◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 対象取引では、手形を交付すること自体が支払遅延にあたるため、手形のサイトや期日管理の見直しでは解決しない。
- 電子記録債権やファクタリングは名前で一律に禁止されるのではなく、支払期日に満額を現金化できるかで扱いが分かれる。
- 銀行振込へ切り替えるときは、代金から振込手数料を差し引かず、期日と満額の両方を振込データの段階で確かめる。
- 明示事項は電子メールやEDIで提供でき、書面を求められたら遅滞なく交付できるよう、提供の記録と紙の帳票を用意しておく。
- 対象判定や期日の日数、書類の保存は法務が原典で確かめ、システムでは設定値やマスタで持って後から入れ替えられるようにする。
目次

手形払いが残る取引で、まず確かめること:取適法の対象になるのか、何が禁止されるのか
手形で払っている取引先がまだ残っていて、受発注システムの改修範囲を決めようにも、何を禁止として扱えばよいのか分からない。
そんな状況でまず押さえたいのは、取適法では手形の交付そのものが支払遅延にあたり、電子記録債権やファクタリングも支払期日までに代金の満額を現金化できなければ認められにくいという点です。
システム側で直す中心は、支払手段と振込手数料の負担の登録、満額を期日に払うための期日管理、明示事項を電子的に出した記録の三つです。
自社の取引が対象かどうかの判定は、法務が原典に当たって確かめます。
取適法の施行時期と名称
取適法は、下請法を改正した法律です。
公正取引委員会は「2026年1月から『下請法』は『取適法』へ」と題したリーフレットで、改正法の施行を案内しています3。
正式な名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」で、公正取引委員会の運用基準もこの法律について定めています1。
名称が変わっただけではありません。
運用基準は、発注する側の委託事業者と受ける側の中小受託事業者の関係について、手形の扱いや振込手数料の扱いを具体的に示しています1。
受発注システムの改修で参照する先は、以前の下請法の解説ではなく、この運用基準と公正取引委員会の特設ページになります。
施行はすでに始まっているため、手形払いの取引が残っているなら、改修の予定を待たずに支払いの運用そのものを見直す判断が必要になります。
施行前から続く取引に新しい扱いがどの時点から及ぶかといった経過措置は、法務が原典で確かめる事柄です。
手形の交付が支払遅延にあたる
運用基準は、委託事業者が手形を交付することを支払遅延にあたる行為としています1。
あわせて、金銭や手形以外の支払手段でも、支払期日までに代金の額に相当する金銭と引き換えることが困難なものは、同じく支払遅延にあたるとしています1。
特設ページでも、改正の柱の一つとして手形払い等の禁止が挙げられています2。
ここで見落としやすいのは、支払遅延という言葉の意味です。
手形を支払期日どおりに渡していても、手形を交付すること自体が支払遅延として扱われます。
そのため、手形のサイトを短くする、期日の管理を厳しくするといった改修では解決しません。
システムで言えば、対象取引で支払手段の選択肢に手形が残っていることそのものが、直す箇所の入口になります。
一方で、この扱いは取適法の対象となる取引に限られます。
同じ取引先との間でも、取引の種類によって対象になる発注とならない発注が分かれることが考えられます。
手形をすべての取引で一律に止めるか、対象取引だけを切り替えるかは、次に述べる対象判定の結果を見て決めることになります。
従業員基準の追加
対象になるかどうかの判定にも変化があります。
特設ページによると、製造委託と役務提供委託について従業員数による基準が追加され、人数の線は委託の種類ごとに異なります2。
運送を委託する取引の一部も、特定運送委託として新たに対象に加わりました2。
これまで資本金の比較だけで対象外と整理していた取引先でも、従業員数の基準で対象に入る可能性があります。
手形払いが残っている取引先が過去に対象外と判断されていたなら、その判断がいまも通用するかを見直す必要があります。
資本金の基準の具体的な線や従業員数の数え方は、特設ページに集約された資料をもとに法務が確かめます。
