◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 注文の見落としや取り違えの多くは、どの発言を注文とみなし、いつ確定とするかが決まっていないことから起きる。
- 品目・数量・納期・届け先が揃い注文の意思があるものを注文とし、欠けていれば欠けた項目だけを聞き返す。
- 受領と確定の返信を分け、確定の合図(了承を待つか、期限つきの復唱か)を取引先と先に合意しておく。
- トークは受け取る場所、台帳は処理の正と分け、台帳に書いてから対応済みにすると、既読と処理済みの混同や二重処理に気づきやすい。
- 公式アカウントの無料範囲はタグ1個・保存半年で、半年より前の履歴や保存の要件への対応が要るなら、Chat Pro、LINE WORKS、入口の分離を同じ軸で比べる。
目次

LINEの会話に注文が混ざると、受注側ではどんな誤認が起きるのか
取引先とのLINEに「明日10ケースお願いします」「やっぱり来週でもいいですか」「先日はありがとうございました」が並んでいて、後から読み返すと、どれが確定した注文なのか迷う。
見落としや数量違い、二重の手配が起きる原因は、LINEという道具そのものより、どの発言を注文とみなし、いつ確定とするかが決まっていないことにあります。
注文の書式、受付の返信、確定の合図、台帳への転記を決めれば、LINEのままでも取り違えの多くは減らせます。
ただし公式アカウントの無料範囲はタグ1個・履歴の保存半年です1。
件数、担当者数、記録を保存する必要に応じて、入口を分けるか移行するかを選びます。
注文と相談が区別できない
受注側の仕事は、次の順に進みます。
メッセージを受信し、注文かどうかを読み取ります。
確認の返信をして確定させ、台帳や出荷の手配へ転記します。
誤認は、この途中で「この発言は注文か」「もう確定したのか」の判断が、送り手と受け手でずれたときに起きます。
受注側から見ると、注文と相談の混同、変更・取消の上書き、担当者間の見落とし、二重処理の四つに分けられます。
この四つは業務の流れに沿った整理で、どれがどれほど多いかを示すものではありません。
たとえば取引先から「来週も先週と同じくらいでいけそうです」と届いた場合を考えます。
送った側は注文のつもりでも、受け取った担当者は見込みの連絡と読むかもしれません。
逆に「10ケースあれば助かるんですが、在庫ありますか」は在庫の問い合わせです。
それでも数量が書かれているため、注文として手配してしまうことがあります。
チャットは、前後の流れで意味を補いながら話す道具です。
品目や数量が欠けた発言でも、書いた人の頭の中では注文として完結していることがあります。
受注側はその補われた部分を推測で埋めるので、推測が外れたときに取り違えになります。
変更・取消が上書きされる
変更の連絡は、元の注文のすぐ下に届くとは限りません。
朝に注文があり、昼に別件の相談をはさんで、夕方に「さっきのやつ、8にしてもらえますか」と届く。
こうなると、どの注文の、どの品目を8にするのかを読み手が判断することになります。
電話ならその場で聞き返せますが、LINEは後でまとめて読まれることが多く、読んだ担当者が推測で補ってしまいます。
もう一つの要因が送信取消です。
個人向けLINEの標準ユーザーは送信後1時間以内なら送信取消ができ、相手には取り消した旨が表示されます4。
LYPプレミアム会員は7日以内に取消でき、相手が未読なら通知なしで取り消せる場合もあります4。
LINE公式アカウントのチャットでは、送信から24時間以内なら送信取消ができ、ユーザー側でも取消できます1。
受注側がすでに読んで手配を始めた後で元のメッセージが消えると、何を受けていたのかをトーク上で確かめられません。
取消の表示を「注文をやめる」と読むか、「打ち間違いを直すために消した」と読むかでも判断が分かれます。
送信取消は送り手にとっては訂正の手段ですが、受け手にとっては記録が消えることを意味します。
担当者間の見落とし・二重処理
同じアカウントを複数の担当者が見ていると、既読の意味がずれます。
担当者Aがトークを開いて既読になったものの、手配はまだという状態でも、後から見た担当者Bには既読がついているので処理済みに見えます。
既読は「誰かが開いた」という印で、「誰かが処理した」という印ではありません。
二重処理はその逆です。
