◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- ディジタル通信モードは2024年1月から段階的に終了済みで、補完策とINSネットは2028年12月31日に提供を終了する(NTT東日本の案内)
- 補完策は伝送遅延と処理時間の増加があるため、締め時刻に余裕のない取引先から見直す
- 通信手順とデータ形式は取引先の標準に合わせ、サーバー機能の持ち方と基幹システムへの取り込み方は自社で選ぶ
- 自社運用・仲介サービス・アウトソーシングは、標準への対応、サーバー機能の担い手、基幹システム連携、運用体制の4つの軸で比べる
- 取引先の一覧化、優先順位付け、並行テスト、旧経路を残した切替の順で進める
目次

自社のEDIはISDN終了のどの段階にあるか:ディジタル通信モードは終了済みで、補完策の期限は2028年末
取引先から「EDIの回線を切り替えてほしい」と案内が来ても、自社の受注が今どの回線で動いていて、いつまで使えるのかが分からなければ動けません。
NTT東日本の案内では、ISDNのディジタル通信モードは2024年から段階的に終了済みです2。
今も通信できているなら「補完策」で動いている可能性があり、その補完策も2028年末に終わります2。
補完策では遅延も生じます。
まず回線の状態と取引先ごとの方式を一覧にします。
そのうえで、通信手順やデータ形式は取引先に合わせ、接続方法と基幹システムへの取り込み方は自社で選ぶ、という切り分けで進めます。
切替済みか未切替かの確認
ISDNの終了は「これから止まる話」と受け止められがちです。
しかしデータ通信については、すでに段階が進んでいます。
NTT東日本の案内では、データ通信に使われてきたINSネットのディジタル通信モードは、2024年1月から地域ごとに段階的にサービスを終了しました2。
切替後のデータ通信は「INSネット上のデータ通信」として提供されており、一般に補完策と呼ばれています2。
そのため、取引先から毎日受注データが届いているという事実だけでは、自社の回線がどちらの状態にあるのかを判断できません。
ディジタル通信モードのまま動いているとは限らず、切替済みの地域で補完策を通っている可能性があるからです。
受注側として最初に押さえたいのは「止まるかどうか」ではありません。
「いまどちらで動いているか」です。
これが分かると、次にやることが二手に分かれます。
補完策へ切替済みであれば、遅延や処理時間の変化が受注業務に出ていないかを点検する段階です。
未切替であれば、自社の地域でディジタル通信モードがいつ終わるのかを確かめます。
そのうえで、それまでに補完策で動かすのか、インターネットEDIへ直接移るのかを決めることになります。
どちらの場合も、最終的な期限は同じ2028年末です。
状態を確かめる手掛かりは、回線の契約先から届いている切替の案内と、EDIの機器やソフトを保守している会社の情報です。
回線の名義と使っている部署が違う会社では、案内が総務部門に届いたまま、受注担当まで伝わっていないこともあり得ます。
契約先へ問い合わせるときは、回線番号ごとに切替済みかどうかを聞くと、取引先別の一覧に落とし込みやすくなります。
なお、ここで挙げている日程はNTT東日本の案内に基づくものです。
西日本エリアで契約している場合は、日程と提供条件をNTT西日本の案内で確かめる必要があります。
2028年12月31日に終わるもの
INSネットそのものの扱いも確認しておきます。
NTT東日本は、INSネット64・INSネット64ライト・INSネット1500の新規申込受付を2024年に終え、サービス提供を2028年末に終了すると発表しています1。
この終了には、2024年から提供している「INSネット上のデータ通信」も含まれます1。
補完策の案内でも、補完策のサービス提供終了は2028年末とされています2。
つまり2028年末は、補完策の期限であると同時に、ISDN回線そのものの提供が終わる日です。
新規の申込もすでに受け付けていないため、回線を申し込み直して従来の方式を続ける道も残っていません。
受注側にとっての期限は「EDIの通信手段を、ISDN以外のものへ移し終える日」と読み替えると分かりやすくなります。
期限から逆算するときは、切替作業そのものより、取引先との調整とテストにかかる時間を多めに見込みます。
移行は自社だけで完結せず、取引先ごとに接続の設定や試験日を合わせる必要があるからです。
