◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 売掛金の費用は、ツール料金・現金化の手数料・回収できなかった分の3つに分けると、どこから見直すかが決まる。
- 請求ツールは月額ではなく、初期費用・従量課金・人数の追加料金を足した年間の総コストと、必要な機能がプランに含まれるかで比べる。
- ファクタリングは手数料を比べる前に、買い戻しや売主自身の資金での支払いの定めがないかを確かめる。
- 取適法の対象取引では、振込手数料を中小受託事業者に負担させることや手形払いが禁止されている。
- 形式上の貸倒れに備え、取引停止の日と最後の入金日を取引先ごとに記録しておく。
目次

売掛金の費用は3つに分けると、どこが重いか見える
請求書を作って送り、入金を一件ずつ照合し、遅れている取引先に連絡する。
売掛金まわりの支払いと作業は毎月積み重なるのに、何を削れば費用を抑えられるのかは見えにくいものです。
費用を「ツール料金」「売掛金を早めに現金化する手数料」「回収できなかった分」の3つに分けると、重い部分と手を入れる順が見えてきます。
ツールは月額だけでなく、初期費用、郵送の従量課金、人数の追加料金まで含めて比べます。
ファクタリングは、手数料より先に貸付けに当たらない契約かを確かめます。
取引が取適法の対象なら、振込手数料の差引きや手形払いも見直せます。
ツール料金・現金化の手数料・損失の3区分
売掛金にかかる費用は、一つの請求書にまとまって届くわけではありません。
ツールの利用料はクレジットカードや口座引落しの明細に出ます。
ファクタリングの手数料は、売った債権の額と入金額の差として現れます。
回収できなかった分は、帳簿の売掛金残高に残ったままです。
このように置き場所がばらばらなので、「売掛管理に毎月いくらかかっているか」と聞かれても、すぐには答えにくいのが普通です。
費用を次の3つに分けると、別々の場所にあった金額が一つの表に並びます。
- ツール料金:請求書の発行・送付や入金の確認に使うサービスの初期費用、月額、従量課金
- 現金化の手数料:入金日より前に売掛金を資金に換えるために払う手数料(ファクタリングなど)
- 回収できなかった分:最終的に入金されなかった売掛金や、振込手数料を差し引かれて請求額に届かなかった入金の差額
この分け方は、費用の性質ごとに効く手段が違うという考えにもとづく整理です。
ツール料金は、プランや契約の選び方で変わります。
現金化の手数料は、利用するかどうかと契約の中身で変わります。
回収できなかった分は、取引先との条件や記録の残し方で変わります。
一つの区分の工夫が別の区分に影響することはあります。
それでも先に置き場所を分けておけば、後から何を変えた結果なのかを追えます。
自社の数字を当てはめる
3つの区分に、直近数か月分の金額を入れてみます。
ツール料金は、契約中のサービスの請求明細から拾います。
初期費用を払った年なら、月割りにして足します。
郵送代行や追加ユーザーの料金は月によって変わるので、平均だけでなく多かった月の金額も見ておくと、後でプランを比べるときに役立ちます。
現金化の手数料は、ファクタリングなどを使った月だけ発生します。
使っていない会社なら空欄で構いません。
資金繰りのために検討している段階なら、見積もりの手数料を書き込んでおくと、他の2区分と同じ目線で比べられます。
回収できなかった分は、見落としやすい区分です。
入金予定日を過ぎても入っていない売掛金の件数と金額を拾い、請求額より少なく入金された取引の差額も加えます。
差額の中には、取引先が振込手数料を差し引いて送金しているものが混じっていることがあります。
一件ずつは小さくても、毎月続けば積み重なります。
請求書を手で作り、入金を一件ずつ照合している場合、その作業時間は3つの区分のどこにも出てきません。
金額にしにくい費用ですが、ツール料金を払う代わりに何の作業が減るのかを考えるときの比較相手になります。
どの作業に毎月どれくらいの時間を使っているかを書き添えておくと、次に見るツールの比較で判断しやすくなります。
3つを並べると、自社でどの区分が大きいのかが見えてきます。
ツール料金が大きければプランと課金の形の見直しから、回収できなかった分が目立てば支払条件と記録の整理から手を付ける、というように入口が変わります。
