◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 取適法は2026年1月から施行済みで、対象取引での手形払いは禁止されている
- 電子記録債権やファクタリングは、中小受託事業者が支払期日までに満額を得られるかで、残すかどうかが決まる
- 対象判定は取引類型ごとに行い、従業員基準(製造委託等300人、役務提供委託等100人)を含めて取引先マスタに記録する
- 支払期日は受領日から60日以内とし、振込手数料は合意があっても代金から差し引かない
- 改修と運用ルールの振り分けは、現状の発注・支払データを抽出してから決め、銀行の手形交換廃止は別の制度として取引銀行に確認する
目次

発注画面に手形払いが残っている――取適法の対象になるのは誰の、どの取引か
発注画面の支払方法の候補に「手形」が残っていて、このまま発注を通してよいのか迷う場面です。
取適法(旧下請法を改正した法律)は2026年1月にすでに施行されています。
手形払いは禁止され、電子記録債権やファクタリングも、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものは禁止です。
まず取引類型ごとに取引先の対象判定を行い、支払手段は銀行振込を既定にします。
電子記録債権などは、満期日と割引料の負担の条件を満たす場合に限って残します。
改修で止めるか運用ルールで止めるかは、いまの発注・支払データを抽出してから決めます。
取適法の位置づけと施行日
取適法は、下請代金支払遅延等防止法(旧下請法)を改正した法律の略称です。
改正法は2025年に成立し、2026年1月から施行されています4。
新しい法律では、発注して代金を支払う側を「委託事業者」、注文を受けて製造や作業を引き受ける側を「中小受託事業者」と呼びます。
受発注システムで発注書を出し、支払を確定させる側は委託事業者にあたります。
公正取引委員会は主な改正点として、協議に応じない一方的な価格決定の禁止、手形払等の禁止、従業員基準の追加、特定運送委託の追加などを挙げています4。
このうち受発注システムの設定に直接表れるのは、支払手段と支払期日の扱い、そして取引先が対象に入るかどうかの判定です。
施行が済んでいることは、作業の順序に影響します。
「いつまでに準備するか」を考える段階ではありません。
今日出す発注と、次の支払日に流れる支払データが、そのまま通ってよい状態かどうかを見る段階に入っています。
手形の選択肢が画面に残っているだけなら設定の問題で済みますが、実際に手形で支払った記録があれば、取引先との調整も必要になります。
どちらに当たるかで、急ぐ作業が変わります。
取引類型と従業員基準で見る対象判定
対象になるかどうかは、二つの問いの組合せで決まります。
一つは、何を頼んでいるか(取引類型)です。
部品の製造を頼む製造委託等なのか、作業やサービスを頼む役務提供委託等なのか、今回の改正で加わった特定運送委託なのかを見ます4。
もう一つは、事業者の規模です。
規模の判定には従来の資本金の区分があり、改正でそこに従業員数の区分が加わりました。
製造委託等では従業員数300人、役務提供委託等では100人の区分が新設され、規制と保護の対象が広がっています1。
つまり、資本金だけで見て対象外と整理していた取引先が、従業員基準によって対象に入ることがあります。
受発注システムで影響が出やすいのは、取引先マスタに「下請法対象」のようなフラグを持たせ、何年も前に資本金だけで判定したまま運用している場合です。
フラグが「対象外」のままだと、その取引先への発注では手形や長い支払サイトが選べてしまいます。
画面上は何の警告も出ないため、担当者は問題に気づけません。
資本金区分の具体的な数値と、どの規模の組合せが対象になるかの線引きは、公正取引委員会の法令・ガイドブックで確認してください。
個々の取引が対象かどうかも、契約の内容によって当てはめが変わります。
システムの側で準備できるのは、判定に必要な値をそろえておき、判定をやり直せる状態にすることです。
