◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 会場の端末で入力をまとめると、台帳への記入・持ち帰り・読み取り・打ち直しが1回の入力に置き換わり、事務所の仕事は転記から確認に変わる。
- 控えの印刷やメールで紙は残り得るが、紙から打ち直す作業とは分けて数える。
- 商品マスタ・仮品番の未整備、通信の停止、取引先の入力方式が合わない場面では、紙と会期後の転記が戻る。
- 後工程に何が残るかは、基幹が受け入れられる取込形式・項目・頻度で決まる。
- 効果は、次の展示会一回分の注文件数と、読み取り・打ち直し・確認・問い合わせの人時を測って見積もる。
目次

展示会後の転記は、どの工程で時間とミスが出るのか
展示会が終わるたびに紙の注文書や台帳を事務所へ持ち帰り、基幹システムへ打ち直しながら、読みにくい数字を営業担当者に聞き直していませんか。
展示会受注システムで会場の端末に直接入力すれば、台帳づくり・持ち帰り・読み取り・打ち直しを会場での1回の入力にまとめられます。
事務所の仕事も、転記から確認へ変わります。
ただし、どこまで減るかは、受注データを基幹・販売管理へどう渡すか、商品マスタが会期前に整っているか、会場の通信が保てるかで変わります。
公開資料には削減率の数値が見当たりません。
そのため、効果は自社の注文件数と作業時間で見積もるのが確実です。
台帳・注文書への記入から持ち帰りまで
紙で展示会受注をしている会社の流れは、書式が違っても、工程に分けて眺めると似た形をしています。
アパレル向け受注システムの提供元が紹介する導入企業の発言では、以前は展示会のたびに台帳を作って注文数を書き込み、社内に持ち帰って転記していたと語られています1。
社名や事業内容は記されておらず、アパレルの一社の声なので、そのまま他業種に当てはめることはできません。
それでも「台帳をつくる」「書く」「持ち帰る」「打ち直す」という並びは、自社の作業を書き出すときの手がかりになります。
会場での記入は、商談と同時に進みます。
たとえば、営業担当者が取引先のバイヤーと話しながら、品番、色やサイズ、数量、希望納期を注文書に書き込む場面を考えてみてください。
相手を待たせないように略記や走り書きが増え、同じ品番を別の行に重ねて書くこともあります。
ここで生まれた書き間違いは、後の工程へそのまま運ばれていきます。
持ち帰りの間、注文は紙の中にしかありません。
会期が数日続けば、注文書は担当者ごとのファイルや封筒に分かれて溜まり、事務所に戻るまで社内の誰も注文の全体を見られません。
在庫の引き当てや生産数の検討を早く始めたくても、紙が届いて入力されるまで待つことになります。
この工程が生むのは転記の手間だけではありません。
注文が社内で見えるようになるまでの遅れも、ここから生まれています。
読み取りと基幹への打ち直し、確認
事務所に戻った注文書を基幹システムへ入力するのが、会場にいなかった営業事務の担当者だとします。
書いた本人ではないので、作業は崩れた数字や略記を読み解くところから始まります。
判読できない箇所は営業担当者に問い合わせ、返事を待つ間は入力が止まります。
会期直後の営業担当者は取引先へのお礼や追加の商談で忙しく、問い合わせへの返事は後回しになりやすくなります。
打ち直しの過程でも、紙から画面へ文字を移すときに新しい誤りが入り込みます。
数量の桁違い、似た品番の取り違え、取引先コードの選び間違いなどは、記入時の誤りとは別にここで生まれ得るものです。
そのため入力後には紙と画面を突き合わせる確認が要り、同じ注文を二度読むことになります。
誤りが入り込む場所は、会場での記入と事務所での打ち直しの二か所です。
確認は、その両方の誤りを拾う役目を負っています。
工程を並べると、手間とミスの出どころは次の図のようになります。
どの工程にどれだけ時間がかかっているかは会社ごとに違い、比較できる公開の数値は見当たりません。
自社の時間を測る方法は、最後の節で手順として扱います。
展示会受注システムで減る作業と減らない作業
