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発注アプリを取引先に断られたら|医療機関の担当者が取るべき対応と併用の考え方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 「アプリでは受けられない」は、取引先の受注手段、品目の運用、自院の説明不足に分けて聞き取ると、取るべき対応が決まる
  • 預託・貸出・立会いを伴う発注や緊急の発注は従来の手段に残し、定期補充の品目からアプリに移す
  • 発注手段が分かれても、発注・納品確認・請求照合の記録は1か所にまとめる
  • 汎用・業界のEDIとも医療機関の直接接続が標準とは言えないため、取引先ごとの受け方に寄せて提案する
  • 取引先の見直しは最後の選択肢にし、1取引先・1品目の試行で流れが回ることを確かめてから広げる

Medical professional in scrubs reviewing documents at an office desk.
▽ 写真の出典元

発注アプリを取引先に断られたら、最初に確かめること:何を、誰が、どの手段で受けているか

医療機関で発注アプリを入れようとしたら、主要な取引先から「アプリでは受けられない、FAXのままにしてほしい」と言われた。
そうなると、導入を諦めるか、相手を説得し続けるかの二択に見えてしまいます。
ここで見直せるのは、全取引先を一度に切り替えるという前提のほうです。
断られた理由を、取引先の受注手段、品目の運用、自院の説明不足に分けて確かめます。
そのうえで、アプリに乗せる品目と取引先を絞って併用から始めるのが、現実的な出発点です。
緊急や貸出を伴う発注は従来の手段に残し、記録だけは1か所にまとめます。

断られた理由を3つに分ける

「アプリでは受けられません」という返事は、同じ言葉でも取引先ごとに中身が違います。
受け取る仕組みが無いのか、注文の中身がアプリに収まらないのか、何を頼まれているのかが伝わっていないのか。
どれに当たるかで、自院が取るべき対応は変わります。
理由を分けないまま説得を重ねると、相手が困っている点とは別の話をし続けることになりがちです。

一つ目は、取引先の受注手段が別にある場合です。
取引先は自院だけでなく、多くの発注元から注文を受ける側にいます。
中小企業庁のミラサポplusは、多くの中小企業が電話やFAXで受発注に対応しており、複数の企業から受注する際に発注元ごとの画面が増える「多画面問題」が負担になっていると説明しています1。
これは中小企業の受発注一般についての説明で、医療機関と卸の取引を調べたものではありません。
それでも、取引先が小規模で多くの医療機関と取引している場合、自院のアプリは相手にとって「確認すべき画面がもう一つ増える」ことを意味します。

医療機器の分野にも業界標準のEDI(企業間で受発注データを決まった形式でやり取りする仕組み)があります。
ただし医療材料統合流通研究会の説明では、メーカーとディーラーの間の受発注情報の交換が中心で、医療機関との接続は今後拡充していく段階とされています2。
そのため、取引先がメーカーとは電子的にやり取りしていても、医療機関からの注文は別の経路で受けている、という状況は十分に考えられます。
この場合の断りは、アプリそのものへの反対というより、受け口を増やしたくないという意味に近くなります。

二つ目は、品目の運用がアプリの注文で表せない場合です。
手術に合わせた貸出や立会いを伴う機器は、品名と数量だけでは注文として成り立ちません。
この点は次の節で詳しく扱います。

三つ目は、自院の説明や条件の示し方が足りない場合です。
どの品目を、いつから、アプリで送るのか。
FAXは止めるのか、しばらく並行するのか。
取引先側で誰が画面を見て、費用はかかるのか。
こうした点が伝わっていなければ、取引先は最も負担の大きい形を想定して断るしかありません。
この場合は、条件を示し直すだけで答えが変わる余地があります。

取引先ごとの聞き取り項目

理由を分けるには、「なぜ受けられないのか」を一度に尋ねるより、いまの受け方を順に聞くほうが答えを得やすくなります。
相手にとっても、断った理由を問い詰められるより、現状を説明するほうが答えやすいからです。
以下は、聞き取りの項目を編集部が整理した案です。