取引先が複数あれば、その数だけ調整が発生します。
年末に受注が集中する業種なら、期限直前の切替は繁忙期と重なるため、さらに前倒しで考える必要があります。
補完策のままでは何が起きるか:遅延と処理時間の増加を見る
補完策の遅延は受注業務でどう見えるか
補完策で通信できているなら、期限までそのまま使えばよいと考えたくなります。
ただ、補完策には期限とは別に品質の問題があります。
NTT東日本の案内では、補完策はディジタル通信モードより伝送遅延が生じて処理時間が増え、利用する機器によっては通信に影響が出るとされています2。
EDIサービスを提供するオージス総研も、補完策では通信に時間がかかることを挙げ、インターネットEDIなどへの早めの移行を勧めています5。
受注業務でこれがどう見えるかを、仮の例で考えてみます。
取引先が夕方に発注データを送り、自社は決まった時刻に受信して基幹システムへ取り込み、翌朝の出荷指示を作っているとします。
受信にかかる時間が延びると、取り込み処理の開始時刻までに受信が終わらない、担当者が受信完了を待って残業する、といった形で影響が出ます。
データ量が多い日ほど通信時間は延びやすく、普段は間に合っていても、月末や繁忙期だけ締めに遅れるということも考えられます。
どの程度遅れるかは、使っているEDI機器・ソフトやデータ量によって違い、一律には言えません。
手元で確かめやすいのは、EDIソフトの通信ログです。
切替前後で同じ取引先からの受信にかかった時間を比べると、自社の運用で遅延が問題になる水準かどうかが見えてきます。
機器によっては通信に影響が出るとされている以上、通信エラーや再送が増えていないかも合わせて見ておきたいところです。
通信料の仕組みも変わります。
補完策のデータ通信料は、切替後の加入電話・INSネットの音声通話と同じ全国一律9.35円/3分です2。
通信時間に応じてかかる料金なので、処理時間が延びれば通信料も変わり得ます。
ただし、切替前の料金体系や契約内容は会社ごとに違います。
請求明細の通信時間と金額を切替前後で並べ、実際に増えたかどうかを照らし合わせて判断するのが確実です。
先に見直す取引先の目安
ログと明細を見ると、補完策の影響の出方が取引先によって違うことがあります。
そこで、すべての取引先を一斉に切り替えるのではなく、影響の大きいところから順に見直すという考え方が取れます。
目安になるのは次のような取引先です。
- 受信してから基幹システムへ取り込むまでの時間に余裕がない取引先
- 1回あたりのデータ量が多く、通信時間が長い取引先
- 切替後に通信エラーや再送が起きた取引先
これは受注を止めないための優先順位の考え方で、自社のログで確かめながら当てはめるものです。
締め時刻に余裕がある取引先は、補完策のままでも当面の受注は回るかもしれません。
一方で、余裕がない取引先は、期限より先に遅延のほうが業務の問題になります。
同じ補完策でも、取引先によって急ぐ理由の強さが違うと分かれば、後の切替計画で順番を決めやすくなります。
| 補完策で起きる変化 | 受注業務で影響が出る場面 | 手元で見るもの |
|---|---|---|
| 伝送遅延・処理時間の増加 | 受信が取り込み開始時刻や締め時刻に間に合わない | EDIソフトの通信ログ(切替前後の受信時間) |
| 機器によっては通信に影響 | 通信エラーや再送の発生 | エラー履歴・再送の記録 |
| データ通信料は全国一律9.35円/3分 | 通信時間が延びると通信料も変わり得る | 請求明細の通信時間と金額 |
インターネットEDIに移ると受注側の何が変わるか
回線の置き換えだけでは終わらない理由
補完策を長く使えないとなると、次に浮かぶのは「ISDNをインターネット回線に替えればよいのか」という疑問です。
実際には、回線だけを差し替える移行にはなりません。
オージス総研は、移行先として広域IP網版全銀手順、流通BMS、EDIアウトソーシングサービスを挙げています5。
前の二つは、銀行とのやり取りや流通業界で使われる、業界ごとの標準です。
標準が何を決めているかは、流通BMSを例にすると分かりやすくなります。
流通BMSは、メッセージ(電子取引文書)と、通信プロトコル・セキュリティの両方を定めたEDIの標準仕様です4。
通信プロトコルとは、データをやり取りするときの接続や送受信の取り決めのことです。
