◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- スタンプや「お願いします」は単独で注文として扱わず、受注側の復唱に取引先が決めた合図を文字で返した時点で確定とする
- 確定前に確認する項目は部位名・規格・数量・加工・納品日・変更取消の6つで、豚部分肉は同じ部位名でも等級と重量区分で別の品物になる
- 送信取消は送り手や会員区分で期間が違い、取消前の通知で内容が見えていることもあるため、変更・取消は新しいメッセージで送ってもらう
- 公式アカウントのチャットは無料版で保存半年、グループや複数人のトークはコンテンツ2週間なので、後から確かめる注文は1対1で受ける
- 取引先数と注文件数、担当者、損失の大きさ、記録を遡る期間の4条件でルールが追いつかなくなったら、仕組みの移行を検討する
目次

届いたスタンプは注文なのか:LINE受発注の仕様から見る誤認の起点
たとえば、取引先から届いた「了解」のスタンプを注文の確定と受け取り、ロースを切り出して出荷の準備まで進めたところ、相手は「見ました」という意味で送っていた。
精肉は部位・規格・グラム数・納品日が絡むため、一度の取り違えがそのまま廃棄や欠品になります。
LINEの仕様には、スタンプが注文の確定を意味するという定めは見当たらず、意味を決めるのは取引先との取り決めだけです。
スタンプ単独は注文として扱わず、受注側が項目を復唱し、取引先が決めた合図を返した時点で確定とする運用を、まず決めてください。
件数や損失が大きく、ルールでも防げない場合に限って、別の仕組みを検討します。
スタンプ・短文返信が意味を持つのは取り決めがある場合だけ
受注の現場で迷いが生まれるのは、スタンプそのものより、その直前のやり取りとの組み合わせです。
たとえば受注側が「明日の分、前回と同じでよろしいですか」と送り、取引先から「了解」のスタンプが返ってきたとします。
受注側は「前回と同じ内容で確定」と読みますが、取引先は「メッセージを見た」という合図のつもりで、数量は後で送るつもりだったかもしれません。
「お願いします」という短文も同じで、見積りどおりの発注にも、検討を頼む意味にも、前の質問への返事にも読めます。
公式アカウントのマニュアルや個人向けLINEのヘルプが説明しているのは、送信や取消といった操作です。
たとえば管理画面からスタンプを送れるのは、LINEアカウントでログインしている場合に限られます1。
一方で、スタンプが注文の確定・変更・取消のどれを意味するかといった取り扱いは示されていません。
つまり、スタンプの意味は仕組みではなく、受注側と取引先の取り決めでしか決まりません。
取り決めがないままスタンプを注文として受け取ると、読み違えたときに、どちらの読み方が正しかったかを後から決める根拠もなくなります。
このため、受注の基本線は「スタンプ単独は注文として扱わない」に置くのが安全です。
受注側から送るスタンプも同じで、取引先の注文文に「了解」スタンプだけで返すと、受け付けたのか、内容まで確認したのかが相手に伝わりません。
スタンプは挨拶や受け取りの合図にとどめ、注文に関わる返事は文字で返すと決めておけば、読み方が分かれる場面そのものが減ります。
送信取消の時間と既読後の扱い
誤認のもう一つの起点が、送信取消です。
取引先が個人のLINEから注文を送っている場合、標準ユーザーは送信から1時間以内、LYPプレミアム会員は7日以内に送信取消ができます3。
受注側が公式アカウントの管理画面から送ったメッセージは、送信から24時間以内なら取り消せます1。
同じトークの中でも、どちら側が送ったか、取引先がどの会員区分かで、取り消せる期間が違うわけです。
既読後の扱いも押さえておく必要があります。
相手が既読にしたメッセージは、通知を出さずに取り消すことはできません3。
また、取消の前にプッシュ通知などで、相手が内容の一部を目にしている可能性があります3。
朝の仕込み中に通知で「ロース追加」と見えたのに、トークを開いたら取消済みになっていた、という状況も起こりえます。
取消できる期間が送り手によって違い、取り消された内容が通知で一部見えていることもある以上、「取り消されたものは無かったことにする」という前提では注文を管理できません。
LYPプレミアム会員なら7日以内の取消ができるため3、加工や出荷が済んだ後に元の注文文が消えることもありえます。
注文の変更や取消は送信取消ではなく、新しいメッセージで「変更」「取消」と書いて送ってもらう、という取り決めがここで必要になります。