入力が会場1回に集約される範囲
展示会受注システムの中心にあるのは、注文を会場で直接データにすることです。
大塚商会が紹介するApaRevoのモバイル展示会オプションでは、iPadなどのモバイル端末から、展示会場や取引先の店頭で受注登録ができると説明されています1。
Power EdgeのアパレルRelationshipは、インターネットにつながればタブレットやスマートフォンからも使えるWebシステムです。
オーダーFAXの手入力をなくし、受注データを蓄積する仕組みとして紹介されています2。
いずれもアパレル・ファッション向け製品の提供元による説明で、削減量を測った結果ではありません。
前の節の工程に当てはめてみます。
会場で端末に入れた内容がそのまま受注データとして残るなら、台帳への記入、紙の持ち帰り、読み取り、基幹への打ち直しは、会場での1回の入力に置き換わります。
先ほどの営業担当者は、注文書に書く代わりに端末で品番を選んで数量を入れます。
営業事務の担当者は、崩れた字を読み解く必要がなくなります。
注文は会期中から社内で見えるようになり、紙が事務所に届くまで待つ時間も縮まります。
分かれ目になるのは、会場で入力した内容が、そのまま次の工程に使われるかどうかです。
端末に入れた注文を、事務所で改めて基幹へ入れ直す運用であれば、手書きを読む手間は減っても、打ち直しそのものは残ります。
この点は基幹への渡し方で決まるため、後の節で詳しく見ます。
転記が確認に変わる工程
会場で入力をまとめると、事務所の仕事は「写す」から「確かめる」に変わります。
Relationshipの説明では、メーカー側で入力作業、FAX到着の確認、入力データのチェックが省力化されるとしています2。
紙が届いたかを確かめ、届いた紙を読み、入力した内容を見直すという一連の作業が軽くなる、という説明です。
ただし提供元の説明であり、どれだけ軽くなるかは示されていません。
確認そのものが不要になるわけではありません。
商談しながらの入力では、数量の押し間違いや似た品番の選び違いが端末でも起こり得ます。
変わるのは確認の中身です。
紙の運用では「読めるか」「写し間違えていないか」を見ていました。
会場入力では、「入力された注文が取引先の意図どおりか」「納期や数量に無理がないか」を見ることになります。
入力を会場での1回に集約し、後工程を転記から確認に変えるという見方は、EC-Riderの整理とも重なります5。
メール・印刷出力など残る作業
会場で入力しても、紙がまったく出なくなるとは限りません。
ApaRevoのモバイル展示会オプションでは、受注内容をメールで送ったり印刷したりできると説明されています1。
たとえば取引先から「今日の注文内容を控えとしてほしい」と言われたら、その場で印刷して渡す運用は十分に考えられます。
ただし、この紙は紙の運用での注文書とは役割が違います。
以前の注文書は、社内で打ち直すための元の記録でした。
会場入力後の印刷物は、すでにデータになった注文の控えです。
事務所でこれを読み直して入力する必要はありません。
「紙が残っているか」と「紙から転記しているか」を分けて数えると、導入後の効果を取り違えずに見積もれます。
| 工程 | 紙の運用 | 会場で端末入力した後 |
|---|---|---|
| 会場での記録 | 台帳・注文書に手書き | 端末に1回入力 |
| 持ち帰り | 紙を事務所へ運ぶ | 不要(データとして残る) |
| 読み取り | 書いた人以外が判読 | 不要 |
| 基幹への入力 | 紙から打ち直し | 渡し方によって変わる |
| 確認 | 紙と画面の突き合わせ | 入力内容が意図どおりかの確認 |
| 控え | 複写やコピー | メール送信や印刷で出す場合がある |
導入しても紙や手作業が残るのはどんな場合か
商品マスタ・仮品番が未整備のとき
会場入力に切り替えた後で紙の控えや会期後の入力が戻る原因として、EC-Riderは、商品マスタの登録漏れ、通信の停止、取引先側の運用負担の三つを挙げています5。
これは自社メディアとしての整理で、何社で起きたかを数えた結果ではありません。
