◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 仕入先にかかる費用は、単価・運賃・手数料・支払条件・不良や欠品の損失・発注と検収の手間を同じ表に並べ、大きい費目に効く手段を選ぶ。
- 仕様を指定した製造の依頼などは取適法の委託取引に当たり得て、協議に応じず代金を決めることは禁止される。要請を全部受け入れなくても、理由と根拠を十分に説明すれば適法とされる。
- 規格品の購入で取適法の対象外でも、正当な理由のない減額や協賛金の要請は優越的地位の濫用として問題になり得る。
- 費用対効果は、削減前後の同じ長さの期間で、総額と不良率・納期遵守・欠品回数・在庫回転を同じ定義で比べて見極める。
- 切り替えは検査・試作・契約・在庫の移行の負担があるため、他の手段で足りないときの選択肢とする。
目次

仕入先への支払いが重いとき、まず何を総額に入れて数えるか
仕入先への支払いが利益を圧迫していると感じると、まず単価の値下げを考えがちです。
ただ、請求書の単価だけを見ていると、運賃や手数料、支払条件、不良や欠品で生じた損失、発注や検収にかかる手間が抜け落ち、削る場所を見誤ります。
まずこれらを含めた総額で数え、大きい費目に合わせて価格交渉・発注の見直し・支払条件の変更・切り替えから手段を選びます。
値下げや条件変更を求める前には取適法や独占禁止法で問題にならないかを確かめ、削減後は品質・納期・欠品を同じ物差しで比べて、本当に費用対効果が上がったかを見極めます。
単価・運賃・手数料・支払条件を並べる
仕入先にかかる費用を見直すとき、最初に目が行くのは請求書の単価欄です。
単価は品目ごとに数字が並んでいて比べやすく、下げれば支払いが減ることも分かりやすいからです。
けれども、仕入れのために出ていくお金や社内で使う時間は、単価のほかにもいくつもの場所に散らばっています。
単価だけを下げても、送料の条件が変わったり、納品のたびに確認の手間が増えたりすれば、手元に残るお金はかえって減ることがあります。
そこで、仕入れに関わる費用を一枚の表に並べ、どの項目が大きいのかを先に確かめる方法をおすすめします。
ここで挙げる費目は会計上の仕入原価の範囲を定めたものではなく、削る場所を見つけるための管理用の整理です。
決算書の数字と一致しなくても構いませんが、後で削減の前後を比べるときに同じ欄を使えるよう、最初に決めた範囲は途中で変えないようにします。
表の上半分には、仕入先へ直接支払うお金を並べます。
一つ目は単価で、品目ごとの仕入単価と数量を掛けた金額です。
数量によって単価が変わる契約なら、実際に適用された単価で数えます。
二つ目は運賃で、商品代とは別に請求される送料や、急ぎで届けてもらったときの追加分が入ります。
発注額や発注単位によって送料の負担が変わる取り決めがある場合は、発注の仕方次第でこの欄が大きく動きます。
三つ目は手数料です。
振込手数料をどちらが負担しているか、支払手段ごとに別の手数料がかかっていないかを、支払の記録から拾います。
一回あたりは小さくても、発注と支払の回数が多い取引では積み上がります。
四つ目は支払条件で、締め日から支払日までの期間や、現金・手形などの支払手段を書き込みます。
支払条件そのものは支出額ではありませんが、支払いまでの期間が短いほど手元の資金は早く出ていきます。
資金繰りに余裕がない会社にとっては、単価と並べて検討する価値のある項目です。
不良や欠品の損失、発注・検収の手間を足す
表の下半分には、請求書には現れないものの、仕入先との取引が原因で社内に生じている費用を足します。
見落とされやすいのはこちらのほうです。
まず不良の損失です。
届いた商品に傷や数量違いがあれば、仕入先への連絡、返品や交換の手配、検品のやり直しが発生します。
販売した後に不良が見つかれば、お客様への対応も加わります。
次に欠品の損失です。
注文した商品が予定どおり届かず在庫が切れると、売る機会を逃したり、別の仕入先から割高な代わりの品を急いで手配したりすることになります。
どちらも、返品の記録や欠品の記録が残っていれば、回数と対応内容から金額の目安を置けます。
最後に発注と検収の手間です。
発注書を作って送る、納期を問い合わせる、届いた商品を発注内容と突き合わせる、請求書と納品の記録を照合する、といった作業にかかる担当者の時間を、おおまかでよいので見積もります。
正確な計測が難しければ、担当者への聞き取りでも構いません。
大切なのは精度よりも、削減の前後で同じやり方で見積もることです。
