◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
目次

食材発注の"手間"は具体的に何に消えているのか
朝の仕込みの前に冷蔵庫を見て回り、青果と鮮魚には電話をかけ、乾物と調味料はFAXを流す。
納品のときに伝票の数量を確かめ、単価を控え、月末に請求書と突き合わせて原価表に打ち込む。
これが毎日続くと、発注そのものより、その前後の確認と転記に時間が溶けていきます。
受発注をデータでつなぐ形に変えると、こうした転記や個別の確認が減る傾向は、業種をまたいだ実証事業で確認されています1。
ただし食材発注を対象に測った数値ではありません。
扱う品目数と取引先数、そして会計や在庫管理で仕入れの数字がどこまでつながっているか。
この二つで、発注書の形をそろえる程度の改善で足りるのか、仕組みごと変えたほうが早いのかが分かれます。
「発注に時間がかかる」と感じていても、その時間が一つの作業に集まっていることはあまりありません。
電話をかけている数分より、その前に在庫を見て回る時間や、納品後に数字を写す時間のほうが長い、という形で分散していることがあります。
減らせる場所を決めるには、まず発注という一語でひとまとめにしている作業を、いくつかの段階に分けて眺めるところから始まります。
最初にあるのは、何をどれだけ頼むかを決める作業です。
冷蔵庫と乾物棚の残量を確かめ、明日の予約数や天候を頭に入れ、定番品の在庫と使い切りたい食材を突き合わせる。
この見立てそのものは、発注方法を変えても誰かが判断し続ける部分です。
ここを短くしたいなら、在庫の記録の取り方や定番品の基準量の決め方という、別の話になります。
次が、取引先ごとの連絡です。
青果は電話、鮮魚も電話、乾物と調味料はFAX、酒は担当者へのメッセージ、というように手段が分かれていると、それぞれの締め時間に合わせて一日のうちの別々のタイミングで動くことになります。
電話は相手が出るまで待ち、出た後は数量を読み上げ、復唱を聞いて確かめる。
FAXは送って終わりに見えますが、実際には届いたかどうかの確認を電話で入れていることが少なくありません。
相場で単価が動く品目では、そのやり取りの中で今日の値段を聞き、手元のメモに残します。
三つめが、納品の後に発生する作業です。
届いた食材と納品伝票を照らし、頼んだ数量と違いがないかを確かめる。
伝票をファイルに綴じ、月末に請求書が来たら合計が合うかを見る。
原価を管理しているなら、そこから品目別の金額を原価表や会計ソフトに写す。
同じ数字を、発注時のメモ、納品伝票、請求書、原価表と、少なくとも三回か四回は目で追い、そのうち何回かは手で書き写していることになります。
この転記と確認の繰り返しが、工数と原価の両方に効いてきます。
写す回数が増えれば、写し間違いが混ざる余地も増えます。
そして、数字が紙とメモに分かれて残っている間は、今月の仕入れがいくらになりそうかを月の途中で知ることが難しくなります。
どの作業に何分かかっているかは、店の規模や取引先の数によって違うので、一般的な時間の目安を当てはめてもあまり意味がありません。
自分の店ではどの段階が一番厚いのか。
その見当がついたところで、次に必要になるのは、発注方法を変えると何が変わるのかという材料です。
もう一つ、発注が特定の人の頭の中に入っている状態も、手間として数えられます。
どの取引先に何時までに連絡するのか、この品目はケース単位でしか頼めないのか、といった条件が記録ではなく記憶にあると、担当者が休んだ日には確認の電話が増えます。
これは時間の問題であると同時に、発注の内容が記録として残っていないことの現れでもあります。
発注方法の違いは原価の把握しやすさにどう影響するか
前に見た転記の回数は、そのまま原価の見えにくさにつながります。
電話とFAXで発注をしている限り、頼んだ数量と単価は、その場の会話と手元の紙に残ります。
紙は保管できますが、集計の材料としては使えません。
月の途中で「今月の食材費はいくらか」を知りたくなったら、誰かが伝票の束を出して足し算をすることになります。
発注をデータでつなぐというのは、この最初の一歩を変える話です。
発注の内容を画面に入力して送れば、頼んだ品目・数量・単価がそのまま記録として残ります。
