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食材発注で原価はどう変わる?発注側が確認する要因と、最初に見直す順序

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 原価率を押し上げる要因は単価、発注量、検品、ロスに分かれ、発注側はそのいずれにも手を入れる余地がある
  • 実際原価と理論原価を比べ、差が大きければ発注量・保管・検品・使い方を、差が小さく原価率が高ければ単価と取引条件を先に見直す
  • 差の大小は手掛かりであり、原価表の単価、仕入の計上月、棚卸の数え方を照合してから原因を判断する
  • 仕入先は単価だけでなく最低発注数量や納品頻度などを同じ軸で比べ、条件の変更が発注量と在庫に与える影響も見る
  • 発注手段の電子化で実証されているのは業務時間の削減で、原価への効き方は履歴が残り集計や比較が楽になるという間接的なもの

A chef is preparing food in a dimly lit kitchen, focused on presentation.
▽ 写真の出典元

原価率が下がらない理由は、食材発注のどこで生まれているのか

発注のたびに量や仕入先をその日の感覚で決めていて、月末に締めると原価率が思ったより下がっていない。
理由が分からないまま仕入先を替えたり発注の仕組みを入れ替えたりすると、本当に効く対策を見逃しやすくなります。
食材発注で発注側が直接動かせるのは、発注量、仕入先と取引条件、納品時の検品、ロスの把握と使い切りです。
まず棚卸と仕入の記録から実際原価を出し、販売数から求めた理論原価と比べます。
原因が量・単価・手間のどこにあるかを見分けてから、最初の一手を選びます。

発注量・単価・検品・ロスのどれが原価に響くか

原価率は、売上のうち食材の仕入れに使った金額がどれだけの割合を占めるかを表す数字です。
月末に締めると一つの数字として出てきますが、その数字を押し上げる要因は、食材発注の流れのあちこちに分かれています。
仕入先と単価を決める、どれだけ頼むかを決める、届いた品を確かめる、保管して使い切る。
どの段階で余計な金額が生まれたかによって、効く手当ては変わります。

一つ目は単価です。
同じ料理を同じ量だけ出していても、仕入れ単価が上がれば原価はそのまま上がります。
二つ目は発注量です。
多く頼みすぎた分は、使い切れずに劣化したり期限を過ぎたりして、売上に結び付かないまま原価に乗ります。
反対に少なすぎて欠品すると、急ぎの追加発注や代わりの食材で割高な仕入れになったり、その料理を出せずに売上のほうが減ったりします。
どちらに振れても原価率は悪くなるため、発注量は「減らせばよい」という単純な話になりません。

三つ目は検品です。
注文と違う数量や規格の品、傷んだ品をそのまま受け取ると、支払う金額に対して使える量が減ります。
納品書と注文を突き合わせないまま請求を締めると、数量違いや単価の誤りにも気付けません。
四つ目はロスです。
ここでいうロスは、保管中の劣化や期限切れによる廃棄、仕込みすぎ、調理の失敗、レシピより多い盛り付けなど、仕入れた食材が売上にならずに消える分を指します。
ロスは調理場で起きるように見えますが、多すぎる発注や保管しにくい荷姿での仕入れが元になっていることもあります。

食材の廃棄は一店の中では少しずつにしか見えませんが、国の推計では事業者側の課題として数えられています。
農林水産省は、事業活動を伴って発生する食品ロスを事業系食品ロスとし、食品製造業、食品卸売業、食品小売業、外食産業の4業種に分けて推計しています。
令和6年度の推計では、事業系食品ロスは237万tです1。
これは捨てられた食品の量で、原価額や原価率への影響額を示すものではありません。
それでも、外食産業が推計の区分の一つになっていることから、飲食店の廃棄も事業者の取組として把握される対象だと分かります。

発注側が直接動かせるもの

4つの要因のうち、発注する側が自分の判断で変えられる範囲は思ったより広くあります。
発注量は発注担当が決めるものです。
どの仕入先から、どんな条件で買うかも、選び直したり条件を相談したりする余地は発注側にあります。
ただし相手が応じるかは仕入先の事情によるため、ここは「動かせるが、相手がいる」部分です。
検品は納品を受け取る側の作業なので、手順を決めれば店の中で完結します。
ロスの把握と使い切りは調理を担当する人と一緒に取り組むことになりますが、何をどれだけ捨てたかを記録する仕組みは発注側から提案できます。