つまり移行では、どの回線を使うかに加えて、どんな手順でつなぎ、どんな形のデータを受け取るかも新しい標準に合わせることになります。
受注側の作業に引き寄せると、影響が出るのは受信したデータを基幹システムへ取り込む部分です。
これまで受け取っていた受注ファイルと新しい標準のメッセージでは、項目の並びや表し方が違うことがあります。
そうなると、受信データの項目を自社の受注データのどの項目に当てはめるかという対応付け(マッピング)を作り直す必要が出てきます。
品番の桁数や納品先コードの持ち方が変わるだけでも、取り込み時のエラーにつながります。
流通BMSは、2025年6月1日時点で導入企業が21,600社以上とされています4。
流通業の取引先から切替の案内が来た場合、移行先としてこの標準を指定されることは十分に考えられます。
一方で、取引先が流通業以外であれば、別の標準や取引先独自の接続方法を案内されることもあります。
どの標準になるかは、自社が選ぶというより、取引先の業界と案内で決まる部分です。
取引先の業界が複数あると移行先も複数になる
受注側が複数の業界と取引していると、ここで話が少し複雑になります。
流通業の取引先とは流通BMS、銀行とのやり取りは広域IP網版全銀手順、というように、取引先ごとに移行先の標準が分かれるからです。
中小企業向けには中小企業共通EDI標準もあり、取引先がこれを採用していれば、そちらに合わせることになります3。
これまでISDN回線で受けていた受注の入口が、移行後は標準ごとに分かれる可能性がある点は、計画の早い段階で意識しておきたいところです。
| 項目 | 従来型EDI(ISDN) | インターネットEDI |
|---|---|---|
| 回線 | ISDN回線(INSネット) | インターネット回線 |
| 通信の手順 | 従来の通信手順 | 業界標準の手順(例:流通BMS、広域IP網版全銀手順) |
| 受け取るデータの形 | これまでの受注ファイル | 標準で定められたメッセージ(電子取引文書) |
| 受注側の作業 | これまでの取り込み設定 | 項目の対応付け(マッピング)の見直し |
取引先の指定に従う部分と、自社で選べる部分
通信手順とデータ形式は取引先に合わせる
では、受注側はすべて取引先の言う通りにするしかないのでしょうか。
答えは部分によって違います。
通信手順とデータ形式は、送る側と受ける側が同じ取り決めを使わなければ通じません。
そのため、発注側である取引先が案内する標準や接続方法にほぼ従う部分です。
取引先にとっては受注側ごとに形式を変えるほど運用が増えるため、一社だけ別の形式にするのは難しいと考えておくのが現実的です。
ここで受注側がすべきことは、案内の内容を自社の作業に置き換えることです。
どの標準を使うのか、接続はどちらから行うのか、テストの日程と本番切替の予定日はいつか、電子証明書を使うのか、といった点を案内から読み取ります。
分からない点は早めに取引先へ問い合わせます。
案内が届いた時点でこれらを整理しておくと、次に考える「自社で選べる部分」の判断材料がそろいます。
接続の持ち方と社内への取り込み方は自社で選ぶ
自社で選べるのは、取引先とどうつながるかの持ち方と、受け取ったデータを社内でどう使うかです。
前者に関わるのがサーバー機能の考え方です。
ここでいうサーバー機能は相手からの接続を受け付ける側の機能、クライアント機能は自分から相手へ接続しにいく側の機能を指します。
オージス総研の解説では、取引先との間にはサーバー機能が必要で、両社ともクライアント機能しか持たない場合は直接つながらず、仲介サービスが要るとされています5。
たとえば取引先がサーバー機能を用意していれば、受注側はクライアントとして接続しにいけばよく、自社で受付の仕組みを持つ必要はありません。
反対に、取引先もクライアントとして接続する前提であれば、自社でサーバー機能を持つか、間に仲介サービスを入れるかを選ぶことになります。
この整理は事業者の解説に基づくもので、標準や取引先の接続方式によっては当てはまらない場合もあります。
取引先の案内で接続をどちらから行うのかが分かれば、自社の選択肢はかなり絞り込めます。
もう一つの選択が、受信した受注データの取り込み方です。
受信したファイルを担当者が開き、受注番号・品番・数量・納期を受注画面へ打ち直している会社なら、移行を機に基幹システムへの自動取り込みを検討する余地があります。
