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オンライン受発注で食品の注文業務はどれだけ減る?減る作業と見積もり方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • オンライン受発注で直接減るのは、取引先が自分で入力することで不要になる受付と転記で、欠品・代替・数量の確認などの例外対応は残る。
  • 公的な実証の中小企業平均51.4%は、6業界の共通規格による受発注データ連携の結果で、食品の注文業務の見込みではなく上限側の参考値として扱う。
  • 自社の効果は、移行見込みの取引先の注文件数と1件あたりの受付・転記の時間から幅で出し、残る確認と併用の手間を差し引く。
  • 進めるかは、移行見込みの偏り、残る例外対応の大きさ、費用の回収の3点で判断し、移行しやすい取引先の一部で試して実測と比べる。
  • 2026年度のインボイス枠は受発注など1機能以上を持つインボイス対応ソフトウェアが要件だが、個別ツールが対象かは公式の一覧で確かめる。

50代前半の日本人女性が工場事務所での予定確認をしている場面

注文の受付から転記・確認までに、時間はどこで消えているか

電話やFAXの注文を聞き取って転記し、在庫や納期を確かめ、ミスが出れば謝罪と訂正に追われる。
オンライン受発注にすればどれだけ楽になるのか、社内に数字で説明できなければ話は進みません。
公的な実証では、受発注データの連携で中小企業の業務時間が平均51.4%減りました1。
ただし食品に限った数値ではなく、作業別の内訳もありません。
減るのは主に、取引先が自分で入力することで不要になる受付と転記です。
欠品や数量の確認といった例外対応は残ります。
そのため、自社の注文件数と取引先ごとの移行見込みから減る時間の幅を出し、移行しやすい取引先から試すのが現実的な進め方です。

受付・転記・確認・請求への引き継ぎに分ける

電話・FAX・メールで届いた1件の注文は、受け取った時点では終わりません。
電話なら品名・数量・納品日を聞き取ってメモし、FAXなら手書きの文字を読み取り、メールなら本文や添付から必要な項目を拾います。
そのうえで販売管理の仕組みや出荷用の表に打ち直し、在庫と納品日を確かめ、出荷の指示を出します。
月末には、その注文が請求の元になるデータへ引き継がれます。

日々感じている困りごとは、この流れのどこかに入っています。
聞き間違いは受付で起き、転記ミスは打ち直しの段階で起きます。
締め時間前の電話の集中は、受付と在庫の確認が同じ時間帯に重なるところで負担になります。
「注文処理が重い」とひとまとめにしたままでは、オンライン化で何が変わるのかを説明できません。
1件の注文がたどる作業を順に並べると、どこに時間が溜まっているかを具体的に話せるようになります。

同じ受付でも、注文の手段によって時間の消え方は違います。
電話は聞き取りと記録が同時に進み、その場で在庫の有無を返事できる一方、担当者が受話器の前に縛られます。
FAXやメールは受け取る時刻を担当者の都合に合わせやすいものの、読み取りと打ち直しを後でまとめて行うことになります。
読めない文字や抜けている項目があれば、取引先に折り返して確かめる連絡も加わります。
手段ごとに件数がどれくらいあるかを知っておくと、後で効果を見積もるときの土台になります。

社内で説明しにくいのは、こうした作業の多くが「ついでに」こなされているからです。
電話を受けながらメモを取り、合間に在庫を見て、空いた時間にFAXを打ち込む。
一つひとつは短くても、作業が細切れに混ざっているため、注文処理に1日のどれだけを使っているかが本人にも見えにくくなります。
作業を分けて並べる目的は、この見えにくさをほどき、オンライン化で消える部分と消えない部分を区別することにあります。

オンライン化で変わる作業と残る作業

オンライン受発注では、取引先が画面や専用の仕組みから品名・数量・納品日を自分で入力します。
受注側から見ると、聞き取りや読み取り、そして手元の仕組みへの打ち直しが不要になる部分です。
注文がデータとして届くので、出荷指示や請求の元データへ渡すときの転記も、仕組みどうしがつながっていれば減らせます。
聞き間違いや転記ミスは、人が書き写す工程で起きるものなので、書き写す回数が減ればその機会も減ります。

