◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 多頻度小口で負担が増えるのは受付・入力・確認連絡・変更対応のように注文1件ごとに発生する作業で、まず1件ごとの作業と時間を書き出すことが出発点になる。
- 手間の原因を注文の出方・受付方法・社内手順に振り分けると、条件調整・標準化や電子化・手順見直しのどれが効くかを選べる。
- 取引先の協力が得にくい場合は、社内の転記や出荷指示のまとめ方など、自社内で完結する見直しから着手する。
- 電子化で減るのは主に読む・写す・確かめる作業で、例外対応は残りやすいため、費用や人材の壁を踏まえて自社の作業時間で効果を見積もる。
- 小口注文の採算は、1件あたり粗利から受注処理コストと出荷・配送費を差し引き、取引先ごとに比べて判断する。
目次

多頻度小口の受注で、件数が増えると詰まる作業はどれか
1件の金額は小さいのに注文だけが増え、FAXの転記や確認の電話、出荷指示に追われて、残業や入力ミスが目立ってきた。
そんなときは、人を増やすか電子化するかを決める前に、受付から請求までを注文1件ごとの作業に分けて記録することが近道です。
手間の原因が注文の出方、受付方法、社内手順のどこにあるかが分かれば、取引条件の調整、受付の標準化や電子化、手順の見直しの中から、自社に合う順番で選べます。
電子化には費用や人材の壁もあります。
そのため効果は、自社の件数と作業時間で見積もります。
注文1件ごとに発生する作業の洗い出し
多頻度小口とは、1回あたりの数量や金額が小さい注文が、高い頻度で届く取引のかたちです。
件数が増えると、売上はそれほど伸びないのに忙しさだけが増すと感じやすくなります。
これは、受注側の作業の多くが金額ではなく件数に応じて発生するためです。
同じ量の商品でも、1回でまとめて届く注文より何回にも分かれて届く注文のほうが、受付も入力も確認も回数分だけ増えます。
まず、注文を1件受けてから請求が終わるまでに、担当者が何をしているかを順に書き出します。
受注側の作業を並べると、たとえば次のようになります。
- 受付:電話・FAX・メール・発注画面などから注文を受け取る
- 入力:注文内容を受注台帳や販売管理の画面へ写す
- 確認連絡:品番や数量、納期の不明点を取引先に問い合わせる
- 変更対応:数量の追加や取消、納品日の変更を反映する
- 出荷指示:倉庫や出荷担当へピッキングと発送を指示する
- 請求:納品内容を請求データにまとめ、締めごとに請求書を出す
- 問い合わせ対応:届いたか、いつ届くかといった照会に答える
書き出すときは、作業名だけでなく、1件あたりにかかる時間と、誰が担当しているかを横に添えます。
正確な計測でなくてもかまいません。
ふだんの忙しさの週を選び、注文ごとに受付の時刻と入力が終わった時刻をメモするだけでも、どこに時間が溜まっているかの見当はつきます。
このあと原因を切り分けるときも、取引条件を見直すときも、採算を見るときも、この一覧が出発点になります。
作業一覧の中でどこが重くなりやすいかについては、参考になる調査があります。
食品業の受注業務担当者106名を対象にした2023年の調査では、受注業務の課題として「受注の手入力に手間がかかる」が最も多く、「注文確認のやり取りに手間がかかる」「変更対応に時間がかかる」が続きました2。
どれも、注文が1件届くたびに発生しうる作業です。
ただし、この調査は食品業の受注担当者に限ったオンライン調査で、多頻度小口の取引全体を代表するものではありません。
調査を行ったのは受注管理サービスを提供している事業者でもあります。
そのため、結果は受注担当者が何を負担と感じているかの一例として読むのが妥当です。
自社で同じ作業が重いかどうかは、先ほどの一覧に書き込んだ時間で確かめられます。
件数に比例して増える作業とまとめられる作業
一覧ができたら、各作業を「注文1件ごとに必ず発生するもの」と「何件分かをまとめて処理できるもの」に分けます。
これは調査結果ではなく、件数の増加への打ち手を考えるための整理です。
それでも、こう分けておくと、どこに手を入れるべきかがはっきりします。
件数に比例しやすいのは、受付、入力、確認連絡、変更対応です。
注文が紙やメールで届く限り、1件ずつ読み、1件ずつ打ち込み、不明点があれば1件ずつ問い合わせることになります。
件数が増えれば、これらの作業もそれに応じて増えると見ておくほうが安全です。
一方、出荷指示や請求は、運用次第でまとめられることがあります。
