◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 中小企業庁の実証事業(平成28年度補正・12プロジェクト)では、受発注をオンライン化した中小企業の業務時間が5割前後減ったと報告されているが、中小企業平均の値は資料によって51.4%と53.3%で一致していない。
- 同じ実証事業でも中小企業の発注側56.7%・受注側50.8%と差があり、注文を受ける側の効率化は取引先の送り方に左右される。
- 減るのは主に読み取り・入力・着信確認で、在庫や納期の判断、仕様の食い違いへの対応は人の側に残る。
- 電子文書での商取引の利用率は2018年時点で18.5%。取引先が紙や電話のままだと並行運用になるため、件数の多い相手から切り替える順番が効く。
- 受発注機能を含むソフトは2026年度インボイス枠の対象になり得る。補助額50万円超は2機能以上が必要で、補助率は50万円以下の部分が中小企業3/4以内、超過分2/3、上限350万円。
目次

電話・FAX・メールの受発注、時間がかかっているのはどこで、オンライン化で何が変わるか
電話が鳴るたびに手を止め、FAXで届いた注文書を見ながら販売管理システムに品番と数量を打ち直す。
メールの注文は取引先ごとに書式が違い、単位の読み違えがないか確認の電話を入れる。
この繰り返しに時間を取られているなら、削れるのは「同じ情報を人が別の場所へ移し替える」作業です。
中小企業庁の実証事業では、受発注をオンライン化した中小企業の業務時間が平均で5割前後減ったと報告されています。
ただし効果の出方は注文を出す側と受ける側で差があり、取引先が紙や電話のままなら、減るのは自社側の一部にとどまります。
どこまで減るのかは、いま届いている注文の経路と件数で決まります。
「多画面問題」とは何か
注文が届いてから出荷の指示を出すまでに、実際どこで時間が消えているのか。
朝一番でFAXの受信箱を確認し、届いた注文書を1枚ずつ見ながら、自社の販売管理システムに品番と数量を打ち込む。
別の取引先は自社専用のWeb発注画面にログインして確認してほしいと言い、また別の取引先は担当者ごとに書式の違うExcelをメールに添付してくる。
受注側の担当者は、この経路の違いを毎日たどり直しています。
中小企業庁のミラサポplusは、この状態を「多画面問題」という言葉で説明しています。
複数の発注企業に対応するために多数のウインドウやモニタを使わざるを得ず、それが下位層の受注企業のコスト負担になっている、という整理です1。
負担の中身は、画面を開く手間そのものよりも、画面ごとに違う項目名・単位・品番体系を頭の中で読み替えながら転記する作業にあります。
たとえば取引先が5社あれば、5通りの読み替えを覚えていることになります。
ケース単位で届く注文とバラ単位で届く注文が混ざれば、入力の前に換算が入る。
先方の品番と自社の品番が違えば、対応表を見ながら置き換える。
担当者が休んだ日には、代わりの人がその読み替えを一から確認することになり、社内の確認が増えます。
1件あたりは数分の作業でも、月の受注件数と取引先の数を掛ければまとまった時間になります。
そしてこの作業には、間違えたときの代償が大きいという性質もあります。
数量の桁を打ち間違えたまま出荷してしまえば、返品と再出荷、請求の訂正と、元の入力時間の何倍もの手間が後から発生する。
受発注にかかっている時間を考えるときは、通常の処理時間と、間違いを直すために使っている時間の両方を見ておく必要があります。
受注入力・確認連絡・転記作業のうちオンライン化で置き換わる部分
受注1件の流れを分けてみると、オンライン化で置き換わる部分とそうでない部分がはっきりします。
注文を受け取る、内容を読み取る、自社システムへ入力する、不明点を相手へ確認する、受注内容を相手へ返す、出荷や生産の指示につなぐ。
このうち直接減るのは、読み取りと入力、それに「届いているか」「行き違いがないか」を確かめる連絡の部分です。
電話注文なら、聞き取った内容をメモに書き、そのメモを見ながらシステムへ入力するという二段階の書き写しが起きています。
注文データがそのまま自社システムへ取り込まれる形になれば、この二段階が一度で済みます。
ただし、FAXやメールが単にWeb画面に変わっただけで、画面上の内容を人が見ながら打ち直しているなら、注文の届く経路が変わっただけで転記そのものは残ります。
同じ「オンライン化」という言葉でも、この二つはまったく違う状態です。
注文を出す側の工程も分けておきます。
必要な数量を決める、発注書を作る、社内の承認をもらう、取引先へ送る、納期の回答を受け取って台帳に書き写す、欠品の連絡が来たら内容を差し替える。