二人が同じ注文をそれぞれ手配してしまう場合のほか、返信が遅れたために取引先が同じ注文を送り直し、受注側がそれを別の注文として受けてしまう場合もあります。
送り直しは取引先からすれば念押しですが、文面が少し違うと、受注側には追加の注文に見えます。
四つの型に共通するのは、トークの中に注文の状態が書かれていないことです。
受付したのか、確定したのか、変更されたのか、誰が持っているのか。
この状態を人の記憶や既読の印に頼らず、見える形にするのが次の節からの話です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受信:挨拶・相談・変更連絡と同じトークに注文が届く
- 読み取り:注文か相談かの判断が送り手とずれる
- 確認返信:受け取った連絡なのか確定の連絡なのかが曖昧になる
- 確定:後から届いた変更や送信取消で元の内容が分からなくなる
- 転記・処理:既読を処理済みと思い込む、または二人が別々に手配する
注文として扱うメッセージと扱わないメッセージの見分け方
注文とみなす条件を先に決める
注文と相談の混同は、受け取った担当者がその場の感覚で注文かどうかを決めていることから起きます。
そこで、判断を人の勘から条件へ移します。
一つの考え方として、品目・数量・納期・届け先の四項目が揃い、「お願いします」「発注します」のように注文の意思がはっきりしているものを注文として扱う方法があります。
これは取り違えを減らすための提案で、業界で決まった基準ではありません。
項目だけでなく意思も条件に入れるのは、先ほどの在庫の問い合わせのように、四項目が揃っていても注文ではない発言があるからです。
「ありますか」「いけそうです」「どうでしょう」で終わる文は、数量が書かれていても相談として扱います。
迷ったときに相談側へ倒しておけば、手配してから取り消すより、確認の返信を一本足すほうが後の手間は小さく済みます。
欠けているときは相談として聞き返す
注文の意思はあるのに項目が欠けているものは、注文候補として扱い、欠けている項目だけを聞き返します。
「納期はいつがよろしいでしょうか。届け先はいつもの本店でよろしいですか」のように、分かっている部分は書かずに、足りない部分だけを尋ねます。
全項目を聞き直すと取引先には二度手間に感じられ、次から書式を守ってもらいにくくなります。
「先週と同じで」のように前回を指している注文は、受注側が前回の内容を書き出して送ります。
「先週は品目〇〇を10ケース、本店着でした。同じ内容でよろしいですか」と返せば、取引先は合っているかどうかだけを答えれば済みます。
大事なのは、受注側の推測を頭の中に置かず、トークの上に出すことです。
推測で手配して当たることもあります。
ただ、外れたときに、それが取引先の書き方の問題だったのか、受注側の読み方の問題だったのかがどこにも残りません。
聞き返しの一文は、後から食い違いを確かめるための記録にもなります。
自社の必須項目に置き換える
四項目はあくまで出発点です。
サイズや色の指定がある商品なら、それも必須項目に入ります。
届け先が毎回同じ取引先なら、届け先を省いてよいことにするほうが、取引先の手間は減ります。
取引先ごとに必要な項目は違うので、自社の取引で抜けると困る項目に置き換えて使います。
条件を決めて取り違えが減っているかどうかは、記録しないと分かりません。
一定期間、聞き返しが必要だった件数と、数量や納期の訂正が後から出た件数を数えておくと、運用を変える前と後で比べられます。
件数そのものより、どの項目の欠けが多いかを見ると、次に書式で補うべき箇所が見えてきます。
| 届いたメッセージの状態 | 扱い | 受注側の返し方 |
|---|---|---|
| 品目・数量・納期・届け先が揃い、注文の意思がある | 注文として受付 | 内容を復唱して確定を求める |
| 注文の意思はあるが項目が欠けている | 注文候補 | 欠けている項目だけを聞き返す |
| 「先週と同じ」など前回を指している | 注文候補 | 前回の内容を書き出して合っているか確かめる |
| 項目は揃っているが「ありますか」など問い合わせの形 | 相談 | 在庫や納期を答え、注文するかを尋ねる |
| 挨拶・お礼・雑談 | 注文以外 | 台帳には載せない |
▼ 図の内容を文字で読む
- 注文として受付
- 四項目が揃い注文の意思がある
- 内容を復唱して確定を求める
- 注文候補
- 意思はあるが項目が欠けている
- 欠けている項目だけを聞き返す
