◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 精肉の仕入原価は日々動くため、月次平均のままでは当日の発注量と売価の判断に使えない
- 歩留率は使用可能重量÷仕入重量×100で自店で実測し、仕入単価を使える重量あたりの原価へ引き直す
- 牛枝肉の歩留等級は卸売取引で使う格付けで、店舗の日次原価計算に入れる数字ではない
- 発注量は必要な使用可能重量を歩留率で割り戻して決め、実測値が溜まるほど逆算の精度が上がる
- 手作業か発注管理システムかは、取引先の数より別扱いが必要な発注手段の数で判断する
目次

精肉の仕入れ原価が日々変わる理由と、月次管理で見落とす判断
「今日の枝肉が昨日より高い」と気づいても、手元の原価表が先月の平均のままだと、今日の発注を何kgにするかは決められません。
精肉は相場が日々動き、同じ部位でも整形後に使える量が一定ではないため、月末にまとめて出した原価は、すでに過ぎた判断の答え合わせにしかならないからです。
日次で動かせるのは、相場がどちらを向いているかの把握と、自店の歩留率、そしてその二つを発注量へ戻す計算です。
農林水産省は食肉の卸売価格を日別のグラフで公表しており1、歩留率は「使用可能重量÷仕入重量×100」で自店でも算出できます3。
この二つが手元にあれば、今日の発注量は勘ではなく計算で説明できる数字になります。
相場は日単位で動き、公的なデータも日次で出ている
精肉の仕入単価が動くこと自体は、現場の感覚としては珍しくありません。
問題は、その動きが「今日たまたま」なのか「ここ数日続いているのか」が、自店の伝票を眺めているだけでは切り分けにくいことです。
農林水産省の大臣官房統計部は、豚肉・牛肉・食鳥・鶏卵・と畜頭数について卸売価格を日別のグラフで公表しており、期間を指定すれば日次の推移をたどれます1。
一日だけ跳ねた値なのか、数日かけて上がり続けているのかが、過去の納品書を並べ直す前に分かります。
ここに出ているのは卸売市場の価格であって、自店が取引している卸の請求単価そのものではありません。
金額を突き合わせて「うちは高く買わされている」と結論づける使い方には向きません。
使えるのは方向です。
相場が上を向いている局面で在庫が薄ければ、今日買うか明日に回すかで仕入単価が変わりますし、下を向いている局面なら、慌ててまとめ買いをする理由は弱まります。
同じ「在庫が少ない」という状況でも、相場の向きによって取る手が逆になる、という判断がここで初めて成り立ちます。
日次の相場を見ることの意味は、価格を当てることではなく、今日の発注に選択肢があると気づけることにあります。
月次平均にならすと、どの判断が遅れるか
月次の原価計算は、月が終わってから原価率が何%だったかを確かめる作業です。
経営数値の振り返りとしては必要ですが、発注は毎日発生します。
月平均単価は、高い日に多く買っても、安い日に少しだけ買っても、ならされて一本の数字になります。
ならされた時点で、どの日の買い方が効いたのかは追えなくなります。
実務で遅れるのは、主に発注量と値付けの二つです。
単価が上がっている日に前月と同じ量を機械的に発注すれば、上がった分がそのまま利益を削ります。
値付けのほうは、飲食店ならメニュー価格の見直し、精肉小売なら売価の調整が、月末の数字を見るまで動きません。
その間に積み上がるのが、売れ残りの廃棄と、逆方向の欠品です。
たとえば相場が下がった日に多めに仕入れられていれば売り切れた量が、単価だけ見て絞ったために足りなくなる。
逆に、上がった日に前と同じ量を入れて、売価を据え置いたまま売れ残る。
どちらも月末には「原価率が高かった」という一つの数字にまとまってしまい、原因の側は見えません。
| 見る間隔 | 分かること | その時点で動かせる判断 |
|---|---|---|
| 月次 | 期間全体の原価率と粗利 | 振り返りが中心で当日の発注には使えない |
| 週次 | 数日単位の傾向 | 週の後半の発注量の加減 |
| 日次 | 相場の向きと当日の実質原価 | 当日の発注量・売価・保存方法の選択 |
歩留率とロス率の計算式:仕入原価への反映のしかた
歩留率の計算式(使用可能重量÷仕入重量×100)
日次の相場が読めても、それだけでは自店の原価にはなりません。
精肉は仕入れた重量をそのまま提供したり販売したりできず、脂やすじ、ドリップ、端材の分だけ使える量が減るからです。