相手が受け取ったかどうかも、送信の記録で分かります。
月の途中で仕入れ額を見たいときに、伝票を数え直す作業が要らなくなる。
原価が「安定する」より先に、まず「見える」ようになる、という順番です。
この置き換えでどれくらい手間が減るのかについては、業種をまたいだ実証の記録があります。
中小企業庁が紹介している中小企業共通EDIの実証事業では、12のプロジェクトを通じて、中小企業の受発注業務時間が平均で51.4%削減されたと報告されています1。
対象になったのは自動車、水インフラ、農林水産、輸出、卸・小売、サービスの6業界で、北海道・東京・静岡・愛知・大阪の5地域で行われた事業です1。
飲食店や給食施設の食材発注を測った数値ではないので、自分の店に当てはめて「半分になる」と読むことはできません。
読み取れるのは、受発注のやり取りをデータでつなぐと業務時間が減る方向に働くという傾向が、業種を越えて現れているという点です。
この実証では、大企業と比べたときに中小企業のほうが削減率が高かったことも報告されています1。
理由までは資料に書かれていませんが、置き換わる前の作業がどれだけ人の手に残っていたかによって減り幅が変わり得ることは、作業の中身から考えれば理解できます。
電話とFAXと手書きが中心の状態は、その意味では削減の余地が残っている側にあります。
もう一つ、発注が単独の作業ではないことを示す材料があります。
流通システム開発センターが公開している流通BMSという標準仕様は、発注・出荷・受領・返品・請求・支払という6業務・8種の標準メッセージを、2007年4月に基本形として公開しています2。
企業間でやり取りする伝票の形をあらかじめそろえておき、発注のデータがそのまま出荷や請求につながるようにする、という考え方です。
ただし、この仕様が想定しているのは、スーパー業界とグロサリー業界における卸売(またはメーカー)から小売までの取引であり、外食産業や給食施設の発注を規定したものではありません2。
飲食店がこの標準どおりに発注する、という話ではない、ということです。
それでも参考になるのは、発注を起点に出荷・受領・請求・支払までが同じデータでつながる設計が、業界の標準として形になっているという事実のほうです。
二つの資料を並べると、次のことが言えます。
受発注をデータにすると業務時間が減る傾向は業種を越えて確認されていて、しかも発注のデータは発注業務の中だけで終わらず、その後の受領や請求の照合とも地続きになり得る。
食材発注でも同じ連鎖が起きるかどうかは、どちらの資料も答えていません。
言えるのは、発注方法を変えるかどうかを考えるときに見るべき範囲は発注の画面だけではなく、納品伝票の照合と請求書の突き合わせまで含めたほうがよい、ということです。
発注の連絡が数分短くなることより、そこから先の転記がまとめて減るかどうかのほうが、効き方としては大きくなります。
| 見るところ | 電話・FAX中心の発注 | データでつなぐ発注 |
|---|---|---|
| 数量・単価の伝わり方 | 口頭と紙でその都度 | 入力した内容がそのまま残る |
| 発注後に手元に残るもの | 送信控えと手書きメモ | 発注の記録 |
| 原価を集計するとき | 伝票から人が集め直す | 残った記録を集計に回せる |
| 残る確認作業 | 相手に届いたかの確認 | 相手の受注方法と締め時間の把握 |
効率化の方向性—手作業の改善か、仕組み化か—選ぶ基準
では、自分の店はどちらへ動くべきか。
発注の仕組みを入れる方向と、電話・FAXのまま手順を整える方向は、どちらも工数を減らすという同じ目的に向かいます。
違うのは、減らせる作業の種類と、減らすために必要な準備です。
手作業側の改善は、発注書のフォーマットを統一する、定番品の発注量をあらかじめ決めておく、取引先ごとにばらばらの締め時間を一覧にして連絡の時間帯をまとめる、といった形になります。
相手の対応状況に左右されず、今日から手をつけられるのが強みです。
その代わり、納品伝票から原価表へ数字を写す作業そのものは残ります。
仕組み化はその転記を減らせますが、取引先の対応と、自分側の受け皿の準備が前提になります。
品目数・取引先数が多い場合の考え方