- 「先週と同じ」は前回の内容を書き出して確かめる
- 相談
- 項目が揃っていても「ありますか」「いけそうです」で終わる
- 在庫や納期を答え、注文するかを尋ねる
- 注文以外
- 挨拶・お礼・雑談
- 台帳には載せない
LINEのまま、受付・確定・変更・取消を取り違えないための運用ルール
注文の書式
前の節で決めた条件を、取引先が最初から満たしやすくするのが書式です。
たとえば次のような定型文を取引先に渡しておきます。
【注文】
品目:
数量:
納期:
届け先:
書式は一度案内して終わりにせず、項目の欠けた注文が来たときの返信に毎回添えるほうが定着しやすくなります。
受注側が書式を送り返し、「こちらに埋めて送っていただけると確実です」と添えれば、取引先は空欄を埋めるだけで済みます。
先頭に「【注文】」のような見出しを付けてもらうことには、もう一つの意味があります。
LINE公式アカウントのチャットではチャットルーム内でメッセージを検索できるので1、同じ語が先頭に付いていれば、その取引先とのトークから注文だけを拾いやすくなります。
雑談と同じ文体で書かれた注文は、検索でも雑談に紛れてしまいます。
受付返信と確定の合図
受注側の返信は、受領と確定を分けて送ります。
受領の返信は「ご注文を受け取りました。在庫を確認して、本日中に確定のご連絡をします」のように、まだ確定していないことが分かる文にします。
確定の返信は「以下の内容で承りました」と書き、品目・数量・納期・届け先を復唱します。
一言の「承知しました」だけでは、何を承知したのかがトークに残りません。
確定の合図をどこに置くかは、取引先と先に合意しておきます。
一つは、受注側の復唱に取引先が「OKです」と返した時点を確定とする方法です。
確実ですが、返事を待つ間は手配を止めることになります。
もう一つは、復唱を送った時点で確定とし、内容が違う場合だけ決めた時刻までに連絡をもらう方法です。
手配は早く進みますが、取引先が復唱を読まなかった場合、誤りがそのまま残ります。
納期が短い品目と、間違えると影響が大きい品目で、合図を使い分けることもできます。
ここでいう確定の合図は、受注側と取引先の間の運用上の約束です。
取引上どの時点で契約が成り立つかは、契約の内容や取引条件によって整理が変わるため、この記事では扱いません。
基本契約などで発注の手続きが決まっている場合はそちらに合わせ、判断に迷う場合は専門家に確認します。
変更・取消の扱い
変更は、元の注文メッセージを引用して送ってもらうよう案内します。
引用があれば、どの注文の変更なのかを推測せずに済みます。
受注側は変更後の内容を新しい注文として復唱し直し、台帳では元の行を「変更」として残したうえで、新しい行を作ります。
元の行を書き換えてしまうと、何をどう変えたのかが分からなくなるからです。
取消は、送信取消ではなく「〇日の注文を取り消します」と文で送ってもらうよう、取引先に頼んでおきます。
それでも送信取消の表示が出ることはあります。
そのときは受注側から「先ほどのメッセージが取り消されていました。ご注文の取消でしょうか、内容の訂正でしょうか」と尋ねます。
受信した時点で台帳に転記しておけば、メッセージが消えても、何を受けていたのかは台帳に残ります。
受注側が誤った確定の返信を送ってしまった場合も、考え方は同じです。
LINE公式アカウントのチャットでは送信から24時間以内なら送信取消ができますが1、取引先がすでに読んでいれば、取り消しても訂正の意図は伝わりません。
消すより、「先ほどの数量に誤りがありました。正しくは8ケースです」と訂正の文を送るほうが、双方の記録がそろいます。
無料範囲の機能で足りるところ
LINE公式アカウントのチャットには、「要対応/対応済み」のステータス、担当者の設定、タグ、メモがあります1。
無料の範囲ではタグが1個、メモが1件で、購入型オプションのChat Proではタグが最大30個、メモが最大1000件になります1。
無料の範囲でも効くのは、ステータスと担当者です。
注文が届いたトークを「要対応」にしておけば、未処理の注文を一覧で拾えます。
担当者を設定すれば、誰がその注文を持っているかが分かり、前の節で触れた既読の思い込みを減らせます。
足りなくなるのは、注文の状態を細かく分けたいときです。
タグが1個では「注文あり」程度の印しか付けられず、確定前・確定済み・変更ありを分けられません。
メモが1件では、その取引先との注文の履歴を書きためる場所としては足りません。