<ul><li>医療機関からの注文を、現在どの手段で受けているか(電話、FAX、メール、自社の受注システム、業界のEDIなど)</li><li>注文を受け、処理しているのは誰か(営業担当、受注の事務、物流の担当)</li><li>他の医療機関からも、専用の画面での発注を求められているか</li><li>自院からの注文のうち、預託・貸出・立会いが絡むのはどの品目か</li><li>アプリで受ける場合に、どの作業が増えると考えているか(画面の確認、受注データの転記、通知の見落としなど)</li><li>条件が変われば受けられるか(品目を絞る、データの形式を合わせる、FAXと並行する期間を設ける)</li></ul>

「誰が受けているか」を聞くのは、断った人と、実際に負担を負う人が違うことがあるためです。
たとえば営業担当がその場で断った場合でも、受注事務の担当者にとっては、自社のシステムに取り込める形式のデータなら手入力より楽になる、ということもありえます。
逆に、営業担当は前向きでも、受注事務の側で発注元ごとの画面を見て回る手間が増えるなら、現場では受け入れにくくなります。
窓口で受けた返事だけでは、どちらの事情なのかが見えません。

答えが集まると、取引先ごとに行き先が見えてきます。
受け方が別にあるという答えなら、相手の手段に寄せる提案を考えます。
預託や貸出が絡むという答えなら、その品目はアプリの対象から外す前提で考えます。
条件次第で受けられるという答えなら、説明が足りなかった可能性があり、示し方を変えて再度相談できます。
一つの取引先で理由が重なることもあるため、取引先単位ではなく、取引先と品目の組み合わせで答えを記録しておくと、後の併用設計にそのまま使えます。

理由 取引先側で起きていること 確かめること
受注手段が別にある 発注元ごとに確認する画面が増える いまの受け方と受注を担う人
品目の運用が注文で表せない 貸出・立会い・預託などを伴う その品目の発注に何が含まれるか
自院の説明不足 最も負担の大きい形を想定している 品目・開始時期・FAX併用の有無が伝わっているか
「アプリでは受けられない」の3つの理由と、聞き取りで確かめること(模式図)
断られた理由を、受注手段が別にある、品目の運用が注文で表せない、自院の説明不足の3つに分け、確かめる点を示した図断られた理由を、受注手段が別にある、品目の運用が注文で表せない、自院の説明不足の3つに分け、確かめる点を示した図受注手段が別にあるいまの受け方受注を担う人品目の運用が注文で表せない預託・貸出・立会いが絡む品目発注に含まれること自院の説明不足品目と開始時期FAX併用の有無

▼ 図の内容を文字で読む
  • 受注手段が別にある
    • いまの受け方
    • 受注を担う人
  • 品目の運用が注文で表せない
    • 預託・貸出・立会いが絡む品目
    • 発注に含まれること
  • 自院の説明不足
    • 品目と開始時期
    • FAX併用の有無

医療機器・材料の発注は運用が多様で、アプリで置き換えにくい部分がある

預託・貸出・立会いを伴う品目

医療機器や医療材料の取引には、物品を注文して届けてもらう以外の仕事が含まれています。
日本医療機器販売業協会は、医療機器販売業者が手術などに合わせた機器の提案、貸し出し、手技中の立会い、術後の引き上げといった適正使用支援を行っていると説明しています3。
医療材料統合流通研究会の説明でも、医療機器業界標準EDIは買取の受発注に加え、預託形式や手術ごとに納品される短期貸出のモデルにも対応しているとされています2。
買い取りの注文、預託(販売業者が所有する在庫を院内に置き、使った分を購入する形)、手術ごとの貸出は、業界の仕組みの上でも別の取引として扱われているということです。

たとえば、ある手術のために機器を貸出で取り寄せる場合を考えてみます。
取引先に伝えるべきことは、品名と数量に加えて、手術の予定日、立会いが必要かどうか、使用後にいつ引き上げるか、といった段取りです。
手術の予定が変われば、取引先と日程を調整し直す必要も出てきます。
注文画面が「品名・規格・数量・納期」を入力して送る形で完結しているなら、こうしたやり取りは画面の外で行うことになり、アプリで送った注文だけでは取引の全体が記録に残りません。

預託品も同じように考えます。
院内に置かれた在庫から使った分を後から伝える形なら、自院が送るのは「これから届けてほしい注文」ではなく「使ったことの報告」に近いものになります。
アプリが補充の注文を前提に作られている場合、預託品の使用報告をどう載せるかは、取引先と自院の双方で確かめないと決められません。

