◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 請負では、検収の合否より、不適合を知った時から1年以内に請負人へ通知したかどうかが請求を保つ分かれ目になる。
- みなし検収条項がある契約では、結果を返さずに検収期限を過ぎることが最も避けたい状態である。
- 検収時点で不具合を把握しているなら、合格にする場合でも不具合と修補要求を書面に書き添える。
- 準委任では契約不適合責任が原則として当てはまらず、善管注意義務と契約書の責任範囲で考える。
- 賠償上限など条項の効力は個別の事情によるため、紛争になりそうな段階で弁護士に確認する。
目次

不具合が残ったまま検収期限が来たとき、まず何を確かめるか
納品物に不具合が残っているのに、検収期限だけが迫っている。
ここで合格にすると、後から修補も賠償も求められなくなるのではないかと迷う場面です。
民法上、請負であれば、注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人へ通知することで、追完・報酬減額・損害賠償・解除の請求を保てると定められています1。
実際の分かれ目は、契約書の検収条項(みなし合格や検収期間の定め)と、契約が請負か準委任かです。
期限内に不具合を書面で伝え、合格とは扱わない旨を明記したうえで、条項と契約類型を確かめて判断するのが安全です。
契約書の検収条項を見る
たとえば、業務システムの開発を外部に発注し、受注者から納品物と検収依頼が届いたとします。
受入テストを進めると、帳票の一部の項目が仕様書どおりに出力されないことが分かりました。
修補には時間がかかりそうですが、検収期限は目前です。
このとき発注担当者が選べるのは、合格にする、不合格として返す、不具合を指摘したうえで判断を留保する、のいずれかです。
どれが発注側にとって不利にならないかは、民法の一般的なルールだけでは決まらず、手元の契約書の検収条項によって変わります。
契約書の解説では、検収条項を組み立てる要素として、検収期間、検収方法の明文化、検収後の権利の明示、不検収時の取扱い、契約類型に応じた設計が挙げられています4。
これを、いま目の前にある不具合に当てはめて読むと、確かめる点がはっきりします。
検収期間からは、いつまでに結果を返さなければならないかが分かります。
検収方法や基準の定めからは、帳票のずれが不合格の理由に当たるのか、合格後の修補で扱う想定なのかを読み取れることがあります。
検収後の権利の定めがあれば、合格した後の修補や賠償がどう扱われるかが書かれているはずです。
なかでも見落としやすいのが、不検収時の取扱いです。
期間内に検収結果を通知しなかった場合に合格とみなす、という定めが置かれている契約があります。
この定めがあると、迷っているうちに期限が過ぎることが、そのまま合格と同じ扱いにつながるおそれがあります。
合格にするか不合格にするかを決める前に、黙って期限を迎えることこそ避けたい状態だと分かるのは、この条項を読んだときです。
請負か準委任かを見分ける
もう一つの分かれ目が、契約の類型です。
請負は、仕事を完成させて成果物を引き渡すことを約束する契約です。
準委任は、一定の事務を処理することを約束する契約です。
契約書の表題が「業務委託契約」となっていても、それだけでは類型が分からないことがあります。
本文で、完成した成果物の引渡しを約束しているのか、作業を遂行することを約束しているのかを読みます。
類型を見分けるのは、不具合に対して使える考え方が変わるからです。
次の節で説明する、不適合を知ってから通知することで請求を保つというルールは、請負についての規定です1。
準委任では、契約不適合責任は原則として当てはまらず、受託者が注意を尽くして事務を処理したかが問われると解説されています3。
同じ帳票のずれでも、請負なら成果物が契約内容に合っているかを、準委任なら作業の進め方に落ち度があったかを軸に考えることになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 検収期間
- いつまでに結果を返すか
- 検収方法・基準
- 帳票のずれは不合格の理由か
- 合格後の修補で扱う想定か
- 検収後の権利
- 合格後の修補や賠償の扱い
- 不検収時の取扱い
- 期間内に通知しないと合格とみなす定めがあるか
検収に合格すると、修補や賠償は請求できなくなるのか
民法637条の通知期間
請負の場合、民法637条は、注文者が仕事の目的物の不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないと、追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除ができなくなると定めています1。