反対に、食材の相場そのもの、メニューの売価、客数は、発注のやり方だけでは動きません。
原価率が高い理由が売価の設定やメニュー構成にある場合、発注をいくら工夫しても下がり方には限りがあります。
発注の見直しで足りるのか、それとも仕入先の条件や管理の仕組みまで見直すのかという迷いは、この切り分けをしないまま考えても答えが出ません。

農林水産省は、飲食店等の食品ロス削減のための好事例集(第二版)として全57事例を掲載しており、取組を仕入時の工夫、保管時の工夫、食材使いきりの工夫などの区分で整理しています2。
個々の事例の効果は店の条件によって違い、そのまま自店に当てはめることはできません。
ただ、ロスへの手当てが調理の段階だけでなく、仕入れと保管の段階にも置かれていることは、発注側にも手を入れる余地があることを示しています。
どこに手を入れるかは、自店の記録で原価がどこで膨らんでいるかを確かめてから決めるほうが、遠回りに見えて確実です。

発注側が動かせるものと動かせないものの区分(模式図)
店の中で決められるもの、相手がいるもの、発注では動かないものの三つに分けた図

自店の原因が発注にあるかを、手元の記録で見分ける

棚卸から実際原価を出す

棚卸は、ある時点で店にある食材を数え、仕入れた時の単価で金額に直す作業です。
この金額を棚卸高と呼びます。
月の実際原価は、月初の棚卸高に当月の仕入高を足し、月末の棚卸高を引いて求めます。
月の初めにあった食材と、その月に買った食材を合わせ、月末に残っている分を除けば、その月に使ったか失われた食材の金額が残る、という考え方です。

仕入高だけで原価を見ていると、判断を誤りやすくなります。
たとえば月末に翌月分の冷凍品をまとめて仕入れた月は、仕入高が膨らんで原価率が高く見えます。
翌月はその在庫を使うので仕入高が減り、原価率が急に下がったように見えます。
実際には何も改善していないのに、数字だけが上下するわけです。
棚卸で在庫の増減を差し引くと、このずれがならされ、その月に本当に使った食材の金額に近づきます。

棚卸の数字は、数え方がそろっていないと月ごとに比べられません。
毎月同じ日の同じ時間帯、たとえば月末の営業後に数える、開封済みの食材をどう数えるかを決めておく、単価は仕入れた時の価格を使う、といった決め事があると、月ごとの差が数え方の違いなのか実際の変化なのかを見分けやすくなります。
冷蔵庫の奥やバックヤードの数え漏れは、そのまま実際原価のずれになります。

理論原価との差の読み方

実際原価だけでは、原価率が高い理由までは分かりません。
そこで比べる相手として使うのが理論原価です。
理論原価は、メニューごとにレシピ上の食材原価を出しておき、その月の販売数を掛けて合計したものです。
レシピ通りに作り、仕入れた食材を無駄なく使い切った場合の原価、と言い換えられます。
レジやPOSの販売数と、メニューごとの原価表があれば計算できます。

実際原価が理論原価を大きく上回っているなら、仕入れた食材のうち売上に結び付かずに消えた分があると考えられます。
疑う場所は、廃棄、過剰在庫の劣化、検品漏れ、レシピより多い盛り付け、まかないや試作などの記録に残らない使用です。
このうち廃棄と過剰在庫は発注量と保管の問題、検品漏れは受け取りの手順の問題、盛り付けや記録外の使用は調理場の運用の問題として、手を入れる先が分かれます。

差が小さいのに原価率そのものが高い場合は、使い方より買い方や売り方に原因がある可能性が高くなります。
レシピ通りに使えていても、仕入れ単価が高い、原価の高いメニューの販売比率が大きい、売価が原価の上昇に追い付いていない、といった理由です。
この場合に発注量を絞っても、原価率はほとんど動きません。
仕入先と条件の見直しや、メニュー構成と売価の検討のほうが先になります。

ただし、差の大きさはあくまで手掛かりで、それだけで原因は確定しません。
原価表の単価が古いままだと、理論原価が実際より低く計算され、差が大きく見えます。
月末に届いた品の請求が翌月に計上されている、棚卸に数え漏れがある、といった記録側のずれでも差は動きます。
差が大きいと分かったら、まず原価表の単価を最新の請求書と照らし、仕入の計上月と棚卸の数え方を確かめます。
それでも残る差を廃棄や検品の明細で追う、という順で見ると、誤った手当てを避けられます。
理論原価と実際原価を比べるこの方法は公的に定められた手順ではなく、原因を切り分けるための実務上の考え方です。