なお、業界標準EDIがこうした取引の形に対応しているからといって、医療機関からの発注まで同じ形で電子化できるとは限りません。
その対応はメーカーとディーラーの間が中心で、医療機関との接続は拡充の途上とされています2。
自院から取引先へ送る段階で同じ表し方が使えるかどうかは、取引先ごとに確かめることになります。

緊急対応が要る品目

もう一つ分けて考えたいのが、急ぎの発注です。
手術や処置の直前に足りない材料が見つかった場合、必要なのは注文を送ることそのものより、取引先が確かに受け取り、いつ届くかをその場で返してくれることです。
アプリで送った注文が取引先の画面に表示されても、その画面を誰がいつ見るかが決まっていなければ、送った側は届いたかどうかを確かめられません。
確認の電話をかけ直すなら、最初から電話で頼んだほうが早かった、ということになります。

このため、緊急の発注は、相手が受けたかどうかをその場で確かめられる電話などの手段に残すほうが、少なくとも併用の初期には混乱が少ないと編集部は考えます。
緊急対応をアプリで扱えないという意味ではありません。
取引先側で通知を受け取る担当と時間帯が決まり、受け付けたという返事が戻る運用が整ってから、改めて対象に加えるかを検討する、という順でも遅くはありません。

ここまでをまとめると、医療機器・材料の発注は、定期的に補充する消耗品の注文と、預託・貸出や緊急に結びつく発注とで、アプリとの相性が分かれます。
この区分は医療機器・医療材料の流通についての整理で、医療用医薬品や一般の事務用消耗品にはそのまま当てはまりません。

発注の種類 注文に含まれること アプリとの相性
定期補充の消耗品 品名・規格・数量・納期 乗せやすい
預託品 院内の在庫から使った分の報告 表し方を取引先と確かめる
手術ごとの貸出 手術日・立会いの要否・引き上げの段取り 従来の手段に残す
緊急の発注 受け取りと納期のその場での確認 従来の手段に残す
医療機器・材料の発注の種類と、アプリとの相性(模式図)
定期補充の消耗品、預託品、手術ごとの貸出、緊急の発注の4種類について、注文に含まれることとアプリとの相性を示した図定期補充の消耗品、預託品、手術ごとの貸出、緊急の発注の4種類について、注文に含まれることとアプリとの相性を示した図定期補充の消耗品品名・規格・数量・納期アプリに乗せやすい預託品院内の在庫から使った分の報告表し方を取引先と確かめる手術ごとの貸出手術日・立会いの要否・引き上げの段取り従来の手段に残す緊急の発注受け取りと納期のその場での確認従来の手段に残す

▼ 図の内容を文字で読む
  • 定期補充の消耗品
    • 品名・規格・数量・納期
    • アプリに乗せやすい
  • 預託品
    • 院内の在庫から使った分の報告
    • 表し方を取引先と確かめる
  • 手術ごとの貸出
    • 手術日・立会いの要否・引き上げの段取り
    • 従来の手段に残す
  • 緊急の発注
    • 受け取りと納期のその場での確認
    • 従来の手段に残す

全面切替が難しいときの併用設計:アプリに乗せる品目・取引先と、従来手段に残すもの

アプリ対象にする品目の選び方

全面切替が難しいと分かったら、次に考えるのは、アプリに何を乗せ、何を従来の手段に残すかです。
ここで示す分け方は編集部の提案で、効果を測ったものでも業界の慣行でもありません。
自院の品目構成と取引先の受注手段によって結論は変わります。

アプリの対象として考えやすいのは、次の条件がそろう組み合わせです。

<ul><li>同じ品目を定期的に補充している</li><li>注文の内容が品名・規格・数量・納期で表せる</li><li>取引先が既に電子的な受注手段を持っている、または条件次第で受けられると答えている</li></ul>

反対に、預託・貸出・立会いを伴うものや、緊急で発注するものは、従来の電話やFAXに残します。
取引先が電話とFAXでしか受けず、条件を変えても受けられないと答えた場合は、補充品であってもその取引先の分は従来の手段のままです。

判断の単位は、取引先ではなく「取引先と品目の組み合わせ」です。
たとえば同じ取引先から、病棟で使う衛生材料を定期補充し、手術用の機器を貸出で取り寄せているとします。
取引先がアプリでの受注に応じるなら、衛生材料の補充だけをアプリに移し、貸出の手配は担当者同士の電話のまま残します。
取引先単位で「アプリ対応か否か」を決めると、この取引先は全部アプリか全部FAXかのどちらかになり、移せるものまで移せなくなります。