ただ、どれも会場で入力が止まる理由として筋が通っており、導入前に一つずつ見ておく価値があります。
商品マスタとは、品番、色やサイズの展開、価格など、受注で選ぶ商品の情報をまとめた一覧です。
端末で商品を選んで入力する形なら、マスタにない商品は選べません。
展示会には新作や参考出品のように、正式な品番がまだ決まっていない商品が並ぶことがあります。
営業担当者が端末で探しても見つからなければ、その注文だけは紙に書くしかありません。
その紙は会期後に事務所でまとめて入力されるので、システムを入れたのに転記が一部戻る形になります。
仮品番は、正式な品番が決まる前に使う仮の番号です。
仮品番で受けておけば会場での入力は止まりませんが、後で正式品番へ置き換える作業が残ります。
この置き換えを誰がいつ行うかを決めておかないと、受注データと基幹の品番が合わないまま会期後を迎えます。
通信が止まったとき
Webで動く製品は、インターネットにつながることを前提にしています2。
展示会場では、来場者が多い時間帯に無線LANが混み合ったり、ブースの位置によって電波が弱かったりすることがあります。
入力の途中で画面が進まなくなれば、営業担当者は取引先を待たせないために紙に書き始めます。
その紙は会期後に入力し直すことになり、ここでも転記が戻ります。
通信が切れたときに端末側で入力を続けられるかどうかは製品によって違い、一律には言えません。
そのため、提供元に挙動を聞いておくことと、つながらなかったときの予備の書式を用意しておくことは、別々に進めます。
予備の書式をシステムの入力項目と同じ並びにしておけば、会期後に入力する人が項目の対応で迷わずに済みます。
取引先の入力方式が合わないとき
受注の入力を誰が行うかによっても、紙の残り方は変わります。
自社の営業担当者が入力するなら、取引先の負担はほとんど変わりません。
取引先のバイヤーに自分で入力してもらう形なら、相手にとって新しい操作が増えます。
慣れたFAXや紙の注文書で送りたいという取引先が一部でも残れば、受け付ける窓口が二つになり、その分の紙は従来どおり打ち直すことになります。
紙の注文書や押印を求めるかどうかは、取引先との取り決めによって違います。
一律に「紙でなければならない」と考える必要も、「すべて電子にできる」と決めつける必要もありません。
主要な取引先ごとに、どの形式なら注文を受けてもらえるかを聞いておくのが現実的です。
電子データで受けた注文書の保存
紙が減ると、代わりに電子データの扱いを考える必要が出てきます。
国税庁の電子帳簿保存法の解説では、取引に関する書類を電子情報処理組織を使ってやり取りすることを電子取引とし、その取引データは法の規定に従って保存しなければならないとしています4。
取引先とシステム上で注文をやり取りすれば、その注文データをどう保存するかという問いが生まれます。
これは、紙が残るかどうかとは別の確認事項です。
使う展示会受注システムが保存の要件に沿った形でデータを残せるのか、別の仕組みで保存するのかは、製品ごとに違います。
提供元と顧問税理士に確かめる必要があり、印刷して保管すれば足りるのかどうかも含めて、自社だけで決めつけないほうが安全です。
効果は基幹・販売管理への渡し方でどう変わるか
出力ファイルで取り込む場合
前の節までで、会場の入力が1回にまとまるかどうか、どんなときに紙が戻るかを見てきました。
次に効果を左右するのは、会場で集めたデータを基幹・販売管理システムへどう渡すかです。
製品の説明から確認できる渡し方は、出力ファイルを取り込む方法、同じ製品群の基幹へ直接入れる方法、メールや印刷で受け取る方法の三つです。
Relationshipでは、受注データをExcelなどのソフトで加工できる形式で出力できると説明されています2。
この方法では、営業事務の担当者がファイルを出力し、基幹の取込機能で読み込ませる流れになります。
手書きを読む作業も、一件ずつ打つ作業もなくなります。
代わりに、ファイルの項目を基幹の項目に合わせる作業と、取り込んだ結果を確かめる作業が残ります。