無料の範囲で運用する場合、状態の管理はトークの外の台帳に持たせることになります。
ここで挙げたのは公式アカウントのチャットの機能です。
個人のLINEアカウントで注文を受けている場合はこの管理画面を前提にできないため、未処理の拾い出しや担当の割り振りも台帳側で行います。
LINE WORKSで受ける場合は仕組みが別なので、同じ考え方を自社のプランの機能に当てはめ直します。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受付
- 受け取ったことだけを返す
- 確定はまだと分かる文にする
- 確定
- 品目・数量・納期・届け先を復唱する
- 合意した確定の合図で確定とする
- 変更
- 元の注文を引用してもらう
- 変更後を復唱し直す
- 台帳は元の行を「変更」で残し新しい行を作る
- 取消
- 「〇日の注文を取り消します」と文で送ってもらう
- 送信取消を見たら受注側から確認する
複数担当者で扱うときの見落とし・二重処理を防ぐ記録と共有
トークの中で効くこと、効かないこと
ステータスと担当者で、未処理の注文と持ち主は分けられます。
一方、複数人で長く運用すると、過去の注文を探すことと、履歴が残る期間が問題になってきます。
メッセージの検索はチャットルームの中で行います1。
ある取引先の過去の注文を探すなら、その取引先のトークを開いてから検索する形です。
「先月、この品目をどの取引先がどれだけ頼んだか」のように、取引先をまたいで探したい場面には向いていません。
履歴が残る期間も、プランによって違います。
LINE公式アカウントのチャットの保存期間は、無料で半年、Chat Proで5年です1。
LINE WORKSは、フリープランが2週間でダウンロード不可、有料のスタンダードとアドバンストが6ヶ月でダウンロード可です2。
画像やファイルで届く注文書には、さらに注意が要ります。
公式アカウントのグループや複数人トークでは、無料の場合、画像は2週間、ファイルは1週間しか残りません1。
取引先が注文書を写真で送ってくる運用なら、受け取った時点で手元に保存しておかないと、後で見返そうとしたときには消えていることになります。
台帳を処理の正にする
複数人で扱うときの提案は、トークを「注文を受け取る場所」、台帳を「処理の正」と分けることです。
台帳は共有の表計算でも構いません。
注文が届いたら台帳に一行起こし、手配や出荷は台帳を見て進めます。
台帳に持たせる列は、たとえば次のようなものです。
受信日時、取引先、品目、数量、納期、届け先、状態(受付・確定・変更・取消)、担当者、確定の返信をした日時、元のメッセージを探す手がかり。
最後の列は、トークの中で検索するときの語や日付を書いておく欄です。
こうしておくと、既読と処理済みの混同は台帳の状態の列で判断できるようになります。
二重処理は、同じ取引先・品目・納期の行が並ぶので、転記の時点で気づく機会ができます。
送信取消でメッセージが消えても、台帳の行は残ります。
代わりに増えるのが、転記の手間と転記漏れです。
転記漏れは、公式アカウントのステータスと組み合わせると見つけやすくなります。
「台帳に書いてから対応済みにする」と決めておけば、要対応のまま残っているトークが転記待ちの注文です。
記録の保存は電子取引の保存と切り離さない
注文の記録は、社内の行き違いを防ぐためだけのものではありません。
国税庁は、注文書などをインターネット等で授受する取引を電子取引とし、受け取ったデータは検索の要件や真実性の確保など、所定の方法で保存する必要があるとしています5。
LINEで受けた注文がこの保存の対象にどこまで当たるか、トークや台帳をどう残せば要件を満たすかは、取引の内容や保存の仕方によって変わります。
この記事で断定できる範囲ではないため、顧問税理士や所轄の税務署に確認してください。
特に、無料の範囲で履歴が半年で消える状態のまま運用している場合は、どの記録をどこに残すかを早めに相談しておくと、後から慌てずに済みます。
▼ 図の内容を文字で読む
- LINE WORKS フリープラン:2週間(ダウンロード不可)
- LINE WORKS スタンダード・アドバンスト:6ヶ月(ダウンロード可)
- LINE公式アカウント 無料:半年
- LINE公式アカウント Chat Pro:5年
運用の改善だけでは足りないと判断する状況
判断の軸
ここまでの運用は、受注側の確認と転記を増やすことで誤認を減らす方法です。
