まずは卸売ECを小規模でスタートしたい方へ。リーズナブルなSaaS(ASP)版『EC-Rider Primo(プリモ)』誕生! 詳しくはこちら

検収後に不具合が見つかったら賠償・修補は請求できる?民法の通知期限と検収前の確認手順

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 民法の条文上、検収の承認は請求権が消える理由として定められていない。
  • 売買・請負とも、種類・品質の不適合は知った時から1年以内の通知が必要で、検収の日からではなく発見の日から数える。
  • システム開発のモデル契約の考え方では検収完了時が責任期間の起算点になり、民法とは数え始めが違うため、両方の期限を並べて確認する。
  • 救済は追完から始め、代金減額は原則として催告の後、損害賠償は相手が責めに帰することができない事由を示せば免れる。
  • 押印前に確認範囲を記録し、気づいた点を文書で留保する。取適法の対象取引では、検査の有無にかかわらず受領後60日以内に代金を支払う。

50代後半の日本人女性が小会議室での打ち合わせをしている場面

検収後に不具合が見つかっても請求できるのか:まず確認する3つの条件

検収印を押して代金も払った後で、納品物に仕様と違う動きが見つかった。
あるいは、気になる点が残ったまま承認を急かされている。
こうした場面で不安になるのは「検収を済ませたら、もう修補も賠償も求められないのでは」という点です。
民法の条文を見る限り、検収の承認は請求権が消える理由として定められていません。
請求できるかどうかは、不適合の種類、不適合を知った時から1年以内の通知、契約書の検収条項と責任期間で決まります4。
押印前に確認した範囲を記録し、気づいた点を文書で留保しておけば、後で請求するときの根拠になります。

検収後に問題が見つかった場合の最初の確認事項

たとえば、業務システムの集計機能の改修を外部の会社に依頼し、検収を終えて代金も支払った後で、月末の集計結果が仕様書の計算方法と合わないことに気づいたとします。
担当者がまず知りたいのは、いまから相手に直してもらえるのか、損害を請求できるのか、という点でしょう。
この問いに答えるために見るのは、検収を済ませたかどうかではなく、次の三つです。

  • 不適合の種類:納品物が契約と違うのは、種類・品質の面か、数量の面か
  • 通知の期限:不適合に気づいた時から、相手へ伝えるまでにどれだけ時間が経っているか
  • 契約書の定め:検収条項や責任期間(契約不適合責任を負う期間)が、民法の原則とは別の期間や手続きを決めていないか

一つ目の種類の区別は、どの条文を使うかを決めるために必要です。
民法562条は、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないとき、買主が修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しによる「追完」(契約どおりの状態にすること)を請求できると定めています5。
一方、期限を定めた566条の対象は種類・品質の不適合です4。
同じ「契約と違う」でも、計算が誤っている、性能が足りないといった品質の問題と、納品された数が足りないという問題とで、期限の扱いが同じだと決めつけない方が安全です。

二つ目の期限は、多くの担当者が最も気にする点です。
売買でも請負でも、不適合を知った時から1年以内に相手へ通知しないと、追完、代金(請負では報酬)の減額、損害賠償、解除を求められなくなります34。
数え始めるのは引渡しの日でも検収の日でもなく、不適合を「知った時」です。
上の例でいえば集計の誤りに気づいた日が基準になるので、発見した日付と、誰がどの画面で気づいたかを記録しておくことが大切です。

三つ目の契約書は、民法の原則をそのまま当てはめてよいかを左右します。
物品の購入なら売買、仕事を完成させて納めるものなら請負として、民法の規定が出発点になります。
ただ、システム開発のように契約書で検収と責任期間を細かく決めることが多い取引では、まず契約書の条項を確認することになります。
契約書が「検収完了時から一定期間」と定めていれば、民法の「知った時から1年」とは数え始めも長さも違う可能性があります。
そのため、二つの期限を並べて見る必要があります。

検収印を押す直前で迷っている場合の見方

まだ検収印を押していない段階なら、見方は少し変わります。
迷いの中心は、承認したら後から何も言えなくなるのではないか、という不安でしょう。
民法の条文を見る限り、検収の承認によって請求権が消えるという定めはありません。
ただし、契約によっては検収完了の日が責任期間の数え始めになります。
押印は「請求権を手放す行為」ではなくても、「期限の時計を動かす行為」になりうるということです。