減りやすいのは、発注書を作って送る部分と、送った内容と返ってきた回答を突き合わせる部分です。
何をいくつ買うかを決める判断は、当然ながら人の側に残ります。
残る作業をあらかじめ見ておくと、期待の置き場所を間違えずに済みます。
在庫が足りないときの代替提案、短い納期に応じられるかの判断、仕様の食い違いを電話で詰めるやりとり。
こうした例外対応は、注文の受け渡しが電子になっても人が担います。
いま受発注に使っている時間のうち、どれが読み取りと入力で、どれが判断と交渉なのか。
この区別を持っておくと、次に出てくる削減率の数字の読み方が変わってきます。
実証データで見る削減効果:中小企業平均51〜53%、発注側と受注側の差
全体平均と中小企業平均の違い
中小企業庁は、平成28年度補正で企業間のデータ連携に関する実証事業を12のプロジェクトで実施しています。
そこで報告されている受発注業務時間の削減率は、参加企業の全体平均で49.2%2、中小企業に絞ると53.3%2でした。
大企業を含めた全体より、中小企業のほうが削減幅が大きく出ています。
この差は「中小企業のほうが向いている」という話ではなく、出発点の違いとして読むほうが自社に当てはめやすくなります。
担当者が1人で電話とFAXとメールを受け、自分の手ですべてシステムへ入力していた職場は、置き換えられる作業がそれだけ多く残っていた。
すでに一部の取引先とはデータで受け取れていた職場なら、同じ仕組みを入れても減る時間は小さくなります。
自社がどちらに近いかで、5割という数字の当てはまり方は変わります。
もう一つ、この数字が何を測ったものかにも触れておきます。
「業務時間」がどこからどこまでを指すのか、受注の入力だけなのか、問い合わせ対応や差し戻しの処理まで含むのかは、公開されている記述からは特定できません。
自社で効果を見積もるなら、まず経路別の月間件数と、1件あたりの処理時間を自分で測っておくと比較の土台ができます。
その実測値に対して半分前後という幅を当てるほうが、他社の数字をそのまま置くより根拠のある見込みになります。
発注側56.7%・受注側50.8%という内訳
同じ実証事業の内訳を見ると、立場によって削減率が違います。
参加企業の全体では発注企業51.1%、受注企業47.3%2。
中小企業に限ると発注企業56.7%、受注企業50.8%2で、どちらの区分でも注文を出す側のほうが削減幅が大きくなっています。
自分が注文を出す側なのか受ける側なのかで、期待できる数字が違うということです。
発注側は、自社が注文を出す手順を変えれば、発注書を作って送り、届いたかを確認する作業が自社の中で完結して減ります。
受注側は、相手がどんな形で注文を送ってくるかによって作業量が決まるため、自社の意思だけでは動かせない部分が残ります。
この差がどこから来るのかは次の節で見ますが、その前に数字そのものの幅を確認しておきます。
二資料で数値が異なる点への注意
同じ実証事業を引用しているはずの二つの資料で、中小企業の平均削減率が一致していません。
中小企業庁のミラサポplusは平均51.4%と記し1、この実証事業を引用した別の記事は53.3%としています2。
どちらが正しいかを判定できる材料は手元になく、集計の範囲や対象の取り方が違う可能性があります。
社内の説明資料に片方だけを書き写すと、出どころを問われたときに答えられなくなります。
「中小企業では5割前後の削減が報告されている」という幅で受け止め、必要なら両方の数値と出典を並べて示すほうが確かです。
小数点以下まで引用したほうが説得力があるように見えますが、根拠を確認できないまま細かい数字を使うほうが、後で足元をすくわれます。
加えて、この数値は12のプロジェクトという限られたモデル事業の結果です。
削減率を実測で出したのか、参加企業の回答で出したのかまでは、確認できる資料に書かれていません。
実証は2016年度のもので、当時と今とでは使えるソフトも取引先の環境も変わっています。
全国の中小企業を代表する統計ではなく、条件の整った事業で半分前後まで下がった例がある、という位置づけの数字として扱うのが妥当です。
対象となった業界と地域も限られています。
自社の業種や所在がその範囲に近いかどうかは、この数字をどこまで自社に当てはめるかを考えるときの材料になります。
| 区分 | 発注企業 | 受注企業 | 平均 |
|---|---|---|---|
| 参加企業の全体 | 51.1% | 47.3% | 49.2% |
| 中小企業 | 56.7% | 50.8% | 53.3% |
効果を得るための条件:取引先の電子化対応状況
取引先の電子化対応率18.5%という実態