| 送る人 | 使っている仕組み | 送信取消できる期間 |
|---|---|---|
| 取引先 | 個人のLINE(標準ユーザー) | 送信から1時間以内 |
| 取引先 | 個人のLINE(LYPプレミアム会員) | 送信から7日以内 |
| 受注側 | LINE公式アカウントの管理画面 | 送信から24時間以内 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 受注側の読み
- 前回と同じ内容で確定
- ロースを切り出し、出荷の準備へ
- 取引先の意図
- メッセージを見たという合図
- 数量は後で送るつもり
精肉の注文で取り違えが損失になる項目:部位・規格・量・加工・納品日
部位名・等級・重量区分で別の品物になる
スタンプを注文として扱わないと決めたら、次に要るのは「何が書いてあれば注文として成立と見なすか」の基準です。
精肉でそれを決めにくくしているのは、同じ部位名でも別の品物になりうる点です。
日本食肉格付協会の豚部分肉取引規格では、部分肉の名称は「かた」「ヒレ」「ロース」「ばら」「もも」の5種(かたを細分した場合は6種)で、さらに等級が「Ⅰ」「Ⅱ」、重量区分が「S」「M」「L」に分かれます6。
規格の上では、「ロース」とだけ書かれた注文は、等級と重量区分の組み合わせで6通りのどれにも当てはまりえます。
取引先が普段はⅠ等級のMを使っていても、文面にその指定がなければ、別の担当者が在庫にあるLを出してしまう余地が残ります。
ただし、どこまで規格で指定するかは、取引先ごとの取り決めで決まります。
規格まで毎回書いてもらう取引先もあれば、「いつものロース」で通じる関係もあるでしょう。
後者の場合でも、「いつもの」が等級・重量区分のどれを指すのかを受注側の商品名表に一度書き出しておけば、担当者が替わっても同じ品物を出せます。
なお、この規格は豚部分肉の全国統一の取引規格です。
牛や鶏、輸入品の呼び方や、小売向けの薄切り・角切りといったカット指定はこの規格では決まっていないため、自店の商品名表で呼び方をそろえておく必要があります。
加工指定・納品日・変更取消の確認項目
部位と規格の次に損失へ直結するのが、加工の指定です。
ブロックのまま出すはずの肉をスライスしてしまうと、元には戻せません。
厚み、切り方、筋引きの有無、包装の形といった指定は、取引先にとっては当たり前すぎて文面から抜けやすく、受注側が推測で埋めた部分が取り違えの原因になります。
数量は、単位の取り違えに注意が要ります。
「ロース〇」が〇kgなのか、〇本なのか、〇パックなのかは、取引先によって違います。
納品日も、「明日」「次回」といった相対的な書き方だと、夜遅くに送られた注文や週をまたぐ注文で一日ずれることがあります。
日付で書いてもらうだけで、この種のずれは避けられます。
最後が、変更と取消です。
前の節で見たとおり、送信取消は取消の手段として当てにできないため、変更・取消は「どの注文を、どう変えるか」が分かる書き方で送ってもらう必要があります。
以上を、確定前に確認する項目として整理すると、次の6つになります。
| 確認する項目 | 文面に書いてもらう内容 | 抜けたときに起きやすいこと |
|---|---|---|
| 部位名 | 商品名表にそろえた呼び方 | 別の部位の切り出し |
| 規格 | 等級・重量区分など取引先と決めた指定 | 同じ部位名の別の品物を出荷 |
| 数量 | kg・本・パックなどの単位を付けた数 | 過不足や単位の取り違え |
| 加工 | 厚み・切り方・包装 | 元に戻せない加工ミス |
| 納品日 | 曜日や「明日」ではなく日付 | 一日ずれた欠品や余剰 |
| 変更・取消 | 納品日と品目で元の注文を特定する書き方 | 古い内容のままの加工や出荷 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 部分肉の名称
- かた・ヒレ・ロース・ばら・もも
- かたを細分した場合は6種
- 等級
- ⅠとⅡ
- 重量区分
- S・M・L
- 「ロース」だけの注文
- 等級と重量区分の組み合わせで6通り
スタンプの誤認を防ぐ運用ルールの決め方:復唱確認・確定の合図・締め時間・記録
復唱と確定の合図
6つの項目が決まったら、それを使って「確定」までの手順を固定します。
ここで提案するのは、取引先が項目を書いて送り、受注側がその内容を文字で復唱し、取引先が決めておいた合図を返した時点で確定とする流れです。
復唱とは、受け取った内容を受注側の言葉で書き直して送り返すことで、聞き間違いや読み違いを相手に見つけてもらうための手順です。
