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手書き注文書の統一様式への移行方法|取引先ごとの書式ばらつきをどう解消するか

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 統一の目的は全項目を揃えることではなく、必須項目を漏れなく読み取れる形で受け取ること。揃える対象を項目と記入手段の二つに分けて考える。
  • 注文データを電子的に保存するなら、取引などの日付・金額・取引先の3項目が検索要件として必要になる。これを必須項目の芯に置き、受注処理が止まる業務項目を足して確定する。
  • 記入手段は紙の統一フォーマット、Excel・PDFの入力ファイル、自社サイトの発注フォームから取引先ごとに選べるようにし、一つに絞らない。必須項目が同じなら自社側の確認手順は一本化できる。
  • 移行は対応力の高い先から段階的に進め、先行グループで様式の不備を直してから広げる。1社ごとに説明と確認の往復が生じる前提で全体期間を見積もる。
  • 旧様式でも新様式でも、注文書の保存義務は原則7年間で変わらない。移行の順序が前後しても困らないよう、保存ルールと置き場所を様式より先に統一しておく。

Close-up of a professional organizing a stack of documents on a desk.
▽ 写真の出典元

取引先ごとにバラバラな手書き注文書がもたらす問題と、統一で目指す状態

同じ「注文書」でも、A社は品番で書き、B社は商品名だけ、数量の単位は「ケース」と「箱」が混ざる。
受け取るたびに読み方を切り替え、不明点を電話で確かめ、基幹システムへ写し直す——その手間を減らそうと統一様式を考え始めたとき、最初に決めるのは「どこまで揃えるか」です。
全項目を一律にそろえようとすると取引先の社内手続きまで変えてもらうことになり、移行はそこで止まります。
電子的に保存するなら欠かせない日付・金額・取引先を芯に据え、自社の業務で止まる項目を足して必須項目を固定する。
そのうえで、紙かExcelか入力フォームかという記入手段は、相手のIT環境に合わせて選べるようにしておく。
揃える対象を項目と手段の二つに分けることが、現場も取引先も動かせる統一の出発点になります。

どの工程で時間が溶けているのかを切り分ける

注文書が届いてから基幹システムに注文として登録されるまでには、受け取る、読む、分からない箇所を問い合わせる、写す、照らし合わせる、綴じて保存する、という工程が並んでいます。
取引先ごとの書式の違いが効いてくるのは、このうち中ほどの四つです。
両端にある受け取る工程と保存する工程は、様式が違っても作業そのものはあまり変わりません。

読む工程でまず迷うのは、欄が何を指しているかです。
品番欄がなく商品名だけが書かれていれば、自社の商品マスタと突き合わせて品番を割り出す作業が入ります。
社内の略称で書かれていれば、その取引先の過去の注文を遡って照合することになります。
日付欄に見出しがなく数字だけが入っている様式では、それが発注日なのか納品希望日なのかを、前後の取引から推測する羽目になります。

そこで分からなければ問い合わせになりますが、電話が一本で済むとは限りません。
先方の担当者が席を外していれば折り返し待ちになり、その間その注文は止まります。
一件あたりの待ち時間そのものより、処理の途中で保留になる注文が常に何件か机の上に残っている状態が、受注事務の負担になります。

写す工程と照らし合わせる工程で厄介なのが単位の表記です。
同じ荷姿を指していても「ケース」「箱」「CS」と書き分けられていると、数量の10がバラ10本なのかケース10個なのかは、その取引先の過去の注文を知らないと判断できません。
担当者が代わったときに最初につまずくのもここです。
照合で金額が合わなかったとき、単価の見間違いなのか単位の読み違いなのかを切り分けるところから始めることになります。

つまり書式のばらつきが生む負担は、一枚あたりの作業が少し増えるという話ではありません。
届いた注文書がどの取引先のものかによって読み方を切り替え、そのつど判断を挟むという構造そのものが負担になっています。
件数が増えるほど、担当者が増えたり代わったりするほど、この構造は効いてきます。

統一で目指すのは「全項目を揃えること」ではない

では統一によって何を実現するのか。
ここで「全取引先に同じ紙を使ってもらう」を目標に据えると、たいてい途中で止まります。
相手にとっての注文書は、自社の購買システムから出力される帳票だったり、社内で承認印を押して回す書類だったりします。
様式を変えてほしいという依頼は、相手の社内手続きを変えてほしいという依頼になっている場合があります。

