◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 帳合は得意先と卸の関係なので、取引先の1行に書き足さず、適用期間つきの別の表で持つと直す場所が一つにまとまる
- 得意先・帳合先・請求先・納品先は分けて持ち、請求先は法人や部門、納品先は場所として識別する
- 帳合変更は判定に使う日付を一つに決め、新しい行に開始日、旧帳合の行に終了日を入れて、消さずに残す
- Excelで足りるかは件数ではなく、条件の種類、同時に通る卸、変更頻度、参照する場所、触る人の数で判断する
- どちらに進む場合も、まず取引先の一覧を一つにして重複をなくすことから始める
目次

帳合が食い違うと、受注・出荷・請求のどこでずれるのか
帳合先を卸Xから卸Yへ切り替えたのに、請求だけが旧来の卸のまま出てしまった。
同じ小売の本部が、担当者ごとの管理表で別々のコードになっていた。
こうした食い違いの多くは、「誰が買うか」「どの卸を通るか」「どこへ請求し、どこへ届けるか」を取引先の1行にまとめて書いていることから起きます。
帳合管理と取引先マスタの紐づけは、取引先そのものと帳合という関係を分けて持つのが基本です。
変更するときは適用日をつけて旧帳合を終わらせる形にすると、直す場所が一つに定まります。
Excelのままでよいかは、条件の種類・変更頻度・触る人の数で見極めます。
受注・出荷に出る影響
食品流通でいう帳合は、メーカーが特定の卸売業者を経由して小売に商品を供給する取引関係を指します1。
会計で「帳簿と実績を照合する」意味で使う帳合とは、別の意味の言葉として扱われています1。
つまり帳合は、商品と代金がどの卸を通って流れるかという、取引の通り道の取り決めです。
メーカー、卸、小売のどの立場であっても、自社から見て「この得意先との取引はどの卸を通るのか」が帳合の情報になります。
ここでは食品流通での説明を基に話を進めます。
他の業界で同じ言葉を使う場合は、取引条件の中身を自社の契約に照らして読み替えてください。
通り道が変わると、物の流れの条件も一緒に変わります。
帳合先ごとに配送条件やリードタイムが異なり、帳合変更はその調整に波及すると説明されています1。
たとえば、小売A社への供給を卸Xから卸Yへ切り替える場合を考えます。
マスタの帳合先が卸Xのまま残っていると、A社向けの受注は卸X向けの発注や出荷指示として処理されます。
その結果、卸Yが受け取るはずの商品が届かない、卸Xの納品締めに合わせた日付で出荷予定が組まれる、といった食い違いが出ます。
受注の画面だけを直しても解決しないのは、出荷側が別の表や別の項目で帳合先を見ていることがあるためです。
受注担当は新しい卸へ切り替えたつもりでも、出荷指示を作る担当が古い一覧を参照していれば、物は旧来の経路で動きます。
ずれは、帳合先を参照している場所が複数あり、そのうち一部だけが更新されたときに起きやすくなります。
請求・リベート計算に出る影響
請求の側では、ずれがさらに見えにくい形で現れます。
帳合先ごとに掛率やリベート、協賛金が異なり、帳合変更は請求計算にも波及します1。
掛率は基準となる価格に掛ける割合、リベートは取引量などに応じて後から支払う割戻しのことです。
どちらも「どの卸との取引か」を前提に計算されます。
先ほどのA社の例で、受注と出荷は卸Yへ切り替わったのに、請求の計算表が卸Xの掛率のままだったとします。
請求書は卸Yの条件と合わない金額で作られ、照合の段階で差額が見つかってから原因を遡ることになります。
リベートや協賛金を月末や期末にまとめて計算している場合は、切り替え月の取引を新旧どちらの条件で集計するかも決めておかなければなりません。
ここが曖昧だと、同じ取引が両方の集計に入る、あるいはどちらにも入らない、という重複や漏れが出ます。
ただし、差額が出たからといって、原因が帳合の登録ミスだとは限りません。
単価の改定や値引きの適用漏れでも、似たような差額は出ます。
実際の明細で、どの取引がどの帳合先・どの条件で計算されたかを照合して、初めて原因が分かります。
その照合をしやすくするのが、マスタの持ち方です。
帳合情報は取引先マスタのどの単位と結びつけて持つか
得意先・卸・請求先・納品先を分けて持つ
前の節で見たずれは、一つの欄に複数の意味が混ざっていることから始まります。
取引先一覧の1行に「A社/帳合:卸X/請求:本部/納品:各店」と書き込む形は、作った人には分かりやすいものです。