やり取りは、たとえば次のような形になります。
<ul><li>取引先:〇月〇日納品 豚ロース(Ⅰ・M)〇kg ブロックのまま</li><li>受注側:〇月〇日納品分 豚ロース(Ⅰ・M)〇kg ブロックのままで承ります よろしければ「確定」とご返信ください</li><li>取引先:確定</li></ul>
合図をスタンプではなく「確定」という文字にしておくのには理由があります。
公式アカウントのチャットはルーム内でメッセージを検索でき、一致した件数と一覧が表示されます1。
文字の合図なら、後から「確定」で検索して、どの復唱に対して合図が返っているかを一覧でたどれます。
合図の言葉は取引先ごとに変えてもかまいませんが、受注側の担当者全員が同じ言葉を知っている状態にしておくことが前提です。
この流れで減るのは、スタンプや短文を見た担当者が「たぶん注文だろう」と判断して加工に回す場面です。
代わりに、復唱を送って合図を待つ一往復が増えます。
合図が返ってこない注文は確定していない、と全員が分かっていれば、取引先に電話で確かめるべき注文がどれかもはっきりします。
締め時間と変更・取消の書き方
復唱と合図には時間がかかるため、締め時間も同じ型に載せておきます。
締め時間とは、翌日の納品や当日の加工に間に合わせるために、合図まで済ませておく必要がある時刻のことです。
締めを「注文の送信」ではなく「合図の返信」の時刻で決めておくと、締め直前にスタンプだけが届いた場合の扱いに迷いません。
締めを過ぎても合図がない注文は、電話で確かめるか翌日分に回すかを、あらかじめ取引先と決めておきます。
変更と取消には、元の注文を指す言葉を必ず入れてもらいます。
たとえば「〇月〇日納品分 変更:ロース〇kg→〇kg」「〇月〇日納品分 取消」のように、納品日と品目で元の注文を特定できれば、受注側は同じ流れで復唱し、合図を受けて変更を確定できます。
送信取消で元の文を消すやり方は、期間が送り手ごとに違ううえ、通知で内容が見えていることもあるため、注文の変更手段には含めないと決めておくのが無難です。
締め時間の後の変更をどこまで受けるかは加工の進み具合で変わるので、取引先と一緒に線を引いておくと揉めにくくなります。
記録の置き場所と保存期間
確定した注文を後から確かめられるかどうかは、どこでやり取りしているかで変わります。
LINE公式アカウントのチャットは、無料版でメッセージが半年、チャットProオプションを付けると5年保存されます1。
一方、グループや複数人のトークでは、コンテンツが2週間、ファイルは1週間しか残りません1。
取引先の店長と仕入れ担当を同じグループに入れて注文を受けていると、3週間前の注文文をたどれない、ということになります。
後から確かめる必要がある注文は、1対1のトークで受けるのが基本です。
受注側に複数の担当者がいる場合は、管理画面の機能の使い方も決めておきます。
各チャットルームには担当者を設定でき、設定しなければ最初にチャットを送信したメンバーが担当者になります1。
朝の担当が最初に返信しただけでそのまま担当者扱いになると、午後の担当は「自分の取引先ではない」と見過ごすかもしれません。
取引先ごとに担当者を明示して設定しておけば、合図待ちの注文を誰が追うかがはっきりします。
タグは、無料版では1個まで、チャットProで最大30個付けられ、作成できるタグの種類は無料で5個、チャットProで300個です1。
無料版で付けられるのが1個だけなら、「合図待ち」のように、見落とすと困る状態を一つに絞って付けるのが現実的です。
注文の状態を細かく分けたい場合や、取引先の種類と注文の状態を同時に見たい場合は、無料枠では足りなくなります。
LINEの中だけで記録を完結させない方法もあります。
合図が返った注文を出荷表や台帳に転記してから、加工に回す運用です。
転記の手間は増えますが、半年を超えて遡りたい場合や、グループで受けてしまった注文を残したい場合の控えになります。
どの方法を選んだ場合も、ルールが効いているかは、運用を始めた後の取り違えの件数で確かめます。
件数が減らない項目があれば、その項目の書き方を見直す手掛かりになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 納品日と品目を書いて変更・取消を送る
- 受注側が文字で復唱する
- 取引先が合図を返す
- 変更を確定する
取引先に負担をかけずに新ルールを伝え、定着させる手順
案内文は1画面で読める形にする
ルールを決めても、取引先が知らなければ、これまでどおりスタンプが届きます。