そのため押印前に考えるべきことは、合格・保留・不合格のどれにするかだけではありません。
どこまで確認したうえで承認するのか、確認しきれない部分や気になる点をどう残すのかも決めておく必要があります。
気になる点が業務に支障の出る不具合なら、修正後にもう一度確認する段取りを相手と決めるのが自然です。
業務を止めない軽微な点なら、その点を文書に書き出し、修正の期限を合意したうえで承認する進め方も考えられます。

どちらを選ぶ場合でも、検収を遅らせて支払いを先送りする手段にはできないことがある点に注意してください。
委託取引の中には、検査をするかどうかに関係なく支払期日が決まる仕組みがあるためです1。

検収後に不具合を見つけたときに確かめる三つの条件
不適合の種類、通知の期限、契約書の定めの三つを分けて確認する図

検収は何を確定させ、何を確定させないのか

条文に「検収」が出てこないことの意味

検収という言葉は契約実務では当たり前に使われますが、民法の契約不適合責任の条文には出てきません。
562条が追完請求の前提としているのは、「引き渡された目的物」が契約の内容に適合しないことです5。
566条の期限も、買主が不適合を「知った時」から数えます4。
条文の組み立てを読む限り、検収を承認したことは、請求権が消える理由として位置づけられていません。

つまり、検収を終えた後に見つかった不具合でも、条文上の要件を満たせば請求できる余地は残ります。
前の節で見た「知った時から1年」の期限も、検収の日ではなく発見の日を基準にしています。
検収から時間が経っているというだけで、請求をあきらめる必要はありません。

一方で、検収の承認にまったく意味がないと考えるのも早計です。
不具合をめぐって相手と意見が分かれたとき、承認の時点で何を確認し、何を認めたのかは、当然話題になります。
承認がどのような事情として評価されるかは、契約の書き方や確認の経緯で変わり、条文だけから一律の答えは出せません。
だからこそ、承認書や検収書に何を書いたか、何を書かなかったかが、後になって意味を持ちます。

契約では検収完了が期間の起算点になる

条文とは別に、契約実務では検収が大きな役割を持っています。
IPAが公開しているシステム開発のモデル契約の見直しポイントでは、契約不適合責任の期間制限の起算点を「検収完了時」という客観的なものにする規律が維持されています2。
民法の「知った時」は発注側がいつ気づいたかに左右されますが、検収完了の日は双方が書面で共有している日付です。
受注側も発注側も、責任期間がいつ終わるかを同じ暦で数えられるという利点があります。

発注側から見ると、検収の日付が「請求できる期間の始まり」として固定されることを意味します。
民法の原則では、発見が遅れればその分だけ期限の始まりも後ろへずれます。
これに対し、検収完了時を起算点にする契約では、発見がいつかに関係なく期間が進みます。
押印前の確認がどこまで丁寧だったかが、そのまま後で請求できる余地を左右する仕組みです。

さらに契約書には、検収期間内に異議を出さなければ合格とみなす定めや、検収後の責任の範囲を限る定めが置かれていることがあります。
こうした条項がある場合、検収をどう扱ったかは、条文だけで考える場合よりも重い意味を持ちます。
自社の契約書にこうした定めがあるかどうかで、この節の結論は案件ごとに変わります。

検収の承認が持つ意味:民法の条文と契約の定めの違い
条文上は請求権が消える理由ではなく、契約では検収完了時が期間の起算点になりうることを分けて示した図

請求できるかを分ける条件:1年の通知、不適合の種類、契約類型

売買と請負で共通する「知った時から1年」

期限の仕組みを、売買と請負で並べてみます。
売買について566条は、買主が種類・品質の不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除ができなくなると定めています4。
請負の637条1項も同じ形で、注文者が不適合を知った時から1年以内に請負人へ通知しなければ、追完、報酬の減額、損害賠償、解除を求められません3。

ここで求められているのは「通知」です。
1年以内に修補を終わらせることや、裁判を起こすことまでは求められていません。
IPAの解説も、改正後の民法では知った時から1年以内の通知でよく、不適合を知るまでは消滅時効の一般規定の期間(10年)の範囲で権利を行使できると整理しています2。
つまり、検収から長い時間が経ってから見つかった不具合でも、その発見の時点から1年の通知期限が問題になる、と読むことになります。