しかし受注・出荷・請求がそれぞれ別の欄を見に行くようになると、変更のときにどこを直せばよいかが分からなくなります。
マスタで区別したいのは、次の四つの問いです。
- 誰が買うのか(得意先)
- どの卸を通るのか(帳合先)
- どこへ請求するのか(請求先)
- どこへ届けるのか(納品先)
この四つは、同じ相手になることもあれば、すべて別になることもあります。
小さな得意先なら、買う会社と請求先と届け先が同じ一つの事業所であることも珍しくありません。
一方、本部で一括して支払い、商品は各店舗や物流センターへ届けるチェーンでは、請求先と納品先が分かれます。
帳合を通す取引では商品が卸を経由するため、自社から見た請求の相手や届け先が卸の側になる場合もあります。
どの組み合わせになるかは立場と契約で変わります。
そこでマスタは最初から欄を分けておき、同じ相手なら同じコードを入れる形にしておくと、後から分かれたときに欄を作り直さずに済みます。
このなかで、帳合だけは性質が違います。
得意先・請求先・納品先は「相手そのもの」ですが、帳合は得意先と卸の間の「関係」です。
条件が帳合先ごとに設定される以上1、A社という相手の属性として帳合先を一つ書くより、「A社は卸Yを通る」という関係を別に持ち、その関係に掛率やリベートの条件を結びつける方が、変更したときに直す場所が一か所にまとまります。
これは帳合の定義と、次に見る識別の考え方を組み合わせた編集部の設計案です。
持ち方による効果を検証した資料に基づくものではないので、自社の取引の形に当てはめて検討してください。
法人・部門・場所という識別の考え方
相手そのものをどの単位で登録するかには、流通の識別コードの標準が手がかりになります。
GS1 JapanのGLN(企業・事業所識別コード)は、企業間取引で組織や場所を世界的に唯一に識別するためのコードで、設定対象は事業者、部門、物理的な場所、電子的な場所の4区分です2。
会社としての取引相手、その中の部門、実際に物が届く場所を、それぞれ別の単位として識別できるということです。
この考え方を取引先マスタに当てはめると、請求先は法人または部門、納品先は物理的な場所、という対応で持つ案が導けます。
A社の本部(請求先)と各店舗(納品先)を同じ1件に押し込まず、法人としてのA社の下に部門と場所を結びつけておきます。
そうすれば店舗が増えても請求先は変わらず、納品先の行を足すだけで済みます。
帳合の関係も、どの単位の得意先と結ぶのかが明確になります。
ただし、細かく分けるほどよいわけではありません。
GLNでも、1つのコードで複数の区分を兼ねることができるとされています2。
事業所が一つしかない得意先に、法人・部門・場所の3件を作っても手間が増えるだけです。
分かれる必要が出たときに分けられる構造にしておき、普段は1件で兼ねる運用が現実的です。
なお、GLNはあくまで識別コードの標準で、社内の取引先マスタの構造を定めるものではありません。
GLNを使わずに社内コードで管理している場合でも、法人・部門・場所を区別して持つという考え方はそのまま使えます。
| 持つもの | 答える問い | 識別の単位の例 |
|---|---|---|
| 得意先 | 誰が買うのか | 法人または部門 |
| 帳合先(卸) | どの卸を通るのか | 得意先と卸の関係として別の表で持つ |
| 請求先 | どこへ請求するのか | 法人または部門 |
| 納品先 | どこへ届けるのか | 物理的な場所 |
1行で持つ方式と関係テーブルで持つ方式の違い
方式別の比較表(変更のしやすさ・履歴・運用負担)
帳合を関係として持つといっても、実際の表の形は大きく二つに分かれます。
一つは、取引先マスタの各行に「帳合先コード」の欄を設け、そこへ現在の卸を書く方式です。
もう一つは、取引先マスタとは別に帳合の表を作り、1行に「得意先コード・帳合先コード・対象の商品区分・適用開始日・適用終了日」を持たせる方式です。
ここでは後者を関係テーブル方式と呼びます。
差が最もはっきり出るのは、変更したときに古い情報がどうなるかです。
1行方式で帳合先を卸Xから卸Yへ書き換えると、その時点で卸Xだった事実はマスタから消えます。
切り替え前の取引について請求やリベートを後から計算し直すとき、当時の帳合先を別の記録から探すことになります。