判断の一つめの材料は、扱っている品目と取引先の数です。
取引先が二、三社で、頼む品目もほぼ固定されているなら、発注は毎回ほとんど同じ内容の繰り返しになります。
この場合は、定型の発注書をつくって数量だけ書き換える運用にするだけでも、連絡と確認の往復はかなり整理できます。
一方、青果・鮮魚・精肉・乾物・酒類と取引先が分かれ、それぞれに数十品目ずつあるなら、発注のたびに「どの取引先に、どの品目を、いくつ」という組み合わせが増えていきます。
納品伝票は取引先の数だけ届き、請求書も別々に来ます。
転記の回数は、この組み合わせの数に比例して増えます。
裏返せば、データでつないだときに減る作業も、同じだけ大きくなるという見方ができます。
ただしこれは、作業の組み合わせの数から考えた見方です。
品目数や取引先数がいくつを超えたら仕組み化が有利になる、という境目を測った資料があるわけではありません。
目安にするなら、先月の納品伝票が何枚あったか、そこから原価表に何回書き写したかを数えてみるほうが、自分の店の実態に近い材料になります。
既存の会計・在庫管理との連携がある場合の考え方
二つめの材料は、発注データの行き先がすでにあるかどうかです。
会計ソフトや在庫管理、POSレジをすでに使っていて、仕入れの数字をそこに入れているなら、発注がデータで残った時点で入力の手間が減る余地があります。
逆に、原価の管理が手書きの台帳だけなら、発注をデータ化しても受け皿がないので、効果は取引先とのやり取りの部分にとどまります。
ここで区別しておきたいのは、データが存在することと、そのデータを別のソフトが取り込めることは別だという点です。
発注の記録が画面に残っていても、会計ソフト側に取り込む機能がなければ、結局は人が見ながら入力します。
確かめるのは「記録が残るか」ではなく「いま使っているソフトにどの形で渡せるか」です。
ファイルで書き出せるのか、決まった形式で連携できるのか、それとも手入力のままなのか。
この答えによって、減る工数の見積もりが変わります。
どちらの方向を選ぶにしても、必要量の見立てと、届いた食材の検品はなくなりません。
減るのは、同じ数字を別の紙に書き写す作業と、相手に届いたかを確かめる作業です。
どこが減ってどこが残るのかを先に分けておくと、仕組みに期待しすぎることも、手作業の改善を軽く見ることもなくなります。
発注の精度と原価—食品ロスという視点
ここまでは手間の話でしたが、発注の精度も原価に効きます。
頼みすぎれば使い切れずに捨て、足りなければ追加の仕入れか、品切れになります。
どちらも原価率に跳ね返りますが、前者は金額として見えにくいところが厄介です。
廃棄した食材の代金は、すでに仕入れ原価として計上されています。
規模感を押さえるために、公的な推計を一つ見ておきます。
農林水産省の推計では、2024年度の事業系食品ロス量は237万トンで、その内訳は食品製造業110万トン、食品卸売業9万トン、食品小売業48万トン、外食産業70万トンとされています3。
外食産業だけで70万トンという量が、業界全体として毎年発生していることになります3。
ここで注意したいのは、この推計が食品ロスの発生要因までは分析していないことです3。
仕入れが多すぎたのか、仕込みで出たのか、客の食べ残しなのかという内訳は、この資料からは分かりません。
ですから「発注の精度を上げればこの70万トンが減る」とは言えません。
読み取れるのは、食材が使われずに捨てられる量が業界全体では相当の規模にあるという背景であり、自分の店の廃棄がどこから出ているかは、自分で見るしかない、ということです。
そのうえで、発注方法と精度の関係を考えると、直接効いてくるのは「後から見返せるかどうか」です。
いつ、何を、どれだけ頼んだかが記録として残っていれば、廃棄が多かった品目について、発注量と実際に使った量を突き合わせることができます。
記憶と手書きのメモだけで発注していると、この突き合わせ自体が難しくなります。
記録が残ることと、ロスが減ることは別です。
記録は、見直すための材料が手元にある状態をつくるだけで、見直すかどうかは運用の側にあります。
発注単位の制約も、この文脈では見ておく価値があります。
ケース単位でしか頼めない品目は、必要量が半端でも一箱で入ってきます。