そこで使うのが歩留率です。
計算式は「使用可能重量÷仕入重量×100」で、10kg仕入れて8kg使えたなら歩留率は80%になります3。
この数字は、納品書の単価を「実際に使える重量あたりの原価」へ引き直すために使います。
歩留率が80%なら、使える1kgを確保するために支払っている額は、仕入単価そのものではなく、仕入単価を0.8で割った額です。
単価だけを見て原価を組むと、この差がまるごと抜け落ちます。
同じ日の同じ仕入先でも、部位によってこの差の大きさは変わります。
歩留率を出すために必要なのは、量る手間だけです。
仕入重量は納品書に書かれていますが、使用可能重量は仕込みの場で自分が量らない限りどこにも残りません。
整形してトレーやバットに移した時点の重量を控えるだけでも、その日の歩留率は計算できます。
逆に言えば、ここを記録していない店では、日次原価はどう工夫しても出せません。
歩留りと並べて記録したいのがロスです。
歩留りは仕込みの段階で落ちる分、ロスは仕込んだ後に使い切れずに捨てた分、と分けて持つと、対策の当て先が変わります。
歩留りが低いなら包丁の入れ方や仕入れる部位の形、ロスが多いなら発注量か売り方が見直しの対象です。
どちらも月末には原価率という一つの症状として現れるため、分けて記録しておかないと原因を特定できません。
卸売段階の歩留等級と店舗の実務計算の違い
歩留りという言葉は、卸売の現場でも使われます。
公益社団法人日本食肉格付協会の牛枝肉取引規格では、胸最長筋面積・ばらの厚さ・冷と体重量・皮下脂肪の厚さから歩留基準値を算出し、A(72以上)・B(69以上72未満)・C(69未満)の3区分で歩留等級に格付けします2。
「A5」「B4」といった表記のうち、前のアルファベットがこの歩留等級にあたります。
これを店舗の日次原価へそのまま持ち込むと、話が合わなくなります。
格付けの基準値は枝肉の取引段階で使う指標であり、店舗が仕入れたブロックから今日の仕込みで何kg使えたかを表す数字ではないからです。
仕入れた段階、切り方、出す料理や売る商品の形によって、店舗側の歩留率は動きます。
等級の数字を原価表に転記しても、それは自店の使用可能重量とは無関係な値になります。
実務での使い分けはこうなります。
等級は、仕入先と品質や価格の話をするときの共通語として使う。
原価計算に入れる歩留率は、使用可能重量÷仕入重量で自店が測った実測値を使う。
この二つを混ぜないでおくと、「等級は変わっていないのに歩留りが落ちた」という現場の変化にも気づけます。
| 項目 | 牛枝肉取引規格の歩留等級 | 店舗が使う歩留率 |
|---|---|---|
| 対象 | 卸売段階の牛枝肉 | 自店が仕入れた部位・ブロック |
| 算出のもと | 胸最長筋面積・ばらの厚さ・冷と体重量・皮下脂肪の厚さから出す歩留基準値 | 使用可能重量÷仕入重量×100 |
| 区分や表し方 | A(72以上)・B(69以上72未満)・C(69未満)の3区分 | 実測した割合をそのまま使う |
| 使う場面 | 仕入先との品質・価格のやり取り | 日次の原価計算と発注量の逆算 |
取引先数・発注チャネルの複雑さで選ぶ、手作業と発注管理システム
取引先数・発注チャネルが多い場合の負担
歩留率の式そのものは難しくありません。
それでも日次で回らなくなるのは、計算より前の「単価をどこから拾うか」で時間が溶けるからです。
受発注システムを手掛ける事業者のコラムでは、飲食店1店舗あたりの取引卸は業態にもよるが10社前後になることが珍しくなく、総合卸の発注サイト、青果・鮮魚の電話・FAX、酒販のLINE注文といった発注手段が混在している実態が描かれています5。
統計調査ではなく実務の描写ですが、精肉だけを担当しているわけではない立場の人には、思い当たる状況ではないでしょうか。
精肉の日次原価を出したいだけでも、他の食材の発注と同じ人が抱えていれば、そこへ割ける時間は自然に削られます。
負担の正体は、単価の置き場所がばらばらなことです。
発注サイトを使った分は画面にログが残り、FAXは控えの紙、電話は口頭でのやり取りなので、メモを取り損ねれば納品書が届くまで単価が確定しません。
日次で原価を出すには、これを毎日一枚の表へ集め直す必要があります。
集める先が増えるほど、計算ではなく転記と突き合わせに時間がかかる、という順序で負担が増えます。
