◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 受領時のズレは「委託内容と違う」「納期に来ない」「受入後に不良」の3つの場面に分けると、見直す工程が決まる。
- 切り分けは自社の発注書から始め、発注時の明示、確認依頼と了承の経緯、検査基準の変化の順に確かめる。
- 自社が取適法の委託事業者に当たる場合、明示のない受領拒否、検査を省いた返品、費用を負担しないやり直しは認められない。
- 検査の扱いと合否基準を仕入先と事前に合意しておくことが、食い違いを減らす手当てと返品の前提を兼ねる。
- 法が求める記録に場面と追加工数を足し、件数×工数の上位1〜2類型から限って試し、同じ項目で前後を比べる。
目次

「頼んだ内容と違う」を3つの場面に分ける
図面の版が違う、数量が足りない、受入検査で寸法外れが出た。
そのたびに仕入先へ連絡して再手配し、生産計画を組み直しますが、原因が自社の発注にあるのか仕入先の作業にあるのか曖昧なまま、差し戻しだけが増えていきます。
まず受領時のズレを「内容が違う」「納期に来ない」「受入後に不良が見つかる」の3つの場面に分け、発注内容を明示していたか、検査基準を事前に合意していたかを点検します。
自社が取適法の委託事業者に当たる場合、明示のない受領拒否、検査を省いた返品、費用を持たないやり直しは認められません3。
差し戻す前に自社の出し方を直し、件数と工数を測って上位の類型から小さく試すと、着手順が決まります。
委託内容と違う物が届く場面
届いた部品の図面の版が古い、材質が指定と違う、数量が発注より少ない。
受け取った物を発注内容と照らし合わせた時点で気づく食い違いが、最初の場面です。
仕入先に作り直しや追加納品を頼み、そのあいだ生産を止めるか、別ロットでつなぐかを決める手間が生じます。
公正取引委員会の運用基準は、中小受託取引適正化法(取適法。
製造委託などで、発注する側の事業者に発注内容の明示や支払のルールを定めた法律)のもとで、給付の内容が明示された委託内容と異なる場合には受領拒否が認められるとしています3。
ここで効いてくるのは「明示された」という条件です。
発注書に旧版の図面番号が残っていた、電話で伝えた変更が書面に反映されていなかった、という経緯があれば、仕入先は渡された指示どおりに作っただけかもしれません。
同じ「違う物が届いた」でも、発注書の記載と届いた物が違うのか、発注書の記載そのものが社内の意図と違うのかで、直す先は入れ替わります。
明示はされていたのに読み方が二通りあった、という食い違いもこの場面に入ります。
公差の基準面や表面処理の範囲が図面だけでは決まらず、仕入先が別の解釈で作ったような場合です。
これは発注書の欄を埋めるだけでは防げないため、次の節で扱う確認依頼のやり取りと合わせて見ていきます。
納期に来ない場面
二つ目は、明示した納期に物が届かない場面です。
運用基準は、明示された納期に給付が行われない場合も、受領拒否が認められる場面として挙げています3。
ただ、現場で困るのは受け取るかどうかより、再手配の判断と生産計画の組み直しのほうでしょう。
遅れの原因が仕入先の生産能力にあるのか、自社が仕様の確定を遅らせた、途中で数量や納期を前倒しした、といった事情にあるのかで、次に打つ手は変わります。
この場面で見直すのは、納期回答をどう受け取り、変更をどう伝えたかという連絡の流れです。
受入後に不良が見つかる場面
三つ目は、受け取った後の受入検査や組付けの工程で不良が見つかる場面です。
受け取りを断る話ではなく、返品ややり直しを求める話になる点が、前の二つと違います。
運用基準では、受領後の返品は、給付の内容が委託内容と異なり、受領後速やかに引き取らせる場合などに限られています3。
検査をしたのか省いたのか、仕入先に検査を任せたなら文書で委任していたのかによっても扱いが変わるため、この場面で見直すのは受入検査と品質の取り決めです。
受領拒否・返品・やり直しについてのこうした線引きは、取適法の製造委託で、自社が発注する側の委託事業者に当たる場合の記載です。
適用されるかどうかの確かめ方は後の節で扱いますが、適用されない取引でも、場面を3つに分けておくと、誰の何を直すかを話し合う出発点になります。