たとえば、単価は安いものの納品のたびに数量違いが出て、検収をやり直している仕入先Aがあるとします。
単価だけを見れば、仕入先Aは手放したくない取引先です。
ところが表の下半分を埋めてみると、検収のやり直しと欠品への対応に、毎月かなりの時間を使っていることが見えてくるかもしれません。
このとき削る場所は単価ではなく、納品の正確さや欠品のほうにあります。
業種や取引の形によって、必要な欄は変わります。
保管や加工を外部に頼んでいれば、その費用を独立した欄にしたほうが分かりやすいでしょう。
反対に、自社に関係のない欄は削って構いません。
| 費目 | 何を数えるか | 拾う資料 |
|---|---|---|
| 単価 | 品目ごとの仕入単価と数量 | 請求書・見積書 |
| 運賃 | 商品代とは別の送料・急ぎの配送の追加分 | 請求書・配送の明細 |
| 手数料 | 振込などの手数料のうち自社負担分 | 支払の記録 |
| 支払条件 | 締め日から支払日までの期間・支払手段 | 契約書・取引条件の書面 |
| 不良・欠品の損失 | 返品や交換の対応・代わりの品の手配・売り逃し | 返品の記録・欠品の記録 |
| 発注・検収の手間 | 発注・問い合わせ・検収・請求照合にかかる時間 | 担当者への聞き取り |
単価以外で膨らみやすい費用と、削る手段の選び方
費用の大きさ別の手段の対応
表が埋まると、仕入先にかかる費用のうち、どこが大きいのかが見えてきます。
削る手段は、その大きい費目に効くものを選びます。
手段と費目の対応を取り違えると、交渉に労力をかけたのに総額がほとんど動かない、ということが起こります。
- 単価が総額の大部分を占めている:価格交渉が候補になります
- 運賃や発注・検収の手間が大きい:発注量や発注の頻度を見直します
- 支払いまでの期間の短さが資金繰りを圧迫している:支払条件の変更を検討します
- 不良や欠品の損失が大きい:仕入先の切り替え、または仕入先の集約・分散を検討します
運賃と手間に発注の見直しが効くのは、どちらも発注の回数に比例しやすいからです。
少量ずつ何度も発注していれば、そのたびに送料がかかり、発注書の作成や検収の作業も繰り返されます。
発注をまとめたり、発注する曜日を決めたりすれば回数は減ります。
ただし、まとめて仕入れるほど在庫は増え、置き場所の確保や資金を長く寝かせる負担が出ます。
運賃と手間の減り方と、在庫の増え方を比べて決める必要があります。
仕入先Aの場合、表で大きかったのは検収のやり直しと欠品への対応でした。
ここで単価の値下げを求めても、検収のやり直しは減りません。
むしろ値下げで仕入先Aの余裕がなくなれば、納品の正確さがさらに落ちることもあり得ます。
効きそうなのは、数量違いや欠品の原因を仕入先Aと一緒に調べて納品の仕方を改めてもらうこと、それでも改善しなければ切り替えや別の仕入先との分散を考えることです。
複数の費目が同じくらいの大きさで並ぶこともあります。
その場合は、社内だけで実行でき、取引関係への影響が小さい手段から試すのが無理のない進め方です。
発注の見直しは自社の発注ルールを変えるだけで始められるのに対し、価格交渉や切り替えは相手のある話で、準備にも時間がかかります。
四つの手段を同じ軸で比べる
表に並べた順番は、削減できる額の大きさの順ではありません。
どの手段がいちばん効くかは、最初の表でどの費目が大きかったかで決まります。
この表で読み取ってほしいのは、手段ごとの副作用の出方の違いです。
価格交渉は単価に直接効く一方で、無理に下げれば仕入先が品質や納期の余裕を削る方向に動くおそれがあります。
さらに、四つの手段のなかで法律との関わりがもっとも深い手段でもあります。
支払条件の変更も同じで、支払いを遅らせる方向の変更は仕入先の資金繰りに直接響くため、法律上の制限を受ける場合があります。
この二つを選んだときは、実行の前に法律上の確認を挟むことになります。
発注量や頻度の見直しは、自社の中で完結しやすい手段です。
とはいえ、まとめ発注に合わせて仕入先に保管を頼む、急な発注の変更を繰り返すといった形で、負担を仕入先に移しているだけになっていないかは見ておく必要があります。
切り替えは、不良や欠品の損失をまとめて減らせる可能性がある代わりに、新しい仕入先の品質を確かめる検査や試作、契約の締結、在庫の移し替えといった負担がかかります。
実行の手間がもっとも大きいため、どんなときに切り替えまで進むかは、ほかの手段の結果を見てから判断するのが順当です。