併用時に記録を1か所にまとめる

併用で困りやすいのは、発注の手段が分かれることそのものより、記録が分かれることです。
アプリで送った注文はアプリの履歴に、FAXの注文は送信控えに、電話の注文は担当者のメモに残る状態だと、月末に請求書の明細を確かめるとき、一行ごとに探す場所が変わります。
電話で頼んだ分が誰のメモにも残っていなければ、請求に載っている品目が本当に自院の注文なのかを確かめる手がかりもありません。

そこで、発注の手段は複数のままでも、発注、納品確認、請求照合の記録を1か所に残すことを提案します。
たとえば、電話やFAXで発注した分も、発注した担当者がその日のうちにアプリの発注履歴か院内の発注台帳に登録します。
取引先から受注番号や納品予定の連絡があれば、その記録に書き足します。
アプリに手入力で発注を登録する欄があるかどうかは製品によって違うため、無ければ台帳の側を照合の基準にします。

こうすると、納品書が届いたときに照合する相手は一つの記録になり、請求書の明細もその記録と突き合わせれば済みます。
減るのは、FAXの控えと電話メモとアプリの履歴を行き来して探す手間です。
一方で、電話で発注した分を登録し忘れれば記録から漏れるため、登録漏れがないかを照合の時点で確かめる作業は残ります。
記録の場所を一つにしても転記の手間が消えるわけではなく、転記する先が一つに決まる、という変化です。

発注手段が分かれても、記録は1か所に集める
アプリ・FAX・電話で発注した分を1か所の記録に登録し、納品書と請求書の明細を照合する流れの図1発注アプリ・FAX・電話21か所の記録に登録し、受注番号を書き足す3納品書と照合4請求書の明細と照合

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 発注(アプリ・FAX・電話)
  2. 1か所の記録に登録し、受注番号を書き足す
  3. 納品書と照合
  4. 請求書の明細と照合

取引先に何を提案するか:負担を下げる条件と、取引条件の確認事項

既存のEDI規格やプロバイダーに合わせる

併用の範囲が決まったら、アプリで受けてもらう取引先に何を提案するかを考えます。
聞き取りの節で見たとおり、取引先にとっての負担は、発注元ごとに確認する画面が増えることにある場合があります。
そうであれば、自院専用の画面を見てもらうより、取引先が既に使っている受け方に自院の側を寄せるほうが、受け入れてもらいやすくなります。

選択肢の一つが、既存のEDI規格や、その規格に対応したサービスに合わせることです。
ミラサポplusは、中小企業共通EDIについて、受注側が対応するプロバイダー(規格に沿った受発注の仕組みを提供する事業者)と契約するだけで導入でき、大きな費用はかからないと説明しています1。
また、業務アプリケーションに最低限求められる項目として13項目が定められ、注文書番号や注文書発行日などが含まれるとしています1。

ただし、これは中小企業の受発注一般を対象とした説明です。
医療機関と卸の取引で中小企業共通EDIが使われているか、その場合に取引先の費用が実際に小さく済むかは確かめられていません。
医療機器には別に業界標準EDIがありますが、メーカーとディーラーの間が中心で、医療機関との接続は拡充の途上です2。
汎用の規格も業界の規格も、医療機関が直接つながる形が標準になっているとは言えないため、「この規格に合わせれば取引先の負担はこれだけ」と一律に示すことはできません。
提案の出発点は、聞き取りで分かった取引先の受注手段に、自院から送る注文をどこまで合わせられるかを確かめることです。

規格を使わない場合でも、負担を下げる条件は示せます。
アプリで送る品目を補充品に絞ること、一定の期間はFAXでも同じ注文を受け付けること、取引先が自社のシステムに取り込みやすい形でデータを渡せるかを確かめることなどです。
13項目は中小企業共通EDIの仕様の話ですが、注文書番号や発行日のように「どの注文か」を双方で特定する項目を最初にそろえておく、という考え方は、取引先とデータの中身を話し合うときの目安になります。

合意しておく4項目

取引先が応じてくれる場合も、受け方だけ決めて始めると、運用の細部で食い違いが起きます。
アプリでの発注を始める前に、少なくとも次の4項目は取引先と合意しておくことを勧めます。