たとえば、出荷指示を午前と午後の締めごとに一括で出す、請求を月の締めでまとめて発行する、といった形です。
そうすれば、件数が増えても作業の回数は締めの回数に近づきます。
問い合わせ対応はその中間です。
出荷状況を取引先が自分で確かめられる手段があれば減りますが、なければ件数とともに増えていきます。
実際の現場では、まとめられるはずの作業が、慣習で1件ずつ処理されている場合もあります。
たとえば、急ぎの注文に合わせて都度出荷指示を出しているうちに、すべての注文を都度処理するのが当たり前になっている、といった状況です。
こうした作業は、取引先に何も頼まず、自社の手順だけで件数比例から外せる可能性があります。
次に見る原因の切り分けでは、社内手順に振り分ける候補になります。
| 作業 | 件数との関係 | 見直しの方向 |
|---|---|---|
| 受付 | 1件ごとに発生 | 受付の窓口と書式をそろえる |
| 入力 | 1件ごとに発生 | 転記の回数を減らす |
| 確認連絡 | 1件ごとに発生しやすい | 注文の記入項目をそろえる |
| 変更対応 | 1件ごとに発生 | 変更の受付期限を決める |
| 出荷指示 | 運用次第でまとめられる | 締めごとに一括で指示する |
| 請求 | 締めでまとめられる | 締め単位で処理する |
| 問い合わせ対応 | 仕組み次第で変わる | 出荷状況を共有する手段を設ける |
原因は注文の出方・受付方法・社内手順のどこにあるのか
注文の出方に原因がある場合
1件ごとの作業と時間が見えてきたら、手間が増えている理由を三つの区分に振り分けます。
注文の出方(発注の単位・頻度・時間帯)、受付方法(電話・FAX・メールからの転記や確認の往復)、社内手順(分担・締め時間・例外対応)の三つです。
この枠は編集部が提案する診断の考え方で、どの数値を超えたらどの区分、という決まった基準があるわけではありません。
それでも、同じ「忙しい」でも原因が違えば効く対策が違うため、振り分けておく意味があります。
注文の出方に原因があるのは、同じ取引先から少量の注文が1日に何度も届くような場合です。
たとえば、ある取引先が在庫を持たないよう、必要な分だけを朝・昼・夕方に分けて発注してくるとします。
受注側から見ると、本来1回で済む注文がいくつにも分かれ、受付・入力・出荷指示がそのたびに発生します。
このとき、受付方法をいくら効率化しても、件数そのものは減りません。
取引先別に、1日あたりの注文回数と1回あたりの数量を並べてみます。
特定の取引先に注文回数が偏っているなら、注文の出方を疑う手がかりになります。
締め時間を過ぎてからの追加注文や、同じ日に何度も届く変更が多い場合も、この区分に入ります。
受付方法に原因がある場合
注文の回数は以前とそれほど変わらないのに1件あたりの処理時間が長い、あるいは件数の増え方以上に作業時間が増えている場合は、受け方を疑います。
電話で聞き取った内容をメモし、それを画面へ打ち直す。
FAXの手書き文字を読み取り、品番を探して入力する。
メールの本文から数量と納期を拾い出す。
どれも、取引先が書いた内容を自社の形式に写し直す作業で、1件ごとに読み違いや打ち間違いの機会が生まれます。
受注手段が一つでないことも、手間を見えにくくします。
先ほどの食品業の受注担当者への調査では、受注手段としてFAXが最も多く挙がり、受注管理システム、メール、電話が続きました2。
複数回答の結果で、一つの職場で複数の手段が併用されている様子がうかがえます。
手段ごとに確認すべき点や転記の手順が違えば、同じ担当者でも、手段を切り替えるたびに作業の流れが変わります。
自社で確かめるときは、受注手段別に1件あたりの処理時間と確認連絡の回数を数えます。
たとえば、FAXの注文だけ確認の電話が多いなら、FAXの注文書に必要な項目が欄としてそろっていない可能性があります。
メールの注文で処理時間が長いなら、取引先ごとに書き方がばらばらで、必要な情報を探すのに時間がかかっているのかもしれません。
どの手段で手間が膨らんでいるかが分かれば、全部を一度に変えなくても、手を付ける場所を絞れます。
社内手順に原因がある場合
注文の出方にも受け方にも目立った偏りがないのに処理が回らない場合は、社内の手順を見ます。
たとえば、受注担当が入力したあと、出荷担当が同じ内容を出荷伝票に書き写し、経理担当が月末に請求データへもう一度入力しているとします。
この場合、1件の注文が社内で三回転記されていることになります。