そこで目的を一段絞ります。
目指すのは、必須項目を、漏れなく、読み取れる形で受け取ることです。
読み取れる形とは、どの欄が何を指すかが見出しで分かり、単位と日付の意味が一通りに決まっている状態を指します。
相手の帳票の体裁がこちらと違っていても、この条件が満たされていれば、読む・問い合わせる・写すの負担は下がります。

この絞り方をすると、揃える対象が自然に二つに分かれます。
何を書いてもらうかという項目と、どうやって書いてもらうかという記入手段です。
前者は自社の業務の都合と、データとして保存する場合の法令上の要件で決まるので、取引先に関係なく固定できます。
後者は相手のIT環境と担当者の慣れに左右されるので、選べるようにしてかまいません。
次に、その必須項目をどう組み立てるかを見ていきます。

注文書を受け取ってから保存するまでの工程と、書式のばらつきが影響する範囲(模式図)
受領から保存までの五つの工程のうち、中ほどの工程に書式のばらつきが影響することを示した図

統一様式に必須で入れる項目と、取引先への伝え方

最低限の必須項目(法定検索要件+業務必須項目)

必須項目の芯になるのは、受け取った注文の内容を電子データとして保存する場合に求められる検索の単位です。
電子取引データを保存するときの検索要件として、取引などの日付、金額、取引先で検索できることが挙げられています3。
この要件が当てはまるのは、メールやWebの発注フォーム、EDI(企業間で注文などのデータを電子的にやり取りする仕組み)など、電子的にやり取りしたデータを保存する場合です。
紙で受け取った注文書を紙のまま綴じて保存するだけなら、この検索要件の対象ではありません。

とはいえ、統一様式を検討している時点で、受け取った注文を何らかの形でデータとして扱う前提になっていることが多いはずです。
将来的に入力フォームへ寄せる可能性があるなら、この三つの項目は後から足すほど面倒になります。
最初から様式の芯に置いておけば、記入手段がどう変わっても保存側の作りを変えずに済みます。

日付の扱いには注意が必要です。
取引の日付と納品希望日は別物ですが、手書きの様式では一つの日付欄にどちらかが書かれていることがあります。
欄を分け、それぞれに見出しを付けるだけで、読む側の推測がなくなります。
金額も同じで、単価と数量だけ書いて合計を書かない様式のままだと、保存したデータを金額で探すときに手がかりがありません。

ここに自社の業務で止まる項目を足していきます。
判断の基準は単純で、その欄が空欄のまま届いたとき受注処理を進められるかどうかです。
進められないなら必須、進められるなら任意にします。
多くの場合、自社の品番、数量と単位、納品先、納品希望日、先方の注文番号、記入した担当者の連絡先あたりが必須側に入ります。

単位は自由記入にせず、選択肢を限定するのが効きます。
「ケース」「箱」「CS」が混ざるのは、そこが自由記入だからです。
紙の様式なら自社の販売単位を印字しておいて丸を付けてもらう、Excelならプルダウンにする、という形にすれば、表記が元に戻りにくくなります。

逆に、必須にしない項目を決めておくことも同じくらい大事です。
備考、社判、決裁者名のように、空欄でも受注処理が止まらない項目まで必須にすると、相手の記入負担が増え、記入漏れによる差し戻しが増えます。
差し戻しが増えると、統一したはずの様式が「書きにくい紙」として敬遠され、旧様式に戻っていきます。

記入手段は取引先のIT対応力で選べるようにする

項目が決まっても、記入手段を一つに絞ってしまうと移行は止まります。
取引先の中には、受注担当が一人で紙とFAXだけで回している先もあれば、購買システムから帳票を出している先もあります。
同じ依頼を全社に出せば、応じられない先はそのまま旧様式で残ります。

現実的な記入手段は三つです。
一つめは自社が用意した統一フォーマットを印刷して手書きし、FAXまたは郵送してもらう形。
二つめはExcelやPDFの入力ファイルをメールで送ってもらう形。
三つめは自社サイトの発注フォームに直接入力してもらう形です。

一つめは相手の負担がもっとも小さく済みます。
今までどおり手書きしてFAXを送るだけで、変わるのは紙の体裁だけです。
自社側の転記作業は残りますが、項目の位置と単位が揃っていれば、読む工程と問い合わせる工程の負担は確実に下がります。
統一の第一段階としてはここが入口になります。