| 手段 | 効きやすい費用 | 品質・納期への影響 | 取引関係への影響 | 実行の手間 | 法的な確認 |
|---|---|---|---|---|---|
| 価格交渉 | 単価 | 無理な値下げは品質や納期の余裕を削るおそれ | 相手の事情を聞かずに進めると悪化しやすい | 根拠の準備と協議 | 委託取引なら協議と説明の義務・正当な理由のない減額 |
| 発注量・頻度の見直し | 運賃・発注と検収の手間 | 直接の影響は小さいが在庫が増える場合がある | 負担を仕入先へ移さなければ小さい | 自社の発注ルールの変更 | 保管などの負担を仕入先へ押し付けていないか |
| 支払条件の変更 | 手元資金の負担 | 直接の影響は小さい | 支払いを遅らせる変更は相手の資金繰りに響く | 契約条件の見直し | 委託取引なら手形・電子記録債権の満期日 |
| 切り替え(集約・分散を含む) | 不良・欠品の損失・単価 | 移行の途中は不安定になり得る | 既存の仕入先との関係が変わる | 検査・試作・契約・在庫の移行 | 新しい取引が委託取引に当たるか |
値下げや条件変更を求める前に、取適法と優越的地位の濫用で確かめること
自社の仕入れが委託取引に当たるかの分かれ目
価格交渉や支払条件の変更を選んだら、実行に移る前に確かめておきたいことがあります。
発注する側が仕入先に値下げや条件の変更を求める行為は、取引の内容や両者の関係によっては、取適法や独占禁止法で問題になるからです。
取適法は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)が改正・改称された法律で、2026年1月に施行されました。
取適法の対象になるのは、製造委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託などの委託取引です1。
仕入れとの関係で分かれ目になるのは、製造委託に当たるかどうかです。
公正取引委員会のQ&Aでは、規格品や標準品を購入することは製造委託に当たらず、仕様などを指定して製造を依頼すれば委託に当たり得る、と整理されています1。
具体的に考えてみます。
仕入先のカタログに載っている既製品を、載っているとおりの仕様で買っているなら、規格品の購入です。
一方、寸法や材質、デザインを自社で指定して作ってもらっている品目は、製造委託に当たる可能性があります。
同じ仕入先との取引でも既製品と特注品が混じっている場合があるため、仕入先単位ではなく品目や契約の単位で見分けます。
仕入れと一緒に加工や運送などの作業を頼んでいる場合は、その部分が別の類型に当たらないかも確かめます。
委託取引に当たる場合でも、すべての発注者が対象になるわけではありません。
委託事業者(取適法で規制を受ける発注側)に当たるかどうかには資本金や従業員数の基準があり、その基準は取引の類型によって異なります。
個別の取引が対象になるかは契約の内容によって判断されるため、迷う場合は公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口で確認するのが確実です。
協議に応じず代金を決めることの禁止
委託取引に当たる場合、代金の決め方には守るべきルールがあります。
仕入先(取適法では中小受託事業者と呼ばれます)から協議を求められたのに応じない、あるいは必要な説明や情報を出さないまま代金を決めることは禁止されています1。
たとえば、原材料費の上昇を理由に仕入先から値上げを求められた場面を思い浮かべると分かりやすいでしょう。
費用を抑えたいからといって、話し合いの場を持たずに従来の代金のまま据え置くことは、このルールに触れるおそれがあります。
一方で、求められた値上げを全部受け入れなければならないわけではありません。
協議の結果、引上げの要請を受け入れない場合でも、その理由や考え方の根拠を十分に説明していれば適法とされています1。
求められているのは、相手の話を聞き、こちらの判断の根拠を示すという手続きです。
説明の根拠として何を用意するかは、会社ごとに違います。
最初に作った総額の表は、自社が仕入れ全体でどの費用を負担しているかを示す材料の一つになり得ます。
ただ、表があるから説明が十分になるわけではなく、相手が示した値上げの理由に対して、自社がどう考えたかを言葉で伝えることが中心です。
協議の日付、相手の要請、自社の回答と理由を記録に残しておくと、後から経過を確かめるときに役立ちます。