取引先マスタに持たせる判定項目
判定を担当者の記憶に頼らないために、取引先マスタへ次の項目を持たせる方法があります。
- 取引類型(製造委託等、役務提供委託等、特定運送委託など)
- 資本金
- 従業員数
- 判定結果と判定日
- 判定に使った値の出所(取引先からの申告、登記情報など)
ここで注意したいのは、判定の単位を取引先ではなく取引類型ごとにすることです。
従業員基準は製造委託等が300人、役務提供委託等が100人と、類型によって数値が違います1。
たとえば同じ取引先に、部品の製造と設備の保守作業の両方を頼んでいる場合を考えます。
どちらの類型で見るかによって、当てはめる基準が変わります。
取引先単位のフラグ一つでは、この違いを表せません。
判定日を残しておくのは、従業員数や資本金が変わるからです。
判定時点の値と日付が残っていれば、取引先から規模の変更を知らされたときに、どの判定を見直せばよいかがすぐ分かります。
システムに値の項目があることと、その値を使って自動で判定する機能が実装されていることは別の話です。
まずは項目を持ち、判定は法令に照らして人が行い、結果を記録する形から始めても十分に役立ちます。
手形は禁止、電子記録債権・ファクタリングは「満額を支払期日までに」が条件
手形払いの扱い
対象取引であると判定できたら、次は支払手段です。
改正法では手形払が禁止されました1。
運用基準でも、手形の交付は支払遅延に該当すると整理されています3。
満期までの期間が短い手形なら例外になる、という扱いはありません。
そのため、対象取引の発注で手形を選べる経路は、システム上に残しておく理由がありません。
支払期日そのものにも決まりがあります。
支払期日は、物品などを受け取った受領日から60日以内で、できる限り短い期間に定める必要があります3。
手形の選択肢を消しても、支払サイトの設定が長ければ別の形で問題が残ります。
この点は次の節で、支払条件マスタの設定として扱います。
電子記録債権で問題になる条件
電子記録債権は、債権の発生や譲渡を電子的に記録する仕組みで、手形に代わる支払手段として使われてきました。
改正法は、電子記録債権やファクタリングについても、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものを禁止しています1。
判断の軸は、受け取った中小受託事業者が、支払期日の時点で代金の満額を現金として手にできるかどうかです。
具体的な場面で考えます。
受領日から50日後を支払期日にしたうえで、満期日がそこからさらに60日後の電子記録債権を渡したとします。
受託側が支払期日に現金を必要とすれば、満期日を待たずに割引を受けるしかありません。
割引料の分だけ受取額が減るため、支払期日に満額を受け取れない状態になります。
公正取引委員会のQ&Aでは、支払期日より後に満期日が来る電子記録債権で割引を受ける必要が生じれば、支払遅延に該当するとされています2。
一方で、同じQ&Aは、委託事業者が割引料を負担し、中小受託事業者が満額を支払期日に受け取れるなら問題ないとしています2。
満期日が支払期日までに来るよう設定すれば、そもそも割引の必要が生じません。
電子記録債権を残すかどうかは、制度の名前ではなく、満期日と割引料の負担という二つの条件で決まるということです。
システムで確認すべき項目も、この二つに絞られます。
ファクタリング(一括決済方式)の留意点
ファクタリングは、代金の支払に金融機関などを介在させる仕組みです。
Q&Aでは、信託方式のファクタリング(一括決済方式)は制度自体が禁止されるものではなく、一括決済方式の留意点を守れば利用できるとされています2。
ここでも基準は電子記録債権と同じで、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものは禁止の対象になります1。
実務上の難しさは、同じファクタリングという名前でも、契約ごとに資金化の時期や手数料の負担者が違う点にあります。
利用しているサービスの仕様によって可否が分かれるため、記事の側から一律に使える・使えないとは言えません。