もう一つ厄介なのが、単価が後から確定する取引です。
相場に連動する品目では、発注時点の口頭の見込みと納品書の単価がずれることがあります。
その日のうちに原価を出したいなら見込みの単価で走らせるしかなく、納品書が届いた時点で差し替える作業が後ろに残ります。
取引先が増えるほど、この「後から直す分」も日々積み上がっていきます。
取引先数が少ない場合は手作業でも回る目安
裏を返せば、集める先が少なければ表計算で十分に回ります。
精肉小売のように仕入先が1〜2社で、単価が納品書にまとまって届くなら、毎日開く表は一枚で足ります。
日付・部位・仕入重量・仕入単価・使用可能重量・歩留率・使える重量あたりの原価・廃棄量くらいの列から始めれば、歩留りとロスを分けて追えます。
列を増やすより、毎日欠かさず埋まることのほうが先です。
システム化を考える目安は、取引先の数そのものよりも、発注手段がいくつに分かれているかです。
1社増えても同じ発注サイトの中で完結するなら、集計の手間はほとんど変わりません。
一方、電話でしか受けてくれない地場の業者が1社加わるだけで、その1社分だけ別の確認作業が毎日発生します。
手作業を続けるか仕組みに寄せるかは、この「別扱いが必要な取引先が何社あるか」で見ると、実態に近い線が引けます。
そして、システムを入れても発注手段が一本化できるとは限りません。
先のコラムでは、卸ごとに発注プラットフォーム経由、システムからのFAX・メール自動送信、電話交渉が必要な地場業者、という3層に分けて運用する整理が示されています5。
導入で減るのは、電話で聞いた単価を手で表に打ち直す工程や、複数の画面を開いて単価を拾い集める工程です。
相場を見て量を決める判断や、地場業者との電話そのものがなくなるわけではない、という前提で見積もっておくと、入れた後の齟齬が小さくなります。
歩留まり・ロス率を発注量にどう反映させるか
必要な使用可能重量から発注量を逆算する
歩留率が手元にあると、発注量の決め方が変わります。
「だいたい先週と同じくらい」で出していた量を、必要な使用可能重量から逆算できるようになるからです。
計算は割り戻しです。
仕込みや販売で必要な使用可能重量が決まっているなら、発注すべき仕入重量は「必要量÷歩留率」になります。
歩留率80%なら、1÷0.8で必要量の1.25倍を仕入れる計算です3。
この割り戻しを省いて必要量ちょうどを発注すると、仕込んだ時点で足りません。
効いてくるのは、歩留率が想定とずれた日です。
想定より低ければ同じ発注量では必要量に届かず、欠品するか、単価を選べない状態での追加仕入れになります。
想定より高く出た日に前と同じ量を頼めば、使い切れない分が翌日以降に回ります。
日々の歩留率を記録していれば、部位や仕入先ごとに自店で実際に出ている値が溜まり、逆算に使う数字を実測へ寄せていけます。
どこまで余裕を見るかは、扱う部位と売り方で変わります。
歩留率のばらつきが大きい部位で必要量ぎりぎりを狙えば欠品が増え、多めに取れば廃棄が増える。
この釣り合いの置き所は一律には決まらないので、まずは実測した歩留率の幅を数日分見てから決めるほうが、外しにくくなります。
なおここは確認済みの計算式をもとにした整理であり、この手順で欠品やロスがどれだけ減るかを示す実測値があるわけではありません。
相場が動いた日に、買う量ではなく買う時期をずらす
もう一つ、日次で相場を見ていることが入口になる判断があります。
買う量ではなく、買う時期をずらすという選択です。
精肉店向けのコラムでは、原価とロスへの対策として、季節や市場動向を踏まえた購入計画、供給元との価格交渉による仕入れ改善、需要が低い時期に安く仕入れた肉を急速冷凍して需要期に販売する方法が挙げられています4。
これは冷凍機器を扱う事業者による一般的な実務例で、特定の店舗の実績を示したものではありません。
実行するには急速冷凍の設備に加え、冷凍在庫の品質管理と、どの部位をいつ凍結したかという記録が前提になります。
それでも、考え方として押さえておく価値はあります。
日次の相場が下を向いている局面を掴めていなければ、「安い時期に多めに買って保存へ回す」という選択肢はそもそも視界に入らないからです1。
相場の向きを見る、必要量を歩留率で逆算する、保存できるかで買う時期を決める。
この三つがつながって、発注量が根拠のある数字になります。