追完とは、不具合を直す、足りない部分を補うといった形で、契約どおりの状態にすることを指します。
ここで注目したいのは、期間の起点が検収日や引渡し日ではなく、注文者が不適合を知った時に置かれている点です。
そして期間内に求められているのは、訴えを起こすことや請求をすべて済ませることではなく、不適合がある旨を請負人に知らせることです。
同じ条文には例外もあります。
請負人が引渡しの時点で不適合を知っていた場合や、重大な過失によって知らなかった場合には、この期間の制限は適用されません1。
ただ、受注者が不具合を知っていたかどうかは、発注側からは見えにくい事情です。
例外に頼る前提で動くより、知った時点で通知しておくほうが確実です。
なお、ここでの説明は、契約書に別の定めがなく民法の規定がそのまま働く場合の整理です。
契約で通知期間や請求できる内容を別に定めていれば、その文言を先に確認する必要があります。
合格後に不具合を知った場合
では、検収に合格した後で不具合が見つかった場合はどうでしょうか。
契約書の解説でも、検収完了後であっても追完請求は可能であり、請負では637条の通知期限が重要になると説明されています4。
条文と解説を合わせて読むと、請求を保てるかどうかを左右するのは、検収に合格したかどうかよりも、不適合を知った後に期間内に通知したかどうかだと整理できます。
合格後しばらく使ってから帳票のずれに気づいた場合も、気づいた時から通知までの期間が問題になります。
注意したいのは、今回のように検収の時点で不具合をすでに把握している場合です。
このときは、知った時がすでに来ているので、期間はその時点から進み始めています。
合格にしたうえで修補は後から頼むつもりでいても、合格の連絡だけを送って不具合に触れなければ、受注者には不具合の存在を伝えていないことになります。
合格にするなら、その書面やメールに、把握している不具合と修補を求める旨を書き添えておくことが、通知の役割を持たせる実務上の工夫になります。
たとえば「検収の結果、下記の不具合を除いて合格とし、下記の不具合については修補を求めます」のように、合格とする範囲と修補を求める点を分けて書くと、受注者も何を直せばよいかが分かります。
ただし、この書き方で合格部分と不具合部分がどう扱われるかは契約条項にもよります。
検収後の権利の定めがある場合は、それと矛盾しない書き方になっているかを見ておきます。
一方で、合格すれば必ず後から請求できると言い切れるわけでもありません。
検収合格をもって成果物を最終的に受け入れたものとする、検収後に見つかった不具合の扱いを限定する、といった定めが契約書にあれば、結論が変わる可能性があります。
合格による影響を見極めるには、検収後の権利の定めを読み、民法の通知ルールと契約の文言がどう組み合わさる契約なのかを確かめることになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 引渡し・検収
- 不適合を知る(期間の起点)
- 知った時から1年以内に請負人へ通知
- 追完・報酬減額・損害賠償・解除の請求が保たれる
▼ 図の内容を文字で読む
- 合格とする範囲
- 不具合を除いて合格とする
- 不具合の内容
- 把握している不具合を具体的に書く
- 修補を求める旨
- 下記の不具合については修補を求める
- 検収後の権利の定めと矛盾しないか見る
検収を保留・拒否した場合、期限内に検収しなかった場合の不利益
みなし検収条項の前提
みなし検収とは、受注者から検収依頼を受けた発注側が、定められた期間内に検収結果を通知しなかった場合に、検収に合格したものとみなす扱いのことです。
瑕疵(不具合)を指摘しないまま一定期間が過ぎると、検収があったとみなされる可能性があるという考え方は、IT訴訟の解説でも一般的な原則として紹介されています5。
発注側が不合格や留保を選ぶ場合に最も大きな不利益が生じるのは、選んだ結果を相手に伝えないまま期限を迎えたときです。
もっとも、みなし検収はどんな条件でも働くものとは解説されていません。
合理的な期間が設定されていることと、適切な検収依頼の通知があることが前提とされ、極端に短い期間を設定する場合は、優越的地位の濫用などに当たる可能性があるとも指摘されています4。
受注者から届いたのが検収依頼として明確な連絡だったか、期間が確認作業に見合う長さだったかは、後に争いになったときの事情になりえます。
ただ、これは争った場合に主張できる余地の話であり、期限内に通知していれば最初から問題になりません。
条項の有効性に頼るより、期間内に不具合を伝えておくほうが発注側の負担は小さく済みます。
期間がいつから数えられるかも、手元で確かめておきたい点です。
みなし検収が適切な検収依頼の通知を前提にしているとすれば、受注者からいつ、どんな形で検収依頼を受け取ったかが、期間の起点を考える材料になります。
