◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 買掛金の支払に稟議が要るかは、法令ではなく自社の規程で決める領域です。
- 支払承認の中心は、請求書を発注・検収の記録と突合し、金額・振込先・期日を確かめることです。
- 発注時に承認済みの取引は承認を軽くできますが、突合は省かず、事後請求は発注者の権限確認から始めます。
- 支払依頼は照合結果を何と比べてどうだったかで書くと、承認者の判断材料がそろいます。
- 下請法の対象となる外注取引では受領日から60日以内の支払期日が定められるため、代理承認と事前承認枠を規程に用意しておきます。
目次

買掛金の支払に承認が要るかは何で決まるか(法令と社内規程の線引き)
仕入先や外注先から請求書が届き、支払期日は近いのに、稟議が要るのか、誰の承認を何で取ればよいのかが分からない。
この迷いは、承認の要否は法令ではなく社内規程で決める領域だと押さえるだけで、かなりほどけます。
確認できた範囲では、買掛金の支払に稟議を一律に求める一般的な法令上の定めは見当たりません。
支払承認の中身は、請求書を発注・検収の記録と突き合わせ、金額・振込先・期日を確かめることです。
発注時に承認済みの取引は支払承認を軽くできますが、突合は省きません。
この線引きが、期日に間に合わせながら二重払いや誤払いを防ぐ軸になります。
稟議が要るかは社内規程で決める
まず押さえたいのは、「買掛金の支払に稟議が必要か」という問いに、法令が直接答えているわけではないことです。
確認できた範囲では、買掛金の支払ごとに稟議を通すことを一般に義務づける法令上の規定は見つかっていません。
誰が、どの金額まで、どの書類で支払を認めるかは、会社が自分で決める社内規程の領域です。
職務権限規程や経理規程、支払規程などと呼ばれるものがこれにあたります。
会社法では、大会社である取締役会設置会社に、業務の適正を確保するための体制、いわゆる内部統制の整備が求められます。
ただし、これは体制を整えることを求めるもので、支払1件ごとに稟議書を回すよう定めたものではありません。
中小規模の会社であれば、承認の取り方はなおさら自社の規程しだいです。
だからといって「稟議は不要」と言い切れるわけでもありません。
自社の規程に「一定額以上の支出は稟議を要する」と書かれていれば、その会社では稟議が必要です。
手が止まったときに最初に開くべきなのは法律の条文ではなく、自社の職務権限規程や経理規程、それが無ければ経理部門が運用している支払のルールです。
規程に支払の承認について何も書かれていない場合は、書かれていないこと自体を経理の責任者に伝え、今回の扱いを決めてもらうのが近道です。
担当者が独断で「稟議なしで払う」「念のため社長決裁まで回す」のどちらかを選ぶと、前者は後から承認の不備を問われ、後者は期日に間に合わなくなるおそれがあります。
発注時の承認・請求書到着後の承認・支払依頼の違い
規程を開くと、「稟議」「支払承認」「支払依頼」といった言葉が混ざって出てきて、今回どれが必要なのか分からなくなることがあります。
ここでは、何をいつ承認するかで3つの手続に分けて考えます。
呼び名は会社ごとに違うため、これは自社の規程の言葉に読み替えるための編集部の整理です。
- 発注時の承認:仕入や外注を行ってよいか、取引そのものを認める手続。
稟議と呼ばれることが多いのはこの段階です。 - 請求書到着後の承認:届いた請求書の内容が発注・検収の事実と合っているかを確かめ、支払ってよい金額を認める手続。
- 支払依頼:承認された金額を、どの口座へ、いつ振り込むかを経理へ依頼する手続。
毎月外注先に作業を発注している会社を例にとると、契約時に発注の稟議を通し、毎月届く請求書については支払の承認を取り、そのあと経理へ支払依頼を出す、という流れになります。
「請求書が来たのに稟議が要るのか」と迷うのは、多くの場合、発注時の承認と請求書到着後の承認を同じものとして見ているときです。
発注時に取引が認められていれば、請求書の段階で求められるのは取引の是非をもう一度問うことではなく、請求内容が正しいかの確認です。
その確認で何を見ればよいかを、次に具体的にしていきます。
支払承認で最低限確認すること:発注・検収・請求書の突合と金額・振込先・期日
突合の目的は仕入金額の誤りを支払前に見つけること
支払承認というと、承認者が金額を見て印を押す場面を思い浮かべがちです。