使い切れる見込みが立たない品目について、取引先に小分けの単位があるかを聞く、あるいは在庫が残りやすい品目だけ発注の頻度を変える。
こうした調整は、どの品目がいつどれだけ入ってきたかが品目別に残っているほど、判断しやすくなります。
つまり、発注方法の見直しが原価に効く道筋は二つあります。
一つは転記と確認が減ることで、担当者の時間が空くこと。
もう一つは、数量と単価が品目別に残ることで、値上がりや使い残しを後から特定できるようになることです。
二つめは自動的に結果が出るものではなく、残った記録を誰かが見る前提の話になります。
| 区分 | 食品ロス量 |
|---|---|
| 食品製造業 | 110万トン |
| 食品卸売業 | 9万トン |
| 食品小売業 | 48万トン |
| 外食産業 | 70万トン |
| 事業系の合計 | 237万トン |
実例に見る、電話・FAXに代わる発注の受け皿
ここまでは発注する側の話でしたが、データで発注するには、受け取る側にもその仕組みが必要です。
取引先が電話とFAXしか受け付けないのであれば、こちらだけが変わることはできません。
実際に、食材の卸売側でWebから注文を受ける仕組みを整えた例があります。
業務用食材の卸であるフーヅフリッジ株式会社は、飲食店の仕入れ向けに業務用食材の通販直販サイトを運営しています4。
このサイトの構築では、卸価格と小売価格を別に管理すること、複数倉庫の在庫を扱えること、基幹システムと連携することが要件になり、実質的な開発期間は約4カ月だったと記録されています4。
この事例から、発注する側にとって意味のある点が二つ読み取れます。
一つは、Webでの注文が「誰にでも同じ一律価格」を意味するわけではない、ということです。
卸価格と小売価格を分けて管理する設計になっているのは、相手によって異なる価格でやり取りする前提がシステム側に置かれているからです4。
電話で相対の単価を決めている取引をWebに移すと条件が失われるのではないか、という心配に対しては、価格の出し分けを前提にした作りが現に存在する、という答えになります。
もう一つは、在庫と基幹システムの扱いです。
複数倉庫の在庫を扱い、基幹システムと連携するという要件は、注文を受けた後の出荷や請求の処理と、Web上の注文をつなぐためのものです4。
前の節で見た、発注が出荷や請求と連鎖するという考え方が、食材の流通の場でも形になっている一例と見ることができます。
ただし、これは供給側である卸の事例です。
このサイトを使った飲食店の発注工数がどれだけ減ったかを測ったものではありません。
ここから言えるのは、電話・FAXに代わる受け皿が食材の流通の側にすでにあり、価格や在庫の条件を保ったまま注文を受ける仕組みが作られている、というところまでです。
自分の取引先がどうなっているかは、取引先ごとに確かめることになります。
受け皿の形は一つではありません。
取引先が自社の注文サイトを持っている場合もあれば、決まった様式の注文ファイルをメールでやり取りする場合、共同で使う受発注のサービスに参加している場合もあります。
どれであっても、発注する側にとって重要なのは、送った内容が記録として残り、後から数量と単価を確かめられるかどうかです。
この一点を基準に置くと、相手の仕組みの呼び名が違っても、比べる軸は変わりません。
発注方法を切り替える前に確認すべきこと
方向が見えてきたら、切り替える前に確かめておくことがあります。
ここまで見てきたとおり、効果は自分の側の準備だけで決まらず、相手の対応と、既存の業務とのつなぎ方に左右されます。
そして、切り替えにどれだけの費用と期間がかかるかについては、公的な相場の資料があるわけではありません。
取引先の構成も使っているソフトも店ごとに違うので、金額と期間は個別に見積もりを取るしかない、というのが実際のところです。
取引先への確認事項
最初に確かめるのは、取引先がデータでの受注に対応できるかどうかです。
対応している場合でも、その形はさまざまです。
自社の注文サイトを案内される場合、決まった様式のファイルを受け取る場合、特定の受発注サービスを使っている場合があります。
聞いておきたいのは、受注できる方法、締め時間、価格をどう反映するか、緊急の追加発注をどう扱うか、の四点です。