二つめは相手に入力の手間をお願いする代わりに、自社側の転記が減ります。
データとして受け取れるので、内容をそのまま取り込める余地が出てきます。
一方で紙にはなかった問題も出ます。
古い様式のファイルを保存して使い続けられると、項目が足りないまま届くことになるので、最新版をどこから取るかを決めておく必要があります。

三つめは自社側の転記がほぼ消えます。
そのかわり相手にIDの発行と画面操作の習得をお願いすることになるので、年に数回しか注文しない先には重い選択肢です。
注文件数が多い先ほど、相手にとっても入力の手間が報われやすくなります。

三つを並べると、どれが優れているかという話ではないことが分かります。
相手ごとにどれを置くかという話です。
そして必須項目さえ同じであれば、どの手段で届いても自社側の確認の仕方は一本化できます。
届いた経路が違っても、見る欄と見る順番は同じにできる、という状態が統一の実質です。

この考え方を、全項目を一律に統一する案と並べると違いがはっきりします。

判断が分かれるのは移行負荷の行です。
全項目を一律にそろえる案は、受け取った後の処理がもっとも単純になります。
取引先の数が限られていて関係が深く、こちらの要請が通る見通しがあるなら、こちらを選ぶ余地はあります。
逆に、社内帳票を動かせない先が一定数あると分かっている場合、一律案は「応じられない先がそのまま旧様式で残る」という結果になりやすく、混在期間が延びます。
混在期間が延びれば、新旧どちらの読み方も現場に残り続けることになります。

取引先の数が増えるほど、様式を揃えるだけでは解消しない部分も出てきます。
全国約3,000社の販売店と取引する企業の例では、基幹システムと複数のサイトが連携しておらず情報更新が手作業だった体制から、自動で連携するBtoBサイトへ切り替えています4。
これは基幹システムとの連携を伴うサイト構築の事例で、手書き注文書の様式を統一したこと自体の効果を示すものではありません。
ただ、取引先がこの規模になると、様式が揃っても受け取った後の手作業が残り続けるため、記入手段を入力フォーム側へ寄せる判断が現実味を帯びてくる、という規模感の目安にはなります。

決まった内容を取引先へどう伝え、合意を得るか

必須項目と記入手段の選択肢が決まったら、取引先への案内に入ります。
ここは法令で手順が決まっている領域ではないので、以下は実務上の組み立て方として読んでください。
相手との関係や取引量によって、どこまで踏み込めるかは変わります。

案内に入れておきたいのは三点です。
変更する理由、必須項目と記入例、そしていつから使えていつまで旧様式を受け付けるかという期間です。
この三点が揃っていないと、相手の社内で検討のしようがありません。

理由を「社内の事務効率化のため」とだけ書くと、相手には動く理由がありません。
記入内容の確認電話が減る、納期回答までの往復が減る、といった相手側に返るものを書けるなら書いたほうが通りやすくなります。
ただし、確実にそうなると約束できないことまで書くと、後で信用を損ないます。
見込みとして伝える範囲にとどめておくほうが安全です。

必須項目は、空欄の様式を送るより、埋まった見本を一枚添えるほうが伝わります。
とくに単位の選択肢と日付欄の使い分けは、文章で説明するより記入済みの見本を見てもらったほうが早く、こちらの意図どおりに書いてもらいやすくなります。

期間については、受付終了日だけを先に通知する形は避けたほうがよいでしょう。
相手の社内でも、使う帳票を変えるには承認が要る場合があります。
いつから新様式が使えて、移行の相談はどこに連絡すればよく、旧様式はいつまで受け付けるのかを、同じ案内の中に並べておきます。

そして、個別の記入方法まで強制しないことです。
必須項目が記載されていれば貴社の既存帳票のままでも構いません、という逃げ道を最初から用意しておくと、断られて話が止まる場面が減ります。
この形でも必須項目は満たされるので、自社側の読み方は一本化できます。
揃えたいのは体裁ではなく、受け取る情報の中身のほうだからです。

案内の窓口は一つにまとめておきます。
営業担当それぞれが自分の言葉で説明すると、取引先ごとに違う期限や違う例外が約束された状態になり、移行の管理ができなくなります。
説明は営業担当が行うとしても、依頼文と見本は同じものを使うようにします。