関係テーブル方式では、卸Xの行に適用終了日を入れ、卸Yの行を開始日つきで足すので、どの日にどちらだったかを表から引けます。
その代わり、関係テーブル方式では引くときに日付が要ります。
「A社の帳合先は?」ではなく、「この受注日(または出荷日)時点のA社の帳合先は?」と問わなければならず、Excelで引くなら条件の多い検索式を組むことになります。
期間が重なった行や、終了日の入っていない古い行が残ると、どちらを使うかが決まらなくなるため、登録時の点検も必要です。
関係テーブルは仕組みとして履歴を残せる一方、手間が増える分、手順を決めて守れることが前提になります。
どちらが向くかの見分け方
どちらが優れているかは一概には言えず、向く状況が違います。
自社に当てはめるときは、次の点を見ていくと方向が定まります。
- 同じ得意先が、商品ごとや地域ごとに別の卸を同時に通っているか
- 切り替え前の期間の請求やリベートを、後から計算し直すことがあるか
- 帳合変更が日常的に起きるのか、ほとんど起きないのか
- 帳合の情報を、受注・出荷・請求の複数の表や画面が参照しているか
一つ目に当てはまる得意先があるなら、1行方式では欄が足りません。
「帳合先1」「帳合先2」と欄を増やすと、どの商品がどちらを通るかを別に書く必要が出ます。
結局は関係を別表で持つのと同じ情報を、見えにくい形で抱えることになります。
二つ目と三つ目に当てはまる場合は、履歴が残ることの価値が大きくなります。
四つ目に当てはまる場合は、どの方式を選ぶかより、参照先を一つの表にそろえられるかが先に問われます。
反対に、得意先がそれぞれ一つの卸だけを通り、帳合変更がまれで、参照するのが一つの台帳だけなら、1行方式でも見通しよく運用できます。
その場合でも、書き換えたときに「いつ、何から何へ変えたか」を別のシートに1行ずつ残しておけば、後で関係テーブルへ移るときの材料になります。
いきなり全面的に作り替えるのではなく、まず変更の記録を残すところから始めるのも一つの進め方です。
| 比べる点 | 1行で持つ方式 | 関係テーブルで持つ方式 |
|---|---|---|
| 変更のしやすさ | 欄を書き換えるだけで済む | 旧行に終了日を入れ、新行を開始日つきで足す |
| 履歴の残し方 | 書き換えると以前の帳合先が消える | どの日にどの卸だったかが表に残る |
| 運用負担 | 見通しがよく、Excelでも引きやすい | 日付つきで引く必要があり、期間の点検が要る |
| 商品や期間で帳合先が分かれる場合 | 欄を増やすしかなく、対応関係が見えにくい | 行を足して表せる |
| 向く状況 | 1得意先1卸で、変更がまれ | 複数の卸を通る得意先や過去分の再計算がある |
帳合変更・新規登録・重複のときの更新手順とルール
新規登録前の名寄せと採番
重複登録は、登録する人が「まだ登録されていない」と思い込むところから生まれます。
正式名称で探して見つからず新しく作ったが、実は「(株)」の位置や全角・半角が違うだけで既に登録されていた、という形です。
名寄せとは、表記の違う同じ相手を一つにまとめることで、これを登録の前に行う手順を決めておきます。
登録前の確認として、たとえば次の順が考えられます。
- 法人格の表記(株式会社・(株)など)、空白、全角・半角をそろえた名称で検索する
- 所在地と電話番号でも検索し、名称が違っても同じ相手がいないかを見る
- 同じ法人が見つかった場合は、新しい法人ではなく、その法人の部門や場所として追加する
- 登録する人と承認する人を分け、承認する側が重複の有無を確かめる
三つ目の手順は、前の節で見た法人・部門・場所の区別がここで効いてくる場面です。
A社の新店舗を新しい取引先として登録してしまうと、請求先もA社とは別の相手として扱われ、請求をまとめるときに手作業での付け替えが必要になります。
既存の法人の下に場所として足す形にしておけば、請求先も帳合の関係もそのまま引き継げます。
採番では、コードに意味を持たせないことを勧めます。
コードに地域や帳合先の記号を埋め込むと、帳合が変わったときにコードまで変えたくなり、過去の伝票との対応が切れます。
帳合は関係の表で持つので、取引先コード自体は相手を識別するだけの通し番号で足ります。
また、取引をやめた相手のコードを、別の新しい相手に使い回さないことも決めておきます。
GLNが組織や場所を唯一に識別するものとされているように2、1つのコードは1つの相手だけを指す状態を保つと、過去のデータを読み違えずに済みます。