通知を出すときは、何が不適合なのか相手に分かる程度に具体的に書くのが実務上の基本です。
集計機能の例なら、どの帳票のどの項目が、仕様書のどの計算方法と違う結果になっているか、いつ発見したか、どんな条件で再現するかを書いておけば、相手も調査に入りやすくなります。
どこまで具体的に書けば法的に足りるかは個別の事情によります。
それでも、曖昧な連絡より具体的な連絡の方が、後で「通知を受けていない」という争いを避けやすくなります。

期限の対象にも注意が必要です。
562条は追完の対象として種類・品質・数量を挙げていますが、566条の期間制限は見出しも本文も「種類又は品質」についての定めです45。
数量の不足が見つかった場合にどの期限で考えるかは、この文言の違いだけで判断せず、契約書の定めも含めて確認が必要です。
いずれにしても、不足に気づいた時点で早めに伝えておけば、期限の解釈で迷う場面そのものを減らせます。

請負人・売主が不適合を知っていた場合の例外

566条と637条には、同じ形の例外があります。
売主や請負人が引渡しの時にその不適合を知っていた場合、または重大な過失によって知らなかった場合には、1年の通知期限は適用されません34。
IPAのモデル契約の見直しポイントでも、ベンダの故意・重過失の場合は期間制限の対象外とされています2。

ただ、発注側がこの例外に頼るのは簡単ではありません。
相手が引渡しの時点で不具合を知っていたかどうかは相手の社内の事情で、発注側からは見えにくいからです。
たとえば、納品時のテスト報告書に既知の問題として書かれていた、修正予定のまま引き渡されたといった記録があれば手掛かりにはなります。
ただし、それで例外に当たるかどうかは別に判断されます。
期限の管理は例外を当てにせず、発見から1年以内に、契約に期間の定めがあればその期間内に通知することを前提に組み立てる方が安全です。

契約類型別の分岐表

ここまでの条件を、発注側が手元の契約に当てはめられるように並べると次のようになります。

表で判断が分かれるのは、起算点の行です。
売買と請負の民法の原則は「知った時」から数えるのに対し、モデル契約の考え方に沿ったシステム開発の契約は「検収完了時」から数えます234。
この違いは、発見が遅い不具合ほど大きく効いてきます。
民法の原則なら発見から1年の通知期限を考えればよい場面でも、契約上の期間はすでに残りわずかか、過ぎていることがあります。

では、契約上の期間を過ぎた後でも民法の1年を根拠に請求できるのか。
ここは一律には答えられません。
契約の期間が民法の期間を置き換える趣旨で書かれているのか、どのような不具合なのか、相手がそれを知っていたかといった事情で判断が分かれるからです。
期限が近い、または過ぎているかもしれないと気づいたら、まず通知を出し、そのうえで契約書と経緯を持って専門家に相談する。
この順序で動けば、権利を失う危険を小さくできます。

なお、システム開発の契約の中には、成果物の完成ではなく作業の遂行を約束する形のものもあります。
その場合は、ここで述べた売買・請負の整理がそのまま当てはまるとは限らないため、契約書が何を約束しているかから確かめる必要があります。

項目 売買(民法566条) 請負(民法637条) システム開発(IPAモデル契約の考え方)
期間の起算点 不適合を知った時 不適合を知った時 検収完了時
期間 知った時から1年以内に通知 知った時から1年以内に通知 契約で定める(検収完了時から○ヶ月以内の形)
期間を過ぎると 追完・代金減額・損害賠償・解除ができない 追完・報酬減額・損害賠償・解除ができない 契約条項による
期間制限の例外 売主が引渡し時に知っていた・重過失で知らなかった 請負人が引渡し時に知っていた・重過失で知らなかった ベンダの故意・重過失
契約上の責任期間と民法の通知期限は数え始めが違う(発見が契約上の期間の後になった場合の模式図)
検収完了、契約上の責任期間の終わり、不適合を知った時、知った時から1年を時間軸に並べた模式図

追完・代金減額・損害賠償・解除:請求の順序と使い分け

追完請求から始める理由

請求できる条件がそろっていそうだと分かったら、次は何を求めるかを決めます。
民法は、契約に適合しない目的物を受け取った買主のために、追完、代金減額、損害賠償、解除という手段を用意しています。
ただし、これらは好きなものを好きな順で選べるわけではなく、手段ごとに要件が違います。
まず全体を同じ軸で比べてみます。

