◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 保守の範囲は一般的な定義ではなく見積り・契約書の作業の記載で決まるため、「頼める/条件付き/記載なし」に仕分けて食い違いを契約前に見つける。
- 必要な水準は止まると困る時間帯・代わりの手段・許容停止時間から決め、受付・応答・復旧を分けて確かめる。
- メーカー保守は期間の区分によって頼める内容が変わり、サポート終了は第三者保守などを検討する分岐点になりうる。
- 費用は一式の金額ではなく、対象・水準ごとの内訳と別料金の作業、前年との明細の違いで比べる。
- 連絡票と障害の記録は発注側が一か所で持ち、更新前に契約の水準と照らし合わせて見直す。
目次

保守の見積りで、何にお金を払っているのかを分ける
保守契約の更新案内や見積りが届いても、「保守費 一式」の一行や年額だけでは、何にお金を払っているのか判断できません。
障害が起きたときに誰へ何を頼むのかも、社内で決まっていないことがあります。
この状態は、見積りと契約書の記載を「依頼できること」と「別契約になりやすいこと」に仕分けると整理できます。
次に、対象が止まったときの業務への影響から、必要な対応時間帯と応答の水準を決めます。
そのうえでメーカー保守・第三者保守・自社対応・都度依頼を範囲と利用条件で比べると、足りない部分と過剰な部分が見えてきます。
見積りの項目を「頼めること」と「別契約になりやすいこと」に仕分ける
保守契約の見積りには、「保守費 一式」「年間保守料」といった一行だけが書かれていることがあります。
この一行に何が含まれるかは、見積書の備考、契約書の別紙、サービス仕様書など、別の書類に分かれて書かれている場合があります。
見積書の金額だけを見比べても、何にお金を払っているのかが分からないのはこのためです。
最初にやることは、手元にある書類をそろえ、対象と作業の記載を一つの表に書き出すことです。
書き出すときは、次の四つの欄を用意すると、後の比較がしやすくなります。
<ul><li>対象:機器の名称と台数、ソフトウェアの名称と版、設置場所</li><li>作業:問い合わせへの回答、障害時の切り分け、部品交換、更新プログラムの提供や適用、設定変更、改修、定期点検など</li><li>時間:受付する時間帯と、実際に対応する時間帯</li><li>方法:電話やメールでの回答、遠隔操作、現地への訪問(オンサイト)</li></ul>
表ができたら、作業の行を三つに仕分けます。
一つ目は、契約書や仕様書に記載があり、追加の費用なしで頼めることです。
二つ目は、記載はあるものの「別途見積り」「時間外は別料金」のように条件が付いていることです。
三つ目は、どこにも記載がないことです。
記載のない作業は、依頼した時点で別見積りや別契約として扱われる可能性があるため、ここでは条件付きの作業とあわせて「別契約になりやすいこと」と呼びます。
たとえば、社内の販売管理に使っているサーバの保守見積りが届いた場合を考えます。
仕様書を読むと、故障した部品の交換は含まれている一方、OSの更新プログラムの適用は「別途」、夜間と休日の訪問は「別料金」と書かれていたとします。
この場合、部品交換は一つ目、更新プログラムの適用と夜間休日の訪問は二つ目に入ります。
そして、障害の原因がハードウェアかソフトウェアかを切り分ける作業がどこにも書かれていなければ、それは三つ目です。
実際に止まったときに最初に必要になるのはこの切り分けなので、記載がないまま契約すると、障害の当日に「どこまで見てもらえるのか」を交渉することになります。
仕分けの目的は、見積りを値切ることではありません。
止まったときに頼めると思っていた作業が、実は契約の外にあったという食い違いを、契約前に見つけることです。
条件付きと記載なしに入った作業のうち、自分の対象に必要なものが分かれば、次に水準を決めるときの材料になります。
保守と運用が一体で扱われる場合の見方
見積りの行に「保守」と「運用」が別々に書かれていると、両者には決まった境目があるように見えます。
しかし、公的なひな形を見ると、そう単純ではありません。
情報処理推進機構(IPA)と経済産業省が公開している情報システムのモデル契約は、受託開発(一部企画を含む)と保守運用を扱う版と、パッケージやSaaS/ASPの活用と保守・運用を扱う追補版に分かれており、追補版には重要事項説明書が付いています1。