取り込みがつながれば、この打ち直しの作業はなくなります。
一方で、単価が取引先との取り決めと合っているか、在庫や納期に無理がないかといった確認は残ります。
取り込み後に誰がどの画面で何を確認するかは、あわせて決めておく必要があります。
受注側の負担については、中小企業庁のミラサポplusが、中小企業共通EDI標準を導入する受注側は、同標準に対応したプロバイダーと業務アプリを使うだけで済み、大きな費用はかからないと紹介しています3。
ただしこれは2020年時点の、中小企業共通EDI標準に限った説明で、具体的な金額は示されていません。
流通BMSなど他の標準で受注側の負担がどうなるかは、この記述からは言えません。
費用の見通しは、取引先が指定する標準と、自社が選ぶ接続・取り込み方の組み合わせで個別に見積もることになります。
| 区分 | 内容 | 受注側がすること |
|---|---|---|
| 取引先に合わせる部分 | 通信手順・データ形式(業界標準) | 案内から標準・接続の向き・日程・証明書の有無を読み取る |
| 自社で選ぶ部分 | サーバー機能を自社で持つか、仲介サービスを使うか | 取引先側にサーバー機能があるかを確かめて選ぶ |
| 自社で選ぶ部分 | 受注データの基幹システムへの取り込み方 | 打ち直しをなくすか、取り込み後の確認を誰が行うかを決める |
移行方法の選択肢を同じ軸で比べる:自社運用・仲介サービス・アウトソーシング
三つの進め方と比べる軸
自社で選べる部分をどう組み合わせるかで、移行の進め方はおおむね三つに分かれます。
一つ目は、EDIソフトを自社で持ち、必要ならサーバー機能も自社で用意して、取引先ごとの接続を自社で設定・保守する「自社運用」です。
二つ目は、取引先との間に事業者のサービスを挟み、接続の受け皿をそこへ置く「仲介サービス」です。
三つ目は、接続からデータの変換、日々の運用までを外部へ任せる「アウトソーシング」です。
オージス総研は、EDIアウトソーシングを長い目で見たときに有効な戦略と位置づけています5。
ただしこれはサービスを提供する事業者の見方で、どの進め方が合うかは会社の条件で変わります。
比べるときは、取引先の標準に対応できるか、サーバー機能を誰が持つか、基幹システムとどう連携するか、運用を誰が担うか、の4つの軸をそろえると違いが見えやすくなります。
表のどこで判断が分かれるか
表の中で判断が分かれやすいのは、取引先の数と方式のばらつき、それに社内でEDIを見られる人がいるかどうかです。
取引先が少なく、相手がサーバー機能を用意している場合は、自社運用でクライアント機能を持つだけで足りることがあります。
取引先が複数あり、指定される標準や接続の向きがそろわない場合は、自社で一つずつ対応するより、仲介サービスに受け皿をまとめるほうが社内で持つ設定は少なくて済みます。
運用体制の軸も見落とせません。
自社運用では、接続設定、証明書の更新、通信が止まったときの調査を社内の誰かが担うことになります。
担当者が一人しかおらず、その人が不在になると原因を追えない体制なら、運用まで外部に任せる選択には意味があります。
反対に、社内にシステム担当がいて基幹システムへの取り込みも自前で作れるなら、自社運用の自由度を生かせます。
費用はこの表に入れていません。
料金は提供者ごとに体系が違い、取引先の数やデータ量でも変わるためです。
見積もりを比べるときは、取引先の数、指定された標準、月あたりの受注件数、基幹システムへの取り込みをどこまで含めるかを同じ条件にそろえて依頼します。
そうすると、金額の差が何から来ているのかを読み取りやすくなります。
| 比較の軸 | 自社運用 | 仲介サービス | アウトソーシング |
|---|---|---|---|
| 取引先標準への対応 | 自社のEDIソフトが対応する標準に限られる | サービスが対応する標準の範囲で受けられる | 委託先が対応する標準の範囲で任せられる |
| サーバー機能の担い手 | 必要なら自社で用意する | 仲介サービス側が受け皿になる | 委託先が用意する |
| 基幹システム連携 | 取り込み設定を自社で作る | サービスから受け取るデータを自社で取り込む | 変換まで任せ、取り込み方を委託先と決める |
| 運用体制 | 接続・証明書・障害対応を社内で担う | 接続の受け皿は任せ、社内の取り込みは自社で担う | 運用の多くを外部に任せ、社内は窓口と確認を担う |