表の中で追完が出発点になる理由は二つあります。
一つは、業務で使う物を発注した場合、必要なのは契約どおりに動く納品物そのものだということです。
集計機能の例でいえば、減額や賠償を受けても、誤った集計が直らなければ業務は困ったままです。
もう一つは条文の組み立てで、代金減額は原則として追完の催告を経てから認められる手段になっています6。

追完の方法は、買主が修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しから選んで請求できます5。
ただし、買主に不相当な負担を課すものでなければ、売主は買主が選んだのとは異なる方法で追完できます5。
たとえば発注側が全面的な作り直しを求めても、相手が該当部分の修正で契約どおりの状態にでき、発注側に過大な負担がかからないなら、修正での対応が認められうるということです。
請求する側としては、どういう状態になれば契約どおりといえるのかを具体的に示しておくと、方法をめぐる行き違いを減らせます。

追完と減額には、共通する制限があります。
不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、追完も代金減額も請求できません56。
請負では、注文者が提供した材料や注文者の指図によって生じた不適合について、原則として請求できないとされています3。
集計機能の例で、誤りの原因が発注側の渡した仕様書の計算式そのものにあった場合は、この制限に当たる可能性があります。
仕様の確定や変更の経緯をメールや議事録で残しておけば、原因がどちらにあったかを後で切り分ける材料になります。

代金減額が催告なしで認められる場合

追完を求めても相手が応じないときに、次に考えるのが代金(請負なら報酬)の減額です。
563条は、買主が相当の期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完がないときは、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できると定めています6。
「相当の期間」が何日なのかは条文に書かれておらず、不具合の内容や修正にかかる作業量によって変わります。

催告をしなくても、すぐに減額を請求できる場合として、563条は次の4つを挙げています6。

  • 履行の追完が不能であるとき
  • 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき
  • 契約の性質や当事者の意思表示により、特定の日時や一定の期間内に履行しなければ契約の目的を達成できない場合に、追完がないままその時期を過ぎたとき
  • 買主が催告をしても、履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき

たとえば、特定の日までに稼働しなければ意味がない機能がその日を過ぎても直っていない場合や、相手が修正しないと明言した場合は、改めて催告をしなくても減額の話へ進めます。
反対に、相手が調査中と回答しているだけの段階なら、期間を区切って追完を求めるところから始めることになります。
減額の額は「不適合の程度に応じて」決まるとされていますが、計算方法は条文から一つに決まるものではありません。
何が使えなかったのか、業務にどの程度影響したのかを記録しておくと、話し合いの土台になります。

損害賠償の要件と免責

追完や減額では埋まらない損害もあります。
たとえば、不具合のせいで手作業の集計に追加の人手がかかった、といった負担です。
こうした損害について考えるのが損害賠償です。
損害賠償は、債務不履行による損害賠償の一般規定である415条の枠組みで考えます。
債務者が債務の本旨に従った履行をしないとき、債権者は生じた損害の賠償を請求できます。
ただし、その不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるときは除かれます7。

ここに、追完・減額との大きな違いがあります。
562条と563条の要件には、売主の責めに帰すべき事由は書かれていません56。
相手に落ち度がなくても、契約どおりでなければ直してもらう、あるいは代金を減らしてもらう余地があるということです。
これに対して損害賠償は、相手が「自分の責めに帰することができない事由による」ことを示せば責任を免れます7。
同じ不具合でも、修補は求められるが賠償までは認められない、という結果も起こりえます。

賠償を考えるときは、契約書に賠償の範囲や上限を定める条項がないかも見ておく必要があります。
そうした条項がどこまで効力を持つかは個別に判断されるため、この記事では立ち入りません。
解除についても、要件を定める条文が別にあり、契約を解消するという重い判断になります。
具体的に検討する段階では、契約書と経緯をもとに専門家へ相談する方が安全です。
また、ここで挙げた四つの手段はいずれも、前の節で見た1年の通知期限の対象です34。