請求・入金管理ツールの月額は、プラン差と追加料金で読む
基本料金のちがい
3区分のうち、金額を最も確かめやすいのがツール料金です。
提供元が料金表を公開しているので、自社の条件を当てはめれば見積もりに近い数字が出ます。
ただし、同じ「請求書を作って送る」サービスでも、料金の組み立て方は大きく違います。
マネーフォワード クラウド請求書は、年払いの場合の月額が、ひとり法人プラン2,480円(年29,760円)、スモールビジネスプラン4,480円(年53,760円)、ビジネスプラン6,480円(年77,760円)の3段階です1。
どのプランでも請求書の毎月の自動作成と入金履歴は使えます。
一方、回収消込表の作成と、一括郵送・一括メール送信はビジネスプランに限られます1。
楽楽明細は、初期費用100,000円(税抜)、月額費用25,000円〜(税抜)という形です2。
月額に「〜」が付いているのは、帳票の発行件数やオプションの選択によって金額が変わるためです2。
債権管理や郵送代行などはオプションとして用意されています2。
表示されている月額は出発点で、自社の発行件数と必要なオプションが決まって初めて実際の月額が出ます。
2つのサービスは、想定している利用規模も機能も同じではありません。
そのため、料金だけでどちらが優れているかは決められません。
ここで見ておきたいのは、料金が「プランごとの定額」で決まるのか、「件数やオプションで上下する」のかという課金の形の違いです。
前者は人数や機能の段差でプランを上げたときに、後者は発行件数が増えたときに、月額が動きます。
郵送と人数による追加料金
基本料金の外側でかかるのが、郵送と人数の追加料金です。
マネーフォワード クラウド請求書の郵送代行は1通210円で、送った通数に応じて増えます1。
ビジネスプランでは、利用者が4名以上になると1名あたり300円の追加料金がかかります1。
取引先の多くがメールやWebでの受け取りに応じてくれるなら、郵送代行の料金はあまり膨らみません。
紙の請求書を求める取引先が多い場合は、その通数がそのまま毎月の費用になります。
人数も同じです。
営業担当にも自分の請求書を確認させたいのか、経理の数人だけで回すのかによって、追加料金がかかるかどうかが変わります。
料金表を読むときは、表記の条件にも注意が要ります。
マネーフォワード クラウド請求書の月額は年払いの場合の金額で、楽楽明細は税抜で表示されています12。
支払い方法や税の扱いをそろえずに並べると、同じ条件で比べているつもりでも数字がずれます。
次の表は、各社の2026年の公式料金ページの記載を、課金の項目ごとに並べたものです。
表の中で判断が分かれるのは、月額の行よりも、従量課金と追加人数料の行です。
ここは自社の郵送件数と利用人数によって、毎月の金額が大きく変わります。
| 料金項目 | マネーフォワード クラウド請求書 | 楽楽明細 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 料金ページで要確認 | 10万円(税抜) |
| 月額 | 2480円・4480円・6480円(年払いの場合) | 2万5000円〜(税抜・件数とオプションで変動) |
| 従量課金 | 郵送代行 210円/通 | 帳票発行件数で月額が変動・郵送代行はオプション |
| 追加人数料 | ビジネスプランで4名以上から300円/名 | 料金ページで要確認 |
月額が安いほど総コストが低いとは限らない理由
総コストの式
料金表の月額は、サービスを使い始めるための最低限の金額です。
実際に毎月出ていくお金は、次の4つを足したものになります。
年間の総コスト = 初期費用 + 月額×12か月 + 従量課金(郵送代行など)×12か月 + 人数の追加料金×12か月
初期費用は最初の年にだけかかります。
従量課金と人数の追加料金は、使い方に応じて毎月積み上がります。
月額だけを見比べると、この2つが抜け落ちます。
仮の数字で試してみます。
たとえば、毎月40社に紙の請求書を郵送している会社が、マネーフォワード クラウド請求書のビジネスプランを年払いで使い、郵送代行に任せるとします。
郵送代行だけで、210円×40通=8,400円が毎月かかります1。