公開ページの説明からは、保守と運用をどこで分けるかという定義は読み取れず、両者は一つの契約の枠組みの中で扱われています1。
つまり、「保守」という言葉の指す範囲は、一般的な定義ではなく、契約ごとの記載で決まると考えたほうが安全です。
ある提供元が「運用」として別の行に立てている作業を、別の提供元は「保守」に含めていることもありえます。
見積りを比べるときは、行の名前ではなく、前の表に書き出した作業の中身で突き合わせます。
境目が揺れやすいのは、たとえば稼働状況の監視、バックアップが取れているかの確認、利用者からの操作に関する問い合わせ、アカウントの追加や削除といった作業です。
これらが「保守」の行にあるのか、「運用」の行にあるのか、どちらにも書かれていないのかで、同じ金額でも頼める内容が変わります。
パッケージやSaaSを使っている場合は、ひな形の系統も受託開発型とは分かれているので、自社の契約がどちらに近い形で書かれているかを意識して読むと、記載の抜けに気づきやすくなります。
止まったときの影響から、必要な対応時間帯と応答の水準を決める
止まると困る時間帯と許容停止時間を書き出す
仕分けた作業のうち、どれをどのくらいの速さで頼む必要があるかは、対象が止まったときに業務がどうなるかで決まります。
判断に使うのは、止まると困る時間帯、止まったときに代わりの手段があるか、どのくらいの時間なら止まっていても業務が続けられるか、の三つです。
最後の一つを、ここでは許容停止時間と呼びます。
たとえば、受注データを取り込むサーバが平日の日中だけ使われ、止まっても数時間は電話と紙の控えで受け付けを続けられるとします。
この場合、夜間や休日に対応してもらえる契約を付けても、その時間帯に業務は動いていないため、上乗せした水準を使う場面はほとんどありません。
反対に、24時間注文を受け付けるサイトの基盤であれば、夜間に止まった時点で売上の機会が失われ、翌朝まで待つことはできません。
同じ「受注のシステム」でも、必要な時間帯はまったく違ってきます。
一つのシステムの中でも、構成要素ごとに答えは変わります。
同じ役割の機器が二台あり、一台が止まってももう一台で動き続ける構成なら、その機器の故障は急ぎではない可能性があります。
一台しかない機器や、止まると全体が使えなくなる機器には、より速い対応が必要です。
見積りの対象一覧に、こうした違いが反映されているかどうかも、過不足を見分ける手掛かりになります。
書き出した影響を段階に置き換えておくと、提供元とのやり取りが具体的になります。
参考になるのが、Amazon Web Services(AWS)のサポートプランです。
AWSは、業務停止級、本番停止、障害といった重大度ごとに初回応答時間の目標を定め、その目標はプランの階層によって異なります4。
これはクラウドサービス向けのサポートの仕組みで、保守一般の標準ではありませんが、「どのくらい困っているか」を段階で表し、段階ごとに求める速さを決めるという考え方は、他の保守契約を検討するときにも使えます。
自社で段階を作るなら、たとえば「業務が止まる」「一部の業務が止まる」「不便だが業務は続けられる」「質問や相談」の四段階に分け、それぞれに必要な対応時間帯を書き添えます。
段階の名前や数は自由ですが、自社の言葉で定義しておくと、見積りに書かれた重大度の区分と照らし合わせるときに、どの段階がどの区分に当たるかを確かめられます。
もう一つ注意したいのが、「24時間365日」という表示の読み方です。
AWSでは全プランで24時間365日のサポートが提供される一方、対応範囲や担当者の専門性は階層によって異なります4。
また、サーバやネットワーク機器の第三者保守の一例では、24時間365日の「受付」とオンサイト対応(一部地域を除く)が示され、サービスレベルは希望に応じて選び、見積りで確認する形になっています3。
いずれも提供元ごとの記載ですが、時間帯の表示だけでは、誰がどこまで対応するかは決まらないことが分かります。
受付の時間帯と、実際に作業が行われる時間帯は分けて確かめます。
応答の目標と復旧の目標は別のものとして扱う
水準を決めるときに混同しやすいのが、応答と復旧です。
応答は、連絡を受けた提供元が反応し、対応を始めるまでのことを指します。
復旧は、対象が業務に使える状態に戻るまでのことです。
その間には、原因の切り分け、部品の手配、交換や設定の作業、動作の確認が入ります。
AWSのサポートプランで重大度別に定められているのは、初回応答時間の目標です4。