システムでは、ファクタリングを支払手段の一つとして持つ場合でも、どの契約に基づくものか、留意点を確認済みかを記録できるようにしておくと、後から確認がしやすくなります。
支払手段ごとの扱いを並べると、次のようになります。
判断が分かれるのは、電子記録債権とファクタリングの二つです。
| 支払手段 | 取適法の対象取引での扱い | システムでの持たせ方の例 |
|---|---|---|
| 手形 | 禁止(交付は支払遅延に該当) | 選択肢から外す |
| 電子記録債権 | 支払期日までに満額を得られないものは問題 | 満期日と割引料負担の確認を条件に残す |
| ファクタリング(信託方式の一括決済方式) | 制度自体は禁止されない(留意点を守る) | 契約と留意点の確認を条件に残す |
| 銀行振込 | 振込手数料の差引は合意があっても違反 | 既定の支払手段にし差引設定を外す |
支払条件マスタ・発注書・承認フロー・経理連携で影響を受ける箇所
支払条件・支払手段マスタ
前の節の条件を、受発注システムの設定に置き換えていきます。
最初に見るのは、取引先ごとに支払条件を決めているマスタです。
多くの場合、ここに「支払手段」と「支払サイト(締め日と支払日の組合せ)」が登録され、発注のたびに自動で読み込まれます。
マスタに手形が登録されていれば、担当者が意識しないまま手形払いの発注が作られます。
支払サイトも見直しの対象です。
支払期日は受領日から60日以内に定める必要があります3。
締め日を挟む設定では、受領日がいつかによって実際の日数が変わります。
たとえば「月末締め翌々月末払い」の設定では、月初に受領した分は支払まで60日を大きく超えます。
マスタ上の表記だけを見ても分かりにくいため、受領日を起点に最長で何日になるかを計算して確かめます。
もう一つ確認したいのが、システムが支払期日を何の日付から計算しているかです。
起点が発注日や請求書の日付、社内の処理日になっている場合、受領日との間にずれが生じます。
そのずれの分だけ、実際の支払が受領日から遠くなります。
受領日を記録する項目があり、支払期日の計算がその日付を参照しているかどうかが、設定見直しの土台になります。
発注書・EDIでの明示
支払手段を手形から振込などに切り替えると、発注書に印字される支払条件の文言も変わります。
紙やPDFの発注書であれば、帳票の雛形を書き換えれば済みます。
手間がかかるのは、EDI(企業間で受発注データを電子的にやり取りする仕組み)で発注している場合です。
EDIでは、文字数などの制約から、支払条件を「支払区分01」のような記号で送っていることがあります。
Q&Aでは、記号の意味をあらかじめ書面または電磁的方法で明示しておけば、記号による通知が認められるとされています2。
ここで起きやすいのが、システム側で記号の割当てを変えたのに、取引先へ渡している記号の説明が古いまま、という状態です。
「02」がかつて手形を意味していたなら、その記号を使い続けるのか、廃止して新しい記号を設けるのかを決めます。
そのうえで、記号の意味を記した書面などを差し替えて取引先へ示し直します。
記号表を更新するときは、システムのコード定義と取引先に示している説明が一致していることを、一つの表で照合できる形にしておくと、更新漏れを見つけやすくなります。
振込手数料の差引と経理連携
支払手段を銀行振込に寄せると、振込手数料の扱いが表に出てきます。
Q&Aでは、振込手数料を代金から差し引く行為は、取引先との合意の有無にかかわらず違反になるとされています2。
以前に取引先の了承を得て差し引いていた場合でも、対象取引ではその前提が通りません。
この設定は、受発注システムよりも、経理システムとの連携部分に埋もれていることがあります。
取引先マスタに「振込手数料:先方負担」のような区分があり、支払データを作る段階で自動的に手数料相当額が差し引かれる、という仕組みです。
発注担当者の画面には差引後の金額が出てこないため、発注側で気づくのは難しくなります。