取引先にとって新しいルールは、手間が一つ増える話です。
案内文で伝えるべきなのは、手間が増える理由と、相手に頼むことの範囲です。
案内はトークの1画面に収まる長さにまとめると、読んでもらいやすくなります。
入れる内容は次のとおりです。
<ul><li>取り違えを防ぐために、注文の受け方を変えること</li><li>注文に書いてほしい項目(部位名・規格・数量・加工・納品日)</li><li>受注側が内容を復唱するので、よければ決めた合図を文字で返してほしいこと</li><li>合図の締め時間と、過ぎた場合の扱い</li><li>変更・取消は送信取消ではなく、納品日と品目を書いて新しく送ってほしいこと</li></ul>
スタンプを禁止する書き方は避け、「スタンプだけの場合は、こちらから内容を確認させてください」と受注側の行動として書くと、相手を責める印象になりません。
文字を打つのが負担な取引先には、電話で受けた内容を受注側が復唱として送り、相手には合図だけ返してもらう形も選べます。
取引先ごとにやり方を変える余地を残しておくと、全員に同じ負担を求めずに済みます。
試行期間と確かめ方
案内を送ったら、すぐに全面切り替えにはせず、試行の期間を置きます。
最初は、復唱に合図が返ってきた注文だけを確定として扱い、スタンプだけの返信が来たら受注側から復唱を送り直します。
この間は、従来のやり方で届いた注文も受注側の手間で拾い上げることになりますが、取引先が新しい流れに慣れるための時間になります。
定着したかどうかは、感覚ではなく件数で見ます。
見るのは、スタンプだけで返ってきた件数と、内容を確かめるために電話をかけた件数の二つです。
どちらも取引先ごとに数えておくと、全体では減っていても特定の取引先だけ減らない、という偏りが見えます。
その取引先には、案内を送り直すより、相手の発注の仕方に合わせた受け方へ切り替えたほうが早い場合もあります。
試行の結果を見て、項目や合図の言葉を変えることもあります。
規格まで書いてもらうのが負担だと分かった取引先なら、商品名表の「いつもの」で受け、受注側の復唱の中で規格を明記する、といった調整ができます。
取引先が書く量を減らし、そのぶん受注側の復唱で補う形です。
口頭・チャットの発注に関わる取適法の条件
電磁的方法による明示と書面交付の義務
ここまでは、取り違えを防ぐための取引先との取り決めの話でした。
取引によっては、これに法律上の条件が加わります。
精肉の加工を委託する、あるいは委託されるといった取引が、取適法(正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、旧下請法)の対象になる場合です。
公正取引委員会の運用基準では、電磁的方法による明示の例として、電子メールやEDIと並んで、ショートメッセージサービスやSNSのメッセージ機能等が挙げられています5。
電磁的方法で明示する場合に、中小受託事業者の事前の同意は法律上求められていません5。
ただし、中小受託事業者から書面の交付を求められたときは、遅滞なく交付する義務があります5。
この条件は、LINEで済ませられる範囲と、書面を出す場面を分けて考える手掛かりになります。
対象となる取引でも、LINEのトークで発注内容を伝えること自体は、認められた手段の一つです。
一方で、相手が書面を求めた場合はLINEのやり取りだけでは済まず、遅滞なく書面を出す必要があります。
運用ルールに「書面を求められたときの出し方」を一行入れ、出す書面のひな形を用意しておくと、求められてから慌てずに済みます。
もう一つ注意したいのは、LINEが明示の手段になりうることと、スタンプで取引条件が伝わることは別だという点です。
運用基準が例に挙げているのはメッセージ機能という手段であり、スタンプ一つで発注内容を示せるという話ではありません。
部位・数量・納品日といった中身を文面として残る形で伝えることは、前の節までの運用ルールと同じ方向を向いています。
自店の取引が対象かの見分け方
自店の取引が取適法の対象になるかどうかは、取引の類型と、発注する側・受ける側の資本金などの条件で決まります。
精肉の加工の委託がどの類型に当たるかも含めて個々の取引で判断が分かれるため、精肉の取引だから対象、あるいは対象外、と一律には決まりません。
立場によって気にする点も変わります。
受注側が取引先から加工を委託されていて、対象の取引で中小受託事業者に当たるなら、書面の交付を求めることができる立場です。