帳合変更の適用日と旧帳合の終了
帳合変更で最初に決めるのは、どの日付で切り替えを判定するかです。
受注日・出荷日・納品日のどれで新旧を分けるかによって、切り替えをまたぐ注文の扱いが変わります。
たとえば受注日で分けると、切り替え前日に受けて翌週に出荷する注文は旧帳合で処理されますが、出荷日で分けると新帳合になります。
どれが正しいかは、取引の契約や新旧の卸との取り決めで決まります。
マスタの側は、何の日付で判定するかを一つに決め、受注・出荷・請求のすべてで同じ日付を使うことが大切です。
旧帳合の行は消さずに、終了日を入れて残します。
消してしまうと、切り替え前の請求明細を見直すときに、どの条件で計算したかを追えなくなるからです。
新しい行の開始日と古い行の終了日は、隙間も重なりもない状態にします。
開始日を4月1日にしたなら、旧帳合の終了日は3月31日です。
ここに1日の隙間があれば、その日の受注は帳合先が無い状態になり、重なりがあればどちらを使うかが決まりません。
マスタの更新が済んだら、影響を受けるデータを工程の順に確かめます。
切り替え日をまたぐ受注残がどちらの卸向けになっているか、出荷予定の配送条件とリードタイムが新しい帳合先に合っているか、請求とリベートの集計期間が新旧で分かれているか、という順です。
これは最初の節で見た波及の順をそのままたどる確認です。
適用日を持っていれば、確認する範囲を切り替え日の前後の取引に絞り込めます。
入力ミスを防ぐ仕組み
コードを手で打ち込む運用では、1桁の打ち間違いが別の取引先を指してしまいます。
GLNは13桁で、GS1事業者コード、ロケーションコード、チェックデジットからなり、チェックデジットはモジュラス10という計算方式で入力ミスや読み取りミスを防ぎます2。
チェックデジットは他の桁から計算で決まる最後の1桁のことで、打ち間違えると計算が合わなくなり、誤りに気づけます。
社内コードでも同じ発想は使えます。
コードにチェックデジットを付ける、自由入力をやめてマスタからの選択にする、Excelなら入力規則で一覧にない値を入れられないようにする、といった方法です。
どれも、存在しないコードや形式の誤ったコードが入る機会を減らす仕組みで、正しい相手を選んだかどうかの確認まで代わりにしてくれるわけではありません。
コードを選ぶと名称と所在地が横に表示され、目で確かめられる形にしておくと、選び間違いにも気づきやすくなります。
取引先との間で同じ識別コードを使えるなら、さらに手間が減ります。
GLNには、取引先間でコード変換表を持たずに情報を直接やりとりできる利点があるとされています2。
相手から届いた注文の得意先コードを、自社のコードへ置き換える対応表を保守する作業がなくなるということです。
ただし、相手がGLNを使っているかは取引先ごとに違うため、使えるかどうかは取引先との確認が前提になります。
また、区分内の変更によって新たなGLNが必要になる場合もあるとされており2、コードが変わったときの連絡と切り替えの扱いを、取引先と決めておく必要があります。
Excel台帳のままでよいか、システム側の対応が要るか
Excelで足りる状態と足りなくなる兆し
ここまでの持ち方は、Excelでも形にできます。
取引先のシートと帳合のシートを分け、帳合のシートに適用開始日と終了日を持たせれば、関係テーブル方式の考え方はそのまま再現できます。
問題は表の形より、その表を誰が、どれだけの頻度で、何か所から触るかです。
紙やExcelの運用では、条件変更の反映漏れや属人化が起きやすく、請求ミスや採算誤差のリスクにつながると指摘されています1。
これは食品業界向けにシステムを提供する事業者の見解で、何件・何人を超えたらExcelでは足りないという数値の線引きは示されていません。
そのため、取引先の件数だけで決めるより、反映漏れが起きる仕組みが自社に当てはまるかで判断する方が確かです。
反映漏れが起きやすくなるのは、主に次のような状態です。
- 帳合先ごとの条件の種類が多い(掛率に加えて、リベート、協賛金、配送条件が帳合先ごとに違う)
- 帳合変更や新規登録の頻度が高く、更新作業が日常的に発生している
- 受注・出荷・請求の担当がそれぞれ別のファイルを持ち、同じ情報を転記している
- 担当者ごとに管理表があり、どれが最新かを人に聞かないと分からない
