙うなら、最初から全社の取引をサイトに乗せようとせず、既存の得意先や基幹システムに触れずに済む切り出し方を探すことになります。
特定のブランドやカテゴリだけ、あるいは新規の取引先向けの標準価格だけを対象にする、といった区切り方です。
範囲を絞るほど決めることが減り、決めることが減るほど期間の見通しは立てやすくなります。
既存業務の受注チャネルとして立ち上げた例(フーヅフリッジ株式会社)
もう一件は、飲食店の仕入れに使える業務用食材の通販直販サイトを運営するフーヅフリッジ株式会社の事例です1。
コーヒーや各種飲料、軽食、デザートといった食材を扱う、注文が繰り返し入る性質の商材です1。
時系列は、2016年12月に開発着手を決定し、2017年1月から実質的な開発を開始、2017年5月にサイト運営を開始という流れで、実質的な開発期間は約四か月とされています1。
ここで見ておきたいのは、着手を決めてから運営開始までがおよそ半年あり、そのうち約四か月が実質的な開発期間だという差です。
差にあたる期間に何が行われたかは事例のページには書かれていませんが、着手を決めてから実際に手が動き出すまでに月単位の間があったことは読み取れます。
社内の予定を組むときに、開発期間だけを見て逆算すると足りなくなるのは、この手前の期間を数えていないからです。
商材の性質も期間に関係します。
飲食店が繰り返し発注する食材のように、品目と発注単位が決まっていて、同じ相手が定期的に同じものを注文する商材は、注文の操作を画面に載せやすい部類に入ります。
ただし、この一件から「食品は向いている」と一般化することはできません。
同じ食材でも、相手ごとに価格が違い、その都度交渉が入る取引であれば、画面上で表現すべきことは一気に増えます。
二件に共通するのは、数か月という単位で運営開始まで到達している点です。
ただし、いずれも同じ提供元が出している同じパッケージの導入事例であり、独立した複数の実績ではありません。
期間も体制も、個別の契約条件や商材の規模、既存業務との合わせ込みの量で変わります。
他社の製品やモール型プラットフォームを使った場合の期間の目安として読むこともできません。
また、二件のうちページ上で実施の暦年を確認できたのはフーヅフリッジの事例だけで、もう一件はいつの実績かが分かりません。
そのうえで自社の見通しに使えるのは、決める範囲を絞れているか、そして次に見る商品情報がどれだけ整っているか、というところです。
| 事例 | 立ち上げの目的 | 体制と期間 |
|---|---|---|
| フリュー株式会社 | 新規事業としての立ち上げ | 立ち上げメンバー3名、カットオーバー目標2か月を予定どおり達成 |
| フーヅフリッジ株式会社 | 業務用食材の通販直販サイトの運営 | 2016年12月に開発着手を決定し2017年5月に運営開始、実質的な開発期間は約4カ月 |
取扱商品点数や商材の複雑さによって、移行前の準備はどう変わるのか
立ち上げの期間が事例のように収まるかどうかを、実際に大きく左右するのが商品情報の状態です。
開発そのものより、載せるものを整える作業のほうが長引く、という形で表に出ます。
参考になるのが、欧州のスポーツ自転車部品を日本市場に卸す専門卸売業者である株式会社ポディウムの事例です。
同社はEC移行にあたって、約二万点の商品登録内容を精査しています3。
精査の具体的な中身まではページからは分かりませんが、二万点という規模の登録内容に手を入れる工程が、移行の前段に置かれていたことは読み取れます。
なぜ点数が多いと準備が重くなるのか。
電話やFAX、対面での受注では、型番の書き方の揺れ、廃番になった品の後継、その車体に適合するかどうかといった判断を、営業担当と先方の担当者が会話で埋めています。
サイトでの注文に移すと、この埋め合わせが画面に出ている情報だけで済む状態になっていなければ、注文が止まるか、違う品が届いて後から手間が増えます。
輸入部品のように年式やサイズ、規格の違いが多い商材ほど、一品ごとに確認すべき項目が増えていきます。
工数は、点数と一点あたりの確認項目の掛け算で決まります。
したがって点数が多い場合に先に決めるべきなのは、どの項目を全点について確認し、どの項目は抜き取りで済ませるか、という線引きです。
全点を同じ密度で見ようとすると終わりが見えなくなりますし、逆に全項目を抜き取りにすると、公開後に問い合わせや誤発注という形で戻ってきます。