締め時間は電話とWebで違うことがあります。
相場で動く品目の単価が注文の時点で表示されるのか、納品時に確定するのかも、原価の見え方に直結します。
そして、当日の急な追加を電話で受けてもらえるかどうかは、切り替えた後も現場が回るかを左右します。
対応していない取引先があっても、それだけで切り替えを諦める必要はありません。
対応できる取引先から順に移し、残りは電話・FAXを続ける形も取れます。
その場合に決めておきたいのは、発注の記録をどこに集めるかです。
注文サイトの履歴と手書きのメモに分かれたままだと、原価を見るたびに二か所を確かめることになり、せっかく減らした手間が別のところで戻ってきます。
小さく試す進め方
いきなり全部を切り替えると、うまくいかなかったときに戻す先が分からなくなります。
先に一社、それも取引の内容が定型的な取引先から始めるほうが、確かめたいことがはっきりします。
試している間に見るのは、送った内容がそのまま記録として残っているか、納品伝票と照らして数量と単価が合うか、月末の請求書と突き合わせたときにずれがないか、の三点です。
ずれが出るなら、原因が入力の側にあるのか、相手の処理の側にあるのかを確かめてから範囲を広げます。
この段階で電話・FAXを止めてしまうと、比べる手段がなくなります。
しばらくは両方を残しておくほうが、判断の材料が手に入ります。
期間をどれくらい取るかは、発注の周期によって変わります。
毎日発注する品目なら一、二週間で傾向が見えますが、週に一回の品目は回数が少ないぶん判断に時間がかかります。
少なくとも請求書を一度突き合わせるところまでを一区切りにすると、発注のやり取りだけでなく、原価の側まで含めて確かめられます。
そして、切り替えの目的を工数だけに置かないほうが、判断はぶれません。
転記が減るのは分かりやすい成果ですが、発注の内容が記録として残ることのほうが、後から効いてきます。
数量と単価が品目別に残っていれば、値上がりした品目を特定する、使い残しが出やすい品目の発注量を見直すといった判断の材料がそろいます。
逆に言えば、記録が残る形になっていない切り替えは、電話がWebに変わっただけで終わることもあります。
自分の店の発注実態を書き出す前に、判断が分かれるところを観点別に並べておきます。
取引先がどの方法で受注できるか、いま使っている会計ソフトや在庫管理にどの形でデータを渡せるかは、店ごとに条件が違い、一般的な説明だけでは決められません。
扱う品目数と取引先の構成をもとに、どの転記が減ってどの確認が残るのか、既存のソフトとどうつなげるのかを一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する
手作業改善と仕組み化—工数・原価把握・取引先対応の比較の視点
工数・原価把握・取引先対応という観点ごとに、二つの方向で何が変わるかを並べています。
- 工数:手作業の改善で減るのは連絡の往復と探し物の時間。仕組み化で減るのは、それに加えて同じ数字を写す作業。どちらでも、必要量の見立てと検品は残る。
- 原価把握:発注した数量と単価が記録として残るかどうかが分かれ目。残れば月の途中でも仕入れ額を集計でき、残らなければ月末に伝票を集め直すことになる。
- 取引先対応:手作業の改善は相手の都合に左右されないが、仕組み化は相手が受注できる方法・締め時間・価格の反映の仕方に依存する。
- 準備の重さ:手作業の改善は発注書の様式と定番品の基準量を決めれば始められる。仕組み化は会計・在庫側の受け皿と、渡せるデータの形を先に確かめる必要がある。
- 効き方の見当:品目数と取引先数が多いほど転記の回数も多く、仕組み化で減る幅が大きくなりやすい。少なければ手作業側の改善で足りることがある。
取引先が増えたときや、会計ソフト・在庫管理を新しく使い始めたときは、同じ観点で見直すと答えが変わることがあります。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 扱う品目数・取引先数 | 組み合わせが増えるほど転記の回数も増える。先月の納品伝票の枚数と、原価表へ写した回数を数える |
| 既存システムの受け皿 | 会計・在庫・POSにどの形で渡せるか。記録が残ることと、取り込む機能があることは別 |