どの場面が多いかは取引ごとに違うため、比率は推し量らず、自社の件数を数えて確かめます。
| 場面 | 気づく時点 | 主に見直す工程 |
|---|---|---|
| 委託内容と違う物が届く | 受け取って発注内容と照合したとき | 発注書・仕様の伝え方 |
| 納期に来ない | 明示した納期を過ぎたとき | 納期回答と変更連絡の流れ |
| 受入後に不良が見つかる | 受入検査や組付けのとき | 受入検査と品質の取り決め |
自社の発注側か仕入先側かを切り分ける手順
発注時の明示を確認する
場面が分かったら、その手戻りが自社の出し方から起きたのか、仕入先の作業から起きたのかを見ていきます。
最初に開くのは、仕入先へ示す材料ではなく自社の発注書です。
よくある質問では、発注内容は、受託する事業者がその内容を見て理解でき、指示に即した給付を提供できる程度に、直ちに明示するものとされています2。
電話で発注し、後から書面を送るやり方は「直ちに」に当たらないとも示されています2。
確かめるのは、食い違った項目が発注書や添付の図面に書かれていたか、そしてその記載だけで仕入先が作れたか、の二点です。
図面番号はあっても版が書かれていない、数量は書いてあっても分納の区切りは口頭だった、という状態なら、仕入先は理解できる程度の明示を受けていなかったことになります。
運用基準は、委託内容が明示されていない場合の受領拒否も返品も認めていません3。
このため明示が欠けていた手戻りは、自社側の原因として数えるのが筋です。
仕入先からの確認依頼と了承の経緯を確認する
発注書に書いてあったとしても、そこで判定を終えずにやり取りの履歴を見ます。
仕入先から「この寸法の基準はどちらですか」と問い合わせが来ていたのに回答しないまま製作が進み、後から別の解釈を求めた、という経緯がないかどうかです。
運用基準は、仕様の明確化を求められたのに応じず、後から変更を求めることを、不当なやり直しに当たり得るものとして挙げています3。
仕入先からの提案を了承した経緯も確かめます。
材料の入手が難しいため代替材にしたいという提案に購買担当が了承していたのに、受入側がその経緯を知らずに「指定材と違う」と判定する、という行き違いです。
了承した提案について、後から委託内容と異なると主張することも、認められない例として挙がっています3。
購買担当が受けた連絡が品質管理や受入の担当に届いていないと、この種の判定は繰り返されます。
検査基準が途中で変わっていないか確認する
三つ目は検査の基準です。
量産の途中で検査担当が替わり、これまで合格にしていた程度の外観のキズを不合格にし始めた、といった変化がないかを見ます。
運用基準は、恣意的に検査基準を厳しくして受領を拒むことを認めていません3。
基準を書面に残していなければ、基準が変わったのかどうかを後から確かめられず、仕入先との話し合いも水掛け論になりがちです。
この3点に問題がなかったとき、初めて仕入先側の履行の問題として話を進めます。
この順序は法令の記載を手掛かりにした確認の進め方の提案であり、手戻りが減る効果を測ったものではありません。
それでも、自社の記録から順に確かめておけば、仕入先に連絡するときに、発注内容のどこと現物のどこが違うのかを具体的に示せます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 発注時の明示(理解できる程度に、直ちに)
- 確認依頼に応じたか・提案を了承していないか
- 検査基準が途中で変わっていないか
- 3点に問題がなければ仕入先側の履行として話を進める
発注書・仕様・変更連絡の出し方を変える
発注時に明示する項目
切り分けで自社側の原因が見つかったら、発注の出し方を変えます。
取適法では、委託事業者は発注時に、書面または電磁的方法で、委託者と受託者の名称、給付の内容、受領期日と受領場所、検査期日、代金の額、支払期日、支払方法などを明示することとされています1。
この一覧は法が求める最小限ですが、手戻りを防ぐための記載チェックとしても使えます。
使い方の要は、各項目を受領時に照合できる粒度で書くことです。
給付の内容が品名だけでは、届いた物と比べる手掛かりになりません。
品番に加えて図面番号と版、材質、数量、分納するならその区切りまで書いておくと、受入担当が発注書と現物を突き合わせられます。