しかし監査法人の解説では、買掛金の支払時に請求書を照合する目的は、金額を承認することだけでなく、買掛金の計上額の基礎となる仕入金額に誤りがないかを支払前に確認する点にあるとされています3。
同じ解説は、外注先から請求書を受け取ったら、請求金額を自社の仕入実績データと照合し、差異があれば内容を確認したうえで支払管理を行うべきだとしています3。
この考え方に立つと、承認者が見るべきなのは「この金額を払ってよさそうか」という感触ではなく、「自社の記録と請求書が一致しているか」です。
一致していれば、承認は記録の裏づけを確かめる作業になります。
一致していなければ、その差が値引きの反映漏れなのか、追加作業なのか、先方の請求の誤りなのかを、払う前に確かめることになります。
照合にはもう一つの役割があります。
週次や月次の棚卸をしていない会社では、支払照合が仕入の計上漏れや二重計上を見つける機会になると解説されています3。
たとえば外注先が先月分の作業を今月の請求書にも含めてしまった場合、自社の検収記録と突き合わせれば、同じ作業が2か月続けて出てくることに気づけます。
突合を省くと、この種の誤りは支払が終わってから見つかり、返金を依頼するという別の手間が生まれます。
なお、この解説は事例会社の外注先請求書を例にしたもので、発注・検収・請求書の三点照合を法令上の義務として求めているわけではありません。
突合項目と分担
突き合わせる項目と、誰がそれを確かめるかを決めておくと、承認者ごとに見る場所がばらつくのを防げます。
次の表は、毎月届く外注先の請求書を想定した編集部の提案です。
表のなかで判断が分かれやすいのは、検収の事実を誰が確かめるかです。
経理は請求書と発注書を見比べることはできても、作業が実際に終わったかは現場でなければ分かりません。
そのため、発注した部門が「発注どおりに受け取った」ことを確認し、経理が金額・振込先・期日を最終確認する、という分け方が考えられます。
振込先は、請求書に書かれた口座が取引先マスタに登録済みの口座と一致するかを見ます。
請求書の記載だけを根拠に振込先を変えると、誤払いに気づく手がかりがなくなります。
口座の変更は、請求書とは別の連絡経路で取引先に確かめてから登録し直す運用にしておくと、請求書1枚で振込先が書き換わる事態を避けられます。
期日は、契約や発注書で定めた支払条件と請求書の記載が一致しているかを見ます。
請求書の期日が契約より早く書かれていても、それに合わせる義務があるとは限らないため、どちらに従うかは契約を基準に判断します。
| 突合する項目 | 請求書で見る箇所 | 照らし合わせる記録 | 主に確かめる人 |
|---|---|---|---|
| 発注 | 品目・数量・単価 | 発注書・契約書 | 発注した部門 |
| 検収 | 対象期間・作業内容 | 検収の記録 | 発注した部門 |
| 金額 | 請求額 | 発注額と検収の記録 | 発注した部門が照合し経理が確認 |
| 振込先 | 振込先口座 | 取引先マスタの登録口座 | 経理 |
| 支払期日 | 支払期日の記載 | 契約・発注書の支払条件 | 経理 |
発注時に承認済みの取引と、事後請求・定額継続取引で承認の取り方をどう変えるか
発注時承認済み
突合の考え方が分かると、すべての請求書に同じ重さの承認をかける必要はないことが見えてきます。
取引がどの段階で認められているかによって、支払承認で確かめることの中心が変わるからです。
ここからは、取引の類型ごとに承認の重さを変える編集部の提案です。
公開されている規程例で裏づけたものではないため、自社の規程と権限表に合わせて調整する前提で読んでください。
発注の段階で稟議や発注承認を通し、検収の記録もある取引は、支払承認を「記録と一致しているかの確認」に絞れます。
毎月の外注先請求書の例でいえば、契約時に発注を承認済みで、毎月の作業も発注部門が検収しているなら、請求書の承認は発注部門の担当者が突合結果を添え、上長が確認する程度で足りる設計が考えられます。
軽くするのは承認の段数や承認者の役職であって、突合そのものではありません。
発注時の承認は「この取引をしてよい」の裏づけにはなっても、「今月の請求額が正しい」の裏づけにはならないからです。
突合を発注部門の担当者に任せ、承認者は突合結果に目を通す役割にすれば、承認者の手間は減っても、記録と請求書を見比べる工程は残ります。
事後請求
発注書を出さないまま作業が始まり、請求書が届いてから取引が判明する場合があります。