支払条件を変えるときにも注意点があります。
手形で支払う場合、支払遅延に当たるかどうかは手形の満期日を支払日として判断されます1。
満期日が支払期日より後に来る電子記録債権も、同じように制限されます1。
つまり、支払期日は守ったように見せながら、手形や電子記録債権で実際の入金を先へ延ばすことはできません。
委託取引で支払いまでの期間を見直す場合は、支払期日のルールの範囲内で考えることになります。
委託取引でない場合の優越的地位の濫用
では、規格品の購入で取適法の対象にならない取引なら、値下げを自由に求めてよいのでしょうか。
そうとは限りません。
独占禁止法には優越的地位の濫用という考え方があり、取引上の立場が強い側が、その立場を利用して相手に不当な不利益を与えることを問題にしています。
公正取引委員会のガイドラインでは、買い手の行為についても問題になる類型が示されています2。
立場が優越しているかどうかは、取引依存度、買い手の市場での地位、取引先の変更可能性、取引額の大きさなどを総合して判断されます2。
資本金の大きさだけで決まるものではありません。
自社が小さな会社でも、ある仕入先の売上の多くを自社との取引が占めていて、仕入先がほかの売り先へ簡単には替えられない事情があれば、その仕入先との関係では優越的地位にあると見られる可能性があります。
問題になる行為として、買い手が正当な理由なく契約で定めた対価を減額すること、協賛金など経済上の利益を無償で提供させることが挙げられています2。
いったん合意した代金から後になって差し引く、費用を抑える名目で仕入先に協賛金の負担を求める、といったやり方は、自社が払う費用は減っても、この類型に当たるおそれがあります。
とはいえ、価格の交渉そのものが禁じられているわけではありません。
対価に係る交渉の一環として行われ、その額が需給関係を反映したものと認められる減額は例外とされています2。
減額の例外に関しては、あらかじめの同意や、相手に通常生ずべき損失の負担といった要件も別に示されています2。
市場の状況を踏まえて代金の水準を話し合うことと、立場の強さを背景に決まった代金を一方的に削ることは、区別して考える必要があります。
二つの資料を合わせると、仕入れが委託取引かどうかで取適法が適用されるかは分かれますが、どちらの場合も、買い手として正当な理由のない減額や不当な負担の要請をすれば問題になり得る、と整理できます。
個々の取引が違法かどうか、自社が基準に当たるかどうかまでは、記事の説明だけでは判断できません。
判断に迷う要請を出す前には、相談窓口を利用することをおすすめします。
| 判断要素 | 自社で振り返る問い |
|---|---|
| 取引依存度 | 仕入先の売上のうち自社との取引が大きな割合を占めていないか |
| 買い手の市場での地位 | その商品の市場で自社が大きな買い手になっていないか |
| 取引先の変更可能性 | 仕入先が自社以外の売り先へ替えにくい事情はないか |
| 取引額の大きさ | 自社との取引額が仕入先にとって大きくないか |
費用を抑えた結果、品質・納期・欠品で損をしていないかをどう見極めるか
削減前に記録する指標
法律上の確認を終えて交渉や条件の見直しを進めると、次に気になるのは、費用を削ったことで別のところに損が出ていないかです。
単価が下がっても、不良が増えて返品の対応に追われたり、納品が遅れて欠品が増えたりすれば、費用対効果はかえって悪くなります。
これを見極めるには、削減に取りかかる前の状態を記録しておく必要があります。
削減した後に慌てて数字を集めても、比べる相手がなければ良くなったのか悪くなったのか判断できません。
記録しておきたい指標を、編集上の例として挙げます。
標準的な定義が決まっているものではないため、自社で定義を決め、削減の前後で同じものを使います。
- 総額:最初に作った表の費目を合計した金額
- 不良率:受け入れた数量のうち、不良として返品や交換をした数量の割合
- 納期遵守:約束した納期どおりに届いた納品の回数の割合
- 欠品回数:必要なときに在庫がなく、販売や作業ができなかった回数
- 在庫回転:一定期間の出庫量が、その期間の平均在庫の何回分に当たるか
総額だけでなく品質や納期の指標も並べるのは、総額の表では見えにくい変化を早めにつかむためです。
不良や欠品の損失は、金額に置き換えるまでに時間がかかったり、見積もりの幅が大きかったりします。
回数や割合で追っておけば、金額の見積もりを待たずに悪化の兆しに気付けます。