もう一つの選択肢が、載せる範囲を最初から全点にしないことです。
取引の多い上位の品目だけを公開し、残りは運用しながら順次足していく。
あるいは、仕様の打ち合わせが前提で個別に見積もる商材であれば、注文を完結させる機能より先に、仕様を選んで見積もりを依頼できる入り口を用意するという組み立て方もあります。
いずれも今回の事例で確認できた形ではなく、準備量と公開時期を釣り合わせるための考え方として挙げています。
自社の準備量がどれくらいになるかは、いま商品情報をどう持っているかで大まかに見当がつきます。
受注システムの品目マスタと、営業が配っているカタログやエクセルの商品表が別々に育っていないか。
取引先ごとの価格が、担当者の手元のファイルにしか残っていない状態になっていないか。
この二つが分かれているほど、移行の前に突き合わせる作業が積まれます。
逆に、一つのマスタで管理できていて価格の決め方にも規則があるなら、点数が多くても機械的に整えられる部分が増えます。
モール型プラットフォームとの比較や新規開拓効果、代理店との役割分担で確認すべきこと
自社で確認すべき比較項目の整理
ここまでで、立ち上げの体制と期間、そして商品情報の準備という見通しは、ある程度まで立てられるようになりました。
残るのは、そもそも自社で構築するのか、法人向けのモール型プラットフォームに出るのかという分かれ道と、実際に新規の取引先が増えるのかという肝心の点です。
この二つは、導入事例のような形で先に確かめられる材料が手元にありません。
費用も出店の条件も提供元ごとに違い、公開されている情報だけを並べても同じ土俵になりませんし、新規開拓の効果は自社の商材と集客の手立てによって変わります。
そこで、説明を受けたり見積もりを取ったりするときに、同じ言葉で聞いておくと後から比べられる項目を整理しておきます。
費用については、初期費用と月々かかる費用の線引きに加えて、受注金額に対する手数料があるかどうかを必ず分けて聞きます。
手数料の形だと、売れるほど費用が増えるかわりに立ち上げの負担が軽くなり、固定の形だと逆になります。
どちらが有利かは自社の想定取引額で反転するので、相場という言葉で先に決めず、同じ前提を書いた紙を渡して二社以上から出してもらうのが確実です。
加えて、取引先の数や商品点数が増えたときに費用が変わるのか、機能の追加や更新が別費用になるのかも、後から効いてきます。
BtoBで特に確かめておきたいのが、取引条件を画面上でどこまで表現できるかです。
取引先ごとの掛け率、数量帯ごとの価格、締め日と支払いの条件、与信の枠。
これらが画面で扱えないと、注文自体はサイトで受けても、受注後に担当者が価格を手で直し、条件を確認してから確定するという作業が残ります。
それでも紙やFAXよりは楽かもしれませんが、期待していたほど手は空きません。
表現できない部分がどこで、その分をどの工程の手作業で補うことになるのかまで聞いておくと、導入後の姿がだいぶ具体的になります。
顧客との接点とデータの行き先も、後から変えにくい部分です。
取引先の会員情報や購買履歴、問い合わせの内容が自社の手元に残るのか、それとも場を借りている側の資産になるのか。
取りやめたときに何が残り、何が消えるのか。
新規開拓のために始める以上、集まった相手の情報が次の提案に使える形で残るかどうかは、費用の比較と同じくらい判断に効きます。
集客の役割分担も、言葉にして確認しておく価値があります。
既に人が集まっている場に出るのか、自社のサイトに自分で運ぶのか。
前者なら同じ場所に同業が並ぶことになり、後者なら公開しただけでは誰も来ません。
どちらを選ぶにせよ、誰がどの方法で相手を運ぶのかの当てがないまま公開すると、受注の入り口を作っただけで新規開拓にはつながらない状態になります。
新規の取引先が増えるかどうかについては、始める前に約束できるものではありません。
できるのは、公開したあとに何を見て判断するかを先に決めておくことです。
会員登録の申請が月に何件入るか、そのうち初回の注文まで進んだ社数はいくつか、問い合わせの内容はどの条件に集中しているか。
この三つを見ていれば、集客が足りないのか、条件が合っていないのか、画面の情報が足りないのかの見当がつきます。
公開してから数か月単位で見直す前提を置き、最初の公開範囲を小さくしておくと、判断を間違えたときの引き返しも軽くなります。