反対に、受注側の卸が別の加工業者へ加工を出していて、その取引が対象になるなら、明示する側として、書面を求められたら遅滞なく交付する義務を負います5。
判断がつかない取引は、公正取引委員会が公表している取適法の資料で類型と条件を確かめ、それでも迷う場合は専門家に相談するのが確実です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 加工を委託されている受注側
- 中小受託事業者に当たる場合
- 書面の交付を求めることができる
- 加工を別の業者へ出す卸
- 明示する側
- 書面を求められたら遅滞なく交付する
ルールで足りないときの判断:LINE受発注のまま続けるか、仕組みを移すか
判断する4つの条件
復唱と合図のルールで取り違えが減っても、それだけでは追いつかない状況があります。
LINEのまま運用を強化するか、別の仕組みへ移すかを考えるときは、次の4つの条件を見ます。
<ul><li>取引先の数と1日の注文件数</li><li>受注側の担当者の人数と入れ替わり</li><li>取り違えたときの損失の大きさ</li><li>注文の記録を遡る必要がある期間</li></ul>
取引先と注文が増えると、1対1のトークがその数だけ並び、合図待ちの注文がどのトークに残っているかを探す手間が増えます。
ルーム内検索は該当するチャットルームの中を探す機能なので1、全取引先の合図待ちを一度に見渡す使い方には向きません。
タグで印を付けるにしても、無料版で付けられるのは1個までです1。
担当者が多い、または入れ替わりがある場合は、引き継ぎの負担が問題になります。
担当者の設定で取引先ごとの割り当ては決められますが1、新しい担当者が合図の言葉や取引先ごとの例外を覚えるまでの間は、取り違えが起きやすくなります。
取引先ごとの例外が増え、トークの外に一覧でまとめないと回らなくなってきたら、仕組みを見直す時期に近づいています。
損失の大きさは、加工品の割合で変わります。
取引先ごとの指定で切った肉は戻せないため、加工指定の多い注文ほど一度の取り違えが重くなります。
そうした注文で取り違えが続くなら、確認の手順を足し続けるより、項目を入れ忘れられない受け方へ移すほうが効く場合があります。
記録の期間は、公式アカウントのチャットなら無料版で半年が区切りです1。
取引先との精算や確認で半年以上前の注文を見返すことがあるなら、チャットProで保存を延ばすか、台帳への転記を続けるか、別の仕組みに移すかを選ぶことになります。
LINE公式アカウントとLINE WORKSの保存・料金条件
LINEのまま続ける場合と、業務向けのLINE WORKSへ移す場合とで、条件の違いを見ておきます。
LINE公式アカウントの月額固定費は、2026年時点でコミュニケーションプランが0円、ライトプランが5,000円、スタンダードプランが15,000円(税別)です2。
プランごとの無料メッセージは200通・5,000通・30,000通ですが、1対1のチャットでの応答と自動応答メッセージは、この通数に数えられません2。
取引先と1対1でやり取りする受注の返信だけなら、通数を理由にプランを上げる必要は生じにくい、ということです。
保存期間を延ばすチャットProオプションは月額3,000円で2、保存が5年になり、付けられるタグも最大30個に増えます1。
半年を超えて遡る必要と、注文の状態を複数のタグで分けたい必要の両方があるなら、まずこのオプションが選択肢に入ります。
LINE WORKSは、1ユーザーごとの料金です。
フリーは0円で30ユーザー・ストレージ5GBまで、スタンダードは月額450円、アドバンストは800円(年額契約・1ユーザー・税抜)で、月払いではそれぞれ540円と960円になります4。
記録の保持は、フリーでは監査ログ等が2週間でダウンロード不可、スタンダードとアドバンストは6か月でダウンロード可能で、アーカイブのオプションを付けると最長10年です4。
二つは提供元も製品も別で、料金の単位も違います。
公式アカウントはアカウント単位の固定費、LINE WORKSは利用する人数に応じた料金なので、受注側の担当者が増えるほどLINE WORKSの費用は増えます。
どちらが優れているかではなく、保存したい期間、担当者の人数、取引先が今のLINEからどうやり取りできるかを、提供元の案内で確かめて比べることになります。
どちらに移しても、スタンプの意味を決めるのが取り決めだという点は変わらないため、復唱と合図のルールはそのまま持ち込みます。
専用の受発注の仕組みを検討する場合も、6つの項目が入力で漏れなく埋まるか、確定の記録がどこにどれだけの期間残るかという同じ物差しで見ると、比べやすくなります。