飲食店と精肉小売で変わる原価の使い方
飲食店は皿単位へ、精肉小売はg単位へ
ここまでの歩留率の出し方と発注量の逆算は、飲食店でも精肉小売でも変わりません。
違ってくるのは、出した原価をどの単位で使うかです。
飲食店は、青果・鮮魚・精肉・酒販など複数の卸から多品目を仕入れ、メニュー単位で原価をまとめる必要があります5。
精肉の使える重量あたりの原価が出ても、それは一皿の一部でしかありません。
一皿あたりの使用量を掛けて皿単位の原価に落とし、他の食材や調味料と足して初めて、メニュー価格と比べられる数字になります。
この構造があるので、精肉の単価が動いてもすぐに売価へ響かせる話にはなりません。
皿全体に占める割合が小さければ、単価の上下は他の食材の振れに埋もれます。
一方、精肉が主役のメニューでは、同じ変動幅でも皿原価への効き方が大きく、提供量を調整するのか価格を見直すのかという判断が早い段階で必要になります。
だから飲食店では、日次原価を出したあとに「どのメニューに効くか」まで見ないと、次の手が決まりません。
精肉小売は、部位ごとにgいくらで売るため、使える重量あたりの原価がそのまま値付けの土台になります。
仕入単価の動きが売価の判断へ直結しやすく、日次で見る意味が出やすい形です。
ただし部位ごとに歩留率も売れ行きも違うので、「今日は全体に高い」ではなく、どの部位の原価が上がったのかまで分けて持っていないと、値付けを動かす先が決まりません。
なお、皿単位とg単位というこの使い分けは、両業態を横断して比較した資料に基づくものではありません。
歩留率の計算式と、飲食店が複数卸から多品目を仕入れる実態から整理した見方として受け取ってください。
業態が違っても共通して残る記録
業態が違っても、毎日残す記録はほぼ同じところに落ち着きます。
仕入重量、仕入単価、使用可能重量です。
この三つがあれば歩留率が出て、使える重量あたりの原価まで届きます。
そこから先を皿に掛けるかgで並べるかは、出口の処理を変えるだけの話になります。
抜けやすいのは使用可能重量です。
仕入重量と単価は納品書に載っていますが、実際に使えた量は自分で量らないと残りません。
毎日すべての部位で量るのが難しければ、扱いの多い部位や単価の高い部位から始めて、数字が溜まったものから順に広げる形でも、逆算に使う精度は上がっていきます。
どこまで細かく分けるかは、業態と扱う部位の幅で変わります。
ここは正解が一つに決まる話ではありません。
目安としては、自店の発注判断が変わる単位まで分かれていれば足ります。
部位を分けても発注のまとめ方が同じなら、分ける手間のほうが先に効いてきます。
相場の向き、自店で測った歩留率、必要量からの割り戻し。
この三つが日次で揃うと、今日の発注量を人に説明できる形になります。
| 項目 | 飲食店(調理して提供) | 精肉小売(部位ごとに販売) |
|---|---|---|
| 原価の出口 | 一皿あたりの使用量を掛けて皿単位にまとめる | 使える重量あたりの原価をそのままg単価の土台にする |
| 仕入の広がり | 複数卸から多品目を仕入れる | 精肉中心で仕入先が絞られやすい |
| 単価変動の効き方 | 皿に占める精肉の割合で効き方が変わる | 部位ごとの売価判断へ直結しやすい |
| 分けて持ちたい単位 | メニューごとの使用量 | 部位ごとの歩留率と売れ行き |
相場の向きと自店の歩留率まで出せても、発注手段が卸ごとに分かれている状態をどう整理するかは、実際の取引条件を並べてみないと決まりません。
取引先ごとの発注手段と、毎日どの転記が発生しているかを一緒に洗い出すと、仕組みに寄せられる範囲と手元に残る確認の境目を切り分けられます。無料相談で要件を整理する
卸との取引形態別に見る発注チャネルの3層構造
発注のやり取りをシステム側でどこまで受け持てるかで並べた層。
- 発注プラットフォーム経由でやり取りする卸:発注がシステム上で完結する層
- システムからFAX・メールを自動送信する卸:発注内容はシステムで作り、送信手段だけ相手に合わせる層
- 電話交渉が必要な地場業者:やり取りは人が行い、決まった内容を後から記録に残す層
自店の取引先をこの3層に振り分けると、仕組みに寄せられる作業と、手元に残り続ける作業の境目が見えます。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 相場の見方 | 卸売価格の日別推移で向きを掴む。自店の請求単価とは別の数字として扱う |