確認と転記を続けられるうちは、LINEのままで十分なことも多いはずです。
限界は、その手間が件数や人数に比例して増え、追いつかなくなったときに現れます。
判断の軸は五つあります。
注文の件数、担当者の人数、半年より前の履歴を探す必要、保存の要件への対応、取引先が書式を守ってくれるかどうかです。
件数が増えると、台帳への転記が後回しになる日が出てきます。
転記が遅れれば、台帳を処理の正にしたことの意味が薄れます。
担当者が増えると、無料の範囲のタグ1個では状態を分けきれず、台帳とトークの突き合わせが重くなります。
半年より前の注文を確かめる場面があるかどうかは、無料の範囲で運用できるかを分ける大きな条件です。
前年の同じ時期の注文量を見て仕込みを決める、といった使い方をしているなら、保存半年の制約はすぐに効いてきます。
保存の要件への対応が必要な場合も、トークを残すだけでは足りない可能性があり、記録の置き場所そのものを見直すことになります。
最後の取引先の協力度は、どの選択肢を選ぶかに関わります。
書式を守ってくれる取引先が多ければ、LINEのまま機能を足す方向で足ります。
書式がなかなか定着しないなら、入口の側で項目を揃えさせる方法が効いてきます。
選択肢の比較表
同じ軸で、いまのLINE公式アカウントの無料範囲、Chat Pro、LINE WORKS、注文の入口の分離(フォームなど)を並べると次のようになります。
入口の分離は使う仕組みによって機能も費用も変わるため、取引先の操作負担と向き不向きに絞っています。
判断が分かれるのは、主に二点です。
一つは保存期間と持ち出しの違いです。
履歴を長く残すことを重視するならChat Proの5年が長く、手元に持ち出して自社の台帳と並べたいなら、LINE WORKSの有料プランがダウンロードに対応している点が効いてきます2。
ただし、どちらを選んでも、それだけで保存の要件を満たすとは言えません。
前の節で触れたとおり、要件への対応は別に確認が要ります。
もう一つは、取引先に何を変えてもらうかです。
LINE WORKSは全プランでLINEユーザーとのトークに対応しているため2、取引先はふだんのLINEのまま、受注側だけが業務用のアカウントに移れます。
フォームなどへ入口を分ける方法は、取引先にLINEから別の画面へ移ってもらう代わりに、品目や数量を入力欄で揃えられます。
注文か相談かを見分ける問題を、受注側の読み取りではなく入口の側で解く方法です。
費用は、各提供元の条件として見ます。
LINE WORKSの有料プランは、年額契約でスタンダード450円、アドバンスト800円、月額契約でスタンダード540円、アドバンスト960円です(税抜、1ユーザー/月)2。
受注に関わる担当者の人数を掛けたものが目安になります。
LINE公式アカウントの月額はメッセージを配信できる通数の枠に対する料金で3、受注を管理する機能の費用ではありません。
二つの資料を合わせると、言えることは限られます。
注文の記録を長く検索し、複数人で共有する必要がある場合、無料範囲の保存半年・タグ1個では足りなくなる可能性が高い、ということです。
どの選択肢がどの保存期間の要件に合うかまでは、この比較からは言えません。
| 選択肢 | 履歴の保存期間 | 担当者間の共有 | 取引先の操作負担 | 費用の考え方 |
|---|---|---|---|---|
| LINE公式アカウント 無料範囲 | 半年 | 担当者設定とステータス。タグ1個・メモ1件 | いまのLINEのまま | 月額はメッセージ配信の枠で受注管理の料金ではない |
| Chat Pro | 5年 | タグ最大30個・メモ最大1000件 | いまのLINEのまま | 購入型オプション。価格は提供元で確認 |
| LINE WORKS | フリー2週間(ダウンロード不可)・有料6ヶ月(ダウンロード可) | 受注側の利用者ごとに契約。共有の仕組みは導入前に確認 | 取引先はLINEのまま受注側の業務用アカウントとトーク | 有料は年額契約で1ユーザー月450円から(税抜) |
| 注文入口の分離(フォーム等) | 使う仕組みによる | 使う仕組みによる | 項目を埋める手間とLINEから別の画面へ移る手間が増える | 使う仕組みによる |
▼ 図の内容を文字で読む
- 注文の件数
- 台帳への転記が後回しになる日が出る
- 台帳を処理の正にした意味が薄れる