| 比べる点 | LINE公式アカウント | LINE WORKS |
|---|---|---|
| 料金の単位 | アカウントごとの月額固定費 | 1ユーザーごとの月額 |
| 無料で使える範囲 | コミュニケーションプラン(固定費0円) | フリー(30ユーザー・ストレージ5GBまで) |
| 標準の記録の残り方 | 無料版で半年(グループ・複数人のトークは2週間) | フリー2週間・有料プラン6か月(監査ログ等) |
| 保存を延ばす方法 | チャットPro(月額3000円)で5年 | アーカイブのオプションで最長10年 |
| 受注の返信と費用 | 1対1チャットの応答は配信通数に数えない | 担当者の人数に応じて費用が増える |
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先の数と注文件数
- 合図待ちを探す手間が増える
- 担当者の人数と入れ替わり
- 合図の言葉や例外を覚えるまで取り違えやすい
- 取り違えの損失
- 加工指定の多い注文ほど重い
- 記録を遡る期間
- 無料版は半年が区切り
誤認が起きた後の対応:事実の確認・責任の線引き・再発防止
記録の確認手順
ルールを整えても、取り違えがなくなるとは限りません。
起きた後に最初にすることは、責任の話より先に、やり取りの記録を確保することです。
グループや複数人のトークで受けた注文なら、コンテンツは2週間、ファイルは1週間で見られなくなるため1、該当部分の画面を早めに保存しておきます。
次に、いつ、誰が、何を送ったかを時刻順に並べます。
取引先の注文文、受注側の復唱、合図、変更や取消のメッセージ、スタンプのそれぞれについて、送った人と時刻を書き出すと、どこで読み違えたのかが見えてきます。
途中に送信取消があった場合は、取り消された時刻と、受注側の誰かが取消前の通知で内容を見ていないかも確かめます。
個人のLINEでは、取消前のプッシュ通知などで相手が内容の一部を認識している可能性があるとされています3。
通知で見た内容はトークに残らないため、見た担当者の記憶と時刻をその場でメモしておくことが大切です。
最後に、並べた記録を取り決めと突き合わせます。
復唱を送ったか、合図は返っていたか、合図の後に変更が来ていなかったか、の順に見ていくと、ルールのどの段階で外れたのかが分かります。
取り決めに沿った線引きと再発防止
突き合わせの結果は、取り決めに沿っていたかどうかで整理できます。
取引先が合図を返した内容と違う品物を出したのであれば、原因は受注側の作業の側にあります。
反対に、合図の後に取引先が送信取消だけで内容を変えようとしていたなら、変更の書き方の取り決めが守られていなかったことになります。
受注側が合図を待たず、スタンプだけで加工に回していた場合は、受注側が自分たちのルールから外れていたことになります。
ただし、これは取り決めに照らした整理であって、損失を誰が負担するかといった法的な責任を決めるものではありません。
責任の分担は、取引先との契約や取引条件、個別の事情で変わります。
損失が大きい、取引先と見解が分かれるといった場合は、時刻順に並べた記録を持って専門家に相談してください。
再発防止は、取り違えた項目を注文の型に足す形で進めます。
厚みの指定が抜けて取り違えたなら加工の欄に「厚み」を必ず書く項目として加え、「明日」と書かれて納品日がずれたなら日付で書いてもらうよう案内し直す、といった具合です。
ルールを一から作り直すより、起きた取り違えを一つずつ型に反映していくほうが、取引先にとっても変更点が分かりやすくなります。
型を変えたら取引先に変更点だけを短く伝え、試行のときと同じように、スタンプだけの返信と確認の電話の件数で効き目を確かめます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 合図と違う品物を出した
- 原因は受注側の作業の側
- 合図の後に送信取消だけで変更しようとした
- 変更の書き方の取り決めが守られていない
- スタンプだけで加工に回した
- 受注側が自分たちのルールから外れていた
取引先ごとに発注の仕方が違い、どの取引先にどこまで項目を求めるか、記録をLINEの中に置くか台帳へ移すかを自店だけでは決めきれないとき
今の受注のやり取りのどの段階で推測や転記が入っているかを洗い出し、復唱と合図のルールをどの取引先から始めるかを一緒に確かめられます無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| スタンプの扱い | 単独では注文にしない。挨拶や受け取りの合図にとどめる |