システム担当として備えておきたいのは、判定の結果を取引先と取引の種類ごとに持てるようにしておくことです。
判定そのものは法務の仕事ですが、その結果を取引先マスタや契約の情報に記録しておけば、支払手段の制御や明示事項の出し方を判定結果にもとづいて切り替えられます。
判定が変わったときも、マスタの値を直せば済む形にしておくと、改修のやり直しを小さくできます。
手形の代わりに使えるもの:期日に満額が現金で受け取れるかで分かれる
期日に満額が現金で受け取れるか
手形をやめた後の支払手段は、名称で可否を考えるより、支払期日に受け取る側が代金の満額を現金で手にできるかどうかで考えると整理できます。
運用基準が支払遅延とするのは、支払期日までに代金の額に相当する金銭と引き換えることが困難な支払手段だからです1。
この見方で考えると、支払期日に代金の全額を銀行振込で入金すれば、受け取る側はその日に満額の現金を手にできます。
反対に、支払期日に何らかの債権を渡しても、それを現金にできるのが後の日付だったり、早く現金にするには割引を受けて手数料を払う必要があったりすれば、期日の時点で満額の現金にはなりません。
受け取る側の口座に、期日にいくら入るのかを思い浮かべると判断の向きが分かりやすくなります。
この問いは、システムの支払手段マスタにそのまま持ち込めます。
支払手段ごとに、期日に満額を現金化できるかという属性を持たせておけば、新しい手段を追加するときも同じ問いで確かめられます。
ただし、ある手段がこの条件を満たすかどうかの判断は運用基準の本文に照らして行うもので、システムの属性はその判断結果を記録しておく場所です。
満期が支払期日より後の電子記録債権
手形からの切り替え先として電子記録債権を検討している場合や、すでに使っている場合は、満期日の位置が分かれ目になります。
電子記録債権は、電子的な記録によって発生や譲渡を行う金銭債権で、手形と同じように満期日を持ちます。
運用基準は、満期日が支払期日より後に来る電子記録債権や一括決済方式で、中小受託事業者が割引を受けなければ現金化できないものを、金銭との引換えが困難なものとして扱っています1。
特設ページも、電子記録債権やファクタリングのうち、支払期日までに代金相当の金銭を得ることが困難なものを禁止の対象に含めています2。
裏を返せば、電子記録債権やファクタリングという名前だけで一律に使えなくなるわけではありません。
問題になるのは、支払期日に満額の現金を受け取れない組み方です。
たとえば支払期日に電子記録債権を発生させても、満期日がその先にあれば、受け取った側は期日に現金を得ようとすると割引を受けることになり、その分だけ手取りが代金を下回ります。
期日に債権を渡したという形が整っていても、受け取る側から見れば期日に満額が入っていないことになります。
どの組み方であれば認められるかは、電子記録債権の条件や、利用している決済の仕組みの契約によって変わります。
満期日を支払期日より前に置く運用で足りるのか、ほかの条件も見る必要があるのかは、運用基準の本文と決済の契約条件を突き合わせて確かめることになります。
振込手数料を差し引かない
銀行振込へ切り替えるときには、もう一つ直す点があります。
運用基準は、代金から銀行振込手数料を差し引く行為を、代金減額の禁止に違反する例として挙げています1。
特設ページでも、振込手数料を中小受託事業者に負担させることの禁止が改正の柱に入っています2。
手形で払っていた取引では表に出にくかった論点ですが、振込で払う取引が増えるほど、この扱いが関わる支払いも増えます。
支払期日どおりに振り込んでいても、振込額が代金を下回っていれば、受け取る側の口座には満額が入りません。
期日と満額という二つの条件は、振込に切り替えた後も同じ支払いの中で両方を満たす必要があります。
この点が、次に見る振込データの作り方に直接かかわってきます。
| 支払手段 | 支払期日に満額を現金で受け取れるか | 取適法での扱い |
|---|---|---|
| 手形 | 期日の現金化にかかわらず判断される | 交付すること自体が支払遅延にあたる |
| 満期日が支払期日より後の電子記録債権・一括決済方式 | 割引を受けないと現金化できない | 金銭との引換えが困難なものとして扱われる |
| 上記以外の組み方の電子記録債権・ファクタリング | 組み方と条件によって異なる | 期日までに代金相当の金銭を得ることが困難なものは禁止の対象。個別に運用基準で確認 |