既存の営業・代理店との役割分担を検討する視点
社内で話を進めると、費用や機能より先に止まるのがこの論点です。
サイトを作ると代理店の立場がなくなるのではないか、担当している取引先が営業を通さず勝手に注文してしまうのではないか、という懸念が出ます。
実際、ここを曖昧にしたまま公開すると、価格の食い違いや担当の重複という形で現場に返ってきます。
整理の出発点は、ECが引き受けるのは受注の入り口であって、価格を決める権限や、提案・調整・トラブル対応といった仕事ではない、という線引きです。
そのうえで公開前に決めておきたいのは三つあります。
一つ目は価格の出し方で、サイトに出る価格と担当者が出す見積もりが食い違わないよう、どちらを基準にするかを決めておくこと。
二つ目は引き合いの割り振りで、サイトから入った新規の問い合わせを最初に誰が持ち、それが既存担当や代理店の取引先だった場合にどう引き継ぐかを決めておくこと。
三つ目は実績の計上で、サイト経由の受注を誰の数字として数えるかを決めておくことです。
代理店を外す方向ではなく、代理店側の発注窓口としてサイトを使ってもらう組み立て方もあります。
在庫や納期を確認する電話が、画面で確かめられる分だけ減るという形です。
この場合でも、代理店向けに見せる価格と最終顧客に見せる価格をどう分けるかは先に決める必要があり、そこが決まらないなら代理店向けの利用から先に始めるほうが混乱は少なくなります。
決め方の順序にも注意が要ります。
全社共通のルールを先に作ろうとすると、扱う商材ごとに事情が違って合意が取れず、そこで話が止まりがちです。
最初に公開する品目と対象の取引先を絞り、その範囲だけの扱いを決める。
範囲が狭ければ関係する担当者も少なく、運用してみてから直せます。
先ほどの三つも、全社の制度としてではなく、その範囲での取り決めとして書けば十分です。
結局のところ、自社構築型に進むかどうかを分けるのは、自社の取引条件をどこまで定型にできるかという点に行き着きます。
品目と価格が相手ごとに固まっているなら、注文の受け口を画面に移すことの効果は見積もりやすくなります。
毎回の交渉で条件が動く商材なら、注文そのものより、問い合わせと見積もり依頼を受ける入り口として設計するほうが現実的です。
どちらに寄っているかは、直近の受注伝票を何十件か並べて、価格と数量がどれだけ繰り返されているかを見れば判断できます。
自社の受注が定型に寄っているのか交渉に寄っているのかで、次に確かめるべきことは変わります。
| 確認する領域 | そろえて聞く質問 | 回答から分かること |
|---|---|---|
| 費用の出方 | 初期と月々の内訳、受注金額に対する手数料の有無、取引先数や商品点数で変わるか | 取引が増えたときに費用がどう動くか |
| 取引条件の表現 | 取引先ごとの価格や数量帯別の価格、締め支払いを画面で扱えるか | 受注後に手作業で残る工程の量 |
| 顧客情報とデータ | 会員情報と購買履歴を自社で持ち出せるか | 取りやめたときに手元に残るもの |
| 集客の役割分担 | 誰がどの方法でサイトへ相手を運ぶ前提か | 公開後に自社が担う作業 |
立ち上げに要する体制と期間は、商品点数や取引条件の複雑さ、既存の受注業務との合わせ込みの量で変わり、事例の数字をそのまま自社に置き換えても見通しは立ちません。
自社の商品点数と、取引先ごとの価格をいまどう管理しているかを伝えたうえで、どこまでを最初の公開範囲にすると数か月単位で動き出せるか、準備のどこに時間が寄るかを具体的に確かめられます。無料相談で要件を整理する
検討に入る前に、社内で順に答えを出しておきたい問い
自社の中だけで答えを出せる問いから、取引先や提供元への確認が必要になる問いへ並べています。
- 既存の取引先からの注文のうち、毎回ほぼ同じ内容で繰り返されているものはどれか
- 取引先ごとに違う価格や掛け率を、いまは誰がどの形で管理しているか
- 公開してよい価格と、ログインした取引先にだけ見せる価格の線をどこに引くか
- 商品情報のうち、これまで営業が口頭で補ってきた項目は何か
- サイトから入った新規の問い合わせを最初に受けるのは誰で、既存担当や代理店とどう引き継ぐか
- サイト経由の受注を、いまの受注処理のどの工程に合流させるか