一方で、注文の入り方が変わっても残る作業があります。
欠品のときに代わりの品を提案する、納品日を調整する、急な数量変更に応じるといった例外対応は、判断そのものが人に残ります。
また、取引先にオンラインでの注文を頼み、使い方を案内する仕事は、導入によって新しく生まれる作業です。
すべての取引先が同時に移るわけではないので、電話・FAXとオンラインの両方を見る期間の手間も加わります。

この切り分けは、作業の性質から考えた整理です。
中小企業庁の解説でも、受発注データの連携を導入した企業には総じて業務効率化の効果が見られたとされていますが、受付や転記がそれぞれどれだけ減ったかという内訳は示されていません1。
そのため、作業ごとの削減時間を一般的な数字で置くことはできず、自社の記録から見積もる形になります。
ただ、減りうる大きさの手がかりは、実証で示された数字そのものから得られます。

作業 オンライン化で変わること 残りやすいこと
受付 取引先が自分で入力するため聞き取りと読み取りが不要になる 内容の念押しや相談の連絡
転記 注文がデータで届くため打ち直しが減る 仕組みがつながっていない部分への手入力
在庫と納期の確認 注文内容を見ながら確認できる 欠品時の代替提案と納品日の調整
出荷指示と請求への引き継ぎ 仕組みがつながっていれば転記が減る 例外対応した注文の修正
取引先への依頼 なし 移行の依頼と使い方の案内・併用期間の突き合わせ
注文1件が受け取られてから請求へ引き継がれるまでの作業の順番
受付、転記、在庫と納期の確認、出荷指示、請求への引き継ぎの順に進む流れ
オンライン化で減る作業・残る作業・新しく生まれる作業の分け方(模式図)
取引先の入力で不要になる作業、判断が人に残る作業、導入で新しく生まれる作業の三つに分けた図

オンライン受発注で業務時間が平均51.4%減った実証と、その数字の読み方

実証が測ったもの

中小企業庁の解説によると、企業間で受発注データをつなぐ12の実証プロジェクトで、中小企業の業務時間は平均51.4%減りました1。
大企業と比べて中小企業のほうが削減率が高く、その要因として、中小企業は限られた実証期間の中でも既存の業務フローを変えやすく、データ連携に取り組みやすかったことが挙げられています1。

この要因は、受注業務を担当する立場から見ると大事な意味を持ちます。
削減の大きさは、仕組みを入れたことだけでなく、仕事の進め方を変えられたかどうかと結び付けて説明されています。
たとえば、届いた注文を紙に打ち出して確認する、受けた注文を別の表に写して出荷担当に渡す、といった手順を残したまま注文の入口だけを変えると、減るはずの転記が別の場所で残ります。
実証から言えるのは、運用を変えられる事業者ほど効果が出やすい可能性がある、というところまでです。

ここでいう受発注データの連携は、EDI(企業間で注文や請求などのデータを決まった形式でやり取りする仕組み)を使ったもので、実証は共通の規格に対応したデータ連携を対象にしています。
取引先が受注サイトから注文を入れる一般的な仕組みについて、導入効果を平均した数字ではありません。
検討している仕組みがどちらの形に近いかで、この数字との距離も変わります。

食品に当てはめるときの限界

実証の対象は、自動車、水インフラ、農林水産、輸出、卸・小売、サービスの6業界です1。
農林水産や卸・小売が含まれてはいますが、食品の注文業務だけを取り出した数値ではありません。
平成28年度補正の事業による実証で、限られた期間に取り組んだ結果でもあります。
受注業務だけを切り出して測った値として示されているわけでもありません。

そのため、51.4%を「自社でも半分になる」という見込みに使うのは避けたほうが安全です。
上司に説明する場面では、「公的な実証では、運用を変えられた中小企業で業務時間が半分ほど減った例がある」と位置づけ、自社の見込みは注文記録から別に出す、と分けて話すほうが説得力を保てます。
実証の数字を上限に近い参考値として置いておけば、導入後の実測がそれを下回っても、説明の筋は崩れません。

最初に分けた作業に戻って読むと、実証の数字は、受付と転記がなくなり、前後の手順も合わせて変えられた場合に起きうる大きさだと考えられます。
自社がどこまで近づけるかは、食品の注文ならではの条件によって、残る作業がどれだけあるかに左右されます。

確認する点 実証の条件 自社に当てはめるときに見ること
対象の仕組み 共通の規格に対応した受発注データの連携 検討している仕組みが同じ種類か
業界 自動車・水インフラ・農林水産・輸出・卸と小売・サービスの6業界 食品の注文の特性は個別に含まれていない
時点と期間 平成28年度補正の実証で期間は限られている 現在の取引先と商品で確かめる必要がある
削減率 中小企業の平均51.4% 自社の見込みではなく上限側の参考として置く
効果の要因 既存の業務フローを変えやすかった 自社で手順を変えられる範囲
51.4%の実証が示すこと・示さないこと・自社での置き方(実証の参考値、模式図)
実証で分かること、実証では分からないこと、自社の見込みでの扱いを三つに分けた図

食品の注文で効果が変わりそうな条件を、自社で確かめる

締め時間と欠品・規格違い

締め時間を設けている場合、注文はその前に集まりやすく、電話が重なる時間帯に受付と在庫の確認が一度に押し寄せます。
注文がオンラインで入るようになれば、電話に出られずに折り返す手間や、通話中に別の電話を待たせる状態は減る可能性があります。
ただし、締め直前に入った注文の在庫を確かめ、間に合わないときに取引先へ連絡する作業は残ります。
締め前の時間帯にどれだけの注文が入っているかを記録から見ておくと、受付の負担がどこに偏っているかが分かります。

欠品や規格違いも同じ見方で考えます。
たとえば取引先が注文した品がまだ入荷しておらず、近い規格の品で代えてよいかを電話で尋ねる場合、注文がオンラインで届いても、その相談はなくなりません。
「注文を受けた後に人が判断して連絡する」注文の割合が大きいほど、オンライン化で消えるのは入口の作業だけになり、時間の減り方は小さくなる可能性があります。

確かめたいのは、過去の一定期間の注文のうち、欠品や代替の連絡が必要だったもの、電話で内容を確かめ直したものがどれくらいあったかです。
受注台帳や電話のメモに残っていれば、件数を数えるだけでおおよその見当がつきます。
記録が残っていない場合は、検討を進めている間の一定期間だけ、該当する注文に印を付けておく方法もあります。

数量変動と少量多頻度

日によって数量が大きく変わる注文は、受け取るたびに「いつもと違うが、間違いではないか」を確かめたくなります。
電話なら会話の中でその場で確かめられますが、オンラインで届いた注文では、普段と違う数量に気づく仕組みか、担当者が目で見る確認が必要になります。
数量の確認をどこまで残すかは、誤った数量で出荷したときの影響と比べて決めることになり、その分は削減の見込みから差し引いて考えます。

少量で頻繁に注文してくる取引先は、1件ごとの受付と転記は短くても、回数が多いぶん時間が積み重なります。
都度の電話やFAXがなくなれば、その積み重なった時間が減る対象になります。
反対に、注文の中身が毎回違い、相談しながら決めている取引先では、回数が多くても例外対応の比率が高くなります。
少量多頻度という条件だけで優先度は決まらず、注文の中身が決まった形かどうかと合わせて見る必要があります。

これらの項目は、効果が出る・出ないを決めつけるためのものではありません。
最初に分けた作業のうち「残る作業」がどのくらいの大きさになりそうかを、自社の数字で測るためのものです。
例外対応の多い注文がどの取引先に集まっているかが分かると、次に考える取引先への依頼の順番にもそのまま使えます。

条件 自社の記録で見るもの 多い場合に残りやすい作業
締め時間前の集中 締め前の時間帯に入る注文の件数 締め直前の在庫確認と間に合わない場合の連絡
欠品と規格違い 代替の提案や確認の連絡が必要だった注文の割合 代替品の相談と取引先への連絡
数量の変動 普段と大きく違う数量の注文の件数 数量の確かめと訂正
少量多頻度 取引先ごとの注文回数と中身が決まった形かどうか 中身を相談して決める注文の受付

