◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 電話受注のクレームは、聞き取り・入力転記・社内伝達・不在折り返しの段階に分けて数え、言った言わないは確かめられない件として別に扱う
- 復唱・定型シート・録音は効く段階が違い、公的な効果の数値はないため、期間を区切って試し自社の件数で確かめる
- EDIの実証で示されたのは受発注の業務時間の平均51.4%削減で、クレーム件数の減少を示す値ではない
- EDIは1社だけでは効果が出ないため、苦情が多くデータで注文できる取引先や商品から一部移行し、残りは電話を整える
- 電子取引類型の補助金は発注側がアカウントを発行するソフトが対象で、受注側のWeb受注が当たるかは公募要領で確かめる
目次

電話受注のクレームはどの段階で起きているか:まず自社の記録から切り分ける
電話で受けた注文が違う数量で出荷され、取引先とのあいだで「そう言った」「言っていない」と食い違う。
担当者が席を外している間の注文を、誰も受けていなかった。
こうした電話受注のクレームを減らすには、まず過去の苦情を、聞き取り・入力・社内の伝達・不在対応のどこで起きたかに分けて数えます。
そのうえで、電話のまま確認の仕組みを整えるか、対応できる取引先から受注経路を移すかを選びます。
公的な実証で確かめられているのは、企業間のデータ連携(EDI)で受発注の業務時間が平均51.4%減ったことと、効果が取引先の状況に左右されることまでです1。
復唱や録音の効果は、小さく試して自社の件数で確かめます。
過去の苦情を4つの段階に分ける
対策を選ぶ前に、苦情が電話を受けてから出荷するまでのどこで生まれたかを分けます。
同じ「数量が違う」という苦情でも、電話口で聞き違えたのか、メモから受注画面へ写すときに打ち間違えたのか、出荷担当へ伝える途中で抜けたのかで、効く手立てが変わるからです。
たとえば復唱は、電話口の聞き違いには訂正の機会を作れますが、電話を切った後の打ち間違いには届きません。
原因の段階を確かめずに対策を入れると、手間だけが増えて件数が動かない、ということが起こります。
分ける枠は、次の四つにしておくと扱いやすくなります。
- 聞き取り:電話口で品番・数量・納期・届け先を聞き違える、聞き漏らす
- 入力・転記:手書きのメモや付箋から、受注画面や伝票へ写すときに誤る
- 社内伝達:電話を受けた人から、出荷・製造・営業の担当へ渡す途中で抜ける、遅れる
- 不在・折り返し:担当者がいない間の電話を誰が受け、いつ折り返すかが決まっておらず、注文を取りこぼす
この四つは公的な調査による分類ではなく、対策を選ぶための仮の整理です。
見積もり後の変更注文が多い会社なら「変更の反映」という段階を足すなど、自社の業務に合わせて組み替えてかまいません。
大事なのは、一件の苦情をどこか一つの段階に入れられることです。
数える材料は、取引先からの苦情の記録、誤出荷の記録、再送や返品の伝票、電話を受けた人の手元メモなどです。
一件ずつ読み、どの段階で起きたかを一つ選びます。
記録から決められないものは、無理にどこかへ入れず「判定できない」として残します。
判定できない件が多いこと自体が、受注の記録が足りないという発見になります。
過去の記録がほとんど残っていない場合は、これから期間を決めて記録を始めます。
苦情や食い違いが出るたびに、日付、取引先、商品、食い違った項目、気づいた人、気づいた時点を書き留める簡単な用紙で足ります。
気づいた時点を残しておくと、電話の直後に分かったのか、出荷後に取引先から言われたのかが分かり、どの段階で止められたかを考える手掛かりになります。
言った言わないは、どの段階の問題か
数え始めると、どの段階にも入れにくい苦情が出てきます。
取引先は確かに伝えたと言い、電話を受けた担当者は聞いていないと言う、いわゆる「言った言わない」です。