比較軸 必須項目だけ統一し記入手段は選べるようにする 全項目を一律に統一する
必須項目の範囲 受注処理が止まる項目と、電子保存する場合の検索3項目に限る 備考欄や社内欄を含めて様式全体をそろえる
記入手段の自由度 紙・Excel・入力フォームから取引先ごとに選べる 指定した一つの手段に寄せる
移行負荷(取引先側) 既存の記入方法を大きく変えずに済む先を残せる 社内帳票や承認手続きの変更を求める場合がある
移行負荷(自社側) 受領経路が複数残り、経路ごとの運用を整える必要がある 受領後の処理は単純だが、応じられない先が旧様式で残りやすい
適用する時期 移行期間中から移行後まで同じ運用を続けられる 完了後は単純だが完了までの期間が読みにくい
統一様式に入れる項目を法令上の芯・業務上の必須・任意欄の三層に分けた図(模式図)
必須項目を三つの層に分けて示した図
記入手段の三つの選択肢を、相手側の負担と自社側に残る作業で分けた図(模式図)
紙・Excel/PDF・発注フォームの三つの記入手段を比較した図

取引先のIT対応力に応じた移行順序と猶予期間の目安

対応力の高い取引先から始める順序

全取引先に一斉に通知して同じ日から切り替える、という進め方は現実的ではありません。
相手の対応が必要な移行がどう進むかについて、参考になる実例があります。

EDIの通信方式の移行を扱った取材記事では、ピップグループ(フジモトホールディングス)の取引先約500弱のうち10%強がIP網対応EDI(流通BMS、Web-EDIなど)へ移行済みという状況が、2016年時点として報告されています1。
これは企業間のデータ交換の通信方式を切り替える話で、紙の手書き注文書の様式を統一することとは対象も仕組みも異なります。
この10%強という割合を自社の移行率の予測に当てはめることはできません。
読み取れるのは、相手側の対応が必要な移行は、開始してしばらく経っても全体の一部しか動いていない状態が普通にありうる、という前提の置き方のほうです。

そう考えると、順序は効果の大きい先と動きやすい先から組むことになります。
先に声をかける候補になるのは、すでにメールやExcelで注文をくれている先、担当者が固定していて連絡が取りやすい先、注文件数が多く転記負担が大きい先です。
自社の営業担当が日常的にやり取りしている先であれば、様式の話も通しやすくなります。

先行グループを置く意味は、効果を早く出すことだけではありません。
実際に使ってもらうと、様式の不備が必ず出ます。
必要な欄が足りない、記入例が分かりにくい、単位の選択肢に実際に使っている荷姿が入っていない、といったものです。
全社に配った後でこれが見つかると、二度目の案内を出すことになり、「また変わるのか」という受け止めを招きます。
先行グループで直し切ってから広げるほうが、結果として早く進みます。

中間に位置するのは、紙とFAXを続けたいが新しい様式には応じられる先です。
統一フォーマットの紙と記入見本を送れば、相手の作業はほとんど変わりません。
最後に残るのは、注文件数が少なく、自社の帳票から離れられない先です。
ここは必須項目が記載されていれば既存帳票でも受け付ける運用でカバーし、無理に様式を変えさせないという判断があってよい場所です。

1社あたりの調整期間の目安

同じ取材記事では、1取引先あたり事前の調整から利用開始までに1か月ほどかかったことが示されています1。
これも2016年時点のEDI移行の例なので、1か月という値をそのまま手書き注文書の様式移行の所要日数として使うことはできません。
通信方式の切り替えには接続試験が伴いますし、様式を紙のまま変えるだけであればもっと短く済む先もあります。

それでも共通しているのは、相手の対応を伴う切り替えには往復があるという構造です。
こちらから説明し、相手が社内で確認し、試しに新様式で一度出してもらい、問題がなければ本運用に移る。
この往復のどこかで相手の担当者が別件に取られれば、その時点でこちらの進捗も止まります。
一度の連絡で完結する前提で計画を立てると、後半で必ず詰まります。

全体の期間を見積もるなら、取引先の数を社内で同時に進められる社数で割り、1社あたりに必要な往復の期間を掛ける、という順で考えます。
ここで効いてくるのは自社側の体制のほうです。
説明と不備対応を担当できるのが受注事務の一人だけなら、同時に抱えられる社数には限りがあります。
この見積もりを飛ばして「半年で全社移行」と期限だけを決めると、後半のグループに無理が集中します。

猶予期間の置き方は二通りあります。
全社共通の旧様式受付終了日を一つ決めるか、グループごとに終了日を置くかです。
共通の終了日は社内の運用が分かりやすい反面、最終グループに合わせて設定すると、先行グループの新旧混在期間がその分だけ長引きます。
グループごとに置くと実態には合いますが、どの取引先がいつまで旧様式を使えるのかを一覧で管理しておかないと、現場が判断できなくなります。
どちらを選ぶにせよ、終了日を決めずに案内だけ出すと、移行はいつまでも終わりません。