取引先を止めずに切り替える順序とテスト
取引先の一覧化と優先順位
進め方の方向が見えたら、次は取引先を止めずに順番に切り替える計画です。
ここからは、受注を止めないための進め方の一つとして提案します。
最初に作りたいのは、取引先ごとの状態を一枚で見渡せる一覧です。
項目としては、取引先名、使っている回線とその状態(補完策へ切替済みか)、現在の通信手順とデータ形式、受信の時刻と社内の締め時刻、取引先からの切替案内の有無と移行先の標準、電子証明書の有無と有効期限、取引先の技術窓口、といったものが考えられます。
一覧ができたら、優先順位を付けます。
まず、取引先から切替日を指定されている先です。
相手の予定に合わせる必要があり、自社の都合で後ろへずらせないからです。
次に、補完策の遅延が締め時刻に響いている先です。
期限より先に業務の問題になっているため、早く移すほど受注担当の負担が減ります。
残りの取引先は、取引先側の予定を問い合わせながら順番を決めていきます。
案内がまだ来ていない取引先を後回しにしすぎないことも大切です。
相手の準備が遅れると、期限が近づくほど試験日の調整が難しくなります。
案内が来ていない取引先には自社から移行の予定を尋ねておくと、全体の見通しが立ちやすくなります。
並行運用と切替日の確認
取引先ごとの切替は、新旧の経路を並行させてから移すのが基本の考え方です。
まず新しい経路で取引先からテスト用の受注データを受信し、基幹システムへ取り込めるかを確かめます。
次に、旧経路で受けた同じ期間の受注と新経路で受けたデータを突き合わせ、件数、品番、数量、納期が一致しているかを見ます。
マッピングに誤りがあれば、この突き合わせで差として表れます。
切替日には、旧経路をすぐに止めず、新経路での最初の本番受信と取り込みが終わるまで残しておきます。
初回の受注が正しく取り込まれ、出荷指示まで作れたことを確かめてから旧経路を止める段取りにすると、新経路で問題が出たときに戻る先が残ります。
ただし補完策自体が2028年末で終わるため、旧経路に戻れる期間には限りがあります。
電子証明書を使うEDIでは、もう一つ確認があります。
電子証明書は通信相手を確かめるための電子的な証明書です。
1〜3年程度で更新が必要になり、更新時には新旧の証明書が重なるオーバーラップ期間に両方を管理する必要があるとされています6。
この指摘は2019年の記事のものですが、切替のときにも新旧の証明書が同時に存在する場面は起こり得ます。
一覧に証明書の有効期限を入れておけば、切替の時期と更新の時期が重なっていないかを事前に見ておけます。
切替後に受注が止まったとき、方式が混在するときの運用
受注が届かないときに備えて決めておくこと
切り替えた直後に、朝になっても前日分の受注が取り込まれていない、という事態は想定しておきたいところです。
このとき困るのは、原因が自社の受信側にあるのか、取引先の送信側にあるのか、すぐには分からないことです。
誰に連絡し、何を頼めばよいかを探しているうちに、出荷指示を作る時刻が過ぎてしまいます。
そこで、切替前に次のことを決めておくことを提案します。
- 旧経路へ戻せる期間と、戻すかどうかを判断する人
- 取引先ごとの技術窓口と、時間外の連絡方法
- 受信できなかったときの再送依頼の手順
- 受信が完了したかを確認する時刻
これらを一覧の取引先ごとの行に書き添えておけば、受注が届かないときに、担当者が連絡先や手順を探し回る時間を減らせます。
障害そのものを防ぐ仕組みではありませんが、止まったときに最初の一手を迷わずに打てるようになります。
再送で間に合わない場合にその日の受注をどの手段で受け取るかも、取引先と事前に話しておくと判断が早くなります。
方式が混在する期間の運用
取引先を順番に切り替えていく以上、しばらくは旧方式と新方式、さらに複数の標準が並ぶ期間が続きます。
受注担当から見ると、取引先によって受信の時刻も、見る画面も、エラーの出方も違う状態です。
この期間は、最初に作った一覧を運用表として使い続け、どの取引先がどの方式で、いつ受信するのかを担当者全員が同じ表で見られるようにしておきます。
取引先ごとに覚えておく必要がなくなる分、確認漏れを防ぎやすくなります。
切り替える取引先が増えるにつれて、接続の設定や確認の手間が社内で回らなくなることもあります。
そうなったときは、仲介サービスやアウトソーシングへまとめるかどうかを改めて判断する場面です。