この時点で分かっているのは、電話の内容を後から確かめる手段がないことだけで、どちらが誤ったのかは分かりません。
そこで、言った言わないは原因の段階ではなく、「確かめられない状態」として別に数えます。
後で事情を追えた件は、聞き取りなのか伝達なのか、該当する段階へ移します。
最後まで追えなかった件が多いなら、問題はミスの起きやすさより、ミスが起きたときに確かめる記録がないことにあります。
この場合は、録音や、受けた注文内容を取引先へ書面で返すといった、記録を残す側の対策が候補になります。
反対に、追えた件の多くが聞き取りだったなら、電話口での確認を増やす復唱が先に来ます。
入力・転記に集まっていれば、電話の受け答えより、書き写す回数を減らすことが課題です。
社内伝達や不在対応に偏っていれば、電話を受ける人の技量より、受けた後の受け渡しと当番の決め方を見直すことになります。
この偏りが、次に電話のまま整えるのか、経路を移すのかを選ぶ起点になります。
電話を残したまま整える:復唱・定型シート・録音をどう試すか
復唱する項目を絞る
前の数え直しで聞き取りの段階が多かった場合、まず試すのは電話を切る前の復唱です。
ただ、注文の全体を読み上げると通話が長くなり、取引先も途中から聞き流してしまいます。
復唱は、誤ると出荷に直接響く項目に絞ります。
品番、数量、納期、届け先の四つが基本で、取引先によって納品先が複数あるなら届け先は必ず含めます。
読み上げ方にも決まりを作ります。
数量は「個」なのか「ケース」なのか、単位まで言い直します。
品番は似た番号が多い商品なら、商品名も添えて確かめます。
納期は「来週」や「月末」ではなく、日付と曜日で言い直すと、両者が思い浮かべている日のずれに気づけます。
復唱で苦情が何割減るといった公的な数値は、確認できていません。
言えるのは、聞き違いがあったときに、電話を切る前に取引先が訂正できる機会が一回増える、という仕組みまでです。
そのため、導入を決める前に期間を区切って試し、試す前と後で聞き取りの段階の件数を比べます。
電話を受ける人が複数いるなら、全員が同じ項目を同じ順で復唱するよう、項目を書いた紙を電話の横に置いておくと、忙しい時間帯にも抜けにくくなります。
定型シートで転記を減らす
入力・転記の段階が多いなら、問題は電話の受け答えより、メモから受注画面や伝票へ移す作業にあります。
電話中は手元の紙に走り書きし、切ってから受注画面へ打ち込む流れでは、書き写すたびに読み違いの機会が生まれます。
受けた人と入力する人が別なら、他人の字を読む分だけ、その機会はさらに増えます。
定型シートは、受注画面や伝票と同じ順番で欄を並べた用紙、または共有のファイルです。
電話を受けながら欄を埋めていけば、入力するときは上から順に写すだけで、走り書きを読み解く手間がなくなります。
電話を受けながら受注画面へ直接入力できる環境なら、紙を挟まない方が転記は一回減ります。
シートの欄は、復唱する項目と順番をそろえます。
シートを見ながら復唱すれば、空いたままの欄がそのまま聞き漏らしの合図になるからです。
ただし、シートから画面への転記が残る限り、その段階の誤りがなくなるわけではありません。
入力後に、別の人がシートと画面を読み合わせる、数量と品番だけは指で追って照らす、といった確認は残ります。
社内伝達や不在対応で抜けているなら、同じシートが受け渡しの道具になります。
受けたシートをどこに置くか、出荷担当がいつ確認するか、受け取った印をどこに付けるかを決めると、誰の手元で止まったかが後から分かります。
不在の担当者あての電話も同じシートに残し、折り返しの期限を書く欄を設けておけば、期限を過ぎた件を一日の終わりに見直せます。
録音を使うときの取引先への伝え方
言った言わないとして別に数えた件が多い場合、通話録音は後から事実を確かめる手段になります。
録音そのものは聞き違いを防ぎません。
苦情が来たときに、取引先が何と言い、担当者がどう復唱したかを両者で確かめられることが役割です。