対象取引の取引先についてこの区分を確認し、差引のロジックが働かないように変えます。
手形から振込へ切り替えると、振込の件数や手数料の総額が委託事業者側で増えることも考えられます。
その費用は委託事業者側で持つことになるため、切替えの計画と一緒に経理部門と共有しておくと、後で支払処理の段階で迷わずに済みます。
システム改修にするか、運用ルールで止めるか:状況別の切り分け
改修が要るケース
影響箇所が見えてくると、すべてを改修で直すのか、運用ルールで止めるのかという判断が残ります。
ここからは編集部の考え方として、状況ごとの振り分けを示します。
他社の対応状況や効果を測った結果ではありません。
改修を優先したいのは、次のような状況です。
- 手形が支払手段の選択肢として残っている、または取引先によっては既定値になっている
- 対象判定が担当者の記憶や別の表計算ファイルに頼っていて、発注画面から見えない
- 電子記録債権やファクタリングを例外的に残すため、発注ごとに満期日や割引料の負担を確かめる必要がある
一つ目は、選択肢を削除するか無効化すれば、誤って選ぶ経路そのものがなくなります。
二つ目は、取引先マスタに判定項目を加え、発注画面に判定結果を表示すれば、担当者が都度ほかの資料を探す手間が減ります。
三つ目は、承認の段階で満期日と支払期日の比較、割引料の負担者を入力させ、条件を満たさない場合に警告を出す形が考えられます。
警告が出ても判断の中身は人が担うため、確認を省略できるわけではありません。
それでも、確認すべき項目が画面に並ぶことで、承認者が何を見ればよいかははっきりします。
運用ルールで先に止めるケース
改修には、要件の整理や開発の時間がかかります。
その間も発注と支払は続くため、改修が当面間に合わない場合は、運用ルールで先に止める方法を取ります。
たとえば、対象取引では手形と長い支払サイトでの発注を出さないことを社内で決めます。
あわせて、支払データを確定する前に経理担当が支払手段と支払期日を確認する手順を加えます。
運用ルールで止める場合、何が減って何が残るかを把握しておくことが大切です。
手形での発注が新たに作られることは、ルールが守られている限り避けられます。
一方で、マスタに手形が残っている以上、担当者が気づかずに選んでしまう余地は残ります。
経理による支払前の確認が、その取りこぼしを拾う役割を担います。
人手の確認がどれだけ続けられるかが、改修を急ぐかどうかの判断材料にもなります。
現状の抽出による確かめ方
改修と運用のどちらを先にするかは、いまの発注・支払データを抽出すると判断しやすくなります。
抽出する軸としては、支払手段別の件数、支払サイト別の件数、振込手数料の差引の有無が考えられます。
これに取引先マスタの判定状況(判定済みか、いつ判定したか)を重ねます。
結果の読み方の例を挙げます。
直近の支払で手形が一件も使われておらず、マスタに選択肢として残っているだけなら、選択肢を無効化する小さな改修で済む可能性があります。
反対に、特定の取引先との間で手形払いが続いているなら、システムの設定より先に、その取引先と支払方法の変更について話し合う必要があります。
支払サイトが60日を超えうる設定が多い場合は、支払条件マスタ全体の見直しを計画に入れます。
件数の多い少ないだけで結論を出すことはできません。
件数が少なくても、対象取引に当たる取引先との手形払いが含まれていれば対応が要ります。
抽出結果は、どの取引先のどの設定を個別に確かめるかを絞り込むための手掛かりとして使います。
| 状況 | 対応の例 | 減る確認 | 残る確認 |
|---|---|---|---|
| 手形が選択肢・既定値に残る | 改修で選択肢を削除・無効化 | 誤って選んでいないかの確認 | 過去の発注データの扱い |
| 対象判定が担当者の記憶頼み | 改修で取引先マスタに判定項目を追加 | 発注のたびの判定の聞き取り | 規模の値の定期的な更新 |
| 電子記録債権・ファクタリングを例外的に残す | 改修で承認時の確認項目と警告を追加 | 確認項目を思い出す手間 | 条件を満たすかの判断 |