これは受付方法ではなく、社内で情報を受け渡す手順の問題です。
例外対応のルールがないことも、社内手順に起因する手間です。
締め時間後の注文を受けるかどうか、数量変更をいつまで受け付けるかが担当者の判断に任されていると、そのたびに上長への確認や出荷担当との調整が発生します。
担当者別の処理件数や、例外として扱った注文の件数を数えると、特定の人に判断が集まっていないかが見えてきます。
原因が一つに決まらないこともあります。
その場合は、記録した時間が最も大きい区分から手を付けると考えると、対策を選びやすくなります。
ただし、区分ごとの対策は、取引先に動いてもらう必要があるかどうかで性格が大きく変わります。
| 原因の区分 | 手間の現れ方 | 数えておくもの | 検討する対策 |
|---|---|---|---|
| 注文の出方 | 同じ取引先から少量の注文が何度も届く・締め後の追加が多い | 取引先別の注文回数と1回あたりの数量・時間帯 | 発注単位・頻度・締め時間の調整 |
| 受付方法 | 転記と確認の往復に時間がかかる | 受注手段別の1件あたり処理時間と確認連絡の回数 | 受付の標準化・電子化 |
| 社内手順 | 社内での転記の重複・判断待ち・都度処理 | 担当者別の処理件数と例外対応の件数 | 分担・締め・例外ルールの見直し |
取引条件の調整はどこまでできるか、取引先の協力が得にくい場合はどうするか
発注単位・頻度・締め時間の調整
原因が注文の出方にあるなら、件数そのものを減らす取引条件の調整が選択肢になります。
代表的なのは、最低発注単位を決める、発注の曜日や回数をまとめてもらう、受注の締め時間を設けてそれ以降は翌日扱いにする、といった調整です。
前の節の例でいえば、朝・昼・夕方に分かれていた発注を前日夕方にまとめてもらえれば、受付から出荷指示までの作業が1回分で済みます。
ただし、これは取引先に発注のしかたを変えてもらう施策です。
取引先にとっては、少量ずつ発注できることが在庫を持たずに済む理由になっている場合もあります。
こちらの都合だけで頼めば、負担を押しつける形になりかねません。
交渉の材料になるのは、前の節で数えた取引先別の注文回数と、1件あたりの処理時間です。
まとめてもらえれば出荷の締めに間に合わせやすくなる、問い合わせへの回答を早められる、といった取引先側の利点と合わせて示すと、話を進めやすくなります。
条件調整でどれだけ件数が減るかは、取引先の発注のしかたと、応じてもらえる範囲によって変わります。
見込みを立てるときは、取引先別の注文回数の記録を使います。
たとえば「この取引先の発注が1日1回にまとまったら、月の注文件数がどう変わるか」を、自社の数字で試算します。
取引先の協力が得にくいときの優先順位
取引先の数が多い、立場上こちらから条件を言い出しにくい、取引先側の発注の仕組みが決まっていて変えられない。
こうした事情で、条件調整が進まないこともあります。
そのときは、取引先の協力が要る施策と、自社内で完結する施策を分けて考え、自社内で完結するものから先に着手するのが現実的です。
自社内で完結する施策は、前の節で社内手順に振り分けた手間への対策です。
出荷指示を締めごとの一括にする、社内での転記を一度にまとめる、締め時間後の注文や変更の扱いを社内ルールとして決めておく、といった見直しは、取引先に何も頼まずに始められます。
受付方法についても、受け取ったFAXやメールをどの順で処理し、どこに記録するかをそろえることは、自社だけでできます。
自社の手順を整えたあとに残った手間は、取引先の発注のしかたに由来する部分として説明しやすくなります。
協力をお願いする相手は、全取引先でなくてもかまいません。
注文回数の多い一部の取引先から始めれば、相談の手間も抑えられます。
取引上の留意点
発注単位や締め時間を変えてもらう話は、取引条件そのものの変更です。
受注側から条件を提案する場合でも、取引先との力関係や契約の内容によっては、法令上の配慮が関わってきます。
公正取引委員会が公表した令和6年度の下請法の運用状況では、勧告の対象となった違反行為の類型に、受領拒否、下請代金の減額、不当な経済上の利益の提供要請などが含まれています3。
これらは発注する側の行為として問題になった類型です。
条件の話し合いが、商品の受け取りや代金、負担の付け替えに結びつく場面で問題が生じうることを示しています。
受注側が条件を相談する場面で関わってくるのは、たとえば、締め時間を設けたいと伝えたところ、その代わりに代金を下げるよう求められた、まとめ発注に応じる見返りに別の負担を求められた、といった展開です。