| 確定の条件 | 6項目の復唱に、決めた合図が文字で返った時点 |
| 変更・取消 | 送信取消ではなく、納品日と品目を書いた新しいメッセージで |
| 記録の置き場所 | 1対1のトークで受ける。半年を超えて遡るなら延長か転記 |
| 取適法 | 対象取引ならLINEで明示できる。書面を求められたら遅滞なく交付 |
| 移行の目安 | 取引先数と注文件数、担当者、損失の大きさ、記録を遡る期間 |
ルールを試した後、LINEのまま続けるか別の仕組みへ移すかを、取引先数や担当者の人数、記録を遡る期間に照らして判断したいとき 移す場合に注文の項目と確定の記録がどこにどれだけ残るか、今の運用から何を持ち込むかを整理できます
よくある質問
取引先がスタンプだけで返してきたときは、どう返せばよいですか。
確定扱いにはせず、受注側から復唱を送り直して合図を求めます。
前回と同じ内容の確認に対するスタンプでも、品目・数量・納品日を書き出した復唱を送り、「確定」などの決めた合図を文字で返してもらいます。
締め時間が迫っていて合図を待てない場合は電話で確かめ、確かめた内容をトークに書いて残しておくと、後から追えます。
取引先が送信取消をした場合、元の注文は有効ですか。
送信取消された内容は、確定した注文として扱わないのが安全です。
取引先が個人のLINEを使っている場合、標準ユーザーは1時間以内、LYPプレミアム会員は7日以内に取消ができ、取消前の通知で内容の一部が見えていることもあります3。
取消が注文の撤回なのか書き直しのつもりなのかは画面からは分からないため、取引先に直接確かめ、変更・取消は新しいメッセージで送ってもらうよう取り決めておきます。
すでに加工や出荷に進んでいた場合の扱いは、取引条件や個別の事情で変わります。
LINE公式アカウントの無料プランでも受注管理はできますか。
1対1のチャットでの応答は配信メッセージの通数に数えられないため、無料のプランでも受注のやり取りで通数を使い切る心配は小さくなります2。
チャットでは、無料版でメッセージの保存が半年、タグが1個まで、担当者の設定とルーム内検索が使えます1。
検索は取引先ごとのルームの中が対象なので、取引先をまたいで注文を一覧にしたい場合は、確定した注文を出荷表や台帳に転記しておくと扱いやすくなります。
注文の記録はどれくらいの期間残しておくべきですか。
法令上どれだけ保存すべきかは、取引の内容や帳簿の扱いで変わるため、顧問の税理士などに確かめてください。
LINEの側の条件としては、公式アカウントのチャットは無料版で半年、チャットProで5年保存され、グループや複数人のトークはコンテンツが2週間で見られなくなります1。
必要な期間がLINEの保存期間より長い場合は、チャットProで延ばすか、確定した注文を台帳へ転記して残すことになります。
取適法の対象かどうかは、どこで確認すればよいですか。
対象かどうかは、取引の類型と、発注する側と受ける側の資本金などの条件で決まります。
公正取引委員会が取適法の資料を公表しているので、自店の取引の類型と条件をそこで確かめ、判断が分かれる取引は専門家に相談してください。
対象となる取引では、SNSのメッセージ機能でも取引条件を明示でき、事前の同意は求められていませんが、書面の交付を求められたら遅滞なく交付する義務があります5。
- 1 出典:LINEヤフー株式会社「LINE公式アカウント マニュアル(チャット)」(2026年)
- 2 出典:LINEヤフー株式会社「LINE公式アカウント 料金プラン」(2026年)
- 3 出典:LINEヤフー株式会社「LINEヘルプセンター:メッセージの取り消し(送信取消)と削除」(2026年)
- 4 出典:ワークスモバイルジャパン株式会社「LINE WORKS 利用料金ページ」(2026年)
- 5 出典:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(2026年)
- 6 出典:公益社団法人日本食肉格付協会「豚部分肉取引規格」(2026年)
画像の出典元
- Busy ethnic butcher in white clothes speaking on phone and looking away near stand with meat in local market in soft light/Photo by Tato Villanova on Pexels