最後の二つには特に注意が必要です。
Excelのファイルが複数あると、ある担当が帳合を直しても、別の担当のファイルには伝わりません。
受注のファイルから請求のファイルへ帳合先を転記している場合、転記のたびに古い値が残る機会が生まれます。
一つのファイルを共有にしても、複数人が同時に編集する、誰がいつ直したか分からない、という状態になれば、適用日を入れる手順を決めても、守られているかを確かめにくくなります。
取引先が多く条件も分かれる事業者が、取引先別の条件をシステムの設定として持つ例もあります。
各種工業用粘着テープやテープ貼り機器を中心に約3,800品種の製品を提案・販売し、全国約3,000社の販売店と取引する日東電工CSシステム株式会社は、BtoC向けのパッケージでは分納時の納期回答などの仕組みに追加の作り込みが必要だったことから、BtoB向けのEC-Rider B2Bを採用しました3。
このパッケージは、顧客管理・受注管理に加えて、顧客別の卸価格設定や販路設定を標準機能として持っています3。
これは販売店向けのBtoB受発注の仕組みを導入した事例で、帳合マスタの不整合が減ったことを示すものではありません。
取引先ごとに違う価格や販路を、表への手入力ではなくシステムの設定として一か所で持つという方向の一例です。
確認項目と次の一歩
表の右側に当てはまる項目が多いほど、Excelの書式や手順を整えるだけでは、反映漏れの機会を減らしにくくなります。
ただし、システムに移せば食い違いが自動的に解消するわけではありません。
取引先の重複や、適用日の入っていない帳合が残ったまま移せば、同じ食い違いが新しいシステムの中でも続きます。
移す前にマスタを整えておくことが、どちらの道を選ぶ場合にも必要になります。
どちらに進むにしても、最初の作業は同じです。
- 担当者ごとの管理表を集めて名寄せし、同じ相手に1つのコードが付いた取引先の一覧を一つ作る
- 帳合を取引先の行から切り出し、得意先・帳合先・適用開始日・適用終了日を持つ表にする
- 判定に使う日付と、帳合変更・新規登録の手順と担当を決める
この順にするのは、重複が残ったまま帳合の表を作ると、同じ得意先に別々の帳合の行がぶら下がり、後から統合する作業が増えるためです。
この作業を進めると、帳合の数や変更の頻度、帳合を参照している場所の数が見えてきます。
それが、Excelで続けるかシステムへ移すかを決めるための、自社にとって一番確かな判断材料になります。
| 確認すること | Excelの改善で対応しやすい状態 | システム側の対応を検討したい状態 |
|---|---|---|
| 帳合先ごとの条件の種類 | 掛率など少数で、表で一覧できる | リベート・協賛金・配送条件まで帳合先ごとに違う |
| 同じ得意先の帳合先 | 1得意先につき1つの卸 | 商品や期間によって複数の卸を通る |
| 変更と登録の頻度 | まれで、担当者が把握できる | 日常的に発生し、更新が後回しになりがち |
| 帳合情報を参照する場所 | 1つの台帳だけ | 受注・出荷・請求が別々に参照・転記している |
| 触る人の数 | 担当が限られ、更新の手順を守れる | 複数の部署や担当が編集し、最新版が分からない |
取引先ごとに違う価格や販路の条件を受注の仕組みのどこで持つかは、取引先の数や商流によって答えが変わり、台帳を整えるだけでは判断しにくいためです。
取引先別の卸価格や販路の設定を受注管理の中でどう持てるか、いまの台帳からどの情報を移すことになるかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 帳合の持ち方 | 取引先の属性ではなく、得意先と帳合先の関係として別の表で持つ |
| 識別の単位 | 請求先は法人または部門、納品先は場所。分ける必要が出るまでは1件で兼ねてよい |
| 方式の選び方 | 複数の卸を同時に通る得意先や過去分の再計算があれば関係テーブル方式 |
| 帳合変更 | 判定日付を一つに決め、新しい行に開始日、旧帳合の行に終了日。隙間と重なりを作らない |
| 採番と入力 | 意味を持たせない番号、使い回さない、選択入力やチェックデジットで打ち間違いを減らす |
| Excelかシステムか | 条件の種類・同時に通る卸・変更頻度・参照する場所・触る人の数で見る |