| 銀行振込 | 期日に満額を振り込めば受け取れる | 代金から振込手数料を差し引くと代金減額の例にあたる |
手形管理をやめると、振出から支払までの作業はどう変わるか
手形管理が不要になる作業
手形で払っていた取引では、支払いのたびに手形を振り出し、控えや台帳に記録し、満期日まで管理する作業がありました。
受け取った側から、割引や満期日について問い合わせを受けることもあったかもしれません。
手形をやめれば、こうした振出から満期までの管理は不要になります。
ただし、手間がそのまま消えるわけではありません。
手形では、支払期日に手形を渡す行為と、受け取る側が現金を得る時期がずれていました。
振込では、支払期日に満額を口座へ入れることがそのまま支払いになるため、支払期日の正しさと振込額の正しさを、振込データを作る段階で確かめる重みが増します。
手形台帳の管理に使っていた手間が、期日と金額の確認へ移ると考えると、どこを改修すればよいかが見えやすくなります。
手形台帳を受発注システムの外で、表計算のファイルなどで管理していた場合は、その台帳に頼っていた情報がシステム側にあるかも確かめておきたいところです。
どの発注の代金を、いつ、どの手段で払ったかという記録が台帳にしか無いと、台帳を廃止した後に過去の支払いの経緯を追えなくなります。
移行の前に、台帳の項目と受発注システムや会計システムの項目を見比べ、引き継ぐ先を決めておくと安心です。
振込データ作成で変わる点
振込データを作る流れでは、変わる点が三つあります。
- 振込日を、取引ごとに確定した支払期日に合わせる
- 振込額を、代金の満額にする
- 振込手数料を、代金から差し引かずに自社で負担する
一つ目の支払期日は、手形の時代には手形を渡す日として扱われていたかもしれません。
振込では、その日に満額が受け取る側の口座に入っていることが求められます。
支払期日の決め方について日数や起算点の決まりは、法務が原典を確かめたうえで、システムには固定値ではなく設定値として入れておくのが安全です。
後から解釈が変わったときも、プログラムを書き換えずに値を直せます。
二つ目と三つ目は、振込額の計算にかかわります。
支払データを作る機能に、請求額から振込手数料を引いた金額を振込額にする設定や、取引先ごとに手数料を先方負担とする設定があれば、対象取引では満額を振り込む設定へ変えることになります。
契約書や取引条件の中に手数料を先方負担とする定めが残っている場合は、システムの設定だけでなく、条件そのものの見直しも法務と進めます。
受発注システムの要件に落とす:明示項目・期日の設定・記録項目
発注書の明示項目
発注の際に中小受託事業者へ示す取引条件を、明示事項と呼びます。
運用基準は、委託事業者が明示事項を電子メールやEDIなどの電磁的方法で提供できるとしています1。
EDIは、企業同士が注文や請求のデータを決まった形式でやり取りする仕組みのことで、受発注システムから発注データを送る運用もこれに近い位置づけになります。
受発注システムで発注書を出している場合、要件として確かめたいのは、支払いにかかわる情報が発注データの項目として入っているかどうかです。
支払手段と支払期日が発注データにあれば、取引先に示した内容と、後で実際に行った支払いを同じデータで突き合わせられます。
明示しなければならない事項の細目は、法務が運用基準の本文で確かめたうえで項目一覧に反映し、項目を追加・変更できる作りにしておくと、確認の結果を受けて直しやすくなります。
もう一つは、電子的に提供したことの記録です。
いつ、どの方法で、どの宛先に、どの内容の発注書を送ったのかが残っていれば、取引先から問い合わせを受けたときや社内で確認するときに、送った事実をデータで示せます。
発注書を修正して送り直す運用があるなら、どの版を送ったのかも区別して残しておくと、内容の食い違いを追いやすくなります。
支払条件マスタと期日アラート
支払条件マスタは、取引先ごとの支払手段、支払期日の決め方、手数料の負担者などをまとめて持つ設定のことです。
手形をやめる改修では、ここに二つの変更を加えると、日々の発注や支払いで迷う場面を減らせます。
一つは、対象取引では手形を支払手段として選べないようにすることです。
もう一つは、先に述べた、期日に満額を現金化できるかという属性を支払手段ごとに持たせることです。
期日アラートは、確認の漏れを見つけやすくする仕組みとして考えます。
たとえば、支払期日が近いのに振込データが作られていない取引、電子記録債権の満期日が支払期日より後になっている取引、振込額が代金額と一致しない取引を、担当者へ知らせる条件にできます。
アラートは判断を代わりに行うものではありませんが、経理担当者が支払いの一覧を一件ずつ目で追って探していた差異を、確かめる対象として先に示してくれます。
支払期日を計算するための日数や起算点、アラートを出す時期は、いずれも設定値として持たせます。
法務の確認が終わる前に開発を始める場合でも、値を後から入れ替えられる作りにしておけば、確認結果を待って作り直す範囲を小さくできます。
支払手段と手数料負担の記録
支払いのたびに、実際の支払手段、支払日、振込額、振込手数料の負担者を記録しておくと、取引先から入金額について問い合わせを受けたときや、社内で手形の廃止状況を確かめるときに、データで答えられます。
電子記録債権を使い続ける取引では、満期日も同じ記録に並べておくと、支払期日との前後関係を後から確かめられます。
ここで区別しておきたいのは、データがあることと、そのデータを確かめる機能があることは別だという点です。
支払いの実行を会計システムやインターネットバンキングで行っている会社では、受発注システムには支払手段の項目があっても、実際の振込額は別のシステムにしか無いことがあります。
その場合は、発注番号などで両方のデータをつなぎ、どちらの値を正とするかを決めておきます。
つなぎ方が決まっていないと、経理担当者が振込の結果を受発注システムへ手で書き写す作業が残り、転記のずれを確かめる手間も残ります。
書面交付を求められたときの対応
明示事項を電子的に提供できる一方で、運用基準は、中小受託事業者が書面の交付を求めたときは遅滞なく交付するとしています1。
受発注システムを電子の発注だけで組んでいると、この依頼に応じる手段が業務の中に無いことになります。
要件としては、取引先マスタに書面の交付を希望しているかを記録できること、発注データから同じ内容を紙の書面として出力できる帳票があること、依頼を受けた日と交付した日を残せることが候補になります。
依頼は、購買担当者が電話やメールで受けることもあれば、取引先の経理担当者から届くこともあるでしょう。
誰が受けても同じ場所に記録が残るようにしておくと、交付の漏れや、同じ書面を二度送る取り違えを防ぎやすくなります。
電子的な提供を始めるにあたって、取引先の事前の承諾が必要かどうかは、今回確かめた運用基準の記述からは判断できません。
この点は法務へ確認する項目に含めておきます。
現状別の着手順:まず直す取引の選び方
手形がある場合
対象取引で手形を使っているなら、そこが最初に直す箇所です。
手形は交付すること自体が支払遅延にあたるため、ほかの要件より先に、手形を止めて代わりの手段へ移す必要があります。
まず手形払いの取引先を一覧にし、法務に対象判定を依頼します。
対象と分かった取引から、銀行振込などの期日に満額を受け取れる手段へ切り替え、同時に振込手数料を差し引かない設定にしておくと、切り替えた直後に手数料の扱いで別の問題を生むことを避けられます。
システムの改修が間に合わない場合でも、支払いの運用は先に変えられます。
手形を選べないようにするマスタの変更は後から行うとしても、経理担当者が手形を振り出さない運用へ切り替え、振込の記録を残しておけば、改修までの期間をつなげます。
電子記録債権を使っている場合
電子記録債権で払っている取引は、一律に切り替える前に、取引ごとの満期日と支払期日を並べて確かめるのが先です。
満期日が支払期日より後になっている取引は、受け取る側が割引を受けないと期日に現金化できない組み方にあたる可能性があり、満期日の設定を見直すか、振込への切り替えを検討します。
満期日が受発注システムに入っていないなら、利用している決済の仕組みの管理画面や記録から取引ごとに拾い出すことになります。
この作業で、満期日を受発注システムに持たせるべきか、決済側のデータとつなぐべきかも判断できます。
今後も電子記録債権を使い続けるなら、期日アラートの条件に満期日と支払期日の比較を入れておくと、新しい取引で同じ組み方が生まれたときに気づけます。