自社が仕組みを入れても、注文の送り手が紙や電話のままなら、減るのは自社側の一部だけです。
では、どのくらいの企業が電子でのやりとりに対応しているのか。
中小企業庁が示している数字では、中小企業における「電子文書での商取引や受発注情報管理」の利用率は18.5%で、2割を下回っています1。
これは2018年時点の中小企業のデータで、その後の変化までは含みません。
それでも、取引先の多くが中小企業である場合、注文の大半が紙や電話で届く状態はまだ珍しくない、という見当は付きます。
逆に、大手の発注企業と取引しているなら、相手が指定する発注画面に自社が合わせる形が主になっているはずです。
どちらの世界にいるかで、次の一手はまるで違ってきます。
全体の数字より確かなのは、自社の取引先を数えることです。
注文が今どの経路で届いているか、経路ごとに月何件あるか、そのうち人が転記しているのは何件か。
この三つを並べると、削減できる作業の総量がおおよそ見えてきます。
受注側の削減幅が発注側より小さい理由
先ほどの内訳では、受注企業の削減率が発注企業より低く出ていました2。
資料はこの差の原因を説明していないため、理由を断定することはできません。
ただ、作業の構造から考えると、受注側の効率化が相手の対応状況に左右されやすいことは説明が付きます。
たとえば取引先が30社あって、そのうち3社が電子データで注文を送ってくれるようになったとします。
その3社分の転記は確かに消えますが、残る27社は従来どおりFAXと電話で届きます。
新しい仕組みと従来の紙が並行して動いている間は、確認する場所が1つ増えたようにも感じられる。
受注側で効果が実感しにくいとすれば、この並行期間の長さが効いています。
だから、どの取引先から切り替えるかの順番が効いてきます。
件数の多い取引先から順に電子で受け取れるようにできれば、残る手作業の総量は目に見えて減ります。
逆に、年に数件しかない取引先を先に切り替えても、並行運用の手間だけが残りやすい。
注文件数と削減効果の関係を直接示す資料は見当たりませんでしたが、減るのが件数に比例して発生する読み取りと入力である以上、件数の少ない相手ほど削減できる時間も小さくなると考えられます。
立場によって、最初に打つ手も変わります。
注文を出す側なら、自社の発注作業を整えるところまでは自社の判断で進められます。
ただし、取引先に自社専用の画面へ入力してもらう形にすると、相手にとっては対応先が1つ増えることになります1。
相手が他の発注企業の画面も抱えているなら、その負担は回り回って納期回答の遅れや入力の取り違えとして戻ってくることもあります。
注文を受ける側なら、主要な取引先が既に使っている送信形式に自社が合わせられるかを先に確かめることになります。
相手にとっては、送り方を変えずに済むなら協力の障壁が低い。
相談を持ちかけるときも、「システムを入れたので対応してください」と伝えるより、「今お使いの形式のまま、こちらで受け取れるようにしたい」という話のほうが進みやすくなります。
ここは統計や制度で決まる部分ではなく、取引の事情をどう読むかの話です。
効果が小さくなりやすい条件も、先に見ておくほうが判断しやすくなります。
実証データがそう示しているわけではありませんが、削減の対象が読み取りと入力である以上、取引先の大半が電子でのやりとりに対応していない場合や、注文の件数そのものが少ない場合は、減らせる時間の絶対量が小さくなります。
反対に、決まった品目を同じ取引先から繰り返し注文している業務なら、置き換えられる作業の比率は高くなります。
自社がどちらに近いかは、先ほど数えた経路別の件数を見れば見当が付きます。
導入費用・期間・負担:補助金を使う場合の目安
インボイス枠の機能要件と補助率
どの作業がどれくらい減るのか、何に左右されるのかはここまでで整理できました。
残るのは費用と時間の負担です。
導入費用そのものは製品と構成によって幅があり、ここで相場を示すことはできませんが、公的な補助の枠組みは条件が公開されています。
2026年度のデジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠(インボイス対応類型)は、「会計」「受発注」「決済」のうち1つ以上の機能を持つソフトウェアを対象としています4。
受発注の機能を含むソフトであれば、この要件を満たし得るということです。
ただし、補助額が50万円を超える場合は2機能以上を備えていることが必要とされています4。
補助率は、補助額50万円以下の部分が中小企業で3/4以内、小規模事業者で4/5以内4。
50万円を超える部分は2/3で4、補助額の上限は350万円です4。