判断が分かれやすいのは、緊急時の連絡手段と突合方法です。
緊急の発注を電話に残すとしても、電話で頼んだ分を後からアプリにも入れるのかどうかを決めておかないと、取引先側で同じ注文を二重に受ける恐れがあります。
突合方法では、自院の発注番号を納品書に載せてもらうのか、取引先の受注番号を自院の記録に書き足すのか、どちらの番号で照合するのかを決めます。
番号が一つに決まっていれば、請求の照合で迷う場面が減ります。

発注締切は、FAXの運用では口頭の取り決めのままになっていることがあります。
アプリでは送信時刻が記録に残るため、どの時刻までを当日扱いにするかを改めて言葉にしておくと、締切をめぐる行き違いを避けられます。
記録の保管は、取引先と自院のどちらが、どの記録を、どの形で残すかの確認です。
アプリの履歴だけに頼る場合は、契約を見直したときに履歴を取り出せるかも合わせて確かめておきます。

医療用医薬品の取引では事情が加わります。
厚生労働省が2018年に公表した流通改善ガイドラインは、製薬企業、医薬品卸と並んで、医療機関や保険薬局も宛先として通知されています4。
このガイドラインが発注手段の選択をどう扱っているかは、紹介ページからは確かめられません。
医薬品卸と発注方法を話し合う場合は、ガイドライン本文の該当する記述を院内の薬剤部門などと確認したうえで進めるのが安全です。

合意する項目 決めておくこと 決めないと起きること
発注締切 当日扱いにする基準の時刻 締切をめぐる行き違い
緊急時の連絡手段 電話で頼んだ分を記録にも入れるか 二重の発注
納品書と請求の突合方法 照合に使う番号 請求の照合で探す手間
記録の保管 誰がどの記録をどの形で残すか 見直しのときに履歴を取り出せない
アプリでの発注を始める前に取引先と合意しておく4項目(模式図)
発注締切、緊急時の連絡手段、納品書と請求の突合方法、記録の保管の4項目について、決めておく内容を示した図発注締切、緊急時の連絡手段、納品書と請求の突合方法、記録の保管の4項目について、決めておく内容を示した図発注締切当日扱いにする基準の時刻緊急時の連絡手段電話で頼んだ分を記録にも入れるか納品書と請求の突合方法照合に使う番号記録の保管誰がどの記録をどの形で残すか

▼ 図の内容を文字で読む
  • 発注締切
    • 当日扱いにする基準の時刻
  • 緊急時の連絡手段
    • 電話で頼んだ分を記録にも入れるか
  • 納品書と請求の突合方法
    • 照合に使う番号
  • 記録の保管
    • 誰がどの記録をどの形で残すか

取引先の見直しを考える基準と段階的な進め方

見直しの判断基準

併用を試しても、ある取引先との間で転記や照合の負担が残り続けることはありえます。
そのとき取引先を替えることも選択肢に入りますが、見直しは最後の選択肢にしておくことを勧めます。
ここで挙げる基準は資料に基づくものではなく、編集部が判断の手順として整理したものです。

<ul><li>その取引先が、自院の必須品目を代わりのない形で供給しているか</li><li>緊急時の対応や、手術の貸出・立会いをどう担っているか</li><li>受注手段が電子化できないことで、自院の側にどれだけの転記・照合の手間が生じているか</li></ul>

最初の二つは、取引先を替えたときに失うものを測る基準です。
医療機器販売業者は物品を届けるだけでなく、貸出や手技中の立会い、術後の引き上げまで担っています3。
発注手段の都合だけで取引先を替えると、こうした支援の担い手を探し直すことになります。
三つ目は、替えないことで払い続ける負担の大きさです。
併用の段階で記録を1か所にまとめていれば、どの取引先の分にどれだけの転記や照合がかかっているかが見えやすくなり、この基準を感覚ではなく記録で比べられます。

見直しを考えてよいのは、三つ目の負担が大きく、かつ最初の二つで失うものが小さい場合です。
必須品目を代わりなく供給している取引先や、手術の立会いを担っている取引先であれば、発注手段は従来のまま残し、記録の側で負担を吸収するほうが現実的です。
見直す場合も一度に切り替えず、品目ごとに代わりの供給先で試してから移すほうが、診療への影響を抑えやすくなります。