取引先の一覧を一つにまとめた後、Excelを続けるかBtoBの受発注の仕組みへ移すかは、確認項目を当てはめても迷いが残りやすいためです。 顧客管理・受注管理と顧客別の価格・販路設定を標準で持つ仕組みで、自社の取引先と条件がどこまで設定で表せ、どこに作り込みが必要になるかを確かめられます。
よくある質問
帳合変更の予定日より前に届いた受注は、新旧どちらの帳合で処理すべきですか。
あらかじめ決めた判定の日付で分けます。
受注日で判定すると決めていれば、予定日より前に受けた注文は、出荷が予定日の後でも旧帳合で処理します。
出荷日や納品日で判定するなら、同じ注文は新帳合になります。
どの日付を使うかは新旧の卸や得意先との取り決めで決まるため、切り替えの連絡の段階で合わせておき、マスタ・受注・請求のすべてで同じ日付を使います。
工程ごとに判定日付が違うと、受注は旧帳合、請求は新帳合というずれがそのまま起きます。
同じ得意先が商品ごとに別の卸を通る場合、マスタはどう持てばよいですか。
帳合の表に「対象の商品区分」の欄を加え、得意先・帳合先・商品区分・適用期間の組み合わせで1行にします。
たとえば、A社のある商品区分は卸Y、それ以外は卸X、という持ち方です。
全商品を対象にした行と特定の商品区分の行が同時にある場合に、どちらを優先するか(商品区分を指定した行を優先する、など)の規則も決めておきます。
取引先の1行に「帳合先1」「帳合先2」と欄を増やす方法は、どの商品がどちらを通るかを別に書く必要が出るため、管理が追いつかなくなりやすい形です。
取引先コードの重複を登録前に見つける運用はどう決めればよいですか。
登録の申請と承認を分け、承認する人が、表記をそろえた名称・所在地・電話番号で既存の登録を検索してから承認する運用が考えられます。
表記ゆれは法人格の位置、全角・半角、空白の違いで起きやすいので、検索の前にそろえる規則を決めておきます。
同じ法人が見つかったら、新しい取引先ではなく部門や場所として追加します。
登録前の確認だけでは見落としが残ることもあるため、名称や所在地が近い取引先を定期的に一覧にして、重複がないかを見直す機会も設けておきます。
社名変更や合併のとき、取引先マスタのコードは変えるべきですか。
社名変更だけで相手の法人が同じなら、コードは変えずに名称を更新し、旧名称と変更日を記録しておく方法が考えられます。
コードを変えると、過去の伝票や請求明細との対応が切れるためです。
合併で法人そのものが変わる場合は、どの法人が残るかによって扱いが変わります。
消える法人のコードは削除せずに取引終了として残し、帳合の行には終了日を入れ、残る法人の側に開始日つきの行を作ると、過去の取引を読み違えずに済みます。
取引先とGLNでやりとりしている場合は、区分内の変更で新たなGLNが必要になる場合があるとされているため2、相手から届くコードが変わるかを取引先に確認します。
Excelの管理表を担当者ごとに持っている状態を、まず何から統一すればよいですか。
取引先の一覧を一つにすることから始めます。
各担当の表を集め、同じ相手が別の名前やコードで登録されていないかを名寄せし、1つの相手に1つのコードを付けた一覧を作ります。
帳合や条件の統一はその後です。
取引先のコードがそろわないまま帳合の表をまとめると、同じ得意先に別々の行ができてしまうためです。
一覧ができたら、どのファイルを正本とするかを決め、他の担当の表はそこを参照する形に変えていきます。
- 1 出典:株式会社内田洋行ITソリューションズ(食品ITnavi)「帳合とは?食品製造・卸・小売業の課題、メリット・デメリットを解説」(2026年)
- 2 出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「GLN(企業・事業所識別コード)」(2026年確認)
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ(EC-Rider)「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(事例掲載時点)
画像の出典元
- A clipboard with delivery papers and a ‘Handle with Care’ sticker on a cardboard box./Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels