◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 受注管理システムの規模は、受注件数ではなく明細行数・ピーク・取引先と連携先で測る
- 商奉行iクラウドの上限は、受注・売上・債権・入金伝票の明細の合計で区切られている
- 候補の上限は、何を数えるか・どこまでか・超過時の扱いの3点で読み、年度ごとか累計かも確かめる
- 3年先の見込みを幅で置き、上振れしたときの拡張費用まで含めて比べる
- 契約前に5つの質問への回答を集め、導入後は使用量を定期的に点検する
目次

受注管理システムは「何件から導入か」に答えが出ない理由:件数より先に見る3つのもの
注文が増えて、メールやFAXからの転記、在庫や出荷との突き合わせに追われ、入力の誤りも目立ってきました。
受注管理システムを検討し始めても、「何件から入れるべきか」「候補の製品はうちの件数に耐えるのか」という問いの答えは、なかなか見つかりません。
確認できた製品では、上限は注文の件数ではなく、伝票に並ぶ明細の件数で区切られていました。
件数の目安を探すより、自社の明細件数、注文が集中する時期、取引先と連携先を数えて、候補の上限の定義と照らしましょう。
そうすれば、規模に合う選び方を自分で決められます。
上限を超えたときの条件は、契約前に確かめておきます。
同じ受注件数でも、負担と必要な規模は違う
受注管理システムの導入時期を一つの件数で決められる共通の基準は、見当たりません。
業種も取引先も違う会社に同じ線を引けるほど、受注の負担は件数に素直に比例しないからです。
件数の線を探すより、自社の規模を測る見方を持つほうが、導入の判断にも製品選びにも役立ちます。
たとえば、取引先から届く注文が、ほとんど商品1点ずつの会社を考えてみてください。
注文を1件登録すれば、入力する商品の行も1行で終わります。
一方、1件の注文書に多数の品番と数量、納期が並ぶ会社では、同じ1件でも入力する行が多くなります。
在庫を確かめる品目も、出荷指示に移す行も、それだけ増えます。
受注件数だけを並べれば両社は同じ規模に見えますが、担当者が手を動かす量も、システムに登録されるデータの量も大きく違います。
受注の負担は、注文の中身だけでなく、どこから届き、どこへ渡すかでも変わります。
FAXで届く取引先、メールの添付で届く取引先、Webの注文画面から入る取引先が混ざれば、同じ内容の注文でも取引先ごとに受け取り方と転記の手順が分かれます。
登録した受注を在庫の台帳、出荷の指示書、請求書へ移すたびに転記が起き、そのたびに数字の照合が必要になります。
月の受注件数が変わらなくても、取引先が一社増えるだけで手順が一つ増えることもあります。
件数より先に見る3つのもの
規模を見誤らないために、受注件数より先に次の3つのものを数えておくと、導入の要否も製品の向き不向きも判断しやすくなります。
<ul><li>1件あたりの明細行数:明細とは、伝票の中で商品や品目ごとに分かれた行のことです。
注文1件が何行になるかで、入力量も登録されるデータ量も変わります。</li>
<li>取引先・チャネルの数:注文がFAX、メール、Web、電話など、いくつの経路と形式で届くかです。
経路ごとに受け取り方と転記の手順が分かれます。</li>
<li>在庫・出荷・請求との連携:登録した受注を、どの台帳や画面へ移しているかです。
移す先が多いほど、転記と照合の回数が増えます。</li></ul>
このうち明細行数は、システムの上限を読むときにもそのまま使います。
確認できた製品では、登録できる量が受注件数ではなく明細の件数で区切られていたからです1。
取引先・チャネルの数と連携先は、上限の数字とは別に、どんな取り込み方や出力の仕組みが必要かを決めます。
この3つは、導入効果を測った結果ではありません。
規模を見誤らないための見方として整理したものです。
3つを数えたからといって、ミスが必ずなくなる、作業時間がどれだけ減るといった結果が保証されるわけではありません。
ただ、どこで転記と確認が重なっているかが数字で見えると、システムに任せたい部分と、人が確認し続ける部分の線を引きやすくなります。
| 見るもの | 数える単位 | 件数だけでは見えないこと |
|---|---|---|
| 明細行数 | 注文1件あたりの行数と年間の合計行数 | 入力量と登録されるデータ量 |
| 取引先・チャネル数 | 受注経路と形式の種類 | 受け取り方と転記の手順の分かれ方 |
| 連携先 | 受注を移す台帳や画面の数 | 転記と照合の回数 |
自社の受注量を「明細件数・ピーク・取引先数・連携先」で数える
受注件数と明細行数を分けて数える
最初に、受注件数と明細行数を別々に数えます。
単位を明細行数にそろえるのは、確認できた製品が登録できる量を明細の件数で示していたからです1。
件数のままでは、候補の上限と比べられません。
受注件数は注文書や受注伝票の枚数、明細行数はその中に並ぶ商品や品目の行の数です。
数える元になるのは、いま受注を記録している台帳です。
Excelの受注台帳なら、1行に1品目を入れているか、1行に1注文を入れて品目をセルの中にまとめているかで、数え方が変わります。
後者の場合は、品目を行に分けてから数えないと、明細行数を少なく見積もってしまいます。
販売管理や会計のソフトに売上の明細が残っているなら、そこから月ごとの行数を出すほうが早いこともあります。
数える期間は、少なくとも過去1年分を月ごとに分けておくと、後の工程で使い回せます。
年間の合計は上限との比較に、月ごとの値は次に見る集中の確認に使います。
送料や値引き、セット品の内訳を別の行として登録している運用なら、その行も明細として数えるかを決めておきます。
何を1明細と数えるかは製品ごとに定義が違います。
まずは自社の運用どおりの行数を出し、品目の行と送料などの行を分けて残しておくのが安全です。
受注だけでなく、受注から起こす売上、請求、入金の記録も、同じ表に月ごとの行数で並べておきます。
製品によっては、受注以外の伝票も合わせて上限を数えるためです。
受注の行数だけを持って候補と照らすと、実際に使う量を小さく見てしまうことがあります。
ピーク月・ピーク日の集中を確認する
年間の合計が同じでも、手作業が破綻する場面は会社によって違います。
月末や期末、季節の繁忙期に注文が集中する会社もあれば、毎月ほぼ一定の会社もあります。
月ごとの行数を並べると、どの月に山があるかが見えます。
ピークの月だけでも日ごとに数えると、週明けに週末分がまとめて届く、締め日の前に駆け込みが来るといった偏りが分かります。
ピークの数字は、総量の上限と比べるためではなく、受注が最も詰まる日に何が必要かを見るために使います。
ピーク日の注文を手で1件ずつ入力していて追いつかないなら、取引先から届くデータをまとめて取り込む仕組みがあるかが、候補を絞る条件になります。
製品の画面を試せる機会があれば、平均的な日ではなくピーク日の量を想定して、取り込みと確認の手順を通してみてください。
実際の詰まり方を想像しやすくなります。
集中は取引先ごとにも偏ります。
大口の取引先が月末にまとめて発注してくるなら、その取引先の形式を取り込めるかどうかが、ピーク日の負担をほぼ決めてしまいます。
次に取引先と経路を書き出すときは、ピークを生んでいる取引先に印を付けておくと役に立ちます。
取引先・チャネルと連携先を書き出す
次に、注文がどこから、どの形式で届くかを取引先ごとに書き出します。
FAXや郵送の紙、メールに添付されたPDFやExcel、取引先のWeb受発注の画面、CSVのデータ、電話といった経路を、取引先の名前と並べて一覧にします。
それぞれの取引先が月にどれくらいの明細を送ってくるかを横に置くと、どの経路の負担が大きいかが分かります。
連携先も同じ要領で、登録した受注を次にどこへ渡しているかを書き出します。
在庫を引き当てる台帳、倉庫への出荷指示、請求書の作成、会計への売上の計上などです。
それぞれについて、手で打ち直しているのか、CSVで出し入れしているのか、紙で渡しているのかを記録しておきます。
システムとの接続で減る可能性があるのは、この打ち直しと照合の部分です。
受注画面に入れた品番と数量を、出荷指示書にもう一度入れ、請求書で三たび確かめる、といった重複が一覧から見えてきます。
反対に、取引先から届いた注文の内容がおかしくないか、在庫で本当に足りるかといった判断は、システムに移しても人の確認として残ります。
どの転記が減り、どの確認が残るかを分けておくと、導入後の担当の分け方も考えやすくなります。
3年先までの増加見込みを置く
最後に、いま数えた年間の明細行数を3年先まで伸ばしてみます。
システムは導入した年だけでなく、契約を更新しながら使い続けるものです。
導入時点の量だけで選ぶと、使い始めてから上限に迫られることがあります。
見込みは一つの数字にせず、いまと同じ量が続く場合、計画どおりに増える場合、想定より大きく増える場合の幅で置きます。
新しい取引先との契約、扱う品目の追加、Web受注の開始など、明細行数を押し上げる予定があれば、どの年に効いてくるかも書き添えます。
品目が増える計画は、受注件数を変えずに1件あたりの行数を増やします。
件数だけを見ていると見落としやすい増え方です。
ここまでで、明細行数の年間と月ごとの値、ピークの偏り、取引先と経路、連携先、3年先までの幅がそろいます。
この表が、候補製品の上限と照らすときの手元の資料になります。
上限はどこに書かれているか:プラン区分・伝票種別・超過時の扱いの読み方
料金ページのプラン区分
自社の数字がそろったら、候補製品の上限を探します。
ここでは、OBCの商奉行iクラウドを例に、どこに何が書かれているかをたどります。
製品を勧めるためではなく、記載の読み方を確かめるための例です。
最初に見るのは料金ページです。
商奉行iクラウドの単体では、小規模企業向けと中小企業向けでプランが分かれ、それぞれに登録できる明細件数の上限が区分されています。
中小企業向けは400,000件までで、小規模企業向けはそれより小さい上限の区分です2。
契約は法人単位の年間契約とされています2。
この並びから読み取れるのは、プランを選ぶことが、扱える明細の量を選ぶことに直結している点です。
料金の差を見比べる前に、前の節で出した3年先の明細行数がどちらの区分に収まるかを見ましょう。
そうすると、検討すべきプランが先に絞れます。
ただし、料金ページの区分だけでは、その明細に何が含まれるのかまでは分かりません。
この上限は商奉行iクラウドのプラン条件であって、受注管理システム一般の相場や、導入すべき時期の目安ではない点にも注意が必要です。
仕様ページの伝票種別と合計の数え方
数える対象は、仕様・動作環境のページに書かれています。
商奉行iクラウドでは、受注伝票・売上伝票・債権伝票・入金伝票の合計で、標準400,000明細まで登録できるとされています1。
つまり、この枠を受注伝票だけで使えるわけではありません。
受注から売上、債権、入金までの記録が同じ枠を分け合います。
注文1件がこの枠をどれだけ使うかは、運用によって変わります。
たとえば、受注伝票に並べた品目の行を、出荷のときに売上伝票としてもう一度起こす運用を考えてみてください。
この場合、同じ品目が受注と売上の両方で明細として数えられる可能性があります。
入金の記録は、複数の注文分をまとめて1回の入金として登録するのか、注文ごとに分けるのかで行数が変わります。
前の節で受注以外の伝票の行数も並べておいたのは、この合計と比べるためです。
在庫や出荷の側を別の製品で管理する場合は、その製品にも上限があるかを見ます。
同じOBCの蔵奉行iクラウドでは、入荷・出荷・債務・支払などの伝票の合計で、標準400,000明細までとされています1。
受注の側と在庫・出荷の側で枠が分かれているため、出荷の明細は在庫側の枠で数えることになります。
受注管理と在庫管理を組み合わせて使うなら、どの伝票がどちらの枠に入るかを分けて照合します。
もう一つ読み落としやすいのが、この合計が年度ごとの量なのか、過去の分も含めた累計なのかという点です。
今回確認した仕様と料金のページの記載からは、その区切りは読み取れませんでした。
年度ごとであれば、年間の明細行数と比べれば足ります。
累計であれば、保存している過去分も含めて、何年で枠に届くかを考える必要があります。
同じ上限でも、どちらかによって余裕の見え方が大きく変わるため、ベンダーに直接確かめる項目になります。
超過時の拡張パック
上限を超えそうなときの扱いも、同じ仕様のページにあります。
商奉行iクラウドでは、標準の明細件数は拡張パックで追加できるとされています1。
標準の枠を超える見込みがあっても、追加の手段が用意されていることは分かります。
ただし、拡張パックの料金は同じページでは示されておらず、個別に問い合わせて確かめることになります。
費用を比べるときは、標準の枠に収まる間の料金だけで判断しないことが大切です。
3年先の見込みで、上振れの場合に枠を超えることもあり得ます。
そのときは、その年に必要になる拡張の費用まで含めて、プランを上げる場合や別の製品を選ぶ場合と比べます。
拡張の料金が分からないまま契約すると、増えた分の費用を後から知ることになります。
他の製品も同じ3点で読み、自社の数字を当てはめる
この例を一般化すると、どの製品でも上限は次の3点で読めます。
<ul><li>何を数えるか:受注件数か明細か、どの伝票を合算するか、送料などの行も含むか</li><li>どこまでか:プランごとの上限の数字と、それが年度ごとか累計か</li><li>超過時の扱い:追加の手段、その料金、プラン変更の条件</li></ul>
商奉行iクラウドが明細件数を単位にしているからといって、ほかの製品も同じ単位とは限りません。