たとえば受注システム上の取引先名と、基幹の取引先コードが一致しない場合は、取り込む前に対応表で置き換える必要があります。
品番の書式や納期の日付の書き方が違うだけでも、取込でエラーになることがあります。
対応づけを一度決めてしまえば、次の展示会からは同じ手順で進められます。
一方、基幹に取込機能がなければ、ファイルを見ながら画面に打つことになり、転記は形を変えて残ります。
同じ製品群の基幹へ直接入力する場合
ApaRevoのモバイル展示会オプションでは、会場の端末からApaRevoシステムへ直接入力できると説明されています1。
受注システムと基幹が同じ製品群でつながっていれば、ファイルの出力や取込の手順は要りません。
事務所に残るのは、入力された注文の確認が中心になります。
ただし、これはApaRevoを基幹として使い、そのオプションを利用する場合の話です。
別の基幹を使っている会社が、同じように直接つながると考えることはできません。
今の基幹を使い続けるのか、受注システムとあわせて見直すのかで、選べる渡し方が変わります。
基幹側の受入条件の確認項目
三つ目のメール送信や印刷は、取引先への控えには向いています。
ただ、基幹へ渡す手段としては打ち直しを残します。
手書きより読みやすくはなりますが、メールの本文や印刷物を見ながら画面へ入力する作業は変わらないためです。
既存の基幹と連携できるかどうかは、受注システム側よりも、基幹がどんな形式の受注データを受け入れられるかで決まります5。
受注システムの提供元に「連携できますか」と聞くだけでは、自社の基幹で何が必要かまでは分かりません。
基幹の保守会社や社内の担当者に、次の点を確かめておくと話が具体的になります。
<ul><li>取込形式:どのファイル形式を、どの画面や機能から読み込めるか</li><li>項目の対応:取引先、品番、色やサイズ、数量、単価、納期を、基幹のどの項目に入れるか</li><li>頻度:会期中に毎日取り込むのか、会期後にまとめて取り込むのか</li><li>エラー時の扱い:取り込めなかった行を、誰がどう直すか</li></ul>
このうち頻度は、効果の見え方を大きく変えます。
会期後にまとめて取り込むなら、事務所の確認は会期後に集中します。
会期中に取り込めれば、確認も在庫の引き当ても会期中に始められ、注文が社内で見えるまでの遅れも縮まります。
| 渡し方 | 後工程に残る作業 | 前提になること |
|---|---|---|
| 出力ファイルを基幹へ取り込む | 項目の対応づけと取込結果の確認 | 基幹に取込機能があり形式と項目が合う |
| 同じ製品群の基幹へ直接入力 | 入力内容の確認 | 受注システムと基幹が同じ製品群でつながる |
| メール送信・印刷で受け取る | 画面や紙からの打ち直しと確認 | 基幹へデータを渡す仕組みを使わない |
導入前の準備と現場の負担
商品マスタの整備
準備にかかる時間と手間は、商品マスタをどこまで整える必要があるかと、基幹とどこまでつなぐかで変わります5。
何日あれば足りる、という一律の目安はありません。
商品マスタの整備は、展示会に出す商品を会期前に登録しておく作業です。
既存の基幹に商品情報があり、それを受注システムへ移せるなら、負担は小さくなります。
新作が多く、品番や価格が会期直前まで決まらない場合は、登録の締切をいつにするか、間に合わない商品を仮品番で受けるかを先に決めておく必要があります。
この作業を商品企画や営業事務の担当者が担うなら、会場で入力する営業担当者とは別の人に負担がかかります。
導入を判断するときは、その人たちの会期前の繁忙と重ならないかも見ておきたいところです。
端末と通信環境
端末については、iPadなどのタブレットやスマートフォンで使えると説明されている製品があります12。
台数は、会場で同時に商談する営業担当者の人数をもとに考えます。
一台を交代で使う運用では、混み合う時間帯に入力待ちが生まれます。
その結果、ひとまず紙に書いて後で入れる、という動きが出やすくなります。