記録が無い場合の始め方

棚卸も原価表もない状態から始める場合、すべてを一度にそろえる必要はありません。
最初に整えるのは仕入の記録です。
納品書と請求書を仕入先ごと、月ごとにまとめておけば、仕入高はそこから出せます。
次に月末の棚卸を始めます。
最初の月は月初の棚卸高が無いので実際原価は出せませんが、2回目の棚卸を終えた時点で、1か月分の実際原価が出ます。

棚卸の対象も、最初は全品目でなくて構いません。
仕入金額の大きい食材や、捨てることが多いと感じている食材から数え始めれば、作業の負担を抑えながら、原価への影響が大きい部分を先に見られます。
理論原価も同じで、まずは販売数の多い主力メニューから原価表を作ります。
あわせて、何をどれだけ、なぜ捨てたかを書き留める廃棄の記録を始めておくと、発注量を見直すときの材料になります。

差の状態 疑う場所 照合する記録
実際原価が理論原価を大きく上回る 廃棄・過剰在庫の劣化・検品漏れ・盛り付けの多さ・記録外の使用 廃棄記録・納品書と注文・原価表
差は小さいが原価率が高い 仕入単価・メニュー構成・売価 請求書の単価の推移・メニュー別の販売数
記録側のずれが混ざっている 原価表の古い単価・仕入の計上月・棚卸の数え漏れ 最新の請求書・月末納品の計上・棚卸表
差が大きいと分かったときの確認の順序(模式図)
原価表の単価、仕入の計上月と棚卸、廃棄や検品の明細の順に確かめる手順の図

発注量のずれ(過剰発注・欠品)を減らす決め方

発注の基準にする情報

発注量を担当者の感覚で決めていると、多すぎたのか少なすぎたのかを後から確かめる手掛かりが残りません。
同じ担当者でも、前の週に欠品で困れば多めに、廃棄を指摘されれば少なめに振れやすく、ずれの原因を振り返れないまま次の発注を迎えます。
基準を置く目的は、量をぴったり当てることより、外れたときにどの見込みがずれたのかを確かめられるようにすることです。

基準にする情報は、販売実績、予約や宴会の人数、食材の保存性、納品頻度の4つです。
販売実績は、メニューごとの出数を曜日別に見ると、平日と週末の違いを発注量に反映できます。
予約や宴会は、決まっている人数と料理の内容から必要な量をそのまま見積もれます。
考え方としては、次の納品までに使う見込みの量から、いま手元にある在庫を引いた分を頼む、という形になります。

保存性と納品頻度は、どれだけまとめて頼んでよいかを決めます。
葉物や鮮魚のように傷みやすい食材は、納品の回数に合わせて少量をこまめに頼むほうがロスは出にくくなります。
乾物や冷凍品のように保存のきく食材はまとめて頼んでも劣化しにくい一方、在庫が増えるほど置き場所を取り、支払いも先に出ていきます。
安く買えても使う時期が遠ければ、得になるとは限りません。
同じ決め方を全食材に当てはめず、保存性で分けて考えることが、廃棄と欠品の両方を抑えるための前提になります。

予約時の情報は、ロスと発注の両方につながります。
環境省は外食の食品ロス対策として、メニューの小盛や小分け、宴会予約時の食事量の調整を挙げています3。
これは食べ残しを減らすための取組で、仕入れや在庫の管理を扱ったものではありません。
それでも、予約の段階で人数と料理の量を確かめておけば、その数字は仕込み量と発注量を決める根拠にもなります。
予約の受付と発注の担当が別の人なら、予約の内容がいつ発注担当に届くかを決めておくと、見込みでの多めの発注を減らせます。

保管と使い切りの工夫

発注量を合わせても、届いた後の保管と使い方で残りは出ます。
先に届いたものから使えるように置き場所を決める、納品日や開封日を容器に書いておく、といった保管の手順があれば、奥にしまわれたまま期限を過ぎる食材を減らせます。
前に触れた好事例集でも、仕入時の工夫、保管時の工夫、食材使いきりの工夫が並んで区分されており2、発注、保管、使い切りが一続きの問題として扱われています。