| 改修が当面間に合わない | 運用ルールで発注を止め経理が支払前に確認 | 新たな手形発注の作成 | 人手による支払前の確認 |
紙の手形そのものが使えなくなる流れと、着手の順序
全銀協による電子交換所での交換廃止
取適法とは別に、銀行の側でも手形の扱いが変わろうとしています。
全国銀行協会は2025年、2027年度初から電子交換所における手形・小切手の交換を廃止することを決めました5。
電子交換所は、銀行間で手形や小切手を持ち寄って決済する仕組みです。
同協会は、その時点で手形・小切手がただちに使えなくなるわけではないとしつつ、金融機関の判断で取扱いが変わる可能性があるとしています5。
取引銀行で手形がいつまで、どのように扱われるかは、銀行ごとに確かめる必要があります。
二つの話は混同しやすいので、違いを整理しておきます。
取適法の禁止は、対象となる取引で委託事業者が手形で支払うこと自体を問題にするもので、すでに施行されています4。
全銀協の決定は銀行間の決済の仕組みの話で、取引が取適法の対象かどうかとは関係しません。
そのため、取適法の対象外と判定した取引先との間で手形払いを残す場合でも、銀行側の取扱いの変化によって使い続けられなくなる可能性があります。
支払手段マスタから手形を対象取引だけ外すのか、全体で廃止するのかを決める際は、この点も判断材料になります。
着手順序の提案
ここまでの内容を踏まえ、着手の順序を提案します。
現状を知る作業を最初に置くのは、影響の大きさによって改修と運用の振り分けが変わるためです。
- 発注・支払データから、支払手段別・支払サイト別の件数と振込手数料の差引の有無を抽出する
- 取引先マスタに取引類型ごとの判定項目を加え、対象判定を行う
- 支払手段マスタと支払条件マスタを整理し、手形を外し、60日を超えうる支払サイトを見直す
- 電子記録債権などを残す場合は、承認時の確認項目と警告を加える
- 取引銀行に手形の取扱いを確かめ、支払方法が変わる取引先へ連絡する
2と3は並行して進めることもできます。
ただし、判定が終わっていない取引先について支払条件だけを先に変えると、対象外の取引先まで巻き込んで設定が変わることがあります。
どこまでを変えるのかを判定結果と照らし合わせながら進めると、手戻りを減らせます。
5の取引先への連絡は最後に置いていますが、手形払いが続いている取引先が1の抽出で見つかった場合は、その相手への連絡を前倒しします。
確認先
判断に迷う事柄は、内容によって確認先が分かれます。
- 取引が対象になるか、資本金区分の数値、支払手段の可否:公正取引委員会の法令・ガイドブック・Q&A
- 施行前から続いている契約の支払条件をどう扱うか:契約の内容を示したうえで、公正取引委員会や中小企業庁に個別に確認
- 手形の取扱いがいつまで続くか:取引銀行
- 電子記録債権やファクタリングの満期日・手数料の仕様:利用しているサービスの提供元と契約内容
とくに施行前から続く契約の扱いは、契約の時期や内容によって考え方が変わりうるため、一般論で済ませず個別に確かめることをおすすめします。
システムの設定で対応できるのは、確認の結果を項目として残し、次の発注や支払に反映させるところまでです。
支払条件の設定は、取引先マスタ、発注画面、承認フロー、経理連携に分かれて保存されていることが多く、記事の一般論だけでは自社のどの項目を直せばよいか決めにくいためです。
いまの支払条件マスタや発注データの項目構成を一緒に見ながら、手形や振込手数料の差引がどこで設定されているか、改修と運用ルールのどちらで止めるかの候補を整理できます。個々の取引が対象になるかの法的な判断は、公正取引委員会などへの確認をあわせてご案内します。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 対象判定 | 取引類型ごとに資本金区分と従業員基準(製造委託等300人、役務提供委託等100人)を当てはめ、判定日とともに記録する |
| 手形 | 対象取引では支払手段の選択肢から外す |