急ぎの追加作業を口頭で頼んだ、現場が個別に手配した、といった場面です。
このときの支払承認は、請求内容の確認より先に、「その発注をした人に、その金額の取引を決める権限があったか」を確かめるところから始まります。
権限の範囲内であれば、発注時に承認されていたのと同じ扱いで突合へ進めます。
権限を超えていれば、本来発注時に必要だった承認者の承認を事後に取ることになります。
ここで支払を止めてしまいたくなりますが、取引の実態があり期日が迫っているなら、権限者の事後承認を急いで取りにいくほうが、取引先との関係と期日の両方を守れます。
事後請求が何度も続く取引先や部署があれば、それは支払の問題というより、発注の手続が守られていないことの表れです。
支払承認の場で繰り返し見つかる事後請求は、発注時の手続を見直すきっかけとして記録しておくと役に立ちます。
定額の継続取引
保守契約や月額の外注のように、毎月同じ金額が請求される取引は、契約時に承認を取っておけば、毎月の確認を「契約条件と請求書が一致しているか」に絞る設計が考えられます。
見るのは、金額、対象期間、振込先、そして契約が続いているかです。
注意したいのは、定額だから毎月同じだと思い込み、解約後や条件変更後の請求をそのまま払ってしまうことです。
契約の終了日や改定日を台帳に記録しておけば、毎月の確認は台帳との照合で済み、担当者が替わっても見落としにくくなります。
この類型分けが自社に合っているかは、差し戻しの件数と誤払いの件数を一定期間記録すると見直せます。
承認を軽くした類型で誤払いが出ていれば突合の仕方を、重いままの類型で差し戻しが多ければ記載項目の不足を疑う、という見方です。
| 取引の類型 | 承認時に最初に確かめること | 承認の重さの目安 |
|---|---|---|
| 発注時承認済み | 請求書と発注・検収の記録が一致しているか | 確認中心にして段数を減らせる |
| 事後請求 | 発注した人にその金額を決める権限があったか | 権限を超えていれば本来の承認者が事後に承認 |
| 定額の継続取引 | 契約条件との一致と契約が続いているか | 台帳との照合を中心にできる |
金額・取引種別での承認区分と承認ルートの決め方
承認が遅くなる要因
類型で承認の重さを変える発想は、承認が遅いという問題とも関わります。
弁護士ドットコムが2024年にクラウドサイン利用者312名を対象に行った調査では、稟議の承認までに1日以上かかった人が73.5%、2〜3日かかった人が52.5%でした1。
稟議の課題としては、「承認完了までに関わる人が多すぎる」が41.0%、「稟議書の作成が必要となる対象範囲が広すぎる」が31.6%挙がっています1。
この調査は稟議全般を対象にしたもので、買掛金の支払承認にかかる日数を示すものではありません。
それでも、承認者の多さと対象範囲の広さが遅れの原因として意識されていることは、支払承認の区分を考えるときの手がかりになります。
支払承認の場合、遅れは期日に直結します。
請求書が月末に届き、支払が翌月末という条件でも、承認者が何段も連なり、各段で数日ずつ止まれば、経理が支払処理に入れる日は限られてきます。
一方で、承認者を減らせば誤りを見つける目も減るのではないか、という懸念もあるでしょう。
ここで前の節の考え方が効いてきます。
誤りを見つける役割を突合に持たせ、承認者は突合結果を確認する立場に置けば、承認の段数を減らしても確認の中身は残せます。
承認の速さと誤りの防止を、承認者の人数だけで両立させようとしないことが、区分設計の出発点です。
区分の基準の考え方
区分の基準は、金額だけで決めるより、次の3つを組み合わせると実態に合わせやすくなります(編集部の提案)。
- 発注時承認の有無:発注時に権限者の承認を得ているか。
得ていれば支払承認は確認中心にできます。 - 取引種別:発注時承認済み、事後請求、定額の継続取引のどれにあたるか。
- 金額:自社の職務権限規程で定めた発注権限の金額区分に合わせます。
金額の境目をいくらにするかに、一般的な相場はありません。
気をつけたいのは、支払承認の金額区分を発注権限とは別に作ってしまうことです。
「発注は課長の権限で済んだのに、支払には部長の承認が要る」というねじれが起きると、同じ取引について二度判断を求めることになり、承認待ちの原因になりがちです。
発注権限の区分と支払承認の区分をそろえ、発注時に承認した人が支払時の確認者になる、あるいは発注時の承認記録を支払承認に引き継ぐ形にすると、同じ判断を繰り返す場面を減らせます。