復旧までの時間を保証するものではありません。
前の項で書き出した許容停止時間と比べるべきなのは本来は復旧までの時間ですが、契約に書かれているのが応答の目標だけということは十分にありえます。
応答が速くても、部品の取り寄せに時間がかかれば、業務は止まったままです。
第三者保守の一例でも、公開ページ上には駆け付けまでの時間や復旧の保証は明記されていません3。
これは、その提供元の水準が低いという意味ではなく、個別の見積りと契約で決める事項だということです。
見積りを依頼するときは、応答の目標、現地に到着するまでの目標、復旧の目標のそれぞれについて、記載があるか、あるならどの重大度に適用されるのかを質問しておくと、回答を比べやすくなります。
復旧の約束が得られない、あるいは約束の内容が許容停止時間に届かない場合は、契約の外で差を埋める方法を考えます。
予備の機器を手元に置く、交換部品を近くに確保してもらう、止まっている間の代わりの業務手順を決めておく、といった手当てです。
どれを選ぶかは対象と費用の兼ね合いで変わりますが、応答と復旧を分けて考えておけば、契約に何を求め、社内で何を準備するかの線引きができます。
| 観点 | 応答 | 復旧 |
|---|---|---|
| 指すもの | 提供元が反応し対応を始めるまで | 対象が業務に使える状態に戻るまで |
| 間に入る作業 | 受付と連絡 | 切り分け・部品の手配・交換や設定・動作確認 |
| 許容停止時間との関係 | 直接は比べられない | 本来比べるべき対象 |
| 契約での記載 | 重大度別の目標として示される例がある | 記載がない場合があり個別に確かめる |
メーカー保守・第三者保守・自社対応・都度依頼を、範囲と条件で比べる
メーカー保守:サポート期間の区分と終了後の扱い
必要な範囲と水準が見えてきたら、それを誰に担ってもらうかを比べます。
まずメーカー保守です。
メーカー保守で注意したいのは、同じ契約名のままでも、製品の時期によって頼める内容が変わることです。
Microsoftの固定ライフサイクルポリシーを例に見ます。
このポリシーでは最低5年間のメインストリームサポートが提供され、その期間にはインシデントサポート、セキュリティ更新、セキュリティ以外の更新の要求が含まれます2。
その後の延長サポートでは、有料のサポートと追加コストなしのセキュリティ更新が提供されますが、設計変更や新機能の要求は受け付けられません2。
一部のコンシューマー製品などには、延長サポートがありません2。
サポートが終了した後のセキュリティ更新は、拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)を介して提供されうるとされ、詳しい扱いは製品ごとに異なります2。
また、セルフヘルプのオンラインサポートは、製品のサポートが終了してから少なくとも12か月間利用できると定められています2。
どの製品がいつどの区分に入るかは、製品ごとに「ライフサイクル製品の検索」で確認する構成になっています2。
これを見積りの読み方に置き換えると、更新案内が届いたときに、対象製品がいまどの区分にいて、契約期間中に区分が変わらないかを確かめる必要がある、ということです。
メインストリームの期間中なら出せたセキュリティ以外の更新の要求が、延長サポートに入ると受け付けられなくなります。
契約の名前が前年と同じでも、中身が変わっている場合があるのはこのためです。
利用側の条件にも目を向けます。
同じポリシーでは、サポートを受ける資格を得るために、最新のService Packや更新プログラムの展開が必要な場合があるとしています2。
保守契約を結んでいても、更新を長く止めている環境では、相談した時点で更新の適用を先に求められる可能性があるということです。
社内の事情で更新を止めている対象があるなら、その状態でサポートを受けられるかを先に確かめておきます。
ここで挙げた区分と期間は、Microsoftの固定ライフサイクルポリシーが適用される製品のものです。
他社のソフトウェアや機器メーカーの保守では、期間の長さも区分の名前も、終了後の扱いも、それぞれの定めによります。
読み取ってほしいのは数値そのものではなく、メーカー保守にも期間ごとの区分があり、区分によって頼めることが変わるという見方です。
第三者保守:対象機種とサービスレベルの決まり方
第三者保守は、メーカー以外の事業者が保守を引き受ける形です。