条件の変更が代金や負担の付け替えと結びつきそうなときは、話し合いの経緯と合意した内容を書面で残しておくと、後から内容を確かめやすくなります。
下請法が当てはまるかどうかは、取引の種類や双方の事業者の規模によって決まり、すべての取引に適用されるわけではありません。
制度の内容は改正で変わることもあります。
判断に迷うときは、所管官庁の相談窓口や専門家に、具体的な取引内容を示して確かめるのが確実です。
受付・入力の電子化や標準化で減る作業と、残る作業・障壁
電子化で減りうる作業と残る作業
原因が受付方法にあると分かった場合、手を入れる先は、取引先が書いた注文を自社の形式に写し直す作業です。
ここには、システムを入れる電子化だけでなく、その手前に標準化という段階があります。
標準化とは、注文書の書式や記入項目、受付の窓口をそろえることです。
FAXの注文書に品番・数量・納品日の欄を設けて取引先に使ってもらうだけでも、確認の電話が要る注文を減らせる可能性があります。
ここでいう電子化は、取引先が入力した注文内容を、そのまま自社の受注データとして取り込める状態にすることを指します。
たとえば、取引先が発注画面に入力した内容が受注台帳に入るなら、担当者がFAXを読んで打ち直す転記はなくなります。
品番を選択式にしておけば、品番の読み違いを確かめる問い合わせも起きにくくなります。
減るのは、主に「読む・写す・確かめる」の部分です。
一方で、電子化しても残る作業があります。
取引先ごとの個別単価や特別な納品条件、急ぎの追加、電話で入る変更といった例外は、仕組みの外で人が判断し続けることになりがちです。
また、電子で受ける取引先と、FAXや電話のままの取引先が混在すれば、受付の窓口が一つ増え、二つの流れを見比べる作業が新たに生まれます。
出荷指示や請求が別の画面で動いているなら、受注データをそこへ移す作業も残ります。
そのため、電子化で減る手間を見積もるときは、最初に作った作業一覧に戻り、作業ごとに「なくなる」「減る」「残る」を書き込みます。
電子化に移れそうな取引先の注文が全体のどれくらいを占め、その注文で転記と確認にどれだけ時間を使っているかが分かれば、減らせる時間の上限が見えてきます。
例外注文の割合が高い取引先は、電子化しても手間の多くが残ります。
その場合は、先に例外のルールを決めるほうが効くこともあります。
費用・人材・効果評価の障壁
電子化を検討する段階では、仕組みそのものより、費用や人の問題が壁になることがあります。
主に東京23区内の中小企業を対象にした東京商工会議所の調査では、デジタル化の課題として、費用だけでなく、推進役や使いこなす人の不足、導入効果を評価できないことが挙がっています1。
受発注に限らないデジタル化全般についての回答ですが、受注業務を電子化するときにも、同じ種類の壁に当たることは想定しておいたほうがよいでしょう。
食品業の受注担当者への調査でも、ペーパーレス化が進まない理由として、アナログのやり方に慣れていることが最も多く、導入予算の制約、検討する時間の不足が続きました2。
二つの調査は対象も時期も違うため、数字を並べて比べることはできません。
ただ、費用と並んで、人と時間の問題が挙がっている点は共通しています。
この壁を前提にすると、電子化を考える順序が変わります。
「効果が分からない」という壁は、最初に作業一覧と時間を記録しておけば、自社の数字で答えを出せる部分です。
電子化でなくなる作業の時間を合計し、担当者の時間あたり人件費を掛ければ、毎月どれだけの時間と費用が浮く可能性があるかを見積もれます。
それを導入と運用にかかる費用と比べれば、コスト負担が見合うかどうかを、感覚ではなく比較で判断できます。
推進役や使いこなせる人がいないという壁は、受注担当が1〜2人の職場では、とくに切実です。
日々の注文処理で手一杯の担当者に、仕組み選びと取引先への案内、社内の手順変更までを一人で任せると、検討そのものが止まりがちになります。
誰が取引先に移行を依頼し、誰が新しい画面で届いた注文を確かめるのかを先に決めます。
そのうえで、担当者が処理を続けながら移れる範囲から始めると、移行の途中で受注処理が止まる事態を避けやすくなります。
| 作業 | 標準化で変わること | 電子化で変わること | 残りやすいこと |
|---|---|---|---|
| 受付 | 窓口と書式がそろう | 注文がデータとして届く | FAXや電話のままの取引先の受付 |