承認ルートを決めるときは、例外の回し先も先に決めておきます。
事後請求で発注者の権限を超えていた場合は本来の権限者へ、請求額が発注額を上回った場合は差額について発注時の承認者へ、というように、どこへ回すかを規程に書いておけば、担当者がそのつど回し先に迷う場面が減ります。
稟議書・支払依頼に何を書き、何を添付すれば差し戻されにくいか
記載項目
差し戻しは、稟議では珍しいことではありません。
ネオマーケティングが2026年に、BtoB商材導入の稟議に関わった国内BtoB企業の勤務者540名に尋ねた調査では、直近の稟議で差し戻しを経験したと答えた人が57.2%でした2。
これは商材導入の稟議についての結果で、買掛金の支払依頼の差し戻し率ではありません。
ただ、承認者の手元で判断材料が足りなければ書類が戻ってくる、という構図は支払依頼にも通じます。
支払依頼が戻される理由を承認者の側から考えると、多くは「この金額で払ってよいと判断する材料が書類に無い」ことに行き着きます。
承認者が知りたいのは、何の取引か、発注時に認められていたか、届いたものを確認したか、請求額は記録と合っているか、どこへいつ払うか、の5点です。
これを最初から書いておけば、承認者が起案者に問い合わせる往復が減ります。
なかでも差し戻しにつながりやすいのは、照合結果の欄です。
「請求書のとおり」とだけ書くと、承認者には何と照合したのかが分かりません。
「発注書の金額と一致」「検収記録と一致」「発注額より多い。差額は追加作業分で、追加の依頼記録あり」のように、何と比べてどうだったかを書きます。
差異がある場合に、その理由まで書いてあるかどうかが、そのまま承認されるか戻されるかの分かれ目になりやすいところです。
添付書類
添付は、記載項目の裏づけになる書類に絞ります。
多すぎると承認者がどこを見ればよいか分からず、かえって確認が遅れるからです。
- 請求書(紙の原本の写し、または受け取った電子データ)
- 発注書または契約書(定額の継続取引なら契約書と条件変更の記録)
- 検収の記録(納品書、作業完了の報告、検収書など自社で使っているもの)
- 差異がある場合は、その理由を示す記録(追加作業の依頼、値引きの合意など)
- 事後請求の場合は、発注した人と発注の経緯が分かるメモ
毎月の外注先請求書であれば、毎月添付するのは請求書と検収の記録にとどめ、契約書は台帳で参照できるようにしておけば毎回付ける必要はない、という整理も考えられます。
何を毎回付け、何を台帳の参照で済ませるかを決めておくと、起案者が添付に迷う時間が減り、承認者も毎月同じ場所を見ればよくなります。
| 記載項目 | 承認者の疑問 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 取引内容 | 何の取引か | 外注先名と対象月の作業内容 |
| 発注の承認有無 | 発注時に認められていたか | 発注承認の番号または承認者名 |
| 検収日 | 届いたものを確認したか | 検収した日と確認した人 |
| 請求額と照合結果 | 記録と合っているか | 発注額と一致。差異があれば差額と理由 |
| 振込先 | どこへ払うか | 取引先マスタの登録口座と一致 |
| 支払期日 | いつ払うか | 契約の支払条件と一致 |
請求書の受領・保存と承認記録:書面か電子かで何が変わるか
電子で受領した請求書
承認を紙で回すか、ワークフローなどの電子で回すかを考えるとき、見落とされやすいのが請求書の保存の決まりです。
電子帳簿保存法は国税関係の帳簿書類をどう保存するかの制度で、社内承認の要否を定めるものではありません。
ただ、請求書をどの形で受け取ったかによって保存の扱いが変わるため、承認の手段もそれに合わせておくと二度手間を避けられます。
メールに添付されたPDFや、取引先のシステムからダウンロードした請求書は、電子取引のデータにあたります。
国税庁の一問一答では、電子取引データの保存には真実性の確保と可視化の要件があるとされています5。
取引年月日・金額・取引先などで検索できること、訂正や削除の履歴が残るか改ざんを防ぐ仕組みがあることなどが求められます5。
電子で届いた請求書を印刷して紙の支払依頼書に添付する運用をとっている場合は、紙とは別に電子データ自体の保存をどう満たしているかを確かめておく必要があります。