始める前に決めておくことがいくつかあります。
取引先への伝え方としては、通話の冒頭で録音している旨を案内する方法と、取引先へ事前に書面やメールで知らせる方法があります。
そのうえで、誰がどんな場面で録音を聞けるのか、どのくらいの期間保存し、いつ消すのかを社内で決めます。
録音の扱いに法的な判断が必要かどうかは本記事では扱わないため、社内の規程を確かめ、必要に応じて専門家に相談してください。
もう一つ決めておきたいのが、録音を聞き直す場面です。
記録を残すだけで聞き直す決まりがないと、録音はあっても誰も聞かないまま終わります。
苦情や食い違いが出たら録音を確かめる、と決め、聞いた結果どの段階の誤りだったかを、最初に作った段階別の表へ書き戻します。
そうすると「判定できない」に入っていた件が段階へ移り、どこを直せばよいかが少しずつ見えてきます。
| 苦情の多い段階 | 試す対策 | 減らそうとするもの | 残る確認 |
|---|---|---|---|
| 聞き取り | 品番・数量・納期・届け先の復唱 | 電話を切った後に分かる聞き違い | 相手が復唱を聞き流した場合の食い違い |
| 入力・転記 | 入力画面と同じ順の定型シート | 走り書きを読み解く手間と読み違い | シートから画面への転記の確認 |
| 社内伝達 | シートの置き場所と受け渡しの決まり | 担当者間での伝え漏れ | 受け取ったかどうかの確認 |
| 不在・折り返し | 不在時の受け手と折り返しの期限 | 誰も受けていない注文 | 期限を過ぎた件の点検 |
| 言った言わない | 通話録音 | 後から事実を確かめられない状態 | 告知と保存の取り決め |
電話以外の経路へ移すと何が変わるか:EDIの実証で分かること、分からないこと
実証で確認された業務時間の削減
電話の中身を整えても入力・転記の誤りが残るなら、受けた注文を人が打ち込む工程そのものを無くす方向が考えられます。
その代表がEDIです。
EDIは、企業間で注文や請求のデータを決まった形式でやり取りし、相手が送ったデータをそのまま自社の業務に取り込む仕組みを指します。
中小企業庁は2016年度、中小企業共通EDIの導入効果を測るための実証事業として、12のプロジェクトを選びました1。
その結果、中小企業の受発注業務時間は平均51.4%削減されたと報告されています1。
この解説が掲載されたのは2020年で、実証そのものは2016年度に行われたものです。
現在の製品や料金、取引の環境とは条件が異なる点を踏まえて読む必要があります。
同じ資料は、データ連携によって手入力による人為的なミスがなくなり、業務効率化につながると説明しています1。
仕組みで考えると、取引先が入力した注文データがそのまま受注側に届けば、電話口の聞き取りと、メモから受注画面への転記という二つの段階が流れから外れます。
最初に数えた四つの段階のうち、前の二つで苦情が多い会社ほど、経路を移す意味が大きくなる理屈です。
クレーム減少とは別の話として読む
51.4%は業務時間の削減率で、クレームの件数や誤出荷の件数を測った値ではありません。
受発注にかかる時間が半分になったからといって、苦情も半分になるとは言えません。
また、この削減率が受注側と発注側のどちらの時間なのか、その内訳は資料の説明からは分かりません。
経路を移して消える誤りと、残る誤りもあります。
聞き違いと転記の誤りは流れから外れても、取引先が画面で品番を選び間違えれば、その誤りはそのまま届きます。
電話なら復唱で拾えたかもしれない食い違いを、データで受ける場合は、受信後に自社で内容を確かめる工程や、取引先が使う入力画面の確認表示が担うことになります。
どこで確かめるかが電話口から受信後へ移る、と考えると、導入後に何を残すべきかが見えやすくなります。
上司や経営者に説明するときも、この区別が役に立ちます。
時間の削減は公的な実証の数字として示し、クレームがどれだけ変わるかは自社で測るもの、と分けて伝えれば、導入後に「苦情が半分にならない」という誤解を避けられます。