判断の材料は、残りの取引先の数と、2028年末までに残された時間、そして社内で担える作業量です。
最初に自社運用を選んでいても、途中で進め方を見直すことは不自然ではありません。
指定される標準と自社の受注の取り込み方は取引先ごとに組み合わせが違い、どの進め方が合うかは社内だけでは決めにくいためです。
取引先の一覧と現在の受注の流れをもとに、取引先に合わせる部分と自社で選べる部分を切り分け、どこから着手するかを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 期限 | 補完策・INSネットとも2028年末に提供終了(NTT東日本の案内) |
| いまの状態 | 回線ごとに補完策へ切替済みかを確かめる |
| 先に見直す取引先 | 切替日を指定された先、補完策の遅延が締め時刻に響く先 |
| 取引先に合わせる部分 | 通信手順・データ形式(業界標準) |
| 自社で選ぶ部分 | サーバー機能の持ち方、仲介の有無、基幹システムへの取り込み方 |
| 切替の進め方 | 並行テストで突き合わせ、旧経路を残して切り替える |
取引先ごとの切替時期や並行運用の段取りは、期限が近づくほど調整の余地が減るためです。 切替の順番、並行テストでの突き合わせ方、受注が届かないときの連絡手順を、自社の取引先に合わせて確かめられます。
よくある質問
自社のEDIが補完策で動いているかどうかは、どう確認すればよいですか。
回線の契約先から届いている切替の案内と契約内容、EDI機器・ソフトの保守先の情報が手掛かりです。
回線番号ごとに切替済みかどうかを契約先へ問い合わせると確実です。
あわせて、EDIソフトの通信ログで切替前後の受信時間を比べると、遅延の影響が出ているかも見えてきます。
取引先ごとにEDIの標準が違う場合、受注側はすべてに対応する必要がありますか。
取引を続ける取引先については、その取引先が指定する標準に合わせる必要があります。
通信手順とデータ形式は、送る側と受ける側が同じでなければ通じないためです。
対応する標準が多く社内で回らない場合は、仲介サービスやアウトソーシングに受け皿をまとめる方法があります。
電子証明書を使うEDIで、切替時に新旧の証明書をどう扱えばよいですか。
電子証明書は1〜3年程度で更新が必要で、更新時にはオーバーラップ期間に新旧の証明書を両方管理する必要があるとされています6。
取引先の一覧に証明書の有効期限を入れ、切替の時期と更新の時期が重ならないかを事前に確かめておくと、取引先との調整がしやすくなります。
取引先から切替の案内が来ていない場合も、自社から動いたほうがよいですか。
動いたほうがよいと考えます。
補完策とINSネットは2028年12月31日に提供を終了するため2、取引先の準備が遅れるほど試験日の調整が難しくなります。
自社の回線の状態を確かめたうえで、取引先に移行の予定と移行先の標準を尋ねておくと、計画を前倒しで組めます。
西日本エリアの場合、期限や補完策の扱いは同じですか。
この記事で示した日程と補完策の条件は、NTT東日本の案内に基づくものです。
西日本エリアの日程と提供条件は、NTT西日本の案内や契約先への問い合わせで確かめてください。
- 1 出典:東日本電信電話株式会社(NTT東日本)「「INSネット」の新規申込受付終了及びサービス提供終了について」(2024年)
- 2 出典:東日本電信電話株式会社(NTT東日本)「INSネット(ディジタル通信モード)サービス終了のご案内」(2024年)
- 3 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 4 出典:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)「流通BMS」(2025年)
- 5 出典:オージス総研「IP網とは|移行の影響、INS補完策、EDIに関するQ&A」(掲載年不明)
- 6 出典:マイナビ ニュース(TechPlus)「今だから知っておきたい、ISDN終了問題とEDI移行作業のポイント」(2019年)
画像の出典元
- An office worker takes notes while working at a desk with a laptop and documents./Photo by Anna Tarazevich on Pexels