プランの月額6,480円より、郵送の従量課金のほうが大きくなるわけです。
年間では、プラン料金77,760円に郵送代行100,800円が加わり、人数の追加料金を除いても178,560円になります。
同じ会社で、取引先の半分にメールでの受け取りへ切り替えてもらえたとします。
郵送代行は月20通、4,200円に下がります。
この場合、月額を抑えるのに効いたのはプランの選び直しではなく、送付方法の変更です。
安いプランを探す前に、郵送をやめられる取引先がどれだけあるかを数えたほうが、費用への影響が大きいこともあります。
楽楽明細のように初期費用がある場合は、何年使う前提かで1か月あたりの負担が変わります。
初期費用100,000円(税抜)を1年で割れば月あたり約8,333円、2年で割れば約4,167円が、月額25,000円〜(税抜)に上乗せされる計算です2。
ただし、楽楽明細の月額は発行件数やオプションで変わります2。
この計算は表示されている出発点の金額に当てはめた目安で、実際に比べるには自社の件数での見積もりが必要です。
必要な機能がプランに含まれるか
総コストを比べる前に、もう一つ確かめておくことがあります。
安いプランに、自社がツールに任せたい作業が含まれているかどうかです。
マネーフォワード クラウド請求書では、入金履歴はどのプランでも使えますが、回収消込表を作れるのはビジネスプランだけです1。
消込とは、届いた入金がどの請求に対するものかを突き合わせ、売掛金の残高から消していく作業のことです。
請求書を作って送るところまでをツールに任せ、入金の突き合わせは今まで通り表計算ソフトで行うなら、下位のプランで足りる場合があります。
入金の突き合わせまでツールに寄せたいなら、比べる対象は最初からビジネスプランになります。
よくあるつまずきは、月額の安さでプランを選び、必要な機能がないために手作業が残ってしまうことです。
ツール料金は下がっても、入金確認にかかる時間が変わらなければ、売掛管理の負担は減っていません。
反対に、上位プランに上げても、消込表を見る人がいない、郵送を使わないといった状態なら、上乗せ分は使われないまま払い続けることになります。
どちらに当てはまるかは、前に書き出した毎月の作業時間と照らすと判断しやすくなります。
ツールに移すと、どの画面からどこへの転記がなくなり、何の確認が人の手に残るのか。
そこまで具体的に言えるプランが、比べる価値のある候補です。
ファクタリングの手数料は、安さより契約の性質を先に確かめる
貸金業に当たるおそれのある契約
ツールで抑えられるのは、請求や入金確認にかかる事務の費用です。
これとは別に、取引先からの入金を待たずに資金が必要になったとき、売掛金を業者に売って早めに現金化する方法があります。
ファクタリングと呼ばれる取引で、ここでかかる手数料が3区分の2つ目にあたります。
手数料は安いほうがよいのですが、比べる前に確かめたいことがあります。
その契約が、本当に売掛金の売買になっているかどうかです。
金融庁は、契約書上は債権の譲渡となっていても、経済的に貸付けと同じ働きをする取引は貸金業に当たるおそれがあると注意を呼びかけています3。
金融庁が例に挙げているのは、売主が売った債権を買い戻すことになっている契約や、売主が自分の資金で業者に支払うことになっている契約です3。
取引先が払わなかったときにも売主が業者へお金を払うのであれば、売主から見れば、売掛金を担保にお金を借りているのと変わりません。
また、契約書にノンリコース(取引先が払わなくても売主に請求しない)の定めがあるかどうかといった形式だけでは判断されず、取引の実態で判断されるとされています3。
もう一つの目安が金額です。
買取代金が債権額に比べて著しく低い場合は、ファクタリングを装った違法な貸付け(偽装ファクタリング)の疑いがあるとされています3。
金融庁は、高額な手数料が資金繰りをかえって悪化させ、多重債務に陥る危険があることも指摘しています3。
契約前の確認点
見積もりを受け取ったら、手数料率を並べる前に、契約書で次の点を探します。
- 取引先が支払わなかったとき、売主が債権を買い戻す定めがないか
- 業者への支払いが、取引先からの入金ではなく売主自身の資金で行われる定めになっていないか
- 買取代金が、売る売掛金の額に比べて著しく低くなっていないか