納品物が届いた日と検収依頼を受け取った日が違う場合もあるため、両方の日付と連絡の内容を残しておくと、残りの日数を正しく見積もれます。
検収を中止した場合の争点
保留と放置の境目が問われた例として、Jリーグの電子チケットシステムの開発をめぐる東京地裁の判決(平成25年)があります。
この事件では、発注者が検収を中止したことが、受注者によるみなし検収の主張との関係で争点になりました5。
判決の結論や理由はここでは扱いませんが、発注側が「まだ検収を終えていない」と考えていても、相手方からは期間が過ぎて合格になったと主張されうる、という構図は読み取れます。
社内の都合で確認作業を止めることは、発注側の中では保留のつもりでも、受注者から見れば何も返ってこない状態と区別がつきません。
止めるのであれば、止めている理由と把握している不具合、いつ確認を再開するかを受注者に伝えておくことで、単なる放置とは違う状態だと示しやすくなります。
今回の帳票の例でいえば、「出力項目のずれが修補されるまで検収を保留する」と書面で伝えることが、保留の意思を形に残す行動です。
| 選択 | 不具合について起こりうること | あわせて確かめること |
|---|---|---|
| 合格にする | 請負なら不適合を知った時から1年以内の通知で請求を保てる余地がある。検収条項の定め次第で結論が変わりうる | 合格の連絡に不具合と修補要求を書き添えたか |
| 不合格・留保として通知する | 不具合を指摘しているため合格とみなされる事態を避けやすい | 通知の方法と宛先が契約の定めに沿っているか |
| 結果を返さずに期限を過ぎる | みなし検収条項があれば合格とみなされる可能性がある | 条項の有無と検収依頼を受け取った時期 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 働くための前提
- 合理的な期間が設定されている
- 適切な検収依頼の通知がある
- 手元で確かめる点
- 検収依頼を受け取った日
- 納品物が届いた日
- 連絡の内容
- 避けたい状態
- 結果を返さずに期限を過ぎる
請負と準委任で、検収後の責任追及はどう変わるか
請負の契約不適合責任
ここまでの通知期間の話は、請負を前提にしています。
請負では、引き渡された成果物が契約の内容に適合しているかが問われ、適合しない場合には追完・報酬減額・損害賠償・解除を求める枠組みになります1。
帳票の出力項目が仕様書と違うという不具合は、成果物そのものが契約内容と食い違っているという形で説明しやすい問題です。
検収の場面で発注側が確認しているのも、まさに適合しているかどうかであり、検収と契約不適合責任は同じ物差しでつながっています。
そのため請負では、検収で見つけた不具合をそのまま通知の内容に移しやすいといえます。
仕様書のどの記載と、成果物のどの動作が食い違っているかを示せば、何が契約内容に合っていないのかが相手に伝わります。
反対に、仕様書に書かれていない期待とのずれは、不適合として説明しにくい場合があります。
検収基準を仕様書の記載と結び付けておくことが、後から責任を問う場面でも効いてくるのはこのためです。
準委任の善管注意義務
準委任では事情が変わります。
契約不適合責任は原則として準委任には当てはまらず、受託者が善管注意義務を果たしたかが問われると解説されています3。
善管注意義務とは、その仕事を引き受けた者として通常求められる注意を払って事務を処理する義務のことです。
成果物に問題があっても、問われるのは成果物が仕様と合っているかそのものより、作業が求められる注意を尽くして進められたかという点になります。
準委任で注意を尽くした履行がなかったとして損害賠償を求めるときは、債務の本旨に従った履行がないことを理由とする民法415条の考え方が手がかりになります2。
ここでは、請負の637条のように「不適合を知った時から1年以内に通知すれば保たれる」という整理がそのまま当てはまるとは言えません。
検収期限を前にした発注担当者にとっては、通知期間に頼るより、契約書に書かれた責任の範囲や報告・確認の手続を読むことが先になります。
さらに、成果物の完成に対して報酬を支払う成果完成型の準委任については、責任の扱いに見解が分かれており、契約書で責任範囲を定めておく必要があるとされています3。
この整理は民間の解説に基づくもので、制作や工事など、ソフトウェア開発以外の契約でも同じように考えられるかは、契約内容によって変わりえます。
手元の契約が準委任で、しかも成果物の引渡しが予定されている場合は、類型の判断と責任の範囲で見解が分かれる部分なので、早めに専門家へ確認しておくと判断を誤りにくくなります。
| 項目 | 請負 | 準委任 |
|---|---|---|
| 約束の中心 | 仕事を完成させ成果物を引き渡す | 一定の事務を処理する |
| 不具合に対する責任の枠組み | 契約不適合責任 | 善管注意義務(原則として契約不適合責任は当てはまらない) |
| 請求を保つための注意点 | 不適合を知った時から1年以内に通知する | 契約書の責任範囲と手続の定めを読む |
| 賠償の手がかり | 不適合を理由とする損害賠償 | 債務の本旨に従った履行がないことによる損害賠償(415条) |
| 見解が分かれる点 | ― | 成果完成型の準委任では責任の扱いに見解が分かれる |
検収後の損害賠償と、契約書で事前に確認すべき条項
債務不履行による賠償
修補だけでは済まない損害が出ている場合、賠償を求められるかも気になるところです。
民法415条は、債務の本旨に従った履行がない場合、債務者の責めに帰することができない事由によるときを除いて、損害賠償を請求できると定めています2。
請負で成果物に不適合がある場合も、損害賠償は637条の通知によって保たれる請求の一つに含まれています1。
つまり、請負で賠償を考えるなら、まず通知期間を守ることが前提になり、そのうえで損害の中身を検討する順番になります。
どの損害がどこまで認められるかは、個別の契約と事案によって変わります。
たとえば帳票のずれを社内で手作業によって補正していた場合、その手間が賠償の対象として認められるかどうかは、契約の定めや不具合との結びつきによって判断が分かれうるもので、一律には言えません。
発注側にできるのは、不具合が業務にどう影響したか、どんな対応に追われたかを記録し、後で損害を説明できる材料を残しておくことです。
検収期間・みなし合格・賠償上限の確認
ここまでの判断は、どれも契約書の文言で左右されます。
検収期限が迫った場面でも、次の契約を結ぶ前の見直しでも、読む条項は共通しています。
検収期間について、解説では目安となる幅が示されていますが、これは法律で決まった基準ではありません4。
実際の期間が、納品物の規模や確認項目に照らして足りるかどうかは、契約ごとに見る必要があります。
また、検収方法の明文化や検収後の権利の明示が条項設計の要素として挙げられているのは4、今回のような場面で、何を基準に合否を決め、合格後に何を求められるかが曖昧なままだと判断に迷うからです。
賠償上限の条項は、損害賠償の額に上限を設ける定めです。
上限が置かれていても、どの範囲の損害が対象か、上限額を何を基準に決めているかによって、請求の見通しは変わります。
こうした条項の効力がどこまで及ぶかは個別の事情に左右されるため、条項があるから請求できない、あるいは上限を超えて請求できると決めつけず、紛争になりそうな段階で弁護士に相談するのが確実です。
| 条項 | 読む点 | 不具合が残る場面での意味 |
|---|---|---|
| 検収期間 | 検収依頼から結果の通知までの期間 | いつまでに通知を出すかが決まる |
| 検収方法・基準 | 何を確認し何をもって合格とするか | 不具合が不合格の理由になるかの手がかりになる |
| みなし合格(不検収時の取扱い) | 期間内に通知しなかった場合の扱い | 放置が合格と同じ扱いになるかが分かる |
| 検収後の権利 | 合格後の修補・賠償の扱い | 合格にした場合の影響を見極める |
| 賠償上限 | 対象となる損害と上限の決め方 | 請求の見通しを立てる前提になる |
▼ 図の内容を文字で読む
- 不適合を知った時から1年以内に通知する
- 損害の中身を検討する
- 業務への影響と対応を記録する
不具合がある状態で期限が来たときの手順
不具合の記録
ここまでの整理を、期限当日に動ける手順にまとめます。
以下は、637条の通知の考え方と、みなし検収が通知をしなかった場合に問題になるという点を踏まえた実務上の提案で、法令や公的なガイドラインで定められた手順ではありません。
契約書に特別な定めがあれば、そちらを優先してください。
最初に行うのは、不具合を記録することです。
記録しておきたいのは、確認した項目と結果、不具合が起きる操作の手順、仕様書のどの記載と食い違っているか、不具合に気づいた日です。
気づいた日を残すのは、請負での通知期間が不適合を知った時から進むためで、後から起点を説明できるようにしておく意味があります。
帳票の例なら、どの帳票のどの項目が、どんなデータを入れたときに、仕様書と違う形で出力されたかを、画面の写しなどと一緒に残します。
記録は、通知の本文を書く材料にもなります。
確認した項目の一覧があれば、不具合がない部分と不具合がある部分を分けて伝えられ、修補の範囲や再検収で確認する点を受注者と共有しやすくなります。
留保付きの通知と修補要求の書面化
記録がそろったら、検収期限内に受注者へ書面で通知します。