区切りが50万円のところにあるため、受発注だけの構成で申請できるのか、会計や決済まで含める必要があるのかは、見積の規模と連動して決まります。
これは2026年度のインボイス枠についての条件で、他の枠や年度が変われば要件も補助率も変わります。
申請を前提に製品を選ぶなら、その製品と支援事業者がこの枠の対象として登録されているかを公募の要領で確かめるところが出発点になります。
一方で、補助の条件に合わせて必要のない機能まで含めると、導入後に使わない部分の設定と運用が残ります。
補助率の高さだけで構成を決めないというのは、費用の話であると同時に、その後の運用の話でもあります。
申請締切から交付決定・実施期限までのスケジュール
補助金を使う場合、導入の時期は自社の都合だけでは決められません。
2026年度中に締切と交付決定が定められ、翌年度初めまでが実施期限となるスケジュールが補助金の要綱で定められています4。
申請書を準備する時間は締切より前に必要ですから、検討を始めてから受発注の時間が実際に減り始めるまでには、相応の間があると見ておくことになります。
締切から交付決定まで1か月半ほど、そこから実施期限まで半年足らず。
この期間に導入作業と、実際に使い始めるところまでを収める段取りになります。
申請書を準備する時間は締切より前に必要ですから、検討を始めてから受発注の時間が実際に減り始めるまでには、相応の間があると見ておくことになります。
そしてもう一つ、時間が減り始めるのは仕組みが入った時点ではなく、取引先が新しい経路で注文を出し始めてからです。
社内の設定が終わっても、相手が従来どおりFAXを送ってくる間は、旧来の作業がそのまま残ります。
取引先への案内をいつ出すか、切り替えの時期をどう決めるかは、製品の選定と並行して進める部分です。
ここを後回しにすると、費用だけが先に出て効果が遅れて来る形になりやすい。
補助金を使わないという選択もあります。
締切に合わせる必要がないぶん、効果の出そうな取引先から小さく始めて広げる進め方ができます。
費用の見積もりを取るときは、初期費用と月額の別に加えて、取引先の数や注文件数によって金額が変わる仕組みになっていないかを確かめておくと、切り替えを進めたときに費用がどう動くかが読めます。
自社の数字に置き換える作業は、経路ごとに月何件の注文が届いているかを数えるところから始まります。
| 補助額の区分 | 中小企業 | 小規模事業者 |
|---|---|---|
| 50万円以下の部分 | 3/4以内 | 4/5以内 |
| 50万円を超える部分 | 2/3 | 2/3 |
| 補助額の上限 | 350万円 | 350万円 |
公開されている削減率は条件の整った実証事業の数字であり、自社にどれだけ当てはまるかは、注文がどの経路で何件届いているか、どこで人が転記しているかを社内で棚卸ししないと決まりません。
経路ごとの注文件数と転記が起きている箇所を一緒に整理すると、どの取引先から切り替えると減る時間が大きいか、そこで残る確認作業は何かの見当が付きます。無料相談で要件を整理する
実証事業の対象業種・地域(6業界5地域)
平成28年度補正の実証事業(12プロジェクト)が対象とした業界と地域の区分
- 業界:自動車
- 業界:水インフラ
- 業界:農林水産
- 業界:輸出
- 業界:卸小売
- 業界:サービス
- 地域:北海道
- 地域:東京
- 地域:静岡
- 地域:愛知
- 地域:大阪
自社の業種や取引の形がこの範囲から離れるほど、報告されている削減率をそのまま自社の見込みに置き換えにくくなります。
要点の整理
| 削減効果の目安 | 実証事業で中小企業平均5割前後(資料により51.4%と53.3%) |
|---|---|
| 立場による差 | 中小企業では発注側56.7%・受注側50.8% |
| 減る作業/残る作業 | 読み取り・入力・着信確認は減り、在庫や納期の判断と例外対応は残る |
| 効果を左右する条件 | 取引先が電子で送れるか(電子文書での商取引の利用率は2018年時点で18.5%) |
| 数値の限界 | 12プロジェクトのモデル事業、平成28年度補正、算出方法の記載なし |
| 費用の抑え方 | 受発注機能を含むソフトは2026年度インボイス枠の対象になり得る(50万円超は2機能以上、上限350万円) |
| 時間軸 | 2026年度中に6次締切と交付決定が定められ、翌年度初めが実施期限 |
取引先の送り方に合わせて受け取る形を設計できるかどうかは製品と構成によって変わり、機能一覧の比較だけでは自社の注文がそのまま流れるかを判断できません。 実際に届いている注文の様式を見ながら、どこまで転記なしで取り込めるか、切り替え期間に紙と並行する運用をどう組むかを具体的に確かめられます。
よくある質問