通信は、会場の無線LANに頼るのか、自社でモバイル回線を用意するのかを決めておきます。
可能なら会期前に会場か似た環境で試し入力をして、画面の切り替えにかかる時間や、品番を探す手順に無理がないかを見ておきます。
操作研修や初期設定の手間は製品と人員によって違い、公開資料から一律には判断できません。
導入を決める立場の人は、会場で入力する担当者が慣れるまでにどんな準備が要るかを、提供元に具体的に聞いておくと見積もりがぶれにくくなります。
準備期間の見方
具体的な期間が分かる例として、アウトドアウェアブランド「Columbia」を展開する株式会社コロンビアスポーツウェアジャパンがあります。
同社の展示会受注オーダーサイトは、2022年11月から2023年2月までの約3か月で構築されたと紹介されています3。
これは、ecbeingのBtoB向けECを使って新たにサイトを構築した一社の例です。
商品数、連携の範囲、社内の体制が違えば期間も変わるため、自社の目安として使うことはできません。
期間を見積もるなら、次の展示会の日付から逆算します。
商品マスタの登録締切、基幹との取込の試験、会場での試し入力をそれぞれいつまでに終えるかを並べるほうが、自社の事情に合った見通しになります。
事例で見る:紙・FAXの受注を電子化した後に変わったこと
FAX・Excelの受注からタブレットでの受注へ
コロンビアスポーツウェアジャパンの事例では、展示会の受注を、FAXで受ける注文とExcelの注文シートで受けていた形から、タブレットでデジタルカタログを見せながら受注する形に切り替えたと紹介されています3。
デジタルカタログとは、商品の写真や情報を端末の画面で見せる電子版のカタログです。
この事例で変わったこととして挙げられているのは、在庫を確認するための電話やメール、問い合わせへの対応が減ったことです3。
一方で、転記にかかっていた時間がどれだけ減ったかは述べられていません。
この事例は、転記削減の量を示す根拠ではなく、電子化で何が変わり得るかを示す具体例として読むのが適切です。
会場での入力に変わった実感
ApaRevoの導入企業の発言では、以前は台帳への記入と持ち帰っての転記をしていたものが、会場でiPadから入力する形になり、非常に効率的になったと語られています1。
社名や事業内容は示されておらず、どの作業がどれだけ減ったかも分かりません。
それでも、最初の節で見た「記入」「持ち帰り」「転記」の工程がなくなったことを、現場の言葉で示す一例にはなります。
事例から自社に持ち帰れること
二つの例は、いずれも提供元が公開した導入事例です。
効果の量を自社に当てはめる根拠にはなりませんが、変化が転記の時間だけに表れるわけではないことは読み取れます。
コロンビアの例では在庫確認や問い合わせの対応が、ApaRevoの導入企業の例では台帳と持ち帰りの作業が、それぞれ変わったと語られています。
自社で効果を考えるときも、転記の時間だけを見る必要はありません。
会期後に営業担当者へ届く問い合わせ、取引先からの在庫確認、注文が社内で見えるまでの日数など、紙の運用によって生じている作業を書き出してみます。
そうすると、導入で何を変えたいのかがはっきりし、提供元への質問も具体的になります。
| 項目 | 切り替え前 | 切り替え後 |
|---|---|---|
| 受注の受け方 | FAXの注文とExcelの注文シート | タブレットでデジタルカタログを見せながら受注 |
| 在庫確認の電話・メール | あり | 減ったと紹介 |
| 問い合わせ対応 | あり | 減ったと紹介 |
| 構築期間 | ― | 2022年11月〜2023年2月の約3か月 |
| 転記時間の削減量 | ― | 記載なし |
自社の状況に合う進め方をどう判断するか
導入前チェックの順序
ここまでの確認項目を、判断する順に並べ直すと次のようになります。