公開情報の一例として、へるぱくん保守サービスは、メーカーのサポートが終了したEOSL(End of Service Life)製品をメーカーに代わって延長保守するサービスとして案内されており、DELL、富士通、HP、日立、NEC、CISCO、Oracleなどのサーバやネットワーク機器が対象に挙げられています3。
対象になるかどうかは、機種ごとに個別の確認が必要です。
見積りは、保守対象機器の名称と台数、希望するサービスレベル、設置場所、構成情報をもとに作成されると説明されています3。
発注側から見ると、見積りを依頼する前に、自社の機器を名称・台数・設置場所・構成の単位で一覧にしておく必要があるということです。
この一覧がないと、複数の見積りを取っても前提がそろわず、比べられません。
最初に作った表の対象の欄が、ここでそのまま使えます。
メーカー保守と並べると、一つの整理ができます。
メーカーのサポート期間が終わることは、第三者保守を検討する分岐点になりえます。
ただし、この整理が成り立つのは、サポートが終了した機器をどうするかを考える場面に限られます。
両者の契約条件のどちらが優れているか、費用がどちらが安いか、メーカーのサポート期間中に第三者保守を使えるかは、ここで挙げた公開情報からは言えません。
また、ここで挙げたのは提供元1社の公開情報です。
他の第三者保守事業者の対象機種や受付時間、対応方法に一般化することはできません。
機器の保守を第三者に任せる場合でも、その機器で動いているソフトウェアの更新を誰が扱うのかは、別に確かめる必要があります。
自社対応と都度依頼:必要な体制と確認事項
残る二つの選択肢は、社内で対応する方法と、契約を結ばずに必要なときだけ外部に依頼する方法です。
この二つは、提供元の定めではなく自社の体制で中身が決まります。
以下は、ここまでの判断の流れから見た、確認しておきたい事項の提案として読んでください。
自社対応で必要になるのは、障害の切り分けや交換を行える担当者、その担当者が不在のときの代わり、手順書、予備の部品や機器です。
担当者が一人しかいない場合、その人の休暇中に止まれば、許容停止時間を守れない可能性があります。
また、ソフトウェアの不具合の修正やセキュリティ更新にはメーカーからしか得られないものもあるため、社内で対応すると決めても、メーカーのサポートが受けられる状態かどうかは、前の項で見た区分と資格の条件に左右されます。
都度依頼は、契約がない分、受付時間や応答の目標をあらかじめ約束されていない状態になります。
止まったときに連絡する先の候補があるか、その先が対象の機種やソフトウェアを扱えるか、受付時間はいつか、費用はどの単位で見積もられるかを、平時に確かめておくことが前提です。
契約している顧客と比べて受付の順番がどう扱われるかも、依頼先に聞いておきたい点です。
どちらも、保守契約の費用がかからない代わりに、止まったときの段取りを自社で抱える選択です。
前の節で書き出した許容停止時間が長く、代わりの手段もある対象なら、成り立つ余地があります。
比較表(共通の軸:対象・対応時間・範囲・利用条件・終了時の扱い)
四つの担い手を同じ軸で並べると、次のようになります。
メーカー保守と第三者保守の欄は前の項で見た公開情報に基づくもので、自社対応と都度依頼の欄は確認すべき事項を示した提案です。
終了時の扱いは、契約期間ではなく、対象製品のメーカーサポートが終わる前と後に分けています。
表で判断が分かれるのは、主にサポート終了の前後の欄です。
メーカーのサポート期間中であれば、メーカー保守の区分によって頼める内容が決まり、他の選択肢はその不足を補う位置づけで考えられます。
終了した後は、メーカー側の提供(ESUなど)があるか、第三者保守の対象機種に入るか、社内で抱えるかで選択肢が変わります。
どれが適しているかは対象と許容停止時間によるため、表は順位ではなく、自社の対象ごとにどの行が当てはまるかを見るためのものです。
実際には、一つの担い手にすべてを任せるとは限りません。
たとえば、機器は第三者保守、ソフトウェアはメーカーのサポート、障害の一次的な切り分けは社内、という組み合わせもありえます。
組み合わせると範囲の抜けを埋めやすくなる一方、障害が起きたときの連絡先が分かれます。
契約を比べる段階でこの窓口の分かれ方を意識しておくと、契約後の段取りが組みやすくなります。