受注件数、利用する人数、保存できるデータの容量など、別の物差しで区切っている製品もあり得ます。
単位が違う製品どうしを比べるときは、前の節でそろえた明細行数、受注件数、取引先の数を、それぞれの製品の単位へ当てはめ直してから比べます。
上限が料金表にも仕様書にも見当たらない場合は、上限がないと受け取らず、何で区切られているかを質問として残しておきます。
照合では、3年先の明細行数の幅を上限と並べます。
上振れの場合でも枠に収まるなら、そのプランは規模の面で候補に残せます。
計画どおりなら収まるが上振れでは超える場合は、拡張の料金とプラン変更の条件が判断を左右します。
計画どおりでも超えるなら、一つ上の区分か、別の製品を比べることになります。
| 確認する点 | 商奉行iクラウドでの記載 | 他製品で見る場所 |
|---|---|---|
| 何を数えるか | 受注・売上・債権・入金伝票の明細の合計 | 仕様書や動作環境の上限の項 |
| どこまでか | 小規模企業向けと中小企業向けのプラン区分ごとの明細件数の上限 | 料金表のプラン区分 |
| 超過時の扱い | 拡張パックで追加(料金は問い合わせ) | 仕様書の注記や料金表のオプション |
クラウド型・パッケージ・個別開発をどう選ぶか
提供形態の違いは、上限の示され方に表れる
受注管理システムの提供形態は、大きく3つに分けて考えられます。
提供元が運用するサービスを契約して使うクラウド型、製品を自社のサーバーやパソコンに導入するパッケージ、自社の業務に合わせて作る個別開発です。
前の節で見た商奉行iクラウドはクラウド型の一例です。
上限は料金のプラン区分として示され、超える場合の追加手段も用意されていました1。
この形では、自社の明細行数をプランの区分に当てはめるだけで、収まるかどうかの見当がつきます。
年間契約であれば、どの時期にプランを見直せるかも、契約の更新時期と結びついてきます2。
パッケージや個別開発では、上限が料金表の区分として示されるとは限りません。
扱える量が、導入するサーバーの性能、データベースの設計、ライセンスの数え方などで決まることもあります。
何が上限を決めているのかを提供元や開発会社に説明してもらわないと、比べられません。
どの形態が向いているかは会社の数字と業務の形で変わります。
形態の名前から選ぶより、自社の数字に照らしてどの観点を重く見るかを決めるほうが、判断を誤りにくくなります。
比べる観点:上限の明示・超過時の追加手段・連携の自由度
形態をまたいで比べるときは、次の3つの観点で、各候補の説明をそろえて並べます。
3つの観点のうちどれを重く見るかは、前の節で数えた自社の数字で決まります。
明細行数が上限の区分のどこに入るかがはっきりしていて、増え方も読めるとしましょう。
その場合は、上限が明示されている製品のほうが照合しやすく、契約前に不安を残しにくいといえます。
反対に、3年先の上振れの幅が大きい場合は、上限の数字そのものより、超えたときにどんな手段があり、いくらかかるかのほうが判断を左右します。
取引先の数が多く、届く形式がばらばらな会社では、連携の自由度が最初の条件になります。
取引先ごとに違うExcelの並びやCSVの項目を、そのまま取り込めるのか、変換の手間が残るのかで、受注を登録するまでの作業が変わるからです。
在庫や出荷、会計に別の仕組みを使っているなら、受注データを出す形式と、受け取る側の形式が合うかも、提供形態にかかわらず確かめます。
個別開発は、取り込みや出力の形式を自社に合わせて作れる点が比較の材料になります。
その代わり、上限をどこに置き、超えたらどう広げるかを、自社と開発会社で決めて管理する立場になります。
料金表の区分という形で上限が示されないぶん、前の節の3点を開発の打ち合わせで言葉にしてもらい、文書に残しておくことが照合の代わりになります。
| 確認観点 | 何を見るか | 判断が分かれる場面 |
|---|---|---|
| 上限の明示 | 何を数え、どこまで扱えるかが文書で示されているか | 3年先の明細行数を当てはめて収まるかを判断したいとき |
| 超過時の追加手段 | 枠を超えたときに追加・プラン変更・設計の見直しのどれで対応するか | 上振れの見込みがあるとき |
| 連携の自由度 | 取引先からの取り込み形式と在庫・出荷・請求・会計への出力の方法 | 取引先ごとに形式が違うときや連携先が多いとき |
取引先とのデータ連携・電子取引の要件が選定を変える場合
取り込みが自動になると、上限の効き方が変わる