1つ目と2つ目に当てはまる契約は、手数料がいくら安く見えても、売掛金の売却ではなく借入れに近い取引として見る必要があります。
3つ目は、債権額と受け取れる金額の差を自社で計算すれば確かめられます。
何をもって「著しく低い」とするかの線は示されていないため、差額の大きさだけで違法と決めつけることはできません。
それでも、差が大きいほど契約の中身を詳しく読む理由になります。
正規の業者が提示する手数料の水準は、金融庁の注意喚起からは分かりません。
相場の数字を探すより、契約の性質を確かめたうえで、その手数料を払ってでも今現金化する必要があるのかを、入金予定日までの資金の動きと照らして考えるほうが、費用を抑える判断につながります。
現金化の手数料は、使わなければかからない費用でもあります。
貸倒れは、税務上の扱いを知ると損失の見え方が変わる
3つの類型
3区分の最後は、回収できなかった売掛金です。
督促を重ねても入金されない売掛金は、帳簿に残っている限り「いつか入るはずのお金」として扱われ続けます。
実際には入らないと分かっていても、費用として落とせる時期は税務上のルールで決まっています。
国税庁は、売掛金などの貸倒れを損金に算入できる場合を、法律上の貸倒れ、事実上の貸倒れ、形式上の貸倒れの3つの類型に分けて説明しています4。
損金とは、法人税の計算で所得から差し引ける費用のことです。
どの類型に当たるかによって、いつ、どの金額を損金にできるかが変わります。
このうち、売掛管理の担当者が日々の記録で備えやすいのが、形式上の貸倒れです。
形式上の貸倒れの条件と限界
形式上の貸倒れは、継続して取引していた相手との取引を停止してから1年以上弁済がない場合に、売掛債権の額から備忘価額を差し引いた残りを損金経理できるという扱いです4。
備忘価額とは、債権がまだ存在することを忘れないよう帳簿に残しておく最低限の金額のことです。
損金経理とは、決算で費用として処理することを指します。
この扱いには限りがあります。
一度だけ取引した相手や、担保物がある場合は、形式上の貸倒れの対象になりません4。
また、これは法人税の扱いです。
個人事業の所得税の場合や、個別の事情による判断は、別に確かめる必要があります。
ここから、売掛管理で準備できることが見えてきます。
1年の起点は取引を停止した時点なので、いつ取引を止めたのかが記録に残っていないと、後から1年以上たったかどうかを示しにくくなります。
最後の入金日、取引停止を決めた日、督促の記録を取引先ごとに残しておくことが、損失が出た後の処理を進める土台になります。
気を付けたいのは、税務上の処理は損失を取り戻すものではないという点です。
損金にできれば法人税の計算上は費用になりますが、入らなかった売掛金そのものが戻ってくるわけではありません。
貸倒れを減らす取り組みと、貸倒れが出た後の処理は、分けて考えておく必要があります。
前者は取引先ごとの入金状況を早くつかむ管理の話で、後者は記録と税務の話です。
取引先が大きい場合は、振込手数料と支払手段のルールが変わった
2026年1月の改正点
費用を抑える手がかりは、自社の中だけにあるわけではありません。
取引先との支払条件にも、売り手が負担している費用が含まれています。
入金のたびに振込手数料を差し引かれている、代金を手形で受け取り現金になるまで時間がかかる、といった状態がそれにあたります。
2026年1月、下請法は改正されて取適法(中小受託取引適正化法)として施行されました5。
委託事業者と中小受託事業者の間の取引について、次のような行為が禁止されています5。
- 協議に応じず、一方的に代金を決めること
- 手形などで代金を支払うこと
- 電子記録債権やファクタリングによる支払いのうち、支払期日までに代金に相当する金銭を得ることが困難なもの
- 振込手数料を中小受託事業者に負担させること
前の節で見たファクタリングは、売り手が自分から売掛金を現金化する取引でした。
ここで禁止されているのは、発注する側が代金の支払い手段として電子記録債権やファクタリングを使い、受け取る側が支払期日までに代金に相当する金銭を得にくくなる場合です。
同じ言葉が出てきても、誰が何のために使うのかが違います。
対象となる取引であれば、入金額から差し引かれている振込手数料や、現金化まで時間のかかる手形での支払いは、取引先と見直しを話し合える条件になります。