在庫回転は、発注をまとめた結果として在庫が膨らんでいないかを見るための指標です。
記録する期間は、削減に取りかかる直前の一定期間とします。
繁忙期と閑散期の差が大きい商売なら、削減後に比べる期間と季節がずれないように選びます。
削減後に同じ式で比べる
削減後は、削減前と同じ長さの期間について、同じ定義・同じ式で指標を出し直します。
見積もりの方法を途中で変えると、指標の差が削減の効果なのか、数え方の違いなのか区別できなくなります。
手間の時間を担当者への聞き取りで見積もったなら、削減後も同じ担当者に同じ聞き方で尋ねます。
仕入先Aとの交渉で単価を下げた場合を考えてみます。
削減後の表で単価の欄が小さくなっていても、検収のやり直しや欠品の回数が増えていれば、手間と欠品の欄が膨らみ、総額は思ったほど下がっていないかもしれません。
反対に、納品の仕方を改めてもらった結果、単価は変わらないのに検収の手間が減って総額が下がる、ということもあり得ます。
どちらの結果になるかは、前後の表を並べてはじめて分かります。
前後の差を読むときは、その差がすべて削減の結果だとは限らない点に注意します。
取り扱う品目の構成が変わった、売上が大きく動いた、といった事情でも指標は変わります。
差が大きいからといって原因を決めつけず、明細や記録を照合して、どの取引でどの費用が増減したのかを確かめます。
悪化が見つかったときの選択肢は、一つではありません。
原因を仕入先と話し合って納品の仕方を改める、変更した条件を元に戻す、それでも改善しなければ別の手段を考える、という順で検討できます。
削減前の記録があれば、仕入先と話し合う際にも、どの指標がいつからどう変わったかを具体的に示せます。
切り替え・集約・分散を選ぶ条件と、状況別の着手順
取引額が大きい・一社に偏る・品質が不安定な場合
ここまでの判断をつなげると、着手の順番は次のようになります。
総額を分解して大きい費目を見つけ、選んだ手段が法律上問題にならないかを確かめてから、交渉や条件の見直しを実行し、削減前と同じ指標で効果を測ります。
測った結果、別の費目が大きく見えてきたら、もう一度総額の分解に戻ります。
これは編集部が提案する進め方で、状況によって重心の置きどころが変わります。
仕入先との取引額が大きい場合は、単価の欄の金額も大きくなるため、価格交渉が有力な候補になります。
ただし、取引額の大きさは優越的地位を判断する要素の一つでもあります2。
取引額が大きい仕入先ほど、交渉の進め方に慎重さが求められます。
相手の事情を聞く場を設け、自社の提示の根拠を示し、協議の経過を記録しておくことが、交渉の結果を守ることにもつながります。
仕入れが一社に偏っている場合は、どちらがどちらに依存しているかで考えることが変わります。
自社がその仕入先に頼り切っている場合、仕入先の欠品や納期遅れがそのまま自社の欠品になります。
このときは、主要な品目の一部を別の仕入先へ分散して、欠品の損失を抑えることが検討に値します。
分散すると発注量が分かれるため、単価や運賃、発注・検収の手間はむしろ増える場合があり、欠品の損失がどれだけ減るかと比べて決めます。
反対に、仕入先の売上の多くを自社との取引が占めている場合は、仕入先から見て取引先を変えにくい関係にあり、値下げの要請は優越的地位の濫用の観点から慎重に扱う必要があります。
品質が不安定な仕入先については、単価の交渉より先に、不良や欠品の原因を一緒に探ることを優先します。
仕入先Aのように、単価は安くても検収のやり直しや欠品で費用が膨らんでいるなら、改善の話し合いで納品の正確さが上がれば、切り替えずに済むかもしれません。
改善を求めても不良率や欠品回数が変わらない場合に、切り替えや集約・分散が現実的な選択肢になります。
集約は、品質の安定した仕入先へ発注をまとめることで、発注・検収の手間や運賃を減らせる可能性がある一方、その仕入先への依存が強まります。
切り替えを選ぶ前に確かめること
切り替えは、不良や欠品の損失をまとめて減らせる可能性がある一方で、新しい仕入先との取引を軌道に乗せるまでに負担がかかります。
品質を確かめるための検査や試作、契約の締結、今の仕入先の在庫の扱いと新しい仕入先への移行など、どれも時間と手間を要します。
移行の途中では、品質や納期がかえって不安定になることもあります。
そのため切り替えは、価格交渉や発注の見直し、改善の話し合いといった他の手段では足りないと分かったときの選択肢と位置づけるのが無理のない考え方です。
切り替えに踏み切る前に確かめておきたいことを挙げます。