手段 求める内容 主な要件 請求できない場合
追完 修補・代替物の引渡し・不足分の引渡し 種類・品質・数量が契約の内容に適合しない 不適合が発注側の責めに帰すべき事由による
代金・報酬の減額 不適合の程度に応じた減額 相当期間を定めた追完の催告後も追完がない(4類型は催告不要) 不適合が発注側の責めに帰すべき事由による
損害賠償 生じた損害の賠償 債務の本旨に従った履行がない 相手の責めに帰することができない事由による
解除 契約の解消 要件は別の条文で定まる(本記事では扱わない) 本記事では扱わない
追完の請求から代金減額へ進む順序(模式図)
追完を請求し、相当の期間を定めて催告し、追完がなければ不適合の程度に応じて減額を請求する流れの模式図

契約書の検収条項で見るべき点:検収期間、責任期間、システム開発のモデル契約

検収期間と検収基準

民法の原則が分かっても、実際の案件で最初に効いてくるのは契約書です。
検収をめぐる条項には、「いつまでに、何を基準に検収するか」を決める部分と、「検収の後、いつまで責任を負うか」を決める部分があります。
以下は、ここまでの内容から逆算した、発注側が契約書を読むときの見方です。

一つ目は検収期間です。
納品から何日以内に検収するのか、その期間内に結果を伝えなかったらどう扱われるのかを確認します。
期間内に異議を出さなければ合格とみなす定めがあると、発注側が確認作業に手を付けられないまま検収完了の日が決まり、責任期間の数え始めも動き出します。
納品の時期が繁忙期と重なりそうなら、契約の段階で検収期間の長さや延長の手続きを話し合っておく方が現実的です。

二つ目は検収基準です。
何をもって合格とするかが書かれていないと、受注側は「納品した時点で完成」と考え、発注側は「業務で使えて完成」と考える、といった食い違いが起きやすくなります。
基準が仕様書や受入テストの項目として決まっていれば、検収で確認したことと確認していないことの線引きがしやすくなります。
後で見つかった不具合が契約の内容に適合しないものかどうかを話し合う出発点にもなります。

責任期間の起算点と長さ

三つ目は責任期間です。
IPAの見直しポイントでは、ソフトウェア開発業務の期間制限を「検収完了時から○ヶ月以内」とする形が示され、ベンダの故意・重過失の場合は期間制限の対象外とされています2。
月数は空欄の形で示されており、具体的な長さは当事者が案件ごとに決めるものです。

読むときは、起算点と長さに加えて、期間内に何をすればよいのかも確認します。
民法が求めているのは1年以内の「通知」ですが、契約書では期間内に求められる行為の書き方が違うことがあります。
期間の最後のほうで気づいた不具合を、どの手段で、いつまでに伝えればよいのかを条項の文言で確かめておけば、期限間際に慌てずに済みます。

責任期間を見るときに見落としやすいのが、業務の周期とのずれです。
たとえば、年度末にしか動かない集計や年に一度の更新処理は、検収の時点では実データで試せないことがあります。
検収完了時から数える責任期間が、その処理が初めて本番で動く時期より前に終わってしまうと、不具合が見つかった頃には契約上の期間が過ぎているかもしれません。
こうした機能については、検収前に試験データで確認する範囲を広げるか、責任期間の扱いを契約で話し合っておくか、どちらかを検討しておく価値があります。

条項 見る点 ずれたときに起きやすいこと
検収期間 納品から何日以内に検収するか・延長の手続き 確認が終わらないまま期間が過ぎる
みなし検収 期間内に異議がなければ合格とみなす定めの有無 確認前に検収完了日が決まる
検収基準 合格の条件が仕様書・テスト項目で決まっているか 完成の認識が当事者で食い違う
責任期間 起算点(検収完了時か)と長さ 業務の周期より前に期間が終わる
期間内の手続き 期間内に求められる行為と伝える方法 伝えたつもりが手続きとして扱われない
発注側が検収条項で見る三つの点
検収期間とみなし検収、検収基準、責任期間のそれぞれで見る点を分けて示した図

検収前にすること:確認・記録・留保の手順と、取適法の支払期日

押印前の確認と記録

ここまでの仕組みをふまえると、押印前にできることが見えてきます。
検収の承認そのものは請求権を消しませんが、契約によっては期間の起算点になり、後の話し合いでは「何を確認して承認したのか」が問われます。
そのため、押印の前後で残す記録が、後で請求するときの材料になります。
以下は義務ではなく、ここまでの仕組みから導いた手順の提案です。