差し引きが続いている取引があれば、話し合う前に、その取引が対象かどうかを確かめておくことが出発点です。
自社の取引が対象か
取適法が適用されるのは、製造委託等や役務提供委託等といった、決まった類型の取引に限られます5。
自社の商品をそのまま卸しているような一般の商品販売は、対象に当たらない場合があります。
売掛金があるすべての取引に当てはまるわけではない点が、最初の分かれ目です。
対象になるかどうかは、取引の類型と、発注する側・受注する側の事業者の規模で決まります。
今回の改正では、資本金の基準に当てはまらない場合でも、従業員数の基準(製造委託等は300人、役務提供委託等は100人)に当てはまれば対象とされることになりました5。
資本金は小さくても従業員の多い取引先との取引が、新たに対象に入る可能性があるということです。
売り手として確かめる順番は、次のようになります。
まず、問題にしている取引が製造委託等や役務提供委託等に当たるかを見ます。
次に、取引先と自社の資本金を、資本金で当てはまらなければ従業員数を、公正取引委員会の示す基準と照らします。
判断に迷う場合は、取引の内容が分かる発注書や契約書を手元に置いて、公正取引委員会の情報や専門家に確かめると、話し合いの根拠がはっきりします。
対象外の取引では、振込手数料をどちらが負担するかは、当事者間の取引条件として残ります。
その場合でも、契約書や請求書に振込手数料の負担者が書かれていないなら、契約更新や請求書の書式を見直す機会に明記しておくと、差額のある入金を照合するときに、手数料の差引きなのか未入金なのかで迷う場面が減ります。
見直しの順序と、効果の確かめ方
見直しの順序
ここまでの内容を、実際に手を付ける順に並べます。
費用をかけずに確かめられることを先に、契約や支出を伴う判断を後に置くという考え方で組んでいます。
- 3区分(ツール料金・現金化の手数料・回収できなかった分)に、直近数か月の金額と毎月の作業時間を書き出す
- 振込手数料の差引きや手形払いがある取引先について、取適法の対象になる取引かを確かめる
- ツールは、初期費用・月額・従量課金・人数の追加料金を足した年間の総コストと、必要な機能の有無で比べる
- 現金化を考えるなら、手数料を比べる前に、買い戻しや売主自身の資金での支払いの定めがないかを確かめる
- 未入金が続く取引先は、最後の入金日と取引停止の日を記録し、貸倒れの処理に備える
2つ目をツールの比較より前に置いているのは、対象となる取引であれば、新しい支出をせずに入金額の目減りを見直せる可能性があるためです。
4つ目は使わなければ発生しない費用なので、資金繰りの必要が出たときに検討すれば足ります。
5つ目は他の見直しと並行して、取引先ごとの記録として続けていくものです。
貸倒れの税務、ファクタリングの注意喚起、取適法は、それぞれ別の費用に対応しています。
貸倒れは損失、ファクタリングは現金化、取適法は支払条件の話です。
一つの制度や資料で売掛金の費用全体が片付くわけではないため、区分ごとに確かめる相手を変えていくことになります。
確認する指標
見直しの効果は、2つの数字の前後で比べます。
1つは、3区分を合計した月次の総コストです。
もう1つは、入金予定日を過ぎても入金されていない取引の件数です。
総コストだけを見ると、ツールを上位プランに替えた月は費用が増えたように見えます。
その一方で、消込が早くなり、未入金に気づくまでの日数が縮んでいれば、入金遅延の件数に変化が出ることがあります。
反対に、ツール料金を下げたのに未入金の件数が増えているなら、削った機能や手順の中に、回収を支えていたものがあった可能性があります。
どちらの数字にも、どれだけ下がれば成功という決まった目安はありません。
比べる基準になるのは、自社の見直し前の数字です。
見直しを始める前の月の値を、そのまま残しておきます。
振込手数料の差引きについては、差額のある入金の件数も合わせて追うと、取引先との話し合いの結果を数字で確かめられます。
差額が残っている取引先があれば、その取引が取適法の対象かどうかの確認が済んでいるかを振り返る手がかりにもなります。
3つの区分のどこが重いかは、請求件数、送付方法、取引先の構成によって会社ごとに違い、手元の明細だけでは見直しの入口を決めにくいことがあります。