承認と保存をつなげて考えると、請求書の電子データに承認の記録を紐づけて同じ場所に残せる手段のほうが、後から「この請求書は誰がいつ承認したか」を探しやすくなります。
保存要件の細部は、国税庁の一問一答の原文や顧問税理士に確かめてください。
書面で受領した請求書
郵送で届いた紙の請求書は、電子取引データではありません。
書面のまま保存するか、スキャナ保存の対象として扱うことになります5。
紙で回覧して承認する運用でも、紙の原本を保存しておけば、請求書の保存の面で迷う点は多くありません。
迷いやすいのは、紙をスキャンして電子の承認ルートに乗せる場合です。
このときは、スキャナ保存として扱うのか、紙の原本を保存するのかを決めておく必要があります。
同じ取引先から紙と電子が混ざって届く会社では、受領の形ごとに保存の扱いを分けておくと、月末にまとめて整理する手間が減ります。
承認記録の残し方
承認記録の残し方は、ここから編集部の提案として示します。
残しておきたいのは、承認者、承認日時、照合結果、どの請求書に対する承認か、の4点です。
紙であれば、支払依頼書に請求書番号を書き、請求書と一緒に綴じます。
電子であれば、承認記録から請求書のデータへたどれるようにしておきます。
どちらの場合も目的は同じで、二重払いが疑われたときに、同じ請求書番号に承認が2件付いていないかを確かめられる形にしておくことです。
請求書番号を書かない運用だと、同じ外注先の同じ月の請求書が再送されてきたときに、すでに承認済みのものと見分けにくくなります。
| 受領の形 | 保存の扱い | 承認を回すときの注意 |
|---|---|---|
| 電子(メール添付のPDFなど) | 電子取引データとして保存。検索できることや改ざん防止などの要件がある | 印刷して回す場合も電子データ自体の保存を別に確保する |
| 書面(郵送の紙) | 書面保存またはスキャナ保存 | スキャンして電子で回すならどちらで保存するかを決めておく |
期日に間に合わない・承認者不在・緊急支払のときの扱い
外注先への支払期日の法定上限
承認が遅れると、社内の都合では済まない場面があります。
下請代金支払遅延等防止法(下請法)は、親事業者と下請事業者の取引について、下請代金の支払期日を、給付を受領した日から起算して60日の期間内で、かつできる限り短い期間内に定めなければならないとしています4。
さらに、支払期日を過ぎても支払わないことを親事業者に禁じています4。
対象となる外注取引では、社内の承認が終わっていないことは支払を遅らせる理由になりません。
この規定が当てはまるのは、親事業者と下請事業者という関係にある取引に限られます。
また、ここで示したのは公正取引委員会に掲載されている従来の条文の内容です。
下請法は2026年1月から中小受託取引適正化法(取適法)に改められたとされており、改正後の名称や支払方法の扱いを含め、最新の条文は公正取引委員会の掲載で確かめてください。
自社の外注取引が対象にあたるか、支払条件がどう定められているかは取引ごとに違うため、契約書や発注書で一件ずつ押さえておくと、期日から逆算できるようになります。
逆算の考え方はこうです。
給付を受け取った日から支払期日までの日数のうち、経理の支払処理に必要な日数を差し引いた残りが、承認に使える日数です。
承認に使える日数が承認ルートの段数に対して短い取引は、前に述べた区分の見直しで承認を軽くする候補になります。
代理承認と事前承認枠
承認者が出張や休暇で不在のときに支払が止まる原因の一つは、規程に代理の定めが無いことです。
以下は、編集部が提案する定め方です。
代理承認では、誰が誰の代わりに、どの金額まで承認できるかを規程に明記しておきます。
記録には、代理で承認したこと、本来の承認者の名前、不在の理由を残します。
本来の承認者が戻ったら、代理で承認された記録に目を通し、確認したことも記録に残します。
定額の継続取引のように、毎月必ず発生し金額の見通しが立つ支払は、年度初めなどに一定の枠で承認しておき、枠内の支払は都度の承認を確認中心にする方法も考えられます。
緊急の支払についても、事前承認枠の範囲内であれば先に支払い、事後に承認記録を整える扱いを定めておく方法があります。
ただし緊急の扱いでも、突合は支払の前に済ませます。
急いでいるときほど、振込先の変更や同じ請求書の二重処理に気づきにくくなるからです。
代理承認も事前承認枠も、承認を省く仕組みではありません。