使い切りでは、端材や余りそうな食材を、まかないや日替わりの一品に回す、といった逃がし先を決めておく方法があります。
ただ、逃がし先があることを理由に多めに頼むようになると、ロスが別の形で残るだけです。
逃がし先に回った量も記録しておけば、それがいつも出ている食材は、発注量そのものを下げる候補だと分かります。

欠品への備えも、発注量を左右します。
欠品はその場で困るので目立ちますが、廃棄は月末まで表に出にくいため、発注担当は多めに頼む側に傾きやすくなります。
欠品したときに代わりに使う食材や、その日は一時的に提供を止めるメニューをあらかじめ決めておくと、欠品が起きても店の運営が止まりません。
そうすれば、余裕を持たせるための上乗せ分を小さくできます。

廃棄記録で確かめる

発注の基準を置いたら、直近数週間の廃棄記録で当たり外れを確かめます。
記録するのは、日付、食材、量、捨てた理由です。
理由は、期限切れ、保管中の劣化、仕込みすぎ、調理の失敗のように分けておくと、集計したときに手を入れる先が見えます。

同じ食材が繰り返し期限切れで捨てられているなら、発注量か納品頻度が合っていません。
仕込みすぎが多いなら、発注より仕込み量の基準を見直す話です。
調理の失敗が目立つなら、発注や保管ではなく調理場の手順の問題になります。
廃棄とあわせて欠品した日と食材も書き留めておくと、発注量を下げた結果、欠品が増えていないかも同時に見られます。

見直しの効果は、見直す前と後で、実際原価と理論原価の差を比べて確かめます。
宴会の多い時期とそうでない時期では使う量そのものが変わるため、1か月の数字だけで判断せず、数か月続けて差の動きを見るほうが確かです。
差が縮まっていれば、発注量と保管の見直しが効いていると読めます。
差が縮んでも原価率が高いままなら、残る原因は単価の側にあります。

廃棄の理由ごとに手を入れる先(模式図)
期限切れ、仕込みすぎ、調理の失敗の三つの理由ごとに見直す先を分けた図

仕入先と価格を見直すとき、何を比べ、何に注意するか

比べる取引条件

実際原価と理論原価の差が小さいのに原価率が高い、あるいはある食材の請求額が前より増えていると感じたとき、次に見るのは仕入先と条件です。
ただし、見積書の単価だけを並べて安いほうへ移ると、別のところで原価や手間が増えることがあります。
単価と同じ軸で、最低発注数量、納品頻度、納品条件、検品と返品の扱い、価格改定の通知方法を並べて比べます。

判断が分かれやすいのは、最低発注数量と納品頻度です。
単価が安くても、最低発注数量が自店の使う量より大きければ、使い切れない分が在庫になり、保存性の短い食材ではそのままロスになります。
納品の回数が少ない仕入先では、次の納品まで持たせるために1回の発注量が増えます。
単価の差が、これらで生まれる在庫やロスより小さければ、安い仕入先へ移っても原価は下がりません。

納品条件は、配送料の有無、発注の締め時刻、配送の時間帯などです。
締め時刻が早い仕入先では、営業が終わる前に翌日の量を決めることになり、見込みのずれが大きくなりがちです。
検品と返品の扱いは、数量違いや傷んだ品が届いたときに、いつまでに誰へ連絡すれば交換や請求の訂正に応じてもらえるかという点です。
ここが曖昧だと、検品で不良を見つけても損を店が負うことになります。
価格改定の通知方法は、値上げがいつ、どの手段で知らされるかです。
請求書を見て初めて値上げに気付くような状態では、原価表の単価が古いまま残り、理論原価との比較も狂います。

比べるときは、同じ食材を同じ規格・同じ量で、2社以上から数週間分そろえて比べると確かです。
一度の見積りでは、時期による価格の変動や、届いた品の状態の違いが分かりません。
下処理で捨てる部分を除いた使える量の割合を歩留まりと呼びますが、これが仕入先によって違えば、見積書の単価が安くても、使える量あたりの価格は逆転することがあります。