<ol><li>渡し先の受入形式:基幹・販売管理が、どの形式の受注データをどの頻度で受け入れられるか</li><li>商品マスタの整備量:展示会に出す商品を会期前にどこまで登録できるか、仮品番をどう扱うか</li><li>会場の通信:無線LANか自前の回線か、つながらないときの予備の書式をどうするか</li><li>取引先の書式:主要な取引先が、端末での入力や控えの受け取りに応じられるか</li><li>電子データの保存:受注データを誰がどの形で保存するか</li></ol>
渡し先を最初に置くのは、そこで後工程に何が残るかが決まるからです。
商品マスタの項目や連携の範囲も、渡し先の形式に引きずられて決まります。
基幹に取込機能がなければ、会場入力を整えても事務所では打ち直しが続きます。
まず基幹の側で何ができるかを押さえてから、会場側の準備に進むと手戻りが少なくなります。
確認する人も分けておくと進めやすくなります。
渡し先と保存の扱いは、導入を判断する立場の人が、基幹の担当者や提供元、顧問税理士と詰める事項です。
一方、商品マスタの登録締切、会場での端末の台数、通信がつながらないときの動き方は、会場で入力する営業担当者や営業事務の担当者の意見がないと決まりません。
判断する人と現場の人が別なら、それぞれの確認事項を持ち寄る場を一度設けるだけで、導入後の食い違いを減らせます。
進め方は、確認の結果から選べます。
同じ製品群の基幹を使っている、あるいは基幹ごと見直す予定があるなら、直接入力の形が候補になります。
今の基幹を使い続け、取込機能があるなら、出力ファイルで取り込む形を検討することになります。
取引先の対応や通信に不安が残る場合は、一つの展示会や一部の取引先から始め、紙が戻った場面を記録しながら広げる進め方も一つの考え方です。
効果が確かめられた方法というわけではありませんが、自社のどこで紙が戻るかを見ながら手当てできる利点があります。
自社の人時の測り方
展示会受注システムでどれだけ転記が減ったかを示す数値は、公開資料からは得られません。
そのため、効果は自社の数字で見積もるのが確実です。
ここでいう人時(にんじ)は、作業にかかった時間を人数分足し合わせた量のことです。
測る対象は、次の展示会一回分の作業です。
<ul><li>注文件数:展示会一回で受けた注文書の枚数や明細の行数</li><li>読み取りと打ち直しの人時:営業事務の担当者が紙を読み、基幹へ入力した時間の合計</li><li>確認の人時:紙と画面を突き合わせ、誤りを直した時間の合計</li><li>問い合わせの人時:判読できない箇所を営業担当者に聞いたやり取りの時間</li></ul>
会期後の数日間、作業を始めた時刻と終えた時刻を担当者ごとに記録するだけでも、大まかな人時は分かります。
過去の展示会に記録がなければ、残業の記録や作業日報から、会期後の期間の作業を拾い出す方法もあります。
合計を注文件数で割れば、一件あたりの転記と確認の時間が見えてきます。
見積もりでは、測った人時を「なくなる見込みの作業」と「残る作業」に分けます。
出力ファイルで取り込む形なら、読み取りと打ち直しの人時はなくなる側に、確認と取込の作業は残る側に入ります。
メール送信や印刷で受け取るだけなら、読み取りの手間は軽くなっても、打ち直しは残る側に入ります。
さらに、商品マスタの登録漏れや通信の停止で紙に戻りそうな注文があれば、その分も残る側に寄せておきます。
そうしておけば、導入後に「思ったほど減らなかった」という食い違いを小さくできます。
後工程に何が残るかは、自社の基幹が受け入れられる形式や商品マスタの状態で決まり、製品の説明を読むだけでは判断しにくいためです。
相談では、今の受注の流れと基幹の受入形式を並べ、会場入力にしたときにどの転記が消え、どの確認や取込の作業が残るかを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 減る作業 | 台帳への記入、持ち帰り、読み取り、基幹への打ち直しが会場での1回の入力に置き換わる |
| 残る作業 | 入力内容の確認、控えの印刷やメール、ファイル方式なら項目の対応づけと取込 |
| 紙が戻る場面 | 商品マスタ・仮品番の未整備、通信の停止、取引先の入力方式が合わない |