- 今の仕入先と、不良や欠品の原因について話し合い、改善を求めたか
- 新しい仕入先の品質と納期を、試作や検査で確かめる手順と期間を決めているか
- 新しい取引が、仕様を指定した製造の依頼など取適法の委託取引に当たらないか
- 今の仕入先の在庫や発注残をどう扱い、いつ切り替えるか
- 削減前の総額と品質・納期・欠品の指標を記録してあるか
最後の項目は、切り替えの成否を判断するために欠かせません。
新しい仕入先の単価が下がったことだけで成功と判断せず、総額と品質・納期・欠品の指標を前の仕入先のときと同じ式で比べてはじめて、費用対効果が上がったかどうかを判断できます。
思うような結果が出なければ、もう一度総額の分解から見直します。
請求書、発注の記録、返品や欠品の記録が別々に管理されていると、総額の表に落とし込む段階で手が止まりやすいためです。
手元の明細をもとに、どの費目から並べ、何を同じ定義で記録しておけばよいかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 総額の数え方 | 単価・運賃・手数料・支払条件・不良と欠品の損失・発注と検収の手間を同じ期間で並べる |
|---|---|
| 手段の選び方 | 単価なら価格交渉、運賃と手間なら発注の見直し、不良と欠品なら切り替え・集約・分散 |
| 取適法の確認 | 仕様を指定した製造の依頼などは委託取引に当たり得る。協議に応じ、理由と根拠を説明する |
| 優越的地位の濫用 | 規格品の購入でも、正当な理由のない減額や協賛金の要請は問題になり得る |
| 効果の見極め | 削減前後で同じ定義・同じ長さの期間の指標を比べ、差は明細で照合する |
| 切り替え | 検査・試作・契約・在庫の移行の負担を見込み、他の手段で足りないときに選ぶ |
削減の手段を選んだ後、前後を比べる指標の定義や期間を決める作業は、社内だけでは基準が揺れやすいためです。 自社の取引に合わせた指標の定義と、削減前に記録しておく範囲を確かめられます。
よくある質問
規格品を買っているだけの仕入れでも取適法は関係するのか
規格品や標準品を購入するだけなら、製造委託には当たりません1。
ただし、同じ仕入先から寸法や材質を指定した特注品も買っている場合、その取引は製造委託に当たり得ます1。
また、取適法の対象外でも、独占禁止法の優越的地位の濫用は問題になり得るため、正当な理由のない減額や協賛金の要請は避けます2。
仕入先から価格協議を求められたら、要求を全部受け入れる必要があるのか
全部を受け入れる必要はありません。
取適法の委託取引に当たる場合、協議に応じず、または必要な説明や情報を出さずに代金を決めることは禁止されていますが、協議の結果として要請を受け入れなくても、理由や根拠を十分に説明すれば適法とされています1。
協議の日付や相手の要請、自社の回答と理由を記録しておくと、経過を後から確かめられます。
支払条件を長くしたいとき、手形や電子記録債権で注意することは何か
取適法の委託取引では、手形払の場合は満期日が支払日として扱われ、満期日が支払期日より後に来る電子記録債権も同様に制限されます1。
支払手段を変えて実際の支払いを先に延ばすことはできないため、支払期日のルールの範囲内で検討します。
委託取引でない場合も、支払いを遅らせる変更は仕入先の資金繰りに響くため、相手と協議して決めることが前提になります。
単価が下がっても総額が上がっていないかを、小さな会社はどう確かめればよいか
専用の仕組みがなくても、表計算ソフトの一枚の表で始められます。
単価、運賃、手数料、支払条件、不良や欠品の損失、発注と検収の手間を削減前の一定期間について並べ、削減後の同じ長さの期間についても同じ欄を埋めます。
手間の時間は聞き取りによる概算でも構いませんが、前後で同じ方法で見積もることが条件です。
差が出たときは、明細を照合して、どの取引で増減したかを確かめます。
一社に偏った仕入先を分散するとき、先に確かめることは何か
まず、自社が仕入先に依存しているのか、仕入先が自社に依存しているのかを見分けます。
自社が依存している場合は、どの品目を分散すれば欠品の損失を抑えられるかを決め、新しい仕入先の品質と納期を試作や検査で確かめます。
発注量が分かれると単価や運賃、発注・検収の手間が増える場合があるため、欠品の損失の減り方と比べます。
仕入先が自社に依存している場合は、取引量を減らすことが相手に大きな影響を与えるため、事前に十分に話し合うことが大切です。