条件を変えたときの副作用

仕入先や条件を変えると、発注量の判断にも跳ね返ります。
最低発注数量が大きい仕入先へ移れば在庫が増え、納品の回数が減れば保存性の短い食材は鮮度が落ちやすくなります。
単価を下げたつもりが、発注量と保管の問題を新たに生む、ということが起きます。
条件を変えたら、発注の基準と廃棄記録の見方も合わせて見直すと、効果を取り違えずに済みます。

仕入先の数にも、増やす側と減らす側それぞれの事情があります。
仕入先を絞れば、発注の手間、納品の受け取り、請求の確認がまとまり、締めの作業は軽くなります。
一方で、比べる相手がいなくなるため単価が妥当かを判断しにくく、その仕入先で欠品が起きたときの代わりもなくなります。
仕入先を増やせば比較の材料と代わりの手段は増えますが、そのぶん締め時刻や請求の形式が増え、確認の手間がかかります。

条件を相談するときは、自店がどの食材を、どれだけの量、どの頻度で買っているかを示せると話が具体的になります。
ここで役に立つのが、先に整えた仕入の記録です。
記録があれば、まとめて頼む代わりに単価を見直してもらえないか、納品の回数を変えられないか、といった相談の根拠を自店の数字で示せます。

比べる条件 確かめる内容 変えたときに影響が出る場所
単価 同じ規格・同じ量での価格と、使える量あたりの価格 原価表と理論原価
最低発注数量 1回に頼む量が自店の使う量に合うか 在庫量と廃棄
納品頻度 週に何回届くか 1回の発注量と鮮度
納品条件 配送料の有無・発注の締め時刻・配送の時間帯 発注を決める時刻と見込みのずれ
検品・返品の扱い 数量違いや傷んだ品の交換・訂正の連絡先と期限 不良品の損を誰が負うか
価格改定の通知方法 値上げがいつ・どの手段で知らされるか 原価表の単価の更新
単価が安くても原価が下がらない場合(模式図)
最低発注数量、納品の回数、歩留まりの違いが、単価の差を打ち消す場合を分けた図

発注手段を変えると、どこまで楽になり、何が前提になるか

確認できる効果の範囲

電話やFAXでの発注は、仕入先ごとにすぐ頼める手軽さがある一方、何をいつ頼んだかが店の側に残りにくい方法です。
電話では聞き違いが起きても記録で確かめられず、FAXでも控えが紙で散らばると、月末に仕入先ごとの請求と注文を突き合わせるのに手間がかかります。
仕入の記録を整えようとしても、その元になる発注の履歴を手作業で集めるしかない、というのが電話・FAX中心の店で起きやすい困り事です。

受発注を電子データでやり取りする仕組みについては、中小企業庁が実証の結果を公開しています。
実証は12プロジェクト、6業界、5地域で行われ、業界は自動車、水インフラ、農林水産、輸出、卸・小売、サービスです4。
この実証では、大企業と比べて中小企業のほうが業務時間の削減率が高く、平均して51.4%の削減効果が得られたとしています4。
その理由として、中小企業のほうが限られた期間でも既存の業務フローを変更しやすく、データ連携に取り組みやすかったことが挙げられています4。

この数字を自店に当てはめるときは、対象の違いに注意が要ります。
実証の6業界に飲食業は明記されていません。
減ったのは受発注にかかる業務時間で、原価や原価率ではありません。
削減が受注側と発注側のどちらの時間かも、公開ページでは明記されていません。
そのため、飲食店が発注を電子化すれば同じだけ時間が減る、原価率が下がる、とは言えません。
言えるのは、企業間の受発注をデータでやり取りする仕組みで、業務時間が大きく減った実証があるというところまでです。

発注手段を変えること自体は、単価も発注量も下げません。
原価管理に効くとすれば、その経路は間接的です。
発注の履歴がデータで残れば、月ごとの仕入高の集計や、仕入先ごとの単価の推移、注文と請求の突き合わせを、紙から拾い直す手間が減ります。
その分、実際原価と理論原価の比較や、仕入先の条件の比較に時間を回せるようになる、というのが発注手段の整理で期待できることです。
届いた品を数えて状態を確かめる検品や、食材を数える棚卸は、発注がデータになっても現場で行う作業として残ります。

導入の前提

発注手段を変えるには、まず仕入先が対応できるかが前提になります。
店側が電子的な発注に切り替えても、電話やFAXでしか注文を受けない仕入先があれば、その分は従来の方法が残ります。
主な仕入先がどの方法で注文を受けられるかを先に聞いておかないと、発注の窓口がかえって増えることになりかねません。