| 渡し方の見方 | 基幹が受け入れられる取込形式・項目・頻度で、後工程に何が残るかが決まる |
| 効果の見積もり | 次の展示会一回分の注文件数と、読み取り・打ち直し・確認・問い合わせの人時を測って分ける |
測った人時を減る作業と残る作業に分ける段階で判断が分かれやすく、取引先の書式や会場の通信といった条件も重なるためです。 相談では、自社の注文件数と作業時間をもとに、紙が戻りそうな場面と、導入前に整える準備の順序を確かめられます。
よくある質問
展示会受注システムを入れれば、紙の注文書は完全になくなりますか
完全になくなるとは限りません。
会場で端末に入力すれば、社内で打ち直すための注文書は不要になりますが、取引先への控えとして受注内容を印刷する運用は残り得ます1。
また、商品マスタにない商品の注文、通信が止まったときの注文、紙を望む取引先の注文は紙に戻ります。
導入後は、紙の枚数よりも、紙から打ち直している件数で効果を見るほうが実態に合います。
基幹システムが古くても、展示会の受注データを取り込めますか
取り込めるかどうかは、受注システムよりも、基幹がどんな形式の受注データを受け入れられるかで決まります5。
ファイルの取込機能があれば、Excelなどで加工できる形式で出力したデータを、項目を合わせて取り込む方法が考えられます2。
取込機能がない場合は、データを見ながら画面に入力する作業が残ります。
基幹の保守会社に、取込形式、項目の対応、取込の頻度を聞くところから始めます。
会場の通信が不安定なとき、入力はどうすればよいですか
通信が切れたときに端末で入力を続けられるかは製品によって違うため、導入前に提供元へ挙動を聞いておきます。
あわせて、システムの入力項目と同じ並びの予備の書式を用意し、紙で受けた注文を誰がいつ入力するかを決めておくと、会期後の転記を少なく抑えられます。
会場の無線LANに頼るか、自社でモバイル回線を用意するかも事前に決めておきます。
導入前に、転記にかかっている時間をどう測ればよいですか
次の展示会一回分について、注文件数と、営業事務の担当者が紙を読んで基幹へ入力した時間、紙と画面を突き合わせて直した時間、営業担当者への問い合わせの時間を記録します。
担当者ごとに作業の開始と終了の時刻を残すだけでも大まかな人時は分かり、注文件数で割れば一件あたりの時間が見えます。
測った人時を、導入でなくなる作業と残る作業に分けると、効果を自社の数字で見積もれます。
電子データで受けた注文書は、どう保存すればよいですか
国税庁は、取引に関する書類を電子的にやり取りすることを電子取引とし、その取引データは法の規定に従って保存しなければならないとしています4。
使う展示会受注システムでその保存に対応できるのか、別の仕組みで保存するのかは製品によって違います。
印刷して保管すれば足りるかどうかも含め、提供元と顧問税理士に確かめてから運用を決めてください。
取引先が紙の注文書しか使わない場合は、どう進めればよいですか
取引先に入力してもらう形にこだわらず、会場で自社の営業担当者が代わりに端末へ入力し、受注内容を印刷やメールで控えとして渡す方法があります1。
この形なら、取引先の手元に紙が残っても、社内では打ち直しが要りません。
紙の注文書や押印を求めるかどうかは取引先との取り決めによるため、主要な取引先ごとに受けてもらえる形式を聞いておくと、受付の窓口が二つに分かれるのを防ぎやすくなります。
- 1 出典:大塚商会(ERPナビ)「展示会受注の入力を効率化したい(ApaRevo モバイル展示会オプション)」(2026年閲覧)
- 2 出典:Power Edge Co., Ltd.「アパレル・ファッション業界向け展示会受注システム Relationship」(2026年閲覧)
- 3 出典:ecbeing「コロンビアが展示会受注をBtoB ECでDX化し業務効率を大幅改善」(2023年)
- 4 出典:国税庁「電子帳簿保存法 通則(制度の概要等)」(2026年閲覧)
- 5 出典:EC-Rider「展示会受注システムの効果|受注業務とデータ活用の変化」(2026年閲覧)