| 入力 | 読み取りやすくなる | 転記がなくなる | 例外条件の手入力 |
| 確認連絡 | 記入漏れが減る | 選択式で読み違いが起きにくい | 在庫や納期の個別回答 |
| 変更対応 | 変更の受付期限を示せる | 仕組み次第で画面上の変更に寄せられる | 締め後の電話での変更 |
小口注文の採算の見方と、着手の順序
1件あたりの採算の見方
原因と対策の候補が見えてきても、そもそも小口の注文を今の条件で受け続けてよいのか、という疑問は残ります。
この判断は、注文1件あたりの採算を自社の数字で見ることで、感覚から比較に変えられます。
考え方は単純です。
注文1件あたりの粗利から、1件あたりの受注処理コストと、出荷・配送にかかる1件あたりの費用を差し引きます。
受注処理コストは、最初の作業一覧で記録した1件あたりの処理時間に、担当者の時間あたり人件費を掛けて出します。
受付から請求までの時間を合計するので、確認の電話や変更対応が多い注文ほど、処理コストは大きくなります。
計算結果は、取引先ごと、注文の区分ごとに並べて比べます。
同じ粗利の注文でも、毎回確認の電話が入る取引先や変更の多い取引先では処理時間が延び、差し引きで残る額が小さくなります。
粗利の小さい注文ほど、この処理時間の差で採算が赤字に転じやすくなります。
反対に、注文内容が整っていて確認がほとんど要らない取引先なら、小口でも採算が取れていることもあります。
この計算は考え方を示すもので、業界で決まった基準ではありません。
時間あたり人件費に何を含めるか、配送費を実費で見るか平均で見るかは、自社で決めてかまいません。
ただし、取引先どうしを比べるときは、同じ決め方にそろえます。
採算が合わない注文が見つかったときの選択肢は、取引をやめることだけではありません。
処理時間が長い理由が受付方法にあるなら標準化や電子化、注文の出方にあるなら条件調整というように、前の節までの切り分けに戻って、どの対策で処理コストを下げられるかを考えます。
着手の順序
ここまでの対策を、着手する順にまとめると次のようになります。
- 作業の棚卸しで原因を切り分ける:1件ごとの作業と時間を記録し、注文の出方・受付方法・社内手順に振り分ける
- 自社内で完結する手順を見直す:社内の転記、出荷指示や請求のまとめ方、例外のルールを整える
- 取引先の協力が要る条件調整に進む:注文回数の多い取引先から、発注単位や締め時間を相談する
- 電子化の費用と効果を見積もる:減らせる作業時間と、導入・運用の費用を比べて判断する
この順にしているのは、前の段階の結果が次の判断材料になるからです。
棚卸しの記録がなければ、条件調整を頼むときの根拠も、電子化の効果の見積もりも作れません。
自社の手順を先に整えておけば、残った手間のどこが取引先の発注のしかたや受付方法に由来するのかが、はっきりします。
電子化を最後に置いたのは、後回しにするためではありません。
手順と条件を整えたあとの業務に合わせて仕組みを選んだほうが、業務に合わない仕組みを選んでしまう事態を避けやすいからです。
もちろん、受付方法に原因が集中していることがはっきりしていて、取引先も電子化に前向きなら、電子化の見積もりを早めてかまいません。
順序は固定ではなく、どの原因にどれだけの時間が使われているかで入れ替えるものです。
どの順で進めるにしても、着手前と同じやり方で処理時間を記録し続けておけば、手を打ったあとに何がどれだけ減ったかを自社の数字で確かめられます。
電子化を検討する際に企業が挙げた課題を、多い順に並べると次のとおりです。
作業の記録を取っても、原因が複数の区分にまたがっていると、どれから手を付けるかを社内だけで決めにくいことがあります。
記録した作業と時間をもとに、自社内で先に見直せる手順と、取引先や仕組みの変更が要る部分との切り分けを相談できます。無料相談で要件を整理する
デジタル化を進めるときに企業が挙げた課題
東京商工会議所が主に東京23区内の中小企業を対象に2024年に行い1,218社が回答した調査で、受発注に限らないデジタル化全般の課題として挙げた企業の割合が多い順に並べています。
- コスト負担(31.9%)
- 旗振り役が務まるような人材がいない(31.0%)
- 従業員がITを使いこなせない(26.4%)
- 業務内容に合ったデジタルツール・サービスが見つからない(22.4%)
- 導入の効果が分からない、評価できない(22.1%)