1社だけでは効果が出ない
同じ資料は、EDIは1社だけが導入しても効果を得ることはできず、取引先企業の状況や環境を考慮して導入の要否を判断する必要があるとしています1。
電話で注文を受ける側に置き換えると、意味ははっきりします。
自社がデータで受け取る口を用意しても、取引先がこれまでどおり電話をかけてくれば、受注担当は電話とデータの両方を並行して処理することになります。
そのあいだは、電話の聞き取りと転記の段階も残り続けます。
費用については、受注側の企業が導入する場合は、標準に対応したプロバイダーと業務アプリケーションを利用するだけで済み、大きな費用はかからないと説明されています1。
ただし資料に金額の記載はなく、個別の料金は製品ごとに確かめるしかありません。
受注側にとって費用より重くなりやすいのは、取引先に使ってもらうまでの説明と、電話との並行期間の手間です。
そこで次に考えるのは、費用を誰が負担し、公的な支援を使えるのかという点と、どの取引先から動かすかという点です。
| 問い | 資料から言えること | 言えないこと |
|---|---|---|
| 業務時間 | 中小企業の受発注業務時間が平均51.4%削減 | 受注側と発注側の内訳 |
| 入力ミス | 手入力による人為的なミスがなくなるとの説明 | ミスの件数の測定値 |
| クレーム | 記載なし | 電話から移した場合の減少幅 |
| 導入の条件 | 1社だけでは効果が出ず、取引先の状況で要否を判断 | 自社の取引先が対応できるか |
| 受注側の費用 | 標準対応の製品を使えば大きな費用はかからないとの説明 | 具体的な金額 |
費用と公的支援:使える条件と、確認すべき落とし穴
補助率・補助額と対象ソフトの条件
受発注のデジタル化に関わる制度として、中小企業基盤整備機構のデジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠(電子取引類型)があります2。
補助率は、中小企業・小規模事業者等の場合で2/3以内です2。
補助額には上限が設けられているため、金額は公募要領で確かめます。
対象経費は、インボイス制度に対応した受発注の機能を持ち、発注側の事業者が受注側の事業者にアカウントを無償で発行して利用させられる、クラウド型の受発注ソフトです2。
補助を受けられる事業者には、中小企業・小規模事業者等のほか、中小企業・小規模事業者と受発注取引を行う事業者(大企業を含む)も含まれます2。
交付申請は2026年度のなかで複数回の締切に分けて受け付けられているため、検討を始めた時点で残っている締切を公式の案内で確かめておきます。
受注側の自社が対象になるかの確かめ方
この条件で迷いやすいのが、アカウントを発行する向きです。
対象として示されているのは、発注側が受注側にアカウントを発行するソフトです。
電話で注文を受けている会社が、取引先に注文を入れてもらうためのWeb受注の画面を自社で用意する場合、アカウントを発行するのは受注側の自社になり、向きが逆になります。
この使い方が対象経費に当たるかどうかは、公開されている概要の説明だけでは判断できません。
一方で、同じ会社が仕入れ先へ注文する立場でソフトを導入し、仕入れ先にアカウントを発行する場合は、条件の形に沿います。
つまり同じ会社でも、売る側としての受注の改善と、買う側としての発注の改善とでは、制度との関係が変わります。
今回の目的が電話受注のクレームを減らすことなら、自社がどちらの立場でソフトを使うのかを先に整理しておくと、問い合わせの答えを取り違えずに済みます。
確かめるときは、公募要領で対象経費の定義を読み、検討している製品が補助の対象になっているか、自社の使い方で申請できるかを、制度の窓口や製品を扱う支援事業者に尋ねます。
注意したいのは、補助金を前提に導入の時期や範囲を決めてしまうことです。