取引先を対応力別の三グループに分けて移行を進める順序(模式図)
先行・中間・最終グループに分けた移行対象と、各段階でやることを示した図
取引先1社あたりの様式移行で生じる往復の流れ(模式図)
説明から本運用までの四つの段階を示した図

新旧様式が混在する移行期間中の運用と書類保存の注意点

様式に関わらず保存期間は統一する

移行を段階的に進めるということは、しばらくの間は旧様式と新様式が混ざるということです。
ここで先に揃えておくべきなのは、様式そのものではなく保存のルールのほうです。

帳簿と取引等に関して作成または受領した書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければならないとされています2。
注文書などの取引関係書類もここに含まれます。
旧様式で受け取ったものも、新様式で受け取ったものも、保存しなければならない年数は同じです。
様式を変えたから保存の扱いが変わる、という関係にはなっていません。

例外もあります。
青色申告で欠損金が生じた事業年度などは10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)の保存が必要とされています2。
自社がどちらに当たるかは申告状況によるので、経理側に確認しておく必要があります。

実務で困るのは年数そのものより置き場所です。
移行の途中で「新様式はスキャンしてサーバに、旧様式は紙のファイルに」と分けてしまうと、後から特定の取引先の一年分を見たいときに二か所を探すことになります。
取引先単位や月単位で綴じているなら、その綴じ方を様式で分割しないことです。
同じ取引先の同じ月の注文が、様式が切り替わった日を境に別の場所に入っている状態は避けられます。

担当も同じで、移行期間中は様式ごとに処理の担当が分かれがちですが、保存を受け持つ役割は一本にしておきます。
保存の抜けは、抜けたことに気づくのが数年後になるため、気づいた時点では取り返しがつきません。

電子保存する場合の検索要件

電子的に受け取った注文のデータについては、先に触れたとおり、取引などの日付、金額、取引先で検索できる状態にしておく必要があります3。
移行を進めて記入手段を入力フォームやメール添付のファイルへ寄せるほど、この要件に当たる注文の割合が増えていきます。
統一様式の必須項目にこの三つを入れておく意味は、ここで効いてきます。

移行期間中に起きやすいのは、同じ取引先から先月は紙のFAXで、今月はフォーム入力で届くという状態です。
紙で受け取って紙のまま保存するものと、電子データとして受け取って保存するものとで、満たすべき要件が違ってきます。
受領経路ごとにどちらの扱いになるのかを一覧にして、現場が判断に迷わないようにしておきます。

検索できる状態をどう作るかは、保存先によって変わります。
受注システムの中にデータとして持っていて、日付や取引先で絞り込めるなら、その機能で満たせます。
ファイルをフォルダに置いて管理するのであれば、ファイル名の付け方を先に決めておく形が実務的です。
日付と取引先名と金額をファイル名に含める決め方は、そのための一つの方法です。

なお、紙で受け取った原本を画像データにして原本のほうを処分したい場合は、電子取引データの保存とは別の決まりに沿う必要があります。
様式統一の検討と同じ流れで判断すると取り違えやすいので、紙原本をどうするかは分けて確認してください。
様式の統一そのものは、紙で受け取って紙で保存する運用のままでも進められます。

保存ルールを先に決めておくと、移行の順序がどう前後しても困りません。
どの取引先がいつ新様式へ移るかは相手の都合で動きますが、届いたものをどこにどう置くかが決まっていれば、現場はその日届いた注文書を迷わず処理できます。
統一の作業は取引先との調整に目が向きがちですが、社内で先に決められるのは、実はこちら側です。

受け取り方 保存の仕方 押さえること
統一フォーマットの紙・FAX 紙のまま綴じて保存 原則7年間の保存義務は旧様式と同じ
旧様式の紙・FAX(移行期間中) 紙のまま綴じて保存 置き場所や綴じ方を新様式と分けない
Excel・PDFをメールで受領 電子データのまま保存 取引などの日付・金額・取引先で検索できる状態にする
自社サイトの発注フォーム 電子データのまま保存 同じ三つの項目で検索できる状態にする
移行期間中の受領経路ごとに保存の仕方を分けた図(模式図)
紙と電子データで異なる保存の要件を受領経路別に示した図