費用よりも人材や効果評価の項目が自社に当てはまるなら、仕組みを比べる前に、作業時間の記録と移行を進める担当者の決定から始めると判断しやすくなります。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 手間の把握 | 注文1件ごとの作業と時間を書き出し、件数に比例する作業とまとめられる作業に分ける |
| 原因の切り分け | 注文の出方・受付方法・社内手順のどこで時間が増えているかを、取引先別・手段別・担当者別に数える |
| 条件調整 | 取引先の協力が要るため、注文回数の多い取引先から、自社の記録を根拠に相談する |
| 電子化 | なくなる作業・残る作業を作業一覧に当て、減らせる時間と導入・運用の費用を比べる |
| 採算 | 1件あたり粗利から受注処理コストと出荷・配送費を差し引き、取引先ごとに比べる |
電子化の費用と効果を比べるには、自社の作業時間と、移行後にも残る例外対応を見積もる必要があります。 作業一覧をもとに、電子化でなくなる作業と残る作業の見通しを確かめられます。
よくある質問
小口注文の受注処理コストは、どう計算すればよいですか。
注文1件について、受付・入力・確認連絡・変更対応・出荷指示・請求・問い合わせ対応にかかった時間を合計し、担当者の時間あたり人件費を掛けます。
採算を見るときは、注文1件あたりの粗利からこの受注処理コストと出荷・配送の1件あたり費用を差し引き、取引先や注文の区分ごとに比べます。
人件費や配送費の算出方法は自社で決めてかまいませんが、比べる相手どうしで同じ決め方にそろえることが大切です。
取引先がFAXや電話をやめない場合、どこから手を付ければよいですか。
受付手段そのものを変えてもらう前に、自社内で完結する見直しから始めます。
受け取ったFAXや電話の内容を記録する様式と処理の順番をそろえ、社内での転記を減らすことは、取引先に頼まずにできます。
次に、確認の電話が多い取引先に、品番・数量・納品日の欄をそろえた注文書を使ってもらうよう相談します。
受付手段がFAXのままでも、確認の往復を減らせる可能性があります。
発注単位や締め時間を取引先に変えてもらうとき、下請法の面で気をつけることは何ですか。
下請法は、取引の種類や事業者の規模によって適用されるかどうかが決まり、すべての取引が対象ではありません。
公正取引委員会が公表した令和6年度の運用状況では、受領拒否や代金の減額、不当な経済上の利益の提供要請が、勧告の対象となった違反類型に含まれています3。
発注単位や締め時間の相談が、代金の引き下げや別の負担と引き換えになりそうなときは、経緯と合意内容を書面に残します。
そのうえで、適用の有無や現行の制度内容を、所管官庁の窓口や専門家に確かめてください。
電子化しても例外注文が多い場合、手間は減りますか。
減るのは、主に定型の注文で、取引先の記載を読んで写し直し、確かめる作業です。
個別単価や特別な納品条件、締め後の電話での変更といった例外は、電子化しても人の判断が残りやすく、例外の割合が高い取引先ほど減る手間は小さくなります。
作業一覧に例外注文の件数と処理時間を記録しておけば、電子化の前に例外の扱いをルール化するほうが効くかどうかを判断できます。
受注担当が1〜2人の場合、まず何を数えて記録すればよいですか。
最初は、注文ごとに受注手段、取引先、受付から入力が終わるまでの時間、確認連絡をしたかどうか、変更があったかどうかを記録すれば足ります。
ふだんの忙しさの週を選んで続ければ、手段別・取引先別にどこで時間がかかっているかの見当がつきます。
細かく測ろうとして処理が滞っては本末転倒です。
注文書の余白に印を付けるなど、処理の流れを止めない方法で十分です。
- 1 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2025年)
- 2 出典:株式会社ハンモック「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年)
- 3 出典:公正取引委員会「令和6年度における下請法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組」(2025年)
画像の出典元
- Close-up of hands typing on a laptop keyboard with documents on a desk, brown long sleeves visible./Photo by MART PRODUCTION on Pexels