対象外と分かった時点で計画が止まらないよう、補助がなくても進めるかどうかを先に決め、使えれば負担が軽くなる、という順で考える方が判断は崩れにくくなります。
全面移行・一部移行・電話改善のどれを選ぶか:取引先ごとの分け方
3つの選択肢を同じ軸で見る
ここまでで、判断の材料は三つそろいました。
自社の苦情がどの段階に集中しているか、取引先が電子の経路で注文できるか、自社の入力と運用の手間がどう変わるか、です。
この三つを、電話の中身を整える、一部の取引先や商品から移行する、全面的に移行する、という選択肢に当てはめると、違いがはっきりします。
表のなかで判断が分かれるのは、取引先に求める操作と利用条件の行です。
全面移行は、手入力が最も減る可能性のある選択肢ですが、それはすべての取引先がデータで注文できることが前提です。
一社でも電話を続ければ並行処理は残り、受注担当の作業は電話とデータの二本立てになります。
全面移行が現実的なのは、取引先の数が限られ、そのいずれもがデータでの注文に移れる見込みがある場合です。
電話の中身を整える選択肢は、取引先に求めることが最も少ない代わりに、ミスが減るかどうかを示す公的な根拠がありません。
だからこそ、最初に数えた段階別の件数が判断の支えになります。
取引先がなぜ電話で注文するのか、急ぎなのか、相談しながら決めたいのかといった理由は、取引先ごとに違います。
自社の主な取引先に、電話を選んでいる理由と、別の経路に移れるかどうかを直接聞いておくと、表の利用条件の欄を自社の言葉で埋められます。
一部移行の始め方
多くの会社にとって現実的なのは、苦情が多く、かつ相手が対応できる取引先から移し、それ以外は電話の中身を整える、という組み合わせです。
進め方は次のとおりです。
- 最初に数えた苦情を取引先別に並べ、苦情や誤出荷が多い取引先を挙げる
- そのなかから、メールやWebでのやり取りにすでに慣れている取引先や、同じ品番の繰り返し注文が多い取引先を候補にする
- 候補の取引先に、何が変わるのかを具体的に伝える。
電話で伝えていた品番・数量・納期・届け先を画面で入力すること、受注後に自社から確認の連絡が届くことなど - 試す期間を決め、そのあいだも電話での注文は受け付ける。
電話で来た分は、これまでどおり復唱と定型シートで受ける - 期間が終わったら、その取引先の苦情や再確認の件数を、試す前と比べる
取引先ではなく、商品で分ける方法もあります。
品番が多く似た番号が並ぶ商品や、単位の取り違えが起きやすい商品だけをデータで受け、それ以外は電話で受ける、という分け方です。
聞き取りの段階の苦情が特定の商品に偏っているなら、取引先全体に新しい操作を求めるより、取引先の負担を小さく抑えられます。
候補から外れた取引先は、電話の中身を整える側に残します。
電話を残すことは後退ではありません。
復唱の項目、定型シート、不在時の受け手を整えた電話受注と、一部の取引先から始めたデータでの受注を並べて運用し、どちらでどの段階の苦情が減ったかを比べることで、次にどこまで広げるかを判断できます。
| 比べる軸 | 電話の中身を整える | 一部の取引先・商品から移行 | 全面移行 |
|---|---|---|---|
| ミスが減る見込みの根拠 | 公的な根拠は未確認。自社の試行で確かめる | EDIで手入力のミスがなくなるとの説明。クレーム減少の数値は未確認 | EDIで手入力のミスがなくなるとの説明。クレーム減少の数値は未確認 |
| 取引先に求める操作 | 復唱への受け答え、録音の了承 | 対象の取引先に注文を入力してもらう | すべての取引先に注文を入力してもらう |
| 社内の入力・運用の手間 | 復唱と記録が加わる。転記はシートで整える | 電話とデータの並行処理が続く | 全取引先が移れば手入力が減る。移れない取引先の扱いが残る |
| 費用 | 未確認 | 受注側は標準対応の製品なら大きな費用はかからないとの説明。金額は未確認 | 受注側は標準対応の製品なら大きな費用はかからないとの説明。金額は未確認 |