1取引先・1品目から試す

どの対応を選ぶ場合でも、始め方は小さくするのが無難です。
聞き取りでアプリに前向きだった取引先を一つ選び、定期補充の品目を一つだけアプリに移して試します。
準備の段階で、取引先との4項目の合意を済ませておきます。
この進め方も編集部の提案で、移行に要する期間の目安を示せる資料はありません。

試行で確かめたいのは、アプリで注文が送れるかどうかより、その後の流れが回るかどうかです。
取引先がアプリの注文を見落とさずに受けているか、納品書と自院の記録を照合できるか、締切や緊急時の取り決めが実際に守れているか。
この三つが回っていれば、同じ取引先の別の補充品へ広げ、次に別の取引先へ広げます。
回らない点があれば、広げる前にその点だけを取引先と話し合って直します。

試行の途中で問題が出たときに、FAXへ戻せる状態を保っておくことも大切です。
試行の間はFAXでも同じ注文を受け付けてもらう約束にしておけば、取引先は失敗を心配せずに試せますし、自院も発注が止まる危険を避けられます。
一つの取引先で流れが回った形ができれば、次の取引先には、どの品目をどの運用で移したのかを具体的に示して提案できます。
最初に断られた取引先へもう一度相談するときにも、この具体的な形が説明の材料になります。

1取引先・1品目から広げる段階的な進め方(編集部の提案)
準備、試行、確認、拡大の4段階で、1品目の試行と確認を経て範囲を広げる進め方の図準備、試行、確認、拡大の4段階で、1品目の試行と確認を経て範囲を広げる進め方の図準備取引先ごとの聞き取り試す取引先と品目を1つずつ選ぶ4項目を合意する試行1品目をアプリで発注するFAXでも受け付けてもらう確認注文の見落としがないか納品書と記録を照合できるか締切と緊急時の取り決めが守れているか拡大同じ取引先の別の補充品へ次の取引先へ

▼ 図の内容を文字で読む
  • 準備
    • 取引先ごとの聞き取り
    • 試す取引先と品目を1つずつ選ぶ
    • 4項目を合意する
  • 試行
    • 1品目をアプリで発注する
    • FAXでも受け付けてもらう
  • 確認
    • 注文の見落としがないか
    • 納品書と記録を照合できるか
    • 締切と緊急時の取り決めが守れているか
  • 拡大
    • 同じ取引先の別の補充品へ
    • 次の取引先へ

取引先と品目の組み合わせごとにアプリへ移せるかを決めるには、自院の発注品目と取引先ごとの受け方を並べて見る必要があり、担当者一人では整理しにくいためです。

現在の発注品目と取引先の受注手段をもとに、最初に試す取引先と品目の候補と、従来の手段に残す範囲を確かめられます。無料相談で要件を整理する

諦める・説得する・併用する、を分ける目安

断られた理由と品目の運用の組み合わせから、どの対応を先に考えるかで並べた。

  • 取引先が別の受注手段を持ち、品目は定期補充品:相手の受け方に自院を寄せる提案から始める
  • 預託・貸出・立会い・緊急が絡む品目:アプリの対象から外し、従来の手段に残す
  • 自院の説明不足が理由:対象品目、開始時期、FAXとの並行期間を示して再度相談する
  • 併用でも転記や照合の負担が続き、失う支援が小さい:取引先の見直しを検討する

一つの取引先で理由が重なる場合は、品目ごとに分けて当てはめます。

断られた理由と品目の運用ごとに、先に考える対応(編集部の整理・模式図)
別の受注手段がある補充品、預託・貸出・立会い・緊急の品目、自院の説明不足、併用でも負担が続く場合の4つについて、先に考える対応を示した図別の受注手段がある補充品、預託・貸出・立会い・緊急の品目、自院の説明不足、併用でも負担が続く場合の4つについて、先に考える対応を示した図別の受注手段があり、定期補充品相手の受け方に自院を寄せる提案から始める預託・貸出・立会い・緊急が絡む品目アプリの対象から外し、従来の手段に残す自院の説明不足が理由対象品目、開始時期、FAXとの並行期間を示して再度相談する併用でも転記や照合の負担が続き、失う支援が小さい取引先の見直しを検討する