| 担い手 | 対象 | 対応時間 | 範囲 | 利用条件 | サポート終了前 | サポート終了後 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| メーカー保守 | 自社製品(例:固定ライフサイクルポリシー適用製品) | 契約・プランの定めによる | 期間の区分で変わる(延長サポートでは設計変更・新機能の要求不可) | 最新の更新プログラムの展開が必要な場合がある | メインストリームまたは延長サポートで対応 | ESUを介したセキュリティ更新(製品ごと)とセルフヘルプ少なくとも12か月 |
| 第三者保守(公開情報の一例) | メーカーサポートが終了したサーバ・ネットワーク機器 | 24時間365日受付・オンサイト(一部地域を除く) | サービスレベルを希望で選び見積りで確認 | 機器名称・台数・設置場所・構成情報を示して見積り | 公開情報からは言えない | 延長保守の対象(機種ごとに確認) |
| 自社対応(提案) | 社内で扱える対象 | 担当者の勤務時間と不在時の代わりを確認 | 切り分け・交換・更新を誰が行うかを確認 | 手順書・予備部品・メーカーのサポート資格を確認 | メーカーのサポートと併用できるかを確認 | 更新や部品をどこから得るかを確認 |
| 都度依頼(提案) | 依頼先が扱える対象 | 依頼先の受付時間を事前に確認 | その都度の見積りで決まる | 連絡先の候補と費用の単位を平時に確認 | 依頼先が対象を扱えるかを確認 | 終了製品を受けてもらえるかを確認 |
見積りと契約書で確認する項目:範囲・対応時間・費用内訳・免責・期間・サポート終了
範囲と対応時間
ここまでで、何を頼むか(範囲)、どのくらいの速さで頼むか(水準)、誰に頼むか(担い手)が決まってきました。
最後に、それを手元の見積りと契約書の確認項目に置き換えます。
足りない・過剰を見分けるには、決めた内容と記載を一行ずつ照らし合わせるのが確実です。
<ul><li>対象の一覧が、自社の機器・ソフトウェアの一覧と一致しているか(台数、版、設置場所)</li><li>最初に仕分けた作業のうち、必要なものが記載されているか</li><li>受付の時間帯と、作業を行う時間帯がそれぞれ書かれているか</li><li>対応方法(電話、遠隔、オンサイト)と、オンサイトの対象外になる地域の有無</li><li>重大度の区分と、区分ごとの応答の目標が書かれているか</li><li>到着や復旧の目標があるか、あるならどの区分に適用されるか</li></ul>
過剰かどうかは、前の節で決めた水準との差で見ます。
平日日中しか使わない対象に24時間の作業が付いている、二台構成で急ぎではない機器に最も速い区分が付いている、といった行は、水準を下げる候補です。
反対に、一台しかない機器に翌営業日以降の対応しか書かれていない、重大度の区分そのものがない、といった行は不足の候補になります。
オンサイト対応に地域の除外がある例もあるので3、拠点が複数ある場合は、すべての設置場所が対象に入っているかも確かめます。
費用内訳
第三者保守の一例では、料金は対象機器、台数、サービスレベルなどで決まると説明されています3。
費用がこうした要素の組み合わせで決まるのであれば、「一式」の金額だけでは、どの要素が金額を押し上げているのかが分かりません。
見積りの依頼時に対象ごと、水準ごとの内訳を求めると、水準を一段下げた場合や対象を外した場合の比較ができるようになります。
内訳では、基本の保守料と、別料金になる作業を分けて見ます。
最初に条件付きとして仕分けた「時間外は別料金」「別途見積り」といった作業は基本料に含まれていないため、実際に依頼すると請求が増えます。
年間でどのくらい依頼しそうかを見込んでおくと、基本料だけを比べたときとは違う見え方になることがあります。
更新の見積りで前年と金額が大きく違う場合も、差の大きさだけで判断せず、明細を突き合わせます。
対象の追加や削除、水準の変更のほか、メーカー保守ではメインストリームから延長サポートへの移行のように、提供される内容そのものが変わっている可能性もあります2。
金額が同じでも内容が減っていることがあるため、比べるのは合計額ではなく、前年と今年の明細の行ごとの違いです。
免責・期間と更新・サポート終了
免責と契約期間は、契約書ごとに書き方が異なります。
一般的な型を前提にせず、次の観点で記載を探すことを提案します。