| 利用条件 | 取引先の協力は小さくて済む | 対象の取引先が電子の経路に対応できること | 全取引先が対応できること。1社だけでは効果が出ない |
効果の測り方と、定着しないときの見直し
数える指標と定義
対策が効いたかを確かめるには、数えるものを先に決めます。
扱いやすいのは、クレームの件数、誤出荷の件数、再確認の連絡の件数の三つです。
再確認の連絡とは、受注後に内容を確かめるために自社から取引先へ電話した件、または取引先から問い合わせを受けた件を指します。
苦情に至る前の食い違いを拾えるため、件数の少ない会社でも変化が見えやすくなります。
次に、それぞれの定義を書き出します。
クレームは取引先から指摘されたものだけを数えるのか、社内で出荷前に見つけた誤りも含めるのか。
誤出荷は出荷後に分かったものに限るのか。
試す前と後で定義が変わると、件数の増減が対策の効果なのか、数え方の違いなのか区別できなくなるため、定義は比べ終わるまで変えません。
比べ方にも決まりが要ります。
試す前の期間と、試した期間の長さをそろえます。
注文の件数が増えれば苦情の件数も増えやすいので、注文件数あたりの件数に直して比べます。
件数が少ない会社では、短い期間の増減に偶然が混じります。
繁忙期に重なった、新しい商品を扱い始めた、電話を受ける担当者が替わったといった、対策とは別の変化も一緒に書き残しておくと、数字を読むときに取り違えません。
数えるときは、最初に作った段階別の表と同じ枠を使い続けます。
聞き取り、入力・転記、社内伝達、不在・折り返し、確かめられない件のそれぞれが、どう動いたかが分かるからです。
合計の件数が変わらなくても、聞き取りが減って入力・転記が残っている、という内訳が見えれば、次に手を入れる場所が分かります。
数字が動かないときに戻る場所
件数が動かないとき、対策が効かないと結論づける前に、確かめることが三つあります。
対策が実際に守られているか、対策と苦情の段階がずれていないか、数え方が途中で変わっていないかです。
まず、守られているかを見ます。
復唱は、電話が集中する時間帯や、慣れた取引先との通話で省かれやすくなります。
試した期間の記録から何件かを抜き出し、定型シートの欄が埋まっているか、復唱の印が付いているかを確かめます。
録音を始めた場合は、苦情が来たときに実際に聞き直したかを確かめます。
守られているのに動かないなら、対策と段階がずれている可能性があります。
入力・転記の苦情が多いのに復唱だけを足した、といった場合です。
このときは最初の数え直しに戻り、段階の割り振りをやり直します。
データでの受注に移した取引先で件数が減らないなら、受信後の確認が抜けていないか、取引先の入力ミスがそのまま届いていないか、電話との併用で同じ注文が二重に入っていないかを見ます。
こうして試した結果は、上司や経営者に説明するときの材料にもなります。
経路を移す話であれば、業務時間の削減は公的な実証の数字として、苦情や再確認の件数の変化は自社で測った結果として、分けて示します。
自社の数字が小さな変化にとどまっていても、どの段階が減り、どの段階が残ったかを示せれば、次に何を試すかを具体的に相談できます。
どの取引先を電話に残し、どこから経路を移すかは、苦情の段階、取引先の対応状況、社内の運用の手間が絡み合うため、社内だけで決めると手元で目立つ苦情に判断が引っ張られがちです。
苦情の記録と取引先の一覧をもとに、どの取引先や商品から試すのが妥当か、電話に残す取引先の受け方をどう整えるかを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 苦情の切り分け | 聞き取り・入力転記・社内伝達・不在折り返しに分け、言った言わないは確かめられない件として別に数える |
| 電話のまま整える | 聞き取りは復唱、転記は定型シート、確かめられない件は録音。効果は自社の件数で確かめる |