| 取引先の対応 | 受注できる方法、締め時間、価格の反映、緊急の追加発注の扱いを取引先ごとに確認する |
| 効果の根拠の範囲 | 51.4%の削減は6業界12プロジェクトの実証値であり、食材発注を測った数値ではない |
| 試す単位 | 一社・定番品から。請求書の突き合わせを一度またぐまでを一区切りにする |
業務用食材の直販サイトでは、卸価格と小売価格の別管理や複数倉庫の在庫、基幹システムとの連携といった条件をどう扱うかが要件になります。こうした受け皿をつくってきた側からは、注文の内容がどこまでデータで残せるのかを具体的に説明できます。 いまの発注のやり方をそのまま持ち込めば、どこからデータでつなげるか、段階をどう分けて試すかを確かめられます。
よくある質問
取引先や品目数が少ない小規模な飲食店でも、発注のシステム化は検討する価値がありますか
取引先が数社で品目もほぼ固定されているなら、発注書の様式をそろえ、定番品の基準量を決めるだけでも連絡と確認の往復は整理できます。
その段階では、手作業側の改善で足りることが少なくありません。
ただし、取引先がすでに注文サイトや決まった注文様式を用意している場合は、こちら側に新しい仕組みを入れなくても、発注の内容が記録として残る形に移せることがあります。
店の規模から先に決めるより、取引先がどの方法に対応しているかを聞いてみるほうが、早く判断がつきます。
発注方法をデータでつなぐ形に変えると、仕入れ値の交渉力にも影響はありますか
交渉の結果がどう変わるかを示す資料は確認できていないため、有利になるとも不利になるとも言えません。
言えるのは、発注の記録が残ると、品目ごとの数量と単価の推移を自分の手元で確かめられるようになることです。
どの品目がいつから上がったのかを自分の記録で示せる状態は、話をする材料にはなります。
なお、業務用食材の直販サイトの構築では卸価格と小売価格を別に管理することが要件に置かれており4、Webでの注文が相対の価格条件をなくす前提ではないことが分かります。
電話・FAXを残しながら、一部の取引先・品目だけデータ化することはできますか
できます。
対応できる取引先から順に移し、残りは電話・FAXを続ける運用は現実的ですし、一度に全部を切り替えるより、確かめたいことがはっきりします。
注意したいのは、記録の集まる場所が分かれることです。
注文サイトの履歴と手書きのメモに分かれたままだと、原価を見るたびに二か所を確認することになります。
どちらの方法で発注したものも、月末には同じ表に集まるように決めておくと、並行運用の期間が長くなっても負担が増えにくくなります。
給食施設のように献立に応じて発注量が変動する場合、工数削減と原価把握はどう両立させればよいですか
献立が先に決まるぶん、必要量の算出根拠が残っている点が飲食店との違いです。
献立ごとの必要量と、実際に発注した量、使い切った量を同じ単位で記録できれば、次に同じ献立を組むときの見直し材料になります。
発注をデータで残す意味は、この突き合わせができる状態をつくるところにあります。
ただし、記録が残れば差が自動的に縮まるわけではなく、献立と発注の両方を見る人が定期的に見直す運用が必要です。
工数の面では、献立から必要量を出す作業そのものは残り、減るのは取引先ごとの連絡と、伝票から原価表への転記の部分になります。
- 1 出典:中小企業庁「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!(ミラサポplus)」(2020年)
- 2 出典:一般財団法人流通システム開発センター(流通BMS協議会)「流通BMS標準仕様(基本形)」(2007年)
- 3 出典:農林水産省「事業系食品ロス量(2024年度推計値)の公表」(2026年)
- 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例 フーヅフリッジ株式会社様」(2017年)
画像の出典元
- Chef focused on chopping vegetables in a restaurant kitchen ambiance./Photo by Mikhail Nilov on Pexels