<ul><li>免責:保守の対象外となる原因(利用側の操作、改造、指定外の部品の使用など)がどう書かれているか</li><li>利用側の条件:更新の適用など、サポートを受けるための前提が書かれているか</li><li>期間と更新:契約期間、更新の手続き、解約や水準変更を申し出る期限</li><li>サポート終了:契約期間中に対象製品のメーカーサポートが終わるか、終わった後の扱いが書かれているか</li></ul>
利用側の条件は見落としやすい項目です。
メーカーのサポートでも、資格を得るために最新の更新プログラムの展開が必要な場合があるとされているように2、利用側の状態が対応の前提になることがあります。
社内で更新を止めている対象があれば、その状態が契約上どう扱われるかを、更新案内を受け取った段階で提供元に確かめておくと、障害時の行き違いを避けやすくなります。
期間と更新では、申し出の期限を把握しておくことが、見直しの機会を逃さないために大切です。
サポート終了は、メーカーの公開情報で製品ごとの終了日を確かめ2、契約期間と重ねて見ます。
契約の途中でメーカーのサポートが終わる対象があれば、その時点から先の扱いを、更新前に提供元と決めておきます。
契約後、障害時に誰へ何を渡し、何を受け取り、どう記録するか
依頼時に渡す情報
契約を結んだ後、保守が役に立つかどうかは、障害の当日に段取りどおり依頼できるかに左右されます。
ここからは、依頼する側として準備しておくことを、渡す情報、受け取る報告、残す記録の順に提案します。
前提として、社内で決めた窓口、連絡手段、記録の置き場所が、契約書に書かれた窓口や手段と一致していることを確かめておきます。
障害の直後に、契約番号や機器の製造番号を探すところから始めることになると、それだけで連絡が遅れます。
担い手を組み合わせている場合は、どこへ連絡すべきかを迷う時間も加わります。
あらかじめ次の情報を一枚の連絡票にまとめておくと、当日に調べ直す項目が減ります。
<ul><li>担い手ごとの連絡先、受付時間、契約番号</li><li>対象の名称、設置場所、構成(見積りの依頼に使った一覧をそのまま使う)</li><li>社内で定めた重大度の段階と、どの段階でどこへ連絡するか</li><li>当日に書き込む欄:発生時刻、症状、影響の範囲、すでに試したこと</li></ul>
連絡票の対象の欄を、第三者保守の見積りで求められる機器名称・台数・設置場所・構成情報3と同じ項目で作っておくと、見積り用と障害用で一覧を二重に管理せずに済みます。
重大度の段階は、自社の言葉で定義したものを使い、契約の区分との対応を連絡票に書き添えておけば、電話口でどの区分として伝えるべきかを迷わずに済みます。
受け取る報告と記録の残し方
依頼した後は、提供元から受け取るものを決めておきます。
受付の時刻と受付番号、原因、実施した作業、交換した部品、再発を防ぐための提案、今後の対応予定といった項目です。
報告の形式が契約書で決まっていなければ、どの項目を書面で受け取りたいかを、契約の段階か最初の障害の前に伝えておきます。
記録は、発注側の担当者が一か所にまとめて持つことをおすすめします。
担い手が複数いると、それぞれの提供元には自社分の記録しか残らず、全体を見渡せるのは発注側だけだからです。
記録には、連絡した時刻、応答があった時刻、復旧した時刻を残しておきます。
応答と復旧を、実際の時刻で振り返れるようにするためです。
この記録は、更新の見積りが届いたときに生きてきます。
契約した水準と実際の応答・復旧を並べれば、水準が足りなかったのか、使わない水準に払っていたのかを、感覚ではなく記録で話し合えます。
記録の見直しを更新の申し出期限より前に行う予定を立てておくと、次の見積りで範囲と水準を変える根拠になります。
段取りが機能するかは、実際に試さないと分かりません。
年に1回程度、連絡票を使って窓口へ連絡がつくか、連絡先や契約番号が変わっていないかを確かめる訓練を行うと、担当者の異動や契約の変更で連絡票が古くなっていることに気づけます。
こうした準備で障害そのものがなくなるわけではありませんが、当日に探し回る情報と、迷う判断を減らすことはできます。
見積りの仕分けや必要な水準の判断は、対象の構成と業務の止まり方を合わせて見ないと決めにくく、社内だけでは過不足に気づきにくい部分があります。
手元の見積りと契約書を並べ、記載から読み取れる作業と、提供元へ質問すべき点を整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 範囲 | 見積り・契約書の作業の記載で「頼める/条件付き/記載なし」に仕分ける |