最初にするのは、契約書の検収条項と責任期間の確認です。
検収期間の残り日数、みなし検収の有無、責任期間の起算点と長さ、期間内に必要な手続きを見ておけば、押印の日が何の始まりになるのかが分かります。

次に、確認した範囲と結果を記録します。
どの機能や品目を、どの手順とデータで、誰が、いつ確認したのか、そして確認できなかった範囲はどこかを書き残します。
集計機能の例なら、「月次集計は試験データで確認済み、年次集計は本番データがそろわないため未確認」といった書き方です。
この記録があれば、後で不具合が見つかったとき、検収で見落としたものなのか、そもそも確認できなかったものなのかを相手と共有しやすくなります。
不具合を見つけた日付も同じ形式で残しておけば、「知った時」がいつかを考える材料にもなります。

留保の文書の残し方

検収の時点で気づいた点があるなら、口頭で伝えるだけで終わらせず、文書に残します。
ここでいう留保とは、承認とあわせて「この点はまだ解決していない」「この点については後で修補などを求める」ことを相手に示しておくことです。
書いておきたい内容は次のとおりです。

  • 気づいた点の内容と、契約・仕様のどこと違うか
  • 発見した日付と、確認したときの条件
  • 修正を求める内容と期限、修正後の再確認の方法
  • 今回の承認が、これらの点についての請求を妨げないという認識

最後の項目は、相手に受け取ってもらい、できれば同意の返信をもらっておくと、承認の意味について認識のずれが残りにくくなります。
こうした文書があれば必ず請求が認められる、というものではありません。
それでも、承認の時点で何が未解決だったかを日付つきで示せるので、「承認したのだから問題はなかったはずだ」という主張に反論しやすくなります。
検収書の書式に備考欄があればそこへ書き、なければ検収書と同じ日にメールや書面で送っておくと、二つの記録を結び付けられます。

検収の遅れと60日の支払期日

留保を付けて承認するか、修正を待って再検収するかを考えるとき、発注側にはもう一つ制約があります。
中小受託取引適正化法(取適法)の対象になる取引では、委託事業者は、検査をするかどうかにかかわらず、情報成果物を受領してから60日以内に定めた支払期日までに代金を支払う必要があります1。
検収が終わっていないことは、支払期日を後ろへずらす理由になりません。

ただし、支払期日より前に不適合が見つかってやり直しをさせた場合は、やり直し後の受領日が起算日になります1。
つまり制度の考え方に沿うのは、支払期日を気にして検収を急ぐことではなく、受領後の早い段階で確認を進め、不適合が見つかればやり直しを求めて受領し直すという流れです。
逆に、確認を後回しにして期日が近づいてから不具合を見つけると、支払いの期限と再検収の段取りが同時に迫ることになります。

取適法が適用されるのは、取引の内容や当事者について一定の要件を満たす委託取引に限られます。
自社の取引が対象になるかどうかは、公正取引委員会の資料などで要件を確かめたうえで判断してください。
対象になる取引では、検収期間を契約で決めるときに、受領から60日以内という支払期日から逆算して日程を組んでおくと、留保付きで承認する場合も再検収する場合も余裕が生まれます。

検収印を押す前後に行う手順(提案)
契約書の確認、確認範囲の記録、気づいた点の留保、承認後の発見に備えた通知という四つの手順を示す図

検収済みの案件で、契約書の責任期間と民法の1年のどちらを基準に動くべきかは、条項の書き方と経緯が絡むため、社内だけでは判断しにくいことがあります。

手元の契約書の検収条項と、これまでのやり取りの記録をもとに、いつまでに誰へ何を通知すべきかを整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
検収印の意味 条文上は請求権が消える理由ではない。契約によっては責任期間の起算点になる
民法の期限 種類・品質の不適合は、知った時から1年以内に通知
期限の例外 売主・請負人が引渡し時に知っていた、または重過失で知らなかった
契約書 検収期間・みなし検収・責任期間の起算点と長さ・期間内の手続き
請求の順 まず追完。減額は原則として催告後。賠償は相手の帰責が前提
支払期日 取適法の対象取引では、検査の有無にかかわらず受領後60日以内