検査期日は、仕入先にとって合否の連絡がいつまでに来るかを知る手掛かりにもなります。
図面の版数管理や変更通知の様式をそろえることで手戻りがどれだけ減るかは、取引によって違います。
効果は見込みで決めず、後の節で扱う件数の記録で前後を比べて確かめます。
変更・取消しの連絡と費用負担
解釈違いと並んで手戻りを生むのが、発注後の変更です。
設計変更で寸法が変わった、需要が落ちて数量を減らした、といった連絡が遅れると、仕入先はすでに材料を手配し、段取りを組んでいるかもしれません。
運用基準は、相当の期間にわたって予定を確保させた上で、実施の直前に取り消すことを、認められないやり直し・変更の例として挙げています3。
連絡が遅れるほど仕入先の準備が無駄になり、話はその費用を誰が持つかという問題に移っていきます。
このため変更は口頭で済ませず、発注書の再発行か変更通知として出すほうが、後の確認が楽になります。
変更前と変更後の内容、連絡した日、仕入先がどこまで手配を進めていたか、追加費用をどう扱うかを残しておけば、受入の担当も最新の指示と照合できます。
明示は書面に限らず電磁的方法でも行えるため1、メールの定型文でも形はそろえられます。
| 発注時に明示する項目 | 照合しやすい書き方の例 |
|---|---|
| 給付の内容 | 品番・図面番号と版・材質・数量・分納の区切り |
| 受領期日・受領場所 | 納期と搬入先(工場や倉庫が複数なら場所まで) |
| 検査期日 | 受入側が合否を伝える期日 |
| 代金の額・支払期日・支払方法 | 変更や追加費用を話し合うときの基準 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 給付の内容
- 品番・図面番号と版
- 材質・数量
- 分納の区切り
- 受け渡しと検査
- 受領期日・受領場所
- 検査期日
- 代金
- 代金の額
- 支払期日・支払方法
受入検査と品質の取り決めを仕入先と合意する
検査するか省くかを先に決める
受入後に不良が見つかる場面では、受け取った時点の検査をどう扱っていたかが、返品の可否を左右します。
運用基準は、検査を省略した場合や、検査を仕入先に文書で委任していない場合の返品を認めていません3。
検査の手間を減らすために受入検査を省いている部品があるなら、不良が出てから返品できるかを考えるより先に、検査の扱いを決めておく必要があります。
選び方は大きく、自社で受入検査をする、仕入先の出荷検査に任せることを文書で委任する、検査を省く、の三つです。
省く場合は、不良が後で見つかっても返品で処理しにくくなることを承知の上で、どの部品で省くかを選ぶことになります。
どれを選んだかを発注時の検査期日とあわせて仕入先に示しておけば、不良が見つかったときの扱いを双方が同じ前提で話せます。
抜取り検査の事前合意
全数を検査しない部品でも、ロット単位の抜取り検査で継続的に取引しているなら、取り決め方があります。
運用基準では、こうした継続取引で、あらかじめ合意し明示しておけば、最初の支払時までの引取りが認められるとされています3。
支払期日は物品等を受領した日から起算して60日以内に定めることとされているため1、抜取り検査の結果を出す時期は、支払の締めより前に置いておく必要があります。
検査担当の人数や設備の都合で結果が遅れがちなら、その段取りから見直します。
品質保証協定に入れる項目
何を検査の合否とするかを仕入先と書面で合意する手段として、品質保証協定があります。
民間の解説では、品質保証協定書に定める項目の例として、不良率やCpk(工程のばらつきが規格の幅にどれだけ収まっているかを示す指標)などの品質指標、出荷検査・受入検査の頻度と試験方法と合否判定基準、工程・部材・仕様を変えるときの事前承認の手順が挙げられています4。
同じ解説は、長期の取引ルール全般を扱う品質基本契約に対し、品質保証協定は特定の製品や取引に絞った取り決めだと説明しています4。
公的な規格ではないため、項目は自社の部品と取引に合わせて選びます。
これらの項目は、前の節の切り分けとも結び付きます。
合否判定基準が書面にあれば、検査基準が途中で変わったかどうかを後から確かめられます。