| 水準 | 止まると困る時間帯・代わりの手段・許容停止時間から決め、受付・応答・復旧を分けて確かめる |
| 担い手 | メーカーサポートの終了前後で選択肢が変わる。区分と第三者保守の対象機種を確かめる |
| 費用 | 一式ではなく対象・水準ごとの内訳と、別料金の作業で比べる |
| 運用 | 連絡票と記録を発注側で一か所にまとめ、更新の申し出期限より前に見直す |
更新の申し出期限が近い場合や担い手が複数に分かれている場合は、記録と契約を照らし合わせる時間が限られ、論点が散らばりがちです。 障害時の連絡票や記録の項目が契約書の窓口・対応範囲と合っているか、更新前に見直す点はどこかを確かめられます。
よくある質問
保守と運用はどう違い、見積りでは分けて書かれていますか。
保守と運用の境目に決まった定義があるとは限りません。
IPAと経済産業省のモデル契約は保守と運用を一つの枠組みで扱っており、公開ページの説明からは両者を分ける定義は読み取れません1。
見積りで別の行に書かれていても、どの作業がどちらに入るかは提供元ごとに違いうるため、行の名前ではなく作業の中身で比べます。
監視、バックアップの確認、利用者からの問い合わせなどは、どちらに入るかが分かれやすい作業です。
メーカーのサポートが終了した機器やソフトは、どうすればよいですか。
まず、メーカー側に終了後の提供があるかを確かめます。
Microsoftの固定ライフサイクルポリシーの適用製品では、サポート終了後のセキュリティ更新は拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)を介して提供されうるとされ、セルフヘルプのオンラインサポートは終了後少なくとも12か月利用できます2。
サーバやネットワーク機器では、メーカーのサポートが終了した製品を対象にした第三者保守もあり、公開情報の一例では対象機種や水準は見積りで個別に決まります3。
どれが適しているかは対象と許容停止時間によるため、終了日を製品ごとに確かめたうえで、メーカーの提供、第三者保守、社内での対応を並べて比べます。
応答時間と復旧時間の違いは何ですか。契約でどちらを確認しますか。
応答は提供元が反応し対応を始めるまで、復旧は対象が業務に使える状態に戻るまでを指します。
AWSのサポートプランが重大度別に定めているのは初回応答時間の目標で、復旧の保証ではありません4。
業務への影響と比べるべきなのは復旧側ですが、契約に記載がない場合もあるため、応答・到着・復旧の目標それぞれの有無と、どの重大度に適用されるかを確認します。
復旧の約束が得られない分は、予備機や代わりの業務手順で補うかを社内で決めます。
保守契約を更新せず、都度依頼にすると何が変わりますか。
契約がなくなると、受付時間や応答の目標をあらかじめ約束されていない状態になります。
費用はその都度の見積りになり、依頼先が対象の機種やソフトウェアを扱えるかも、止まってから確かめることになりかねません。
許容停止時間が長く代わりの手段もある対象なら成り立つ余地がありますが、切り替える前に、連絡先の候補、受付時間、費用の単位、契約顧客との受付順の扱いを平時に確かめておきます。
障害時の連絡先と記録は、誰が持つべきですか。
連絡先の一覧と障害の記録は、発注側の担当者が一か所にまとめて持つことをおすすめします。
担い手が複数いる場合、各提供元には自社分の記録しか残らないためです。
記録には連絡・応答・復旧の時刻、原因、作業内容を残し、更新前に契約の水準と照らし合わせます。
担当者の異動に備え、連絡先が変わっていないかを年に1回程度確かめると、連絡票が古くなるのを防ぎやすくなります。
- 1 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)/経済産業省「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(2020年公開、2025年更新)
- 2 出典:Microsoft「固定ライフサイクル ポリシー」(2026年更新)
- 3 出典:へるぱくん保守サービス「第三者保守サービス(EOSL製品の延長保守)」(2026年確認)
- 4 出典:Amazon Web Services「AWS サポートプラン」(2026年確認)