承認する人や時点を動かしても、記録が残り、後から確認できる状態を保つことで、期日を守りながら誤払いに気づける余地を残すための仕組みです。
承認区分や承認ルートの最適な形は、自社の発注権限や取引の類型の構成によって変わり、一般的な整理だけでは決めきれないため。
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要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 稟議の要否 | 法令ではなく社内規程で決める |
| 支払承認の中身 | 請求書を発注・検収の記録と突合し、金額・振込先・期日を確かめる |
| 承認の重さ | 発注時承認済み・事後請求・定額の継続取引で変え、突合は残す |
| 承認区分 | 発注権限の金額区分とそろえ、同じ判断を二度求めない |
| 差し戻し対策 | 照合結果は何と比べてどうだったかで書く |
| 請求書の保存 | 電子で受け取ったか紙で受け取ったかで保存の扱いを分ける |
| 期日と不在時 | 対象の外注取引は受領日から60日以内。代理承認と事前承認枠を規程に定める |
規程の改定や電子での承認への切り替えは、請求書の保存の扱いや期日の逆算と合わせて決める必要があり、社内だけでは論点が漏れやすいため。 受領の形ごとの保存と承認記録の紐づけ方、承認者不在や緊急支払の扱いを、自社の運用に当てはめて確かめられます。
よくある質問
買掛金の支払は、発注時に稟議を通していれば請求書の承認は不要ですか。
承認の段数や承認者の役職を軽くすることはできますが、請求書と発注・検収の記録の突合は残すことをおすすめします。
発注時の承認は取引してよいことの裏づけにはなっても、今月の請求額が正しいことの裏づけにはならないからです。
請求書の承認を求めるかどうか自体は、自社の規程で決めます。
請求書と検収の記録が合わないとき、支払を止めてよいですか。一部だけ払ってもよいですか。
まず差異の内容を取引先と自社の記録で確かめます。
値引きの反映漏れ、追加作業、請求の誤りのどれかによって対応が変わるためです。
一部だけ払うかどうかは、契約と取引先との合意に沿って決め、自社の判断だけで減額して払うことは避けます。
下請法の対象となる外注取引では支払期日を過ぎて払わないことが禁じられているため、差異の確認は期日から逆算して早めに始めます。
承認者が不在のとき、代理承認の記録はどう残せばよいですか。
代理で承認したこと、本来の承認者の名前、不在の理由を記録に残します。
本来の承認者が戻ったら代理承認の記録に目を通し、確認したことも残しておくと、後から経緯をたどれます。
誰がどの金額まで代理できるかは、事前に規程へ書いておきます。
定額の継続取引は毎月承認が必要ですか。
毎月承認を取るかどうかは自社の規程で決めますが、契約時に承認を取っておき、毎月は契約条件と請求書が一致しているかの確認に絞る設計が考えられます。
解約や条件変更の後に請求をそのまま払わないよう、契約の終了日や改定日を台帳に記録しておくと確認が楽になります。
事後に請求が来た取引は、どの権限者の承認を取ればよいですか。
本来、発注時に承認すべきだった権限者の承認を取ります。
発注した人の権限内の金額であれば、発注時承認済みと同じ扱いで突合に進めます。
権限を超えていれば、規程上その金額を決められる人に事後承認を求めます。
外注先への支払期日の上限は、取引ごとに確認すべきですか。
確認が必要です。
下請法では、親事業者と下請事業者の取引について、支払期日を給付の受領日から60日以内で、できる限り短く定めることになっていますが、対象になるかは取引の関係によって変わります。
下請法は2026年1月から取適法に改められたとされているため、最新の条文は公正取引委員会の掲載で確かめてください。
- 1 出典:弁護士ドットコム株式会社(プロフェッショナルテック総研)「社内稟議の実態調査」(2024年)
- 2 出典:株式会社ネオマーケティング「BtoB企業の社内稟議・承認プロセス実態調査2026」(2026年)
- 3 出典:三優監査法人(BDO)「経営に効く内部統制 第9回」(2022年)
- 4 出典:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法(条文)」(平成21年改正までの掲載)
- 5 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(2022年)