商材が個別見積もり中心なら、価格の見せ方より先に、見積もり依頼をどう受けるかから考えます。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 立ち上げ期間の読み方 | 着手の決定からか実質的な開発の開始からかで数字が変わる。事例は同一製品の実績であり一般的な目安ではない |
| 体制の見方 | 人数の少なさより、決める範囲が新規事業などの中で閉じているかが期間に効く |
| 商品データの準備 | 点数と確認項目の掛け算で工数が決まる。全点確認する項目と抜き取りにする項目を先に分ける |
| 最初の公開範囲 | 取引の多い品目や特定のカテゴリに絞り、その範囲だけの取り決めを作る |
| 提供元への聞き方 | 費用の内訳、取引先別価格の表現、データの持ち出し、集客の役割を同じ言葉でそろえて聞く |
| 社内の合意 | 価格の出し方、引き合いの割り振り、実績の計上の三点を公開前に決める |
| 公開後に見る指標 | 会員登録の申請数、初回注文に至った新規の社数、問い合わせが集中している条件 |
モール型との比較も代理店との役割分担も、自社の取引条件を画面上でどこまで表現できるかが見えてはじめて判断できる部分です。 取引先ごとの掛け率や数量帯別の価格、締め支払いの条件を実際の形で見ながら、画面で扱える範囲と受注後に手作業で残る範囲の線引きを確認できます。
よくある質問
商品点数が多い商材でもBtoB ECへ移行できますか
約二万点の商品登録内容を精査したうえで移行した卸売業者の事例があります3。
点数の多さそのものより、移行前に商品情報を整える工数をどう見積もるかが論点になります。
全点について確認する項目と抜き取りで済ませる項目を先に分け、取引の多い品目から公開して残りを順次足す進め方も取れます。
少人数の体制でもBtoB ECサイトを立ち上げられますか
新規事業の立ち上げメンバー三名という体制で着手し、二か月というカットオーバー目標を予定どおり達成した事例があります2。
ただし同一の提供元の同一製品での実績であり、人数と期間をそのまま自社に当てはめられるものではありません。
短期間で立ち上がる条件として見るべきは人数よりも、決める範囲がその事業の中で閉じていて、既存の受注業務や基幹システムとの合わせ込みが少ないかどうかです。
BtoB ECは既存の代理店や営業担当の役割を無くすものですか
サイトが引き受けるのは受注の入り口であり、価格を決める権限や提案・調整の仕事までを置き換えるものではありません。
重なりを避けるには、価格の出し方、新規の引き合いを誰が最初に持つか、サイト経由の受注を誰の実績にするかの三点を公開前に決めておくことです。
代理店自身の発注窓口としてサイトを使ってもらい、在庫や納期の確認の電話を減らすという組み立て方もあります。
モール型プラットフォームと自社構築型はどちらを選べばよいですか
どちらが有利かを一律に言える材料はなく、費用も出店条件も提供元ごとに違うため、公開情報を並べただけでは比較になりません。
比べるなら、費用の内訳と受注金額に対する手数料の有無、取引先ごとの価格を画面で扱えるか、会員情報と購買履歴を自社で持ち出せるか、集客を誰が担う前提かの四点を、同じ言葉で聞いてそろえるのが実務的です。
取引条件が相手ごとに細かく分かれているほど、その表現力が判断の重みを持ちます。
BtoB ECサイトを立ち上げてから新規の取引先は本当に増えますか
増えるかどうかを事前に約束できる材料はありません。
サイトは受注の入り口であって、そこへ相手を運ぶ手立ては別に必要です。
始める前に決めておきたいのは、公開後に何を見て判断するかで、会員登録の申請数、初回の注文まで進んだ新規の社数、問い合わせが集中している条件の三つを見ていれば、集客・条件・情報量のどこが足りないかの見当がつきます。
- 1 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例 フーヅフリッジ株式会社様」(2017年)
- 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例 フリュー株式会社様」(ページ本文中に暦年の記載を確認できず)
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例 株式会社ポディウム様」(ページ本文中に暦年の記載を確認できず)