現金払いのみの場合
すでに対象取引をすべて振込で払っている会社でも、確かめる点は残ります。
一つは振込手数料の扱いです。
振込額が代金額より少ない取引が続いていないかを支払いの記録で照らし合わせ、差がある取引は、手数料を差し引いているのか、別の理由による差なのかを明細で確かめます。
差額があるというだけで手数料の差し引きと決めつけず、請求額と振込額の内訳を見て判断します。
もう一つは明示事項の出し方です。
発注書を電子で出しているなら、提供の記録が残っているか、書面を求められたときに紙で出せるかを確かめます。
従業員数の基準が加わったことで、これまで対象外としていた取引先が対象に入っていないかも、この機会に見直しておきます。
どの状況でも、手掛かりになるのは取引先ごとの支払条件の一覧です。
支払手段、支払期日、満期日、手数料の負担者を一行にまとめ、期日に満額を現金で受け取れるかという同じ問いで並べると、直す取引の優先順が見えてきます。
| いまの支払い | 最初に直す箇所 | 確かめる情報 |
|---|---|---|
| 手形がある | 対象取引の手形を止め、満額の振込などへ移す | 取引先ごとの対象判定と支払手段 |
| 電子記録債権を使っている | 満期日が支払期日より後の組み方を見直す | 取引ごとの満期日と支払期日 |
| 振込のみ | 手数料の扱いと明示事項の提供・書面対応 | 振込額と代金額の内訳・書面希望の有無 |
対象外・例外の確認と、取引先・社内への進め方
法務へ確認する項目
システムの要件を確定させる前に、法務に確認しておきたい事柄があります。
どれも、取適法の原典や運用基準の本文に当たらなければ答えが決まらず、システム担当の判断で値を決めると後で直すことになりやすいものです。
- 対象取引かどうかの判定(資本金と従業員数の基準、取引の種類ごとの扱い)
- 支払期日の決め方と、その日数や起算点
- 電子記録債権を使い続ける場合の条件と、明示する事項
- 明示事項の細目と、電子的に提供する際の取引先の承諾の扱い
- 取引に関する書類の作成と保存の決まり
- 施行前から続く取引への経過措置
- 違反した場合の措置
これらの回答を待つ間も、開発を止める必要はありません。
判定の結果、日数、保存の期間、明示の項目を設定値やマスタで持つ作りにしておけば、回答が出た時点で値を入れ替えるだけで済みます。
反対に、条件をプログラムに直接書き込むと、法務の確認結果や今後の解釈の変化に合わせるたびに改修が必要になります。
対象外と判定された取引についても、判定の理由と日付を記録しておくと、取引の規模や相手の従業員数が変わったときに見直しのきっかけを作れます。
取引先への連絡
手形をやめることは、受け取る側にとっても入金の時期や方法が変わる出来事です。
手形を受け取っていた取引先は、手形の取り立てや割引を前提に資金の段取りを組んでいたかもしれませんし、入金の消込の方法も変わります。
連絡は、社内で新しい支払手段と支払期日が決まった後、システムを切り替える前に行うのが自然な順番です。
伝える内容は、次の五つにまとめられます。
- 手形での支払いをやめる時期
- 新しい支払手段と支払期日
- 振込額は代金の満額で、振込手数料は自社が負担すること
- 発注書などの明示事項を電子で送る方法と、書面を希望する場合の伝え方
- 問い合わせを受ける窓口
書面の希望を受け付ける方法を最初の連絡に入れておくと、取引先の担当者が後から誰に頼めばよいか迷わずに済み、受けた依頼を取引先マスタへ記録する流れにも乗せやすくなります。
社内では、購買担当者が発注書と取引条件を、経理担当者が振込データと支払いの記録を、情報システム担当者がマスタと画面の改修を、法務担当者が判定と原典の確認を受け持つと、それぞれの作業の境目がはっきりします。
四者が同じ支払条件の一覧を見ながら進めれば、誰がどの取引を切り替えたのかを一か所で追えます。
| 確認先 | 確認する事柄 | システム側の備え |
|---|---|---|
| 法務 | 対象取引かの判定(資本金・従業員数の基準と取引の種類) | 取引先と取引の種類ごとに判定結果と判定日を持つ |
| 法務 | 支払期日の決め方と日数・起算点 | 日数と起算点を設定値にする |
| 法務 | 明示事項の細目・電子提供の承諾の扱い・書類の保存 | 明示項目と保存の設定を変えられるようにする |