| 電子記録債権・ファクタリング | 支払期日までに満額を得られるか(満期日と割引料の負担)で残すかを決める |
| 支払期日 | 受領日から60日以内でできる限り短く。計算の起点が受領日になっているかを見る |
| 振込手数料 | 合意があっても代金から差し引かない。経理連携の差引設定を確認する |
| 改修か運用か | 手形の残り方、判定の持ち方、例外の有無で振り分け、改修が間に合わない間は運用ルールで止める |
| 銀行の手形交換廃止 | 取適法とは別の制度。2027年度初からの交換廃止と、取引銀行の取扱いを確認する |
現状データの抽出、対象判定、マスタの整理、承認フローの追加は互いに影響し合うため、順序を誤ると設定の手戻りが起きやすくなります。 どの軸で発注・支払データを抽出し、その結果からどの設定を先に変えるかを、自社のシステム構成に合わせて確かめられます。取引銀行や取引先への連絡を前倒しすべき取引があるかどうかの洗い出しにも使えます。
よくある質問
電子記録債権で支払う場合、システムにどんな確認項目を持たせればよいですか。
判断の軸は、中小受託事業者が支払期日に満額を受け取れるかどうかです。
そのため、支払期日、満期日、割引料を負担する側の三つを承認時に確認できるようにします。
満期日が支払期日より後に来る場合、受託側が割引を受ける必要が生じれば支払遅延に該当します2。
委託事業者が割引料を負担し、支払期日に満額を受け取れるなら問題ないとされています2。
あわせて支払期日が受領日から60日以内かどうかも確かめます3。
振込手数料を代金から差し引く設定は、取引先の合意があれば問題ありませんか。
問題になります。
公正取引委員会のQ&Aでは、振込手数料を代金から差し引く行為は、合意の有無にかかわらず違反になるとされています2。
経理システムとの連携で自動的に差し引く設定が残っていないか、取引先マスタの手数料負担の区分とあわせて確認します。
施行前から続いている契約の支払条件も、すぐに見直すべきですか。
施行前に結んだ契約をどう扱うかは、契約の時期や内容によって考え方が変わりうるため、記事では一律に答えられません。
契約内容を示したうえで、公正取引委員会や中小企業庁に個別に確認することをおすすめします。
そのうえで、取適法自体は2026年1月から施行されているため4、これから作る発注や支払が手形払いになっていないかは、早めに確認しておく必要があります。
取引先が従業員基準だけで対象になるかは、システムでどう管理すればよいですか。
取引先マスタに従業員数と資本金を持たせ、取引類型ごとに判定結果と判定日を記録する方法があります。
従業員基準は製造委託等が300人、役務提供委託等が100人と類型で異なるため1、取引先単位のフラグ一つでは足りないことがあります。
従業員数は変わるため、判定に使った値の出所を残し、取引先から規模の変更を知らされたときに見直せるようにしておきます。
銀行側の手形・小切手の交換廃止と、取適法の禁止は同じ話ですか。
別の制度です。
取適法の禁止は、対象取引で委託事業者が手形で支払うこと自体を問題にするもので、すでに施行されています4。
全国銀行協会の決定は、2027年度初から電子交換所での手形・小切手の交換を廃止するという銀行間の決済の話です5。
同協会は、その時点でただちに使えなくなるわけではないものの、金融機関の判断で取扱いが変わる可能性があるとしています5。
- 1 出典:公正取引委員会「「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」の成立について」(2025年)
- 2 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)
- 3 出典:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(2026年)
- 4 出典:公正取引委員会「取適法・振興法(特設ページ)」(2026年)
- 5 出典:一般社団法人全国銀行協会「手形・小切手の電子化に関する中間的な評価を踏まえた抜本的な取組み等について」(2025年)