| 歩留率 | 使用可能重量÷仕入重量×100で、部位・仕入先ごとに自店で実測する |
| 等級との区別 | 牛枝肉の歩留等級は卸売取引の格付け。日次原価には自店の実測値を使う |
| 発注量 | 必要な使用可能重量を歩留率で割り戻して決める |
| 手作業とシステム | 取引先の数より、別扱いが必要な発注手段が何通りあるかで判断する |
| 原価の出口 | 飲食店は皿単位、精肉小売はg単位(確認済み材料からの整理) |
原価の出口が皿単位かg単位かで残すべき記録の細かさが変わるため、どこまで分けて持つかは一般論では決められません。 扱う部位の幅と日々の発注件数を見ながら、最小限どの項目を毎日残せば発注量の逆算が回るかを確認できます。
よくある質問
精肉の歩留率は部位によってどのくらい差が出ますか
部位別の歩留率を示した確認済みの数値は手元にありません。
公表されている計算例としては、10kg仕入れて8kg使用できた場合の歩留率80%という形が示されているだけです3。
脂やすじの付き方、整形の深さ、使う料理や商品の形で変わる以上、他店の数値を借りても自店の原価にはなりません。
なお牛枝肉の歩留等級(A・B・C)は卸売取引の格付けで、店舗の歩留率とは対象が違います2。
扱いの多い部位から使用可能重量を量り、自店の値を数日分ためるところから始めるのが現実的です。
仕入原価が急に上がった日は、その日の発注をどう判断すればよいですか
まず、その上がり方が一日だけのものか続いているのかを切り分けます。
農林水産省が公表している卸売価格の日別グラフで、期間を指定して推移を見れば方向は掴めます1。
ただしこれは卸売市場の価格なので、自店の請求単価と金額を突き合わせる使い方ではなく、向きの確認に使います。
そのうえで、在庫と必要な使用可能重量を見て、今日の発注を絞って明日以降に回せるかを判断します。
急速冷凍の設備があれば、安い局面で多めに仕入れて需要期に回すという選択肢も出てきますが、これは設備と在庫管理を前提にした実務例です4。
歩留率を表計算で日次管理する場合、最低限どの列を用意すればよいですか
日付・部位・仕入先・仕入重量・仕入単価・使用可能重量・歩留率・使える重量あたりの原価・廃棄量から始めれば足ります。
歩留率は使用可能重量÷仕入重量×100で算出できるので、この二つの重量さえ入っていれば自動で出せます3。
廃棄量を別の列に分けておくのは、仕込みで落ちる分と仕込んだ後に使い切れなかった分を区別するためです。
列を増やすより、毎日欠かさず埋まることを優先してください。
埋まらない列が出てきたら、その列が本当に発注判断を変えているかを見直す合図になります。
発注管理システムを導入する場合、電話やFAX中心の既存の卸はどう扱えばよいですか
すべてをシステム上のやり取りへ寄せる前提で考えないほうが、現実に近くなります。
受発注システムを手掛ける事業者のコラムでは、卸ごとに発注プラットフォーム経由、システムからのFAX・メール自動送信、電話交渉が必要な地場業者、という3層に分けて運用する整理が示されています5。
電話でしか受けてくれない取引先は3層目として残し、発注そのものは人が行い、決まった内容を記録へ戻す運用にします。
導入で減るのは、聞き取った単価を手で打ち直す工程や、複数の画面から単価を拾い集める工程です。
相場を見て量を決める判断は残るので、そこを含めて効果を見積もると、導入後の見込み違いが小さくなります。
- 1 出典:農林水産省 大臣官房統計部生産流通消費統計課消費統計室「日別情報グラフ(畜産物)/毎日の卸売価格グラフ」(2026年閲覧時点、データは日次更新)
- 2 出典:公益社団法人日本食肉格付協会「牛枝肉取引規格(歩留等級・肉質等級)」(2026年閲覧時点)
- 3 出典:五十嵐商会株式会社「牛肉の原価計算方法|歩留り・経費・1食原価」(2026年閲覧時点)
- 4 出典:デイブレイク株式会社「精肉店の利益最大化のカギは原価管理と『高くても売れる』商品づくり」(2026年閲覧時点)
- 5 出典:株式会社一創「飲食業界の受発注管理システムとは?食材発注の実態と導入のポイント」(2026年閲覧時点)
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