相談では、現在の請求・入金の明細を3区分に当てはめ、ツールの比較から始めるか、支払条件や記録の整理から始めるかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 費用の区分 | ツール料金・現金化の手数料・回収できなかった分に分けて金額を出す |
| ツールの比較 | 初期費用+月額+従量課金+人数の追加料金の年間総額と、必要な機能で比べる |
| ファクタリング | 手数料より先に、買い戻しや売主自身の資金での支払いの定めがないかを見る |
| 貸倒れ | 形式上の貸倒れは継続取引先との取引停止から1年以上弁済がない場合。取引停止日を記録する |
| 支払条件 | 取適法の対象取引なら、振込手数料を受託側に負担させることや手形払いは禁止 |
| 効果の確認 | 月次の総コストと入金遅延の件数を、見直し前後で比べる |
取適法の対象かどうかやファクタリング契約の読み方は取引の中身で判断が分かれ、一般的な説明だけでは自社に当てはめきれない場合があります。 相談の場で、取引先ごとの入金差額や支払手段を一覧にし、どの取引を専門家や公的な情報で確かめるべきかを整理できます。
よくある質問
請求書の発行を自動化すると、売掛管理の費用はどれくらい減りますか
削減額は、今の作業の仕方と送付件数によって変わるため、一律には言えません。
ツールを入れると利用料という費用が新たにかかり、その代わりに請求書の作成や入金の照合にかかる手作業が減る、という関係です。
たとえば郵送代行は1通ごとの従量課金のため、紙の請求書が多いままだと、プランの月額より郵送料金のほうが大きくなることもあります1。
毎月の作業時間と送付件数を書き出し、ツールに移すとどの転記と確認がなくなるのかを具体的にしてから比べると判断しやすくなります。
ファクタリングの手数料が安ければ、利用して問題ありませんか
手数料の安さだけでは判断できません。
金融庁は、契約書上は債権譲渡でも、売主が債権を買い戻す定めや、売主自身の資金で業者に支払う定めがあるなど、経済的に貸付けと同様の働きをする取引は貸金業に当たるおそれがあるとしています3。
先に契約の性質を確かめ、そのうえで手数料を払ってまで現金化が必要かを、入金予定日までの資金の動きと照らして考えます。
取引先に振込手数料を引かれているのは、すべて違法になりますか
すべてではありません。
取適法で振込手数料を中小受託事業者に負担させることが禁止されているのは、委託事業者と中小受託事業者の間の製造委託等や役務提供委託等の取引です5。
一般の商品販売など対象外の取引では、振込手数料の負担は当事者間の取引条件の問題になります。
まず取引の類型と、取引先・自社の資本金や従業員数が基準に当たるかを確かめます。
貸倒れ処理は、取引が止まってからどれくらいで可能ですか
法人税の形式上の貸倒れでは、継続して取引していた相手との取引を停止してから1年以上弁済がない場合に、備忘価額を残した金額を損金経理できます4。
一度だけの取引の相手や、担保物がある場合はこの扱いの対象外です4。
法律上の貸倒れや事実上の貸倒れは別の類型で、条件が異なります。
個人事業の場合や個別の判断は、別途確かめてください。
従業員が数名の会社でも、取適法の対象になることはありますか
あります。
取適法が守るのは受託する側の中小事業者で、自社が小さいことは、受託側として対象に当たる方向の事情です。
対象かどうかは、取引が製造委託等や役務提供委託等に当たるかと、発注側・受注側の資本金や従業員数で決まります。
改正で、資本金の基準に当てはまらなくても、従業員数の基準(製造委託等300人、役務提供委託等100人)に当てはまれば対象とされるようになりました5。
- 1 出典:株式会社マネーフォワード「マネーフォワード クラウド請求書 料金プラン」(2026年)
- 2 出典:株式会社ラクス「楽楽明細 料金プラン」(2026年)
- 3 出典:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
- 4 出典:国税庁「タックスアンサー No.5320 貸倒れの損金算入」
- 5 出典:公正取引委員会「取適法・振興法(中小受託取引適正化法)」(2026年)