- 担当者の人数
- タグ1個では状態を分けきれない
- 台帳とトークの突き合わせが重くなる
- 履歴と保存の要件
- 半年より前の注文を確かめる場面がある
- トークを残すだけでは足りない可能性があり、記録の置き場所を見直す
- 取引先の協力度
- 書式を守る取引先が多ければLINEのまま機能を足す
- 書式が定着しなければ入口の側で項目を揃える
取引先の負担を抑えて入口を分ける・移す進め方
まず今のトークで書式と受付返信を始める
入口を分けるにしても、いきなり取引先に新しい仕組みを使ってもらうと、慣れない入口で注文が漏れたり、結局LINEに戻ってきたりします。
ここで示す手順は段階的に移すための提案で、効果を測ったものではありません。
最初の段階では、取引先の操作は何も変えません。
受注側が受領と確定の返信を分け、書式を返信に添え、台帳への転記を始めます。
取引先から見て変わるのは、返信が丁寧になったことくらいです。
この段階で、どの取引先が書式を使ってくれて、どの取引先は使わないかが見えてきます。
注文専用の入口を、併用期間をつけて案内する
次に、注文専用の入口を案内します。
注文用のアカウントを分ける、フォームを用意するなど、形はいくつか考えられます。
どれを選ぶにしても、案内では「いつから新しい入口を使ってほしいか」と「それまでは今のトークでも受けること」を一緒に伝えます。
併用の期間を置くのは、取引先が切り替えを忘れても注文が宙に浮かないようにするためです。
期限だけを伝えて旧経路を閉じると、切り替えに気づかなかった取引先の注文が、誰にも読まれない場所に届くおそれがあります。
旧経路で届いた注文は受注側が転記して返す
併用期間中に今のトークで注文が届いたら、受注側がそれを新しい入口や台帳へ転記し、「こちらで受け付けました。次回からはこちらの入口からお願いします」と返します。
取引先に送り直しを求めないのは、送り直しの手間をかけさせると、新しい入口への印象が悪くなるからです。
受注側が一手間を引き受け、毎回同じ案内を添えることで、取引先は少しずつ新しい入口へ移っていきます。
書式を守ってくれない取引先、新しい入口を使ってくれない取引先は、無理に切り替えさせなくても構いません。
その取引先の注文だけは受注側が転記する、と割り切れば、残りの取引先の移行は進められます。
全員を一度に移すことより、受注側の確認と転記がどこで減ったかを把握しておくことのほうが大切です。
移せているかを記録で確かめる
移行がうまくいっているかは、二つの件数で確かめます。
一つは、聞き返しや訂正が必要になった行き違いの件数です。
もう一つは、旧経路で届いた注文の転記漏れの件数です。
行き違いが減らないなら、入口を移しても項目の欠けが残っている可能性があり、書式や入力欄を見直します。
転記漏れが出るなら、併用期間を延ばすか、旧経路のトークを毎日確認する担当を決めます。
件数が落ち着いてから旧経路の扱いを決めれば、取引先にも受注側にも無理のない形で入口を移せます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 今のトークで書式と受付返信を始める:取引先の操作は変えず、受領と確定の返信と台帳への転記を始める
- 注文専用の入口を併用期間つきで案内する:いつから使ってほしいかと、それまでは今のトークでも受けることを伝える
- 旧経路で届いた注文は受注側が転記して返す:受け付けたことと次回からの入口を返信で伝える
- 行き違いと転記漏れの件数で確かめる:聞き返しや訂正の件数と転記漏れの件数を見て、次の扱いを決める
注文の書式や確定の合図は一般的な考え方で決められても、自社の件数・担当者数・取引先ごとの協力度に当てはめて、運用で足りるのか入口を分けるべきかを判断するのは、社内だけでは迷いやすいところです。
いまの受注の流れのどこで確認や転記が重なっているか、どの段階の対策から始めると取り違えが減りやすいかを、一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 注文とみなす条件 | 品目・数量・納期・届け先が揃い、注文の意思がはっきりしているもの |
|---|---|
| 欠けているとき | 注文候補として、欠けている項目だけを聞き返す |
| 確定の合図 | 復唱への了承か、期限つきの復唱かを取引先と合意しておく |
| 変更・取消 | 元の注文を引用してもらい、変更後を復唱し直す。送信取消は受注側から確認する |