▼ 図の内容を文字で読む
  • 別の受注手段があり、定期補充品
    • 相手の受け方に自院を寄せる提案から始める
  • 預託・貸出・立会い・緊急が絡む品目
    • アプリの対象から外し、従来の手段に残す
  • 自院の説明不足が理由
    • 対象品目、開始時期、FAXとの並行期間を示して再度相談する
  • 併用でも転記や照合の負担が続き、失う支援が小さい
    • 取引先の見直しを検討する

要点の整理

軸 基準
断られた理由 受注手段・品目の運用・自院の説明不足のどれかを、取引先ごとに聞き取る
アプリに乗せる範囲 定期補充で、品名・規格・数量・納期で表せ、取引先が受けられる組み合わせ
従来の手段に残す範囲 預託・貸出・立会いを伴う発注と、緊急の発注
記録 発注手段が複数でも、発注・納品確認・請求照合は1か所に残す
取引先との合意 発注締切、緊急時の連絡手段、突合方法、記録の保管
見直し 必須品目の代替性と支援の担い手を確かめ、最後の選択肢にする

併用を始めると、記録の持ち方や取引先との取り決めを、試行の結果に合わせて見直す場面が出てくるためです。 試行で見えた転記や照合の手間をもとに、記録をまとめる場所と、次に広げる品目・取引先の順を確かめられます。

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よくある質問

取引先がFAXしか受けないとき、アプリの注文内容を自院でFAXに変換して送ってよいですか。

取引先が同意していれば、自院の記録はアプリに一本化し、取引先へはFAXで届けるという形は考えられます。
自院は記録が1か所に残り、取引先は受け方を変えずに済みます。
ただし、アプリの注文をFAXで送る機能があるかは製品によって違い、無い場合は担当者が書き写すことになるため、転記の誤りを確かめる作業が残ります。
FAXが届いたかの確認と、取引先の受注番号を記録に書き足す手順も、事前に決めておきます。

緊急の発注や欠品の連絡は、アプリと電話・FAXのどちらに残すべきですか。

併用を始めた段階では、電話など相手が受けたことをその場で確かめられる手段に残すことを勧めます。
欠品の連絡も、代わりの品目や納期を相談する必要があるため、同じ考え方です。
電話で頼んだ分も後から記録に登録し、アプリにも入れるかどうかを取引先と決めておくと、二重の発注を避けやすくなります。

併用すると発注記録が分散します。納品書や請求書との突合はどう管理すればよいですか。

発注の手段が分かれても、発注、納品確認、請求照合の記録は1か所に残します。
照合に使う番号を自院の発注番号か取引先の受注番号のどちらかに決め、納品書や請求書の明細と同じ番号で突き合わせられるようにしておくと、どの手段で発注した分かを探さずに済みます。
電話の発注を登録し忘れると記録から漏れるため、照合の時点で記録に無い明細がないかを確かめる作業は残ります。

取引先に費用負担を求められた場合、自院はどこまで応じるべきですか。

まず、その費用が何のためのものかを確かめます。
自院専用の画面を見るための利用料なのか、取引先のシステムに取り込むための改修なのか、規格に対応したサービスとの契約なのかで、話し合う範囲が変わります。
中小企業共通EDIについては受注側の導入に大きな費用はかからないと説明されていますが、医療機関と卸の取引での費用は確かめられていません1。
応じる範囲の相場を示せる資料はないため、取引先が既に使っている受け方に自院を寄せて費用そのものを小さくできないかを先に検討し、そのうえで負担の分け方を相談するのが筋道です。

医薬品と医療機器で、アプリへの切替しやすさはどう違いますか。

医療機器・医療材料では、貸出や立会い、預託といった物品の注文以外の取引が含まれるため、品目によってアプリへの移しやすさが大きく分かれます3。
医療用医薬品については、ここで扱った資料からは切り替えやすさを比べられる情報は得られていません。
医薬品の取引には厚生労働省の流通改善ガイドラインがあり、医療機関も宛先に含まれているため4、医薬品卸と発注方法を話し合う前に、その内容を院内の担当部門と確認しておくことを勧めます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
  2. 2 出典:医療材料統合流通研究会「医療機器業界標準EDI」
  3. 3 出典:一般社団法人日本医療機器販売業協会「医療機器販売業とは?」
  4. 4 出典:PhRMA(研究製薬工業協会)「『医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン』、Q&A」(2018年)

画像の出典元

  1. Medical professional in scrubs reviewing documents at an office desk./Photo by https://kaboompics.com/ on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
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※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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