変更時の事前承認の手順があれば、仕入先が工程や材料を変えたことによる不良と、自社の仕様変更による食い違いを分けやすくなります。
協定は継続取引で結べる範囲から始め、単発の取引では発注書の検査期日と合否基準の記載で補います。
▼ 図の内容を文字で読む
- 自社で受入検査
- 受け取った時点で自社が合否を見る
- 文書で委任
- 仕入先の出荷検査に任せる
- 委任は文書で行う
- 検査を省く
- 不良が後で見つかっても返品で処理しにくい
- どの部品で省くかを選ぶ
差し戻し・やり直しの前に確認する法の線引き
返品できる期間
発注と検査の準備を整えても、不良や相違が見つかれば、返品ややり直しを求める場面は残ります。
その前に確かめておきたいのが期間です。
運用基準では、返品は受領後速やかに行う場合などに限られ、受領後6か月を経過した返品は認められません3。
保証期間が1年を超える場合でも、認められるのは最長1年までです3。
組付け後の工程や出荷後に不良が見つかったとき、受領日がすぐに引けないと、期間の内か外かを判断できません。
受領日をロットや注文番号と結び付けて記録しておくことが、ここで効いてきます。
期間内であっても、委託内容を明示していない、検査を省いた、検査を文書で委任していない、といった場合に返品が認められない点は変わりません3。
直ちに見つけられない不良の扱いなど例外の範囲は、運用基準の該当箇所で確かめます。
やり直しの費用負担
差し戻しのつもりで仕入先に作り直しを頼む場合、費用の扱いが問題になります。
運用基準は、やり直しの費用や損失を委託事業者が負担しない場合を違反としており、受領後1年を経過したやり直しの要求も認められないとしています3。
自社が委託事業者に当たる取引では、明示や検査の合意が欠けたまま差し戻すほど、その手戻りの費用が自社に返ってくる可能性があります。
ここから言えるのは、手戻りを減らす対策と法を守るための作業が、多くの部分で重なるということです。
発注内容を理解できる程度に明示すること、検査の扱いと基準を事前に合意することは、受領拒否や返品を正当に行う前提であると同時に、そもそもの食い違いを減らす手当てでもあります。
ただし、どの程度減るかまでは、ここで挙げた資料からは言えません。
自社が適用対象かの確認
これらの線引きが当てはまるかは、取引の当事者の規模で決まります。
よくある質問では、製造委託について、委託事業者が資本金3億円超または従業員300人超で、受託側が資本金3億円以下または従業員300人以下の場合が示されています2。
従業員数は委託をした時点で判断します2。
自社が中小規模で仕入先も同程度の規模の取引や、仕入先のほうが大企業である取引では、適用関係が変わります。
ほかの区分に当たるかどうかも含め、自社と仕入先の資本金・従業員数で公正取引委員会の資料を確かめてください。
適用されない取引でも、返品の期限ややり直しの費用を誰が持つかは、契約や品質の取り決めで線を引いておくほうが、手戻りが起きたときの話し合いが早く進みます。
個別の取引が違反に当たるかどうかは契約内容や経緯で変わるため、判断に迷うときは公正取引委員会に確認します。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受領(起点)
- 受領後速やかに(返品の原則)
- 受領後6か月(返品が認められなくなる。保証期間1年超なら最長1年)
- 受領後1年(やり直し要求が認められなくなる)
出典:公正取引委員会の運用基準(2026年確認時点)。取適法の製造委託等で、自社が委託事業者に当たる場合
手戻りの損失を測り、着手順を決める
場面別に件数と工数を記録する
どこから直すかを決めるには、手戻りを数える必要があります。
件数だけでは、軽い確認で済んだ1件と、生産計画を組み直した1件が同じ重さになってしまうため、1件ごとに次の項目を残します。
<ul><li>注文番号と仕入先、品番</li><li>場面(委託内容と違う・納期に来ない・受入後に不良)</li><li>切り分けの結果(自社の明示・確認依頼や了承の経緯・検査基準・仕入先の履行・未判定)</li><li>追加でかかった工数(確認、再手配、計画の組み直しにかかった時間)</li><li>発覚から再手配が済むまでの日数</li></ul>
記録を一から作る必要はありません。