| 処理の正 | 台帳に一行起こし、台帳に書いてからステータスを対応済みにする |
| 移行を考える目安 | 転記が追いつかない、タグ1個で状態を分けきれない、半年より前を探す、保存の要件への対応が要る |
| 移行の進め方 | 書式と受付返信→専用の入口を併用期間つきで案内→旧経路は転記して返信→行き違いと転記漏れの件数で確認 |
LINEのまま続けるか、Chat ProやLINE WORKSを足すか、入口を分けるかは、履歴をどこまで残すか、取引先に何を変えてもらえるかで答えが変わり、記録の保存の要件とも合わせて考える必要があります。 受注の件数や担当者の体制、取引先の状況をもとに、どの選択肢をどの順で試すか、移行後に何の件数で効果を確かめるかを整理できます。
よくある質問
取引先が個人アカウントで注文し、後で送信取消した場合はどう扱えばよいですか。
個人向けLINEの標準ユーザーは送信後1時間以内に送信取消ができ、相手には取り消した旨が表示されます4。
LYPプレミアム会員は7日以内に取消でき、未読なら通知なしで取り消せる場合もあります4。
取消の表示を見たら、注文の取消なのか、内容の訂正なのかを受注側から尋ねます。
受信した時点で台帳に転記しておけば、メッセージが消えても何を受けていたかは残ります。
あらかじめ「取消は文で送ってください」と取引先に頼んでおくと、表示の読み違いを減らせます。
LINE公式アカウントの無料範囲で、どこまで注文管理ができますか。
無料の範囲でも、「要対応/対応済み」のステータスと担当者の設定は使えるため、未処理の注文の拾い出しと担当の割り振りはできます1。
一方、タグは1個、メモは1件、履歴の保存は半年です1。
確定前・確定済み・変更ありといった状態の分類や、半年より前の注文の確認は、台帳側で持つことになります。
なお、公式アカウントのプラン料金(コミュニケーション0円、ライト5,000円、スタンダード15,000円、いずれも月額・税別)はメッセージ配信の通数の枠に対するもので3、プランを上げても受注管理の機能が増えるわけではありません。
注文の確定の合図は、取引先とどう合意しておけばよいですか。
受注側の復唱に取引先が了承を返した時点で確定とする方法と、復唱を送った時点で確定とし、違いがあれば決めた時刻までに連絡をもらう方法があります。
前者は確実ですが返事待ちで手配が止まり、後者は速い代わりに、取引先が復唱を読まなかった場合に誤りが残ります。
どちらにするかを、書式の案内と一緒に文で伝えておきます。
基本契約などで発注の手続きが決まっている場合はそちらに合わせ、契約上の扱いに迷う場合は専門家に確認してください。
トークの注文履歴は電子帳簿保存法の保存対象になりますか。
国税庁は、注文書などをインターネット等で授受する取引を電子取引とし、受け取ったデータは検索の要件や真実性の確保など所定の方法で保存する必要があるとしています5。
LINEのトークで受けた注文が具体的にどこまで対象になり、どの方法で残せば要件を満たすかは、取引の内容や保存の仕方によって変わります。
顧問税理士や所轄の税務署に、トークと台帳のどちらをどう残すかを含めて確認してください。
取引先がフォームや別の入口を使ってくれないときは、どう進めればよいですか。
無理に切り替えさせず、旧経路で届いた注文は受注側が新しい入口や台帳へ転記し、「受け付けました。次回からはこちらからお願いします」と返す運用を続けます。
送り直しを求めないことで、取引先の負担を増やさずに済みます。
どうしても切り替わらない取引先は、その取引先の分だけ受注側が転記すると割り切れば、ほかの取引先の移行は進められます。
取引先にLINEのまま送ってもらいたい場合は、受注側だけが業務用のアカウントへ移る方法もあり、LINE WORKSは全プランでLINEユーザーとのトークに対応しています2。
- 1 出典:LINEヤフー株式会社「LINE公式アカウント マニュアル(チャット)」(2026年)
- 2 出典:ワークスモバイルジャパン株式会社「LINE WORKS 料金ページ」(2026年)
- 3 出典:LINEヤフー株式会社「LINE公式アカウント 料金プラン」(2026年)
- 4 出典:LINEヤフー株式会社「LINEヘルプセンター:メッセージの取り消し(送信取消)と削除」(2026年)
- 5 出典:国税庁「電子帳簿保存法 通則(制度の概要等)」(2026年)