取引先に使ってもらうための依頼と、電話・FAXとの併用

取引先の棚卸し

受注側がオンラインの受付を用意しても、取引先が注文の手段を変えなければ、受付と転記は減りません。
注文を入力するのは取引先なので、効果の大きさは、どの取引先がいつ移るかにかかっています。
取引先の何割が移れば効果が出るかについて、目安となる公的な数値は確認できていません。
割合の目安を置くより、自社の取引先を一件ずつ見て、依頼する順番を決めるほうが判断に使えます。

棚卸しでは、取引先ごとに注文件数の多さ、移行の難しさ、注文の規則性の三つを書き出します。
件数の多い取引先が移れば、それだけ受付と転記の回数が減ります。
移行の難しさは、取引先の担当者がパソコンやスマートフォンから注文できる環境にあるか、電話での注文に慣れていて変えにくい事情があるかで見ます。
規則性は、毎回ほぼ同じ品を同じ曜日に頼むのか、毎回相談しながら決めるのかの違いです。

件数が多く、移行しやすく、注文の中身が決まっている取引先は、最初に依頼する候補になります。
件数が多くても毎回相談しながら注文を決める取引先は、オンラインにしても例外対応が残るため、急いで移ってもらっても減る時間は限られるかもしれません。
件数が少なく移行も難しい取引先は、当面は電話やFAXのまま受ける前提で計画しておくと無理がありません。

併用の期間は、オンラインと電話・FAXの両方の受付を見る状態が続きます。
この間は、オンラインで届いた注文と、電話で受けて打ち込んだ注文が同じ台帳に混ざるので、二重に登録していないか、取りこぼしがないかを確かめる手間が加わります。
併用をいつまで続けられるかは、残る取引先の件数と、両方を見る手間を担当者が抱えられるかで決まります。
依頼の段階で取引先ごとに移行の見込み時期を聞いておくと、併用の終わりを見通しやすくなります。

受注側の導入負担

中小企業庁の解説では、受注側の企業が共通EDIの標準に対応する場合、その標準に対応したプロバイダー(データのやり取りを仲介する事業者)と業務アプリケーションを利用するだけで済み、大きな費用はかからないとされています1。
発注する側が共通の標準で注文を送ってくる取引であれば、受注側は始めやすい立場にあるということです。

ただし、これは共通の標準に合わせる場合の、受注側の導入費用についての説明です。
取引先が実際に注文の手段を変えてくれるか、どれくらいの期間で移るかは別の問題で、解説には取引先の移行や併用の状況は書かれていません1。
自社で受注サイトのような仕組みを用意し、取引先にそこから注文してもらう形を考えている場合は、費用の見方も依頼の進め方も変わります。
どちらの形が合うかは、主な取引先がすでにどのような仕組みで注文を出しているかを聞くところから見えてきます。

取引先の状況に応じた依頼の優先度と扱い(模式図)
最初に依頼する候補、急いでも減る時間が限られる取引先、当面電話やFAXで受ける取引先に分けた図

導入前に見ておく費用と補助制度の条件

補助制度の要件

費用は、導入する仕組みの形や取引先の数によって変わるため、ここでは相場の金額は置きません。
検討する仕組みの見積もりを取るときは、利用料や初期費用に加えて、初期の設定、取引先への案内、担当者が操作に慣れるまでの時間も負担として並べておくと、後で削減時間と比べやすくなります。

補助制度では、デジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠(インボイス対応類型)が、受発注の機能を持つソフトウェアを対象に含めています。
要件は、インボイス制度に対応し、会計・受発注・決済の機能のうち1種類以上を持つソフトウェアであることです2。
補助額が50万円以下なら1機能以上、50万円超350万円以下なら2機能以上が必要とされています2。

補助率は、ソフトウェアの補助額のうち50万円以下の部分が3/4以内で、小規模事業者は4/5以内です2。
ハードウェアだけを申請することはできず、ソフトウェアの導入と組み合わせる必要があります2。

迷いやすいのは、「受発注の機能がある」ことと「補助の対象になる」ことが同じではない点です。
検討しているツールが対象になるかどうかは、公式の対象ツールの一覧で個別に確かめる必要があります。
ここで触れたのは2026年度のインボイス枠の条件で、他の枠では要件が異なる可能性もあります。
申請を考える段階では、最新の公募要領で要件と期限を確かめてから進めることになります。