取適法では、委託事業者は受領日、検査結果、変更・やり直しの内容などを書類に記載し、2年間保存することとされています1。
この書類に場面と切り分けの結果、追加工数の欄を足せば、法が求める記録を手戻りの元データとして使えます。
どの指標を取るかは記事としての提案であり、自社の業務に合わせて削ったり足したりして構いません。
上位の類型から小さく試す
数か月分がたまったら、場面と切り分けの結果の組み合わせごとに、件数と追加工数を掛け合わせて並べます。
たとえば、図面の版の書き漏れは件数が多くても1件の工数が小さく、受入後の不良は件数が少なくても計画の組み直しで工数が大きい、という分布だったとします。
この場合、件数だけ見れば版の書き漏れが上位に来ますが、工数まで含めると受入後の不良が上位に来るかもしれません。
掛け合わせると、こうした重みの違いを一つの並びで比べられます。
上位の1〜2類型に絞ったら、対策を全仕入先へ一度に広げず、件数の多い仕入先や部品に限って試します。
発注書に版の欄を足す、変更通知の様式を決める、抜取り検査の合意を結ぶ、といった対策を入れたら、同じ項目で同じ長さの期間を記録して前後を比べます。
減っていれば対象を広げ、変わらなければ切り分けの結果を見直します。
この比較で確かめられるのは自社の取引でその対策が効いたかどうかであり、他の仕入先や部品でも同じだとは限りません。
▼ 図の内容を文字で読む
- 委託側(自社)
- 資本金3億円超
- または従業員300人超
- 受託側(仕入先)
- 資本金3億円以下
- または従業員300人以下
- 判断の時点
- 従業員数は委託をした時点で判断
仕入先の協力が得にくい場合・システムを入れられない場合
メールや共有ファイルで要件を満たす
受発注のシステムを新しく入れられない、仕入先が小規模で専用の仕組みに対応できない、という事情があっても、ここまでの手当ての多くは始められます。
取適法の明示は書面または電磁的方法で行えるため1、メールや共有ファイルでも、記載する項目をそろえれば形は整えられます。
やり方としては、発注用のメール本文や添付の発注書を一つの様式に決め、明示事項に加えて図面番号と版、分納の区切りを毎回同じ順で書きます。
急ぎで電話をかける場合も、電話の後で書面を送るやり方は「直ちに」に当たらないとされているため2、通話と同時に同じ様式で送る段取りにしておきます。
共有ファイルで図面を渡すなら、最新版を取り違えないよう、ファイル名か一覧に版と更新日を入れておきます。
EDI(企業間で受発注のデータを電子的にやり取りする仕組み)などの導入は、記録の結果、手戻りの上位がメールや電話の行き違いだと分かった段階で検討しても遅くありません。
仕入先に求める項目を絞る
仕入先の協力が得にくいときは、相手に求めることを少なくします。
発注内容の明示や記録の保存は、取適法では委託事業者に課された作業です1。
自社側でそろえられる項目は自社で持ち、仕入先には、発注を受け取ったことの確認と納期の回答を返信してもらうところから始めます。
返信が来ない発注を一覧で拾えれば、届いていない、読まれていない、納期に間に合わないといった行き違いを、納期より前に見つけられます。
このやり方で手戻りが減るかどうかは仕入先との関係によって違うため、返信率と手戻りの件数を記録して確かめます。
返信が定着してから、仕様の疑問点を製作前に問い合わせてもらう、といった次の項目を足していきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 件数×追加工数で並べる
- 上位1〜2類型を仕入先や部品を限って試す
- 同じ項目・同じ長さの期間で前後を比べる
- 減っていれば対象を広げ、変わらなければ切り分けを見直す
発注書、メール、検査記録が担当ごとに分かれていると、手戻りの1件ごとに明示や了承の経緯をたどるだけで時間がかかり、自社側の原因かどうかの判定が止まりがちです。
受発注の書類と連絡の流れを並べ、明示が抜けやすい項目や、変更の連絡が受入担当に届かない箇所がどこにあるかを一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 場面の分け方 | 委託内容と違う/納期に来ない/受入後に不良 |