受発注システムに会計や決済の機能も含めると、補助金の対象になりやすいのですか
2026年度のインボイス枠は「会計」「受発注」「決済」のうち1つ以上の機能を持つソフトウェアが対象なので、受発注の機能だけでも要件は満たし得ます4。
分かれ目は補助額です。
補助額が50万円を超える場合は2機能以上を備えていることが必要とされているため、規模の大きい構成で申請するなら会計や決済まで含める必要が出てきます4。
ただし、補助の条件に合わせて使う予定のない機能を足すと、導入後に設定と運用だけが残ります。
先に決めるのは必要な機能で、枠に合わせるのはその次です。
取引先が電子化に対応してくれない場合、どちらから声をかけるべきですか
どちらから切り出すのが正しいと決める資料はなく、取引の事情によります。
判断の材料になるのは、注文を出す側か受ける側かという立場の違いです。
出す側は自社の発注手順を変えれば自社の作業が先に減りますが、相手に自社専用の画面へ入力してもらう形にすると、相手にとっては対応先が1つ増えます1。
受ける側は相手の協力が前提になるため、相手に送り方を変えてもらうより、相手が今使っている形式のまま自社が受け取れるようにできないかを先に確かめるほうが話を進めやすくなります。
声をかける順番は、件数や金額の大きい取引先からにすると、同じ手間でも減る時間が大きくなります。
オンライン受発注の導入と、社内のデジタル化全般の効果は何が違うのですか
測っている対象が違います。
東京商工会議所が2024年に東京23区内の中小企業を対象に行った調査(10,000社に発送、1,218社が回答)では、デジタルシフトの効果として「業務効率化(コスト削減、時間短縮、ミス防止等)」を挙げた企業が81.0%で最も多くなっています3。
これは効果として何を実感したかという回答で、対象も受発注に限りません。
一方、本文で見た5割前後という数字は、受発注業務そのものの時間をどれだけ減らせたかという実証事業の結果です12。
前者は「効率化を感じた企業がどのくらいあるか」、後者は「受発注の時間がどれだけ減ったか」で、社内説明に使うときに混ぜないほうが誤解を招きません。
注文件数が少ない場合でも時間削減効果は見込めますか
件数別の効果を示す資料は確認できていないため、実証された数字で答えることはできません。
ただし、オンライン化で減るのは注文1件ごとに発生する読み取りと入力です。
件数が少なければ、削減率が同じでも減る時間の絶対量は小さくなります。
月に何件の注文をどの経路で受けていて、1件あたり何分かかっているかを掛け合わせれば、上限がどのくらいかは自分で出せます。
その時間が、費用と切り替えの手間に見合うかどうかが判断の分かれ目になります。
2016年度の実証データを、今の判断にそのまま使ってよいのでしょうか
そのままの数字を自社の見込みとして置くのは避けたほうがよいと考えます。
この実証は平成28年度補正のもので、12のプロジェクトという限られたモデル事業です1。
削減率をどう算出したかも、確認できる資料には書かれていません。
使い方としては、「人手での読み取りと入力が中心だった業務は、電子的に受け渡す形に変えると半分前後まで減った例がある」という水準の参考にとどめ、自社の見込みは経路別の件数と処理時間の実測から立てるのが確かです。
社内で数字を示す場合も、実証事業の条件と年度を添えておくと、後から根拠を問われたときに説明できます。
- 1 出典:中小企業庁(経済産業省・ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年公開/2026年3月最終更新、実証は平成28年度補正)
- 2 出典:オリックス・レンテック株式会社「受発注のデジタル化は製造業にどんなメリットをもたらすか」(中小企業庁 平成28年度実証事業・12プロジェクトを引用)
- 3 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果」(2024年調査/2025年1月公表)
- 4 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金(デジタル化・AI導入補助金2026)インボイス枠(インボイス対応類型)」(2026年度)
画像の出典元
- Side view of young Hispanic male remote employee discussing documents during phone call while working online with laptop and papers in home office/Photo by Michael Burrows on Pexels