次の契約や更新の前は、検収期間や責任期間を業務の周期に合わせて見直せる数少ない機会です。 検収期間、みなし検収の定め、責任期間の起算点と長さ、通知の方法が、自社の確認作業の流れと合っているかを確かめられます。

BtoB通販システムのご相談

貴社の商習慣に合わせたご提案をいたします。

無料相談はこちら

よくある質問

検収印を押した後でも、不具合が見つかれば修補を請求できますか。

請求できる余地があります。
民法の条文は、検収の承認を請求権が消える理由として定めていません。
引き渡された目的物が契約の内容に適合しなければ、修補などの追完を請求できます5。
ただし、不適合を知った時から1年以内の通知が必要です4。
契約書に検収完了時から数える責任期間がある場合は、その期間も確認が必要です。
不適合が発注側の責めに帰すべき事由による場合は請求できません5。

「知った時から1年」は、いつの時点から数えますか。

引渡しの日や検収の日ではなく、発注側が不適合を知った時から数えます34。
どの時点を「知った時」と見るかは事情によるため、発見した日付、気づいた人、気づいた場面を記録しておき、迷う場合は早い方の日を基準に通知しておくと安全です。
なお、システム開発の契約で検収完了時を起算点とする責任期間が定められている場合は、それとは別に契約上の期限が進みます2。

契約書に「検収完了時から3か月」とある場合、民法の1年は使えませんか。

まずは契約書の期間が検討の出発点になります。
IPAのモデル契約の考え方でも、検収完了時を起算点にして契約で期間を定める形がとられています2。
契約上の期間を過ぎた後に民法の1年を根拠に請求できるかは、条項の趣旨や不具合の事情によって判断が分かれ、一律には言えません。
相手が引渡しの時に不適合を知っていた場合や重大な過失で知らなかった場合には、期間制限の扱いが変わりえます234。
期限が近い、または過ぎていると気づいた時点で通知を出し、契約書を持って専門家に相談してください。

納品物の数量が足りなかった場合も、1年の通知期間が適用されますか。

民法562条は数量の不適合も追完の対象に含めていますが5、566条の1年の期間制限は種類・品質の不適合について定めたものです4。
そのため、数量不足を種類・品質と同じ期限で考えてよいとは限りません。
とはいえ、期限の心配がないと考えるのも早計です。
契約書が数量の確認や異議の期間を別に定めていることもあるため、不足に気づいたら早めに通知し、扱いは契約書と専門家で確かめてください。

検収の遅れで支払期日を過ぎた場合、取適法上どう扱われますか。

取適法の対象となる取引では、検査をするかどうかにかかわらず、情報成果物の受領後60日以内に定めた支払期日までに代金を支払う必要があります1。
検収が遅れたことは、期日を延ばす理由になりません。
支払期日より前に不適合が見つかってやり直しをさせた場合は、やり直し後の受領日が起算日になります1。
自社の取引が対象かどうかは、要件を確かめて判断してください。

不具合を口頭で伝えただけでも通知になりますか。

条文が求めているのは、不適合の「通知」です4。
ただ、口頭で伝えただけだと、後で「いつ、何を伝えたか」を示すのが難しくなります。
契約書が通知の方法を定めていることもあるため、口頭で伝えた場合も、同じ日のうちに内容と発見日を書いたメールや書面を送り、相手が受け取ったことを確認しておくのが安全です。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)よくある質問コーナー」(2026年)
  2. 2 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「「情報システム・モデル取引・契約書」からの見直しのポイント」(2026年確認)
  3. 3 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構(J-Net21)「民法改正による新制度(第2回)- 請負契約」(2021年)
  4. 4 出典:e-Gov法令検索「民法第566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)」(2026年確認)
  5. 5 出典:e-Gov法令検索「民法第562条(買主の追完請求権)」(2026年確認)
  6. 6 出典:e-Gov法令検索「民法第563条(買主の代金減額請求権)」(2026年確認)
  7. 7 出典:e-Gov法令検索「民法第415条(債務不履行による損害賠償)」(2026年確認)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

監修確認日:

記事内容に関するお問い合わせ:お問い合わせフォーム

BtoB EC(受発注)サイト構築システム「EC-Rider B2B Ⅱ」への
各種お問い合わせ

ページTOPへ戻る
無料相談を予約 お見積
平日10:00~18:00
page
top