補助で変わるのは費用の負担であり、取引先への依頼や併用期間の手間が軽くなるわけではありません。
費用の見通しが立っても、移行見込みの取引先が少なければ減る時間も小さいままなので、費用と時間は分けて見ておきます。

時間以外の観測項目

オンライン化の効果を時間だけで説明すると、聞き間違いや転記ミスが減ったかどうかが抜け落ちます。
誤受注や問い合わせの件数がどう変わるかを示す公的な数値は確認できていないため、ここは効果の根拠ではなく、自社で記録しておく項目として扱います。

<ul><li>注文内容の誤りで、出荷のやり直しや訂正の連絡が発生した件数</li><li>取引先から「注文が届いているか」「納品日はいつか」と問い合わせがあった件数</li><li>締め時間を過ぎてから受け付けた注文の件数</li><li>電話・FAXで受けて打ち込んだ注文と、オンラインで届いた注文の件数</li></ul>

導入前にこれらを数えておけば、導入後に同じ数え方で比べられます。
前後で数え方が違うと、件数が減ったのか記録の仕方が変わったのかを区別できなくなります。
項目と数える期間を先に決めておくことが、後で社内に結果を示すときの支えになります。

見積もりに並べる負担と、2026年度インボイス枠の条件、補助で変わらないこと(模式図)
見積もりに並べる負担、補助の要件、補助で軽くならない手間の三つに分けた図

オンライン受発注の効果を自社で見積もり、進めるかを判断する手順

見積もりの式

自社の効果は、一つの数字ではなく幅として出します。
考え方は次のとおりです。

<ul><li>今かかっている時間:手段ごとの1日の注文件数 × 1件あたりの受付・転記・確認の時間</li><li>減る時間:移行見込みの取引先からの注文件数 × 1件あたりの受付と転記の時間</li><li>差し引く時間:例外対応が残る注文の確認と、併用期間の台帳の突き合わせ</li></ul>

1件あたりの時間は、感覚で置くより、何日か実際に計ったほうが確かになります。
電話の注文なら通話と打ち込みの時間を、FAXなら読み取りと打ち込みと折り返しの連絡の時間を、分けて計ります。
分けて計っておくと、オンライン化で消える部分と残る部分を、最初に整理した作業の区分のまま見積もりに使えます。

移行見込みは、棚卸しで「最初に依頼する」とした取引先だけで計算した場合と、「いずれ移る」と見た取引先まで含めた場合の二通りで出すと、下限と上限の幅になります。
上司に示すときも、取引先の移行が思うように進まなかった場合の数字を最初から並べておけば、見込みが外れたときの説明に困りません。

公的な実証の51.4%は、この式に入れる数字ではありません。
自社の実測がない段階で「半分になるはず」と置くと、取引先の移行が進まなかったときに説明がつかなくなります。
計算した上限が実証の数字を大きく超えるようなら、移行見込みか1件あたりの時間の置き方が楽観的すぎないかを見直す目安にする、という使い方にとどめます。

進める判断の3点

見積もりの幅が出たら、次の3点で進めるかどうかを判断します。

<ul><li>移行見込みの取引先に偏りがあるか:減る時間が一部の取引先に集中していれば、その取引先が応じてくれるかどうかで効果のほとんどが決まります。</li>
<li>残る例外対応がどれくらい大きいか:欠品・代替・数量の確認が多い場合、入口の作業が減っても担当者の忙しさは思ったほど変わらない可能性があります。</li>
<li>費用を月々の削減時間で回収できるか:補助を使う場合は自己負担の額を出し、減る時間を人件費に置き換えて比べます。</li></ul>

どれか一つが不利だからといって、すぐに見送りになるとは限りません。
減る時間が一部の取引先に偏っていても、その取引先が協力的なら小さく始められます。
例外対応が大きい場合は、注文の入口を変える効果が限られることを理解したうえで、受付と転記の分だけを目的に進めるかどうかを考えることになります。
費用の回収が見通せない場合は、移行見込みが下限のままでも成り立つかを確かめ、成り立たなければ時期を改めるのも一つの判断です。

一部の取引先で試す

全取引先に一度に依頼するより、移行しやすく注文の中身が決まっている取引先の一部で試すほうが、見積もりと実際の差を確かめられます。
試す範囲が小さければ、併用で増える手間も担当者が抱えられる範囲に収まります。