通知に書いておきたいのは、次の事柄です。
<ul><li>記録した不具合の内容と、仕様書との食い違い</li><li>不具合の修補を求めること</li><li>今回の納品物を合格とは扱わないこと(合格にする場合は、上記の不具合について修補を求める旨)</li><li>修補後に改めて検収を行うこと</li></ul>
合格とは扱わない旨を書くのは、結果を返さないまま期限が過ぎたとみなされることを避け、保留や不合格の意思をはっきりさせるためです。
合格を選ぶ場合でも、不具合と修補の要求を同じ書面に書いておけば、請負での不適合の通知の役割を持たせやすくなります。
口頭で伝えた場合も、通知したかどうか、何を伝えたかが後から争いになったときに示せるよう、同じ内容をメールや書面で残しておきます。
契約書に通知の方法や宛先の定めがあれば、それに沿って送ります。
通知を送った後は、受注者からの回答と修補の予定を記録し、修補後の再検収でも同じ確認項目を使います。
受注者が不具合を認めない、類型や条項の読み方で意見が食い違うなど、紛争になりそうな気配があれば、その時点で弁護士に確認してください。
この手順で減るのは、期限を過ぎて合格とみなされる事態や、通知をしたかどうか分からなくなる事態であり、不具合をめぐる争いそのものがなくなるわけではありません。
▼ 図の内容を文字で読む
- 不具合と確認項目、気づいた日を記録する
- 期限内に不具合と修補要求を書面で通知する
- 受注者の回答と修補の予定を記録する
- 修補後に同じ確認項目で再検収する
検収条項の読み方や契約類型の見分け方は契約書ごとに異なり、期限が迫る中で一人で判断すると、通知の出し遅れや合否の選び間違いにつながりやすいためです。
手元の契約書の検収条項と不具合の記録を照らし合わせ、通知に何を書くか、どの時点で弁護士に確認すべきかを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初に読む条項 | 検収期間・検収方法・検収後の権利・不検収時の取扱い |
| 請負で請求を保つ方法 | 不適合を知った時から1年以内に請負人へ通知する |
| 避けたい状態 | 結果を返さずに検収期限を過ぎること |
| 準委任の場合 | 善管注意義務と契約書の責任範囲で考える |
| 賠償上限 | 対象と上限の決め方を読み、効力の判断は弁護士に確認する |
通知を出した後も、修補の範囲や再検収の進め方、次の契約での検収条項の見直しなど、発注側に判断が残るためです。 今回の経緯を踏まえて、次の発注で検収基準や検収後の権利をどう書いておくと判断に迷いにくいかを確認できます。
よくある質問
検収書に押印した後で不具合が見つかった場合、修補を求められますか。
請負で契約書に別の定めがなければ、検収完了後でも追完(修補)を求められると解説されています4。
その際は、不具合を知った時から1年以内に、不適合がある旨を請負人へ通知しておくことが請求を保つ条件になります1。
ただし、検収合格を最終的な受入れとする定めなど、検収後の権利を限定する条項があれば結論が変わりうるため、契約書の該当条項を確認してください。
検収期間が極端に短い契約でも、みなし合格は有効ですか。
みなし検収は、合理的な期間設定と適切な検収依頼の通知が前提とされ、極端に短い期間設定は優越的地位の濫用などに当たる可能性があると指摘されています4。
ただ、実際に無効と扱われるかは個別の事情によります。
有効性を争う余地に頼るより、期間内に不具合を書面で伝えておくほうが確実です。
準委任で発注しましたが、成果物に問題があります。どう対応すればよいですか。
準委任では契約不適合責任は原則として当てはまらず、受託者が善管注意義務を果たしたかが問われると解説されています3。
賠償を考える場合は、債務の本旨に従った履行がないことを理由とする415条の考え方が手がかりになります2。
成果完成型の準委任は見解が分かれるため、契約書の責任範囲の定めを読み、不具合の記録を残したうえで、判断に迷う場合は弁護士に確認してください。
検収を保留する旨は口頭でも伝えられますか。書面にすべきですか。
口頭で伝えること自体はできますが、通知したかどうか、何を伝えたかが後から争いになったときに示せるよう、メールや書面で残すのが安全です。
契約書に通知の方法や宛先の定めがあれば、それに従って送ってください。
- 1 出典:Wikibooks「民法第637条」(2017年改正後の条文)
- 2 出典:Wikibooks「民法第415条」(2017年改正後の条文)
- 3 出典:atsoho「準委任契約と契約不適合責任」(年不明)
- 4 出典:office-tree「検収条項の設計と契約不適合責任」(年不明)
- 5 出典:@IT(ITmedia)「IT訴訟 徹底解説(86)」(2021年)