| 切り分けの順 | 発注時の明示→確認依頼と了承の経緯→検査基準の変化 |
| 発注時の明示 | 受託側が見て理解できる程度に、直ちに。書面または電磁的方法 |
| 検査の扱い | 自社で検査・文書で委任・省略を事前に決める。抜取りは事前合意 |
| 返品の期間 | 受領後速やかに。6か月経過後は不可(保証期間1年超でも最長1年) |
| やり直し | 費用・損失を委託側が負担しないと違反。受領後1年経過後は不可 |
| 適用の目安(製造委託) | 委託側が資本金3億円超または従業員300人超、受託側が3億円以下または300人以下 |
| 着手順 | 件数×追加工数の上位1〜2類型を限って試し、同じ項目で前後を比べる |
件数と工数を記録し始めても、どの類型から試すか、メールや共有ファイルの様式をどうそろえるかは、自社の取引の形によって答えが変わります。 自社の手戻りの記録をもとに、上位の類型に合う発注書や変更通知の様式、仕入先に求める返信項目の絞り方を確かめられます。
よくある質問
自社が取適法の対象かどうかは、何で確認するのか。
自社と仕入先の資本金と従業員数で確かめます。
よくある質問では、製造委託について、委託事業者が資本金3億円超または従業員300人超で、受託側が資本金3億円以下または従業員300人以下の場合が示されており、従業員数は委託をした時点で判断します2。
この組み合わせに当たらない場合も、ほかの区分に当たるかを公正取引委員会の資料で確かめ、迷うときは公正取引委員会に確認します。
受入検査を省略している部品に不良が見つかった場合、返品できるのか。
運用基準には、検査を省略した場合や、検査を文書で委任していない場合の返品は認められないとの記載があります3。
直ちに見つけられない不良の扱いなど例外の範囲は運用基準の該当箇所で確かめ、個別の判断は公正取引委員会に確認します。
今後に向けては、その部品を自社で検査するか、仕入先の検査を文書で委任するか、抜取り検査の合意を結ぶかを先に決めておきます。
仕入先の提案で変更した仕様に、後から異なると言えるか。
運用基準は、仕入先の提案を了承したのに、後から委託内容と異なると主張することを認められない例として挙げています3。
購買担当が了承した提案が受入や品質管理の担当に伝わっていないと、この主張をしてしまいがちです。
了承したら発注内容の変更として書面かメールで残し、受入側が最新の指示と照合できるようにしておきます。
小規模な仕入先に、返信や確認を求める項目をどこまで絞るか。
まずは、発注を受け取ったことの確認と納期の回答の二つで足ります。
発注内容の明示や記録の保存は委託事業者の側の作業とされているため1、それ以外の項目は自社で持ちます。
返信が定着してから、仕様の疑問点を製作前に問い合わせてもらうなど、次の項目を足します。
手戻りの件数を記録するとき、最初に何の項目を取るか。
注文番号、場面(委託内容と違う・納期に来ない・受入後に不良)、追加でかかった工数の三つから始めると、件数と重みの両方で並べられます。
受領日、検査結果、変更・やり直しの内容は、取適法の委託事業者が記載して2年間保存する書類にもともと含まれるため1、その書類に欄を足す形にすると二重に記録せずに済みます。
品質保証協定は、すべての仕入先と結ぶ必要があるか。
本文で挙げた取適法の義務は発注内容の明示や記録の保存などで、品質保証協定の締結を求めるものとしては示されていません1。
民間の解説でも、品質保証協定は特定の製品や取引に絞った取り決めとされています4。
継続取引で、受入後の不良が手戻りの上位に来る仕入先や部品から結び、単発の取引では発注書の検査期日と合否基準の記載で補うのが現実的です。
- 1 出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法) 委託事業者の義務」(2026年)
- 2 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)
- 3 出典:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(2026年)
- 4 出典:iatf-iso.net「品質保証協定書とは?品質基本契約書や技術契約書との違いと活用ポイント解説」(2026年)