| 経路を移す | EDIの実証で示されたのは受発注の業務時間の削減。クレーム件数の変化は自社で測る |
| 補助金 | 電子取引類型は発注側が受注側にアカウントを発行するソフトが対象。受注側の導入は公募要領で確かめる |
| 移す範囲 | 苦情が多く、データで注文できる取引先や商品から一部移行し、残りは電話を整える |
| 効果の測定 | 同じ定義・同じ長さの期間で、注文件数あたりに直して段階別に比べる |
試した結果を次の判断につなげるには、件数の読み方と、補助金の向きのように自社の立場で答えが変わる条件を分けて考える必要があります。 試行前後の件数の比べ方や、移行の範囲を広げるかどうかの判断材料を、自社の数字に沿って確かめられます。
よくある質問
復唱確認や通話録音は、導入するとクレームがどれくらい減りますか。
復唱や録音で苦情が何割減るといった公的な数値は確認できていないため、減る幅は示せません。
復唱は聞き違いを電話を切る前に訂正する機会を作り、録音は苦情が出た後に事実を確かめる手段で、効く段階が違います。
自社の苦情を段階別に数え、多い段階に合う方を期間を区切って試し、前後の件数を比べて確かめてください。
取引先が電話しか使えない場合、受注経路の移行はあきらめるべきですか。
あきらめる必要はありません。
経路は取引先ごとに決められるので、電話しか使えない取引先は復唱や定型シートで電話の中身を整え、対応できる取引先から移すことができます。
EDIは1社だけが導入しても効果を得られず、取引先の状況を考慮して判断する必要があるとされており1、全取引先を一度に動かさない進め方はこの注意にも沿っています。
EDIや受発注システムの導入に、補助金は使えますか。受注側でも対象になりますか。
デジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠(電子取引類型)では、中小企業・小規模事業者等の補助率が2/3以内とされています2。
対象は、発注側が受注側にアカウントを無償で発行して利用させられるクラウド型の受発注ソフトです2。
電話で注文を受ける会社が、取引先に注文してもらうためのWeb受注を自社で用意する場合は向きが逆になり、対象に当たるかは概要の説明からは判断できません。
公募要領で対象経費の定義を読み、制度の窓口や製品を扱う支援事業者に、自社の使い方で申請できるかを確かめてください。
通話録音を始めるとき、取引先への告知や社内ルールで決めておくことは何ですか。
取引先への伝え方(通話冒頭の案内か、事前の書面やメールでの連絡か)、録音を聞ける人と聞く場面、保存する期間と消す手順、苦情が出たときに聞き直す決まりの四つを決めておくと運用が回ります。
法的な判断が必要かどうかは、社内の規程を確かめ、必要に応じて専門家に相談してください。
クレームが減ったかを確かめるには、どのくらいの期間で何件を比べればよいですか。
すべての会社に当てはまる期間や件数の基準は示せません。
試す前と同じ長さの期間をとり、注文件数あたりの件数に直して比べるのが基本です。
苦情の件数が少ない会社では偶然の増減が混じりやすいため、再確認の連絡の件数も合わせて数える、期間を長めにとる、前年の同じ時期と比べるといった工夫で読み違いを減らせます。
繁忙期や担当者の交代など、対策と別の変化も書き添えておきます。
- 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 2 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(電子取引類型)」(2026年度)
画像の出典元
- Focused call center employee reviewing documents while on a call in an office setting./Photo by Yan Krukau on Pexels