店舗数と、誰が発注を入力するかも前提です。
1店舗で店長が発注している場合と、複数店舗の担当者がそれぞれ発注し、本部が仕入をまとめて確認する場合とでは、仕組みに求めるものが変わります。
締め時刻までに誰がどの端末で入力するのか、入力を忘れたときにどう気付くのかといった運用が決まっていないと、手段だけが変わって手間は減らない、ということも起きます。

実証では、中小企業のほうが既存の業務フローを変更しやすかったことが、削減率の高さの理由として挙げられていました4。
飲食店で同じ結果になるとは言えませんが、発注の手段だけを入れ替えて今の手順をそのまま残すのか、誰がいつ何を頼み、届いた品をどう確かめるかまで決め直すのかは、導入の前に決めておきたい点です。
そこが決まっていないと、新しい仕組みの上で以前と同じ確認を繰り返すことになりかねません。

発注手段の変更が原価管理に届くまでの経路(模式図)
発注の履歴がデータで残り、集計の手間が減り、比較に時間を回せるようになる流れの図

状況別に、食材発注で最初に見直す一手を決める

記録の状態から、手を付ける順を決める

ここまで見てきた見直しは、どれも一度に始める必要はありません。
どれから手を付けるかは、いま手元にある記録と、目立っている困り事で決められます。
記録が無ければ仕入の記録と棚卸から、ロスが目立てば発注量と保管から、単価が気になれば取引条件の比較から、手作業の集計が重ければ発注手段の整理から始める、という順です。
この順は原因の確かめ方から組み立てた提案で、店の規模ごとの効果を測ったものではありません。
どの手から始めても、見直す前後で実際原価と理論原価の差を比べれば、効いたかどうかは自店の数字で確かめられます。

小規模店

店長が発注も調理も兼ねているような小規模な店では、記録を増やすこと自体が負担になります。
そのため最初の一手は、仕入の記録と月末の棚卸を、金額の大きい食材に絞って始めることです。
実際原価が出せるようになるまでは、廃棄を書き留めるだけでも、どの食材を多く頼みすぎているかの手掛かりになります。
発注手段の変更は、記録がそろい、紙の集計が負担だと分かってからでも遅くありません。

発注する人と調理する人が同じであれば、発注の基準と仕込みの量を同じ人が決められるので、廃棄記録で見えたずれをすぐ次の発注に反映できます。
手順を変えるときに調整する相手が少ないことは、小規模店の強みとして使えます。

複数店舗

複数店舗を管理している場合、最初につまずきやすいのは、店ごとに記録の付け方が違って比べられないことです。
ある店の原価率が高くても、棚卸の日や数え方、原価表の単価が店ごとに違えば、それが本当の差なのか記録の違いなのか判断できません。
そのため最初の一手は、棚卸の日と数え方、メニューごとの原価表、発注の基準の書き方をそろえることです。

記録がそろえば、理論原価との差が大きい店とそうでない店が見分けられ、差の大きい店から発注量や検品の手順を見直せます。
仕入先の条件の比較も、店ごとにばらばらに行うより、本部が全店分の仕入量をまとめて比べるほうが、相談の根拠を示しやすくなります。
発注手段の統一はその後で、そろえた手順を全店で同じように回すための手段として考えると、仕組みに何を求めるかがはっきりします。

仕入先が多い場合

仕入先が多い店では、発注の締め時刻や請求の形式が仕入先ごとに違い、月末の確認が重くなりがちです。
最初の一手は、仕入先ごとに扱っている食材と取引条件を一覧にすることです。
取引条件の比較で使った軸で並べると、同じ食材を複数の仕入先から買っていないか、条件の合わない仕入先がないかが見えてきます。

一覧を作ると、集約できる仕入先と、代わりの手段として残しておきたい仕入先の区別がつきます。
そのうえで、注文と請求の突き合わせに時間を取られているなら、発注手段の整理が次の一手になります。
電話やFAXでしか受けない仕入先が残る場合も、店側で発注内容を同じ一覧に書き留めておけば、請求との突き合わせは一か所でできます。