取引先から届く注文をデータのまま取り込めるようになると、受注の量を抑えていたものが変わります。
手で入力していたころは、担当者が1日に打ち込める行数が実質的な天井でした。
注文が増えても入力が追いつかないという形で、問題が表に出ていたはずです。
取り込みが自動になれば人手の天井が外れ、届いた明細がそのまま登録されていきます。
そうなると、先に効いてくるのはシステムの明細の上限です。
連携を前提に選ぶなら、3年先の見込みも置き直す必要があります。
基準にするのは、いま手で処理できている量ではなく、取引先から届く注文の量そのものです。
手作業が追いつかずに受注を絞っていたり、後回しにしていたりした分も、含めて数えます。
これを数えないと、導入後に想定より早く枠が埋まることがあります。
連携先が増える計画があれば、そちらの製品の枠もあわせて見直します。
電子取引データの保存で、求める機能が変わる場合
取引先からメールの添付やWebの画面で注文書を受け取っている場合は、選定に関わる要件がもう一つあります。
電子帳簿等保存制度のうち、電子取引データの保存の要件です。
その中には、受け取ったデータを後から探し出せるようにしておく検索の要件などがあります。
この検索の要件には例外があります。
基準期間、つまり2課税年度前の売上高が5,000万円以下の保存義務者などは、電子取引データの検索要件が不要とされています3。
ただし、出力した書面を整理して提示できるようにしておくことを条件とする場合の記載もあります3。
適用されるかどうかは、事業者ごとの状況で変わります。
この条件は、システムの規模選びを直接決めるものではありません。
影響するのは機能の範囲の判断です。
受注管理システムに検索や保存の機能まで求めるのか、別の保存の方法で足りるのかが変わります。
そのため、件数の照合とは別の行として、候補製品に求める機能の一覧に加えておきます。
自社に例外が当てはまるかは、顧問の税理士などに確かめておくと判断がぶれません。
導入後に上限へ近づいたとき:契約前に確認する質問と判断の手順
契約前にベンダーへ聞く5つの質問
上限に近づいてから慌てないために、聞くべきことは契約前に聞いておきます。
次の5つの質問は、ここまでの数え方と上限の読み方から整理した確認項目です。
各社の答えは製品と契約で異なるため、回答をそろえて並べることで初めて比べられるようになります。
<ol><li>上限は何を数えていますか。
どの伝票の明細を合算し、送料や値引きの行も1明細と数えますか。
年度ごとですか、累計ですか。</li>
<li>上限を超えたら、どんな追加手段がありますか。
その料金はいくらですか。</li>
<li>プランの変更は、契約の途中でもできますか。
どんな条件がありますか。</li>
<li>登録したデータは、どんな形式で、どこまで書き出せますか。</li>
<li>契約期間の縛りはどうなっていますか。
解約や更新は、いつ判断できますか。</li></ol>
1つ目は、自社の数字をそのまま当てはめるための質問です。
2つ目と3つ目は、上振れしたときの費用と手順を先に知るためのものです。
商奉行iクラウドのように拡張パックの料金が問い合わせになっている製品では、ここで答えをもらわないと費用の比較が完成しません1。
4つ目は、乗り換えの道を残しておくための質問です。
受注や売上の履歴を書き出せない、書き出せても一部だけという場合、別の製品へ移るときに過去の記録の扱いで迷います。
5つ目は、期間の決まった契約で見直しの時期がいつ来るかを知るために聞きます。
法人単位の年間契約のように期間が決まっていれば、プランの変更や乗り換えを考えられる時期もそこで区切られます2。
使用量の点検の頻度と対応の判断
導入した後は、登録した明細の数を定期的に見ます。
月ごとに、伝票の種類別の明細数と、上限に対してどこまで使ったかを記録しておくと、増え方の速さが分かります。
点検の頻度は、ピークの月の前後を細かく見るなど、前に確認した集中の時期に合わせると無駄がありません。
あわせて、上限のどこまで使ったら対応を考え始めるかの割合を、社内で決めておきます。
何割が適切かは、増え方の速さと、次の契約更新までの残りの期間で変わるため、一律の値はありません。
増え方が速く、更新までが遠いほど、早めの割合に置いておくほうが選択肢を残せます。
割合に届いたら、取れる手段を3つ並べて比べます。
同じプランのまま拡張で枠を足す、上のプランへ変える、別の製品へ乗り換える、の3つです。
拡張やプランの変更なら、いまの運用と画面をそのまま続けられますが、費用は増えます。