必須項目と記入手段を切り分けるところまでは社内で決められますが、記入手段をどこまで入力フォーム側へ寄せられるかは、既存の基幹システムの持ち方や商品マスタの整備状況に左右されます。<br>ここは自社の事情を見ないと判断できない部分です。

いまの受注の流れと取引先の構成をもとに、どの範囲なら入力フォームに寄せられて、どの転記作業が残るのかを具体的に確かめられます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

揃える対象 必須項目は全社共通で固定し、記入手段は取引先ごとに選べるようにする
必須項目の芯 注文データを電子的に保存するなら、取引などの日付・金額・取引先の3項目
必須にする基準 その欄が空欄だと受注処理を進められるかどうかで判断する
移行の順序 対応力の高い先から。先行グループで様式の不備を直してから広げる
期間の見積もり 取引先数÷同時に進められる社数×1社あたりの往復期間で概算する
保存ルール 旧様式も新様式も原則7年間。置き場所と綴じ方を様式で分けない

移行の順序と猶予期間は、取引先の数と、社内で同時に何社を進められるかという体制で決まります。<br>一般的な目安だけでは、自社の計画にそのまま落とし込めません。 取引先をどう分けるか、受け取った注文がいまどの工程で止まっているかを整理したうえで、どのグループから着手するのが現実的かを相談できます。

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よくある質問

手書き注文書をExcelに切り替えるだけでも統一の効果はあるか

読み取りと転記の負担は下がります。
手書きの判読が不要になり、単位や日付の欄をプルダウンで固定できるので、表記のばらつきが元に戻りにくくなります。
ただし、Excelファイルがメールで届く形になると電子取引データとして保存する場面が増え、取引などの日付・金額・取引先で検索できる状態が求められます3。
また、古い様式のファイルを相手が保存して使い続けると、項目が足りないまま届くことになります。
最新版をどこから取ってもらうかと、受け取ったファイルの保存場所を同時に決めておけば、切り替えの効果は出ます。

取引先が統一様式への切り替えに応じてくれない場合はどう対応すればよいか

必須項目が記載されていれば相手の既存帳票のままでも受け付ける、という運用を用意しておくのが現実的です。
様式を一本化できなくても、どの欄を見てどう確認するかという自社側の手順は一本化できます。
断られる理由によって打ち手も変わります。
社内の承認帳票だから変えられないという理由なら、様式は諦めて不足している項目の記入だけを依頼する形になります。
入力や記入の手間が増えるからという理由なら、記入手段をもっとも軽い紙の統一フォーマットに落とすという選択があります。
相手の社内手続きまでこちらで変えることはできないので、どこまで譲るかを社内で先に決めておくと交渉が長引きません。

FAXで受け取る注文書も統一様式の対象にすべきか

対象にする価値があります。
FAXで届く注文書こそ、欄の位置や単位のばらつきが読み取りの負担に直結しているからです。
そしてFAXの統一は、相手に新しい操作を覚えてもらうのではなく、自社が用意した統一フォーマットの紙を使ってもらうという依頼になります。
相手の作業はほとんど変わらないため、受け入れられやすい部類に入ります。
紙で受け取って紙のまま保存するなら電子取引データの検索要件の対象ではありませんが3、原則7年間という保存義務は新様式でも旧様式でも同じです2。

統一様式への移行が完了するまでの期間はどれくらい見ておけばよいか

一律の目安はありません。
参考として、EDIの通信方式移行を扱った取材記事では、取引先約500弱のうち10%強が移行済みという状況と、1取引先あたり事前の調整から利用開始まで1か月ほどかかったことが2016年時点として報告されています1。
対象も仕組みも異なるので、この数値を自社の様式移行の予測値として使うことはできません。
読み取れるのは、相手の対応を伴う移行は一度の案内では終わらないという構造のほうです。
自社の全体期間は、取引先数を社内で同時に進められる社数で割り、1社あたりに必要な往復の期間を掛けた概算から考えると、無理のない計画になります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
  2. 2 出典:国税庁「タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間」(確認時点の現行制度)
  3. 3 出典:財務省「広報誌『ファイナンス』令和6年8月号 特集 令和6年1月スタート 令和5年度の税制改正により見直された電子帳簿等保存制度の内容と中小企業の対応策」(2024年)
  4. 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(事例掲載時点)

画像の出典元

  1. Close-up of a professional organizing a stack of documents on a desk./Photo by KATRIN BOLOVTSOVA on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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