| 法務 | 経過措置と違反時の措置 | 取引先ごとに切り替えの時期を管理する |
| 取引先 | 新しい支払手段と支払期日・書面の希望 | 取引先マスタに支払条件と書面希望を登録する |
手形をやめる改修は、法務の判定、取引先ごとの支払条件、受発注システムと会計側のデータのつなぎ方が絡むため、社内だけでは改修の範囲を決めきれないことがあります。
いまの発注データと支払データに、支払手段・支払期日・満期日・手数料負担のどの項目があり、どこを設定値にすべきかを、手元の取引先一覧と画面をもとに整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 手形 | 対象取引では、交付すること自体が支払遅延にあたる |
| 電子記録債権・ファクタリング | 支払期日に満額を現金化できるかで扱いが分かれる |
| 振込手数料 | 代金から差し引かず、委託事業者が負担する |
| 明示事項 | 電子メールやEDIで提供でき、書面を求められたら遅滞なく交付する |
| 対象判定・期日の日数・書類の保存 | 法務が原典で確かめ、システムでは設定値として持つ |
法務の確認を待ちながら開発を進めるには、後から値を入れ替えられる作りをどこまで用意するかを先に決めておく必要があります。 支払条件マスタ、期日の通知、明示事項の提供記録、書面交付の帳票について、現在のシステムで足りる部分と追加が必要な部分を切り分けられます。
よくある質問
電子記録債権は取適法で一切使えなくなるのですか。
一律に使えなくなるわけではありません。
運用基準と特設ページが支払遅延や禁止の対象として示しているのは、支払期日までに代金相当の金銭を得ることが困難なものです。
満期日が支払期日より後に来て、受け取る側が割引を受けないと現金化できない電子記録債権は、金銭との引換えが困難なものとして扱われます。
個別の組み方が認められるかは、運用基準の本文と決済の契約条件を照らし合わせて法務が確かめます。
振込手数料を取引先に負担してもらう合意があっても問題になりますか。
運用基準は代金から振込手数料を差し引く行為を代金減額の禁止に違反する例として挙げ、特設ページは振込手数料を中小受託事業者に負担させることの禁止を改正の柱に入れています。
合意があれば扱いが変わるという記述は、今回確かめた資料にはありません。
合意を理由に差し引きを続けるのではなく、対象取引では満額を振り込む前提で、既存の合意や契約条件の見直しを法務と進めるのが安全です。
受発注システムで発注書を電子的に出すとき、取引先の承諾は必要ですか。
運用基準は、明示事項を電子メールやEDIなどで提供できること、中小受託事業者が書面の交付を求めたら遅滞なく交付することを示しています。
一方で、電子的な提供の前に取引先の承諾が必要かどうかは、今回確かめた記述からは判断できません。
法務に確認しつつ、書面を希望する取引先を記録し、紙で出力できる帳票を用意しておくと、どちらの結論になっても対応しやすくなります。
自社が取適法の対象か、システム担当が確かめる手順はありますか。
判定そのものは法務の仕事ですが、システム担当は判定に使う情報を揃える役割を担えます。
取引先ごとに取引の種類を整理し、手形払いが残る取引から順に法務へ判定を依頼します。
製造委託と役務提供委託では従業員数の基準が追加され、運送の一部も特定運送委託として加わったため、以前に対象外とした取引先も見直しの対象に含めます。
判定結果は判定日とともに取引先マスタへ記録しておくと、後の見直しに使えます。
手形の廃止にあたり、既存の取引先には何を伝えればよいですか。
手形をやめる時期、新しい支払手段と支払期日、振込額は満額で手数料は自社が負担すること、明示事項を電子で送る方法と書面を希望する場合の伝え方、問い合わせの窓口を伝えます。
受け取る側も資金の段取りや入金の消込が変わるため、社内で支払条件が決まった後、システムを切り替える前に連絡するのが自然な順番です。
- 1 出典:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(2025年)
- 2 出典:公正取引委員会「取適法・振興法 特設ページ」(2025年)
- 3 出典:公正取引委員会「2026年1月から『下請法』は『取適法』へ(リーフレット)」(2025年)