目立つ状況 最初の一手 効いたかを見る記録
記録が無い 仕入の記録と月末の棚卸を始める 2回目の棚卸後の実際原価
ロスが目立つ 発注量の基準と保管の手順を見直す 廃棄記録と理論原価との差
単価が気になる 仕入先の取引条件を同じ軸で比べる 請求書の単価と原価率
手作業の集計が重い 発注手段と発注の手順を整理する 注文と請求の突き合わせにかかる手間
店の体制ごとの最初の一手(模式図)
小規模店、複数店舗、仕入先が多い場合の三つについて、最初の一手を並べた図

自店の記録で原価の膨らみを切り分けようとしても、原価表の単価や計上月のずれが混ざると、どこから見直すかを一人で判断しにくいためです。

いまの発注方法と仕入先ごとの注文の受け方を一緒に整理し、記録の整え方と最初に見直す場所を確かめられます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
原因の切り分け 棚卸で実際原価を出し、販売数から求めた理論原価と比べる
差が大きいとき 原価表の単価・計上月・棚卸を確かめた後、廃棄・過剰在庫・検品・盛り付けを明細で追う
差が小さく原価率が高いとき 仕入単価と取引条件、メニュー構成と売価を見直す
発注量の基準 販売実績、予約や宴会の人数、保存性、納品頻度
仕入先の比較 単価に加え、最低発注数量、納品頻度、納品条件、検品・返品の扱い、価格改定の通知方法
発注手段 効くのは履歴の記録と集計の手間。単価や発注量は下がらない

発注手段を変えるかどうかは、仕入先の対応状況、店舗数、誰が入力するかといった運用によって答えが変わるためです。 主な仕入先の注文の受け方と店内の発注手順を並べ、手段を変える前にそろえておく手順を確かめられます。

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よくある質問

棚卸をしていない店は、何から記録を始めればよいですか。

まず納品書と請求書を仕入先別・月別にまとめ、仕入高を出せる状態にします。
そのうえで月末に、仕入金額の大きい食材から数え始めます。
2回目の棚卸を終えると1か月分の実際原価が出るので、そこから理論原価との比較に進めます。
廃棄の記録も同時に始めておくと、発注量を見直すときの材料になります。

理論原価と実際原価の差が大きいとき、最初に疑うのは何ですか。

廃棄や検品を疑う前に、記録側のずれを確かめます。
原価表の単価が最新の請求書と合っているか、月末に届いた品の請求が翌月に計上されていないか、棚卸に数え漏れがないかを見ます。
それでも差が残れば、廃棄記録と、納品書と注文の突き合わせで原因を追います。
差の大きさだけで原因を決めないことが、誤った手当てを避ける近道です。

仕入先を増やす・減らすと、発注の手間と原価はどう変わりますか。

仕入先を絞ると、発注、納品の受け取り、請求の確認がまとまり、締めの手間は軽くなります。
ただし比べる相手がいなくなり、単価が妥当かを判断しにくく、欠品時の代わりもなくなります。
増やせば比較の材料と代わりの手段は増えますが、締め時刻や請求の形式が増えて確認の手間がかかります。
原価が下がるかどうかは単価だけでなく、最低発注数量や納品頻度による在庫とロスの増減も合わせて見る必要があります。

FAXや電話の発注をやめられない仕入先がある場合、どう運用すればよいですか。

その仕入先の分は従来の方法で発注しつつ、店側で発注内容を、ほかの仕入先と同じ一覧に記録します。
発注の履歴が一か所にあれば、請求との突き合わせと仕入実績の集計は同じ手順で行えます。
仕入先にほかの注文方法へ対応できるかを聞いておくと、切り替えの時期を考える材料になります。

複数店舗で発注のやり方を揃えるとき、先に決めることは何ですか。

棚卸の日と数え方、メニューごとの原価表と単価の更新方法、発注の基準の書き方です。
発注手段より先にこれらをそろえると、店ごとの原価率の違いが記録の違いなのか実際の差なのかを見分けられます。
そのうえで、差の大きい店から発注量や検品の手順を見直します。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:農林水産省「食品ロス量の推計」(令和6年度推計値)
  2. 2 出典:農林水産省「外食における食品ロス対策」(2026年閲覧)
  3. 3 出典:環境省「事業者向け情報(食品ロス)」(2026年閲覧)
  4. 4 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)

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  1. A chef is preparing food in a dimly lit kitchen, focused on presentation./Photo by Leo Sacchi on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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