乗り換えには、取り込みや連携の不満もまとめて見直せる余地があります。
その一方で、データの書き出しと移し替え、担当者が新しい手順に慣れるまでの手間がかかります。
契約前に5つの質問への答えをもらっていれば、ここでの比較は、手元の回答と最新の明細数を並べるところから始められます。
伝票の種類ごとの明細行数を台帳から数え直す作業や、候補製品の上限の定義を自社の運用に当てはめる作業は、台帳の作りや取引先の形式によって迷いやすい部分です。
相談では、いまの受注台帳から明細行数・ピーク・連携先をどう数えるかと、候補製品のベンダーに何を確かめるべきかを、自社の状況に合わせて整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 規模の測り方 | 受注件数ではなく、伝票の明細行数で年間・月間を数える |
| 数える範囲 | 製品が合算する伝票(受注・売上・債権・入金など)の行数もそろえる |
| 見込み | 3年先まで、現状維持・計画どおり・上振れの幅で上限と比べる |
| 上限の読み方 | 何を数えるか・どこまでか(年度か累計か)・超過時の扱い |
| 連携と制度 | 取り込みの形式と、電子取引データの検索要件の要否を機能の一覧に加える |
| 契約前と導入後 | 5つの質問の回答を集め、導入後は使用割合を定期的に点検する |
上限の数え方や拡張の料金は製品と契約ごとに異なり、各社の回答を比べるには質問の前提をそろえておく必要があります。 相談では、集めた回答と自社の3年先の見込みを並べ、どの条件が判断を左右しているかを確かめられます。
よくある質問
受注件数が少なくても受注管理システムを入れる意味はありますか。
件数が少なくても、手間が件数以上にかかっている場合があります。
1件あたりの明細行数が多い、取引先ごとに形式が違う、在庫・出荷・請求へ何度も転記している、といった場合です。
導入するかどうかは件数より、どこで打ち直しと照合が重なっているかで考えるほうが判断しやすくなります。
反対に、明細が少なく連携先もほとんどない場合は、いまの台帳の整え方で足りることもあります。
明細件数の上限を超えたらどうなりますか。事前に何を確認すべきですか。
扱いは製品によって異なります。
商奉行iクラウドでは、標準の明細件数を拡張パックで追加できるとされていますが、料金は問い合わせとなっています1。
契約前に、上限が何を数えるか、超えたときの手段と料金、プラン変更の条件を聞いておきます。
そのうえで、3年先の見込みで超えるかどうかと合わせて費用を比べます。
Excelから移行するとき、過去の受注データはどこまで引き継げますか。
候補製品がどんな形式のデータを取り込めるかと、いまのExcelの台帳がどう作られているかで決まります。
1行に複数の品目をまとめて入力している台帳は、取り込む前に品目ごとの行へ分ける作業が要ることがあります。
また、上限を登録できる明細の合計で数える製品では、取り込んだ過去の明細も枠を使う可能性があります。
取り込む範囲と上限の数え方は、あわせてベンダーに確かめておきます。
取引先ごとに受注の形式が異なる場合、システム選定で何を見ればよいですか。
上限の数字より、取り込みの方法を先に見ます。
取引先ごとの並びや項目の違いを設定で吸収して取り込めるのか、変換の作業が人の手に残るのかで、登録までの手間が変わるからです。
どの取引先がどの経路と形式で、月にどれだけの明細を送ってくるかを一覧にしておくと、ベンダーに具体的な取り込みの方法を質問できます。
電子取引データの保存要件は、受注管理システムの選定に影響しますか。
影響するのは規模ではなく、システムに求める機能の範囲です。
基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下の保存義務者などは、電子取引データの検索要件が不要とされています3。
ただし、書面での整理・提示を条件とする場合の記載もあり、適用は事業者ごとに変わります。
当てはまるかどうかで、受注管理システムに検索や保存の機能まで求めるかが変わります。
- 1 出典:株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)「商蔵奉行クラウド スペック・動作環境」(2026年)
- 2 出典:株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)「商蔵奉行クラウド 料金」(2026年)
- 3 出典:財務省「令和6年1月スタート 電子帳簿等保存制度の内容と中小企業の対応策」(令和6年)