試す期間に見るのは、移行した取引先の注文で受付と転記がどれだけ減ったか、例外対応がどれだけ残ったか、併用で増えた手間がどれくらいか、の三つです。
導入前に決めた観測項目と同じ数え方で比べれば、社内への説明でも「この取引先の注文では、これだけの作業がなくなった」と具体的に話せます。

結果が見積もりの下限を下回った場合は、どの作業が残ったのかを見直します。
取引先が注文を入れた後に電話で念押しをしてくる、届いた注文をまた紙に打ち出して確認している、といった手順が残っていれば、それは仕組みよりも運用の問題です。
実証で中小企業の削減率が高かった要因として、業務フローを変えやすかったことが挙げられていたのと同じ構図です1。
手順を一つ変えて同じ取引先でもう一度測れば、仕組みの効果と運用の影響を分けて捉えられます。

自社の効果を幅で見積もり、判断して試すまでの進め方
件数と時間の計測、二通りの移行見込み、差し引き、3点での判断、一部の取引先での試行の順に進む流れ

注文の手段や取引先の事情が入り組んでいると、どの作業がオンライン化で減り、どこが残るかを担当者一人で切り分けるのは難しいためです。

いまの注文の流れと取引先の構成をもとに、減りそうな作業と残りそうな作業、見積もりのために計っておく項目を一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
減る作業 取引先が自分で入力することで不要になる受付と転記
残る作業 欠品・代替・数量の確認などの例外対応、取引先への依頼、併用期間の突き合わせ
51.4%の扱い 共通規格による受発注データ連携の実証(6業界・平成28年度補正)の中小企業平均。自社の見込みではなく上限側の参考
見積もり 移行見込みの取引先の注文件数×1件あたりの受付・転記の時間から、残る確認と併用の手間を差し引き、幅で出す
判断 移行見込みの偏り、残る例外対応の大きさ、費用の回収
補助制度 2026年度インボイス枠は受発注など1機能以上を持つインボイス対応ソフトが要件。個別ツールは公式の一覧で確認

見積もりの幅を出した後は、どの取引先から試し、併用をどう扱うかで結果が変わるためです。 試す取引先の選び方と、導入前後で比べる記録の項目を確かめ、社内に説明できる形に整えられます。

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よくある質問

取引先がオンライン注文に移らない場合、電話・FAXとの併用はいつまで続けるべきですか。

一律の期間はありません。
残っている取引先の件数と、両方の受付を見て台帳を突き合わせる手間を担当者が抱えられるかで決まります。
件数が少なく移行の難しい取引先は、電話やFAXのまま受け続ける前提で計画しても、移った取引先の分の受付と転記は減ります。
依頼の際に取引先ごとの移行の見込み時期を聞いておくと、併用の終わりを計画しやすくなります。

少量で頻繁に注文してくる取引先は、オンライン化の優先度が低いのですか。

一概には言えません。
1件ごとの受付と転記は短くても回数が多いため、積み重なった時間が減る対象になります。
注文の中身が毎回ほぼ決まっている取引先なら、最初に依頼する候補にもなりえます。
一方、毎回相談しながら注文を決める取引先は、オンラインにしても例外対応が残るため、減る時間は限られる可能性があります。

注文数の少ない事業者でも、受発注システムを入れる意味はありますか。

減る時間は注文件数と1件あたりの時間の掛け算で決まるので、件数が少なければ削減時間も小さくなります。
まずは手段ごとの件数と1件あたりの時間を計り、減る時間と費用の自己負担を比べてみてください。
聞き間違いや転記ミスによる訂正、締め時間後の受付など、時間以外の負担が大きい場合は、その件数も記録して判断材料に加えられます。

補助金を使う場合、対象ツールはどう確かめればよいですか。

デジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠では、インボイス制度に対応し、会計・受発注・決済の機能を1種類以上持つソフトウェアが要件です2。
ただし、受発注の機能があることと補助の対象になることは同じではありません。
検討しているツールが対象かどうかは公式の対象ツールの一覧で個別に確かめ、要件と期限は最新の公募要領で確認してください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年公開、2026年更新)
  2. 2 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(インボイス対応類型)」(2026年度)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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